マグネトロンの余寿命検出方法とその余寿命検出装置
【課題】マグネトロンの余寿命が検出でき、マグネトロンの交換時期やその交換作業の準備などの便宜を計ることができるマグネトロンの余寿命検出装置を提案すること。
【解決手段】推奨されるフィラメント電圧を印加して特定の定格出力を出力させるマグネトロンの平均陽極電流を数段階に減少させる制御手段と、前記フィラメント電圧を維持した状態で、平均陽極電流を数段階に順次減少させることによって発生するマグネトロンの異常発振時点を検出する検出手段と、上記検出手段の異常発振時点の検出より、各平均陽極電流に対応する寿命時間を求め、これら寿命時間から特定の定格出力の余寿命を知得するマグネトロンの余寿命検出装置の構成となっている。
【解決手段】推奨されるフィラメント電圧を印加して特定の定格出力を出力させるマグネトロンの平均陽極電流を数段階に減少させる制御手段と、前記フィラメント電圧を維持した状態で、平均陽極電流を数段階に順次減少させることによって発生するマグネトロンの異常発振時点を検出する検出手段と、上記検出手段の異常発振時点の検出より、各平均陽極電流に対応する寿命時間を求め、これら寿命時間から特定の定格出力の余寿命を知得するマグネトロンの余寿命検出装置の構成となっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネトロンの余寿命を予め検出し、マグネトロンの交換時期の予定や交換のためのマグネトロンのストックなどの便宜を計ることができるマグネトロンの余寿検出方法とその余寿検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネトロンは消耗品であるため、マイクロ波電力を利用して加熱、乾燥し、或いは、エッチング処理等を行うマイクロ波応用装置では、所定期間の経過によってマグネトロンを交換することが行なわれている。
ところが、マグネトロン各々の寿命時間には長短があり、寿命(寿命時間の終わり)が明確でないために、寿命時間が充分にあるにもかかわらず交換してしまったり、また、寿命により故障となった後に交換するなど、実用的には様々な取り扱いがなされている。
【0003】
この結果、寿命時間を充分に残して交換する場合は経済的に好ましくないし、また、故障となった後で交換することも、マイクロ波処理される製品の歩留まりが悪くなったり、さらには、マグネトロン故障のための装置の停止時間が長くなったりする等の問題が生じる。
【0004】
上記の事情から、マグネトロンの寿命検出については、従来から様々な検出方法や検出装置が提案されている。
一例を述べれば、マグネトロンが冷えている状態で、通常運転起動電圧より低いヒーター電圧(フィラメント電圧)を印加すると共に、陽極にはヒーター電圧よりも高い電圧を印加し、この状態で、マグネトロンの発振停止又は出力低下を発振出力検出手段によって検出する寿命検出方法がる。
【0005】
この寿命検出方法は、低いヒーター電圧をわざわざ供給する回路を必要とする他に、マグネトロンを発振動作させる毎に準備作業として検出確認することになる。
また、定格フィラメント電圧ではまだまだ寿命時間が充分に残っているにもかかわらず寿命と判定してしまうことがある。
特に、マグネトロンの特性によっては、通常運転起動電圧より低いフィラメント電圧を印加することができないものがあるから、上記の寿命検出方法は限られたマグネトロンに適用できるに止まる。
【0006】
【特許文献1】第2553424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した従来の寿命検出方法は、検出結果として残りの寿命時間、つまり、余寿命については具体的に分からないから、例えば、寿命時間が1000時間以上も残っているにもかかわらず寿命の到来と判定してしまうことがある。
したがって、寿命と判断すれば、残りの寿命時間(余寿命)に関係なくマグネトロンの交換が行われている。
【0008】
しかしながら、マグネトロンは、高価な商品であり、また、複数個使用されたものが多いから、寿命(異常発振または発振停止)となる直前に交換することが好ましく、特には、寿命検出時に残りの寿命時間が分れば、マグネトロンの交換時期を知ることができるから、マグネトロンのストックの管理やマグネトロンの交換作業準備、作業時期等について事前に予定することができる。
このことから、余寿命を知ることができれば、経済的にもまた作業の能率向上においても非常に重要なこととなる。
【0009】
本発明は、上記の実情にかんがみ、マグネトロンの余寿命(残りの寿命時間)を検出してマグネトロンの交換時期や交換作業の予定などに便宜をはかることができるマグネトロンの余寿命検出方法とその余寿命検出装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するため、本発明では、第1の発明として、推奨されるフィラメント電圧を印加して特定の定格出力を出力させるマグネトロンの平均陽極電流を数段階に減少させ、前記フィラメント電圧を維持した状態で、平均陽極電流を数段階に順次減少させることによって発生するマグネトロンの異常発振時点を検出し、異常発振時点の検出より、各平均陽極電流に対応する寿命時間を求め、これら寿命時間から特定の定格出力の余寿命を知得することを特徴するマグネトロンの余寿命検出方法を提案する。
【0011】
第2の発明としては、推奨されるフィラメント電圧を印加して特定の定格出力を出力させるマグネトロンの平均陽極電流を数段階に減少させる制御手段と、前記フィラメント電圧を維持した状態で、平均陽極電流を数段階に順次減少させることによって発生するマグネトロンの異常発振時点を検出する検出手段と、上記検出手段の異常発振時点の検出より、各平均陽極電流に対応する寿命時間を求め、これら寿命時間から特定の定格出力の余寿命を知得することを特徴するマグネトロンの余寿命検出装置を提案する。
【0012】
第3の発明としては、上記第2の発明のマグネトロンの余寿命検出装置において、マグネトロンがモーディングしたとき、異常発振時点として検出するモーディング検出手段を設けたことを特徴とするマグネトロンの余寿命検出装置を提案する。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成した本発明は、推奨フィラメント電圧を維持した状態で、平均陽極電流を数段階に減少させ、マグネトロンが各々の平均陽極電流を流したとき発生する異常発振時点を検出する。
すなわち、マグネトロンが異常発振する時点は、定格出力限界時点であるから、各々の平均陽極電流を供給したときに発生する異常発振時点は、平均陽極電流各々に対応するマグネトロンの寿命時間となる。
【0014】
したがって、推奨されるフィラメント電圧を印加して特定の定格出力を出力するマグネトロンの寿命時間を予め求めておくことによって、この寿命時間と減少させた各平均陽極電流に対応する寿命時間とから、マグネトロンが正常発振する余寿命を検出することができる。
【0015】
この結果、マグネトロンの残りの寿命時間を考慮し、マグネトロンのストックの管理、マグネトロンの交換時期と交換作業の準備などを事前に予定することができる。
なお、マグネトロンの異常発振の検出については、マグネトロンがモーディングした時を検出する検出手段を設けることによって行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について図面に沿って説明する。
図1は、一例と示した5kW出力のマグネトロンの出力Po−平均陽極電流Ibの特性図、図2は、そのマグネトロンのフィラメント電圧Ef−平均陽極電流Ibの特性図である。
【0017】
図1より分かるように、上記のマグネトロンは、5kW出力時には920mA(mA:ミリアンペア)の平均陽極電流Ibが流れ、また、920mAの平均陽極電流Ibが流れるときは、図2に示すように、0.4Vのフィラメント電圧Efを加えることが推奨されている。
【0018】
したがって、このマグネトロンは、5Vの予熱フィラメント電圧Efでフィラメントを加熱した後に運転状態に入り、推奨される0.4Vのフィラメント電圧Efと必要な陽極電圧を印加して特定の定格出力として5kWのマイクロ波電力を出力させることができる。
なお、この種のマグネトロンは、発振出力によってフィラメント温度が上昇するバックヒーテング現象を伴って出力状態を継続する。
【0019】
図3は、上記のマグネトロンについて、加速寿命試験を行ないながら、特性の変化を調査した特性図で、横軸はマグネトロンの動作時間(時間)、縦軸はモーディング開始フィラメント電圧(V)として描いた平均陽極電流Ibの特性曲線を示している。
なお、この特性図では、平均陽極電流Ibが200mA、400mA、600mA、800mA、850mA,920mAについて示してあるが、平均陽極電流が300mAのときは、200mAと400mAの特性曲線の中間となり、400mAと同様に初期はモーディング開始フィラメント電圧が0Vとなることが確認された。
【0020】
ここで、モーディング開始フィラメント電圧とは、正常発振が維持できる限界のフィラメント電圧である。
例えば、平均陽極電流Ibを600mAに維持してフィラメント電圧を下げると、フィラメントから放出される電子放出量が減って正常発振が維持できなくなりモーディングするが、このモーディングが発生する直前のフィラメント電圧を上記したモーディング開始フィラメント電圧としてある。
ただし、フィラメント電圧を0Vにしてもモーディングしなかった場合は、モーディング開始フィラメント電圧を0Vと定義した。
【0021】
この特性図から平均陽極電流Ibが600mAのときのモーディング開始フィラメント電圧の推移を見ると、動作時間(定格出力時間)が6000時間まではフィラメント電圧が2.1V以上で正常発振し、2.1未満でモーディングしている。
このことは、加速寿命試験でマグネトロンを6000時間動作させたことにより、フィラメントから放出される電子の放出量が少なくなり、2.1V以上のフィラメント電圧を印加したときだけ正常発振する状態になることを意味している。
【0022】
そして、図2の特性図によれば、平均陽極電流Ibが600mAのときに印加すべき推奨フィラメント電圧Efは2Vであるから、6000時間弱で寿命終止点に達したことになる。
なお、正しくは、加速係数を加味した時間が本来の寿命時間の終わりとなる。
【0023】
同様に、平均陽極電流Ibが定格出力動作の920mAのときのモーディング開始フィラメント電圧は、6500時間まではフィラメント電圧を印加しなくともバックヒーティング現象だけで正常発振できたが、7000時間では、フィラメント電圧が2V以上で正常発振し、2V未満でモーディングしている。
【0024】
そして、図2の特性図から平均陽極電流Ibが920mAのとき印加すべき推奨フィラメント電圧は0.4Vであるから、概略6700時間で寿命終止点に達したことになる。
なお、正しくは、加速係数を加味した時間が本来の寿命時間の終わりとなる。
【0025】
次に、上記した特性のマグネトロンを特定出力動作の5kW出力(平均陽極電流Ib=920mA)で動作させるマイクロ波応用装置に組み付け、余寿命の検出をおこなったところ下記の結果を得た。この場合、フィラメント電圧Efは図示するように推奨フィラメント電圧である0.4Vに設定した。
【0026】
余寿命を検出する目的で平均陽極電流Ibを920mAから600mAに変更すると、概略5450時間(特定出力動作の5kW寿命に対し81%)を経過した時点からモーディングが発生するようになる。
この結果、このマグネトロンの余寿命が19%であることが分かる。
余寿命の検出が終わったら、一旦陽極電源を切断し、再度920mAの平均陽極電流Ibを供給することによって、正常発振を継続させることができる。
【0027】
同様に、余寿命を検出する目的で平均陽極電流Ibを920mAから850mAに変更すると、概略6450時間(特定出力動作の5kW寿命に対し96%)を経過した時点からモーディングが発生するようになる。
この結果、このマグネトロンの余寿命が4%であることが分かる。
余寿命の検出が終わったら、一旦陽極電源を切断し、再度920mAの平均陽極電流Ibを供給することによって、正常発振を継続させることができる。
【0028】
平均陽極電流Ibを定格動作の920mAから順次変化させ、200mA、400mA、600mA、800mA,850mAに設定し、これら平均陽極電流Ib各々について余寿命を検出すると、次の表1に示したように、各平均陽極電流Ibに対応する余寿命を検出することができる。
【0029】
【表1】
【0030】
続いて、本発明を具体的に実施した1実施例について説明する。
本発明は、既に述べたように、モーディングの発生時点を余寿命として検出するので、先ず、モーディングについて説明する。
図4は、電子レンジ用や工業用に使用されるマグネトロンの陽極空洞10の模式図である。このマグネトロンは導電性のストラップリング11、12を備えることが特徴となっている。
【0031】
陽極空洞10には、8枚のベイン10a〜10hが放射状に設けられ、内側のストラップリング11がベイン10a、10c、10e、10gに電気接続され、外側のストラップリング12がベイン10b、10d、10f、10hに電気接続されている。
【0032】
各ベインの先端側に付した+(プラス)と−(マイナス)は、マグネトロンが正常発振しているとき、ある瞬間にベイン先端に現れるマイクロ波電界の極性を示し、例えば、図示の如く、ベイン10aの先端がプラスの最大値を示すときは、隣のベイン10bの先端がマイナスの最大値を示すと言うように、隣り合うベインの先端に現れるマイクロ波電界の位相が180°(π)ずれる状態となる。
【0033】
この発振状態では、ストラップリング11、12による各ベインの接続点が同電位となるように強制されるので、位相がπだけずれたマイクロ波電界によって安定した発振が行われ、このように発振することをマグネトロンの正常発振と言う。
なお、陽極空洞10のベイン数は偶数で、電子レンジ用や工業用に使用されるマグネトロンは8枚から24枚のものが一般的で、特に10枚から14枚のものが多い。
【0034】
一方、図4において、ベイン10aの先端がプラス、ベイン10cの先端がマイナス、ベイン10eの先端がプラス、ベイン10gの先端がマイナスとなる発振モード、或いは、ベイン10aの先端がプラス、ベイン10eの先端がマイナスとなる発振モードがあるが、このような発振モードを総称して異常発振、あるいは、モーディングと言う。
したがって、以下の説明では、マグネトロンが正常発振以外のモードで発振することをモーディング、或いは、異常発振と言う。
【0035】
なお、ストラップリング11、12は、上記したように正常発振を強制的に促し、発振の安定化に有利であるが、モーディングが生じたときは、ベインの接続点が異なる電位となるので、大きなマイクロ波電流が流れ熱疲労破壊の原因となり、極端な場合は破断などに至る。
【0036】
図5は、ストラップリングを備えるマグネトロンの陽極電流ibと陽極電圧ebとの関係を示す特性図である。
図示するように、正常発振A0が最も低い陽極電圧で発生し、異常発振(モーディング)A1、A2のときは、正常発振A0のときに比べ高い陽極電圧となる。
なお、異常発振の種類はベイン枚数に応じて増すが、この特性図では、2種類の異常発振A1、A2の特性が示してある。
【0037】
本実施例は、正常発振A0の特性に最も近い異常発振A1の特性に着眼し、正常発振A0により出力されるマイクロ波電力の周波数(2.45GHz帯)と異常発振A1により出力されるマイクロ波電力の周波数を有効に利用する。
その理由は、フィラメントからの電子放出量が正常発振を維持するために必要なレベル以下になったとき異常発振するが、このとき異常発振A1のマイクロ波発振が最も強く必ず発生することを確認したからである。
【0038】
下記する表2は、工業用マグネトロンが正常発振A0で出力されるマイクロ波電力の周波数と異常発振A1で出力されるマイクロ波電力の周波数の測定結果を示す。
【表2】
なお、家庭用電子レンジが備えるマグネトロンが異常発振によって出力するマイクロ波電力の周波数は、4.2GHz〜5.0GHzであることも確認された。
【0039】
この表2より分かるように、2.45GHzのマイクロ波電力と、3.5GHz以上のマイクロ波電力を分離し、3.5GHz以上のマイクロ波電力を検出すれば、マグネトロンが異常発振したことが判明し、この結果、マグネトロンの寿命到来を認識することができる。
【0040】
正常発振のマイクロ波電力と異常発振のマイクロ波電力は、導波管をハイパスフイルタとして簡単に分離することができる。
図6は、ハイパスフイルタの構成例を示す方形導波管13で、断面の長辺寸法D0を4.3cmとしたものは、3.5GHz以下のマイクロ波電力を遮断し、3.5HGzを超えるマイクロ波電力を伝搬する。
【0041】
同様に、長辺寸法D0を5cmにしたものは、3GHz以下のマイクロ波電力を遮断し、3GHzを超えるマイクロ波電力を伝搬する。
さらに、長辺寸法D0を6cmとしたものは、2.5GHz以下のマイクロ波電力を遮断し、2.5GHzを超えるマイクロ波電力を伝搬する。
【0042】
したがって、長辺寸法D0が4.3cmから6cmまでの方形導波管を用いれば、表2から分かるように、1.5kWから6kWまでのマグネトロンが出力する異常発振のマイクロ波電力を分離し、検出することができる。
具体的には、異常発振のマイクロ波電力に合わせた長辺寸法の方形導波管を使用する。
【0043】
図7は、余寿命検出装置を備えたマイクロ波応用装置の実施例を示す。
なお、マグネトロン14を駆動する電源部は省略してある。
このマイクロ波応用装置は、マグネトロン14が出力するマイクロ波電力が導波管系回路(マイクロ波伝送路)15を通してアプリケータ16に送られ、被処理物がこのアプリケータ内でマイクロ波処理される。
この実施例のマイクロ波応用装置では、導波管系回路15にアイソレータ17を設け、このアイソレータ17とマグネトロン14との間に余寿命検出装置18が設けてある。
【0044】
すなわち、図8に示す如く、正常発振のマイクロ波電力を伝播する導波管系回路15の一部の導波管部15aに図9、図10に示すところの寿命検出装置18を設置した構成としてある。
具体的には、導波管系回路15は、正常発振のマイクロ波電力、つまり、2.45GHz帯のマイクロ波電力が伝播する導波管構成となっており、したがって、その一部の導波管部15aの長辺寸法D1も60〜120cmの導波管となっている。
【0045】
導波管部15aには、異常発振のマイクロ波電力の波長に対し、1/2波長に近い長さに形成したスロットアンテナ19が設けてある。
このスロットアンテナ19は異常発振のマイクロ波電力に対し共振するので、異常発振の多くのマイクロ波電力を放射する。
【0046】
また、導波管部15aには、上記のスロットアンテナ19を覆うように、図9、図10に示す余寿命検出装置18が設置してある。
具体的には、この余寿命検出装置18は、その胴体部18aが図6に示す方形導波管13と同様に正常発振のマイクロ波電力を遮断し、異常発振のマイクロ波電力を通過させる有底のフイルタで、胴体部18aには、結合金属棒18bを備えた同軸線用端子18cが設けてあり、結合金属棒18bの胴体部内挿入長Hと短絡板からの距離Lは、異常発振のマイクロ波電力が結合する長さに調整してある。
【0047】
前記の余寿命検出装置18は、異常発振のマイクロ波電力を集め、同軸線端子18cから検出信号を出力するから、その検出信号に応動させてアラームを動作させるアラーム動作回路を設ける。
図11はアラーム動作回路の一例である。
このアラーム動作回路は、余寿命検出装置18から出力される検出信号をアンプ20によって検波増幅し、この増幅信号をトランジスタ21のベースに入力し、増幅信号が一定レベルを超えたとき、トランジスタ21をONさせる。
【0048】
トランジスタ21のONにより、リレー22が励起されてその端子22a、22bがOFFからONになり、ランプ23が点灯してモーディングの発生を表示さる。
なお、トランジスタ21に並列接続した常閉型のスイッチ24とリレー端子22aの回路体は、ランプ23の点灯保持回路である。
すなわち、トランジスタ21が一旦ONすると、余寿命検出装置18からの検出信号が消失してもスイッチ24と端子22aの閉成によりリレー22が動作を継続するから、ランプが点灯したままとなる。
【0049】
上記した本実施例のマイクロ波応用装置では、通常運転に入る前に余寿命の検出を行う。
余寿命の検出については、既に述べたように、マグネトロン14を定格出力(例えば、定格出力5kW、平均陽極電流920mA)させた状態で、平均陽極電流Ibを減少さる。
【0050】
平均陽極電流Ibを複数段階に減少させ、この減少制御過程でランプ23が点灯し、表1に示すような余寿命時間が判明する。
余寿命を検出した後は、平均陽極電流Ibを定格動作に戻し、マグネトロン14を定格出力させ、マイクロ波応用装置を通常運転する。
【0051】
このようなマイクロ波応用装置では、余寿命時間が予め知得でき、マグネトロンの交換時期を予定することができるので、交換するマグネトロンやその交換作業の準備の他、物品のマイクロ波処理の計画などが容易となり、この種の装置を効率的に稼働させる上に極めて有利となる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
マグネトロン応用装置などに備えるマグネトロンの余寿命検出方法として、また、その余寿命検出装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】定格出力5kWのマグネトロンの出力と平均陽極電流の関係を示す特性図である。
【図2】上記マグネトロンのフィラメント電圧と平均陽極電流の関係を示す特性図である。
【図3】平均陽極電流を変化させてマグネトロンの加速寿命試験を行った試験結果を示す特性図である。
【図4】電子レンジ用や工業用に使用されるマグネトロンの陽極空洞の模式図である。
【図5】ストラップリングを備えるマグネトロンの陽極電流ibと陽極電圧ebとの関係を示す特性図である。
【図6】異常発振のマイクロ波電力を分離するハイパスフイルタの構成例を示す方形導波管の斜視図である。
【図7】マグネトロンの余寿命検出装置を備えたマグネトロン応用装置の実施例を示す概略図である。
【図8】上記実施例に備えた余寿命検出装置の取付け状態を示す斜視図である。
【図9】上記余寿命検出装置の斜視図である。
【図10】上記余寿命検出装置の断面図である。
【図11】余寿命を検出する検出回路の一例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0054】
14 マグネトロン
15 導波管系回路
15a 導波管部
16 アプリケータ
17 アイソレータ
18 余寿命検出装置
19 ストラップアンテナ
23 モーディング表示用のランプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネトロンの余寿命を予め検出し、マグネトロンの交換時期の予定や交換のためのマグネトロンのストックなどの便宜を計ることができるマグネトロンの余寿検出方法とその余寿検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネトロンは消耗品であるため、マイクロ波電力を利用して加熱、乾燥し、或いは、エッチング処理等を行うマイクロ波応用装置では、所定期間の経過によってマグネトロンを交換することが行なわれている。
ところが、マグネトロン各々の寿命時間には長短があり、寿命(寿命時間の終わり)が明確でないために、寿命時間が充分にあるにもかかわらず交換してしまったり、また、寿命により故障となった後に交換するなど、実用的には様々な取り扱いがなされている。
【0003】
この結果、寿命時間を充分に残して交換する場合は経済的に好ましくないし、また、故障となった後で交換することも、マイクロ波処理される製品の歩留まりが悪くなったり、さらには、マグネトロン故障のための装置の停止時間が長くなったりする等の問題が生じる。
【0004】
上記の事情から、マグネトロンの寿命検出については、従来から様々な検出方法や検出装置が提案されている。
一例を述べれば、マグネトロンが冷えている状態で、通常運転起動電圧より低いヒーター電圧(フィラメント電圧)を印加すると共に、陽極にはヒーター電圧よりも高い電圧を印加し、この状態で、マグネトロンの発振停止又は出力低下を発振出力検出手段によって検出する寿命検出方法がる。
【0005】
この寿命検出方法は、低いヒーター電圧をわざわざ供給する回路を必要とする他に、マグネトロンを発振動作させる毎に準備作業として検出確認することになる。
また、定格フィラメント電圧ではまだまだ寿命時間が充分に残っているにもかかわらず寿命と判定してしまうことがある。
特に、マグネトロンの特性によっては、通常運転起動電圧より低いフィラメント電圧を印加することができないものがあるから、上記の寿命検出方法は限られたマグネトロンに適用できるに止まる。
【0006】
【特許文献1】第2553424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した従来の寿命検出方法は、検出結果として残りの寿命時間、つまり、余寿命については具体的に分からないから、例えば、寿命時間が1000時間以上も残っているにもかかわらず寿命の到来と判定してしまうことがある。
したがって、寿命と判断すれば、残りの寿命時間(余寿命)に関係なくマグネトロンの交換が行われている。
【0008】
しかしながら、マグネトロンは、高価な商品であり、また、複数個使用されたものが多いから、寿命(異常発振または発振停止)となる直前に交換することが好ましく、特には、寿命検出時に残りの寿命時間が分れば、マグネトロンの交換時期を知ることができるから、マグネトロンのストックの管理やマグネトロンの交換作業準備、作業時期等について事前に予定することができる。
このことから、余寿命を知ることができれば、経済的にもまた作業の能率向上においても非常に重要なこととなる。
【0009】
本発明は、上記の実情にかんがみ、マグネトロンの余寿命(残りの寿命時間)を検出してマグネトロンの交換時期や交換作業の予定などに便宜をはかることができるマグネトロンの余寿命検出方法とその余寿命検出装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するため、本発明では、第1の発明として、推奨されるフィラメント電圧を印加して特定の定格出力を出力させるマグネトロンの平均陽極電流を数段階に減少させ、前記フィラメント電圧を維持した状態で、平均陽極電流を数段階に順次減少させることによって発生するマグネトロンの異常発振時点を検出し、異常発振時点の検出より、各平均陽極電流に対応する寿命時間を求め、これら寿命時間から特定の定格出力の余寿命を知得することを特徴するマグネトロンの余寿命検出方法を提案する。
【0011】
第2の発明としては、推奨されるフィラメント電圧を印加して特定の定格出力を出力させるマグネトロンの平均陽極電流を数段階に減少させる制御手段と、前記フィラメント電圧を維持した状態で、平均陽極電流を数段階に順次減少させることによって発生するマグネトロンの異常発振時点を検出する検出手段と、上記検出手段の異常発振時点の検出より、各平均陽極電流に対応する寿命時間を求め、これら寿命時間から特定の定格出力の余寿命を知得することを特徴するマグネトロンの余寿命検出装置を提案する。
【0012】
第3の発明としては、上記第2の発明のマグネトロンの余寿命検出装置において、マグネトロンがモーディングしたとき、異常発振時点として検出するモーディング検出手段を設けたことを特徴とするマグネトロンの余寿命検出装置を提案する。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成した本発明は、推奨フィラメント電圧を維持した状態で、平均陽極電流を数段階に減少させ、マグネトロンが各々の平均陽極電流を流したとき発生する異常発振時点を検出する。
すなわち、マグネトロンが異常発振する時点は、定格出力限界時点であるから、各々の平均陽極電流を供給したときに発生する異常発振時点は、平均陽極電流各々に対応するマグネトロンの寿命時間となる。
【0014】
したがって、推奨されるフィラメント電圧を印加して特定の定格出力を出力するマグネトロンの寿命時間を予め求めておくことによって、この寿命時間と減少させた各平均陽極電流に対応する寿命時間とから、マグネトロンが正常発振する余寿命を検出することができる。
【0015】
この結果、マグネトロンの残りの寿命時間を考慮し、マグネトロンのストックの管理、マグネトロンの交換時期と交換作業の準備などを事前に予定することができる。
なお、マグネトロンの異常発振の検出については、マグネトロンがモーディングした時を検出する検出手段を設けることによって行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について図面に沿って説明する。
図1は、一例と示した5kW出力のマグネトロンの出力Po−平均陽極電流Ibの特性図、図2は、そのマグネトロンのフィラメント電圧Ef−平均陽極電流Ibの特性図である。
【0017】
図1より分かるように、上記のマグネトロンは、5kW出力時には920mA(mA:ミリアンペア)の平均陽極電流Ibが流れ、また、920mAの平均陽極電流Ibが流れるときは、図2に示すように、0.4Vのフィラメント電圧Efを加えることが推奨されている。
【0018】
したがって、このマグネトロンは、5Vの予熱フィラメント電圧Efでフィラメントを加熱した後に運転状態に入り、推奨される0.4Vのフィラメント電圧Efと必要な陽極電圧を印加して特定の定格出力として5kWのマイクロ波電力を出力させることができる。
なお、この種のマグネトロンは、発振出力によってフィラメント温度が上昇するバックヒーテング現象を伴って出力状態を継続する。
【0019】
図3は、上記のマグネトロンについて、加速寿命試験を行ないながら、特性の変化を調査した特性図で、横軸はマグネトロンの動作時間(時間)、縦軸はモーディング開始フィラメント電圧(V)として描いた平均陽極電流Ibの特性曲線を示している。
なお、この特性図では、平均陽極電流Ibが200mA、400mA、600mA、800mA、850mA,920mAについて示してあるが、平均陽極電流が300mAのときは、200mAと400mAの特性曲線の中間となり、400mAと同様に初期はモーディング開始フィラメント電圧が0Vとなることが確認された。
【0020】
ここで、モーディング開始フィラメント電圧とは、正常発振が維持できる限界のフィラメント電圧である。
例えば、平均陽極電流Ibを600mAに維持してフィラメント電圧を下げると、フィラメントから放出される電子放出量が減って正常発振が維持できなくなりモーディングするが、このモーディングが発生する直前のフィラメント電圧を上記したモーディング開始フィラメント電圧としてある。
ただし、フィラメント電圧を0Vにしてもモーディングしなかった場合は、モーディング開始フィラメント電圧を0Vと定義した。
【0021】
この特性図から平均陽極電流Ibが600mAのときのモーディング開始フィラメント電圧の推移を見ると、動作時間(定格出力時間)が6000時間まではフィラメント電圧が2.1V以上で正常発振し、2.1未満でモーディングしている。
このことは、加速寿命試験でマグネトロンを6000時間動作させたことにより、フィラメントから放出される電子の放出量が少なくなり、2.1V以上のフィラメント電圧を印加したときだけ正常発振する状態になることを意味している。
【0022】
そして、図2の特性図によれば、平均陽極電流Ibが600mAのときに印加すべき推奨フィラメント電圧Efは2Vであるから、6000時間弱で寿命終止点に達したことになる。
なお、正しくは、加速係数を加味した時間が本来の寿命時間の終わりとなる。
【0023】
同様に、平均陽極電流Ibが定格出力動作の920mAのときのモーディング開始フィラメント電圧は、6500時間まではフィラメント電圧を印加しなくともバックヒーティング現象だけで正常発振できたが、7000時間では、フィラメント電圧が2V以上で正常発振し、2V未満でモーディングしている。
【0024】
そして、図2の特性図から平均陽極電流Ibが920mAのとき印加すべき推奨フィラメント電圧は0.4Vであるから、概略6700時間で寿命終止点に達したことになる。
なお、正しくは、加速係数を加味した時間が本来の寿命時間の終わりとなる。
【0025】
次に、上記した特性のマグネトロンを特定出力動作の5kW出力(平均陽極電流Ib=920mA)で動作させるマイクロ波応用装置に組み付け、余寿命の検出をおこなったところ下記の結果を得た。この場合、フィラメント電圧Efは図示するように推奨フィラメント電圧である0.4Vに設定した。
【0026】
余寿命を検出する目的で平均陽極電流Ibを920mAから600mAに変更すると、概略5450時間(特定出力動作の5kW寿命に対し81%)を経過した時点からモーディングが発生するようになる。
この結果、このマグネトロンの余寿命が19%であることが分かる。
余寿命の検出が終わったら、一旦陽極電源を切断し、再度920mAの平均陽極電流Ibを供給することによって、正常発振を継続させることができる。
【0027】
同様に、余寿命を検出する目的で平均陽極電流Ibを920mAから850mAに変更すると、概略6450時間(特定出力動作の5kW寿命に対し96%)を経過した時点からモーディングが発生するようになる。
この結果、このマグネトロンの余寿命が4%であることが分かる。
余寿命の検出が終わったら、一旦陽極電源を切断し、再度920mAの平均陽極電流Ibを供給することによって、正常発振を継続させることができる。
【0028】
平均陽極電流Ibを定格動作の920mAから順次変化させ、200mA、400mA、600mA、800mA,850mAに設定し、これら平均陽極電流Ib各々について余寿命を検出すると、次の表1に示したように、各平均陽極電流Ibに対応する余寿命を検出することができる。
【0029】
【表1】
【0030】
続いて、本発明を具体的に実施した1実施例について説明する。
本発明は、既に述べたように、モーディングの発生時点を余寿命として検出するので、先ず、モーディングについて説明する。
図4は、電子レンジ用や工業用に使用されるマグネトロンの陽極空洞10の模式図である。このマグネトロンは導電性のストラップリング11、12を備えることが特徴となっている。
【0031】
陽極空洞10には、8枚のベイン10a〜10hが放射状に設けられ、内側のストラップリング11がベイン10a、10c、10e、10gに電気接続され、外側のストラップリング12がベイン10b、10d、10f、10hに電気接続されている。
【0032】
各ベインの先端側に付した+(プラス)と−(マイナス)は、マグネトロンが正常発振しているとき、ある瞬間にベイン先端に現れるマイクロ波電界の極性を示し、例えば、図示の如く、ベイン10aの先端がプラスの最大値を示すときは、隣のベイン10bの先端がマイナスの最大値を示すと言うように、隣り合うベインの先端に現れるマイクロ波電界の位相が180°(π)ずれる状態となる。
【0033】
この発振状態では、ストラップリング11、12による各ベインの接続点が同電位となるように強制されるので、位相がπだけずれたマイクロ波電界によって安定した発振が行われ、このように発振することをマグネトロンの正常発振と言う。
なお、陽極空洞10のベイン数は偶数で、電子レンジ用や工業用に使用されるマグネトロンは8枚から24枚のものが一般的で、特に10枚から14枚のものが多い。
【0034】
一方、図4において、ベイン10aの先端がプラス、ベイン10cの先端がマイナス、ベイン10eの先端がプラス、ベイン10gの先端がマイナスとなる発振モード、或いは、ベイン10aの先端がプラス、ベイン10eの先端がマイナスとなる発振モードがあるが、このような発振モードを総称して異常発振、あるいは、モーディングと言う。
したがって、以下の説明では、マグネトロンが正常発振以外のモードで発振することをモーディング、或いは、異常発振と言う。
【0035】
なお、ストラップリング11、12は、上記したように正常発振を強制的に促し、発振の安定化に有利であるが、モーディングが生じたときは、ベインの接続点が異なる電位となるので、大きなマイクロ波電流が流れ熱疲労破壊の原因となり、極端な場合は破断などに至る。
【0036】
図5は、ストラップリングを備えるマグネトロンの陽極電流ibと陽極電圧ebとの関係を示す特性図である。
図示するように、正常発振A0が最も低い陽極電圧で発生し、異常発振(モーディング)A1、A2のときは、正常発振A0のときに比べ高い陽極電圧となる。
なお、異常発振の種類はベイン枚数に応じて増すが、この特性図では、2種類の異常発振A1、A2の特性が示してある。
【0037】
本実施例は、正常発振A0の特性に最も近い異常発振A1の特性に着眼し、正常発振A0により出力されるマイクロ波電力の周波数(2.45GHz帯)と異常発振A1により出力されるマイクロ波電力の周波数を有効に利用する。
その理由は、フィラメントからの電子放出量が正常発振を維持するために必要なレベル以下になったとき異常発振するが、このとき異常発振A1のマイクロ波発振が最も強く必ず発生することを確認したからである。
【0038】
下記する表2は、工業用マグネトロンが正常発振A0で出力されるマイクロ波電力の周波数と異常発振A1で出力されるマイクロ波電力の周波数の測定結果を示す。
【表2】
なお、家庭用電子レンジが備えるマグネトロンが異常発振によって出力するマイクロ波電力の周波数は、4.2GHz〜5.0GHzであることも確認された。
【0039】
この表2より分かるように、2.45GHzのマイクロ波電力と、3.5GHz以上のマイクロ波電力を分離し、3.5GHz以上のマイクロ波電力を検出すれば、マグネトロンが異常発振したことが判明し、この結果、マグネトロンの寿命到来を認識することができる。
【0040】
正常発振のマイクロ波電力と異常発振のマイクロ波電力は、導波管をハイパスフイルタとして簡単に分離することができる。
図6は、ハイパスフイルタの構成例を示す方形導波管13で、断面の長辺寸法D0を4.3cmとしたものは、3.5GHz以下のマイクロ波電力を遮断し、3.5HGzを超えるマイクロ波電力を伝搬する。
【0041】
同様に、長辺寸法D0を5cmにしたものは、3GHz以下のマイクロ波電力を遮断し、3GHzを超えるマイクロ波電力を伝搬する。
さらに、長辺寸法D0を6cmとしたものは、2.5GHz以下のマイクロ波電力を遮断し、2.5GHzを超えるマイクロ波電力を伝搬する。
【0042】
したがって、長辺寸法D0が4.3cmから6cmまでの方形導波管を用いれば、表2から分かるように、1.5kWから6kWまでのマグネトロンが出力する異常発振のマイクロ波電力を分離し、検出することができる。
具体的には、異常発振のマイクロ波電力に合わせた長辺寸法の方形導波管を使用する。
【0043】
図7は、余寿命検出装置を備えたマイクロ波応用装置の実施例を示す。
なお、マグネトロン14を駆動する電源部は省略してある。
このマイクロ波応用装置は、マグネトロン14が出力するマイクロ波電力が導波管系回路(マイクロ波伝送路)15を通してアプリケータ16に送られ、被処理物がこのアプリケータ内でマイクロ波処理される。
この実施例のマイクロ波応用装置では、導波管系回路15にアイソレータ17を設け、このアイソレータ17とマグネトロン14との間に余寿命検出装置18が設けてある。
【0044】
すなわち、図8に示す如く、正常発振のマイクロ波電力を伝播する導波管系回路15の一部の導波管部15aに図9、図10に示すところの寿命検出装置18を設置した構成としてある。
具体的には、導波管系回路15は、正常発振のマイクロ波電力、つまり、2.45GHz帯のマイクロ波電力が伝播する導波管構成となっており、したがって、その一部の導波管部15aの長辺寸法D1も60〜120cmの導波管となっている。
【0045】
導波管部15aには、異常発振のマイクロ波電力の波長に対し、1/2波長に近い長さに形成したスロットアンテナ19が設けてある。
このスロットアンテナ19は異常発振のマイクロ波電力に対し共振するので、異常発振の多くのマイクロ波電力を放射する。
【0046】
また、導波管部15aには、上記のスロットアンテナ19を覆うように、図9、図10に示す余寿命検出装置18が設置してある。
具体的には、この余寿命検出装置18は、その胴体部18aが図6に示す方形導波管13と同様に正常発振のマイクロ波電力を遮断し、異常発振のマイクロ波電力を通過させる有底のフイルタで、胴体部18aには、結合金属棒18bを備えた同軸線用端子18cが設けてあり、結合金属棒18bの胴体部内挿入長Hと短絡板からの距離Lは、異常発振のマイクロ波電力が結合する長さに調整してある。
【0047】
前記の余寿命検出装置18は、異常発振のマイクロ波電力を集め、同軸線端子18cから検出信号を出力するから、その検出信号に応動させてアラームを動作させるアラーム動作回路を設ける。
図11はアラーム動作回路の一例である。
このアラーム動作回路は、余寿命検出装置18から出力される検出信号をアンプ20によって検波増幅し、この増幅信号をトランジスタ21のベースに入力し、増幅信号が一定レベルを超えたとき、トランジスタ21をONさせる。
【0048】
トランジスタ21のONにより、リレー22が励起されてその端子22a、22bがOFFからONになり、ランプ23が点灯してモーディングの発生を表示さる。
なお、トランジスタ21に並列接続した常閉型のスイッチ24とリレー端子22aの回路体は、ランプ23の点灯保持回路である。
すなわち、トランジスタ21が一旦ONすると、余寿命検出装置18からの検出信号が消失してもスイッチ24と端子22aの閉成によりリレー22が動作を継続するから、ランプが点灯したままとなる。
【0049】
上記した本実施例のマイクロ波応用装置では、通常運転に入る前に余寿命の検出を行う。
余寿命の検出については、既に述べたように、マグネトロン14を定格出力(例えば、定格出力5kW、平均陽極電流920mA)させた状態で、平均陽極電流Ibを減少さる。
【0050】
平均陽極電流Ibを複数段階に減少させ、この減少制御過程でランプ23が点灯し、表1に示すような余寿命時間が判明する。
余寿命を検出した後は、平均陽極電流Ibを定格動作に戻し、マグネトロン14を定格出力させ、マイクロ波応用装置を通常運転する。
【0051】
このようなマイクロ波応用装置では、余寿命時間が予め知得でき、マグネトロンの交換時期を予定することができるので、交換するマグネトロンやその交換作業の準備の他、物品のマイクロ波処理の計画などが容易となり、この種の装置を効率的に稼働させる上に極めて有利となる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
マグネトロン応用装置などに備えるマグネトロンの余寿命検出方法として、また、その余寿命検出装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】定格出力5kWのマグネトロンの出力と平均陽極電流の関係を示す特性図である。
【図2】上記マグネトロンのフィラメント電圧と平均陽極電流の関係を示す特性図である。
【図3】平均陽極電流を変化させてマグネトロンの加速寿命試験を行った試験結果を示す特性図である。
【図4】電子レンジ用や工業用に使用されるマグネトロンの陽極空洞の模式図である。
【図5】ストラップリングを備えるマグネトロンの陽極電流ibと陽極電圧ebとの関係を示す特性図である。
【図6】異常発振のマイクロ波電力を分離するハイパスフイルタの構成例を示す方形導波管の斜視図である。
【図7】マグネトロンの余寿命検出装置を備えたマグネトロン応用装置の実施例を示す概略図である。
【図8】上記実施例に備えた余寿命検出装置の取付け状態を示す斜視図である。
【図9】上記余寿命検出装置の斜視図である。
【図10】上記余寿命検出装置の断面図である。
【図11】余寿命を検出する検出回路の一例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0054】
14 マグネトロン
15 導波管系回路
15a 導波管部
16 アプリケータ
17 アイソレータ
18 余寿命検出装置
19 ストラップアンテナ
23 モーディング表示用のランプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
推奨されるフィラメント電圧を印加して特定の定格出力を出力させるマグネトロンの平均陽極電流を数段階に減少させ、
前記フィラメント電圧を維持した状態で、平均陽極電流を数段階に順次減少させることによって発生するマグネトロンの異常発振時点を検出し、
異常発振時点の検出より、各平均陽極電流に対応する寿命時間を求め、これら寿命時間から特定の定格出力の余寿命を知得することを特徴するマグネトロンの余寿命検出方法。
【請求項2】
推奨されるフィラメント電圧を印加して特定の定格出力を出力させるマグネトロンの平均陽極電流を数段階に減少させる制御手段と、
前記フィラメント電圧を維持した状態で、平均陽極電流を数段階に順次減少させることによって発生するマグネトロンの異常発振時点を検出する検出手段と、
上記検出手段の異常発振時点の検出より、各平均陽極電流に対応する寿命時間を求め、これら寿命時間から特定の定格出力の余寿命を知得することを特徴するマグネトロンの余寿命検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載したマグネトロンの余寿命検出装置において、
マグネトロンがモーディングしたとき、異常発振時点として検出するモーディング検出手段を設けたことを特徴とするマグネトロンの余寿命検出装置。
【請求項1】
推奨されるフィラメント電圧を印加して特定の定格出力を出力させるマグネトロンの平均陽極電流を数段階に減少させ、
前記フィラメント電圧を維持した状態で、平均陽極電流を数段階に順次減少させることによって発生するマグネトロンの異常発振時点を検出し、
異常発振時点の検出より、各平均陽極電流に対応する寿命時間を求め、これら寿命時間から特定の定格出力の余寿命を知得することを特徴するマグネトロンの余寿命検出方法。
【請求項2】
推奨されるフィラメント電圧を印加して特定の定格出力を出力させるマグネトロンの平均陽極電流を数段階に減少させる制御手段と、
前記フィラメント電圧を維持した状態で、平均陽極電流を数段階に順次減少させることによって発生するマグネトロンの異常発振時点を検出する検出手段と、
上記検出手段の異常発振時点の検出より、各平均陽極電流に対応する寿命時間を求め、これら寿命時間から特定の定格出力の余寿命を知得することを特徴するマグネトロンの余寿命検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載したマグネトロンの余寿命検出装置において、
マグネトロンがモーディングしたとき、異常発振時点として検出するモーディング検出手段を設けたことを特徴とするマグネトロンの余寿命検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−300259(P2008−300259A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146461(P2007−146461)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(000114031)ミクロ電子株式会社 (37)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(000114031)ミクロ電子株式会社 (37)
【Fターム(参考)】
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