説明

マゼンダインクおよびマゼンダインクのインクジェットプリントにおける使用

液体媒体および着色剤を含み、該液体媒体は水および 水混和性有機溶媒を含み、該着色剤は式(1)であり、該着色剤は該液体媒体中に溶解しているインク:


(式中、各Xは独立にスルホ、カルボキシ、ホスフェートおよびポリ(エチレンオキシド)から選択される水溶性基であり;各Zは独立に、場合によっては置換されているアルキル、場合によっては置換されているアリールまたは場合によっては置換されているアラルキルであり;各Qは独立に、直接結合または-NR-(式中、RはH、場合によっては置換されているアリールまたは場合によっては置換されているアルキルである);環A、B、CおよびDはそれぞれ独立に、未置換であるか又は場合によっては置換されているアルキル、場合によっては置換されているアリールおよび場合によっては置換されているアラルキルから選択される置換基を有し;各nは独立に1〜3であり;各mは独立に0、1または2であり;ただし、Qにより表される基の一方または両方が直接結合である場合には少なくとも1のnは少なくとも2の値を有する)。さらに、着色剤およびインクジェットプリント方法、カートリッジおよびプリント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色剤としての可溶性ペリレン化合物、インクおよびこのようなインクのインクジェットプリント("IJP")における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
IJPは、ノズルを基板と接触させずに、インク液滴を微小(ファイン)ノズルを通して基板上に噴射する非衝撃印刷技術である。
IJPにおいて用いられる染料およびインクに対する多くのデマンド性能要求がある。例えば、それらは、望ましくは良好な耐水性、耐光性、耐オゾン性及び光学濃度を有するシャープで毛羽立ちのない像を提供する。インクは、基板に塗布された場合にスマッジングを防止するために、迅速に乾燥することをしばしば要求されるが、インクジェットノズルのチップ(先端)を覆うクラストを形成しないようにすべきである。なぜなら、クラストはプリンターを作動不能とするからである。インクは、さらに、分解したり、ファインノズルをブロックし得る沈殿を形成しないようにして、長時間保存できるように安定でなければならない。
【0003】
ドイツ特許DE 3703513号明細書は、電子写真および感光層に用いるためのスルホン化ペリレン化合物を開示する。
米国特許US 5943910号明細書は、トリアジニルアミノ基を有するペリレン化合物を開示する。
【0004】
特開平10-306216号公報は、不溶性ペリレン化合物およびこれらの電子写真現像剤およびインクジェット記録インクにおける使用を開示する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
長時間耐印刷性に対するインクジェット分野における製造者及び消費者の絶え間ない要求により、改良された特性、特に改良された耐光性を有する可溶性マゼンダ着色剤およびインクに対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
さて、ある種のペリレン化合物が優れた耐オゾン性を示し、インクジェットプリントに特に適することを知見した。
よって、本発明の第1の側面によれば、液体媒体および着色剤を含み、該液体媒体は水および水混和性有機溶媒を含み、該着色剤は式(1):
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、
各Xは、独立に、スルホ、カルボキシ、ホスフェートおよびポリ(エチレンオキシド)から選択される水溶性基であり;
各Zは、独立に、場合によっては置換されているアルキル、場合によっては置換されているアリール又は場合によっては置換されているアラルキルであり;
各Qは、独立に、直接結合であるか、又は-NR-(式中、RはH、場合によっては置換されているアリール又は場合によっては置換されているアルキルである)であり;
環A、B、CおよびDは、それぞれ独立に、未置換であるか、又は場合によっては置換されているアルキル、場合によっては置換されているアリールおよび場合によっては置換されているアラルキルから選択される置換基を有し;
各nは、独立に1〜3であり;
各mは、独立に0、1又は2であり;
ただし、Qにより表される基のいずれか又は両者が直接結合である場合には、少なくとも1のnは少なくとも2の値を有する)
であり、該着色剤は液体媒体中に溶解しているインクが提供される。
【0009】
好ましくは、Xにより表される基の少なくとも1は、カルボキシ、スルホ又はホスフェートであり、より好ましくはXにより表される基の全てが独立に、カルボキシ、スルホおよびホスフェートからなる群より選択される。
【0010】
Xにより表されるスルホ、カルボキシおよびホスフェート基は、好ましくは遊離酸もしくは塩の形態である。好ましい塩の形態は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、置換アンモニウム塩およびこれらの混合物である。
【0011】
好ましくは、Xにより表される全ての基が独立にカルボキシ又はスルホであり、より好ましくはXにより表される全ての基がスルホである。
好ましいポリ(エチレンオキシド)は、式-O(CH2CH2O)pH(式中、pは1〜100であり、より好ましくは1〜70であり、特に好ましくは2〜50である)のものである。
【0012】
好ましい場合によっては置換されているアルキル基は、C1-30-場合によっては置換されているアルキルであり、より好ましくはC1-10-場合によっては置換されているアルキルである。
【0013】
好ましい場合によっては置換されているアリール基は、場合によっては置換されているフェニルおよび場合によっては置換されているナフチルである。
好ましい場合によっては置換されているアラルキル基は、C1-30-場合によっては置換されているアラルキルであり、特に場合によっては置換されているナフチル部位もしくは場合によっては置換されているフェニル部位を含有するC1-30-場合によっては置換されているアラルキルである。
【0014】
Rは、好ましくはC1-30-場合によっては置換されているアルキルであり、より好ましくはC1-10-場合によっては置換されているアルキルであり、特にC1-4-場合によっては置換されているアルキルであり、最も好ましくはHである。
【0015】
好ましくは、Rにより表される両方の基は同一であり、より好ましくはRにより表される両方の基はHである。
アルキル基、アリール基およびアラルキル基に対する好ましい任意の置換基および環A、B、CおよびDに対する好ましい任意の置換基は、C1-4-アルキル、C1-4-アルコキシ、ハロ(特にCl)、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、ホスフェート、カルボキシ、エステルおよびアミドから選択される。
【0016】
環A、B、CおよびDの任意の環が置換基を有する場合、該置換基は好ましくは1〜30個の炭素原子を含み、より好ましくは1〜10個の炭素原子を含む。
環A、B、CおよびDは、好ましくは置換基を含まない。
【0017】
各nは好ましくは2である。
好ましくは両方のnの値は2である。
各mは好ましくは1又は0であり、より好ましくは0である。
【0018】
好ましくは両方のmの値は0である。
好ましくは両方のnの値は2であり、両方のmの値は0であり、環A、B、CおよびDは置換基を含まず、より好ましくは両方のnの値は2であり、両方のmの値は0であり、環A、B、CおよびDは置換基を含まず、Qは直接結合であり、特に両方のnの値は2であり、両方のmの値は0であり、環A、B、CおよびDは置換基を含まず、Qは直接結合であり、Xは遊離酸もしくは塩の形態でのスルホである。
【0019】
本発明のインクは、式(1)の着色剤を2種以上含み得る。
式(1)の着色剤は、好ましくは式(2)もしくはこれらの塩である。
【0020】
【化2】

【0021】
液体媒体に含まれる好ましい水混和性有機溶媒としては、C1-6-アルカノール類、好ましくはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、シクロペンタノールおよびシクロヘキサノール;直鎖アミド類、好ましくはジメチルフォルムアミド又はジメチルアセトアミド;ケトン類およびケトン−アルコール類、好ましくはアセトン、メチルエーテルケトン、シクロヘキサノンおよびジアセトンアルコール;水混和性エーテル類、好ましくは テトラヒドロフランおよびジオキサン;ジオール類、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオール類、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコールおよびチオジグリコールおよびオリゴ−およびポリ−アルキレングリコール類、好ましくはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール;トリオール類、好ましくはグリセロールおよび1,2,6-ヘキサントリオール;ジオール類のモノ-C1-4-アルキルエーテル類、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオール類のモノ-C1-4-アルキルエーテル類、特に2-メトキシエタノール、2-(2-メトキシエトキシ)エタノール、2-(2-エトキシエトキシ)-エタノール、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2-[2-(2-エトキシエトキシ)-エトキシ]-エタノールおよびエチレングリコールモノアリルエーテル;環式アミド類、好ましくは2-ピロリドン、Nメチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、カプロラクタムおよび1,3-ジメチルイミダゾリドン;環式エステル類、好ましくはカプロラクトン;スルホキシド類、好ましくはジメチルスルホキシドおよびスルホランを挙げることができる。好ましくは、液体媒体は水および2種以上、特に2〜8種の水混和性有機溶媒を含む。
【0022】
特に好ましい水混和性有機溶媒は、環式アミド類であり、特に2-ピロリドン、Nメチル-ピロリドンおよびN-エチル-ピロリドン;ジオール類、特に1,5-ペンタンジオール、エチレングリコール、 チオジグリコール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコール;ジオール類のモノ−C1-4-アルキルおよびC1-4-アルキルエーテル類、より好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオール類のモノ−C1-4-アルキルエーテル類、特に2-メトキシ-2エトキシ-2-エトキシエタノールである。
【0023】
好ましくは、水:水混和性有機溶媒の質量比は99:1〜1:99であり、より好ましくは99:1〜50:50であり、特に95:5〜70:30である。
好ましくは、式(1)の着色剤は、インク中に、インク総量を基準として0.01〜40wt%の量で、より好ましくは0.5〜20wt%の量で、特に0.5〜10wt%の量で、さらに特に1〜10wt%の量で存在する。
【0024】
本発明の第1の側面の好ましいインクは、下記を含む。
(a)0.01〜40質量部の式(1)の着色剤;
(b)10〜99.8質量部の水;および
(c)0.01〜40質量部の水混和性有機溶媒;
(ただし(a)の質量部数+(b)の質量部数+(c)の質量部数 = 100質量部)
本発明の第1の側面のインクは、当業者に公知の類似の方法で作ることができる。インク成分の添加の順序又は共に混合する方法は、多くの容易に考えられ得る方法で行うことができる。
【0025】
インクを作るための好ましい方法は、水および水混和性有機溶媒からなる組成物を式(1)の着色剤と混合することである。
着色剤の液体媒体中への溶解は、好ましくはインクを緩やかに暖めるかおよび/または撹拌することにより補助される。
【0026】
好ましくは、インクはインクジェットプリント用インクまたは液体染料濃縮物である。濃縮物は、着色剤を搬送する手段として有用であり、染料の乾燥および過剰の液体の搬送に関連する費用を最小にする。
【0027】
本発明によるインクは、高純度成分を用いておよび/または調製後に組成物を精製することにより、好ましくは調製される。適切な精製技術は周知であり、例えば限外濾過,、逆浸透、イオン交換およびこれらの組み合わせ(本発明による組成物に組み込まれる前または後のいずれか)である。この精製は、結果として、無機塩類および合成から得られる副産物の実質的に全量を除去する。このような精製は、インクジェットプリンターにおいて用いるに適切な低粘度溶液の調製を補助する。
【0028】
好ましくは、インクは、25℃において20 cP未満、より好ましくは10cP未満、特に5cP未満の粘度を有する。これらの低粘度インクは、インクジェットプリンターによりに塗布するに特によく適する。
【0029】
好ましくは、インクは、二価金属イオンおよび三価金属イオンの総量(二価および三価金属イオン以外は組成物の成分に結合している)で500ppm未満、より好ましくは250ppm未満、特に100pm未満、より特に10ppm未満を含む。
【0030】
好ましくは、インクは、10μm以下、より好ましくは3μm以下、特に2μm以下、より特に1μm以下の平均孔径を有するフィルターを通して濾過されている。この濾過は、多くのインクジェットプリンターにおいて見られるファインノズルをブロックし得る特定の物質を除去する。
【0031】
好ましくは、インクは、ハライドイオンを総量で500ppm未満、より好ましくは250ppm未満、特に100pm未満、より特に10ppm未満含む。
インクの表面張力は、好ましくは20〜65 dyne/cmの範囲にあり、より好ましくは30〜60 dyne /cmの範囲にある。
【0032】
特に好ましいインクは、25℃で20cP未満の粘度を有し;二価金属イオンおよび三価金属イオンの総量(二価および三価金属イオン以外はインクの成分に結合している)で500ppm未満を含み;500ppm未満のハライドイオン類を含み;10(m以下の平均孔径を有するフィルターで濾過されているインクジェットプリントインクである。
【0033】
インクは、もちろん、インクジェットプリントインクに慣用的に用いられる追加の成分、例えば、粘度改質剤、pH緩衝液(例えば、1:9クエン酸/クエン酸ナトリウム)、防食剤、界面活性剤、殺菌剤およびコーゲーション減少剤を含み得る。
【0034】
本発明のインクは、媒体の範囲での良好な耐オゾン性, 耐湿性および特に耐光性を示す。ペリレン化合物は、蛍光を発することが知られており、蛍光が利用される用途での本発明のインクの有用性を示唆する。
【0035】
本発明の第2の側面によれば、本発明の第1の側面によるインクをインクジェットプリンターにより基板上に塗布することを含む基板上に像を印刷する方法が提供される。
インクジェットプリンターは、好ましくは、インクを基板上に小さなオリフィスを通して噴射される液滴の形態で基板上に塗布する。好ましいインクジェットプリンターは、圧電インクジェットプリンターおよび熱インクジェットプリンターである。熱インクジェットプリンターにおいては、プログラムされた熱のパルスが、オリフィスに隣接するレジスターによりリザーバ内のインクに付与され、こうして基板およびオリフィスの相対移動中に基板に向けられた小さな液滴の形態でインクをオリフィスから排出させる。圧電インクジェットプリンターにおいては、小さな水晶の振動がインクをオリフィスから排出させる。あるいは、例えば国際特許出願WO00/48938パンフレットおよび国際特許出願WO00/55089パンフレットに記載されているように、可動パドルまたはプランジャーに連結している電気機械的アクチュエータによりインクを排出させてもよい。
【0036】
基板は、好ましくは紙類、プラスチック、テキスタイル、金属またはガラス、より好ましくは紙類、オーバーヘッドプロジェクタースライドまたはテキスタイル材料、特に紙類である。
【0037】
好ましい紙類は、普通紙又は酸性、アルカリ性または中性であってもよい処理紙である。光沢紙が特に好ましい。特に、写真印刷品質紙類が好ましい。
本発明の第3の側面によれば、本発明の第1の側面によるインクで印刷された紙類、オーバーヘッドプロジェクタースライドまたはテキスタイル材料が提供される。好ましくは、これは本発明の第2の側面に従う方法によって印刷される。好ましい紙類は、普通紙または酸性、アルカリ性若しくは中性であってもよい処理紙である。市販されている紙類の例としては、HPプレミアム処理紙(HP Premium Coated Paper)、HP写真紙(HP Photopaper)(以上はHewlett Packard Incから入手可能)、Stylusプロ720dpi処理紙(Stylus Pro 720 dpi Coated Paper)、Epson写真品質光沢フィルム(Epson Photo Quality Glossy Film)、Epson写真品質光沢紙(Epson Photo Quality Glossy Paper)(以上はSeiko Epson Corp.から入手可能)、Canon HR101高解像度紙(Canon HR 101 High Resolution Paper)、Canon GP 201光沢紙(Canon GP 201Glossy Paper)、Canon HG 101高光沢フィルム(Canon HG 101 High Gloss Film)(以上はCanon Inc.から入手可能)、Wiggins Conqueror paper (Wiggins Teape Ltdから入手可能)、Xetox酸性紙(Xerox Acid Paper)およびXeroxアルカリ性紙(Xerox Alkaline paper)(Xeroxから入手可能)を挙げることができる。
【0038】
好ましいプラスチックフィルムは、透明な高分子フィルムであり、特にオーバーヘッドプロジェクタースライドとして使用するに特に有用な透明な高分子フィルム、例えばポリエステル類(特にポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート類、ポリイミド類、ポリスチレン類、ポリエーテルスルフォン類、セルロースジアセテートおよびセルローストリアセテートフィルムである。
【0039】
本発明の第3の側面は写真印刷品質プリントであることが特に好ましい。
本発明の第4の側面によれば、チャンバおよびインクを含み、該インクは該チャンバ内に存在し、該インクは本発明の第1の側面に従うものであるインクジェットプリンターカートリッジが提供される。
【0040】
本発明の第5の側面によれば、式(5):
【0041】
【化3】

【0042】
(式中、X、Z、R、n、mおよび環A、B、CおよびDは上記に定義した通りであり、これらの特徴にとって好ましい点は上述した)
の着色剤が提供される。
【0043】
式(1)の着色剤は、式(3)の化合物と式(4)の化合物との反応により調製してもよい。
【0044】
【化4】

【0045】
(式中、環A、B、CおよびDおよび置換基X、Z、m、nおよびQは上記に定義したとおりである)
反応は、100℃〜200℃の温度にて好ましくは行われる。典型的な反応時間は、1〜4時間であり、好ましくは約2時間である。好ましくは、反応は、不活性溶剤および触媒(例えば、酢酸亜鉛二水和物)の存在下で行われる。
【0046】
以下の実施例により本発明をさらに説明する。特にことわらない限り、すべての部および%は質量部およびwt%を意味する。
【実施例1】
【0047】
染料(1)の調製
【0048】
【化5】

【0049】
3,4,9,10-ペリレンテトラカルボキシジアンヒドリド(tetracarboxylic dianhydride)(1.96g、0.005mol)、アニリン-3,5-ジスルホン酸(9.36g、0.037mol)、酢酸亜鉛二水和物(0.7g、0.0032mol)およびイミダゾール(28g、0.41mol)を一緒に密接に混合させ、十分に撹拌しながら140℃〜150℃で2時間加熱した。混合物を100℃まで冷却し、次いで、ゆっくりとエタノール(500ml)中に注いだ。5分間撹拌した後、沈殿物を濾過して取り出し、さらにエタノールで十分に洗浄した。多量のアニリン-3,5-ジスルホン酸を含んでいる洗浄した沈殿物を水(300ml)に添加し、pHを2M水酸化ナトリウム溶液でpH10に調節し、溶液とした。次いで、この溶液をVisking管に移して、液体クロマトグラフィーが残存量を示さなくなるまで透析して望ましくないアニリン-3,5-ジスルホン酸を完全に取り除いた。次いで、精製した溶液を濾過し、濾過物を乾燥状態まで脱水させて、テトラナトリウム塩4.2g、0.0044 molとして収率88%で染料(1)を得た。
【実施例2】
【0050】
染料(2)の調製
【0051】
【化6】

【0052】
アニリン-3,5-ジスルホン酸の代わりに5-アミノイソフタル酸を用いた点を除いて実施例1に記載したプロセスと類似のプロセスを用いて、染料(2)を調製した。
【実施例3】
【0053】
染料(3)の調製
【0054】
【化7】

【0055】
アニリン-3,5-ジスルホン酸の代わりに2-ヒドラジノ-5-スルホ安息香酸を用いた点を除いて実施例1に記載したプロセスと類似のプロセスを用いて、染料(3)を調製した。
【実施例4】
【0056】
染料(4)の調製
【0057】
【化8】

【0058】
アニリン-3,5-ジスルホン酸の代わりに2-ヒドラジノ-1,4-ジスルホン酸を用いた点を除いて実施例1に記載したプロセスと類似のプロセスを用いて、染料(4)を調製した。
【比較例】
【0059】
米国特許US 5,948,910号明細書実施例1に記載されている手順に従って、比較染料(1)を調製した。
【0060】
【化9】

【0061】
グリシン(gylcine)の代わりに3-メルカプトプロパンスルホン酸(2.7g)を用いた点を除いて米国特許US 5,948,910号明細書実施例1に記載されている手順に従って比較染料(2)を調製した。
【0062】
【化10】

【実施例5】
【0063】
インクおよびインクジェットプリント
実施例1に記載した染料、比較染料1または比較染料2(3.5部)を下記液体媒体(96.5部、水酸化アンモニウムでpH 9.5に調節した)に溶解させてインクを作った。
【0064】
【表1】

【0065】
得られたインクを0.45mmフィルターを通して濾過した。次いで、これらのインクをEpson 880プリンターを用いてEpson Premium Photo paper (SEC PM)、Canon PR101 Photo paper (PR101)およびHewlett-Packard Premium Plus Photo paper (HPPP)上に印刷した。
(a)初期プリント測定
光源Cを用い、観察角2゜(CIE 1931)でデンシィティオペレーションステータス(Density Operation Status)Tで、0゜/45゜測定ジオメトリー、400〜700nmのスペクトル範囲、20nmスペクトル間隔で、X-Rite 983(登録商標)分光測色濃度計を用いて、各初期プリントの光学濃度(OD Initial)を測定した。10mm×10mmよりも大きなサイズを有するプリント上の固体着色ブロックを対角線に横切って2個以上の測定を行った。
(b) 4年間の耐光性(LF)
初期プリント1セットを用いて、4年間の露光量に相当する加速試験(4 years equivalent accelerated exposure test)での耐光性(LF)を試験した。Atlas Ci5000 Weatherometer(耐候性試験機)内でキセノンアークランプ(Xenon Arc lamp)により与えられた光にプリントを100時間、暴露させた。
【0066】
暴露試験の後、OD(光学濃度)を測定した(OD Final)。
結果
【0067】
【表2】

【0068】
Table 1は、本発明のインク(1行目)および比較インク(2行目および3行目)を示す。第2欄は、Hewlett-Packard Premium Plus Photopaper(登録商標)上でのプリントに対する退色の程度に対する結果を示し、第3欄はCanon PR101 Photopaper(登録商標)上でのプリントに対する退色の程度に対する結果を示し、第4欄はEpson Premium Photopaper(登録商標)の上でのプリントに対する退色の程度に対する結果を示す。
【0069】
Table 1は、本発明のインクが比較染料よりも露光時の%OD損失が低い(すなわち、より高い耐光性)ことを示す。
【実施例6】
【0070】
インク
Table AおよびBに記載したインクを第1欄に示した着色剤を第2欄に示した量で第3欄〜第13欄に示した液体媒体中に溶解させて溶液を与えることにより調製することができる。すべての溶液をアンモニア溶液でpH9.5に調節した。次いで、得られた溶液を濾過して最終インクを得た。
【0071】
インクは、熱もしくは圧電インクジェットプリントにより紙類に塗布することができる。
Table AおよびBで用いた略語は以下の通り:
【0072】
【表3】

【0073】
【表4】

【0074】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体媒体および着色剤を含有するインクであって、該液体媒体は水および水混和性有機溶媒を含み、該着色剤は式(1):
【化1】

(式中、
各Xは、独立に、スルホ、カルボキシ、ホスフェートおよびポリ(エチレンオキシド)から選択される水溶性基であり;
各Zは、独立に、場合によっては置換されているアルキル、場合によっては置換されているアリールもしくは場合によっては置換されているアラルキルであり;
各Qは、独立に、直接結合もしくは-NR-(式中、RはH、場合によっては置換されているアリールもしくは場合によっては置換されているアルキルである)であり;
環A、B、CおよびDは、それぞれ独立に未置換であるか、あるいは場合によっては置換されているアルキル、場合によっては置換されているアリールおよび場合によっては置換されているアラルキルから選択される置換基を有し;
各nは、独立に1〜3であり;
各mは、独立に0、1又は2であり;
ただし、Qにより表される基のいずれか又は両者が直接結合である場合には 少なくとも1のnは少なくとも2の値を有する)
のものであり、該着色剤は該液体媒体に溶解している、インク。
【請求項2】
Xにより表される基の少なくとも1は、カルボキシ、スルホ又はホスフェートである、請求項1に記載のインク。
【請求項3】
両方のnの値は2である、請求項1又は2に記載のインク。
【請求項4】
両方のmの値は0である、請求項1〜3の何れか1項に記載のインク。
【請求項5】
両方のnの値は2であり、両方のmの値は0であり、環A、B、CおよびDは置換基を含まず、Qは直接結合である、請求項1〜4の何れか1項に記載のインク。
【請求項6】
式(1)の着色剤は、式(2):
【化2】

又はその塩である、請求項1〜5の何れか1項に記載のインク
【請求項7】
(a)0.01〜40質量部の前記着色剤
(b)10〜99.8質量部の水;および
(c)0.01〜40質量部の水混和性有機溶媒;
(ただし、(a)の質量部数 + (b)の質量部数 + (c)の質量部数 = 100)
を含む、請求項1〜6の何れか1項に記載のインク。
【請求項8】
25℃において20mPa.s未満の粘度を有する、請求項1〜7の何れか1項に記載のインク。
【請求項9】
25℃において20cP未満の粘度を有し;二価金属イオンおよび三価金属イオンの総量(二価および三価の金属イオン以外はインクの成分に結合している)で500ppm未満を含み; 500ppm未満のハライドイオンを含み;10μm以下の平均孔径を有するフィルターを通して濾過されている、請求項1〜8の何れか1項に記載のインク。
【請求項10】
前記着色剤の2種以上を含む、請求項1〜9の何れか1項に記載のインク。
【請求項11】
インクジェットプリンターにより、請求項1〜10の何れか1項に記載のインクを基板上に塗布することを含む、基板上に像を印刷する方法。
【請求項12】
請求項1〜10の何れか1項に記載のインクで印刷された紙類、オーバーヘッドプロジェクタースライド又はテキスタイル材料。
【請求項13】
請求項11に記載の方法により請求項1〜10の何れか1項に記載のインクで印刷された紙類、オーバーヘッドプロジェクタースライド又はテキスタイル材料。
【請求項14】
チャンバおよびインクを含み、該インクは該チャンバ内に存在しており、該インクは請求項1〜10の何れか1項に記載のインクである、インクジェットプリンターカートリッジ。
【請求項15】
式(5):
【化3】

(式中、
各Xは、独立に、スルホ、カルボキシ、ホスフェートおよびポリ(エチレンオキシド)から選択される水溶性基であり;
各Zは、独立に、H、場合によっては置換されているアルキル、場合によっては置換されているアリール又は場合によっては置換されているアラルキルであり;
各Rは、独立に、H、場合によっては置換されているアリール又は場合によっては置換されているアルキルであり;
各nは、独立に、1〜3であり;
各mは、独立に0、1又は2であり;
環A、B、CおよびDは、独立に、未置換であるか又は場合によっては置換されているアルキル、場合によっては置換されているアリールもしくは場合によっては置換されているアラルキルから選択される置換基を有する)
の着色剤。

【公表番号】特表2007−504345(P2007−504345A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530466(P2006−530466)
【出願日】平成16年4月7日(2004.4.7)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001507
【国際公開番号】WO2004/104117
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(506139635)フジフィルム・イメイジング・カラランツ・リミテッド (75)
【Fターム(参考)】