説明

マグネットの着磁方法

【課題】モータに使用する部品を変更せずに、モータ特性を変化させることのできるマグネットの着磁方法の提供する。
【解決手段】円筒状のマグネット1の内周側に円柱状のバックヨークを挿入するとともにマグネットの外周側にハウジング3を嵌合し、ハウジングの外側に磁束形成用手段4,5を配置して、磁束形成用手段ヘ通電することによってマグネットに2極着磁を行う際、前記バックヨークの径寸法は変化させずに、前記バックヨークを構成する、円柱状の磁性体部材2aの径寸法と該磁性体部材に外嵌される円筒状の非磁性体部材2bの径方向寸法をそれぞれ相対変化させることにより、モータの特性を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに具備されるマグネットへの着磁方法に関するものある。
【背景技術】
【0002】
従来からモータに具備されるマグネットへの着磁方法については種々提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
図7は、従来のマグネットへの着磁方法を説明するための図である。従来においては、例えば図7に示すように円筒状のマグネット101の内径と同等径の磁性体部材102(バックヨーク)が、該マグネット101の内周面101aに挿入され、マグネット101の外周面に嵌合されたハウジング103の外側に磁場形成用手段(図7では不図示、図4により後述する。)が配置され、この磁場形成用手段へ通電することにより、ハウジング103の外側からマグネット101に対して2極着磁を行っていた。
【0004】
もしくは、前記バックヨークを成す磁性体部材102をマグネット101の内周側に挿入せずに、ハウジング103の外側に配置される磁場形成用手段へ通電することにより、該ハウジング103の外側からマグネット101に対して2極着磁を行っていた。
【特許文献1】特開平8−223872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の着磁方法においては、バックヨークを挿入してマグネットへの着磁を行った際のモータのコギングトルクと、バックヨークを挿入せずにマグネットへの着磁を行った際のモータのコギングトルクとの間の、狙ったコギングトルクの大きさを有するモータを製作しようとした場合、マグネットの材質、形状の変更や、ロータ鉄心形状を変更するなど、大幅な変更を加えなければならず、コストアップとなってしまっていた。
【0006】
同様に、上記各着磁方法により製作されるモータのトルク特性の間の特性を得たい場合にも、巻線の変更やその他部品の変更など、大幅な変更を加えなければならないという課題を有していた。
【0007】
(発明の目的)
本発明の目的は、モータに使用する部品を変更せずに、モータ特性を変化させることのできるマグネットの着磁方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明によれば、円筒状のマグネットの内周側に円柱状のバックヨークを挿入するとともに前記マグネットの外周側にハウジングを嵌合し、前記ハウジングの外側に磁束形成用手段を配置して、前記磁束形成用手段ヘ通電することによって前記マグネットに2極着磁を行う際、前記バックヨークの径寸法は変化させずに、前記バックヨークを構成する、円柱状の磁性体部材の径寸法と該磁性体部材に外嵌される円筒状の非磁性体部材の径方向寸法をそれぞれ相対変化させることにより、モータの特性を変化させるマグネットの着磁方法とするものである。
【0009】
上記のマグネットの着磁方法によれば、バックヨークを使用しないマグネットへの着磁を行った場合は、着磁力が小さく、例えばコギングトルクが最小となり、一方、バックヨークが磁性体部材のみにより成る該バックヨークを挿入してマグネットへの着磁を行った場合は、着磁力が大きく、コギングトルクも最大になることに着目し、磁性体部材と非磁性体部材より成る円柱状のバックヨークの径寸法は変化させずに、バックヨークの径寸法に対する磁性体部材の径寸法を変化させる(必然的に非磁性部材の径方向寸法も相対的に変化する。)ことにより、コギングトルクの大きさを調整するようにしている。なお、前記非磁性体部材の径方向寸法とは、バックヨークの径寸法から磁性体部材の径寸法を引いた、径方向の厚み寸法をいう。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、モータに使用する部品を変更せずに、モータ特性を変化させることができるマグネットの着磁方法を提供できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下の実施例に示す通りである。
【実施例】
【0012】
図1〜図3は本発明の一実施例に係わるマグネットの着磁方法を説明するための図であり、詳しくは、図1は本実施例に係わるバックヨークを示す斜視図、図2は図1のバックヨークをマグネットの内周側に挿入する際の様子を示す斜視図であり、図3はマグネットの外周に嵌合されるハウジングの外側に配置される磁場形成用手段によりマグネットへの着磁を行う際について説明するための模式図である。
【0013】
本実施例のマグネット1は、図2および図3に示すように、従来と同様にその外周側にハウジング3が嵌合される。なお、マグネット1としては、ラバーマグネットを想定している。一方、バックヨーク2は、図2に示すように、例えば炭素鋼よりなる円柱状の磁性体部材2aと該磁性体部材2aに外嵌される例えば樹脂よりなる円筒状の非磁性体部材2bにより構成されており、モータのコギングトルク量を調整したり、トルク特性を変化させる場合は、磁性体部材2aの径寸法D1と非磁性体部材2bの径方向寸法(厚み寸法)D2をそれぞれ相対的に変化させたることにより行う。
【0014】
つまり、従来のように、バックヨークを使用しないマグネットへの着磁を行った場合は、例えばコギングトルクが最小となり、一方、バックヨークが磁性体部材のみにより成る該バックヨークを挿入してマグネットへの着磁を行った場合は、コギングトルクが最大になることに着目し、本実施例では、磁性対部材2aと非磁性体部材2bより成るバックヨーク2の径寸法D0は変化させずに、バックヨーク2の径寸法D0に対する磁性体部材2aの径寸法D1を変化させることにより、コギングトルクの大きさを変え、所望のコギングトルクを得るようにしている。なお、バックヨーク2の径寸法D0に対する磁性体部材2aの径寸法D1を大きくする程、コギングトルクが大きくなるのはいうまでもない。また、バックヨーク2の径寸法D0に対する磁性体部材2aの径寸法D1を変化させることにより、必然的に非磁性部材2bの径方向寸法(厚み寸法)D2も相対的に変化する。
【0015】
マグネット1の外周側に嵌合されるハウジング3の外側には、図3に示すように、2極着磁を行うための、磁場形成手段を構成する、磁性材より成る着磁ヨーク4と磁場形成用コイル5とが左右に配置されている。
【0016】
マグネット1への2極着磁を行う場合は、種々の径寸法により着磁して得られた実験値を基に、所望の径寸法の磁性体部材2aと前記径寸法によって必然的に決まる径方向寸法(厚み寸法)D2を持つ非磁性体2bより構成されるバックヨーク2を、図2に示すように、外周側にハウジング3が嵌合されたマグネット1の内周側に挿入する。そして、このハウジング3を、図3に示すように、左右の磁場形成手段の間に配置する。この状態で磁場形成手段に通電する。これにより、前記マグネット1の着磁力を、バックヨークを使用しないでマグネットへの着磁を行った場合と、バックヨークが磁性体部材のみにより成る該バックヨークを挿入してマグネットへの着磁を行った場合との任意の間に、設定することができる。
【0017】
図4に、本実施例の着磁方法による場合と、従来のバックヨークを用いた場合と、バックヨークを用いない場合の、それぞれのコギングトルクの大きさを比較した図を示している。この図から明らかなように、本実施例によれば、コギングトルクの大きさをそれぞれの間の任意の大きさに設定可能である。
【0018】
また、トルク特性である起動トルクについても、バックヨークが使用されないでマグネットの着磁が行われる場合と、バックヨークが磁性体部材のみにより成る該バックヨークが挿入されてマグネットの着磁が行われる場合との間の起動トルクに設定することができる。
【0019】
図5に、本実施例の着磁方法による場合と、従来のバックヨークを用いた場合と、バックヨークを用いない場合の、それぞれのトルク特性を比較した図を示している。
【0020】
図6は、本実施例の着磁方法による場合と、従来のバックヨークを用いた場合と、バックヨークを用いない場合の、それぞれマグネットの表面磁束を比較した図である。
【0021】
以上の説明から明らかなように、本実施例によれば、モータの構造を変化させずに、モータ特性(コギングトルク及びトルク特性)を、ある範囲内において狙い値にする着磁方法を提供可能となる。
【0022】
なお、上記の実施例では、マグネット1として、ラバーマグネットを例にしているが、これに限定されず、焼結成型したフェライトマグネットであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例に係わるバックヨークを示す斜視図である。
【図2】着磁時に本実施例に係わるバックヨークを用いる際の様子を示す斜視図である。
【図3】着磁時に本実施例に係わるバックヨークを挿入した際の上面より見た模式図を示すものである。
【図4】本実施例の場合と従来のバックヨークを用いた場合と用いない場合それぞれのコギングトルクを比較した図である。
【図5】本実施例の場合と従来のバックヨークを用いた場合と用いない場合それぞれのモータトルク特性を比較した図である。
【図6】本実施例の場合と従来のバックヨークを用いた場合と用いない場合それぞれのマグネットの表面磁束を比較した図である。
【図7】従来のマグネットへの着磁方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0024】
1 マグネット
2 バックヨーク
2a 磁性体部材
2b 非磁性体部材
3 ハウジング
4 着磁ヨーク
5 磁場形成用コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のマグネットの内周側に円柱状のバックヨークを挿入するとともに前記マグネットの外周側にハウジングを嵌合し、前記ハウジングの外側に磁束形成用手段を配置して、前記磁束形成用手段ヘ通電することによって前記マグネットに2極着磁を行う際、前記バックヨークの径寸法は変化させずに、前記バックヨークを構成する、円柱状の磁性体部材の径寸法と該磁性体部材に外嵌される円筒状の非磁性体部材の径方向寸法をそれぞれ相対変化させることにより、モータの特性を変化させることを特徴とするマグネットの着磁方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−116866(P2007−116866A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308055(P2005−308055)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(000104630)キヤノンプレシジョン株式会社 (79)
【Fターム(参考)】