説明

マットスイッチ

【課題】本発明は、簡略な構造でありながら、不感知部分が極めて少なく、荷重を作用させる物体の底面積が僅少でも良好なスイッチ機能を発揮させることができ、スイッチオフ転換時の復元機能に優れ、更にはマットスイッチ自体を巻回状態として運搬等することも容易なマットスイッチを提供する。
【解決手段】本発明のマットスイッチは、布状導電体からなる下部電極2と、下部電極2上に積層した直径1mm程度の弾性を有する絶縁素材を用いて10×10mm程度の格子状に形成した格子状絶縁体3と、格子状絶縁体3上に積層した布状導電体からなる上部電極4と、上部電極4上に積層した厚さ2mm程度のスポンジ等からなる弾性緩衝材5と、前記下部電極2、格子状絶縁体3、上部電極4及び弾性緩衝材6の外周に被覆したゴム材等からなる外被6とを有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マットスイッチに関し、詳しくは、不感知部分が極めて少なく、荷重を作用させる物体の底面積が僅少でも良好なスイッチ機能を発揮させることができ、スイッチオフ転換時の復元機能に優れ、更にはマットスイッチ自体を巻回状態として運搬等することも容易なマットスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のマットスイッチの一例を図4に示す。
このマットスイッチ30は、上下一対の金属板からなる電極31、32間に弾性を有する絶縁材33を挟んだ積層構造とし、絶縁材33に上下一対の電極31、32を荷重が作用したときに部分的に接触させ、オン動作させるための所要個数の穴群を適宜の配置で設けたものが知られている。
【0003】
また、このような積層構造体の外周を、ゴム製等の外被35をもって被覆している。前記穴群を形成する個々の穴34の形状としては、例えば格子状穴、円形穴、楕円形穴等が採用されるのが通常である。
【0004】
しかし、前記マットスイッチ30の場合、個々の穴34の領域以外の絶縁材33が存在する部分は例え上側の電極31に対して荷重が作用したとしても一対の電極31、32が接触することのない不感知部分であり、このためマットスイッチ30全体としては不感知部分の領域がかなり大きいという問題を包含している。
【0005】
また、前記絶縁材33における穴34の口径よりも大きい寸法の底面を有する荷重が上側の電極31に作用したとしても、上側の電極31を撓ませて下側の電極32に接触させ、オン動作させることは難しいという問題を包含している。
【0006】
更に、金属板からなる電極31、32は、落下物等の衝撃により容易に塑性変形してしまい、前記絶縁材33に設けた穴34内で短絡状態となり誤動作を生じ易いという問題や、金属板からなる電極31、32を使用していることからこのマットスイッチ30を巻回状態として運搬等することが難しいという問題もあった。
【0007】
上述した金属板からなる電極31、32の替わりに、金属網線からなる一対の電極を用いたマットスイッチも知られている。しかしこのような構成からなるマットスイッチの場合、このマットスイッチを巻回状態として運搬等することは可能であるものの、マットスイッチをオフ動作させるための復元力を金属網線からなる電極から得ることはできず、弾性を有する絶縁材33の復元力に依存せざるを得ず、この結果、絶縁材33の厚さ、弾性特性、穴34の開口配置等、マットスイッチの設計、製造時の拘束条件が極めて煩雑になるという問題を包含している。また、金属網線の網線間のピッチによっては、不感知部分の領域がかなり大きいという問題も包含している。
【0008】
特許文献1には、表裏両面に開口する複数の貫通孔を板面に分散して形成した軟弾性絶縁体と、この軟弾性絶縁体の表裏両面に配設した一対の導電体と、前記複数の貫通孔及び一対の導電体により画成された空間に転動可能に封じ込めた複数の導電転動体とを具備するマットスイッチ装置が提案されている。
【0009】
しかし、この特許文献1のマットスイッチ装置においても、前記マットスイッチ30の場合と同様、個々の貫通孔の領域以外の軟弾性絶縁体が存在する部分は例え上側の導電体に対して荷重が作用したとしても一対の導電体が接触することのない不感知部分であり、このためマットスイッチ全体としては不感知部分の領域がかなり大きいという問題を包含している。
【特許文献1】特開2002−163950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする問題点は、簡略な構造でありながら、不感知部分が極めて少なく、荷重を作用させる物体の底面積が僅少でも良好なスイッチ機能を発揮させることができ、スイッチオフ転換時の復元機能に優れ、更にはマットスイッチ自体を巻回状態として運搬等することも容易であるマットスイッチが存在しない点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のマットスイッチは、布状導電体からなる下部電極と、下部電極上に積層した弾性を有する格子状絶縁体と、格子状絶縁体上に積層した布状導電体からなる上部電極と、上部電極上に積層した弾性緩衝材とを有することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1乃至3記載の発明によれば、布状導電体からなる下部電極、下部電極上に積層した格子状絶縁体、格子状絶縁体上に積層した布状導電体からなる上部電極、上部電極上に積層した弾性緩衝材、更にはこれらを被覆する外被から構成したものであり、簡略な構造でありながら、スイッチオフ転換時の復元機能に優れ、更にはマットスイッチ自体を容易に巻回状態として運搬等することが可能なマットスイッチを提供することができる。
請求項1乃至3記載の発明によれば、特に、格子状絶縁体を直径1mm程度の弾性を有する絶縁素材を用いて10×10mm程度の格子状に形成することにより、不感知部分が極めて少なく、荷重を作用させる物体の底面積が僅少でも良好なスイッチ機能を発揮させることが可能なマットスイッチを提供することができる。
請求項4記載の発明によれば、請求項1乃至3の前記上部電極及び弾性緩衝材を、前記上部電極としての機能と弾性緩衝材としての機能を具備した導電性のスポンジからなるものとしたので、請求項1乃至3記載の各発明の効果を一層効率よく発揮させることが可能なマットスイッチを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、簡略な構造でありながら、不感知部分が極めて少なく、荷重を作用させる物体の底面積が僅少でも良好なスイッチ機能を発揮させることができ、スイッチオフ転換時の復元機能に優れ、更にはマットスイッチ自体を巻回状態として運搬等することも容易なマットスイッチを提供するという目的を、布状導電体からなる下部電極と、下部電極上に積層した直径1mm程度の弾性を有する絶縁素材を用いて10×10mm程度の格子状に形成した格子状絶縁体と、格子状絶縁体上に積層した布状導電体からなる上部電極と、上部電極上に積層した厚さ2mm程度のスポンジ等からなる弾性緩衝材と、前記下部電極、格子状絶縁体、上部電極及び弾性緩衝材の外周に被覆したゴム材等からなる外被とを有する構成により実現した。
【実施例】
【0014】
以下に、本発明の実施例を詳細に説明する。
図1、図2に示す本実施例に係るマットスイッチ1は、例えば店舗等の建物の出入口の床上に設置して顧客の出入検知を行う用途に適用するものであり、布状導電体(例えば導電布)からなる下部電極2と、この下部電極2上に積層した直径1mm程度の例えばスポンジ線状材からなる絶縁素材を用いて縦横の間隔が10×10mm程度の格子状に形成した格子状絶縁体3と、この格子状絶縁体3上に積層した布状導電体(例えば導電布)からなる上部電極4と、上部電極4上に積層した厚さ2mm程度のスポンジ、ゴム材等からなる弾性緩衝材5と、前記下部電極2、格子状絶縁体3、上部電極4及び弾性緩衝材5の外周全体を覆うように被覆したゴム材等からなる外被6とを有している。
前記上部電極4と弾性緩衝材5とは例えば接着剤を用いて一体的に接合している。前記格子状絶縁体3のスポンジ線状材の直径、縦横の間隔は、上述した場合の他、直径1.5mm、2,0mm、縦横15×15mm等種々のものに設定することができることは勿論である。
【0015】
また、本実施例に係るマットスイッチ1は、例えばその全体の平面形状を30×60cm、60×90cm等の長方形状としている。この他、円形状、楕円形状等種々の形状に形成し得ることは勿論である。また、本発明においては、前記上部電極及び弾性緩衝材を、上部電極としての機能と弾性緩衝材としての機能を具備した導電性素材のスポンジから構成しても良い。
【0016】
上述した構成の本実施例に係るマットスイッチ1によれば、布状導電体からなる下部電極2と、格子状絶縁体3と、布状導電体からなる上部電極4と、弾性緩衝材5との積層構造体を外被6により被覆した簡略な構造のマットスイッチ1とすることができる。
また、本実施例に係るマットスイッチ1によれば、下部電極2と、上部電極4との間の絶縁は、直径1mm程度のスポンジ線状材を用い、縦横の間隔が10×10mm程度の格子状に形成した格子状絶縁体3により行うものであるから、従来例に比べ格子状絶縁体3の存在による不感知領域は狭小となる。
【0017】
すなわち、図3に示すように、本実施例に係るマットスイッチ1における上部電極4側の外被6が感知対象物10により押圧されたとすると、この感知対象物10の荷重により対応領域の外被6、弾性緩衝材5、上部電極4が撓み、撓んだ上部電極4の一部が下部電極2の上面に接触する。
これにより、マットスイッチ1はオン状態となり、感知対象物10の存在を確実に感知することができる。
【0018】
この場合、前記感知対象物10が格子状絶縁体3の真上の位置でマットスイッチ1を押圧するとしても、格子状絶縁体3は直径1mm程度のスポンジ線状材を用いて構成しており、且つ、上部電極4を撓み易い布状導電体を用いて構成していることから、不感知領域は格子状絶縁体3及びその両側を含む僅少な範囲(例えば格子状絶縁体3及びその両側を含め3乃至4mm程度)に留めることができる。
【0019】
この結果、感知対象物10の底面部の直径φが例えば10mm程度の杖先のようなものであっても、この感知対象物10の存在を確実に感知することが可能となる。
【0020】
本実施例に係るマットスイッチ1において、図3に示す状態から感知対象物10が除去されたとすると、前記弾性緩衝材5の弾性復元力により撓みが解消されて外被6、上部電極4は初期状態に戻り、上部電極4は下部電極2から離脱し、マットスイッチ1はオフ状態に復帰する。
これにより、前記弾性緩衝材5の弾性復元力のみを利用するという簡略で、格別の設計、技術開発を要することのない構成でありながら、オン動作からオフ動作への確実な動作を実現できる。
【0021】
更に、本実施例に係るマットスイッチ1によれば、布状導電体からなる下部電極2及び上部電極4、スポンジ線状材を用いた格子状絶縁体3と、弾性緩衝材5、外被6のいずれもが弾性を有する材料により形成しているので、巻回し易く、このマットスイッチ1の不使用時等においてマットスイッチ1自体を任意の辺側から円柱状に巻回し省スペース化して運搬、保管等することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、上述した場合の他、バス等の顧客運搬を行う車両の出入口の床、美術館、博物館等の出入口等の床上に設置して顧客や観客の感知を行う場合等に幅広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例に係るマットスイッチの概略断面図である。
【図2】本実施例に係るマットスイッチの分解斜視図である。
【図3】本実施例に係るマットスイッチのオン動作時の状態を示す部分拡大断面図である。
【図4】従来のマットスイッチの概略断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 マットスイッチ
2 下部電極
3 格子状絶縁体
4 上部電極
5 弾性緩衝材
6 外被
10 感知対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布状導電体からなる下部電極と、
下部電極上に積層した弾性を有する格子状絶縁体と、
格子状絶縁体上に積層した布状導電体からなる上部電極と、
上部電極上に積層した弾性緩衝材と、
を有することを特徴とするマットスイッチ。
【請求項2】
布状導電体からなる下部電極と、
下部電極上に積層した弾性を有する格子状絶縁体と、
格子状絶縁体上に積層した布状導電体からなる上部電極と、
上部電極上に積層した弾性緩衝材と、
前記下部電極、格子状絶縁体、上部電極及び弾性緩衝材の外周を被覆した外被と、
を有することを特徴とするマットスイッチ。
【請求項3】
布状導電体からなる下部電極と、
下部電極上に積層した直径1mm程度の弾性を有する絶縁素材を用いて10×10mm程度の格子状に形成した格子状絶縁体と、
格子状絶縁体上に積層した布状導電体からなる上部電極と、
上部電極上に積層した厚さ2mm程度のスポンジ等からなる弾性緩衝材と、
前記下部電極、格子状絶縁体、上部電極及び弾性緩衝材の外周に被覆したゴム材等からなる外被と、
を有することを特徴とするマットスイッチ。
【請求項4】
前記上部電極及び弾性緩衝材は、前記上部電極としての機能と弾性緩衝材としての機能を具備した導電性のスポンジからなるものである請求項1乃至3のいずれかに記載のマットスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−309959(P2006−309959A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127675(P2005−127675)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(390024718)株式会社東京センサ (12)
【Fターム(参考)】