説明

マスクブランクおよび多階調マスク並びにこれらの製造方法

【課題】精度や品質を犠牲にすることなく、コストの低減が図れるマスクブランクおよび多階調マスク並びにこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】透光性基板上に、透光部、第1半透光部、第2半透光部および遮光部からなる転写パターンを備える多階調マスクの作製に用いられるマスクブランクであって、
透光性基板上に、タンタル、ハフニウム、およびジルコニウムから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料からなる金属系半透光膜と、金属およびケイ素を含有する材料からなるシリサイド系半透光膜と、クロムを含有する材料からなる遮光膜とを順に積層した構造からなることを特徴とするマスクブランク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FPD(Flat Panel Display)等の製造に用いられる多階調マスク、この多階調マスクブランクの作製に用いられる多階調マスクブランク並びにこれらの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
FPD等の製造に用いられる大型マスクは、FPD等の大型化等に伴い大型マスクとして開発され、開発当初は、透光部、遮光部の2階調を有するバイナリ(Binary)型マスクが開発され、実用化されている。
続いて、FPD製造プロセスの工程数低減を目的として、透光部、半透光部、遮光部の3階調を有する多階調(マルチトーン:Multi-Tone)型マスクが開発され、これも実用化されている。
多階調(Multi-Tone)型マスクの作製は、成膜とエッチングを交互に行うことで3階調パターンを形成する方法(いわゆる後乗せタイプ)と、石英(QZ)基板上に互いにエッチング選択性を有する材料で形成された半透光膜および遮光膜が積層した多階調(3階調)マスクブランクを用いる方法(いわゆる先付けタイプ)が用いられている(特許文献1)。
先付けタイプのプロセスの場合、成膜装置を使用することなくマスクブランクからマスクを作製可能である。
【0003】
近年、さらなるFPD製造プロセスの工程数低減を目的とした、4階調マスクが提案されている。4階調マスクは、透光部、第1半透光部、第1半透光部よりも透過率の低い第2半透光部、遮光部の4種類の異なる透過率を有する部分が1枚のマスクに存在するものである。
先付けタイプの製造方法の場合、石英基板上に第1半透光膜、第2半透光膜、遮光膜が積層したマスクブランク(4階調マスクブランク)を製造する必要がある。第1半透光膜、第2半透光膜、遮光膜を形成する各材料間で互いにエッチング選択性を確保することは難しい。特に、マスクブランクから多階調マスクを製造する製造プロセスではウェットエッチングによるエッチングが主流となっているが、ウェットエッチングでエッチング選択性を確保することはより困難である。また、クロム以外の金属を含む膜同士でエッチング選択性を得られるプロセスを実現することは難しい。例えば、タンタルを含む膜と金属とケイ素を含む膜(例えばMoSi系膜)との間でエッチング選択性を得ることは難しい。これは、タンタルを含む膜のエッチング液としてアルカリ(NaOH、KOH等)が使われるが、アルカリ(NaOH、KOH等)は金属とケイ素を含む膜(例えばMoSi系膜)を浸食(溶解)するので、これらの膜の間で浸食(溶解)に伴う品質低下が生じない程度(レベル)のエッチング選択性を得ることは難しい。また、エッチング液としてアルカリ(NaOH、KOH等)を使う場合は、石英基板とのエッチング選択性がさほど高くはないので、基板表面の荒れが顕著になるという課題もある。このような事情から、タンタルなどの金属を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である膜と金属とケイ素を含む膜(例えばMoSi系膜)とを互いに接して積層した構成を有する先付けタイプの4階調マスクブランクは提案されていない。
【0004】
4階調マスクの製造方法については、種々の方法が提案されているが、上記の事情から、後乗せタイプがほとんどである。特許文献2では、基板/第1半透光膜(CrON半透過膜)/第2半透光膜(TiONストッパー層)/遮光膜(Cr遮光層/CrON反射防止層)の構成の先付けタイプの4階調マスクブランクを開発し出願を行っているが、この4階調マスクブランクは、クロム以外の金属を含む膜同士でエッチング選択性を得られるプロセスを実現するものではなく、クロム以外の金属を含む膜同士を積層した構成の4階調マスクブランクを提供するものではない。このような膜構成の場合、透光部のすぐ隣に、第1半透過膜、第2半透過膜、遮光膜が積層してなる遮光部が配置されるマスクパターンを高精度に形成することが難しい。
【0005】
さらに、FPD等の製造に用いられる大型マスクおよびマスクブランクの製造では、コストの低減と、精度や品質の追求の両立が要求される。例えば、コストの低減が図れる手法であっても、精度や品質が犠牲になる手法では、実際の製造への適用は難しい。精度や品質の追求は、今後のFPD用大型マスクブランク及びマスクの高精度化および高品質化を図る上で重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国登録特許公報10−0850519号公報
【特許文献2】特開2009−258357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の事情を考慮してなされたものであり、上記の課題を克服でき、しかも、精度や品質を犠牲にすることなく、コストの低減が図れる多階調マスクブランクおよび多階調マスク並びにこれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
透光性基板上に第1半透光膜、第2半透光膜、遮光膜が積層した先付けタイプのマスクブランク(4階調マスクブランク)から多階調マスクを製造する製造プロセスを実現しようとする場合、第1半透光膜、第2半透光膜、遮光膜を形成する各材料間で互いにエッチング選択性を確保することは難しいという課題、並びに、特にウェットエッチングでエッチング選択性を確保することはより困難であるという課題、があるが、本発明者は、積層する各材料およびそれらの積層の順番並びにエッチャントを工夫することによって、上記の課題を克服できることを見出し、しかも、精度や品質を犠牲にすることなく、コストの低減が図れる多階調マスクブランクおよび多階調マスク並びにこれらの製造方法を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
透光性基板上に、透光部、第1半透光部、第2半透光部および遮光部からなる転写パターンを備える多階調マスクの作製に用いられるマスクブランクであって、
透光性基板上に、タンタル、ハフニウム、およびジルコニウムから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料からなる金属系半透光膜と、金属およびケイ素を含有する材料からなるシリサイド系半透光膜と、クロムを含有する材料からなる遮光膜とを順に積層した構造からなることを特徴とするマスクブランク。
(構成2)
前記金属系半透光膜は、タンタルを含有し、ケイ素を実質的に含有しない材料からなることを特徴とする構成1記載のマスクブランク。
(構成3)
前記シリサイド系半透光膜を構成する材料に含有する前記金属は、モリブデンであることを特徴とする構成1または2のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成4)
前記遮光膜は、クロムと窒素とを含有する材料からなることを特徴とする構成1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成5)
前記遮光膜は、複数層の積層構造であり、前記遮光膜の少なくとも前記シリサイド系半透光膜に接する層は窒素を含有する材料からなることを特徴とする構成1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成6)
透光性基板上に、透光部、第1半透光部、第2半透光部および遮光部からなる転写パターンを備える多階調マスクであって、
第1半透光部は、タンタル、ハフニウム、およびジルコニウムから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料からなる金属系半透光膜で形成され、
第2半透光部は、透光性基板側から、前記金属系半透光膜と、金属およびケイ素を含有する材料からなるシリサイド系半透光膜とを順に積層して形成され、
遮光部は、前記金属系半透光膜と、前記シリサイド系半透光膜と、クロムを含有する材料からなる遮光膜とを順に積層して形成されている
ことを特徴とする多階調マスク。
(構成7)
前記金属系半透光膜は、タンタルを含有し、ケイ素を実質的に含有しない材料からなることを特徴とする構成6記載の多階調マスク。
(構成8)
前記シリサイド系半透光膜を構成する材料に含有する前記金属は、モリブデンであることを特徴とする構成7記載の多階調マスク。
(構成9)
透光性基板上に、透光部、第1半透光部、第2半透光部および遮光部からなる転写パターンを備える多階調マスクの製造方法であって、
透光性基板上に、タンタル、ハフニウム、およびジルコニウムから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料からなる金属系半透光膜と、金属およびケイ素を含有する材料からなるシリサイド系半透光膜と、クロムを含有する材料からなる遮光膜とを順に積層したマスクブランクを準備する工程と、
前記遮光膜に透光部のパターンを形成する工程と、
前記遮光膜に形成された透光部のパターンをマスクとして、前記シリサイド系半透光膜および前記金属系半透光膜を、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質によってエッチングし、透光部のパターンを形成する工程と、
前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程と、
前記シリサイド系半透光膜に第2半透光部のパターンを形成する工程と
を有することを特徴とする多階調マスクの製造方法。
(構成10)
透光性基板上に、透光部、第1半透光部、第2半透光部および遮光部からなる転写パターンを備える多階調マスクの製造方法であって、
透光性基板上に、タンタル、ハフニウム、およびジルコニウムから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料からなる金属系半透光膜と、金属およびケイ素を含有する材料からなるシリサイド系半透光膜と、クロムを含有する材料からなる遮光膜とを順に積層したマスクブランクを準備する工程と、
前記遮光膜に透光部のパターンを形成する工程と、
前記遮光膜に形成された透光部のパターンをマスクとして、ウェットエッチングによって前記シリサイド系半透光膜に透光部のパターンを形成する工程と、
前記遮光膜に形成された透光部のパターンをマスクとして、前記金属系半透光膜を、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質によってエッチングし、透光部のパターンを形成する工程と、
前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程と、
前記シリサイド系半透光膜に第2半透光部のパターンを形成する工程と
を有することを特徴とする多階調マスクの製造方法。
(構成11)
前記遮光膜に透光部のパターンを形成する工程は、遮光膜上に形成された透光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとしたウェットエッチングによって行われることを特徴とする構成9または10のいずれかに記載の多階調マスクの製造方法。
(構成12)
前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程は、遮光膜上に形成された遮光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとしたウェットエッチングによって行われることを特徴とする構成9または10のいずれかに記載の多階調マスクの製造方法。
(構成13)
透光性基板上に、透光部、第1半透光部、第2半透光部および遮光部からなる転写パターンを備える多階調マスクの製造方法であって、
透光性基板上に、タンタル、ハフニウム、およびジルコニウムから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料からなる金属系半透光膜と、金属およびケイ素を含有する材料からなるシリサイド系半透光膜と、クロムを含有する材料からなる遮光膜とを順に積層したマスクブランクを準備する工程と、
前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程と、
透光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとして、前記シリサイド系半透光膜および前記金属系半透光膜を、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質によってエッチングし、透光部のパターンを形成する工程と、
前記シリサイド系半透光膜に第2半透光部のパターンを形成する工程と
を有することを特徴とする多階調マスクの製造方法。
(構成14)
透光性基板上に、透光部、第1半透光部、第2半透光部および遮光部からなる転写パターンを備える多階調マスクの製造方法であって、
透光性基板上に、タンタル、ハフニウム、およびジルコニウムから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料からなる金属系半透光膜と、金属およびケイ素を含有する材料からなるシリサイド系半透光膜と、クロムを含有する材料からなる遮光膜とを順に積層したマスクブランクを準備する工程と、
前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程と、
透光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとして、ウェットエッチングによって前記シリサイド系半透光膜に透光部のパターンを形成する工程と、
透光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとして、前記金属系半透光膜を、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質によってエッチングし、透光部のパターンを形成する工程と、
前記シリサイド系半透光膜に第2半透光部のパターンを形成する工程と
を有することを特徴とする多階調マスクの製造方法。
(構成15)
前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程は、遮光膜上に形成された遮光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとしたウェットエッチングによって行われることを特徴とする構成13または14のいずれかに記載の多階調マスクの製造方法。
(構成16)
前記シリサイド系半透光膜に第2半透光部のパターンを形成する工程は、第1半透光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとしたウェットエッチングによって行われることを特徴とする構成9から15のいずれかに記載の多階調マスクの製造方法。
(構成17)
透光性基板上に、透光部、第1半透光部、第2半透光部および遮光部からなる転写パターンを備える多階調マスクの製造方法であって、
透光性基板上に、タンタル、ハフニウム、およびジルコニウムから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料からなる金属系半透光膜と、金属およびケイ素を含有する材料からなるシリサイド系半透光膜と、クロムを含有する材料からなる遮光膜とを順に積層したマスクブランクを準備する工程と、
前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程と、
遮光部および第2半透光部を覆うパターンを有するレジスト膜をマスクとして、ウェットエッチングによって前記シリサイド系半透光膜に第2半透光部のパターンを形成する工程と、
透光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとして、前記金属系半透光膜を、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質によってエッチングし、透光部のパターンを形成する工程と、
を有することを特徴とする多階調マスクの製造方法。
(構成18)
前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程は、遮光膜上に形成された遮光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとしたウェットエッチングによって行われることを特徴とする構成17に記載の多階調マスクの製造方法。
(構成19)
前記金属系半透光膜は、タンタルを含有し、ケイ素を実質的に含有しない材料からなることを特徴とする構成9から18のいずれかに記載の多階調マスクの製造方法。
(構成20)
前記シリサイド系半透光膜を構成する材料に含有する前記金属は、モリブデンであることを特徴とする構成9から19のいずれかに記載の多階調マスクの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のマスクブランクによれば、透光性基板上に、タンタル、ハフニウム、およびジルコニウムから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料からなる金属系半透光膜と、金属およびケイ素を含有する材料からなるシリサイド系半透光膜と、クロムを含有する材料からなる遮光膜とを順に積層した構造としたことにより以下の効果がある。
すなわち、透光部、金属系半透光膜のパターンからなる第1半透光部、金属系半透光膜のパターンとシリサイド系半透光膜パターンの積層構造からなる第2半透光部、金属系半透光膜のパターンとシリサイド系半透光膜パターンと遮光膜パターンの積層構造からなる遮光部を有する多階調マスクを、マスク作製プロセスの途中で薄膜成膜工程を入れることなく作製することができるマスクブランクを供給することができる。
また、多階調マスクの作製プロセスは、ClFガス等の非励起状態の物質によるノンプラズマエッチングとウェットエッチングだけで済むため、プラズマを使用するドライエッチングを必要とせず、大幅なコスト低減を図ることができる。
さらに、遮光膜と第1半透光部を形成する金属系半透光膜が互いにエッチング選択性を有する材料で形成できるため、透光部に隣接して遮光部を形成しても、遮光部の側壁形状を高精度に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る4階調マスクの製造工程の一例を示す工程図である。
【図2】本発明に係る4階調マスクの製造工程の別の一例を示す工程図である。
【図3】本発明に係る4階調マスクの製造工程の別の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のマスクブランクは、透光性基板上に、透光部、第1半透光部、第2半透光部および遮光部からなる転写パターンを備える多階調マスクの作製に用いられるマスクブランクであって、
透光性基板上に、タンタル、ハフニウム、およびジルコニウムから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料からなる金属系半透光膜と、金属およびケイ素を含有する材料からなるシリサイド系半透光膜と、クロムを含有する材料からなる遮光膜とを順に積層した構造からなることを特徴とする(構成1)。
【0013】
構成1記載の発明によれば、タンタル等の前記元素を含む膜と金属とケイ素を含む膜(例えばMoSi系膜)とを互いに接して積層した構成を有する先付けタイプの4階調マスク作製用のマスクブランクを初めて提供できる。このマスクブランクは、その加工プロセスを開発することにより、初めて提供可能となったものである。
構成1記載の発明によれば、金属系半透光膜およびシリサイド系半透光膜を有し、プラズマを発生させプラズマを利用してエッチングを行う装置(例えば、プラズマによりガスをイオン化・ラジカル化してエッチングする反応性イオンエッチング、などのプラズマを利用するドライエッチング装置)を使用することなく従って低コストで加工可能で、しかも、精度や品質を犠牲にすることなく4階調マスクを作製できる多階調マスクブランクを提供できる。
【0014】
構成1記載の発明によれば、下記の具体例に示すように、積層する各材料およびそれらの積層の順番と、エッチャントを工夫することによって、プラズマを利用するドライエッチング装置などを使用することなく多階調マスクを作製できるので、プラズマを利用するドライエッチング装置などを使用する場合に比べ、コストの低減が図れる。
プラズマを利用するドライエッチング装置などを使用する場合は、装置が非常に大掛かりになり、非常に高価な装置を導入しなければならない。
エッチャントの工夫の具体例は、クロムを含有する材料からなる遮光膜のエッチングプロセスは、例えば、クロムのエッチング液(例えば硝酸第2セリウムアンモニウムと過塩素酸を含む溶液)を使用し、
金属系半透光膜およびシリサイド系半透光膜の連続エッチングは、例えば、ClFガスによるノンプラズマエッチングを使用し、
シリサイド系半透光膜(例えばMoSi系膜)のみのエッチングは、例えば、シリサイド系半透光膜のエッチング液(例えばフッ化水素アンモニウムと過酸化水素を含む溶液)を使用する。
エッチャントの詳細については、後述する。
【0015】
なお、本発明では、後述するように、クロムを含有する材料からなる遮光膜のパターンをマスクとして、金属系半透光膜およびシリサイド系半透光膜を、ClFガス等によるノンプラズマエッチング(非励起状態の物質(ガス)を用いたエッチング)によって、連続してエッチングする工程を有する点、に大きな特徴がある。
【0016】
本発明においては、エッチャントが異なると、以下の不都合がある。
(1)金属系半透光膜のエッチャントにアルカリ(NaOH、KOH等)使用した場合、アルカリ(NaOH、KOH等)はシリサイド系半透光膜(例えばMoSi系膜)を浸食(溶解)する(例えばMoSi系膜のサイドエッチングが生じる)ので、これらの膜の間で浸食(溶解)に伴う品質低下が生じない程度(レベル)のエッチング選択性を得ることは難しい。また、アルカリ(NaOH、KOH等)使用によって、石英基板の表面が浸食(溶解)され、石英基板の荒れが顕著になるので、透光部の精度低下の原因となり透光部の高品質化の障害となる。
(2)本発明の膜構成のマスクブランクでは、プラズマを利用するドライエッチングのみによって、4階調マスクを作製することは難しい。これは、たとえば、タンタルを主成分とする金属系半透光膜は、塩素系ガス、フッ素系ガスのどちらのプラズマを用いるドライエッチングでも実質的にエッチング可能である。これに対し、シリサイド系半透光膜も、酸素や窒素の含有量が少ない場合、塩素系ガス、フッ素系ガスのどちらのプラズマを用いるドライエッチングでも実質的にエッチング可能である。このため、プラズマを用いるドライエッチングで透光部を形成することはできても、透光性基板上に金属系半透光膜のみを残すパターンである第1半透光部を金属系半透光膜にダメージを与えることなく形成することは困難である。
(3)FPD等の製造に用いられる大型マスクは、LSI等の製造に用いられる転写用マスクに比べてサイズが非常に大きい。プラズマを発生させる装置やチャンバ内をプラズマが発生可能な高真空にするための真空引き装置などが大型化するため、プラズマを利用するドライエッチング装置などの使用はコスト高となる。
上述した不都合があると、今後のFPD用大型マスクブランク及び多階調マスクの高精度化および高品質化の障害となる。
【0017】
本発明においては、各層の積層の順番が異なると、以下の不都合がある。
(1)金属系半透光膜と接して、その上層にクロム系遮光膜を積層する態様の場合、金属系半透光膜は、クロムのエッチング液によって半透光膜の表面に浸食によるダメージを受けやすく、半透光膜の透過率の制御が難しくなる。
これに対し、本発明では、シリサイド系半透光膜は、その上層のクロム系遮光膜のエッチング液に対して耐性が高いので、エッチング選択性を確保できる。
(2)シリサイド系半透光膜(例えばMoSi系膜)と接して、その上層に金属系半透光膜を積層する態様の場合、シリサイド系半透光膜(例えばMoSi系膜)は、金属系半透光膜のエッチング液(NaOH、KOH等)によってシリサイド系半透光膜の表面に浸食によるダメージを受け、半透光膜の透過率の制御が難しくなる。
【0018】
本発明において、金属系半透光膜は、前記の材料の中でも、タンタル、タンタルとハフニウム、タンタルとジルコニウム、またはタンタルとハフニウムとジルコニウムを含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料が、シリサイド系半透光膜のウェットエッチングに対する耐性の観点でより好ましい。本発明において、金属系半透光膜は、前記材料以外では、チタン、バナジウム、ニオブから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料も、前記材料よりエッチング選択性は若干低いが十分適用可能である。さらに、タングステン、亜鉛、モリブデン、イットリウム、ロジウム、ランタン、パラジウム、鉄、アルミニウム、ゲルマニウムおよびスズから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料も、ウェットエッチング液の調整等により、金属系半透光膜に適用することは可能である。本発明において、金属系半透光膜の材料は、ケイ素の含有量が30原子%以下である必要がある。シリサイド系半透過膜をエッチングするときに用いるウェットエッチング液に対するエッチング耐性を確保するためである。より厳しいパターンのCD精度が求められる場合には、より高いエッチング耐性が求められるので、ケイ素の含有量を10原子%以下とすることが好ましい。さらに、望ましくは、ケイ素を実質的に含有しない材料(ケイ素の含有量が5%以下であることをいい、成膜時のコンタミ等で含有してしまう程度を許容し、積極的には含有させない)である。
【0019】
本発明において、前記金属性系半透光膜は、所望の透過率を有するように、その組成や膜厚等が設定される。この金属系半透光膜は、透光部の露光光に対する透過率を100%とした場合に透過率20〜80%程度(好ましくは40〜60%)の半透過性が得られるものが好ましい。FPD等の製造プロセスにおける多階調マスクを用いた被転写体(レジスト膜等)へのパターン転写に用いられる露光光は、超高圧水銀ランプを光源とする多色露光である場合が多い。超高圧水銀ランプの光強度の大きい露光波長帯域であるi線(365nm)からg線(436nm)にわたる波長領域において、上記の透過率に調整することが望ましい。また、この波長領域における透過率の変化が小さい(波長依存性が小さい、フラットな分光特性を有する)ことが望ましい(例えば、5%以下であることが好ましい)。なお、以降に示されるシリサイド系半透過膜や遮光膜の透過率や光学濃度についても、上記多色露光を対象とすることが好ましく、これらに望まれる光学特性は、金属系半透光膜と同様である。
【0020】
本発明において、前記金属系半透光膜のパターニング(エッチング)は、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質(ガス)によって行うことができる。
透光性基板である合成石英ガラスやソーダライムガラスは、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質(ガス)に対して、十分なエッチング耐性を有する。
【0021】
本発明において、金属およびケイ素を含有する材料からなるシリサイド系半透光膜は、ウェットエッチングで高精度のパターン形成できる利点がある。
本発明において、前記シリサイド系半透光膜を構成する材料に含有する前記金属としては、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、ランタン(La)、パラジウム(Pd)、バナジウム(V)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)や、これらの元素を含む合金、又は上記元素や上記合金を含む材料、などが挙げられる。
具体的には、例えば、金属M及びケイ素(MSi、M:Mo、Ni、W、Zr、Ti、Hf、Zn、Y、Rh、Nb、La、Pd、V、Al、Ge、Sn、Ta等の遷移金属)、炭化された金属及びケイ素(MSiC)、窒化された金属及びケイ素(MSiN)、などが挙げられる。
【0022】
シリサイド系半透光膜に酸素を含有させるとシリサイド系半透光膜をウェットエッチングする際に用いるエッチング液に対するエッチングレートが大きく低下するため好ましくない。シリサイド系半透光膜は、実質的に酸素を含有しない材料を用いることが好ましい。ここで、実質的に酸素を含有しないとは、シリサイド系半透光膜中の酸素含有量が5原子%未満であることをいい、成膜時のコンタミ等で含有してしまう程度を許容し、積極的には含有させないことがより好ましい。
【0023】
シリサイド系半透光膜は、膜中の金属の含有量[原子%]を金属とケイ素の合計含有量[原子%]で除した比率(以下、M/(M+Si)比率という。)を40%以下にすることが望ましい。M/(M+Si)比率が多すぎると、シリサイド系半透光膜をウェットエッチングする際に用いるエッチング液に対するエッチングレートが低下し、金属系半透光膜とのエッチング選択性が低下する。特に、前記金属が遷移金属であり、かつシリサイド系半透光膜中に酸素や窒素が実質的に含有されていない場合、M/(M+Si)比率は33%以下であると好ましい。遷移金属の膜中での安定性が高まるためである。また、シリサイド系半透光膜の薄膜化の観点から、膜中のM/(M+Si)比率は9%以上であることが好ましい。
【0024】
本発明において、前記シリサイド系半透光膜は、金属系半透光膜との積層構造で所望の透過率を有するように、その組成や膜厚等が設定される。このシリサイド系半透光膜は、透光部の透過率を100%とした場合に金属系半透光膜との積層構造で、透過率10〜60%程度(好ましくは20〜40%)の半透過性が得られるものが好ましい。
本発明において、前記シリサイド系半透光膜のパターニング(エッチング)は、弗化水素酸、珪弗化水素酸、弗化水素アンモニウムから選ばれる少なくとも一つの弗素化合物と、過酸化水素、硝酸、硫酸から選ばれる少なくとも一つの酸化剤とを含むエッチング液を用いたウェットエッチングによって行うことができる。
本発明において、前記シリサイド系半透光膜のパターニング(エッチング)は、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質(ガス)によって行うことができる。
【0025】
本発明において、前記クロムを含有する材料からなる遮光膜は、単層構造、複数層構造、を含む。
前記遮光膜は、反射防止層を含む態様であってもよい。
前記遮光膜は、組成傾斜膜を含む。
前記遮光膜は、透光性基板側から、遮光層、表面反射防止層を順に積層した2層構造としてもよい。
前記遮光膜は、透光性基板側から、裏面反射防止層、遮光層、表面反射防止層を順に積層した3層構造としてもよい。
本発明において、クロムを含有する材料としては、クロム単体(Cr)が含まれる。また、クロムを含有する材料としては、クロム(Cr)に窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)、水素(H)、ヘリウム(He)などの元素を一以上含有する材料が含まれる。
【0026】
前記遮光膜を形成する材料は、ケイ素を実質的に含有しないことが好ましい。ケイ素を実質的に含有しないとは、金属系半透光膜中の含有量が5%以下であることをいい、成膜時のコンタミ等で含有してしまう程度を許容し、積極的には含有させないことがより好ましい。遮光膜中のケイ素の含有量が多くなると、非励起状態のフッ素系化合物の物質に対するエッチング耐性が低下してしまう。遮光膜とシリサイド系半透光膜や金属系半透光膜との間で、非励起状態のフッ素系化合物の物質に対するエッチング選択性を十分に確保することが難しくなり、マスクブランクから高精度の多階調マスクを作製することが困難になる。
【0027】
本発明において、クロムを含有する材料からなる遮光膜のエッチング液としては、硝酸第2セリウムアンモニウムと過塩素酸を含むエッチング液が挙げられる。
本発明において、前記クロムを含有する材料からなる遮光膜は、遮光膜と金属系半透光膜とシリサイド系半透光膜の積層膜で、露光光に対する十分な光学濃度(例えばOD3.0以上)を有するように、その組成や膜厚等が設定される。
【0028】
本発明において、金属系半透光膜は、タンタルを含有し、ケイ素を実質的に含有しない材料からなることが好ましい(構成2)。
本発明において、金属系半透光膜は、タンタルからなる材料、タンタルを含む材料、タンタルと窒素とを含む材料、タンタルと酸素とを含む材料(いずれもケイ素を実質的に含有しない)などで構成できる。
具体的には、タンタル単体(Ta)、タンタル窒化物(TaN)、タンタル酸化物(TaO)、タンタル酸窒化物(TaNO)、タンタルとホウ素とを含む材料(TaB、TaBN、TaBO、TaBONなど)、タンタルとゲルマニウムとを含む材料(TaGe、TaGeN、TaGeO、TaGeONなど)、タンタルとゲルマニウムと珪素とを含む材料(TaGeSiB、TaGeSiBN、TaGeSiBO、TaGeSiBONなど)、等が挙げられる。
【0029】
本発明において、シリサイド系半透光膜を構成する材料に含有する前記金属は、モリブデンであることが好ましい(構成3)。
モリブデンとケイ素を含有する半透光膜(モリブデンシリサイド系の半透光膜)はクロムのエッチング液に対して耐性が高い(ほとんどエッチングされない)ので、遮光膜であるCr膜をウェットエッチングするプロセスを採用する場合、有利である。
また、モリブデンシリサイド系の半透過膜は、前記のシリサイド系半透過膜をウェットエッチングする際に用いられるエッチング液に対するエッチングレートが高く、その直下の金属系半透過膜に対する影響を最小限に抑えることができる。
【0030】
本発明において、MoSiN半透光膜は、MoSi半透光膜に比べ、所定の透過率得るための膜厚が相対的に厚い(例えば約20〜35nm)ため、膜厚による透過率調整及び透過率制御が容易である。
【0031】
本発明において、前記クロムを含有する材料からなる遮光膜は、クロムと窒素とを含有する材料からなることが好ましい(構成4)。
本発明において、クロムと窒素とを含有する材料からなる遮光膜は、クロム(Cr)に窒素(N)を単独で含有する態様(CrN)の他、クロム(Cr)と窒素(N)に加え、酸素(O)、炭素(C)、水素(H)などの元素を一以上含有する態様(例えばCrNO、CrNC、CrNCH、CrNCHO、CrCONなど)が含まれる。
なお、クロムと窒素とを含有する材料からなる遮光膜(例えばCrN、CrCN,CrON)では、ウェットエッチングレートがCrに比べ大きくなるので、好ましい。また、CrONに比べ、CrNでは、膜中にOを含まないため、ウェットエッチングレートが大きくなるので、好ましい。遮光膜のウェットエッチングレートが大きいことが好ましい理由は、第1に、遮光膜のエッチングレートが速くエッチング時間が短いため、遮光膜をクロムのエッチング液でウェットエッチングする際に、その下層の前記シリサイド系半透光膜の表面に与える影響を極力低減できるので好ましいからである。第2に、FPD用大型マスクブランクでは、遮光膜のウェットエッチング時間が長くなると、遮光膜パターンの断面形状が悪化し、即ち形状制御性が悪化し、結果的にCD精度が悪化する原因となるからである。第3に、遮光膜に形成されるパターンには、パターン密度の低い比較的疎なパターン部分と比較的高い密なパターン部分があるが、エッチングレートが遅くなると、両パターン部分間のエッチング終了までの時間差が大きくなり、遮光膜パターンの面内CD均一性が低下する原因となるからである。
【0032】
本発明において、前記クロムを含有する材料からなる遮光膜は、複数層の積層構造であり、前記遮光膜の少なくともシリサイド系半透光膜に接する層は窒素を含有する材料からなることが好ましい(構成5)。
このような構成によると、前記遮光膜の少なくとも前記シリサイド系半透光膜に接する層のエッチングレートが速い。ウェットエッチングの場合、等方性の傾向が強く、エッチングで除去されるスペースパターンの中央側が先にエッチングが終了(下層のシリサイド系半透光膜が露出する)し、パターンエッジ部分が遅く終了し、スペースパターン全体のエッチングが終了することが多い。この場合、エッチングレートが速いと、シリサイド系半透光膜の表面が遮光膜のウェットエッチングに用いるエッチング液にさらされる時間がより短くなる。これにより、遮光膜のウェットエッチングによってシリサイド系半透光膜の表面に与える影響をより小さくすることができる。
また、このような構成によると、前記遮光膜と前記シリサイド系半透光膜との密着性が向上するので好ましいからである。
複数層構造の場合、各層の組成が各層毎に異なる積層膜構造や、膜厚方向に連続的に組成が変化した膜構造とすることができる。
本発明において、多層構造の遮光膜は、例えば、透光性基板側から窒化クロム膜(裏面反射防止膜)、炭化クロム膜(遮光層)、窒化酸化クロム膜(表面反射防止膜)の材料で構成できる。
【0033】
本発明において、前記遮光膜は、複数層の積層構造であり、各層がクロムと窒素とを含む材料からなる複数層構造とすることができる。
複数層構造の場合、各層がクロムと窒素とを含む材料からなることによって、あるいは、遮光膜の膜厚方向の全域又は略全域にクロム及び窒素が含まれることによって、複数層構造の遮光膜をクロムのエッチング液でウェットエッチングする際に、遮光膜のエッチングレートが相対的に速くエッチング時間が短いため、その下層の前記シリサイド系半透光膜に与える影響を極力抑えることができる。
なお、遮光膜自体又は遮光膜の一部を構成する層が、クロム酸化膜系の膜(例えばCrO膜など)であると、膜中にOを含むため(膜中のOが多いため)、ウェットエッチングレートがCrに比べ小さくなる。
【0034】
本発明において、クロムと窒素とを含む材料からなる遮光膜は、クロムのエッチング液に対するウェットエッチングレートが、クロム単体(Cr)のウェットエッチングレートに対し、1.3倍〜2倍程度ウェットエッチングレートが速くなるように、クロムに窒素を含有させた膜であることが好ましい。
また、本発明においては、クロムのエッチング液に対するエッチング速度が2〜3.5nm/秒の範囲内となるように、クロムに窒素を含有させた膜であることが好ましい。
【0035】
本発明において、クロムと窒素とを含む材料からなる遮光膜における窒素の含有量は、15〜60原子%の範囲が好適である。窒素の含有量が15原子%未満であると、ウェットエッチング速度を高める効果が得られにくい。一方、窒素の含有量が60原子%を超えると、超高圧水銀灯から放射されるi線からg線に渡る波長帯域における吸収係数が小さくなるため、所望の光学濃度を得るために膜厚を厚くする必要が生じてしまい好ましくない。
【0036】
本発明において、基板としては、合成石英、ソーダライムガラス、無アルカリガラスなどの露光光に対して透光性のある基板が挙げられる。
【0037】
本発明において、FPDデバイスを製造するためのマスクブランク及び多階調マスクとしては、LCD(液晶ディスプレイ)、プラズマディスプレイ、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイなどのFPDデバイスを製造するためのマスクブランク及び多階調マスクが挙げられる。
ここで、LCD製造用マスクには、LCDの製造に必要なすべてのマスクが含まれ、例えば、TFT(薄膜トランジスタ)、特にTFTチャンネル部やコンタクトホール部、低温ポリシリコンTFT、ITOなどの電極、カラーフィルタ、反射板(ブラックマトリクス)、などを形成するためのマスクが含まれる。他の表示デバイス製造用マスクには、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、プラズマディスプレイなどの製造に必要なすべてのマスクが含まれる。
【0038】
本発明の多階調マスクの製造方法は、透光性基板上に、透光部、第1半透光部、第2半透光部および遮光部からなる転写パターンを備える多階調マスクの製造方法であって、
透光性基板上に、タンタル、ハフニウム、およびジルコニウムから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料からなる金属系半透光膜と、金属およびケイ素を含有する材料からなるシリサイド系半透光膜と、クロムを含有する材料からなる遮光膜とを順に積層したマスクブランクを準備する工程と、
前記遮光膜に透光部のパターンを形成する工程と、
前記遮光膜に形成された透光部のパターンをマスクとして、前記シリサイド系半透光膜および前記金属系半透光膜を、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質によってエッチングし、透光部のパターンを形成する工程と、
前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程と、
前記シリサイド系半透光膜に第2半透光部のパターンを形成する工程と
を有することを特徴とする(構成9)。
【0039】
構成9記載の発明の多階調マスクの製造方法は、上記構成1〜5で説明したマスクブランクを準備する工程を有する。このマスクブランクについては上記構成1〜5で説明したので、説明を省略する。
なお、構成9記載の発明では、前記遮光膜に形成された透光部のパターンをマスクとして、前記シリサイド系半透光膜および前記金属系半透光膜を、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質によって連続してエッチングし、透光部のパターンを形成する工程、に大きな特徴があり、この工程に関係する積層する各材料およびそれらの積層の順番並びにエッチャントに関する工夫、に従来技術にはない大きな特徴がある。
なお、構成9記載の発明では、前記遮光膜に透光部のパターンを形成する工程、並びに、前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程は、それぞれ、プラズマを利用するドライエッチング装置などを使用してエッチングすることも可能であり、この場合、ウェットエッチングする場合に比べ精度や品質の低下は起こらない。しかし、これらの工程で、プラズマを利用するドライエッチング装置などを使用する場合においては、これらの工程でウェットエッチングを使用する場合に比べ、コストが高くなる。また、前記シリサイド系半透光膜に第2半透光部のパターンを形成する工程では、前記に示したように、その下層の金属系半透光膜との間でエッチング選択性を確保することが難しく、ドライエッチングの適用は困難である。
【0040】
本発明において、前記遮光膜に透光部のパターンを形成する工程は、例えば、4階調マスクの透光部2を開口領域とする形状に形成される第1レジストパターン40aをマスクにして、クロムを含む材料のエッチング液を用い、クロムを含有する材料からなる遮光膜30をウェットエッチングすることにより、遮光膜30に透光部のパターン30a(透光部を形成するための遮光膜パターン30a)を形成できる(図1(2)参照)。なお、この工程は、ドライエッチングで行うこともできる。
【0041】
本発明においては、上記工程に続いて、前記遮光膜30に形成された透光部のパターン30aをマスクとして、前記シリサイド系半透光膜20および前記金属系半透光膜10を、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質によってエッチングし、透光部のパターン20a、10aを形成する(図1(3)参照)。
ここで、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質としては、ClF、BrF、BrF、BrF、IF、IF、XeF、XeF、XeF、XeOF、XeOF、XeO、XeO、XeOなどが例示される。
これらの非励起状態の物質は、前記シリサイド系半透光膜および前記金属系半透光膜のエッチング速度が大きい。
これらの非励起状態の物質は、石英基板のエッチング速度が小さく、石英基板の浸食は少ない。
これらの非励起状態の物質は、常温〜200℃程度では、クロムのエッチング速度が非常に小さく、クロム系遮光膜の浸食は非常に少ない。
これらの非励起状態の物質は、常温〜200℃程度の温度範囲内で使用することが好ましい。
【0042】
本発明において、前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程は、例えば、4階調マスクの遮光部5および透光部2をパターン領域とする形状に形成される第2レジストパターン41a、41bをマスクにして、クロムを含む材料のエッチング液を用い、遮光膜パターン30aをウェットエッチングすることにより、遮光膜30に遮光部のパターン30bを形成できる(図1(4)参照)。なお、この工程は、ドライエッチングで行うこともできる。
【0043】
本発明において、前記シリサイド系半透光膜に第2半透光部のパターンを形成する工程は、例えば、4階調マスクの第1半透光部3を開口領域とする形状に形成される第3レジストパターン42a、42bをマスクにして、前記シリサイド系半透光膜のエッチング液を用い、前記シリサイド系半透光膜パターン20aをウェットエッチングすることにより、前記シリサイド系半透光膜20に第2半透光部のパターン20bを形成できる(図1(5)参照)。
【0044】
上記構成9の本発明の多階調マスクの製造方法においては、最初の工程で、前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程を実施して、先に遮光部を形成することができる。
この場合は、上記工程に続いて、4階調マスクの透光部2を開口領域とするレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして、前記シリサイド系半透光膜および金属系半透光膜を、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質によってエッチングし、透光部のパターンを形成する。
【0045】
本発明の多階調マスクの製造方法は、透光性基板上に、透光部、第1半透光部、第2半透光部および遮光部からなる転写パターンを備える多階調マスクの製造方法であって、
透光性基板上に、タンタル、ハフニウム、およびジルコニウムから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料からなる金属系半透光膜と、金属およびケイ素を含有する材料からなるシリサイド系半透光膜と、クロムを含有する材料からなる遮光膜とを順に積層したマスクブランクを準備する工程と、
前記遮光膜に透光部のパターンを形成する工程と、
前記遮光膜に形成された透光部のパターンをマスクとして、ウェットエッチングによって前記シリサイド系半透光膜に透光部のパターンを形成する工程と、
前記遮光膜に形成された透光部のパターンをマスクとして、前記金属系半透光膜を、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質によってエッチングし、透光部のパターンを形成する工程と、
前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程と、
前記シリサイド系半透光膜に第2半透光部のパターンを形成する工程と
を有することを特徴とする(構成10)。
【0046】
構成10記載の多階調マスクの製造方法は、上記構成1〜5で説明したマスクブランクを準備する工程を有する。このマスクブランクについては上記構成1〜5で説明したので、説明を省略する。
構成10記載の発明において、前記遮光膜に透光部のパターンを形成する工程は、4階調マスクの透光部2を開口領域とする形状に形成される第1レジストパターン40aをマスクにして、クロムを含む材料のエッチング液を用い、クロムを含有する材料からなる遮光膜30をウェットエッチングすることにより、遮光膜30に透光部のパターン30aを形成できる(図1(2)参照)。なお、この工程は、ドライエッチングで行うこともできる。ここまでの工程は、上記構成9と同様である。
構成10記載の発明においては、上記工程に続いて、前記遮光膜に形成された透光部のパターン30aをマスクとして、前記シリサイド系半透光膜のエッチング液を用い、前記シリサイド系半透光膜20をウェットエッチングすることにより、前記金属とケイ素を含有する前記シリサイド系半透光膜20に透光部のパターン20aを形成できる(図1(3)参照)。
構成10記載の発明においては、上記工程に続いて、前記遮光膜に形成された透光部のパターン30aをマスクとして、前記金属系半透光膜10を、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質によってエッチングし、透光部のパターン10aを形成できる(図1(3)参照)。
これ以降の工程は、構成9の多階調マスクの製造方法と同様であるので、説明を省略する。
【0047】
本発明の多階調マスクの製造方法は、透光性基板上に、透光部、第1半透光部、第2半透光部および遮光部からなる転写パターンを備える多階調マスクの製造方法であって、
透光性基板上に、タンタル、ハフニウム、およびジルコニウムから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料からなる金属系半透光膜と、金属およびケイ素を含有する材料からなるシリサイド系半透光膜と、クロムを含有する材料からなる遮光膜とを順に積層したマスクブランクを準備する工程と、
前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程と、
透光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとして、前記シリサイド系半透光膜および前記金属系半透光膜を、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質によってエッチングし、透光部のパターンを形成する工程と、
前記シリサイド系半透光膜に第2半透光部のパターンを形成する工程と
を有することを特徴とする(構成13)。
【0048】
構成13記載の多階調マスクの製造方法は、上記構成1〜5で説明したマスクブランクを準備する工程を有する(図2(1)参照)。このマスクブランクについては上記構成1〜5で説明したので、説明を省略する。
本発明において、前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程は、例えば、4階調マスクの遮光部5をパターン領域とする形状に形成される第1レジストパターン50aをマスクにして、クロムを含む材料のエッチング液を用い、クロムを含有する材料からなる遮光膜30をウェットエッチングすることにより、遮光膜30に遮光部のパターン30bを形成できる(図2(2)参照)。なお、この工程は、ドライエッチングで行うこともできる。
【0049】
本発明においては、上記工程に続いて、透光部2を開口領域とする形状に形成される第2レジストパターン51aをマスクとして、前記シリサイド系半透光膜20および前記金属系半透光膜10を、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質によってエッチングし、透光部のパターン20a、10aを形成する(図2(3)参照)。
【0050】
本発明において、前記シリサイド系半透光膜に第2半透光部のパターンを形成する工程は、例えば、4階調マスクの第1半透光部3を開口領域とする形状に形成される第3レジストパターン52a、52bをマスクにして、前記シリサイド系半透光膜のエッチング液を用い、前記シリサイド系半透光膜パターン20aをウェットエッチングすることにより、前記シリサイド系半透光膜20に第2半透光部のパターン20bを形成できる(図2(4)参照)。その他の各工程の条件等については、構成9の多階調マスクの製造方法と同様であるので、説明を省略する。
【0051】
本発明の多階調マスクの製造方法は、透光性基板上に、透光部、第1半透光部、第2半透光部および遮光部からなる転写パターンを備える多階調マスクの製造方法であって、
透光性基板上に、タンタル、ハフニウム、およびジルコニウムから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料からなる金属系半透光膜と、金属およびケイ素を含有する材料からなるシリサイド系半透光膜と、クロムを含有する材料からなる遮光膜とを順に積層したマスクブランクを準備する工程と、
前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程と、
透光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとして、ウェットエッチングによって前記シリサイド系半透光膜に透光部のパターンを形成する工程と、
透光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとして、前記金属系半透光膜を、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質によってエッチングし、透光部のパターンを形成する工程と、
前記シリサイド系半透光膜に第2半透光部のパターンを形成する工程と
を有することを特徴とする(構成14)。
【0052】
構成14記載の発明では、透光部2を開口領域とする形状に形成される第2レジストパターン51aをマスクとして、前記シリサイド系半透光膜のエッチング液を用い、前記シリサイド系半透光膜20をウェットエッチングすることにより、前記金属とケイ素を含有する前記シリサイド系半透光膜20に透光部のパターン20aを形成する点が、構成13記載の発明とは異なる。それ以降の工程や各工程の条件等については、構成13の多階調マスクの製造方法と同様であるので、説明を省略する。
【0053】
本発明の多階調マスクの製造方法は、透光性基板上に、透光部、第1半透光部、第2半透光部および遮光部からなる転写パターンを備える多階調マスクの製造方法であって、
透光性基板上に、タンタル、ハフニウム、およびジルコニウムから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料からなる金属系半透光膜と、金属およびケイ素を含有する材料からなるシリサイド系半透光膜と、クロムを含有する材料からなる遮光膜とを順に積層したマスクブランクを準備する工程と、
前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程と、
遮光部および第2半透光部を覆うパターンを有するレジスト膜をマスクとして、ウェットエッチングによって前記シリサイド系半透光膜に第2半透光部のパターンを形成する工程と、
透光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとして、前記金属系半透光膜を、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質によってエッチングし、透光部のパターンを形成する工程と、
を有することを特徴とする(構成17)。
【0054】
構成17記載の多階調マスクの製造方法は、上記構成1〜5で説明したマスクブランクを準備する工程を有する(図3(1)参照)。このマスクブランクについては上記構成1〜5で説明したので、説明を省略する。
本発明において、前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程は、例えば、4階調マスクの遮光部5をパターン領域とする形状に形成される第1レジストパターン60aをマスクにして、クロムを含む材料のエッチング液を用い、クロムを含有する材料からなる遮光膜30をウェットエッチングすることにより、遮光膜30に遮光部のパターン30bを形成できる(図3(2)参照)。なお、この工程は、ドライエッチングで行うこともできる。
【0055】
本発明においては、上記工程に続いて、遮光部5および第2半透光部4を覆う形状(第1半透光部3および透光部2が露出する形状)に形成された第2レジストパターン61aをマスクとして、前記シリサイド系半透光膜のエッチング液を用い、前記シリサイド系半透光膜20をウェットエッチングすることにより、前記金属とケイ素を含有する前記シリサイド系半透光膜20に第2半透光部のパターン20bを形成する(図3(3)参照)。
【0056】
本発明においては、さらに上記工程に続いて、透光部2を開口領域とする形状に形成される第2レジストパターン62aをマスクとして、前記金属系半透光膜10を、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質によってエッチングし、透光部のパターン10aを形成する(図3(4)参照)。その他の各工程の条件等については、構成9の多階調マスクの製造方法と同様であるので、説明を省略する。
【0057】
本発明の多階調マスクの製造方法においては、前記遮光膜に透光部のパターンを形成する工程は、遮光膜上に形成された透光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとしたウェットエッチングによって行われることが好ましい(構成11)。
ウェットエッチングの採用によりコストの低減を図るためである。
【0058】
本発明の多階調マスクの製造方法においては、前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程は、遮光膜上に形成された遮光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとしたウェットエッチングによって行われることが好ましい(構成12,構成15,構成18)。
ウェットエッチングの採用によりコストの低減を図るためである。
【0059】
本発明の多階調マスクの製造方法においては、前記シリサイド系半透光膜に第2半透光部のパターンを形成する工程は、第1半透光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとしたウェットエッチングによって行われることが好ましい(構成16)。
ウェットエッチングの採用によりコストの低減を図るためである。
【0060】
本発明において、エッチング液によるエッチング工程は、吹き掛け、スプレー、浸漬、など、エッチング液に接触させる工程が含まれる。
【0061】
本発明の多階調マスクの製造方法において、金属系半透光膜は、タンタルを含有し、ケイ素を実質的に含有しない材料からなることが好ましい(構成19)。この理由は、前記構成2と同様であるので説明を省略する。
また、本発明の多階調マスクの製造方法において、シリサイド系半透光膜を構成する材料に含有する前記金属は、モリブデンであることが好ましい(構成20)。この理由は、前記構成3と同様であるので説明を省略する。
【0062】
本発明の多階調マスクは、透光性基板上に、透光部、第1半透光部、第2半透光部および遮光部からなる転写パターンを備える多階調マスクであって、
第1半透光部は、タンタル、ハフニウム、およびジルコニウムから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料からなる金属系半透光膜で形成され、
第2半透光部は、透光性基板側から、前記金属系半透光膜と、金属およびケイ素を含有する材料からなるシリサイド系半透光膜とを順に積層して形成され、
遮光部は、前記金属系半透光膜と、前記シリサイド系半透光膜と、クロムを含有する材料からなる遮光膜とを順に積層して形成されている
ことを特徴とする(構成6)。
本発明の多階調マスクは、上記本発明のマスクブランクを用い、上記本発明の多階調マスクの製造方法を用いることで初めて製造できる。また、精度や品質を犠牲にすることなく、コストの低減が図れる多階調マスクを提供できる。
【0063】
本発明の多階調マスクにおいて、金属系半透光膜は、タンタルを含有し、ケイ素を実質的に含有しない材料からなることが好ましい(構成7)。この理由は、前記構成2と同様であるので説明を省略する。
また、本発明の多階調マスクにおいて、シリサイド系半透光膜を構成する材料に含有する前記金属は、モリブデンであることが好ましい(構成8)。この理由は、前記構成3と同様であるので説明を省略する。
【0064】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
(マスクブランクの作製)
透光性基板として、大型ガラス基板(合成石英(QZ)13mm厚、サイズ1220mm×1400mm)を用いた。
上記透光性基板1上に、大型スパッタリング装置を使用し、金属系半透光膜10の成膜を行った。具体的には、Taターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガスをスパッタリングガスとして、i線(365nm)の波長において透過率が60%となるようにタンタル(Ta)からなる薄膜を膜厚3nmで形成した(図1(1))。
次に、上記金属系半透光膜10の上に、シリサイド系半透光膜20の成膜を行った。具体的には、MoSiターゲット(Mo:20原子%、Si:80原子%)を用い、アルゴン(Ar)ガスをスパッタリングガスとして、i線(365nm)の波長において透過率が50%となるように、MoSi膜(膜の組成比は、Mo:20原子%、Si:80原子%)からなる薄膜を膜厚4nmで形成した(図1(1))。金属系半透光膜10とシリサイド系半透膜20との積層構造、すなわち第2半透光部のi線(365nm)の波長における透過率は30%となる。
次に、上記シリサイド系半透光膜20の上に、クロムを含有する材料からなるクロム系遮光膜30の成膜を行った。具体的には、Crターゲットを用い、まずArとNガスをスパッタリングガスとしてCrN膜を15nm、次いでArとCHガスとNガスをスパッタリングガスとしてCrCN膜を65nm、次いでArとNOガスをスパッタリングガスとしてCrON膜を25nm、連続成膜して、遮光膜を形成した。なお、各膜はそれぞれ組成傾斜膜であった。
以上の工程により、QZ基板1上に、Ta系材料からなる金属系半透光膜20、MoSi系材料からなるシリサイド系半透光膜20、CrN系の遮光膜30を順に積層した構成のFPD用の大型のマスクブランクを作製した。
【0065】
(マスクの作製)
上記で作成したマスクブランクにおけるクロム系遮光膜30上に、第1のレジスト膜(ポジ型レジスト膜やネガ型レジスト膜)40を形成し(図1(1))、このレジスト膜を電子線またはレーザー描画装置を用いて露光し、レジストの現像液により現像して、第1レジストパターン40aを形成する(図1(2))。この第1レジストパターン40aは、製造される4階調マスクの透光部2を開口領域とする形状に形成される(図1の下方の図参照)。第1レジストパターン40aを形成するレジストとしては、例えば、ノボラック系レジストを用いることができる。
次に、第1レジストパターン40aをマスクにして、クロムを含む材料のエッチング液を用い、クロム系遮光膜30をウェットエッチングする(図1(2))。このエッチングにより遮光膜30に遮光膜パターン30a(即ち透光部を形成するための透光部のパターン30a)が形成される。
その後、この遮光膜パターン30a上に残存した第1レジストパターン40aをレジスト剥離液で剥離する(図1(3))。
次に、遮光膜パターン30aが形成されたマスクブランクを、ClFガスによるノンプラズマエッチングを行うためのチャンバに設置する。そして、チャンバ内に、ClFとArの混合ガス(流量比 ClF:Ar=0.2:1.8[SLM])を導入し、チャンバ内の気体を前記ClFとArの混合ガスに置換することにより、MoSi系の材料からなるシリサイド系半透光膜20およびTa系の材料からなる金属系半透光膜10を連続して、ノンプラズマエッチングし、MoSi系材料からなるシリサイド系半透光膜パターン20aおよびTa系材料からなる金属系半透光膜パターン10aを形成する(図1(3))。このときのガス圧力は、488〜502Torr、温度は110〜120℃に調節して行った。
【0066】
次に、遮光膜パターン30aを構成する遮光膜30の所望部分以外を除去する工程を実施する。つまり、遮光膜パターン30a上及び透光性基板1上に第2のレジスト膜41を成膜し、この第2のレジスト膜41を前述と同様に露光、現像して、第2レジストパターン41a、41bを形成する(図1(4))。この第2レジストパターン41aは、遮光部5および透光部1をパターン領域とする形状に形成される。次に、第2レジストパターン41a、41bをマスクにして、遮光膜パターン30aを構成する遮光膜30を、クロムを含む材料のエッチング液(硝酸第2セリウムアンモニウムと過塩素酸を含むエッチング液)を常温で用い、ウェットエッチングして、遮光膜パターン30b(即ち遮光部のパターン30b)が形成される。(図1(4))。この際、透光部1は、第2レジストパターン41bで保護される。
その後、残存する第2レジストパターン41a、41bをレジスト剥離液で剥離する(図示せず)。
【0067】
次に、MoSi系材料からなるシリサイド系半透光膜20の所望部分以外を除去する工程を実施する。つまり、シリサイド系半透光膜パターン20a上及び透光性基板1上に第3のレジスト膜42を成膜し、この第3のレジスト膜42を前述と同様に露光、現像して、第3レジストパターン42a、42bを形成する(図1(5))。この第3レジストパターン42aは Ta系材料からなる金属系半透過膜により構成される第1半透光部3を形成する領域の形状に形成される。次に、第3レジストパターン42a、42bをマスクにして、シリサイド系半透光膜パターン20aを構成するMoSi系材料からなるシリサイド系半透光膜20を、モリブデンとケイ素とを含む材料のエッチング液(弗化水素アンモニウムと過酸化水素とを混合した水溶液)を常温で用い、ウェットエッチングして、シリサイド系半透光膜パターン20bが形成される(図1(5))。
その後、残存する第3レジストパターン42a、42bをレジスト剥離液で剥離して、 透光性基板1上に、透光部2、Ta系材料からなる金属系半透光膜パターン10aにより構成される第1半透光部3、MoSi系材料からなるシリサイド系半透光膜パターン20bおよびその下の金属系半透光膜10により構成される第2半透光部4、クロム系遮光膜パターン30bおよびその下のシリサイド系半透光膜20および金属系半透光膜10により構成される遮光部5、を備える多階調マスクを製造した(図1(6))。
【0068】
(評価)
マスク作製後、MoSi系材料からなるシリサイド系半透光膜パターン20bの表面(上面)および断面(側面)の表面状態を電子顕微鏡で観察した結果、クロム系膜のエッチング液による浸食が原因と考えられるダメージは認められなかった。
マスク作製後、Ta系材料からなる金属系半透光膜パターン10aの表面(上面)および断面(側面)の表面状態を電子顕微鏡で観察した結果、クロム系膜のエッチング液やMoSi系膜のエッチング液による浸食が原因と考えられる表面荒れは認められなかった。また、多階調マスクの面内で透光部に隣接して遮光部が形成されている部分について、遮光部の側壁形状を電子顕微鏡で観察した結果、高い垂直性で形成されていた。また、遮光部、第1半透光部、第2半透光部の面内CD均一性も高水準であった。
【0069】
(比較例1)
実施例1の図1(3)の工程において、Ta系材料からなる金属系半透光膜10のエッチャントにアルカリ溶液(NaOH、KOH等)使用し、金属系半透光膜10をウェットエッチングしたこと以外は、実施例1と同様とした。
マスク作製後、MoSi系材料からなるシリサイド系半透光膜パターン20bの表面(上面)および断面(側面)の表面状態を電子顕微鏡で観察した結果、シリサイド系半透光膜パターン20bの断面(側面)に、アルカリ(NaOH、KOH等)による浸食が原因と考えられるダメージが認められた。
また、石英基板の表面にピット状の凹部が形成されてしまっていることが確認された。
【0070】
(比較例2)
実施例1の図1(3)の工程において、MoSi系材料からなるシリサイド系半透光膜20およびTa系材料からなる金属系半透光膜10を、連続して、フッ素系ガス(CHF)のプラズマを用いてドライエッチングし、実施例1の図1(5)の工程において、シリサイド系半透光膜20をフッ素系ガス(SF)のプラズマを用いてドライエッチングしたこと以外は、実施例1と同様とした。
マスク作製後、Ta系材料からなる金属系半透光膜10の第1半透光部を構成する部分の表面を観察したところ、シリサイド系半透光膜20をドライエッチングしたときのダメージが著しく、面内の透過率分布のばらつきが大きく、多階調マスクとして使用するできなかった。
【0071】
(比較例3)
実施例1において、MoSi系材料からなるシリサイド系半透光膜20とTa系材料からなる金属系半透光膜10の積層の順番を入れ替え、ClFガスで連続エッチングする工程を無くし、これらに伴いエッチャントは各層に対応するエッチャントを適宜使用した。比較例3では、透光性基板1上に、シリサイド系半透光膜、金属系半透光膜、CrN系の遮光膜30をこの順に積層した構成のFPD用の大型のマスクブランクを使用した。その他は、実施例1と同様とした。
マスク作製後、Ta系材料からなる金属系半透光膜パターンの表面(上面)および断面(側面)の表面状態を電子顕微鏡で観察した結果、金属系半透光膜パターンの表面(上面)に、クロムのエッチング液による浸食が原因と考えられるダメージが認められた。このダメージは、対応する図1(4)の工程において、金属系半透光膜パターン上に接して形成されたCr系遮光膜を、クロムのエッチング液によってエッチングしてパターニングする際に、生じることが確認された。
また、マスク作製後、MoSi系材料からなるシリサイド系半透光膜パターンの表面(上面)および断面(側面)の表面状態を電子顕微鏡で観察した結果、シリサイド系半透光膜パターンの表面(上面)に、アルカリ(NaOH、KOH等)による浸食が原因と考えられるダメージが認められた。このダメージは、対応する図1(5)の工程において、シリサイド系半透光膜上に接して形成された金属系半透光膜を、アルカリ(NaOH、KOH等)によってエッチングしてパターニングする際に、生じることが確認された。
【符号の説明】
【0072】
1 透光性基板
2 透光部
3 第1半透光部
4 第2半透光部
5 遮光部
10 金属系半透光膜
20 シリサイド系半透光膜
30 遮光膜
40,50,60 第1レジスト
40a,50a ,60a 第1レジストパターン
41 第2レジスト
41a,41b,51a,61a 第2レジストパターン
42 第3レジスト
42a,42b,52a,52b,62a 第3レジストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板上に、透光部、第1半透光部、第2半透光部および遮光部からなる転写パターンを備える多階調マスクの作製に用いられるマスクブランクであって、
透光性基板上に、タンタル、ハフニウム、およびジルコニウムから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料からなる金属系半透光膜と、金属およびケイ素を含有する材料からなるシリサイド系半透光膜と、クロムを含有する材料からなる遮光膜とを順に積層した構造からなることを特徴とするマスクブランク。
【請求項2】
前記金属系半透光膜は、タンタルを含有し、ケイ素を実質的に含有しない材料からなることを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
【請求項3】
前記シリサイド系半透光膜を構成する材料に含有する前記金属は、モリブデンであることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項4】
前記遮光膜は、クロムと窒素とを含有する材料からなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項5】
前記遮光膜は、複数層の積層構造であり、前記遮光膜の少なくとも前記シリサイド系半透光膜に接する層は窒素を含有する材料からなることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項6】
透光性基板上に、透光部、第1半透光部、第2半透光部および遮光部からなる転写パターンを備える多階調マスクであって、
第1半透光部は、タンタル、ハフニウム、およびジルコニウムから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料からなる金属系半透光膜で形成され、
第2半透光部は、透光性基板側から、前記金属系半透光膜と、金属およびケイ素を含有する材料からなるシリサイド系半透光膜とを順に積層して形成され、
遮光部は、前記金属系半透光膜と、前記シリサイド系半透光膜と、クロムを含有する材料からなる遮光膜とを順に積層して形成されている
ことを特徴とする多階調マスク。
【請求項7】
前記金属系半透光膜は、タンタルを含有し、ケイ素を実質的に含有しない材料からなることを特徴とする請求項6記載の多階調マスク。
【請求項8】
前記シリサイド系半透光膜を構成する材料に含有する前記金属は、モリブデンであることを特徴とする請求項7記載の多階調マスク。
【請求項9】
透光性基板上に、透光部、第1半透光部、第2半透光部および遮光部からなる転写パターンを備える多階調マスクの製造方法であって、
透光性基板上に、タンタル、ハフニウム、およびジルコニウムから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料からなる金属系半透光膜と、金属およびケイ素を含有する材料からなるシリサイド系半透光膜と、クロムを含有する材料からなる遮光膜とを順に積層したマスクブランクを準備する工程と、
前記遮光膜に透光部のパターンを形成する工程と、
前記遮光膜に形成された透光部のパターンをマスクとして、前記シリサイド系半透光膜および前記金属系半透光膜を、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質によってエッチングし、透光部のパターンを形成する工程と、
前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程と、
前記シリサイド系半透光膜に第2半透光部のパターンを形成する工程と
を有することを特徴とする多階調マスクの製造方法。
【請求項10】
透光性基板上に、透光部、第1半透光部、第2半透光部および遮光部からなる転写パターンを備える多階調マスクの製造方法であって、
透光性基板上に、タンタル、ハフニウム、およびジルコニウムから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料からなる金属系半透光膜と、金属およびケイ素を含有する材料からなるシリサイド系半透光膜と、クロムを含有する材料からなる遮光膜とを順に積層したマスクブランクを準備する工程と、
前記遮光膜に透光部のパターンを形成する工程と、
前記遮光膜に形成された透光部のパターンをマスクとして、ウェットエッチングによって前記シリサイド系半透光膜に透光部のパターンを形成する工程と、
前記遮光膜に形成された透光部のパターンをマスクとして、前記金属系半透光膜を、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質によってエッチングし、透光部のパターンを形成する工程と、
前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程と、
前記シリサイド系半透光膜に第2半透光部のパターンを形成する工程と
を有することを特徴とする多階調マスクの製造方法。
【請求項11】
前記遮光膜に透光部のパターンを形成する工程は、遮光膜上に形成された透光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとしたウェットエッチングによって行われることを特徴とする請求項9または10のいずれかに記載の多階調マスクの製造方法。
【請求項12】
前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程は、遮光膜上に形成された遮光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとしたウェットエッチングによって行われることを特徴とする請求項9または10のいずれかに記載の多階調マスクの製造方法。
【請求項13】
透光性基板上に、透光部、第1半透光部、第2半透光部および遮光部からなる転写パターンを備える多階調マスクの製造方法であって、
透光性基板上に、タンタル、ハフニウム、およびジルコニウムから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料からなる金属系半透光膜と、金属およびケイ素を含有する材料からなるシリサイド系半透光膜と、クロムを含有する材料からなる遮光膜とを順に積層したマスクブランクを準備する工程と、
前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程と、
透光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとして、前記シリサイド系半透光膜および前記金属系半透光膜を、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質によってエッチングし、透光部のパターンを形成する工程と、
前記シリサイド系半透光膜に第2半透光部のパターンを形成する工程と
を有することを特徴とする多階調マスクの製造方法。
【請求項14】
透光性基板上に、透光部、第1半透光部、第2半透光部および遮光部からなる転写パターンを備える多階調マスクの製造方法であって、
透光性基板上に、タンタル、ハフニウム、およびジルコニウムから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料からなる金属系半透光膜と、金属およびケイ素を含有する材料からなるシリサイド系半透光膜と、クロムを含有する材料からなる遮光膜とを順に積層したマスクブランクを準備する工程と、
前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程と、
透光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとして、ウェットエッチングによって前記シリサイド系半透光膜に透光部のパターンを形成する工程と、
透光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとして、前記金属系半透光膜を、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質によってエッチングし、透光部のパターンを形成する工程と、
前記シリサイド系半透光膜に第2半透光部のパターンを形成する工程と
を有することを特徴とする多階調マスクの製造方法。
【請求項15】
前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程は、遮光膜上に形成された遮光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとしたウェットエッチングによって行われることを特徴とする請求項13または14のいずれかに記載の多階調マスクの製造方法。
【請求項16】
前記シリサイド系半透光膜に第2半透光部のパターンを形成する工程は、第1半透光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとしたウェットエッチングによって行われることを特徴とする請求項9から15のいずれかに記載の多階調マスクの製造方法。
【請求項17】
透光性基板上に、透光部、第1半透光部、第2半透光部および遮光部からなる転写パターンを備える多階調マスクの製造方法であって、
透光性基板上に、タンタル、ハフニウム、およびジルコニウムから選ばれる1以上の元素を含有し、ケイ素の含有量が30原子%以下である材料からなる金属系半透光膜と、金属およびケイ素を含有する材料からなるシリサイド系半透光膜と、クロムを含有する材料からなる遮光膜とを順に積層したマスクブランクを準備する工程と、
前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程と、
遮光部および第2半透光部を覆うパターンを有するレジスト膜をマスクとして、ウェットエッチングによって前記シリサイド系半透光膜に第2半透光部のパターンを形成する工程と、
透光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとして、前記金属系半透光膜を、塩素、臭素、ヨウ素、およびキセノンのうちのいずれかの元素とフッ素との化合物を含む非励起状態の物質によってエッチングし、透光部のパターンを形成する工程と、
を有することを特徴とする多階調マスクの製造方法。
【請求項18】
前記遮光膜に遮光部のパターンを形成する工程は、遮光膜上に形成された遮光部のパターンを有するレジスト膜をマスクとしたウェットエッチングによって行われることを特徴とする請求項17に記載の多階調マスクの製造方法。
【請求項19】
前記金属系半透光膜は、タンタルを含有し、ケイ素を実質的に含有しない材料からなることを特徴とする請求項9から18のいずれかに記載の多階調マスクの製造方法。
【請求項20】
前記シリサイド系半透光膜を構成する材料に含有する前記金属は、モリブデンであることを特徴とする請求項9から19のいずれかに記載の多階調マスクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−32783(P2012−32783A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125403(P2011−125403)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】