説明

マットレス及び該マットレスを備えたベッド

【目的】俯せ状態に横臥しながら長時間に渡ってマッサージを受けるなどした場合でも、呼吸困難に陥らず、肉体疲労も起こさないマットレス及びベッドを提供する。
【構成】柔軟性を有するマットレス10であり、その一端部領域R1に俯せ状態における横臥者Mの顔面を埋没させるための顔面没入穴13が形成される。又、顔面没入穴13を形成する一端部領域R1の表面高さが横臥者Mの胴体部分を支持する領域R2より低く設定される。そして、係るマットレス10は脚部2により水平状に支持される架台部3上に載置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステティックサロンなどで用いられるマットレス及びベッドに係わり、特に俯せ状態に横臥して全身マッサージや全身美容術を受ける者の首や肩の疲労を防止することのできるマットレス及びこれを備えたベッドに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、全身マッサージや全身美容術を受ける場合にはベッド上に横臥するが、係るベッドはマットレスを支持する架台部を含み、その架台部が脚部により高さ調整可能に支持される構成となっている。
【0003】
そして、全身マッサージなどを受ける者は、床面より高位の架台部上に敷かれたマットレスの上で仰向けあるいは俯せ状態に横臥するが、俯せ状態に横臥したときには鼻や口が塞がれて呼吸を良好に行えなくなることがある。
【0004】
このため、俯せに横臥する場合には、顔を横向きにするか、マットレスと胸部との間にクッションを介在させて顔の位置を高くするなどの工夫がされているが、長時間に渡って顔を横向きに保つと首(頚部)が疲労し、胸部下にクッションを宛がった場合には胸部が圧迫されて息苦しくなるという問題がある。
【0005】
そこで、昇降自在な支持台と、この支持台に設けた額支持部および顎支持部とから構成され、額支持部と顎支持部を適宜間隔離してその両者間に目、鼻、口などが下方に露出する露出空間を形成した顔支持台が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
又、角形密閉タンクの上面中央に卵形陥没穴を設け、全表面をレザーで被覆した異形枕とし、上向き睡眠のときは後頭部、下向き睡眠のときは顔面部を窪の中に埋めるようにした健康枕が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0007】
更に、馬蹄形の枕本体と該枕本体の変形を防止するための剛性支持体から構成され、腹臥位で横たわった際の人体頭部顔面を下向きに保持するための腹臥位用枕、並びに該枕と併用するマットレスであって、胸から首にかけての部分に対応する位置に窪みを設けたマットレスが提案されている(例えば、特許文献3)。
【0008】
【特許文献1】実開昭64−46030号公報
【0009】
【特許文献2】実開平3−13125号公報
【特許文献3】特開2004−89697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
然し乍ら、特許文献1のような顔支持台では構造が複雑でコスト高となり、しかも係る顔支持台はベッドや布団の先端部よりも先に配置されるものであるから、狭い室内ではその配置領域を確保できない場合があり、更に当該顔支持台で顔面を支持したときには腕がベッドによる支持を失って疲労するという欠点がある。
【0011】
一方、特許文献2、3に記載される枕では、これをマットレスの一端部上に配置して鼻や口が塞がれることなく俯せ状態に横臥することができるものの、その使用者が横臥する面と同一面上に配置される枕では、これによって顔面を支持された俯せ状態の横臥者の頭部が持ち上がった状態となるため、この姿勢を長時間に渡って続けると首や肩の筋肉(僧帽筋、頭板状筋、頭半棘筋など)が緊張により疲労し、マッサージを受けることが逆効果になってしまう。
【0012】
尚、これを防止するべく、床面に布団を敷き、布団の一端部側で係る枕を床面に配置することも考えられるが、これでは特許文献1の顔支持台と同じく枕を配置する領域を確保できない場合があり、しかもベッド上に横臥する場合には床面との高低差が大きすぎるために、係る枕をベッドの一端部側で床面上に配置しても横臥者の顔面を支持することができない。
【0013】
又、特許文献3のマットレスでは、俯せ状態における横臥者の頭部を下げて肉体的疲労を軽減できるという効果が得られるものの、胸部が圧迫されるために長時間に渡って俯せ状態を維持することは困難である。
【0014】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は俯せ状態に横臥しながら長時間に渡ってマッサージを受けるなどした場合でも、呼吸困難に陥らず、肉体疲労も起こさないマットレス及びベッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記目的を達成するため、柔軟性を有するマットレスにおいて、俯せ状態における横臥者の顔面を埋没させるための顔面没入穴を有することを特徴とする。
【0016】
特に、顔面没入穴を形成する一端部領域の表面高さが横臥者の胴体部分を支持する領域より低く設定されていることを特徴とする。
【0017】
又、本発明に係るベッドは、脚部により水平状に支持される架台部上に、上記マットレスが載置されて成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るマットレスによれば、俯せ状態における横臥者の顔面を埋没させるための顔面没入穴を有することから、俯せ状態にして長時間に渡ってマッサージを受ける場合でも呼吸困難に陥らず、しかも頭部が持ち上がった状態にならないので俯せ状態で横臥することによる肉体的疲労を生じ難い。
【0019】
又、係るマットレスは顔面没入穴に顔面を正対させて当該マットレス上に横臥するだけで上記のような効果が得られ、このためベッドや床面上など使用場所を問わず、これを敷くだけの領域があれば使用可能であり、しかも簡易構造にして低コストで製造販売することができる。
【0020】
特に、顔面没入穴を形成する一端部領域の表面高さが横臥者の胴体部分を支持する領域より低く設定されていることから、俯せ状態における横臥者の頭部が持ち上げられず、首を水平状態乃至は若干下向きに曲げた状態に保つことができるので、首や肩の筋肉の緊張を抑制して肉体疲労を好適に防止することができる。
【0021】
加えて、本発明に係るベッドでは、脚部で支持された架台部上に上記マットレスが載置されることから、横臥者に肉体的苦痛を与えず、マッサージ師や全身美容師(エステティシャン)も腰を屈めず楽な姿勢でマッサージや全身美容術を施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明を詳しく説明する。図1は本発明に係るベッドを示した側面概略図、図2は同ベッドの正面概略図である。これらの図において、1はステンレス鋼等の耐食性を有する硬質部材から形成されるベッド本体であり、このベッド本体1は脚部2と該脚部により水平状に支持される架台部3とで構成される。
【0023】
脚部2は四脚構成であり、その各下端にはレベル調整用のシュー4(アジャスターボルト)が設けられ、左右一対の脚部2,2は補強桁5により連結される。
【0024】
一方、架台部3は方形状の枠あるいは板であり、その底部四隅に脚部2が一体的に接続されている。
【0025】
ここに、架台部3上には柔軟性を有するマットレス10が載置される。係るマットレス10は、図3のように充填材11を防水性のカバー部材12で包んだ構成であり、これは横臥者Mの全身を支持するに足る長さを有して図示せぬネジなどにより架台部3に対して着脱可能に締結されている。
【0026】
充填材11は、木板などから成る硬質の下部層11Aと、ウレタンフォームなどの発泡樹脂から成る軟質な上部層11Bとの二層構造であり、このうち硬質の下部層11Aがベッド本体の架台部3に結合されるようになっている。又、カバー部材12は天然皮革あるいは合成皮革から成るものであり、これは充填材11の全表面を被覆して内部への浸水を防止する働きをする。
【0027】
尚、下部層11Aをベッド本体の架台部3としてこれに脚部2を固定すると共に、ウレタンフォームなどの柔軟部材をカバー部材12で包んでマットレス10としてもよい。
【0028】
次に、図4はマットレスの平面図、図5は同マットレスの側面図を示す。これらの図で明らかなように、係るマットレス10において、横臥者の頭部を支持する一端部領域R1の中央には、横臥者の顔面を埋没させるための円形乃至は楕円形の顔面没入穴13が形成される。
【0029】
本例において、係る顔面没入穴13はマットレス10の厚さ方向に貫通する開口とされるが、これを凹状としてもよい。但し、この場合にも顔面没入穴13に顔面を埋めた状態で鼻や口の下に呼吸をするに足る空間が形成されるようにすることが肝要である。
【0030】
又、図5から明らかなように、顔面没入穴13を形成する一端部領域R1は傾斜面とされており、その表面高さが横臥者の胴体部分を支持する領域R2や下半身部分を支持する領域R3より低く設定される。
【0031】
尚、本例では、顔面没入穴13の中心部分において、一端部領域R1の表面高さが10〜15cm程度の厚さを有する領域R2,R3より2〜3cm程度低くされているが、その数値は必要に応じて変更することができる。又、一端部領域R1は傾斜面であることに限らず、これを段差を介して領域R2と連なる平面としてもよい。
【0032】
次に、図6は顔面没入穴に顔面を埋没させた状態を示す。この図から明らかなように、マットレス10上に俯せ状態に横臥してマッサージなどを受ける場合、横臥者Mは顔面没入穴13に顔面を埋没させる。そして、このとき横臥者Mの額、顎、並びに頬が顔面没入穴13の周縁に密着して支持されるようになっている。
【0033】
これによれば、鼻や口が塞がれず、呼吸を楽に行うことができ、しかも頭部が持ち上がらないために首や肩の筋肉が緊張せず、肉体的疲労を生じない。
【0034】
特に、その一端部領域R1が低く設定されているために、首が水平乃至は若干下向きに折れ曲がった状態となり、長時間に渡って俯せ状態に横臥しても肉体疲労を防止することができる。
【0035】
以上、本発明について説明したが、係るマットレスおよびこれを具備して成るベッドはエステやマッサージ用としてのほか、手術台などとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るマットレスを備えたベッドを示す側面概略図
【図2】同ベッドの正面概略図
【図3】本発明に係るマットレスの横断面図
【図4】同マットレスの平面図
【図5】同マットレスの側面図
【図6】同マットレスの使用態様を示す説明図
【符号の説明】
【0037】
1 ベッド本体
2 脚部
3 架台部
4 シュー
5 補強桁
10 マットレス
11 充填材
11A 下部層
11B 上部層
12 カバー部材
13 顔面没入穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性を有するマットレスにおいて、俯せ状態における横臥者の顔面を埋没させるための顔面没入穴を有することを特徴とするマットレス。
【請求項2】
顔面没入穴を形成する一端部領域の表面高さが横臥者の胴体部分を支持する領域より低く設定されていることを特徴とする請求項1記載のマットレス。
【請求項3】
脚部により水平状に支持される架台部上に、請求項1又は2記載のマットレスが載置されて成ることを特徴とするベッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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