説明

マスクの製造方法

【課題】顔面へのフィット感と共に、デザイン性に優れたマスクを提供する。
【解決手段】第1の素材11と、第2の素材12と、第3の素材13からなるマスク本体部を構成する素材10aを形成する工程と、上端縁重ね合わせ工程と、上端縁接合工程と、下端縁重ね合わせ工程と、下端縁接合工程と、上端縁接合工程及び下端縁接合工程で接合した箇所をそれぞれ折り返し線として第1の素材11と第3の素材13を折り返す折り返し工程と、折り返し工程で第1の素材11と第3の素材13を折り返して第2の素材12と重ね合わせた状態のマスク本体部10の左右の端部を別の端末処理素材40で包囲して端末処理素材40とマスク本体部10の各素材とを接合し、この端末処理部材40によりひも状部材の取付部位50を形成すると共にマスク本体部10の左右の端部を処理する端部処理工程と、ひも状部材取付工程と、からなるマスクの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔面に装着したときのフィット感が良く、しかもデザイン性に優れたマスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、マスクはかぜをひいた人や花粉症の人が外部からの異物を体内に侵入させたくないときに口などの部位を被って顔面に装着する。マスクを形成する素材としては、ガーゼ、不織布、布地等の素材が知られている。このマスクの構成は、単一素材を折り重ねたもの、素材を複数枚積層させたもの、又は様々な機能性を持たせるために別々の素材を複数枚積層させたものなどが知られている。また、近年、口や鼻の形状に沿うようにいわゆるプリーツ形状のマスクや口や鼻にあたる部分に膨らみを持たせた立体形状のマスクが製造されるようになってきている。
【0003】
ところで、上記したプリーツ形状のマスクの製造方法は、一般的に単一素材又は素材を複数枚積層させたものをプリーツ形状の成形するためのローラー加工やヒートプレスなどの加工工程と、マスクを最終形状に成形するための縫製、熱溶着や超音波ウェルダーなどの成形工程と、からなる製造方法である。
また、立体形状のマスクの製造方法は、一般的に金型成型を用いる製造方法である。この製造方法により、例えば、不織布からなる単一素材で形成され、膨らみを持たせた立体形状のマスクを製造することができる。
この種の関連技術として、下記の特許文献1に示されるものがある。
【0004】
【特許文献1】特開平11−192317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のマスクの製造方法では、マスクが顔面の前方へ膨らむような形状となるのである程度顔面へのフィット感は得られるが、口、鼻そしてあごの形状といった顔面における縦のライン全体のバランスまでは考慮されていなかった。すなわち、必ずしも十分なフィット感が得られるようなマスクを製造する法とはされていなかった。
また、従来のマスクの製造方法は、膨らみを持たせることを優先させた製造方法であったため、デザイン性を重視した製造方法とはされていなかった。つまり、従来の製造方法により生産されたマスクは外観上見栄えのよいものではないという問題が指摘されたいた。
【0006】
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、顔面へのフィット感を向上させると共に、デザイン性にも優れたマスクを製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記課題を解決するために、次の手段をとる。
まず、第1の発明は、顔面の口部と該口部の上下部位を少なくとも被う横長形状のマスク本体部と、耳に掛けるために該マスク本体部の横長形状の長尺方向の両側に装着されるゴムひも等のひも状部材とを備えたマスクの製造方法であって、
鼻部等の口部よりも上の顔面の部位を被うために横長形状に形成され、該横長形状の少なくとも下端縁の中央が下に突出した形状となっている第1の素材と、口部を被うために横長形状に形成され、該横長形状の上端縁と下端縁の中央が上下に突出した形状となっている第2の素材と、口部よりも下の顔面の部位を被うために横長形状に形成され、該横長形状の少なくとも上端縁の中央が上に突出した形状となっている第3の素材とのマスク本体部を構成する3つの素材を、第2の素材の上下に突出した形状位置で第1の素材と第3の素材をそれぞれ突出した形状箇所で一体的に連接した状態としてマスク本体部の素材を形成する工程と、
前記マスク本体部を構成する第1の素材の下端縁と第2の素材の上端縁とを前記連接された箇所を折り曲げ線として折り、第1の素材と第2の素材を重ね合わせる上端縁重ね合わせ工程と、前記上端縁重ね合わせ工程で折り重ね合わせた第1の素材と第2の素材の上端縁近傍を接合する上端縁接合工程と、前記マスク本体部を構成する第3の素材の上端縁と第2の素材の下端縁とを前記連接された箇所を折り曲げ線として折り、第3の素材と第2の素材を重ね合わせる下端縁重ね合わせ工程と、前記下端縁重ね合わせ工程で折り重ね合わせた第3の素材と第2の素材の下端縁近傍を接合する下端縁接合工程と、前記上端縁接合工程及び下端縁接合工程で接合した箇所をそれぞれ折り返し線として前記第1の素材と第3の素材を折り返す折り返し工程と、前記折り返し工程で第1の素材と第3の素材を折り返して第2の素材と重ね合わせた状態のマスク本体部の左右の端部を別の端末処理素材で包囲して該端末処理素材とマスク本体部の各素材とを接合し、該端末処理部材によりひも状部材の取付部位を形成すると共にマスク本体部の左右の端部を処理する端部処理工程と、前記端部処理工程で形成されたマスク本体部の両側のひも状部材の取付部位箇所にゴムひも等のひも状部材を取り付けるひも状部材取付工程と、からなるマスクの製造方法である。
【0008】
この第1の発明によれば、マスク本体部の素材を構成する第1の素材、第2の素材、及び第3の素材が一体的に連接した状態で形成されるので、マスク本体部の素材を成形しやすくなる。また、マスク本体部の素材を裁断する場合に、その素材の面積を最大限有効利用することができる。つまり、マスク本体部の素材を無駄なく使用することができるので、コスト削減を図ることが可能となる。そして、一体的に連接されることで、上端縁重ね合わせ工程と下端縁重ね合わせ工程において素材のズレを極力防止することができる。これに加えて、特に第1の素材と第3の素材の形態が外観上似ている場合には、マスクの製造を行う作業者はこれらの素材の組合せを混同することがなくなると共に、素材の紛失をも防ぐことができる。つまり、作業者は、よりスピーディに作業を行うことができる。
また、上端縁重ね合わせ工程と上端縁接合工程を経ることで、第1の素材の下端縁の中央が下に突出した形状部位と、第2の素材の上端縁の中央が上に突出した形状部位を重ね合わせて接合させた箇所が折り返し工程後に膨らみを形成する部分となる。つまり、この膨らみの部分が、マスクを装着したときに口部よりも上の顔面の部分を被うことになり、この部分が鼻部及び鼻部の左右の頬の位置にくると最もフィット感が良いものになると考えられる。
そして、下端縁重ね合わせ工程と下端縁接合工程を経ることで、第3の素材の下端縁の中央が下に突出した形状部位と、第2の素材の下端縁の中央が下に突出した形状部位を重ね合わせて接合させた箇所が後述する折り返し工程後に膨らみを形成する部分となる。つまり、この膨らみの部分が、マスクを装着したときに口部よりもやや下の顔面の部分を被うことになり、この部分があごのあたりの位置にくると最もフィット感が良いものになると考えられる。
ここで、「接合」には縫製、溶着、接着など種々のつぎあわす方法が含まれる。例えば、素材としてガーゼや布生地を用いた場合には、縫製により接合させることができ、素材として不織布を用いた場合には熱溶着により接合させることができる。
【0009】
また、折り返し工程を経ることで、マスク本体部により自然な膨らみを持たせたマスクを製造することができる。そして、マスク装着時に接合工程で接合された部位を顔面に対して内側としてマスクを装着すると、マスク装着時には外観上この接合された部位は見えなくなり、デザイン性に優れたものとなる。これにより、顔面へのフィット感を向上させると共に、デザイン性にも優れたマスクを製造することができる。
また、端部処理工程を経ることで、端末処理部材により折り返し工程後のマスク本体部の形状を維持することができる。すなわち、折り返し工程後のマスク本体部には折り返し工程前のマスク本体部の形状へともどろうとする力が必然的に働くが、端末処理素材によりマスク本体部の左右の端部で各素材を包囲して接合することで折り返し工程後のマスク本体部の形状を維持することができる。ここで、「端末処理部材」としては、バイアステープなどの布テープまたは、不織布素材のテープを使用することができる。そして、ひも状部材取付工程を経ることでマスク本体部とひも状部材とを備えたマスクを製造することができる。
【0010】
次に、第2の発明は、顔面の口部と該口部の上下部位を少なくとも被う横長形状のマスク本体部と、耳に掛けるために該マスク本体部の横長形状の長尺方向の両側に装着されるゴムひも等のひも状部材とを備えたマスクの製造方法であって、
鼻部等の口部よりも上の顔面の部位を被うために横長形状に形成され、該横長形状の上下方向の少なくとも一方の端縁の中央が上に突出した形状となっている第1の素材と、口部を被うために横長形状に形成され、該横長形状の上端縁と下端縁の中央が上下に突出した形状となっている第2の素材と、口部よりも下の顔面の部位を被うために横長形状に形成され、該横長形状の上下方向の少なくとも一方の端縁の中央が下に突出した形状となっている第3の素材とのマスク本体部を構成する3つの素材を、それぞれ分離した別体の素材として形成するマスク本体部の素材形成工程と、前記マスク本体部の素材形成工程で形成した第1の素材と第2の素材を、第1の素材の上に突出した形状の端縁と第2の素材の上端縁とを一致させた状態として重ね合わせる上端縁重ね合わせ工程と、前記上端縁重ね合わせ工程で重ね合わせた第1の素材と第2の素材の上端縁近傍を接合する上端縁接合工程と、前記マスク本体部の素材形成工程で形成した第3の素材と第2の素材を、第3の素材の下に突出した形状の端縁と第2の素材の下端縁とを一致させた状態として重ね合わせる下端縁重ね合わせ工程と、前記下端縁重ね合わせ工程で重ね合わせた第3の素材と第2の素材下端縁近傍を接合する下端縁接合工程と、前記上端縁接合工程及び下端縁接合工程で接合した箇所をそれぞれ折り返し線として前記第1の素材と第3の素材を折り返す折り返し工程と、前記折り返し工程で第1の素材と第3の素材を折り返して第2の素材と重ね合わせた状態のマスク本体部の左右の端部を別の端末処理素材で包囲して該端末処理素材とマスク本体部の各素材とを接合し、該端末処理部材によりひも状部材の取付部位を形成すると共にマスク本体部の左右の端部を処理する端部処理工程と、前記端部処理工程で形成されたマスク本体部の両側のひも状部材の取付部位箇所にゴムひも等のひも状部材を取り付けるひも状部材取付工程と、からなるマスクの製造方法である。
【0011】
この第2の発明によれば、マスク本体部の素材を構成する第1の素材、第2の素材、及び第3の素材がそれぞれ分離した別体の素材として形成される。これにより、製造されるマスクに汎用性を持たせることができる。例えば、第1の素材を吸湿性のある素材で形成すれば、マスクの装着時において眼鏡の曇りの発生を防止することができる。また、第1の素材を低反射色の素材で形成すれば、マスクの素材による光反射の影響を受けにくくすることができる。より具体的には、第1の素材として灰色様のわし炭を含有させた素材を用いることができる。
また、上端縁重ね合わせ工程と上端縁接合工程を経ることで、第1の素材の上に突出した形状部位と、第2の素材の上端縁の中央が上に突出した形状部位を重ね合わせて接合させた箇所が折り返し工程後に膨らみを形成する部分となる。つまり、この膨らみの部分が、マスクを装着したときに口部よりも上の顔面の部分を被うことになり、この部分が鼻部及び鼻部の左右の頬の位置にくると最もフィット感が良いものになると考えられる。
そして、下端縁重ね合わせ工程と下端縁接合工程を経ることで、第3の素材の下に突出した形状部位と、第2の素材の下端縁の中央が下に突出した形状部位を重ね合わせて接合させた箇所が折り返し工程後に膨らみを形成する部分となる。つまり、この膨らみの部分が、マスクを装着したときに口部よりもやや下の顔面の部分を被うことになり、この部分があごのあたりの位置にくると最もフィット感が良いものになると考えられる。
【0012】
また、折り返し工程を経ることで、マスク本体部により自然な膨らみを持たせてマスクを製造することができる。すなわち、顔面へのフィット感を向上させると共に、デザイン性にも優れたマスクを製造することができる。また、端部処理工程を経ることで、端末処理部材により折り返し工程後のマスク本体部の形状を維持することができる。ここで、「端末処理部材」としては、バイアステープなどの布テープを使用することができる。そして、ひも状部材取付工程を経ることでマスク本体部とひも状部材とを備えたマスクを製造することができる。
【0013】
次に、第3の発明は、上記した第1の発明又は第2の発明のいずれかに係るマスクの製造方法であって、前記上端縁重ね合わせ工程又は下端縁重ね合わせ工程の後で、前記それぞれ接合した箇所を別の素材で包囲して接合し処理する接合箇所処理工程を有するマスクの製造方法である。
この第3の発明によれば、接合箇所処理工程を経ることで、それぞれ接合した箇所をしっかりと接合させておくことができる。また、この別の素材でそれぞれ接合した箇所を包囲することで、折り返し工程によって形成される膨らみがより自然な態様となり、マスクのデザイン性がより優れたものとなる。この「別の素材」としては、バイアステープなどの布テープを使用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上述した手段をとることにより、次の効果を得ることができる。
まず、第1の発明においては、顔面へのフィット感を向上させると共に、デザイン性にも優れたマスクを製造することができる。また、第1の素材、第2の素材、及び第3の素材によりマスク本体部の素材を一体的に構成することでマスク本体部の素材を成形しやすくすることができる。
次に、第2の発明によれば、生産されるマスクに汎用性を持たせることができる。
次に、第3の発明によれば、マスクに形成される膨らみがより自然な態様となるので、マスクのデザイン性をより優れたものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の最良の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明に係る製造方法により作製されるマスクは、口や鼻などの顔面の部位を被って顔面に装着したときにフィット感が良く、しかもデザイン性に優れるマスクである。このマスクは、顔面の部位を被うマスク本体部と耳に掛けるためのひも状部材から構成される。マスク本体部を構成する素材としてはガーゼ、布生地、不織布や紙等を用いることができる。敏感肌の人には、好ましくは天然素材が使用される。また、マスク自体に抗菌性をもたせる場合には、抗菌素材を使用することもできる。
【0016】
[実施例1]
まず、マスク本体部を構成する素材が第1の素材、第2の素材、及び第3の素材により一体的に連接された状態で構成されたものから製造されるマスクの製造方法について説明する。図1は、実施例1に係るマスクの製造方法を段階的に説明する説明図である。
マスク本体部10の略中央において前方へ膨らみが形成されるマスク1を以下のような製造方法で作製した。マスク本体部10を構成する第1の素材11、第2の素材12、及び第3の素材13は綿素材の布地を用いた。
なお、マスク本体部10を構成する各素材として、単一素材を複数枚積層させたもの、又は機能性を持たせるために一の素材を他の素材で上下からサンドウィッチのように挟み込んだサンドウィッチ構造とした複合素材を用いることもできる。この場合、顔面に対してより柔らかいフィット感が得られる。
【0017】
図1(a)に示すように、第1の素材11は、鼻部等の口部よりも上の顔面の部位を被うために横長形状に形成され、この横長形状の下端縁11bの中央が下に突出した形状となっている。第2の素材12は、口部を被うために横長形状に形成され、この横長形状の上端縁12aと下端縁12bの中央が上下に突出した形状となっている。第3の素材13は、口部よりも下の顔面の部位を被うために横長形状に形成され、この横長形状の上端縁13aの中央が上に突出した形状となっている。
まず、はじめにマスク本体部10を構成する第1の素材11、第2の素材12、及び第3の素材13は、第2の素材12の上下に突出した形状位置で第1の素材11と第3の素材13がそれぞれ突出した形状箇所で一体的に連接した状態としてマスク本体部の素材10aを形成する。マスク本体部の素材10aが第1の素材11、第2の素材12、及び第3の素材13により一体的に構成されるため、マスク本体部の素材10aを成形しやすくすることができる。
【0018】
次に、図1(b)に示すように、第1の素材11の下端縁11bと第2の素材12の上端縁12aとを連接された箇所14a(図1(a)を参照)を折り曲げ線として折り、第1の素材11と第2の素材12を重ね合わせる。この第1の素材11と第2の素材12を重ね合わせる工程を「上端縁重ね合わせ工程」とする。
そして、第3の素材13の上端縁13aと第2の素材12の下端縁12bとを連接された箇所14b(図1(a)を参照)を折り曲げ線として折り、第3の素材13と第2の素材12を重ね合わせる。この第3の素材11と第2の素材13を重ね合わせる工程を「下端縁重ね合わせ工程」とする。
【0019】
次に、図1(c)に示すように、上端縁重ね合わせ工程で折り重ね合わせた第1の素材11と第2の素材12の上端縁近傍を縫製(接合)する。図1(c)には、この縫製された箇所をマスク本体部10の上側の点線で示している。この第1の素材11と第2の素材12の上端縁近傍を縫製する工程を「上端縁接合工程」とする。
そして、下端縁重ね合わせ工程で折り重ね合わせた第3の素材13と第2の素材12の下端縁近傍を縫製(接合)する。図1(c)には、この縫製された箇所をマスク本体部10の下側の点線で示している。この第3の素材13と第2の素材12の下端縁近傍を縫製する工程を「下端縁接合工程」とする。この接合工程で縫製された箇所が後述する折り返し工程後に膨らみを形成する部分となる。すなわち、各素材の突出した形状部位がマスクの装着時に前方へ膨らみを持たせる部分となる。これにより、口を中心とした顔面における縦のライン全体のバランスがよくなり、顔面へのフィット感が向上する。なお、図1(a)に示すように、デザイン的により自然な膨らみを持たせるためには、各素材11、12、13の突出した形状部位は、滑らかな曲線で構成されていることが好ましい。
【0020】
次に、図1(d)に示すように、上記のそれぞれ接合した箇所をバイアステープ40で包囲して、バイアステープ40をこの箇所に溶着させて取り付ける。この一連の処理工程を「接合箇所処理工程」とする。これにより、それぞれ縫製した箇所をしっかりと接合させておくことができる。また、バイアステープ40でそれぞれ接合した箇所を包囲することで、後述する折り返し工程によって形成される膨らみがより自然な態様となり、よりデザイン性に優れたものとすることができる。なお、膨らみをより自然な態様に見せるためには、やや肉厚のバイアステープを使用することが好ましい。
【0021】
次に、図1(e)に示すように、上端縁接合工程及び下端縁接合工程で接合した箇所をそれぞれ折り返し線として第1の素材11と第3の素材13を折り返す。より具体的には、例えば、図1(d)において第1の素材11と第3の素材13を手に持ったままの状態で図1(d)で見て紙面の手前側に向かって第2の素材12がむきだされるように第1の素材11と第3の素材13とを反転させると図1(e)に示す状態となる。そして、接合工程で接合された部位を顔面に対して内側としてマスクを装着すれば、マスク装着時には外観上この接合された部位は見えなくなり、デザイン性に優れたものとなる。この第1の素材11と第3の素材13を折り返す工程を「折り返し工程」とする。折り返し工程を経ることで、マスク本体部により自然な膨らみを持たせてマスクを製造することができる。つまり、顔面へのフィット感を向上させると共に、デザイン性にも優れたマスクを製造することができる。次いで、図1(e)に示すように、この折り返し工程後にマスク本体部10の上下の端縁にもバイアステープ40を接合して取り付けると、マスクの外観上の見栄えが整ったものとなる。
【0022】
次に、図1(f)に示すように、折り返し工程で第1の素材11と第3の素材13を折り返して第2の素材12の上下に伸長させた状態のマスク本体部10の左右の端部をバイアステープ40で包囲する。次いで、バイアステープ40をマスク本体部10に溶着して取り付けて、このバイアステープ40によりひも状部材の取付部位50を形成する。すなわち、図1(f)に示した取付部位50の内部に略筒形状となる空隙部分を形成することで、ひも状部材がこの空隙部分を挿通可能な構成とする。
より具体的に説明すると、マスク本体部10の図1(f)で見て右側のバイアステープ40の各縁を折り曲げや溶着等の加工によってマスク本体部10の形状を整えると共に、バイアステープ40を利用して取付部位50を形成する処理を行う。このような一連の工程を「端部処理工程」とする(「布はし処理工程」という場合もある)。マスク本体部10の図1(f)で見て左側には、バイアステープ40により端部処理工程が完了した状態を示している。このように、端部処理工程を経ることで、折り返し工程後のマスク本体部10の形状を維持することができる。
【0023】
次に、図1(g)に示すように、端部処理工程で形成されたマスク本体部10の両側のひも状部材の取付部位50にひも状部材30を挿通させて取り付ける。このひも状部材30を取り付ける工程を「ひも状部材取付工程」とする。ひも状部材30には伸縮性のあるゴムひもなど種々の部材を適用できる。なお、ゴム過敏症の人やアレルギー症の人等へは、ひも状部材として肌触りのよいソフトな素材を用いることが好ましい。
【0024】
図2は、上記の製造方法により得られたマスク1を側面から見た斜視図である。図2に示すように、本実施形態に係る製造方法により製造されたマスク1は、鼻、口、そしてあごの形状といった顔面における縦のライン全体のバランスがとれ、適度な膨らみが生じている。従って、以上のような工程を経ることにより顔面へのフィット感が良く、しかもデザイン性にも優れたマスクを量産的に製造することができる。
【0025】
[実施例2]
次に、マスク本体部を構成する素材が、第1の素材、第2の素材、及び第3の素材にそれぞれ分離した別体の素材として構成されたものから製造されるマスクの製造方法について説明する。図3は、実施例2に係るマスクの製造方法を段階的に説明する説明図である。
マスク本体部10の略中央において前方へ膨らみが形成されるマスク1を以下のような製造方法で作製した。なお、マスク本体部10を構成する第1の素材11は、灰色様のわし炭を含有させた素材を用い、第2の素材及び第3の素材は、綿素材の布地を用いた
【0026】
図3(a)に示すように、第1の素材11は、鼻部等の口部よりも上の顔面の部位を被うために横長形状に形成され、この横長形状の上端縁11aの中央が上に突出した形状となっている。第2の素材12は、口部を被うために横長形状に形成され、この横長形状の上端縁12aと下端縁12bの中央が上下に突出した形状となっている。第3の素材13は、口部よりも下の顔面の部位を被うために横長形状に形成され、この横長形状の下端縁13bの中央が下に突出した形状となっている。
まず、はじめにマスク本体部を構成する第1の素材11、第2の素材12、及び第3の素材13を、それぞれ分離した別体の素材として形成する。この工程を「マスク本体部の素材形成工程」とする。このマスク本体部の素材形成工程では、マスク本体部を構成する各素材が別体として形成されるので、製造されるマスクに汎用性を持たせることができる。また、実施例2に係る製造方法では、第1の素材を低反射色である灰色様のわし炭を含有させた素材を用いているので、マスクの素材による光反射の影響を受けにくいマスクを製造することができる。
【0027】
次に、図3(b)に示すように、マスク本体部の素材形成工程で形成した第1の素材11と第2の素材12を、第1の素材11の上に突出した形状の上端縁11aと第2の素材の上端縁12aとを一致させた状態として重ね合わせる。この第1の素材11と第2の素材12を重ね合わせる工程を「上端縁重ね合わせ工程」とする。
そして、マスク本体部の素材形成工程で形成した第3の素材13と第2の素材12を、第3の素材13の下に突出した形状の下端縁13bと第2の素材の下端縁12bとを一致させた状態として重ね合わせる。この第3の素材13と第2の素材12を重ね合わせる工程を「下端縁重ね合わせ工程」とする。
【0028】
次に、図3(c)に示すように、上端縁重ね合わせ工程で折り重ね合わせた第1の素材11と第2の素材12の上端縁近傍を縫製(接合)する。図3(c)には、この縫製された箇所をマスク本体部10の上側の点線で示している。この第1の素材11と第2の素材12の上端縁近傍を縫製する工程を「上端縁接合工程」とする。
そして、下端縁重ね合わせ工程で折り重ね合わせた第3の素材13と第2の素材12の下端縁近傍を縫製(接合)する。図1(c)には、この縫製された箇所をマスク本体部10の下側の点線で示している。この第3の素材13と第2の素材12の上端縁近傍を縫製する工程を「下端縁接合工程」とする。この接合工程で縫製された箇所が後述する折り返し工程後に膨らみを形成する部分となる。すなわち、突出した形状部位がマスクの装着時に前方へ膨らみを持たせる部分となる。これにより、口を中心とした顔面における縦のライン全体のバランスがよくなり、顔面へのフィット感が向上する。
【0029】
次に、図3(d)に示すように、上端縁接合工程及び下端縁接合工程で接合した箇所をそれぞれ折り返し線として第1の素材11と第3の素材13を折り返す。より具体的には、例えば、図3(c)において第1の素材11と第3の素材13を手に持ったままの状態で図3(c)で見て紙面の手前側に向かって第2の素材12がむきだされるように第1の素材11と第3の素材13とを反転させると図3(d)に示す状態となる。そして、接合工程で接合された部位を顔面に対して内側としてマスクを装着すれば、マスク装着時には外観上この接合された部位は見えなくなり、デザイン性に優れたものとなる。この第1の素材11と第3の素材13を折り返す工程を「折り返し工程」とする。折り返し工程を経ることで、マスク本体部10により自然な膨らみを持たせてマスクを製造することができる。つまり、顔面へのフィット感を向上させると共に、デザイン性にも優れたマスクを製造することができる。次いで、図3(d)に示すように、この折り返し工程後にマスク本体部10の上下の端縁にもバイアステープ40接合して取り付けると、マスクの外観上の見栄えが整ったものとなる。なお、実施例2においても実施例1(図1(d)参照)と同様に「接合箇所処理工程」を設けることができる。
【0030】
次に、図3(e)に示すように、折り返し工程で第1の素材11と第3の素材13を折り返して第2の素材12と重ね合わせた状態のマスク本体部10の左右の端部をバイアステープ40で包囲する。次いで、バイアステープ40をマスク本体部10に溶着して取り付けて、このバイアステープ40によりひも状部材の取付部位50を形成する。すなわち、図3(e)に示した取付部位50の内部に略筒形状となる空隙部分を形成することで、ひも状部材がこの空隙部分を挿通可能な構成とする。
より具体的に説明すると、マスク本体部10の図3(e)で見て右側のバイアステープ40の各縁を折り曲げや縫製等の加工によって形状を整えると共に、バイアステープ40を利用して取付部位50を形成する処理を行う。この一連の工程を「端部処理工程」とする。マスク本体部10の図3(e)で見て左側の端部には、バイアステープ40により端部処理工程が完了した状態を示している。このように、端部処理工程を経ることで、折り返し工程後のマスク本体部10の形状を維持することができる。
【0031】
次に、図3(f)に示すように、端部処理工程で形成されたマスク本体部10の両側のひも状部材の取付部位50にひも状部材30を挿通させて取り付ける。このひも状部材30を取り付ける工程を「ひも状部材取付工程」とする。
以上のような工程を経ることにより顔面へのフィット感が良く、しかもデザイン性にも優れたマスクを量産的に製造することができる。
【0032】
本発明は上記実施の形態の構成に限定されることはなく、その他種々の形態で実施ができるものである。
例えば、上記実施形態のマスク本体部を構成する素材10aの形状は、適宜変形して用いることもできる。すなわち、図4に示すように、各素材11、12、13の図4で見て「ハ」の状に傾斜して形成(各素材の上端縁の端部から下端縁の端部へ徐々に拡大する方向に傾斜して形成)させることもできる。図5は、図4に示した各素材11、12、13から実施例2に係る製造方法により作製されたマスクの正面図である。図5に示すように、各素材を「ハ」の状に傾斜して形成するとマスク本体部10の左右方向の両端縁がマスク本体部10の内側へ傾斜した形状となる。これにより、マスク装着時にマスク本体部10の両側の中央近傍と頬との間にすき間が生じにくくなり、フィット感がさらに良好なものとなる。つまり、各素材11、12、13は、人の顔面の形状に合わせて、その端縁を最適な角度に形成させたり、曲線及び直線を組み合わせて自在に構成させたりすることができる。
また、図5に示すように、マスク本体部10の上端の中央付近に鼻の形に合わせて変形可能な長尺状部材90を内在させる工程を設けることもできる。これにより、マスク本体部10の形状を装着する人の顔面の形状に合わせたものとすることができる。なお、長尺状部材90としては、好ましくはアルミニウムのような柔らかい金属製の短片が使用される。
また、上記実施形態では、端部処理工程の後に、ひも状部材50を取り付けたが、このような工程順序に限定されるものではない。すなわち、端部処理工程の途中でひも状部材を取り付けた後に端部処理工程を完了させる場合であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1に係る製造方法を各工程ごとに段階的に説明した説明図である。
【図2】実施例1に係る製造方法により作製されたマスクを側面から見た斜視図である。
【図3】実施例2に係る製造方法を各工程ごとに段階的に説明した説明図である。
【図4】マスク本体部を構成する素材の他の実施形態を示す正面図である。
【図5】図4に示したマスク本体部を構成する素材により作製されたマスクの正面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 マスク
10 マスク本体部
10a マスク本体部を構成する素材
11 第1の素材
11a(第1の素材の)上端縁
11b(第1の素材の)下端縁
12 第2の素材
12a(第2の素材の)上端縁
12b(第2の素材の)下端縁
13 第3の素材
13a(第3の素材の)上端縁
13b(第3の素材の)下端縁
30 ひも状部材
40 バイアステープ
50 ひも状部材の取付部位


【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔面の口部と該口部の上下部位を少なくとも被う横長形状のマスク本体部と、耳に掛けるために該マスク本体部の横長形状の長尺方向の両側に装着されるゴムひも等のひも状部材とを備えたマスクの製造方法であって、
鼻部等の口部よりも上の顔面の部位を被うために横長形状に形成され、該横長形状の少なくとも下端縁の中央が下に突出した形状となっている第1の素材と、口部を被うために横長形状に形成され、該横長形状の上端縁と下端縁の中央が上下に突出した形状となっている第2の素材と、口部よりも下の顔面の部位を被うために横長形状に形成され、該横長形状の少なくとも上端縁の中央が上に突出した形状となっている第3の素材とのマスク本体部を構成する3つの素材を、第2の素材の上下に突出した形状位置で第1の素材と第3の素材をそれぞれ突出した形状箇所で一体的に連接した状態としてマスク本体部の素材を形成する工程と、
前記マスク本体部を構成する第1の素材の下端縁と第2の素材の上端縁とを前記連接された箇所を折り曲げ線として折り、第1の素材と第2の素材を重ね合わせる上端縁重ね合わせ工程と、
前記上端縁重ね合わせ工程で折り重ね合わせた第1の素材と第2の素材の上端縁近傍を接合する上端縁接合工程と、
前記マスク本体部を構成する第3の素材の上端縁と第2の素材の下端縁とを前記連接された箇所を折り曲げ線として折り、第3の素材と第2の素材を重ね合わせる下端縁重ね合わせ工程と、
前記下端縁重ね合わせ工程で折り重ね合わせた第3の素材と第2の素材の下端縁近傍を接合する下端縁接合工程と、
前記上端縁接合工程及び下端縁接合工程で接合した箇所をそれぞれ折り返し線として前記第1の素材と第3の素材を折り返す折り返し工程と、
前記折り返し工程で第1の素材と第3の素材を折り返して第2の素材と重ね合わせた状態のマスク本体部の左右の端部を別の端末処理素材で包囲して該端末処理素材とマスク本体部の各素材とを接合し、該端末処理部材によりひも状部材の取付部位を形成すると共にマスク本体部の左右の端部を処理する端部処理工程と、
前記端部処理工程で形成されたマスク本体部の両側のひも状部材の取付部位箇所にゴムひも等のひも状部材を取り付けるひも状部材取付工程と、
からなるマスクの製造方法。
【請求項2】
顔面の口部と該口部の上下部位を少なくとも被う横長形状のマスク本体部と、耳に掛けるために該マスク本体部の横長形状の長尺方向の両側に装着されるゴムひも等のひも状部材とを備えたマスクの製造方法であって、
鼻部等の口部よりも上の顔面の部位を被うために横長形状に形成され、該横長形状の上下方向の少なくとも一方の端縁の中央が上に突出した形状となっている第1の素材と、口部を被うために横長形状に形成され、該横長形状の上端縁と下端縁の中央が上下に突出した形状となっている第2の素材と、口部よりも下の顔面の部位を被うために横長形状に形成され、該横長形状の上下方向の少なくとも一方の端縁の中央が下に突出した形状となっている第3の素材とのマスク本体部を構成する3つの素材を、それぞれ分離した別体の素材として形成するマスク本体部の素材形成工程と、
前記マスク本体部の素材形成工程で形成した第1の素材と第2の素材を、第1の素材の上に突出した形状の端縁と第2の素材の上端縁とを一致させた状態として重ね合わせる上端縁重ね合わせ工程と、
前記上端縁重ね合わせ工程で重ね合わせた第1の素材と第2の素材の上端縁近傍を接合する上端縁接合工程と、
前記マスク本体部の素材形成工程で形成した第3の素材と第2の素材を、第3の素材の下に突出した形状の端縁と第2の素材の下端縁とを一致させた状態として重ね合わせる下端縁重ね合わせ工程と、
前記下端縁重ね合わせ工程で重ね合わせた第3の素材と第2の素材下端縁近傍を接合する下端縁接合工程と、
前記上端縁接合工程及び下端縁接合工程で接合した箇所をそれぞれ折り返し線として前記第1の素材と第3の素材を折り返す折り返し工程と、
前記折り返し工程で第1の素材と第3の素材を折り返して第2の素材と重ね合わせた状態のマスク本体部の左右の端部を別の端末処理素材で包囲して該端末処理素材とマスク本体部の各素材とを接合し、該端末処理部材によりひも状部材の取付部位を形成すると共にマスク本体部の左右の端部を処理する端部処理工程と、
前記端部処理工程で形成されたマスク本体部の両側のひも状部材の取付部位箇所にゴムひも等のひも状部材を取り付けるひも状部材取付工程と、
からなるマスクの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のマスクの製造方法であって、
前記上端縁重ね合わせ工程又は下端縁重ね合わせ工程の後で、前記それぞれ接合した箇所を別の素材で包囲して接合し処理する接合箇所処理工程を有するマスクの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−345996(P2006−345996A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173864(P2005−173864)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(391044166)玉川衛材株式会社 (10)
【Fターム(参考)】