説明

マスク

【課題】マスク着用者の頭部に貯水袋を取り付けることが可能なマスクの提供。
【解決手段】マスク1が吸排気可能な面体11と、面体11からマスク着用者の頭部後方に向かって延びる複数本のヘッドバンド13とを有し、その頭部に後方から当接可能に形成された貯水袋12がヘッドバンド13を介して面体11に取り付けられる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防塵用や防毒用のものとして使用されるマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸排気可能な面体とこの面体を着用するためのヘッドバンドとを有するマスクは周知である。また、このマスク着用者に対して飲料水を供給することができるマスクと水筒とが特開平11−206898号公報(特許文献1)に開示されている。
【特許文献1】特開平11−206898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載のマスクでは、送水用チューブの一端部が面体の吸水部につながれる一方、その一端部の反対端部が面体とは別体の水筒につながれている。マスク着用者の水を吸い込む動作によって水筒内の水が送水用チューブと吸水部とを経て、マスク着用者の口に供給される。マスク着用者は、その水筒を片手に持ったり、背中や腰など身体の適宜の部位に固定したりすることができる。しかし、このマスクでは、水筒を腰に固定した場合、着用者が水を飲もうとするときに、腰に固定した水筒から口にまで水を吸い上げなければならず、その吸い上げる距離と高さとが大きくなるほど着用者の呼吸動作における負荷が大きくなる。片手に水筒を持っているときには、その水筒を口許より高くすれば楽に水を飲むことができるが、片手を自由に使うことができないということがある。また、このマスクを着用するときには、面体をそれに付属するヘッドバンドを使用して顔面に固定する作業と、水筒を背中や腰などに固定する作業とが必要であり、マスク着用のための作業が繁雑であるということがある。
【0004】
この発明が課題とするところは、従来技術の有するこのような問題を解消できるマスクの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、この発明が対象とするのは、顔面の少なくとも一部分を覆う吸排気可能な面体と、前記面体を前記顔面に密着させることができるように前記面体から頭部の後方に向かって延びる複数本のヘッドバンドとを有するマスクである。
【0006】
かかるマスクにおいて、この発明が特徴とするところは、前記頭部に該頭部の後方から当接可能に形成された貯水袋が長さ調節可能に形成された前記ヘッドバンドを介して前記面体に連結されていること、にある。
【0007】
この発明の好ましい実施態様の一つにおいて、前記面体が前記マスクの着用者の口に向かって給水可能な飲料水供給部を有し、前記貯水袋には開閉可能な注水口と給水口とが形成されており、前記供給部と前記給水口とが給水管を介して前記マスク着用者の口に向かって給水可能に連結されている。
【0008】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、前記給水口は、前記給水管の端部の取り付けと取り外しとが可能に形成されるとともに、その取り付けと取り外しとによって開閉する弁を備えている。
【0009】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、前記貯水袋は、その外面の少なくとも一部分が非伸縮性シート材料で形成されており、複数本の前記ヘッドバンドそれぞれの基端部が前記非伸縮性シート材料に固定される一方、前記基端部の反対端部が前記面体に着脱可能な状態にある。
【0010】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、前記貯水袋は、前記マスク着用者の後頭部を覆うことができるものであって、前記後頭部の上下方向において前記マスク着用者の頸部寄りに位置して前記頸部の周り方向へ延びる下縁部を有し、前記下縁部は、前記後頭部の下方に向かって開放可能に形成された前記給水口を有するとともに、前記給水口の両側部分が前記給水口に向かって下り勾配となるように傾斜している。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係るマスクは、面体と貯水袋とをそれらに共通のヘッドバンドを使用して着用するから、着用のための操作が簡単になる。
【0012】
貯水袋が着用者の頭部にあって、貯水袋の給水口と面体の飲料水供給部とが連結されているこの発明の実施態様では、貯水袋内部の水が頭部から口に向かって自然に流れるので、水を飲む動作によって着用者の呼吸に対する負荷が増すということがない。
【0013】
貯水袋の給水口が給水管の取り付けと取り外しによって開閉する弁を備えているこの発明の実施態様では、面体と貯水袋とを着用してからこれら両者に対して給水管をつなげばよいから、マスクが着用し易いものになる。
【0014】
貯水袋の少なくとも一部分が非伸縮性シート材料で形成されており、ヘッドバンドそれぞれの基端部分がこの非伸縮性シート材料に取り付けられているこの発明の実施態様では、ヘッドバンドを緊張状態にすれば、貯水袋内部の水量に関係なく面体を顔面に密着させるとともに、貯水袋を頭部に密着させることが可能になる。
【0015】
貯水袋の下縁部が給水口を有し、その給水口の両側部分が給水口に向かって下り勾配になるように傾斜しているこの発明の実施態様では、着用した貯水袋内部の水を残すことなく利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
添付の図面を参照して、この発明に係るマスクの詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0017】
図1,2は、この発明に係るマスク1が着用状態にあるときの斜視図と側面図であって、図1では、着用者の顔面2と頭部3とが実線で示されており、図2では、これらが仮想線で示されている。マスク1は、フルフェイス型の面体11と、貯水袋12と、面体11と貯水袋12とをつなぐ複数本のヘッドバンド13とを有する。
【0018】
面体11は、本体14と、本体14に組み込まれている一対のレンズ部16と、吸排気部17と、給水ユニット20とを有する。本体14は、ゴム等の柔軟弾性材料で形成されており、周縁部19が顔面2に密着可能に形成されるとともに、頭部3の後方に向かって延びる延出部21を有する。吸排気部17は、その前面部分にフィルタ取り付け部22を有し、このフィルタ取り付け部22には、防塵用や防毒用のフィルタを取り付けることができる。図示してはいないが、吸排気部17の内側には吸気用逆止弁や排気用逆止弁が設けられている。給水ユニット20は、面体11を貫通して延びる管状のもので、面体11の外側に外端部20aを有する一方、面体11の内側に内端部(図示せず)を有しており、図1において矢印A方向へ約90°旋回可能である。給水ユニット20が旋回したときには、面体11の内部で開口している内端部から貯水袋12の水を流出させることが可能で、その開口端部に口を当てればその水を飲むことができる。
【0019】
貯水袋12は、その内部に飲料水を貯えておくことができるフレキシブルな袋であって、頂縁部25と、側縁部26と底縁部27とを有し、頂縁部25と側縁部26とにはヘッドバンド13が取り付けられている。底縁部27には雌型のコネクタ28によって貯水袋12の内部に通じる給水口(図示せず)が形成されている。
【0020】
面体11と貯水袋12との間には、給水管18が延びている。給水管18は、フレキシブルなホースの前後両端に雄型と雌型とのうちの例えば雄型のコネクタ23a,23bが取り付けられたものであって、前端コネクタ23aが給水ユニット20の外端部20aにおける雌型コネクタ(図示せず)に離脱可能に接続する一方、後端コネクタ23bが貯水袋12のコネクタ28に離脱可能に接続している。
【0021】
ヘッドバンド13は、その後方部分を形成している基端部31が貯水袋12に固定されており、基端部31の反対端部である前端部32に取り付けられたバックル33によって長さを調節することができる。バックル33には、掛け止め用部材34が取り付けられており、その掛け止め用部材34が面体11における受け止め用突起36に取り外し可能に引っ掛けられている。なお、図示例において、頂縁部25に取り付けられたヘッドバンド13aのみは長さ調節不能に作られているが(図4参照)、このヘッドバンド13aを長さ調節可能なものに代えることもできる。
【0022】
図3,4は、図1の面体11から外された貯水袋12の平面図と、その平面図の中心線でもあるIV−IV線に沿った切断面を示す図である。ただし、図4において、コネクタ28は断面図ではなくて側面図で示されている。貯水袋12は、ゴムシートやプラスチックシート等の耐水性シートからなる内袋41と、図示例では外袋42として示されている織布等からなり内袋41の少なくとも一部分を被覆している非伸縮性のシートとで形成され、貯水袋12の頂縁部25、側縁部26、底縁部27には耐水の近傍に耐水性ファスナ44によって開閉する注水口46が形成されている。また、IV−IV線がシール43と交差する部位には、雌型コネクタ28が取り付けられている。雌型コネクタ28は、貯水袋12の内外を貫通するもので、開閉弁(図示せず)を内蔵しており、雄型コネクタ23bが接続されると、その開閉弁が開いて、貯水袋12は、面体11の給水ユニット20に対して開放状態になる。貯水袋12に取り付けられた複数のヘッドバンド13は、それぞれの基端部31が貯水袋12のシール43の近傍において、非伸縮性の外袋42に対して縫合等の固定手段によって取り付けられている。貯水袋12はまた、頭部3によくフィットするように、側縁部26どうしの間の幅が頂縁部25に向かって次第に小さくなっている。底縁部27は、図3においてIV−IV線上に設けられている雌型コネクタ28の両側部分が雌型コネクタ28に向かって下り勾配となるように傾斜しており、着用した貯水袋12の飲料水は、その全てが雌型コネクタ28から流出可能である。
【0023】
かように形成されているマスク1を着用するときの手順の一例は、次のとおりである。まず、給水ユニット20を図1の状態にしておくとともに、給水管18の前後端のコネクタ23a,23bのそれぞれを相手方のコネクタから外しておき、ヘッドバンド13の長さを調節しながら面体11を顔面に密着させ、貯水袋12を頭部3に後方から当接させる。しかる後に、給水管18の前端コネクタ23aと後端コネクタ23bとを順次相手方のコネクタに接続することによって着用が完了する。着用が完了したマスク1では、給水ユニット20を図1の矢印A方向へ旋回させれば貯水袋12の水が給水管18を通り給水ユニット20の内端部から流れ出すので、その内端部をくわえて水を吸い込むようにすると、水を飲むことができる。水を飲まないときには、給水ユニット20を矢印Aとは反対の方向へ旋回させて図1の状態に戻せばよく、そのようにすると、給水ユニット20に付随する開閉弁(図示せず)が自動的に閉じて、貯水袋12からの給水が止まる。このようにしてマスク1を着用する過程では、飲料水をその貯水袋12に予め注入しておくこともできれば、着用後の貯水袋12に注入することもできる。マスク着用者が給水ユニット20の内端部から水を飲んだ後には、着用者の呼気をその内端部から貯水袋12に向かって送り込むことによって、水を飲んだ後の貯水袋12が陰圧となって、その後に水が流出しにくくなるという事態を防ぐことができる。いうまでもないことながら、給水管18を面体11と貯水袋12とに接続した状態でマスク1を着用することも可能である。
【0024】
図5,6において、図5は、実施態様の一例を示す図2と同様な図であり、図6は、図5の部分Bの拡大断面図である。図5におけるマスク1は、面体11の内部と貯水袋12の内部とをつなぐ給気管51を有する。図6の給気管51は、符号Pで示される部分が面体11寄りに位置し、符号Qで示される部分が貯水袋12寄りに位置しているもので、矢印dで示す面体11から貯水袋12に向かう方向にのみ開く逆止弁52を備えている。逆止弁52は、矢印c方向へ流れようとする貯水袋12からの水の圧力によって常態では閉じており、マスク着用者が水を飲んで貯水袋12が陰圧になると、矢印d方向へ動いて開き、面体11内部の空気が矢印cとは反対に貯水袋12に向かって流れ、貯水袋12の内圧を元に戻すことができる。このようなマスク1では、マスク着用者が、陰圧になった貯水袋12に対して呼気を送り込むという必要がない。
【0025】
この発明においては、このような図示例の他に、貯水袋12にそれが陰圧になることを防ぐための外気取り入れ口を設けることも可能である。ただし、その取り入れ口は、外気中の有毒物質が貯水袋12に侵入することを防ぐことができるように、活性炭等の吸着剤を含むフィルタを取り付けておいて、それによって外気をろ過することが必要である。図示例においてはまた、貯水袋12が、飲料水を供給するためのものとして説明されているが、貯水袋12はその他に、例えば頭部3を冷却するためのものとして使用することもできる。この後者の使用例では、給水管18が不要になる。貯水袋12はまた、外袋42に代えて、内袋41の外面の少なくとも一部分に非伸縮性の布地等のシートを貼り、その外面を補強したり、その外面の肌触りを布様のものにしたりすることができる。非伸縮性のシートは、マスク1を着用したときに、ヘッドバンドに作用する張力が内袋41にまで及んで内袋41を不必要に変形させるということがないので、好ましいものではあるが、その必要がなければ、弾性的に伸縮するシートに代えることもできる。さらにはまた、図示例において基端部31が貯水袋12に固定されているヘッドバンド13は、基端部31が面体11に固定され、基端部31の反対端部が貯水袋12に着脱するものに代えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明によれば、マスク着用者に対して飲料水を供給可能なマスクの製造が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】使用状態にあるマスクの斜視図。
【図2】図1のマスクの側面図。
【図3】貯水袋の平面図。
【図4】図3のIV−IV線切断面を示す図。
【図5】実施態様の一例を示す図2と同様な図。
【図6】図5の部分拡大断面図。
【符号の説明】
【0028】
1 マスク
2 顔面
3 頭部
11 面体
12 貯水袋
13,13a ヘッドバンド
18 給水管
20 飲料水供給部(給水ユニット)
27 下縁部(底縁部)
28 給水口
31 基端部
42 非伸縮性シート(外袋)
46 注水口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔面の少なくとも一部分を覆う吸排気可能な面体と、前記面体を前記顔面に密着させることができるように前記面体から頭部の後方に向かって延びる複数本のヘッドバンドとを有するマスクであって、
前記頭部に該頭部の後方から当接可能に形成された貯水袋が、長さ調節可能に形成された前記ヘッドバンドを介して前記面体に連結されていることを特徴とする前記マスク。
【請求項2】
前記面体が前記マスクの着用者の口に向かって給水可能な飲料水供給部を有し、前記貯水袋には開閉可能な注水口と給水口とが形成されており、前記供給部と前記給水口とが給水管を介して前記マスク着用者の口に向かって給水可能に連結されている請求項1記載のマスク。
【請求項3】
前記給水口は、前記給水管の端部の取り付けと取り外しとが可能に形成されるとともに、その取り付けと取り外しとによって開閉する弁を備えている請求項1記載のマスク。
【請求項4】
前記貯水袋は、その外面の少なくとも一部分が非伸縮性シート材料で形成されており、複数本の前記ヘッドバンドそれぞれの基端部が前記非伸縮性シート材料に固定される一方、前記基端部の反対端部が前記面体に着脱可能な状態にある請求項1〜3のいずれかに記載のマスク。
【請求項5】
前記貯水袋は、前記マスク着用者の後頭部を覆うことができるものであって、前記後頭部の上下方向において前記マスク着用者の頸部寄りに位置して前記頸部の周り方向へ延びる下縁部を有し、前記下縁部は、前記後頭部の下方に向かって開放可能に形成された前記給水口を有するとともに、前記給水口の両側部分が前記給水口に向かって下り勾配となるように傾斜している請求項1〜4のいずれかに記載のマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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