説明

マッサージ装置

【課題】四肢のマッサージ部のリンパ液をスムーズに、かつ効率よく末梢部側から中枢部側へ移動することができると共に、マッサージ部を適度に、かつ安全にマッサージすることができる簡易なマッサージ装置を提供する。
【解決手段】筐体4内に配置する四肢部のマッサージ部を被う保護体6の周囲にスパイラル状に延びる螺線体2を設け、その螺線体2を駆動源3により回転することによってリンパ液を末梢部から中枢部へと順次円滑に押し出す。その際に、上記螺線体2を移動体5によって軸心方向に伸縮させ螺線体の線間の幅を変えて使用者のマッサージ部への押し出し間隔を調整させ適度のマッサージ効果を得るようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上肢や下肢の四肢をマッサージする装置に関し、特に乳がんや子宮がん、卵巣がん等の手術後に発生するリンパ性の浮腫の治療や予防に好適なマッサージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乳がんや子宮がん、卵巣がん等を手術する際に、一般に、がん患部を摘出すると共に、がんの転移の有無を検査するために患部に隣接するリンパ節を切除することが行われている。このリンパ節の切除のために、患者によっては術後にリンパ液の循環が低下しリンパ浮腫が発症することがあり、このことが患者を悩ませている。このリンパ浮腫を治療する方法として下記のような方法が考えられている。
(1)弾性スリーブや弾性ストッキングを用いる方法、
(2)弾性包帯を用いる方法、
(3)マッサージ師によるマッサージ方法、
(4)エアマッサージ器を用いる方法、
【0003】
上記(1)乃至(3)の方法は、常時押圧することによって浮腫を軽減した状態を維持しその進行を抑制するものであるが、リンパ液を積極的に末梢部から中枢部へ押し流そうとするものではないので、この点において充分な治療は得られていない。また、上記(3)の方法は、マッサージ師の手によってマッサージするために患者の患部に合わせて押圧力等を加減しながらリンパ液を押し流すことができるので理想的な治療方法とは言えるが、患者にとっては、治療のために何度も通院しなければならず、このために多くの時間を費やすと共に費用も嵩むという問題があった。
【0004】
更に、上記(4)のエアマッサージ器は、腕や脚などのマッサージ部に巻回するシート部材に複数の気密室を設け、この各気密室を単位ごとに圧縮空気を供給、排気し、マッサージ部の末梢部から中枢部に向かって気密室を順次膨張、収縮させてマッサージするというものである(特許文献1)。しかし、この装置は、各気密室を圧縮空気によって順次膨張・収縮させるようにしたものであるから、使用時にマッサージ部のリンパ液の一部が末梢側に漏れてしまうことがありリンパ液を移動する効率が悪いと共に、その各気密室への給排気のタイミングを調整することが難しく、これによって装置全体の構造を複雑にしている。
【特許文献1】特許第2852461号公報(段落{0002}、{0003}及び{0018}、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の問題点を解決するものであって、上肢や下肢のマッサージ部のリンパ液をスムーズに、かつ効率よく末梢部側から中枢部側へ移動することができると共に、マッサージ部を適度に、かつ安全にマッサージすることができる簡易なマッサージ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、四肢部のマッサージ部の周囲にスパイラル状に延びる螺線体を設け、その螺線体を回転させることによってリンパ液を末梢部から中枢部へと順次円滑に押し出すことができるようにし、またその際に上記螺線体を軸心方向に伸縮させることによって螺線体の線間の幅を変え、使用者のマッサージ部におけるリンパ液の押し出し間隔を調節して使用者に適合したマッサージ効果を得ることができるようにしたものである。
【0007】
本発明は、螺線体の軸心方向に移動可能な作動子と筐体の一方または他方にそれぞれつめラックとつめを設け、このつめラックとつめの係合、離脱によって螺線体を軸心方向に伸縮移動させるようにしたものである。また、その際につめに設けた摘みによってつめラックとつめの係合、離脱を簡便にできるようにしたものである。
【0008】
本発明は、螺線体の軸心方向に移動可能な作動子にラック設け、このラックに正逆回転可能な減速機付きモータにより駆動されるピニオンを噛合させ、このモータの正逆回転によって螺線体を軸心方向に伸縮移動させるようにしたものである。
【0009】
本発明は、螺線体をその位相を変えて複数巻きとしたものである。
【0010】
本発明は、螺線体の外周に截頭角錐体状に形成した複数の押圧体を設け、この各押圧体の截頭部が内側となるように押圧体を連設することによってマッサージ部へ適度の絞り効果を与えるようにしたものである。
【0011】
本発明は、螺線体の外形をマッサージ部の外周面にほぼ沿うような形態に形成し、マッサージ部によりフイットした状態でマッサージすることができるようにしたものである。
【0012】
本発明は、螺線体の回転駆動源として減速機付きモータを有し、このモータに螺線体を連結して螺線体を回転するようにしたものである。
【0013】
本発明は、螺線体の回転駆動源として減速機付きモータを有し、このモータの出力軸に設けた歯車を、筐体に軸支した支持体に設けた歯車に噛合させて螺線体を回転するようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、四肢部のマッサージ部のリンパ液を効率よく末梢部から中枢部へとスムーズに押し出すことができ、またその際にマッサージ部へのリンパ液の押し出し間隔を調整することによって適度のマッサージ効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本装置の一実施例を示す。マッサージ装置1は、人体の上肢や下肢の四肢(図に示すものにおいては上肢の前腕部)の周囲部にスパイラル状に延びる螺線体2と、この螺線体の内側にあって前腕部のマッサージ部の周囲を被う保護体6と、上記螺線体をその軸心周りに回転させる駆動源3と、筐体4に支持されており上記螺線体2の先端部に係合し螺線体を軸心方向に伸縮移動させてマッサージ部へのリンパ液の押し出し間隔を調節する移動体5を備えている。
【0016】
患者は、先ず治療を受ける前腕部を筐体4の入口7より保護体6内に挿入する。その際に、予め前腕部を保護体6内に挿入し、この保護体6を前腕部と共に螺線体2内に挿入するようにしてもよい。この保護体6は、低反発ウレタン等の低反発フォームやスポンジ、軟質ゴム等のクッション性を有するもので形成されており患者の前腕部表面を保護している。
【0017】
螺線体2は、ピアノ線、硬鋼線、ステンレス線等のコイルばね材や弾性プラスチック線その他適度の腰と弾性のある適当な材料を用いることができ、これに適宜錆び止め等のメッキを施してスパイラル状に形成されている。なお、この螺線体2は、位相を変えて同一回転面において二重、三重等の複数巻きとしたり、その際に各螺線体の太さや断面形状(丸形や三角、四角等の多角形など)、弾性力等を変えたりして押圧に強弱の変化を与えるようにしておくことができる。
【0018】
上記のようにして前腕を装置内にセットした後に、下記のように上記移動体5を用いて螺線体2を軸心方向に伸縮させ、螺線体2の線間の幅Lを調節してリンパ液を末梢部側から中枢部側へ連続して押し出す間隔を調節する。上記移動体5は、作動子8を有しこの作動子の突起9を筐体4に形成した長溝10に係合させて螺線体2の軸心方向に移動できるように形成されており、その作動子8に形成した溝11に螺線体2の先端部42を係合させている。従って、上記移動体5を螺線体2の軸心方向に移動させることによって、自由に螺線体2の線間の幅を変えることができる。なお、作動子8は、図3に示すように、螺線体2の先端部42にリング12を固定し、このリングを作動子8の溝11に係合させているが、このリングに代えて螺線体2の先端部42を外周に複数巻きしこれを固定する方法を用いるようにしてもよい。
【0019】
上記螺線体2を所定の位置で保持する方法は、図3に示すように、作動子8に設けたつめ13を筐体4にビス19止めしたつめラック14に係合して行っている。この場合、つめ13には、これを上記つめラック14に押しつける方向に付勢するばね15が設けられ、これによってラチェット機能を形成している。従って、作動子8を螺線体2の先端部方向へ移動する際は、この作動子8に設けた摘み16を摘んで所定の位置まで移動させることができ、その所定の位置で摘み16から手を離せば、つめ13がつめラック14に食い込んで作動子8はその位置で保持される。この作動子8の位置は、作動子8に付けた目印17と筐体4に設けた目盛18によって知ることができる。上記つけ13とつめラック14の係合の離脱は、つめ13に設けた摘み16を回動させることによって行うことができる。なお、上記筐体4の端部には、ストッパー43が設けられ、移動体5が移動中に筐体4より外れるのを防ぐと共に移動体の移動範囲を規制している。
【0020】
上記螺線体2の回転は、その螺線体端部の軸部40にカップリング20を介して接続した減速機21付きモータ22によって行っている。この場合、モータ22は台23に載置させており、これによって螺線体2の軸部40と駆動源3の出力軸41との高さを調節している。なお、上記駆動源3は、減速機21とモータを別体にしたり、減速機21をモータに組み込んだギヤードモータとしたり、またモータ22に予測外の負荷がかかった際にその駆動を停止させる過負荷防止装置やブレーキ装置を設けたりすることができる。このようにして上記螺線体2を回転することによって、前腕の表面部を手で軽く加減しながら揉み上げてマッサージするかのように末梢部から中枢部へと軽くゆっくりと、所定の間隔をもって連続してマッサージすることができ、リンパ液を的確に、かつ効率よくスムーズに送り出すことができる。
【0021】
図4に示すものは、上記螺線体2の周囲に截頭四角錐体状の接触子24をその截頭部が内側となるように連続している場合であり、これによって前腕の表面部をやや絞るように揉み上げることができる。なお、この接触子24は、その他の形状のもの、例えば截頭円錐体状や截頭六角錐体状等の截頭多角錐体状等のものを用いることができる。
【0022】
図5に示すものは、螺線体2の形状を前腕の外周面にほぼ沿うような形態に設けた場合であり、これによって螺線体2が前腕の外周面により一層フイットした状態となり均一な押圧作用をもってマッサージすることができる。
【0023】
図6に示す保護体6は、その端部にフランジ部25を接着等して設けたもので、保護体6を螺線体2に挿入した際にこのフランジ部25を筐体4に当接させて所定の位置で保護体6を停止させている。
【0024】
図7及び図8には他の実施例が示されている。なお、この図において、上記実施例と同一あるいは同様の構成部分については同一の符号をもって表示する。上記螺線体2は、その端部が筐体4に軸受30を介して支持された支持体26に接着や溶着等によって固定されており、この支持体26に設けた大歯車27に、減速機21付きモータ22の出力軸28に装着した小歯車29を噛合させて螺線体2を回転させている。この場合、上記軸受30は、玉軸受やころ軸受等を用いることができる。一方、移動体5は、その作動子8にラック31が固定されており、このラックに、正逆回転可能な減速機32付きモータ33(この場合ギヤードモータでもよい)の出力軸34に装着したピニオン35を噛合させて移動させている。なお、上記移動体5の移動は、作動子8が移動する範囲の両端部にマイクロスイッチを設け、このマイクロスイッチの作動により上記モータ33を制御することによって規制するようにしてもよい。
【0025】
上記モータ33の正転、逆転及び停止の操作は、図9に示すように、正転36ボタン、逆転ボタン37及び停止ボタン38を押すことによって行われ、その際の動作は制御部39で制御されている。この場合、停止ボタン38は非常時や緊急時にも使用することができるが、この停止ボタンとは別に非常ボタンを設けるようにしてもよい。
【0026】
上記実施例では、筐体4を固定し、その筐体内で螺線体2を回転するようにしているが、これに代えて例えば筐体4をローラで回転可能に支持し、筐体に螺線体2を装着して螺線体2を筐体4と共に回転させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例を示す一部断面にした側面図である。
【図2】移動体の動作を示す拡大平面図である。
【図3】螺線体と移動体の取り付け状態を示す拡大断面図である。
【図4】螺線体の変形例を示す拡大斜面図である。
【図5】螺線体の他の変形例を示す概略部分拡大側面図である。
【図6】保護体の変形例を示す拡大部分断面図である。
【図7】本発明の他の実施例を示す一部断面にした側面図である。
【図8】図7における他の実施例の平面図である。
【図9】移動体の移動、停止を制御する場合を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0028】
2 螺線体 3 駆動源 4 筐体 5 移動体 6 保護体 13 つめ 14 つめラック 16 摘み 27 大歯車 29 小歯車 30 軸受 31 ラック 32 減速機 33 モータ 35 ピニオン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の上肢や下肢の四肢をマッサージする装置であり、筐体内にあって四肢のマッサージ部の周囲部に位置するようスパイラル状に延びる螺線体と、螺線体の内側にあって四肢のマッサージ部周囲を被い得るよう筒状または袋状に形成した保護体と、上記螺線体に直接的または間接的に連結しこの螺線体をその軸心回りに回転させる駆動源を備え、その螺線体の回転によってマッサージ部を末梢部側から中枢部側へマッサージし得るようにしたことを特徴とするマッサージ装置。
【請求項2】
筐体に支持されていて螺線体の端部に係合しその螺線体を軸心方向に伸縮移動させる移動体を有し、この移動体による螺線体の伸縮移動よって螺線体の線間の幅を変えてマッサージ作用を調節するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のマッサージ装置。
【請求項3】
移動体は、螺線体の軸心方向に移動可能な作動子と、その作動子または筐体の一方に設けたつめラックと、上記作動子または筐体の他方に設けられ上記つめラックに係合するつめを有し、このつめラックとつめの係合、離脱によって螺線体を軸心方向に伸縮移動させるようにした請求項2に記載のマッサージ装置。
【請求項4】
つめに摘みを設けた請求項3に記載のマッサージ装置。
【請求項5】
移動体は、螺線体の軸心方向に移動可能な作動子と、この作動子に設けたラックと、このラックに噛合して正逆回転可能な減速機付きモータにより駆動されるピニオンを有し、上記モータの正逆回転によって螺線体を軸心方向に伸縮移動させるようにした請求項2に記載のマッサージ装置。
【請求項6】
螺線体はその位相を変えて複数巻きとした請求項1〜5のいずれかに記載のマッサージ装置。
【請求項7】
螺線体の外周に截頭角錐体状に形成した複数の押圧体を有し、この各押圧体の截頭部が内側となるように押圧体を連設した請求項1〜6のいずれかに記載のマッサージ装置。
【請求項8】
螺線体の外形をマッサージ部の外周面にほぼ沿うような形態に形成した請求項1〜7のいずれかに記載のマッサージ装置。
【請求項9】
螺線体の回転駆動源として減速機付きモータを有し、この減速機付きモータに螺線体を連結して螺線体を回転するようにした請求項1〜8のいずれかに記載のマッサージ装置。
【請求項10】
螺線体の回転駆動源として減速機付きモータを有し、この減速機付きモータの出力軸に設けた歯車を、筐体に軸支した支持体に設けた歯車に噛合させて螺線体を回転するようにした請求項1〜8のいずれかに記載のマッサージ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−136441(P2009−136441A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314877(P2007−314877)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(596089104)
【Fターム(参考)】