説明

マスク

【課題】マスクの装着性を向上させるのに有効な技術を提供する。
【解決手段】マスク10は、マスク本体部20とマスク本体部20に連接される耳掛け部30とを備える。マスク本体部20は、端部領域21にて襞27の第2の方向12に沿った展開動作が阻止され、且つ第1の方向11上の両端部領域21,21間の中間領域にて襞21の展開動作が可能とされ、中間領域での襞27の展開動作に伴って端部領域21が湾曲するように構成され、更に、耳掛け部30のうちマスク本体部20との連接部分に、端部領域21の湾曲時に第1延出部32a及び第2延出部32bを所定間隔で互いに平行状に延在させるための間隔設定機構が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク着用者の顔に装着されるマスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1には、マスク着用者の顔に装着されるマスクが開示されている。当該マスクは、概してマスク着用者の顔面を覆うマスク本体部と、マスク本体部の両端部領域のそれぞれに連接され、耳掛け空間を形成する耳掛け部を備え、マスク着用時に耳掛け部がマスク着用者の耳に引っ掛けられるように構成される。
この種のマスクでは、下記特許文献1のように耳掛け部を所定のシート幅を有する不織布シートで構成した場合には、当該耳掛け部をゴム紐で構成した場合に比べて、マスク着用時に耳掛け部の張力がマスク着用者の耳の一部に集中するのが抑えられるため、マスク着用者は耳の痛みを感じにくいという利点がある。その反面、耳掛け部は、所定のシート幅を有する構成上、マスク本体部側から延出する2つの延出部の延出方向が予め定まっており、マスク本体部が襞の展開とともに平面形状から立体形状になる際にマスク本体部の両端部領域が湾曲すると、これら延出部間の最短距離が湾曲前よりも小さくなる。従って、両延出部によって区画される耳掛け空間のマスク上下方向の大きさが狭くなり、結果的に耳掛け部をマスク着用者の耳に掛け難くなるという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−149946号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、マスク着用者の顔に装着されるマスクにおいて、当該マスクの装着性を向上させるのに有効な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するため、各請求項に記載の発明が構成される。
【0006】
本発明にかかるマスクは、マスク本体部と、このマスク本体部に連接される耳掛け部と、を備える。マスク本体部は、所定の第1の方向及びその第1の方向と交差する第2の方向にそれぞれ延在する平面部と、平面部上を第1の方向に延在して形成される襞と、第1の方向上の端部領域と、を有する。耳掛け部は、接合部と、環状部を有する。接合部は、シート状に形成され、第2の方向について端部領域のほぼ全体にわたり長尺状に延在しつつ端部領域に接合される。環状部は、シート状に形成され、接合部と一体状とされて接合部と共に耳掛け空間を形成する。また、この環状部は、接合部の第2の方向上の一方の縁部領域から延出する第1延出部と、接合部の第2の方向上の他方の縁部領域から延出して第1延出部に連接される第2延出部とを含む。更に、当該マスクでは、耳掛け部のうち前記マスク本体部との連接部分に、マスク本体部と耳掛け部との間に間隔設定機構が設けられている。この間隔設定機構は、端部領域の湾曲時に第1延出部及び第2延出部を所定間隔で互いに平行状に延在させる機能を果たす。これにより、マスク本体部の端部領域が湾曲したときでも、耳掛け部の第1延出部と第2延出部との間隔が予め定められた所定間隔を下回らないようにすることができる。即ち、上記間隔設定機構では、第1延出部と第2延出部との間の最短距離がマスク本体部の端部領域の湾曲時に小さくなる点に鑑みて、それを予め補償するように構成される。これにより、端部領域の湾曲時に両延出部によって区画される耳掛け空間のマスク上下方向の大きさが所望の大きさよりも狭くなるのを防止することができる。従って、マスク着用者の耳に耳掛け部を引っ掛け易くなり、マスクの装着性向上を図ることができる。
【0007】
また本発明に係る更なる形態のマスクでは、間隔定機構は、端部領域の湾曲時に第1延出部と第2延出部との所定間隔がマスク着用者の耳の付け根の上縁と下縁との間の長さを上回るように設定されているのが好ましい。なお、耳の付け根は、耳と頭との境界部分であって、耳掛け部が耳に引っ掛けられた場合に、実質的に当該耳掛け部によって押圧される部分として特定される。これにより、両延出部によって区画される耳掛け空間のマスク上下方向の大きさが、マスク着用者の耳の付け根の上縁と下縁との間の長さを下回るのを防止することができる。従って、マスク着用者の耳に耳掛け部を引っ掛け易くなり、マスクの装着性向上を図ることができる。
【0008】
また本発明に係る更なる形態のマスクでは、間隔設定機構は、端部領域の湾曲前に、マスク本体部の端部領域の延在線と、耳掛け部の第1延出部の延出線とによって形成される耳掛け空間側の角度が90°よりも大きく140°以下の設定角度となり、且つマスク本体部の端部領域の延在線と、耳掛け部の第2延出部の延出線とによって形成される耳掛け空間側の角度が90°よりも大きく130°以下の設定角度となるように、耳掛け部がマスク本体部に連接された連接構造を含むのが好ましい。即ち、この連接構造によって、端部領域の湾曲前では、耳掛け部の第1延出部と第2延出部との間隔が、マスク本体部の端部領域から離間するにつれて直線状に拡張されたテーパー形状が形成される。これにより、耳掛け部の第1延出部及び第2延出部の延出角度を適正に設定することで、端部領域の湾曲時に耳掛け空間のマスク上下方向の大きさが所望の大きさよりも狭くなるのを確実に防止することができる。
【0009】
また本発明に係る更なる形態のマスクでは、接合部及び環状部は、単一のシート状不織布で一体状に形成されており、さらに接合部がマスク本体部の端部領域に熱融着によって接合されているのが好ましい。これにより耳掛け部の構造、及び接合部と端部領域との接合構造を簡素化することができる。
【0010】
また本発明に係る更なる形態のマスクでは、接合部及び環状部は互いに環状に連接されており、耳掛け空間が、接合部と環状部との間に閉じた状態で形成されているのが好ましい。これにより、耳掛け空間を有する耳掛け部を、簡単な形状の打ち抜き部材による打ち抜き加工によって製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、マスク着用者の顔に装着されるマスクにおいて、当該マスクの装着性を向上させることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明にかかるマスク10を外面側から視た場合の平面図である。
【図2】図1中のマスク10を内面側から視た場合の平面図である。
【図3】図1中のマスク10のA−A線についての断面構造を示す図である。
【図4】図3中の断面構造の変更例を示す図である。
【図5】図3中の断面構造の変更例を示す図である。
【図6】図3中のB領域の部分拡大図である。
【図7】図1中のマスク10の展開状態を外面側から視た図である。
【図8】耳掛け部30の角度設定を示す平面図である。
【図9】マスク着用時のマスク10を側方から視た図である。
【図10】図8に示す耳掛け部30の別実施の形態の連接構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る「マスク」の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。ここでいう「マスク」は、マスク着用者の顔に装着されることによって、少なくとも口元ないし当該口元周辺の口元空間を覆うように構成される。
【0014】
図1には、本実施の形態のマスク10を外面側から視た様子が、また図2にはこのマスク10を内面側から視た様子が示されている。ここで、マスク10の内面は、マスク装着時にマスク着用者の顔と対向する面として規定され、その反対側の面がマスク10の外面として規定される。これら図1及び図2によれば、マスク10は、特にマスク着用者の口(口元)及び鼻(鼻腔)を主体に被覆するマスク本体部20と、マスク本体部20に連接されマスク着用者の耳への引っ掛けに用いる一対の耳掛け部30,30を含む構成とされる。このマスク10は、1回ないし数回の使用を想定した使い捨てマスクとして使用されるのが好ましく、その用途として典型的には、風邪などのウィルス対策、花粉対策等が挙げられる。ここでいうマスク本体部20及び一対の耳掛け部30,30がそれぞれ、本発明における「マスク本体部」及び「耳掛け部」に相当する。
【0015】
マスク本体部20は、図1に示すように、第1の方向11(横方向)及びその第1の方向11と交差する第2の方向12(縦方向)にそれぞれ延在する平坦状の平面部20aを有する。ここでいう平面部20aが、本発明における「平面部」に相当する。また、ここでいう第1の方向11及び第2の方向12がそれぞれ、本発明における「第1の方向」及び「第2の方向」に相当する。マスク本体部20が横幅L1で縦幅L2(<L1)の長方形とされている場合には、第1の方向11はマスク本体部20の横幅方向としても規定され、また第2の方向12はマスク本体部20の縦幅方向としても規定される。このマスク本体部20の第1の方向11上の2つの端部領域21,21にはそれぞれ、接合点22が第2の方向12に沿って直線状に延在している。ここでいう端部領域21,21が、本発明における「端部領域」に相当する。この接合点22は、マスク本体部20と各耳掛け部30とを互いに融着(「溶着」ともいう)する接合部分として構成される。この場合の融着として、熱によるものや超音波によるものを適宜用いることができる。また、マスク本体部20の第2の方向12上の一方の端部領域23には、それぞれ第1の方向11に沿って直線状に延在する2つの接合点24,24が略平行に配置されている。これら接合点24,24によってマスク本体部20の内部に収容空間25が形成され、この収容空間25には、マスク着用者の鼻上部の形状に適合するように変形可能なノーズフィット部材26が収容されている。なお、上記の接合点22,24における各融着に代えて、或いは加えて、接着剤による接合を用いることもできる。
【0016】
マスク本体部20は、平面部20a上を第1の方向11に延在して形成される複数の襞(プリーツ)27を備えている。これらの襞27は、端部領域21においては襞付けされた状態で接合点22によって接合されており、従って端部領域21での第2の方向12に沿った展開動作が阻止され、且つ第1の方向11上の両端部領域21,21間の中間領域28にて当該展開動作が可能となるように構成されている。ここでいう襞27及び中間領域28がそれぞれ、本発明における「襞」及び「中間領域」に相当する。
【0017】
図2に示すように、一対の耳掛け部30,30は、マスク本体部20の内面側に接合された耳掛けシート30aによって形成されている。この耳掛けシート30aは、単一のシート状不織布からなる。即ち、この耳掛けシート30aでは、2つの耳掛け部30,30が互いに連接しつつ同一平面上に延在している。また、マスク10は、当該マスク10の平面視でマスク本体部20の外形内に耳掛けシート30aが収まるように構成されている。これにより、マスク本体部20と各耳掛け部30との重なり部分をそのまま接合することによって、マスクを製造することができ、特にマスクを連続的に製造する際の取り扱いが容易になる。また、単一シート状の耳掛けシート30aによって両耳掛け部30,30が構成されるため、マスク製造時の部品点数を抑えることができる。この場合、マスク本体部20の第1の方向11又は第2の方向12の長さが、耳掛けシート30a(耳掛け部30)の第1の方向11又は第2の方向12の長さと概ね合致する構成であってもよいし、或いはマスク本体部20の第1の方向11又は第2の方向12の長さが、耳掛けシート30a(耳掛け部30)の第1の方向11又は第2の方向12の長さを上回る構成であってもよい。これにより、マスク10の平面視でマスク本体部20の外形内に一対の耳掛け部30,30が収まることとなる。一方では、耳掛けシート30aは、マスク10の平面視でその一部がマスク本体部20の外形からはみ出すように配置構成されてもよい。
【0018】
耳掛けシート30aの各耳掛け部30は、単一のシート状不織布で互いに一体状に形成された接合部31及び環状部32によって構成されている。これら接合部31及び環状部32はそれぞれ、所定のシート幅を有する。必要に応じては、別々に製造された接合部31及び環状部32が互いに接合されていてもよい。また、接合部31は、マスク本体部20の端部領域21に接合点22を介して融着によって接合されている。即ち、マスク本体部20の一方の端部領域21に一方の耳掛け部30の接合部31が接合され、またマスク本体部20の他方の端部領域21に他方の耳掛け部30の接合部31が接合されている。これにより、耳掛け部30の構造、及び接合部31と端部領域21との接合構造を簡素化できる。特に、接合部31は、第2の方向12について端部領域21のほぼ全体にわたり延在しつつ、接合点22を介して端部領域21に融着された部位として構成される。この場合、マスク本体部20の端部領域21の第2の方向12についての2つの角部(図2中の上下の角部)はそれぞれ、耳掛け部30の接合部31の第2の方向12についての2つの角部(図2中の上下の角部)に合致するのが好ましい。
【0019】
各耳掛け部30の接合部31及び環状部32は互いに環状に連接されており、これにより当該耳掛け部30の開口部分である耳掛け空間33を形成している。即ち、各耳掛け部30は、その全体的な形状が接合部31及び環状部32によってD字状ないしO字状となるように構成されている。耳掛け空間33は、接合部31と環状部32との間に閉じた状態で形成され、環状部32がマスク着用者の耳に引っ掛けられた場合に当該耳を収容する機能を果たす。本実施の形態では、耳掛け部30の接合部31及び環状部32がそれぞれ所定のシート幅を有する構成であるため、耳掛け部をゴム紐で構成した場合に比べて、マスク着用時に耳掛け部の張力がマスク着用者の耳の一部に集中するのが抑えられるため、マスク着用者は耳の痛みを感じにくいという利点がある。各接合部31は、第2の方向12について2つの縁部領域31a,31bを備えている。各環状部32は、接合部31の第2の方向12上の一方の縁部領域31aから延出する第1延出部32aと、接合部31の第2の方向12上の他方の縁部領域31bから延出して第1延出部32aに連接される第2延出部32bと、を備えている。ここでいう接合部31、環状部32、第1延出部32a、第2延出部32b及び耳掛け空間33、がそれぞれ、本発明における「接合部」、「環状部」、「第1延出部」、「第2延出部」及び「耳掛け空間」に相当する。上記構成によれば、耳掛け空間33を有する耳掛け部30を、耳掛け空間33に対応した簡単な形状の打ち抜き部材による打ち抜き加工によって製造することができる。その変更例として、耳掛け部30が切り込み加工された開口部分によって耳掛け空間33を形成することもできる。
【0020】
また、耳掛けシート30aは、一方の耳掛け部30の環状部32と、他方の耳掛け部30の環状部32との連接部分に接続部34が設けられている。これにより、単一シート状の耳掛けシート30aにおいて両耳掛け部30,30が環状部32にて互いに連接した構成が実現される。この接続部34は、一方の耳掛け部30と他方の耳掛け部30を、マスク本体部20の外形内で互いに接続する接続部分として構成されている。これにより、両耳掛け部30,30が予め接続部34で接続されて一体化された状態での取り扱いが可能となる。また、両耳掛け部30,30を互いに接続する接続部34を設けることで、マスク10が未使用状態であることが容易に認識される。
【0021】
この接続部34は、各耳掛け部30を手で引っ張ることによって当該接続部34の接続が解除可能となるように、即ち規定の引っ張り荷重を下回る接続強度を有するように構成されている。このため、典型的には、一方の環状部32と他方の環状部32とをミシン目や接着剤を介して互いに接続する形態などを用いることによって接続部34を構成するのが好ましい。これにより、マスク着用者は、一対の耳掛け部30,30の接続部34での接続を容易に解除してマスクの使用に備えることができる。この接続部34は、1点又は複数点からなる接続部分であってもよいし、第2の方向12に沿って延在する線状の接続部分であってもよい。また、この接続部34は、ハサミやカッター等での切断処理を要する程度の接続強度を有する接続部分あってもよい。また、両耳掛け部30,30は、単一の耳掛けシート30aによって一体状に構成される形態に代えて、それぞれ別体に構成される形態であってもよい。別体の場合は、両耳掛け部30,30が接続部で互いに接続された状態で同一平面上に延在する構成であってもよいし、或いは接続部において互いに重なり合う構成であってもよい。
【0022】
上記構成のマスク本体部20の断面構造については、図3及び図4が参照される。これらの図面に示す第3の方向13は、第1の方向11及び第2の方向12の双方に交差する方向として構成される。この第3の方向13は、マスク本体部20又は耳掛けシート30a(耳掛け部30)のシート厚み方向として、或いはマスク本体部30と耳掛けシート30a(耳掛け部30)との重ね合わせ方向としても規定される。図3によれば、複数の襞27は、マスク本体部20の外面側は折り山(「折り目」ないし「襞山」ともいう)が上下に外側に折られ、マスク本体部20の内面側の折り山が突合せ状に形成された襞付けの形態(「箱折り」ともう)として構成される。なお、図3に示すこの襞付けの形態は、必要に応じて適宜に選択が可能であり、例えば図4に示すような、マスク本体部20の外面側に折り山を繰り返し作る襞付けの形態や、図5に示すような、マスク本体部20の内面側に折り山を繰り返し作る襞付けの形態を採用することもできる。
【0023】
図6に示すように、図3中のマスク本体部20は、更にいずれもシート状不織布からなる外側シート20b、及び中間シート20c及び内側シート20dを含み、これらシートが第3の方向13について順次重ねられた3層構造になっている。
【0024】
外側シート20bは、マスク本体部20の外面、即ちマスク着用状態で外側に露出する面を有する。内側シート20dは、マスク本体部20の内面、即ちマスク着用状態でマスク着用者に対向する面を有する。これら外側シート20b及び内側シート20dはいずれも、既知のスパンボンド(SB)不織布、ポイントボンド(PB)不織布、スパンレース(SL)不織布、エアスルー(AT)不織布などによって構成され、その目付が例えば10〜100g/mの範囲で適宜設定されるのが好ましい。これによりマスク本体部20の所望の通気性が確保される。
【0025】
中間シート20cは、塵埃、細菌、ウィルスなどについて所定の捕集性を有するフィルターシートとして構成される。この中間シート20cは、既知のメルトブローン(MB)不織布などによって構成され、その目付が例えば1〜50g/mの範囲で適宜設定されるのが好ましい。これによりマスク本体部20の所望の通気性が確保され、且つ所望の捕集性が確保される。なお、この中間シート20cを、ホットメルト接着剤(HMA)を用いて外側シート20bと一体化された構成を採用することもできる。
【0026】
一方、耳掛け部30の材質として、既知の伸縮スパンボンド(SB)不織布、伸縮スパンボンド・メルトブローン・スパンボンド(SMS)不織布、伸縮スパンボンド・フイルム・スパンボンド不織布、伸張性スパンレース不織布、伸縮ホットメルト接着剤(HMA)不織布などを用いることができ、また当該不織布の目付が例えば20〜120g/mの範囲で適宜設定されるのが好ましい。これにより耳掛け部30の所望の伸縮性が確保される。
【0027】
図7には、マスク本体部20の複数の襞27が第2の方向12に沿って展開された様子が示されている。図7に示すように、マスク使用時においてマスク本体部20は、各端部領域21では複数の襞27の第2の方向12に沿った展開動作が阻止される一方で、中間領域28では、複数の襞27の第2の方向12に沿った展開動作(「マスク本体部20の展開動作」ともいう)が可能とされている。このとき、各端部領域21は、第2の方向12の沿った長さが拡張されることなく湾曲形状をなす一方で、中間領域28は、第2の方向12の沿った長さL3を拡張しつつ湾曲形状をなす。これにより、マスク本体部20は、マスク着用者側が凹んだ立体形状をなし、マスク本体部20の内面とマスク着用者との間に所定の口元空間29が形成される。一方で、耳掛け部30の環状部32がマスク着用者の耳に引っ掛けられて当該マスク着用者の顔面がマスク本体部20によって被覆される際、マスク本体部20の端部領域21が湾曲形状をなすため、当該端部領域21とマスク着用者の顔面との間に隙間が生じ易い。
【0028】
そこで本実施の形態のマスク10は、この隙間を抑えるべく、耳掛け部30の接合部31が、第2の方向12について端部領域21のほぼ全体にわたり長尺状に延在するように構成されるのが好ましい。これにより、マスク着用時に環状部32に生じる張力が接合部31に作用することで、接合部31がマスク着用者の頬部の形状に追従して当該頬部との密着性を高めることができ、特に端部領域21とマスク着用者の顔面との間の境界部(図7中の境界部41)に隙間が生じるのを抑えることができる。また、このとき、耳掛け部30の接合部31の上側の角部が、マスク本体部20の端部領域21の上側の角部に連接し、また耳掛け部30の接合部31の下側の角部が、マスク本体部20の端部領域21の下側の角部に連接される。これにより、図7に示すように、境界部41の両側の境界部42,43において、端部領域21とマスク着用者の顔面との間に隙間が生じるのを接合部31の上下の角部によって抑えることができる。かくして、マスク本体部20の端部領域21とマスク着用者の顔面との間に隙間が生じるのを、耳掛け部30の接合部31により第2の方向12について境界部41〜43の広範囲にわたって抑えることができる。
【0029】
ところで、各耳掛け部30は、所定のシート幅を有する構成上、マスク着用時に着用者の耳に向けて引っ張られたときの引張方向によっては当該耳掛け部30に弛みが生じる場合がある。この引張方向は、例えばマスク着用時にマスク本体部20が襞27の展開とともに平面形状から立体形状になる際の動作に伴って変化し、また着用者の耳の位置や顔の大きさ等に応じて変化する。特に、耳掛け部30のうちマスク本体部20との連接部分においては、当該耳掛け部30のシート幅方向の両側面のいずれか一方に弛みが生じ易く、この耳掛け部30の弛みがマスク着用者の頬部との間に隙間を形成させる要因となる。
【0030】
そこで本実施の形態のマスク10は、耳掛け部30の弛みの発生を抑えるべく、耳掛け部30のうちマスク本体部20との連接部分に弛み抑制機構を備えている。この弛み抑制機構は、図8が参照されるように、マスク装着時に耳掛け部30(環状部32)の第1延出部32a及び第2延出部32bの少なくとも一方を、マスク着用者の耳の付け根の上縁(図9中の「上縁51」)又は下縁(図9中の「下縁52」)へと当該延出部の弛みを抑えた状態で延在させる機能を果たす。この弛み抑制機構は、典型的には、耳掛け部30の第1延出部32a及び第2延出部32bに関し、当該延出部のマスク装着前の延出方向とマスク装着時の引張方向とが概ね合致するように構成された下記の第1の連接構造及び第2の連接構造のうちの少なくとも一方を含む。即ち、この弛み抑制機構は、第1の連接構造及び第2の連接構造のいずれか一方を含む形態であってもよいし、或いは第1の連接構造及び第2の連接構造の双方を含む形態であってもよい。なお、耳の付け根は、耳と頭との境界部分であって、耳掛け部30が耳に引っ掛けられた場合に、実質的に当該耳掛け部30によって押圧される部分として特定される。
【0031】
<第1の連接構造>
第1の連接構造は、図8に示すように、マスク本体部10の端部領域21の延在線S1と、耳掛け部30の第1延出部32aの延出線S2とがなす耳掛け空間33側の角度αが所定の設定角度に設定されるように耳掛け部30がマスク本体部20に連接された連接部として構成されている。この第1の連接構造では、端部領域21の延在線S1は、第2の方向12上の直線として構成され、第1延出部32aの延出線S2は、当該第1延出部32aの幅方向(第2の方向12)についての中心線として構成されるのが好ましい。後述の測定結果に基づいた場合、前述の角度αの設定角度は、80°から140°までの間の適正範囲に属するのが好ましい。これにより、マスク装着時において、第1延出部32aをマスク着用者の耳の付け根の上縁へと当該延出部の弛みを抑えた状態で延在させることができる。
【0032】
<第2の連接構造>
第2の連接構造は、図8に示すように、マスク本体部10の端部領域21の延在線S1と、耳掛け部30の第2延出部32bの延出線S3とがなす耳掛け空間33側の角度βが所定の設定角度に設定されるように耳掛け部30がマスク本体部20に連接された連接部として構成されている。この第2の連接構造では、端部領域21の延在線S1は、第2の方向12上の直線として構成され、第2延出部32bの延出線S3は、当該第2延出部32bの幅方向(第2の方向12)についての中心線として構成されるのが好ましい。後述の測定結果に基づいた場合、前述の角度βの設定角度は、70°から130°までの間の適正範囲に属するのが好ましい。これにより、マスク装着時において、第2延出部32bをマスク着用者の耳の付け根の下縁へと当該延出部の弛みを抑えた状態で延在させることができる。
【0033】
本発明者らは、角度α及びβの設定角度に関する前述のような適正範囲を導出するための測定を実施した。以下、図9を参照しつつ、この測定に係る実施例1〜4について説明する。
【0034】
<実施例1>
(実施例1の測定条件)
上記構成のマスク10の具体的な構造として、L1=175[mm]、L2=90[mm]、L3=154[mm]、R=38[mm]、L1/(R・L2)=0.0512の寸法設定を前提条件とし、角度αを50°〜160°(10°刻みの12パターン)の範囲内で変化させ、また角度βを40°〜150°(10°刻みの12パターン)の範囲内で変化させた複数のマスクサンプルを作成した。この場合、角度αの範囲の中央値α1が105[mm]であり、角度βの範囲の中央値β1が95[mm]であった。そして、各マスクサンプルを実際の人間の顔に装着した場合に、或いはマスク着用者を模した人形(ドール)に装着した場合に、耳掛け部30の弛みに起因する隙間を実際に確認する測定を行った。
【0035】
(実施例1の測定結果)
角度αが予め50°に設定されたマスクサンプルを装着した場合、図9に示すように、各耳掛け部30の第1延出部32aの幅方向上の両縁部35,36のうち、特に耳掛け空間33側とは反対側の縁部35(「上縁部」ともいう)に弛みが生じ、これにより頬上部領域45に判定基準を上回る隙間が認められた。また、角度αが予め160°に設定されたマスクサンプルを装着した場合、第1延出部32aの両縁部35,36のうち、特に耳掛け空間33側の縁部36(「下縁部」ともいう)に弛みが生じ、これにより頬領域44に判定基準を上回る隙間が認められた。一方で、角度αが予め60°から150°までの範囲に設定されたその他のマスクサンプルを装着した場合、頬領域44及び頬上部領域45のいずれにおいても、各耳掛け部30とマスク着用者の顔面との間の隙間は認められなかった。
【0036】
同様に、角度βが予め40°に設定されたマスクサンプルを装着した場合、各耳掛け部30の第2延出部32bの幅方向上の両縁部37,38のうち、特に耳掛け空間33側とは反対側の縁部38(「下縁部」ともいう)に弛みが生じ、これにより頬下部領域46に判定基準を上回る隙間が認められた。また、角度βが予め150°に設定されたマスクサンプルを装着した場合、第2延出部32bの両縁部37,38のうち、特に耳掛け空間33側の縁部37(「上縁部」ともいう)に弛みが生じ、これにより頬領域44に判定基準を上回る隙間が認められた。一方で、角度βが予め50°から140°までの範囲に設定されたその他のマスクサンプルを装着した場合、頬領域44及び頬下部領域46のいずれにおいても、各耳掛け部30とマスク着用者の顔面との間の隙間は認められなかった。
【0037】
<実施例2>
(実施例2の測定条件)
上記構成のマスク10の具体的な構造として、L1=175[mm]、L2=80[mm]、L3=144[mm]、R=38[mm]、L1/(R・L2)=0.0576の寸法設定を前提条件とし、角度αを50°〜170°(10°刻みの13パターン)の範囲内で変化させ、また角度βを60°〜170°(10°刻みの12パターン)の範囲内で変化させた複数のマスクサンプルを作成した。この場合、角度αの上記範囲の中央値α1が115[mm]であり、角度βの上記範囲の中央値β1が115[mm]であった。そして、各マスクサンプルについての隙間測定を実施例1と同様に実施した。
【0038】
(実施例2の測定結果)
角度αが予め50°及び60°に設定されたマスクサンプルを装着した場合、図9に示すように、第1延出部32aの両縁部35,36のうち、特に耳掛け空間33側とは反対側の縁部35に弛みが生じ、これにより頬上部領域45に判定基準を上回る隙間が認められた。また、角度αが予め170°に設定されたマスクサンプルを装着した場合、第1延出部32aの両縁部35,36のうち、特に耳掛け空間33側の縁部36に弛みが生じ、これにより頬領域44に判定基準を上回る隙間が認められた。一方で、角度αが予め70°から160°までの範囲に設定されたその他のマスクサンプルを装着した場合、頬領域44及び頬上部領域45のいずれにおいても、各耳掛け部30とマスク着用者の顔面との間の隙間は認められなかった。
【0039】
同様に、角度βが予め60°に設定されたマスクサンプルを装着した場合、第2延出部32bの両縁部37,38のうち、特に耳掛け空間33側とは反対側の縁部38に弛みが生じ、これにより頬下部領域46に判定基準を上回る隙間が認められた。また、角度βが予め170°に設定されたマスクサンプルを装着した場合、第2延出部32bの両縁部37,38のうち、特に耳掛け空間33側の縁部37に弛みが生じ、これにより頬領域44に判定基準を上回る隙間が認められた。一方で、角度βが予め70°から160°までの範囲に設定されたその他のマスクサンプルを装着した場合、頬領域44及び頬下部領域46のいずれにおいても、各耳掛け部30とマスク着用者の顔面との間の隙間は認められなかった。
【0040】
<実施例3>
(実施例3の測定条件)
上記構成のマスク10の具体的な構造として、L1=175[mm]、L2=100[mm]、L3=164[mm]、R=41[mm]、L1/(R・L2)=0.0427の寸法設定を前提条件とし、角度αを30°〜150°(10°刻みの13パターン)の範囲内で変化させ、また角度βを30°〜150°(10°刻みの13パターン)の範囲内で変化させた複数のマスクサンプルを作成した。この場合、角度αの上記範囲の中央値α1が90[mm]であり、角度βの上記範囲の中央値β1が85[mm]であった。そして、各マスクサンプルについての隙間測定を実施例1と同様に実施した。
【0041】
(実施例3の測定結果)
角度αが予め30°に設定されたマスクサンプルを装着した場合、図9に示すように、第1延出部32aの両縁部35,36のうち、特に耳掛け空間33側とは反対側の縁部35に弛みが生じ、これにより頬上部領域45に判定基準を上回る隙間が認められた。また、角度αが予め150°に設定されたマスクサンプルを装着した場合、第1延出部32aの両縁部35,36のうち、特に耳掛け空間33側の縁部36に弛みが生じ、これにより頬領域44に判定基準を上回る隙間が認められた。一方で、角度αが予め40°から140°までの範囲に設定されたその他のマスクサンプルを装着した場合、頬領域44及び頬上部領域45のいずれにおいても、各耳掛け部30とマスク着用者の顔面との間の隙間は認められなかった。
【0042】
同様に、角度βが予め30°に設定されたマスクサンプルを装着した場合、第2延出部32bの両縁部37,38のうち、特に耳掛け空間33側とは反対側の縁部38に弛みが生じ、これにより頬下部領域46に判定基準を上回る隙間が認められた。また、角度βが予め140°及び150°に設定されたマスクサンプルを装着した場合、第2延出部32bの両縁部37,38のうち、特に耳掛け空間33側の縁部37に弛みが生じ、これにより頬領域44に判定基準を上回る隙間が認められた。一方で、角度βが予め40°から130°までの範囲に設定されたその他のマスクサンプルを装着した場合、頬領域44及び頬下部領域46のいずれにおいても、各耳掛け部30とマスク着用者の顔面との間の隙間は認められなかった。
【0043】
<実施例4>
(実施例4の測定条件)
上記構成のマスク10の具体的な構造として、L1=175[mm]、L2=90[mm]、L3=170[mm]、R=32[mm]、L1/(R・L2)=0.0608の寸法設定を前提条件とし、角度αを60°〜170°(10°刻みの12パターン)の範囲内で変化させ、また角度βを60°〜170°(10°刻みの12パターン)の範囲内で変化させた複数のマスクサンプルを作成した。この場合、角度αの上記範囲の中央値α1が120[mm]であり、角度βの上記範囲の中央値β1が115[mm]であった。そして、各マスクサンプルについての隙間測定を実施例1と同様に実施した。
【0044】
(実施例4の測定結果)
角度αが予め60°及び70°に設定されたマスクサンプルを装着した場合、図9に示すように、第1延出部32aの両縁部35,36のうち、特に耳掛け空間33側とは反対側の縁部35に弛みが生じ、これにより頬上部領域45に判定基準を上回る隙間が認められた。また、角度αが予め170°に設定されたマスクサンプルを装着した場合、第1延出部32aの両縁部35,36のうち、特に耳掛け空間33側の縁部36に弛みが生じ、これにより頬領域44に判定基準を上回る隙間が認められた。一方で、角度αが予め80°から160°までの範囲に設定されたその他のマスクサンプルを装着した場合、頬領域44及び頬上部領域45のいずれにおいても、各耳掛け部30とマスク着用者の顔面との間の隙間は認められなかった。
【0045】
同様に、角度βが予め60°に設定されたマスクサンプルを装着した場合、第2延出部32bの両縁部37,38のうち、特に耳掛け空間33側とは反対側の縁部38に弛みが生じ、これにより頬下部領域46に判定基準を上回る隙間が認められた。また、角度βが予め170°及び150°に設定されたマスクサンプルを装着した場合、第2延出部32bの両縁部37,38のうち、特に耳掛け空間33側の縁部37に弛みが生じ、これにより頬領域44に判定基準を上回る隙間が認められた。一方で、角度βが予め70°から160°までの範囲に設定されたその他のマスクサンプルを装着した場合、頬領域44及び頬下部領域46のいずれにおいても、各耳掛け部30とマスク着用者の顔面との間の隙間は認められなかった。
【0046】
上記の測定結果に基づいた場合、角度αの範囲を好ましくは80°から140°までとし、また角度βの範囲を好ましくは70°から130°までとすることによって、マスク着用者の頬部と各耳掛け部30との間の隙間防止に有効であることが確認された。即ち、実施例1〜4のような寸法設定が異なる形態のマスクであっても、各耳掛け部30(環状部32)の第1延出部32a及び第2延出部32bをそれぞれ、マスク着用者の耳50の付け根の上縁51及び下縁52へと当該延出部の弛みを抑えた状態で延在させることができ、角度α,βについての当該範囲は、マスク着用者の頬部と各耳掛け部30との間の隙間防止に有効である。
【0047】
なお、実施例1〜4に基づいた場合、マスク着用者の頬部と各耳掛け部30との間の隙間防止に有効な形態では、前述の角度α1及びβ1はそれぞれ、L1/(R・L2)に比例する近似式で示される。具体的には、α1=1657・{L1/(R・L2)}+20の近似式、及びβ1=1825・{L1/(R・L2)}+6の近似式を用いることができる。
【0048】
また、前述の連接構造の一例が図10に示されている。図10には、第1の連接構造における角度αが90°を上回る角度に設定され、且つ第2の連接構造における角度βが90°を上回る角度に設定された耳掛け部30が示されている。図10の変更例として、角度α及び角度βのいずれか一方を90°以下の角度に設定した耳掛け部30を採用することもできる。
【0049】
ここで、マスク使用時にマスク本体部20が襞27を介して展開し、これに伴ってマスク本体部20の端部領域21が湾曲したとき、耳掛け部30の第1延出部32aと第2延出部32aとの間の最短距離が湾曲前よりも小さくなって耳掛け空間33のマスク上下方向の大きさが狭くなるため、マスク着用者の耳に耳掛け部30を引っ掛けにくくなるという問題が生じる。
【0050】
そこで、本実施の形態では、マスク本体部20と各耳掛け部30との間に、間隔設定機構が設けられている。この間隔設定機構は、マスク本体部20の端部領域21の湾曲時に第1延出部32a及び第2延出部32bを、予め設定された所定間隔を隔てて互いに平行状に延在させるための機能を果たす。具体的には、この間隔設定機構は、図10に示す例のように、マスク本体部20の端部領域21の湾曲前の角度αが90°を上回るように構成された第1の連接構造と、マスク本体部20の端部領域21の湾曲前の角度βが90°を上回るように構成された第2の連接構造を含む。これらの第1の連接構造及び第2の連接構造によって、本発明における「間隔設定機構」及び「連接構造」が構成される。
【0051】
より好ましくは、第1の連接構造にかかる角度αが90°よりも大きく140°以下の設定角度となり、第2の連接構造にかかる角度βが90°よりも大きく130°以下の設定角度となるように、間隔設定機構を構成することができる。即ち、これらの連接構造によって、マスク本体部20の端部領域21の湾曲前では、各耳掛け部30の第1延出部32aと第2延出部32bとの間隔が、マスク本体部20の端部領域21から離間するにつれて直線状に拡張されたテーパー形状が形成される。これにより、各耳掛け部30の第1延出部32a及び第2延出部32bの延出角度をそれぞれ適正に設定することで、マスク使用時にマスク本体部20の端部領域21が湾曲したときでも、第1延出部32aと第2延出部32aとの間隔が予め定められた所定間隔を下回らないようにすることができる。例えば、図9に示すように、マスク着用者の耳50の付け根の上縁51と下縁52との間の長さL4を、当該所定間隔として定めることができる。即ち、上記間隔設定機構では、第1延出部32aと第2延出部32bとの間の最短距離がマスク本体部20の端部領域21の湾曲時に小さくなる点に鑑みて、それを予め補償するように上記の角度α及びβが設定される。これにより、マスク使用時に耳掛け空間33のマスク上下方向の大きさが所望の大きさよりも狭くなるのが確実に防止される。従って、耳掛け空間33の所望の形状が確保されることとなり、マスク着用者の耳に耳掛け部30を引っ掛け易くなり、マスクの装着性向上を図ることができる。
【0052】
(他の実施の形態)
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0053】
上記実施の形態では、マスク本体部20を3層のシート不織布からなる3層構造とする場合について記載したが、本発明では、シート不織布の数、種類、積層数については必要に応じて適宜選択が可能である。
【0054】
また、上記実施の形態では、一回使用ないし数回使用を目安とした使い捨てタイプのマスクについて記載したが、マスク本体部20や耳掛け部30の素材を適宜選択することによって、洗濯などを行ったうえで繰り返し使用することが可能なタイプのマスクに対し本発明を適用することもできる。
【0055】
上記実施の形態や種々の変更例の記載に基づいた場合、本発明では、以下の各態様を採用することができる。
【0056】
(態様1)
「マスク本体部と、前記マスク本体部に連接される耳掛け部と、を備えるマスクであって、
前記マスク本体部は、所定の第1の方向及び前記第1の方向と交差する第2の方向にそれぞれ延在する平面部と、前記平面部上を前記第1の方向に延在して形成される襞と、前記第1の方向上の端部領域と、を有し、
前記耳掛け部は、接合部と、環状部を有し、
前記接合部は、シート状に形成され、前記第2の方向について前記端部領域のほぼ全体にわたり長尺状に延在しつつ前記端部領域に接合され、
前記環状部は、シート状に形成され、前記接合部と一体状とされて前記接合部と共に耳掛け空間を形成し、また前記接合部の前記第2の方向上の一方の縁部領域から延出する第1延出部と、前記接合部の前記第2の方向上の他方の縁部領域から延出して前記第1延出部に連接する第2延出部とを含み、
前記マスク本体部は、前記端部領域にて前記襞の前記第2の方向に沿った展開動作が阻止され、且つ前記第1の方向上の両端部領域間の中間領域にて前記襞の前記展開動作が可能とされ、前記中間領域での前記襞の前記展開動作に伴って前記端部領域が湾曲するように構成され、
更に、前記耳掛け部のうち前記マスク本体部との連接部分に、前記端部領域の湾曲時に前記第1延出部及び前記第2延出部を所定間隔で互いに平行状に延在させるための間隔設定機構が設けられていることを特徴とするマスク」という態様を採り得る。
【0057】
(態様2)
「態様1に記載のマスクであって、
前記間隔設定機構は、前記端部領域の湾曲時に前記第1延出部と前記第2延出部との前記所定間隔がマスク着用者の耳の付け根の上縁と下縁との間の長さを上回るように設定されていることを特徴とするマスク」という態様を採り得る。
【0058】
(態様3)
「態様2に記載のマスクであって、
前記間隔設定機構は、前記端部領域の湾曲前に、前記マスク本体部の前記端部領域の延在線と、前記耳掛け部の前記第1延出部の延出線とによって形成される前記耳掛け空間側の角度が90°よりも大きく140°以下の設定角度となり、且つ前記マスク本体部の前記端部領域の延在線と、前記耳掛け部の前記第2延出部の延出線とによって形成される前記耳掛け空間側の角度が90°よりも大きく130°以下の設定角度となるように、前記耳掛け部が前記マスク本体部に連接された構成の連接構造を含み、これにより前記端部領域の湾曲時に前記第1延出部及び前記第2延出部が前記所定間隔を隔てて互いに平行状に延在することを特徴とするマスク」という態様を採り得る。
【0059】
(態様4)
「態様1から3のうちのいずれかに記載のマスクであって、
前記接合部及び前記環状部は、単一のシート状不織布で一体状に形成されており、さらに前記接合部が前記マスク本体部の前記端部領域に熱融着によって接合されていることを特徴とするマスク」という態様を採り得る。
【0060】
(態様5)
「態様4に記載のマスクであって、
前記接合部及び前記環状部は互いに環状に連接されており、前記耳掛け空間が、前記接合部と前記環状部との間に閉じた状態で形成されていることを特徴とするマスク」という態様を採り得る。
【0061】
(態様6)
「態様1から5のうちのいずれかに記載のマスクであって、
前記耳掛け部は、前記マスク本体部の前記第1の方向上の両端部領域のそれぞれに接合され、
当該マスクの平面視で前記マスク本体部の外形内に前記両端部領域に接合された両耳掛け部が収まるように構成されていることを特徴とするマスク」という態様を採り得る。
【0062】
(態様7)
「態様6に記載のマスクであって、
前記両耳掛け部を、前記マスク本体部の外形内で互いに接続する接続部を有することを特徴とするマスク」という態様を採り得る。
【0063】
(態様8)
「態様7に記載のマスクであって、
当該マスクの平面視で前記マスク本体部の外形内に収まるように接合された単一シート状の耳掛けシートを備え、
前記耳掛けシートは、前記両耳掛け部が前記接続部で互いに接続された状態で同一平面上に延在するように構成されており、これにより当該マスクの平面視で前記マスク本体部の外形内に前記両耳掛け部が収まることを特徴とするマスク」という態様を採り得る。
【0064】
(態様9)
「態様8に記載のマスクであって、
前記耳掛けシートは、一方の前記耳掛け部の前記環状部と、他方の前記耳掛け部の前記環状部とが互いに連接する構成であり、その連接部分に前記接続部が設けられていることを特徴とするマスク」という態様を採り得る。
【0065】
(態様10)
「態様7から9のうちのいずれかに記載のマスクであって、
前記接続部は、各耳掛け部を手で引っ張ることによって当該接続部の接続が解除可能となるように構成されていることを特徴とするマスク」という態様を採り得る。
【0066】
(態様11)
「態様7から10のうちのいずれかに記載のマスクであって、
前記接続部は、1又は複数の接続点によって構成されていることを特徴とするマスク」という態様を採り得る。
【0067】
(態様12)
「態様1から11のうちのいずれかに記載のマスクであって、
前記マスク本体部の前記第2の方向上の一方の端部領域に、マスク着用者の鼻上部の形状に適合するように変形可能なノーズフィット部材が設けられていることを特徴とするマスク」という態様を採り得る。
【0068】
上記実施の形態や種々の変更例の記載に基づいた場合、本発明では、以下の各アスペクトを採用することが可能である。
【0069】
(アスペクト1)
マスク本体部と、前記マスク本体部に連接される耳掛け部と、を備えるマスクであって、
前記マスク本体部は、所定の第1の方向及び前記第1の方向と交差する第2の方向にそれぞれ延在する平面部と、前記平面部上を前記第1の方向に延在して形成される襞と、前記第1の方向上の端部領域と、を有し、
前記耳掛け部は、接合部と、環状部を有し、
前記接合部は、シート状に形成され、前記第2の方向について前記端部領域のほぼ全体にわたり長尺状に延在しつつ前記端部領域に接合され、
前記環状部は、シート状に形成され、前記接合部と一体状とされて前記接合部と共に耳掛け空間を形成し、また前記接合部の前記第2の方向上の一方の縁部領域から延出する第1延出部と、前記接合部の前記第2の方向上の他方の縁部領域から延出して前記第1延出部に連接する第2延出部とを含み、
前記マスク本体部は、前記端部領域にて前記襞の前記第2の方向に沿った展開動作が阻止され、且つ前記第1の方向上の両端部領域間の中間領域にて前記襞の前記展開動作が可能とされ、前記中間領域での前記襞の前記展開動作に伴って前記端部領域が湾曲するように構成され、
更に、前記耳掛け部のうち前記マスク本体部との連接部分に、前記端部領域の湾曲時に前記第1延出部及び前記第2延出部を所定間隔で互いに平行状に延在させるための間隔設定機構が設けられていることを特徴とするマスク。
【0070】
(アスペクト2)
アスペクト1に記載のマスクであって、
前記間隔設定機構は、前記端部領域の湾曲時に前記第1延出部と前記第2延出部との前記所定間隔がマスク着用者の耳の付け根の上縁と下縁との間の長さを上回るように設定されていることを特徴とするマスク。
【0071】
(アスペクト3)
アスペクト1に記載のマスクであって、
前記間隔設定機構は、前記端部領域の湾曲前に、前記マスク本体部の前記端部領域の延在線と、前記耳掛け部の前記第1延出部の延出線とによって形成される前記耳掛け空間側の角度が90°よりも大きく140°以下の設定角度となり、且つ前記マスク本体部の前記端部領域の延在線と、前記耳掛け部の前記第2延出部の延出線とによって形成される前記耳掛け空間側の角度が90°よりも大きく130°以下の設定角度となるように、前記耳掛け部が前記マスク本体部に連接された構成の連接構造を含み、これにより前記端部領域の湾曲時に前記第1延出部及び前記第2延出部が前記所定間隔を隔てて互いに平行状に延在することを特徴とするマスク。
【0072】
(アスペクト4)
アスペクト1に記載のマスクであって、
前記接合部及び前記環状部は、単一のシート状不織布で一体状に形成されており、さらに前記接合部が前記マスク本体部の前記端部領域に熱融着によって接合されていることを特徴とするマスク。
【0073】
(アスペクト5)
アスペクト4に記載のマスクであって、
前記接合部及び前記環状部は互いに環状に連接されており、前記耳掛け空間が、前記接合部と前記環状部との間に閉じた状態で形成されていることを特徴とするマスク。
【0074】
(アスペクト6)
アスペクト1に記載のマスクであって、
前記耳掛け部は、前記マスク本体部の前記第1の方向上の両端部領域のそれぞれに接合され、
当該マスクの平面視で前記マスク本体部の外形内に前記両端部領域に接合された両耳掛け部が収まるように構成されていることを特徴とするマスク。
【0075】
(アスペクト7)
アスペクト6に記載のマスクであって、
前記両耳掛け部を、前記マスク本体部の外形内で互いに接続する接続部を有することを特徴とするマスク。
【0076】
(アスペクト8)
アスペクト7に記載のマスクであって、
当該マスクの平面視で前記マスク本体部の外形内に収まるように接合された単一シート状の耳掛けシートを備え、
前記耳掛けシートは、前記両耳掛け部が前記接続部で互いに接続された状態で同一平面上に延在するように構成されており、これにより当該マスクの平面視で前記マスク本体部の外形内に前記両耳掛け部が収まることを特徴とするマスク。
【0077】
(アスペクト9)
アスペクト8に記載のマスクであって、
前記耳掛けシートは、一方の前記耳掛け部の前記環状部と、他方の前記耳掛け部の前記環状部とが互いに連接する構成であり、その連接部分に前記接続部が設けられていることを特徴とするマスク。
【0078】
(アスペクト10)
アスペクト7に記載のマスクであって、
前記接続部は、各耳掛け部を手で引っ張ることによって当該接続部の接続が解除可能となるように構成されていることを特徴とするマスク。
【0079】
(アスペクト11)
アスペクト7に記載のマスクであって、
前記接続部は、1又は複数の接続点によって構成されていることを特徴とするマスク。
【0080】
(アスペクト12)
アスペクト1に記載のマスクであって、
前記マスク本体部の前記第2の方向上の一方の端部領域に、マスク着用者の鼻上部の形状に適合するように変形可能なノーズフィット部材が設けられていることを特徴とするマスク。
【符号の説明】
【0081】
10 マスク
11 第1の方向
12 第2の方向
13 第3の方向
20 マスク本体部
20a 平面部
20b 外側シート
20c 中間シート
20d 内側シート
21 端部領域
22 接合点
23 端部領域
24 接合点
25 収容空間
26 ノーズフィット部材
27 襞
28 中間領域
29 口元空間
30 耳掛け部
30a 耳掛けシート
31 接合部
32 環状部
32a 第1延出部
32b 第2延出部
33 耳掛け空間
34 接続部
35,36,37,38 縁部
41,42,43 境界部
44 頬領域
45 頬上部領域
46 頬下部領域
50 耳
51 上縁
52 下縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク本体部と、前記マスク本体部に連接される耳掛け部と、を備えるマスクであって、
前記マスク本体部は、所定の第1の方向及び前記第1の方向と交差する第2の方向にそれぞれ延在する平面部と、前記平面部上を前記第1の方向に延在して形成される襞と、前記第1の方向上の端部領域と、を有し、
前記耳掛け部は、接合部と、環状部を有し、
前記接合部は、シート状に形成され、前記第2の方向について前記端部領域のほぼ全体にわたり長尺状に延在しつつ前記端部領域に接合され、
前記環状部は、シート状に形成され、前記接合部と一体状とされて前記接合部と共に耳掛け空間を形成し、また前記接合部の前記第2の方向上の一方の縁部領域から延出する第1延出部と、前記接合部の前記第2の方向上の他方の縁部領域から延出して前記第1延出部に連接する第2延出部とを含み、
前記マスク本体部は、前記端部領域にて前記襞の前記第2の方向に沿った展開動作が阻止され、且つ前記第1の方向上の両端部領域間の中間領域にて前記襞の前記展開動作が可能とされ、前記中間領域での前記襞の前記展開動作に伴って前記端部領域が湾曲するように構成され、
更に、前記耳掛け部のうち前記マスク本体部との連接部分に、前記端部領域の湾曲時に前記第1延出部及び前記第2延出部を所定間隔で互いに平行状に延在させるための間隔設定機構が設けられていることを特徴とするマスク。
【請求項2】
請求項1に記載のマスクであって、
前記間隔設定機構は、前記端部領域の湾曲時に前記第1延出部と前記第2延出部との前記所定間隔がマスク着用者の耳の付け根の上縁と下縁との間の長さを上回るように設定されていることを特徴とするマスク。
【請求項3】
請求項2に記載のマスクであって、
前記間隔設定機構は、前記端部領域の湾曲前に、前記マスク本体部の前記端部領域の延在線と、前記耳掛け部の前記第1延出部の延出線とによって形成される前記耳掛け空間側の角度が90°よりも大きく140°以下の設定角度となり、且つ前記マスク本体部の前記端部領域の延在線と、前記耳掛け部の前記第2延出部の延出線とによって形成される前記耳掛け空間側の角度が90°よりも大きく130°以下の設定角度となるように、前記耳掛け部が前記マスク本体部に連接された構成の連接構造を含み、これにより前記端部領域の湾曲時に前記第1延出部及び前記第2延出部が前記所定間隔を隔てて互いに平行状に延在することを特徴とするマスク。
【請求項4】
請求項1から3のうちのいずれかに記載のマスクであって、
前記接合部及び前記環状部は、単一のシート状不織布で一体状に形成されており、さらに前記接合部が前記マスク本体部の前記端部領域に熱融着によって接合されていることを特徴とするマスク。
【請求項5】
請求項4に記載のマスクであって、
前記接合部及び前記環状部は互いに環状に連接されており、前記耳掛け空間が、前記接合部と前記環状部との間に閉じた状態で形成されていることを特徴とするマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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