マスクおよびそのための通気アセンブリ
【課題】持続陽圧気道圧(CPAP)処置の適用において、主に、流失するガスを通気させるために開発されたマスクから逃がされるガスによって発生するノイズを低減すること。
【解決手段】このマスク10は、使用時に、ガス供給導管との間で流体が流通する関係に接続されたマスクシェル12と、ガス逃がし通気孔のアセンブリ20とを備えている。該通気孔アセンブリに隣接するかあるいは周囲を囲んでいる少なくともマスクシェル12または導管の領域が、比較的柔軟な弾性材料から形成されている。
【解決手段】このマスク10は、使用時に、ガス供給導管との間で流体が流通する関係に接続されたマスクシェル12と、ガス逃がし通気孔のアセンブリ20とを備えている。該通気孔アセンブリに隣接するかあるいは周囲を囲んでいる少なくともマスクシェル12または導管の領域が、比較的柔軟な弾性材料から形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクと、そのための通気アセンブリに関する。
【0002】
本発明に係るマスクおよびそのための通気アセンブリは、大気圧以上に加圧された可呼吸ガスを人間または動物に供給するシステムに連結する持続陽圧気道圧(CPAP)処置の適用において、主に、流失するガスを通気させるために開発されたものである。そのようなシステムは、例えば閉塞性睡眠無呼吸(OSA)や、睡眠時の似たような不規則な呼吸状態の処置に用いられる。しかし、本発明は、例えば、補助された換気や呼吸を含む他の目的にも適用できるものである。
【0003】
ここに用いられる「マスク」の用語は、顔マスクや鼻マスク、口マスク、鼻枕(nasal pillows)等、これら如何なる装置または同様の装置の周辺付属品を含むことが意図されている。
【背景技術】
【0004】
CPAP気流発生器によるOSAの処置は、大気圧以上に加圧された空気(または他の可呼吸ガス)を、導管およびマスクを経て患者の気道へ連続的に供給することを伴う。
【0005】
OSAの処置または補助された換気のためには、患者に供給されるガスの圧力は、ある一定のレベルか、2値のレベル(すなわち、患者の呼気および吸気に同期して)か、治療上必要とされるレベルに合わせて自動設定されるレベルとすることができる。本明細書中においてCPAPと称するのは、これら圧力供給の如何なる形のものをも、またはそれらの組み合わせに関するものを含むことが意図されている。
【0006】
CPAP処置において用いられるマスクは、ガスを大気へ逃がすための通気孔を一般に含んでいる。通気孔は、通常は、マスクに、あるいはマスクに隣接するガス供給導管に位置されている。通気孔を通してガスを逃がすことの本質は、二酸化炭素の再呼吸または蓄積を防止するように呼吸回路から吐き出されたガスを除去することにあり、二酸化炭素の再呼吸も蓄積も、マスクの着用者にとって健康上の危険をもたらすものである。十分なガスの逃がしは、通気孔の大きさおよび形状をCPAPの最低運転圧における最小安全ガス流量を許容するものに選定することによって達成され、CPAPの最低運転圧は、大人には約4cmH2O程度に、また小児患者には約2cmH2Oと低くすることができる。
【0007】
従来技術のマスクは、一般に、着用者の鼻及び/又は口を覆う固いプラスチックシェルを備えている。鼻及び/又は口の周りに気密なシールを構成するように着用者の顔に当接して密封する、柔軟な、あるいは弾性のあるリム(またはクッション)がシェルの周辺に取り付けられている。
【0008】
従来技術の逃がし通気孔は、流失するガスが大気へ通気するのを許容するために、固いシェルまたは供給導管の固い部分に、一つもしくはそれ以上形成される孔またはスリットが用いられていた。いくつかのマスクでは、その孔またはスリットが成型工程中に形成されていた。また、他のマスクでは、それらは、シェルや導管が成型された後に、別工程で穿孔したり切り抜いたりされていた。
【0009】
シェルまたは導管から大気へ孔またはスリットから出ていくガスの流れは、供給ガスとして、その孔またはスリットの出口でノイズまたは乱流を生じ、そして、呼気時には、患者の吐き出したガス(CO2を含む)が出ていく。2値レベルおよび自動設定でのガス供給体制は、一定レベルでのガス供給体制よりもノイズを発生しやすい傾向にある。このことは、相対的に低い圧力と相対的に高い圧力との間で、周期をなしてガスが増減されることによって生じる過剰な乱流によるものと思われる。ノイズは、患者と看護人との快適に対して逆影響を及ぼす。
【0010】
他の従来技術の通気孔は、ステンレス鋼または他の硬質材料から製作されて固いシェルの開口に取り付けられた中空リベットまたはプラグを含んでいる。リベットの外縁は、ノイズ低減のために丸められている。しかし、このアプローチは高価であり、さらに製作工程が必要になり、しかもノイズ低減において有効であるとは証明しなかった。
【0011】
他のノイズ低減に対するアプローチでは、マスクシェルのガス出口に燒結フィルタを用いている。しかし、そのフィルタは詰まりがちであり、特に水分の存在する条件下で詰まりがちである。したがって燒結フィルタは、患者の呼吸システムや加湿器からの水分によって、あるいはマスクおよび関連構成機器に必要とされる定期的な洗浄の間の水分によって簡単に詰まってしまうので、CPAP処置における使用は非実用的であった。
【0012】
シェル内の空気出口周辺を覆う発泡フィルタも試されている。しかし、それらも詰まり易い傾向の不利に困らされ、洗浄が困難で定期的な交換が必要とされる。
【0013】
ノイズの音源を患者から隔てるために、遠隔出口チューブが用いられたこともある。しかしながら、これらのチューブは洗浄が困難で、患者及び/又は彼等の看護人によってもつれさせられ易く、排出ガスがマスクに隣接するチューブ内に残ってしまう別の不利によって困らされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,477,852号
【特許文献2】米国特許第5657752号明細書
【特許文献3】米国特許第5065756号明細書
【特許文献4】英国特許出願公開第1395391号明細書
【特許文献5】特開平9−010311号公報
【特許文献6】特開平7−000521号公報
【特許文献7】特開昭63−105772号公報
【特許文献8】特公昭57−001477号公報
【特許文献9】特開平9−087919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、従来技術の不利益を克服し、あるいは少なくとも改善することにあり、特に、マスクから逃がされるガスによって発生するノイズを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明は、その第1の態様において、大気圧以上に加圧された可呼吸ガスを人間または動物の気道に供給するためのシステムと共に用いるためのマスクを開示する。そのマスクは、使用に際してガス供給導管との間で流体が流通する関係にあるマスクシェルと、ガス逃がし通気孔のアセンブリとを備えており、少なくともマスクシェルまたは導管の領域が、あるいは通気孔のアセンブリに隣接するか周辺の領域が、比較的柔軟な弾性材で形成されている。
【0017】
一つの実施形態では、マスク全体が弾性材から形成される。
【0018】
また別の実施形態では、マスクシェル及び/又は導管が比較的固い材料で形成され、そして、通気孔のアセンブリに隣接するか周辺の領域が比較的柔軟な弾性材で形成されている。
【0019】
第2の態様においては、本発明は、人間または動物に大気圧以上に加圧された可呼吸ガスを供給するシステムと共に用いるマスクまたは導管からのガスの逃がしのための通気孔アセンブリを開示し、その通気孔アセンブリは、比較的柔軟な弾性材で形成されている。
【0020】
好ましい実施形態では、通気孔アセンブリは比較的柔軟な弾性材の挿入体であり、その挿入体はマスクシェルまたは導管に取り付け可能である。挿入体は、好ましくは、それを貫通するオリフィスを少なくとも一つ有している。
【0021】
好ましい形では、固いプラスチックのマスクシェルがポリカーボネートで形成され、挿入体がサイラスティク(登録商標)またはサントプレン(登録商標)で形成される。
【0022】
好ましくは、挿入体は、実質的に三日月形であり、それを貫通する複数のオリフィスを有している。
【0023】
挿入体は、その周囲の周りに溝を含んでいるのが好ましく、その溝は、マスクシェルまたは導管に形成された開口のリムに対して挿入体を位置付けるようにされており、そのリムは、その挿入体に相当する大きさにされている。
【0024】
他の実施形態において、挿入体は実質的に円形または三角形、あるいは十字形、またはピーナッツ形にされる。
【0025】
マスクシェル及び/又は導管は、好ましくは一つもしくはそれ以上の挿入体を含むことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態の斜視図である。
【図2】第2実施形態の斜視図である。
【図3】第3実施形態の斜視図である。
【図4】第4実施形態の斜視図である。
【図5】第5実施形態の斜視図である。
【図6】第6実施形態の斜視図である。
【図7】第7実施形態の斜視図である。
【図8】図1の線8−8に沿う第1実施形態の部分断面図である。
【図9】第8実施形態の斜視図である。
【図10】第3実施形態の挿入体の平面図である。
【図11】図10の線11−11に沿う第3実施形態の断面図である。
【図12】図10の線12−12に沿う第3実施形態の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
まず図1を参照して、図1には、大気圧以上に加圧された可呼吸ガスを人間または動物の気道に供給するためのシステム(図示せず)と共に用いられるマスク10が示されている。マスクは、気流発生器(図示せず)からの可呼吸ガスを流通させるための供給導管を、マスク着用者の鼻の通路へ接続するための入口チューブ14を有する固いプラスチックシェル12を有している。マスクシェル12はまた、着用者の顔とシェル12の内側との間に気密性をもたせるために用いられる柔軟なシーリング膜16も有している。シェル12はまた、マスクを正しい位置に保持するためのヘッドストラップ(図示せず)を、マスク10に連結するための取っ手18も有している。
【0028】
マスクは、ガス逃がしのために貫通オリフィス22が設けられたサイラスティク(登録商標)の挿入体20を有している。図8に最もよく示されているように、挿入体20は、その周囲に凹部または溝24を有している。シェル12には、挿入体20をグロメットと同じような形態でその位置に保持することができるように、リム28によって区画されて相当する大きさにされている開口26が設けられている。開口26は、シェル12内に成型することができ、あるいは成型の後工程として穿孔または打ち抜きすることができる。サイラスティク(登録商標)の柔軟性は、挿入体20が図8に示された形状に弾性で拡張してリム28に係止する前に、最初に窄められて開口26に通されるのを許容するものである。
【0029】
図2から7は、さらに別の実施形態を示しており、同様の構成には同じ参照番号が用いられている。これら全ての実施形態において挿入体20は、挿入体20を正規の位置に保持するために、マスクシェル12に形成された同じ形状の開口26のリム28に係合する外側溝ないし凹部24を有している。
【0030】
図2から5および7に示された実施形態では、挿入体20は一つより多いオリフィス22を有している。図6に示された実施形態では、二つの挿入体20がシェル12に設けられている。
【0031】
図9に示された実施形態では、挿入体20はガス供給導管30に設けられている。
【0032】
図10から12は、図3の第3実施形態の挿入体20を示している。寸法32,34,36,38,40,42および45は、それぞれ略、直径1.73mm,直径3.30mm,28.80mm,19.00mm,1.20mm,および3.60mmである。
【0033】
挿入体20の側面44は、使用時の患者の顔に面し、側面46は大気に面する。
【0034】
マスクシェル12は、ポリカーボネートで形成されている。他の固いプラスチック材も同様に用いることができる。挿入体20は、サイラスティク(登録商標)(ダウコーニング社製)として販売されている弾性体、またはサントプレン(登録商標)(モンサント製)として販売されている熱可塑性弾性体で形成することができる。他の柔軟な弾性材も同様に用いることができる。
【0035】
このマスク10は、柔軟な挿入体20で形成されたものに代わってマスクシェル12に直接形成されたオリフィスを有し、且つ同じサイズを有する同一のマスクよりもノイズの発生が少ない。これは、マスクシェル12内で振動またはそれと同様なものを発生するオリフィス22の、これを貫通している空気通路によって生じる振動を、柔軟な挿入体20が減衰させることによってノイズ低減が生じているものと思われる。
【0036】
図3に示された本発明の実施形態のプロトタイプは、一定レベルおよび2値レベルのCPAP処置圧域に関して試験された。比較のため、図3のマスクと同様のマスクで、しかしマスクシェルにドリルで直接穿孔された6個の孔22が同じ円弧状に配置されていて全体がポリカーボネート製であるマスクも試験された。双方のマスクとも、直径1.7mmの6個の孔を有している。試験結果は、下記の表にまとめられている。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
結果が示すように、図3のマスクは、柔軟な弾性挿入体20を含まない同様のマスクよりもノイズの放出が少なく、この柔軟な弾性挿入体20は、マスク着用者および彼等の看護人の快適性という言葉で多大な利点を表す。
【0040】
マスク10は、上述したノイズ低減に加えて、従来技術のマスクよりも優れた他の利点を有している。第1に、挿入体20は、マスクの組み立て中(マスクはしばしば組立キットの形で供給される。)に、または、定期的に必要であって家庭環境にて行われる洗浄の前後に、マスクシェル12に極めて簡単に装着できる。第2に、マスクシェル12は、一つのサイズの開口26で製作でき、特定患者の処置圧レベルに最適なガス逃がし率を選定して出口サイズを与えられるように一連の異なった挿入体20を備えることができる。
【0041】
本発明は、特定の例を参照して説明されたが、本発明が多くの他の形態に具体化され得ることを、当該技術分野の熟練者には認識されるであろう。
【符号の説明】
【0042】
10 マスク
12 プラスチックシェル(マスクシェル)
14 入口チューブ
16 シーリング膜
18 取っ手
20 挿入体
22 貫通オリフィス
24 溝(凹部)
26 開口
28 リム
30 ガス供給導管
44 側面
46 側面
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクと、そのための通気アセンブリに関する。
【0002】
本発明に係るマスクおよびそのための通気アセンブリは、大気圧以上に加圧された可呼吸ガスを人間または動物に供給するシステムに連結する持続陽圧気道圧(CPAP)処置の適用において、主に、流失するガスを通気させるために開発されたものである。そのようなシステムは、例えば閉塞性睡眠無呼吸(OSA)や、睡眠時の似たような不規則な呼吸状態の処置に用いられる。しかし、本発明は、例えば、補助された換気や呼吸を含む他の目的にも適用できるものである。
【0003】
ここに用いられる「マスク」の用語は、顔マスクや鼻マスク、口マスク、鼻枕(nasal pillows)等、これら如何なる装置または同様の装置の周辺付属品を含むことが意図されている。
【背景技術】
【0004】
CPAP気流発生器によるOSAの処置は、大気圧以上に加圧された空気(または他の可呼吸ガス)を、導管およびマスクを経て患者の気道へ連続的に供給することを伴う。
【0005】
OSAの処置または補助された換気のためには、患者に供給されるガスの圧力は、ある一定のレベルか、2値のレベル(すなわち、患者の呼気および吸気に同期して)か、治療上必要とされるレベルに合わせて自動設定されるレベルとすることができる。本明細書中においてCPAPと称するのは、これら圧力供給の如何なる形のものをも、またはそれらの組み合わせに関するものを含むことが意図されている。
【0006】
CPAP処置において用いられるマスクは、ガスを大気へ逃がすための通気孔を一般に含んでいる。通気孔は、通常は、マスクに、あるいはマスクに隣接するガス供給導管に位置されている。通気孔を通してガスを逃がすことの本質は、二酸化炭素の再呼吸または蓄積を防止するように呼吸回路から吐き出されたガスを除去することにあり、二酸化炭素の再呼吸も蓄積も、マスクの着用者にとって健康上の危険をもたらすものである。十分なガスの逃がしは、通気孔の大きさおよび形状をCPAPの最低運転圧における最小安全ガス流量を許容するものに選定することによって達成され、CPAPの最低運転圧は、大人には約4cmH2O程度に、また小児患者には約2cmH2Oと低くすることができる。
【0007】
従来技術のマスクは、一般に、着用者の鼻及び/又は口を覆う固いプラスチックシェルを備えている。鼻及び/又は口の周りに気密なシールを構成するように着用者の顔に当接して密封する、柔軟な、あるいは弾性のあるリム(またはクッション)がシェルの周辺に取り付けられている。
【0008】
従来技術の逃がし通気孔は、流失するガスが大気へ通気するのを許容するために、固いシェルまたは供給導管の固い部分に、一つもしくはそれ以上形成される孔またはスリットが用いられていた。いくつかのマスクでは、その孔またはスリットが成型工程中に形成されていた。また、他のマスクでは、それらは、シェルや導管が成型された後に、別工程で穿孔したり切り抜いたりされていた。
【0009】
シェルまたは導管から大気へ孔またはスリットから出ていくガスの流れは、供給ガスとして、その孔またはスリットの出口でノイズまたは乱流を生じ、そして、呼気時には、患者の吐き出したガス(CO2を含む)が出ていく。2値レベルおよび自動設定でのガス供給体制は、一定レベルでのガス供給体制よりもノイズを発生しやすい傾向にある。このことは、相対的に低い圧力と相対的に高い圧力との間で、周期をなしてガスが増減されることによって生じる過剰な乱流によるものと思われる。ノイズは、患者と看護人との快適に対して逆影響を及ぼす。
【0010】
他の従来技術の通気孔は、ステンレス鋼または他の硬質材料から製作されて固いシェルの開口に取り付けられた中空リベットまたはプラグを含んでいる。リベットの外縁は、ノイズ低減のために丸められている。しかし、このアプローチは高価であり、さらに製作工程が必要になり、しかもノイズ低減において有効であるとは証明しなかった。
【0011】
他のノイズ低減に対するアプローチでは、マスクシェルのガス出口に燒結フィルタを用いている。しかし、そのフィルタは詰まりがちであり、特に水分の存在する条件下で詰まりがちである。したがって燒結フィルタは、患者の呼吸システムや加湿器からの水分によって、あるいはマスクおよび関連構成機器に必要とされる定期的な洗浄の間の水分によって簡単に詰まってしまうので、CPAP処置における使用は非実用的であった。
【0012】
シェル内の空気出口周辺を覆う発泡フィルタも試されている。しかし、それらも詰まり易い傾向の不利に困らされ、洗浄が困難で定期的な交換が必要とされる。
【0013】
ノイズの音源を患者から隔てるために、遠隔出口チューブが用いられたこともある。しかしながら、これらのチューブは洗浄が困難で、患者及び/又は彼等の看護人によってもつれさせられ易く、排出ガスがマスクに隣接するチューブ内に残ってしまう別の不利によって困らされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,477,852号
【特許文献2】米国特許第5657752号明細書
【特許文献3】米国特許第5065756号明細書
【特許文献4】英国特許出願公開第1395391号明細書
【特許文献5】特開平9−010311号公報
【特許文献6】特開平7−000521号公報
【特許文献7】特開昭63−105772号公報
【特許文献8】特公昭57−001477号公報
【特許文献9】特開平9−087919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、従来技術の不利益を克服し、あるいは少なくとも改善することにあり、特に、マスクから逃がされるガスによって発生するノイズを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明は、その第1の態様において、大気圧以上に加圧された可呼吸ガスを人間または動物の気道に供給するためのシステムと共に用いるためのマスクを開示する。そのマスクは、使用に際してガス供給導管との間で流体が流通する関係にあるマスクシェルと、ガス逃がし通気孔のアセンブリとを備えており、少なくともマスクシェルまたは導管の領域が、あるいは通気孔のアセンブリに隣接するか周辺の領域が、比較的柔軟な弾性材で形成されている。
【0017】
一つの実施形態では、マスク全体が弾性材から形成される。
【0018】
また別の実施形態では、マスクシェル及び/又は導管が比較的固い材料で形成され、そして、通気孔のアセンブリに隣接するか周辺の領域が比較的柔軟な弾性材で形成されている。
【0019】
第2の態様においては、本発明は、人間または動物に大気圧以上に加圧された可呼吸ガスを供給するシステムと共に用いるマスクまたは導管からのガスの逃がしのための通気孔アセンブリを開示し、その通気孔アセンブリは、比較的柔軟な弾性材で形成されている。
【0020】
好ましい実施形態では、通気孔アセンブリは比較的柔軟な弾性材の挿入体であり、その挿入体はマスクシェルまたは導管に取り付け可能である。挿入体は、好ましくは、それを貫通するオリフィスを少なくとも一つ有している。
【0021】
好ましい形では、固いプラスチックのマスクシェルがポリカーボネートで形成され、挿入体がサイラスティク(登録商標)またはサントプレン(登録商標)で形成される。
【0022】
好ましくは、挿入体は、実質的に三日月形であり、それを貫通する複数のオリフィスを有している。
【0023】
挿入体は、その周囲の周りに溝を含んでいるのが好ましく、その溝は、マスクシェルまたは導管に形成された開口のリムに対して挿入体を位置付けるようにされており、そのリムは、その挿入体に相当する大きさにされている。
【0024】
他の実施形態において、挿入体は実質的に円形または三角形、あるいは十字形、またはピーナッツ形にされる。
【0025】
マスクシェル及び/又は導管は、好ましくは一つもしくはそれ以上の挿入体を含むことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態の斜視図である。
【図2】第2実施形態の斜視図である。
【図3】第3実施形態の斜視図である。
【図4】第4実施形態の斜視図である。
【図5】第5実施形態の斜視図である。
【図6】第6実施形態の斜視図である。
【図7】第7実施形態の斜視図である。
【図8】図1の線8−8に沿う第1実施形態の部分断面図である。
【図9】第8実施形態の斜視図である。
【図10】第3実施形態の挿入体の平面図である。
【図11】図10の線11−11に沿う第3実施形態の断面図である。
【図12】図10の線12−12に沿う第3実施形態の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
まず図1を参照して、図1には、大気圧以上に加圧された可呼吸ガスを人間または動物の気道に供給するためのシステム(図示せず)と共に用いられるマスク10が示されている。マスクは、気流発生器(図示せず)からの可呼吸ガスを流通させるための供給導管を、マスク着用者の鼻の通路へ接続するための入口チューブ14を有する固いプラスチックシェル12を有している。マスクシェル12はまた、着用者の顔とシェル12の内側との間に気密性をもたせるために用いられる柔軟なシーリング膜16も有している。シェル12はまた、マスクを正しい位置に保持するためのヘッドストラップ(図示せず)を、マスク10に連結するための取っ手18も有している。
【0028】
マスクは、ガス逃がしのために貫通オリフィス22が設けられたサイラスティク(登録商標)の挿入体20を有している。図8に最もよく示されているように、挿入体20は、その周囲に凹部または溝24を有している。シェル12には、挿入体20をグロメットと同じような形態でその位置に保持することができるように、リム28によって区画されて相当する大きさにされている開口26が設けられている。開口26は、シェル12内に成型することができ、あるいは成型の後工程として穿孔または打ち抜きすることができる。サイラスティク(登録商標)の柔軟性は、挿入体20が図8に示された形状に弾性で拡張してリム28に係止する前に、最初に窄められて開口26に通されるのを許容するものである。
【0029】
図2から7は、さらに別の実施形態を示しており、同様の構成には同じ参照番号が用いられている。これら全ての実施形態において挿入体20は、挿入体20を正規の位置に保持するために、マスクシェル12に形成された同じ形状の開口26のリム28に係合する外側溝ないし凹部24を有している。
【0030】
図2から5および7に示された実施形態では、挿入体20は一つより多いオリフィス22を有している。図6に示された実施形態では、二つの挿入体20がシェル12に設けられている。
【0031】
図9に示された実施形態では、挿入体20はガス供給導管30に設けられている。
【0032】
図10から12は、図3の第3実施形態の挿入体20を示している。寸法32,34,36,38,40,42および45は、それぞれ略、直径1.73mm,直径3.30mm,28.80mm,19.00mm,1.20mm,および3.60mmである。
【0033】
挿入体20の側面44は、使用時の患者の顔に面し、側面46は大気に面する。
【0034】
マスクシェル12は、ポリカーボネートで形成されている。他の固いプラスチック材も同様に用いることができる。挿入体20は、サイラスティク(登録商標)(ダウコーニング社製)として販売されている弾性体、またはサントプレン(登録商標)(モンサント製)として販売されている熱可塑性弾性体で形成することができる。他の柔軟な弾性材も同様に用いることができる。
【0035】
このマスク10は、柔軟な挿入体20で形成されたものに代わってマスクシェル12に直接形成されたオリフィスを有し、且つ同じサイズを有する同一のマスクよりもノイズの発生が少ない。これは、マスクシェル12内で振動またはそれと同様なものを発生するオリフィス22の、これを貫通している空気通路によって生じる振動を、柔軟な挿入体20が減衰させることによってノイズ低減が生じているものと思われる。
【0036】
図3に示された本発明の実施形態のプロトタイプは、一定レベルおよび2値レベルのCPAP処置圧域に関して試験された。比較のため、図3のマスクと同様のマスクで、しかしマスクシェルにドリルで直接穿孔された6個の孔22が同じ円弧状に配置されていて全体がポリカーボネート製であるマスクも試験された。双方のマスクとも、直径1.7mmの6個の孔を有している。試験結果は、下記の表にまとめられている。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
結果が示すように、図3のマスクは、柔軟な弾性挿入体20を含まない同様のマスクよりもノイズの放出が少なく、この柔軟な弾性挿入体20は、マスク着用者および彼等の看護人の快適性という言葉で多大な利点を表す。
【0040】
マスク10は、上述したノイズ低減に加えて、従来技術のマスクよりも優れた他の利点を有している。第1に、挿入体20は、マスクの組み立て中(マスクはしばしば組立キットの形で供給される。)に、または、定期的に必要であって家庭環境にて行われる洗浄の前後に、マスクシェル12に極めて簡単に装着できる。第2に、マスクシェル12は、一つのサイズの開口26で製作でき、特定患者の処置圧レベルに最適なガス逃がし率を選定して出口サイズを与えられるように一連の異なった挿入体20を備えることができる。
【0041】
本発明は、特定の例を参照して説明されたが、本発明が多くの他の形態に具体化され得ることを、当該技術分野の熟練者には認識されるであろう。
【符号の説明】
【0042】
10 マスク
12 プラスチックシェル(マスクシェル)
14 入口チューブ
16 シーリング膜
18 取っ手
20 挿入体
22 貫通オリフィス
24 溝(凹部)
26 開口
28 リム
30 ガス供給導管
44 側面
46 側面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧よりも加圧された可呼吸ガスを人間または動物の気道へ供給するシステムと共に用いられるマスクであって、使用時に、ガス供給導管との間で流体が流通する関係に接続されたマスクシェルと、ガス逃がし通気孔のアセンブリとを備え、該通気孔アセンブリに隣接するかあるいは周囲を囲んでいる少なくともマスクシェルまたは導管の領域が、比較的柔軟な弾性材料から形成されている、マスク。
【請求項2】
マスク全体が弾性材料で形成されている、請求の範囲第1項記載のマスク。
【請求項3】
上記マスクシェル及び/又は導管が比較的固い材料で形成され、上記通気孔アセンブリの周囲の領域または隣接する領域が比較的柔軟な弾性材料で形成されている、請求の範囲第1項記載のマスク。
【請求項4】
上記通気孔アセンブリが比較的柔軟な弾性材の挿入体であり、且つ上記マスクシェルまたは導管に取付可能である、請求の範囲第1項または第3項記載のマスク。
【請求項5】
上記挿入体が、該挿入体を貫通する少なくとも一つのオリフィスを有する、請求の範囲第1項、第3項または第4項記載のマスク。
【請求項6】
上記固いプラスチックのマスクシェルがポリカーボネートで形成され、上記挿入体がサイラスティク(登録商標)またはサントプレン(登録商標)で形成されている、請求の範囲第1項、または第3項ないし第5項のいずれかに記載のマスク。
【請求項7】
上記挿入体が、実質的に三日月形状であり、該挿入体を貫通する複数のオリフィスを含んでいる、請求の範囲第1項、または第3項ないし第6項のいずれかに記載のマスク。
【請求項8】
上記挿入体がその周囲を巡る溝を有し、該溝が、上記マスクシェルまたは導管に形成された開口のリムであって、相当するサイズにされたリムに対して該挿入体を位置付けるようになっている、請求の範囲第1項、または第3項ないし第7項のいずれかに記載のマスク。
【請求項9】
上記挿入体が、実質的に円形、三角形、十字形またはピーナッツの形状である、請求の範囲第1項、または第3項ないし第8項のいずれかに記載のマスク。
【請求項10】
上記マスクシェルまたは導管が、複数の上記挿入体を含んでいる、請求の範囲第4項ないし第9項のいずれかに記載のマスク。
【請求項11】
大気圧よりも加圧された可呼吸ガスを人間または動物の気道へ供給するシステムと共に用いられるマスクまたは導管からガスを逃がすための通気孔アセンブリであって、該通気孔アセンブリが、比較的柔軟な弾性材料から形成されている、通気孔アセンブリ。
【請求項12】
上記通気孔アセンブリが比較的柔軟な弾性材の挿入体であり、且つ上記マスクシェルまたは導管に取付可能である、請求の範囲第11項記載の通気孔アセンブリ。
【請求項13】
上記挿入体が、該挿入体を貫通する少なくとも一つのオリフィスを有する、請求の範囲第11項または第12項記載の通気孔アセンブリ。
【請求項14】
上記固いプラスチックのマスクシェルがポリカーボネートで形成され、上記挿入体がサイラスティク(登録商標)またはサントプレン(登録商標)で形成されている、請求の範囲第11項、第12項または第13項記載の通気孔アセンブリ。
【請求項15】
上記挿入体が、実質的に三日月形状であり、該挿入体を貫通する複数のオリフィスを含んでいる、請求の範囲第11項ないし第14項のいずれかに記載の通気孔アセンブリ。
【請求項16】
上記挿入体がその周囲を巡る溝を有し、該溝が、上記マスクシェルまたは導管に形成された開口のリムであって、相当するサイズにされたリムに対して該挿入体を位置付けるようになっている、請求の範囲第11項ないし第15項のいずれかに記載の通気孔アセンブリ。
【請求項17】
上記挿入体が、実質的に円形、三角形、十字形またはピーナッツの形状である、請求の範囲第11項ないし第16項のいずれかに記載の通気孔アセンブリ。
【請求項1】
大気圧よりも加圧された可呼吸ガスを人間または動物の気道へ供給するシステムと共に用いられるマスクであって、使用時に、ガス供給導管との間で流体が流通する関係に接続されたマスクシェルと、ガス逃がし通気孔のアセンブリとを備え、該通気孔アセンブリに隣接するかあるいは周囲を囲んでいる少なくともマスクシェルまたは導管の領域が、比較的柔軟な弾性材料から形成されている、マスク。
【請求項2】
マスク全体が弾性材料で形成されている、請求の範囲第1項記載のマスク。
【請求項3】
上記マスクシェル及び/又は導管が比較的固い材料で形成され、上記通気孔アセンブリの周囲の領域または隣接する領域が比較的柔軟な弾性材料で形成されている、請求の範囲第1項記載のマスク。
【請求項4】
上記通気孔アセンブリが比較的柔軟な弾性材の挿入体であり、且つ上記マスクシェルまたは導管に取付可能である、請求の範囲第1項または第3項記載のマスク。
【請求項5】
上記挿入体が、該挿入体を貫通する少なくとも一つのオリフィスを有する、請求の範囲第1項、第3項または第4項記載のマスク。
【請求項6】
上記固いプラスチックのマスクシェルがポリカーボネートで形成され、上記挿入体がサイラスティク(登録商標)またはサントプレン(登録商標)で形成されている、請求の範囲第1項、または第3項ないし第5項のいずれかに記載のマスク。
【請求項7】
上記挿入体が、実質的に三日月形状であり、該挿入体を貫通する複数のオリフィスを含んでいる、請求の範囲第1項、または第3項ないし第6項のいずれかに記載のマスク。
【請求項8】
上記挿入体がその周囲を巡る溝を有し、該溝が、上記マスクシェルまたは導管に形成された開口のリムであって、相当するサイズにされたリムに対して該挿入体を位置付けるようになっている、請求の範囲第1項、または第3項ないし第7項のいずれかに記載のマスク。
【請求項9】
上記挿入体が、実質的に円形、三角形、十字形またはピーナッツの形状である、請求の範囲第1項、または第3項ないし第8項のいずれかに記載のマスク。
【請求項10】
上記マスクシェルまたは導管が、複数の上記挿入体を含んでいる、請求の範囲第4項ないし第9項のいずれかに記載のマスク。
【請求項11】
大気圧よりも加圧された可呼吸ガスを人間または動物の気道へ供給するシステムと共に用いられるマスクまたは導管からガスを逃がすための通気孔アセンブリであって、該通気孔アセンブリが、比較的柔軟な弾性材料から形成されている、通気孔アセンブリ。
【請求項12】
上記通気孔アセンブリが比較的柔軟な弾性材の挿入体であり、且つ上記マスクシェルまたは導管に取付可能である、請求の範囲第11項記載の通気孔アセンブリ。
【請求項13】
上記挿入体が、該挿入体を貫通する少なくとも一つのオリフィスを有する、請求の範囲第11項または第12項記載の通気孔アセンブリ。
【請求項14】
上記固いプラスチックのマスクシェルがポリカーボネートで形成され、上記挿入体がサイラスティク(登録商標)またはサントプレン(登録商標)で形成されている、請求の範囲第11項、第12項または第13項記載の通気孔アセンブリ。
【請求項15】
上記挿入体が、実質的に三日月形状であり、該挿入体を貫通する複数のオリフィスを含んでいる、請求の範囲第11項ないし第14項のいずれかに記載の通気孔アセンブリ。
【請求項16】
上記挿入体がその周囲を巡る溝を有し、該溝が、上記マスクシェルまたは導管に形成された開口のリムであって、相当するサイズにされたリムに対して該挿入体を位置付けるようになっている、請求の範囲第11項ないし第15項のいずれかに記載の通気孔アセンブリ。
【請求項17】
上記挿入体が、実質的に円形、三角形、十字形またはピーナッツの形状である、請求の範囲第11項ないし第16項のいずれかに記載の通気孔アセンブリ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−19922(P2011−19922A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181667(P2010−181667)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【分割の表示】特願2008−36254(P2008−36254)の分割
【原出願日】平成10年2月6日(1998.2.6)
【出願人】(500046450)レスメド・リミテッド (192)
【氏名又は名称原語表記】RESMED LTD
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【分割の表示】特願2008−36254(P2008−36254)の分割
【原出願日】平成10年2月6日(1998.2.6)
【出願人】(500046450)レスメド・リミテッド (192)
【氏名又は名称原語表記】RESMED LTD
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]