説明

マット用途用のガラス繊維束およびその製造方法

マット製造用途において使用できる、チョップトガラス繊維の乾燥された束を提供する。該チョップトガラス繊維束(42)は、実質的に平行な配向で、配置された個々のガラス繊維(12)で作られている。該乾燥チョップトガラス繊維束は、サイズ組成物を、繊細化されたガラス繊維に適用し、該繊維を所定のバンドルテックスを持つように分割し、該湿潤ガラス束を、個々別々の長さに細断し、および該湿潤ガラス束を、誘電加熱オーブン、クラテック(CratecTM)オーブン、または回転トレーオーブン内で乾燥することにより、製造できる。あるいはまた、該乾燥チョップトガラス束は、繊細化したガラス繊維をサイズ剤で処理し、該サイズ処理した繊維を、伝熱チャンバーに通し、そこでブッシュにより加熱した空気を、該伝熱チャンバーに導いて、該ガラス繊維束を乾燥し、該乾燥し、サイズ処理したガラス繊維束を分割して、所定のバンドルテックスを得、また該ガラス繊維の乾燥された束を細断することにより、製造することもできる。該サイズ組成物は、ポリウレタンフィルム形成剤、不飽和ポリエステルまたはエポキシ樹脂からなる群から選択される、1またはそれ以上のフィルム形成剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、不織繊維マットに係り、またより詳しくは、マット製造用途において従来から使用されている形状の、ガラスの代替品として使用することのできる、チョップトガラス繊維の乾燥された束に関連し、またより一層具体的には湿式-積層マット製造用途に係る。本発明は、更に該チョップトガラス繊維の乾燥された束の製法をも提供する。
【背景技術】
【0002】
典型的に、ガラス繊維は、ブッシュまたはオリフィスプレートを通して、溶融ガラスを引抜いてフィラメントとし、また潤滑剤、カップリング剤、およびフィルム-形成バインダ樹脂を含有する水性サイズ組成物を、これらのフィラメントに適用することによって作られる。該サイズ組成物は、フィラメント間の磨耗から該繊維を保護し、また該ガラス繊維と該ガラス繊維を使用することになるマトリックスとの間の相溶性を高める。該サイズ組成物を適用した後、該湿潤繊維は、1またはそれ以上のストランドとして集められ、繊細化され、かつ捕集される。該チョップトストランドは、何百または何千本もの個々のガラス繊維を含むことができる。次に、該捕集されたチョップトガラスストランドは、その湿潤状態のまま、湿潤チョップト繊維ストランド(WUCS)として包装しても、あるいは乾燥して、乾燥チョップト繊維ストランド(DUCS)とすることもできる。
【0003】
湿潤チョップト繊維は、従来湿式-積層法において使用されており、この方法において、湿潤チョップト繊維は、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、および/または他の化学的薬品を含む水性スラリー中に分散される。次いで、該チョップト繊維を含有する該スラリーを攪拌して、該繊維を、該スラリー全体に渡り分散させる。該繊維を含有するスラリーを、移動するスクリーン上に堆積させ、そこで該スラリー中の水の実質的な部分を除去して、ウエブを生成する。次いで、バインダを適用し、得られるマットを、乾燥して、全ての残留水分を除去し、かつ該バインダを硬化する。この得られる不織マットは、分散された、個々のガラスフィラメントのアセンブリーである。
乾燥されたチョップトストランドは、一般に乾式-積層法において利用され、該方法において、該乾燥ストランドは、コンベアまたはスクリーン上で通気処理され、かつ統合、固化されて、マットを生成する。例えば、乾燥チョップトストランドを、空気中に浮遊させ、ルーズなウエブとしてスクリーンまたは穿孔されたコンベア上に集め、次いで統合、固化して、ランダムに配向した束を含むマットを生成する。
【0004】
湿式-積層法および乾式-積層法により生成した繊維マットは、多くの型の用途に対して、強化材として極めて適している。最終的な積層物が、許容される機械的な性能を獲得するためには、十分な質量基準の量で、ガラス強化材を含む必要がある。該乾式-積層されたマット内に存在する、繊維束は、高いガラス含有率をもたらすが、乾燥チョップトストランドの製造は、経費を要する。というのは、このようなストランドが、一般的には、細断する前に、別の段階において乾燥され、また包装されるからである。従って、高い耐衝撃性を要する複合体における、高いガラス含有率を達成するであろう、あまり高価でないガラス製造プラットフォームを用いることが望ましい。
乾燥チョップト繊維の束が、従来から製造されている。これら乾燥チョップト繊維束の製法の幾つかの例を、以下に説明する。
【0005】
Schaeferに付与された米国特許第4,024,647号は、チョップトガラスストランドを乾燥し、かつ搬送する方法並びに装置を記載している。ガラスフィラメントをブッシュ内のオリフィスを通して繊細化し、潤滑バインダおよび/またはサイズ剤で被覆する。これらフィラメントを集めて、1またはそれ以上のストランドとし、更に細断する。該湿潤、チョップト繊維を、次に第一の振動型コンベア上に落下させる。該第一の振動型コンベアの振動は、該束が相互に接着するのを防止することによって、該チョップトストランドを繊維束状態に維持する。次いで、該チョップトストランドは、加熱ゾーンを介して、第二の振動型コンベアに通され、該加熱ゾーンにおいて、該チョップトストランドが加熱され、その含水率は、0.1質量%未満まで減じられる。次いで、所定の長さを持つチョップトストランドは、該第二の振動型コンベアの有孔部分を通過し、捕集容器に入る。
【0006】
Flautt等に付与された米国特許第5,055,119号は、ガラス繊維束またはストランドを製造するための、エネルギー効率のよい方法並びに装置を記載している。ガラス繊維は、加熱されたブッシュから放出される溶融ガラスから作られる。該繊維は、下方に移動し、またサイズ剤が、アプリケータによって該ガラス繊維に適用される。該ガラス繊維を乾燥するために、ブッシュ周辺からの空気を、該ブッシュの下方に通じ、そこで該空気は、該ブッシュの熱で加熱される。この加熱空気は、該ガラス繊維が通過する、チャンバー内に導かれる。この伝熱接触は、該サイズ剤組成物中の水または溶媒を蒸発させる。次に、該乾燥繊維は、束状に捕集される。引続き、該束を細断することができる。
Blough等に付与された米国特許第6,148,641号は、連続する繊維ストランドの供給物から、乾燥され、細断されたストランドを製造するための、方法並びに装置を記載している。この記載の方法において、チョップト繊維ストランドは、1またはそれ以上の連続するストランドから、該繊維ストランドを、細断アセンブリー内で細断し、射出アセンブリーからの該チョップトストランドを、転移シュートを介して直接乾燥チャンバーに押出し、該乾燥チャンバー内の該チョップトストランドを捕集し、また該乾燥チャンバー内の該ストランドを少なくとも部分的に乾燥することによって製造している。
【0007】
更に、乾式-積層法において見られるようなガラス束を含む(ここで、個々の繊維は、湿式-積層法において見られるようなものである)、チョップトストランドガラスマットが、湿式-積層法により製造されている。これらマットの幾つかの例を、以下に示す。
Hannes等に付与された米国特許第4,112,174号および同第4,129,674号は、モノフィラメント繊維製のウエブおよびランダムに配向したパターンで、該ウエブ全体に散在する、延伸したガラス繊維束から製造した、ガラスマットを開示している。該ガラス繊維束は、好ましくは約20〜300本のモノフィラメントを含む。該繊維マットは、湿式-積層法により作られる。該マット製造工程中、該スラリー内で、該ガラス繊維束をその束形状に維持するために、該束を、水または他の液体不溶性バインダで被覆する。
Bodoc等に付与された米国特許第4,200,487号および同第4,242,404号は、個々のガラスフィラメントおよび伸張されたガラス繊維エレメントを含む、ガラスマットを記載している。該伸張ガラス繊維エレメントは、ガラス繊維束から製造され、該束は、該スラリーを攪拌した際に、相互に摺動して、長手方向に結合する。該ガラス繊維エレメントは、該マットの高い強度特性に寄与し、また該個々のフィラメントが、屋根こけら板の製造において、アスファルトを含浸するために必要な均一な緻密性を与えるものと主張している。該マットは、湿式-積層法で作られる。
【0008】
Rokman等の、米国特許第6,767,851号および米国特許出願第2002/0092634号は、不織マットを開示しており、そこでは、少なくとも20%の繊維が、一束当たり約5〜450本の繊維を含む繊維束として存在する。好ましい態様において、該マット中の少なくとも85%の繊維が、束形状にある。これらの繊維は、実質上非-水溶性のサイズ剤、例えばエポキシ樹脂またはPVOHによって、該束状の状態に維持されている。これらの束は、少なくとも10%の強化繊維、例えばガラス繊維を含むことができる。このマットは、発泡法(foam process)または水中法(water process)によって作ることができる。
これら乾燥されたチョップトガラス束および繊維束-含有マットの存在にも拘らず、当分野には、ガラス繊維含有率を高めるための、コスト的に有効で、効率的な、湿式-積層法で作られたガラスマットを使用する方法に対する要求が残されている。
【発明の開示】
【0009】
本発明の目的の一つは、チョップトガラス繊維束を提供することにあり、該ガラス繊維束は、マット形成用途において使用されている、従来のガラス成型品の代替物として使用できる。該チョップトガラス繊維束は、相互に実質的に平行な配向で配置された、複数の個々のガラス繊維で作られる。該チョップトガラス繊維束を製造するのに使用される、該ガラス繊維束は、任意の型のガラス繊維束であり得る。強化繊維、例えば天然繊維、無機繊維、炭素繊維、セラミックス繊維、および/または合成繊維を、該チョップトガラス繊維束中に存在させることは可能であるが、該チョップトガラス繊維束中の繊維全てが、ガラス繊維であることが好ましい。該繊維は、少なくとも部分的にサイズ組成物で被覆されており、該組成物は、1またはそれ以上のフィルム-形成剤(例えば、ポリウレタンフィルム形成剤、ポリエステルフィルム形成剤、および/またはエポキシ樹脂フィルム形成剤)、少なくとも1種の潤滑剤、および少なくとも1種のシランカップリング剤(例えば、アミノシランまたはメタクリロキシシランカップリング剤)を含む。該ガラス繊維上の該サイズ剤は、該ガラス繊維束の製造中およびその後の加工中の、束の保全性を維持し、また後の処理段階において、該チョップトガラス繊維束のフィラメント化(filamentizing)を助けて、最終製品に審美的に満足な外観を与える、マットを形成する。
【0010】
マット形成用途において使用されている、従来のガラス成型品の代替物として使用できる、チョップトガラス繊維束の製法を提供することも、本発明の目的の一つである。1またはそれ以上のフィルム-形成剤(例えば、ポリウレタンフィルム形成剤、ポリエステルフィルム形成剤、および/またはエポキシ樹脂フィルム形成剤)、少なくとも1種の潤滑剤、および少なくとも1種のシランカップリング剤(例えば、アミノシランまたはメタクリロキシシランカップリング剤)を含むサイズ組成物を、公知の方法で繊細化したガラス繊維に適用する。該サイズ処理した該ガラス繊維は、予め定められた数の、個々のガラス繊維を含む、ガラス繊維ストランドに分割することができる。該ガラス繊維束は、約20〜約200g/kmなる範囲内のバンドルテックス(bundle tex)を持つことが望ましい。次いで、このガラス繊維ストランドを、湿潤チョップトガラス繊維束に細断し、乾燥して、該サイズ剤組成物を統合、強化し、または固化することができる。好ましくは、該繊維の湿潤した束を、従来の誘電(RF)加熱オーブン、流動床オーブン、例えばクラテック(CratecTM)オーブン(オーエンスコーニング(Owens Corning)社から入手できる)または回転トレー加熱オーブン等のオーブン内で乾燥して、該チョップトガラス繊維束を製造する。
【0011】
また、伝熱チャンバーを利用して、該湿潤状態にあり、サイズ処理された繊維を断熱的に乾燥する、チョップトガラス繊維束の製法を提供することも、本発明の目的の一つである。1またはそれ以上のフィルム-形成剤(例えば、ポリウレタンフィルム形成剤、ポリエステルフィルム形成剤、および/またはエポキシ樹脂フィルム形成剤)、少なくとも1種の潤滑剤、および少なくとも1種のシランカップリング剤(例えば、アミノシランまたはメタクリロキシシランカップリング剤)を含むサイズ剤を、ブッシュにより繊細化されたガラス繊維に適用する。次いで、このサイズ剤で処理したガラス繊維を、伝熱チャンバーに通すことができ、該チャンバーにおいて、該ブッシュにより加熱された空気が、該伝熱チャンバーに導かれ、実質的に該ガラス繊維上の該サイズ剤を乾燥する。該伝熱チャンバーから出てくる該乾燥されたガラス繊維を、ガラス繊維ストランドに分割することができ、該ストランドは、予め選択された数の、個々のガラス繊維を含んでいる。該ガラス繊維束は、20〜200g/kmなる範囲のバンドルテックスを持つことが望ましい。該ガラスストランドは、該ストランドを、チョップトガラス繊維束に細断する前に、一緒に集めて、単一のトウとすることができる。一例示的態様において、該チョップト繊維束は、更に公知の誘電(RF)加熱オーブン、流動床オーブン、例えばクラテック(商標)オーブン(オーエンスコーニング社から入手できる)または回転トレー加熱オーブン等のオーブン内で、更に乾燥される。
【0012】
本発明の利点の一つは、該チョップトガラス繊維束が、従来のエアー-レイド法よりも、迅速な速度にて製造できることにある。該チョップトガラス繊維束の製造可能な速度を高めることによって、高い処理量を達成し、また顧客に販売できる追加の製品の製造が可能となる。
本発明のもう一つの利点は、該チョップトガラス繊維束が、低い製造コストにて製造できることにある。というのは、該湿潤ガラス繊維を、別々の段階にて乾燥し、かつ細断する必要がないからである。
本発明の更に別の利点は、該チョップトガラス繊維束を製造するのに使用する、該湿潤繊維が、最終的なチョップトストランドマットにおいて、毛羽(パイル)を殆どまたは全く生成しないことにある。
本発明の上記のおよびその他の目的、特徴並びに利点は、以下に与えられる詳細な説明の考察から、後でより一層明らかになるであろう。しかし、特に、以下の図面は、例示の目的で与えられるものと理解すべきであり、本発明の限界を規定するものと理解すべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の利点は、以下の本発明の詳細な開示を、特に添付図面と共に考察することによって、明らかとなろう。
特に定義しない限り、ここで使用する全ての技術的並びに科学的な用語は、本発明の属する分野における当業者によって、通常理解されるものと同一の意味を有する。ここに記載するものと同一のまたは等価なあらゆる方法並びに物質が、本発明の実施またはテストにおいて使用できるが、好ましい方法並びに物質を、本明細書に記載する。
図において、ライン、層、および領域の厚みは、明確化のために誇張されたものであり得る。図面全体を通して同様な数値は、同様なエレメントを表していることに注意すべきである。用語「頂部」、「底部」、「側部」、「上部」、「下部」等は、ここでは説明の都合上でのみ使用する。あるエレメントが、もう一つのエレメント「上に」あるものと述べられている場合、前者は、後者の上に、またはそれに対して直接載置でき、あるいは介在エレメントが存在し得るものと理解すべきである。用語「サイジング(剤)」、「サイズ(剤)」、「サイジング(剤)組成物」および「サイズ(剤)組成物」とは、ここでは、互換的に使用できるものとする。用語「ストランド」および「束」も、同様にここでは、互換的に使用できるものとする。
【0014】
本発明は、マット製造用途において利用される、従来のガラス成型品の代替物として使用できる、チョップトガラス繊維束およびこのようなチョップトガラス繊維束に関する。本発明によるチョップトガラス繊維束の例は、図1において、一般的に示されている。図1に示したように、該チョップトガラス繊維束10は、径16および長さ14を持つ、複数の個々のガラス繊維12で作られている。該個々のガラス繊維12は、相互に実質的に平行な配向にて、密な織目または「束状の」規則的な構造で配置されている。ここで使用するフレーズ「実質的に平行」とは、該個々のガラス繊維12が、相互に平行またはほぼ平行状態にあることを表すものとする。本発明による該チョップトガラス繊維束は、チョップトストランドマット(CSM)の製造において、シート成型配合物(SMC)の製造において、バルク成型配合物(BMC)において、手作業での積層、堆積(hand lay-up)用途において、およびスプレイアップ(spray-up)用途において、使用することができる。更に、該チョップトガラス繊維束は、樹脂トランスファー成型(RTM)または構造材用反応射出成型(SRIM)において使用するプリフォームを製造するために使用できる。構造材用反応射出成型において、該チョップトガラス繊維束10は、スクリーンに吹付けて、トラックの床または自動車のドア内装等の所定部品の形状とする。
【0015】
該チョップト繊維束を製造するのに使用される該ガラス繊維は、任意の型のガラス繊維、例えばA-型ガラス繊維、C-型ガラス繊維、E-型ガラス繊維、S-型ガラス繊維、ECR-型ガラス繊維(例えば、オーエンスコーニング社から入手できる、アドバンテックス(AdvantexTM))、ウールガラス繊維またはこれらの組み合わせであり得る。少なくとも一つの好ましい態様において、該ガラス繊維は、湿式用途用のチョップトストランドガラス繊維(WUCS)である。湿式用途用のチョップトストランドガラス繊維は、当分野において公知の方法によって製造できる。我々は、望ましくは約5〜約30%なる範囲の含水率、およびより一層望ましくは約5〜約15%なる範囲の含水率を持つ該湿式用途用のチョップトストランドガラス繊維を使用することが望ましい。
【0016】
該繊維の束10における、他の強化繊維、例えば天然繊維、無機繊維、炭素繊維、セラミックス繊維、および/または合成繊維、例えばポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、および/またはポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)(ケブラー(KevlarTM)として市販されている)等の使用は、本発明の範囲内に含まれるものと考える。ここで使用する用語「天然繊維」とは、茎、種子、葉、根、または靭皮部を含むが、これらに限定されない、植物の任意の部分から抽出された植物繊維を意味する。該繊維束に合成繊維を含めることは、該繊維束から製造されるマットに、より高い可撓性または小径に対する順応性を与える。更に、合成繊維の使用は、後の加工において、マットのバインダとして機能して、該チョップトガラス繊維束10を一緒に維持し、かつチョップトストランドマットの製造を可能とする。しかし、該束10における全ての繊維は、ガラス繊維であることが好ましい。
【0017】
一般的に図2に示したような、一例示的な態様において、該チョップトガラス繊維束10の製法は、ガラス繊維を製造し(段階20)、ガラス繊維にサイズ組成物を適用し(段階22)、該繊維を分割して、所定のバンドルテックスを得(段階24)、湿潤繊維ストランドをバラバラの長さに細断し(段階26)、かつ該湿潤ストランドを乾燥して(段階28)、所望の該チョップトガラス繊維束を製造する、諸工程を含む。
図3により一層詳しく示したように、ガラス繊維12は、ブッシュまたはオリフィス30からの、溶融ガラス材料(図示せず)の流れを、繊細化することによって製造できる。該繊細化されたガラス繊維12は、約8〜約23μmなる範囲、好ましくは10-16μmなる範囲の径を持つことができる。該ガラス繊維12を、該ブッシュ30から引抜いた後、水性サイズ組成物を、該繊維12に適用する。該サイズ剤は、公知の方法、例えば図3に示したような塗布ローラー32によって、または該サイズ剤を直接該繊維(図示せず)に噴霧することにより適用できる。このサイズ剤は、後の加工工程中の、該繊維12の破壊を防止し、フィラメント間の接着を遅延するのに役立ち、また該ガラス繊維ストランドの保全性、例えば該ストランドを構成する該ガラスフィラメントの相互の結合を保証する。
【0018】
本発明において、該ガラス繊維12上のサイズ剤は、また、例えばチョップトストランドマット(CSM)を製造するための、湿式-積層法における、繊維束の製造中および該ガラス繊維束10のその後の処理中の該束の保全性を維持する。この工程においては、該ガラス繊維束10を、白水スラリーに添加して、攪拌する。次いで、該スラリーを、移動スクリーン上に載置し、そこで該スラリー水分の大部分を除去して、ウエブを生成し、バインダを適用し、該ウエブを乾燥して、残留する水分を除去し、また該バインダを硬化する。従来のガラス繊維束とは異なり、以下に記載する該サイズ組成物でサイジング処理したチョップトガラス繊維束10は、該チョップトストランドマットの製造中に、該白水スラリーにおいて、その束形状を維持し、または実質的に束形状を維持している。少なくとも一つの例示的な態様においては、該繊維束10内の該繊維12を、該サイズ組成物でサイジング処理して、所定量の繊維12を、攪拌中に、該繊維束10から該スラリー中に分散させることができる。該ガラス繊維12上のサイズ組成物は、審美的に満足な外観を、該最終的な製品に与える、マットを製造するための、後の処理段階において、該束10をフィラメント化するのを助ける。
【0019】
該ガラス繊維上の該サイズ剤が、加工中の束の保全性を維持する、もう一つの例は、シート成型配合物(SMC)の成型におけるものである。シート成型配合物の成型において、適合する金属ダイは、シート成型配合物またはバルク成型配合物(BMC)で充填され(満たされ)ている。該ガラス繊維束10は、該金属ダイが、閉じている場合には、束の保全性を維持し、またシート成型配合物(またはBMC)が、流動し、かつ該ダイを満たすことができ、所定の部品を生成するように、加熱されることが望ましい。しかし、該ガラス繊維束10が、その流動が完了する前に、該ダイ内部で、個々の繊維に分離した場合には、該個々の繊維は、塊を生成し、該ダイを不完全に満たし、結果として欠陥のある部品の生成をもたらす。他方、該シートまたはバルク成型配合物が流動し、また該ダイが満たされた後に、該ガラス繊維束10を、この時点においてフィラメント化し、該部品表面における、該ガラス繊維束10の輪郭としての、「テレグラフィング(telegraphing)」または「繊維プリント(fiber print)」の発生を減じ、あるいは場合によってはこれを阻止することも望ましい。従って、該ガラス繊維12上のサイズ剤は、また後の処理工程(例えば、該ガラス繊維束10で作られた、チョップトストランドマットの成型工程)中の、該チョップトガラス繊維束10をフィラメント化して、審美的に満足な最終製品を製造するのに役立つ。
【0020】
該ガラス繊維12に適用される該サイズ組成物は、1またはそれ以上のフィルム-形成剤(例えば、ポリウレタンフィルム形成剤、ポリエステルフィルム形成剤、および/またはエポキシ樹脂フィルム形成剤)、少なくとも1種の潤滑剤、および少なくとも1種のシランカップリング剤(例えば、アミノシランまたはメタクリロキシシランカップリング剤)を含む。必要な場合には、弱酸、例えば酢酸、ホウ酸、メタホウ酸、琥珀酸、クエン酸、蟻酸、および/またはポリアクリル酸を、該サイズ組成物に添加して、該シランカップリング剤の加水分解を補助することも可能である。該サイズ組成物は、該ガラス繊維12に対して、該乾燥繊維上に、約0.05〜約2.0%なる範囲の、ロスオンイグニション(Loss on Ignition) (LOI)にて適用することができる。LOIは、該ガラス繊維表面上に堆積された有機固体物質の割合として定義することができる。
【0021】
フィルム形成剤は、該ガラス繊維12間に改善された接着性を発生する薬剤であり、結果的に改善されたストランドの保全性をもたらす。本発明において使用するのに適したフィルム形成剤は、ポリウレタンフィルム形成剤、エポキシ樹脂フィルム形成剤、および不飽和ポリエステルフィルム形成剤を含む。フィルム形成剤の具体例は、ポリウレタン分散物、例えばネオキシル(Neoxil) 6158(DSMから入手できる);ポリエステル分散物、例えばネオキシル2106(DSMから入手できる)、ネオキシル9540(DSMから入手できる)、およびネオキシルPS 4759(DSMから入手できる);およびエポキシ樹脂分散物、例えばPE-412(AOCから入手できる)、NX 9620(DSMから入手できる)、ネオキシル0151(DSMから入手できる)、ネオキシル2762(DMS)、NX 1143(DSMから入手できる)、AD 502(AOCから入手できる)、エピレズ(Epi Rez) 5520(ヘキション(Hexion)から入手できる)、エピレズ3952(ヘキションから入手できる)、ウイトコボンド(Witcobond) W-290 H(ケムツラ(Chemtura)から入手できる)、およびウイトコボンドW-296(ケムツラから入手できる)を含むが、これらに限定されない。該フィルム形成剤は、該サイズ組成物中に、その活性な固形分を基準として、約5〜約95質量%なる範囲の量、好ましくは該活性な固形分を基準として、約40〜約80質量%なる範囲の量にて、存在し得る。
【0022】
該サイズ組成物は、また1またはそれ以上のシランカップリング剤を含む。シランカップリング剤は、該フィルム形成剤の、該ガラス繊維12に対する接着性を高め、かつ後の処理中の、毛羽のレベルあるいは破壊された繊維フィラメントのレベルを下げる。本発明のサイズ組成物において使用できる、シランカップリング剤の例は、その官能基、アミノ、エポキシ、ビニル、メタクリロキシ、ウレイド、イソシアナト、およびアザミドによって特徴付けることができる。該サイズ組成物において使用するのに適したカップリング剤は、市販品として入手できる、例えばγ-アミノプロピルトリエトキシシラン(ジェネラルエレクトリック(General Electric)社から入手できるA-1100)、およびメタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(ジェネラルエレクトリック社から入手できるA-174)である。該シランカップリング剤は、該サイズ組成物中に、該組成物の活性な固形分を基準として、約5〜約30質量%なる範囲の量、およびより一層好ましくは該活性な固形分を基準として、約10〜約15質量%なる範囲の量で存在し得る。
【0023】
更に、該サイズ組成物は、少なくとも1種の潤滑剤を含み、その製造を容易にすることができる。該潤滑剤は、該サイズ組成物中に、該組成物の活性な固形分を基準として、約0〜約15質量%なる範囲の量で存在し得る。好ましくは、該潤滑剤は、該活性な固形分を基準として、約5〜約10質量%なる範囲の量で存在する。あらゆる適当な潤滑剤を使用できるが、該サイズ組成物において使用するのに適した潤滑剤の具体例は、商品名:ルベサイズ(Lubesize) K-12(AOCから入手できる)の下で市販されている、ステアリン酸エタノールアミド;PEG 400MO、即ち約400個のエチレンオキシド基を含むモノオレエートエステル(コグニス(Cognis)から入手できる);およびエマリー(Emery) 6760L、即ちポリエチレンイミンポリアミド塩(コグニスから入手できる)を含む。
化学物質の幾つかの群の組合せが、該チョップトガラス繊維束10を、後の処理中、その束状態に維持するのに特に効果的であることを見出した。例えば、ウレタンを主成分とするフィルム形成分散物と、アミノシラン、例えばγ-アミノプロピルトリエトキシシラン(ジェネラルエレクトリック社により、A-1100として市販されている)との組合せが、該個々のガラス繊維12を一緒に束状態に維持するために、該サイズ組成物において有効である。
【0024】
更に、エポキシを主成分とするフィルム形成分散物と、エポキシ硬化剤との組合せが、本発明において使用するのに効果的なサイズ組成物である。特に、エポキシを主成分とするフィルム形成剤、例えばエピレズ(Epi-Rez) 5520と、エポキシ硬化剤、例えばレゾリューションパフォーマンスプローダクツ(Resolution Performance Products)から入手できる、DPC-6870との組合せは、効果的なサイズ組成物を生成し、特にメタクリロキシシラン、例えばメタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(ジェネラルエレクトリック社からA-174として市販品で入手できる)との組合せが好ましい。
更に、不飽和ポリエステルフィルム形成剤も、有用なサイズ組成物を製造するのに有効であることが分かっている。例えば、PE-412(水中に乳化されている、スチレン内の不飽和ポリエステル(AOCから入手できる))またはネオキシルPS 4759(DSMから入手できる)等の不飽和ポリエステルフィルム形成剤が、本発明において使用するための効果的なサイズ剤である。不飽和ポリエステルフィルム形成剤は、単独でまたはベンゾイルパーオキシド硬化触媒、例えばベノックス(Benox) L-40LV(ノラックカンパニー社(Norac Company, Inc.)製)との組合せで使用することができる。該ベンゾイルパーオキシド硬化触媒は、該不飽和ポリエステル樹脂の硬化(架橋)を触媒し、また該ガラス繊維を取巻く該フィルムを耐水性にする。
【0025】
該サイズ組成物は、場合により、例えばドゥリュー(Drew) L-139(アシュランドケミカル社(Ashland Chemical)の一部門である、ドゥリューインダストリーズ(Drew Industries)から入手できる)、静電防止剤、例えばエマースタット(Emerstat) 6660A(コグニスから入手できる)、界面活性剤、例えばスルフィノール(Sulfynol) 465(エアープローダクツ(Air Products)から入手できる)、トライトン(Triton) X-100(コグニスから入手できる)、および/または増粘剤を包含する、公知の添加剤を含むことができる。これらの添加剤は、該サイズ組成物中に、痕跡量(例えば、活性固形分を基準として、<約0.1質量%)から、活性固形分の約5質量%までの量で、存在できる。
【0026】
該ガラス繊維12を、該サイズ組成物で処理した後、該繊維を集め、特定の、望ましい数の個々のガラス繊維12を含む、繊維ストランド36に分割する。該スプリッタシュー34は、該繊細化され、サイズ剤で処理されたガラス繊維を、繊維ストランド36に分割する。該ガラス繊維ストランド36を、第二のスプリッタシュー(図示せず)に通した後に、該繊維ストランド36を細断することができる。該繊維ストランド36内に存在する特定数の個々のガラス繊維12(また、その結果としての該ガラス繊維12の分割数)は、該チョップトガラス繊維束10の特定の用途に応じて変化するであろう。例えば、ブッシュが、ガラス繊維を繊細化するための4,000個のオリフィスを持つと想定すると、100本の繊維を含む、ガラス繊維束を得るためには、該繊細化したガラス繊維を40の部分に分割する必要がある。この特定のガラス繊維束のバンドルテックスは、該束を構成するガラス繊維の径に依存する。該繊維束が100本の個々のガラス繊維を含む、上記の例において、該ガラス繊維の繊維径が、12μmである場合には、計算上のバンドルテックスは、29となる。該繊維径が、16μmである場合、計算上のバンドルテックスは、51g/kmとなる。約20〜約200g/kmなる範囲、好ましくは約30〜約50g/kmなる範囲のバンドルテックスを達成するような、特定数の個々の繊維を含む、繊維束に、該ガラス繊維12を分割することが望ましい。
【0027】
該繊維ストランド36は、該捕集シュー38から、チョッパー40/コット60の組合せまで通過し、そこでこれらストランドは、長さ約3.18〜約76.2mm(約0.125〜約3 in)なる範囲、および好ましくは約6.35〜約31.8mm(約0.25〜約1.25 in)なる範囲の湿潤チョップトガラス繊維束42に細断される。これらの湿潤、チョップトガラス繊維束42は、乾燥オーブン46に搬送するための、コンベア44(例えば、有孔コンベア)上に落下させることができる。あるいはまた、チョップトガラス繊維束42の湿潤状態にある束は、後の時点における使用のために、容器(図示せず)内に集めることができる。
湿潤状態にあるサイズ剤で処理したチョップト繊維42の束を、次に該サイズ組成物を統合、強化し、あるいは固化するために乾燥する。好ましくは、該繊維42の湿潤状態にある束を、オーブン46、例えば誘電加熱(RF)オーブン、流動床オーブン、例えばクラテック(商標)オーブン(オーエンスコーニング社から入手できる)、または回転トレー加熱オーブン内で乾燥して、該チョップトガラス繊維束10を製造する。該乾燥されたチョップトガラス繊維束10は、次いで捕集容器48内に集めることができる。例示的な態様において、遊離水(即ち、該チョップト繊維束42の外側にある水)の約99%を越える(またはこれに等しい)量を除去する。しかし、該水の実質的に全てを、該乾燥オーブン46によって除去することが好ましい。ここで使用する、該「実質的に全ての水」なる文は、該繊維束42から該遊離水の全てまたは殆ど全てを除去することを意味するものとする。
【0028】
少なくとも一つの例示的な態様において、該ガラス繊維の湿潤状態にある束42を、公知の誘電加熱(RF)オーブン内で乾燥する。該誘電加熱オーブンは、隔置された電極を含み、これら電極は、連続する反対電荷に帯電した電極間に、交流高周波電場を生成する。該ガラス繊維の湿潤状態にある束42を、該電極間および該電場を通り、そこでは高い交流高周波電場が作用して、該水分子を励起し、またその分子エネルギーを、該湿潤チョップト繊維束42内の水を蒸発させるのに十分なレベルまで高める。
誘電的に乾燥させた該湿潤ガラス繊維の束42は、繊維対繊維凝集力を高め、かつ束-束間の接着性を減じる。誘電エネルギーは、均等に該チョップトガラス繊維の湿潤状態にある束42に浸透し、該水を迅速に蒸発せしめ、該湿潤ガラス束42を相互に分離状態に維持するのを補助する。更に、誘電加熱オーブンは、湿潤繊維から水分を除去するために従来必要とされていたような、繊維を攪拌するという活動的な方法以外の方法で、該湿潤ガラス繊維束42を乾燥することを可能とする。この攪拌を行わないことは、従来の流動床およびトレー乾燥オーブンにおいて、該オーブン内の高い空気の流速、および該床における該繊維質材料の機械的な運動のために、一般的に見られたような、繊維の摩滅または磨耗を減じまたはこれを排除する。更に、攪拌を行わないことは、該誘電加熱オーブンの、該ガラス繊維をその束状態に維持する能力を高め、かつ過激な従来の熱処理工程における如き、該ガラス繊維ストランドのフィラメント化をもたらすことはない。
【0029】
もう一つの態様において、該湿潤チョップトガラス繊維束42は、流動床オーブン、例えばクラテック(商標)オーブン、あるいは回転トレーオーブン内で乾燥することができる。該クラテック(商標)乾燥オーブンおよび回転トレーオーブン両者において、該湿潤チョップトガラス繊維束42が乾燥され、また該繊維上の該サイズ組成物は、制御された温度を持つ高温空気流を用いて、固化される。該乾燥された繊維束10を、次いでスクリーン上に通して、長い毛羽ボール、および他の望ましからぬ物質を、該チョップトガラス繊維束10を集める前に、除去することができる。更に、典型的にはクラテック(商標)オーブンおよび回転トレーオーブンにおいて見出される、高いオーブン温度は、極めて高いレベルの硬化にまで、該サイズ剤を迅速に硬化することを可能とし、該高いレベルの硬化は、早期のフィラメント化を減じる。
【0030】
一般的に図4に示したような、本発明の第二の態様において、ガラス繊維12は、ブッシュ30で繊細化される。上で詳細に説明したような水性サイズ組成物を、該繊細化したガラス繊維12に適用し、湿潤状態にあるサイズ剤で処理した、ガラス繊維50を製造する。該サイズ剤は、公知の方法、例えば外塗りロール32により、あるいは該サイズ剤を直接該ガラス繊維12(図示せず)に噴霧することにより、塗布することができる。サイズ剤アプリケータを、該伝熱チャンバー52の内部に配置することは、本発明の範囲内に入るものと考える。次いで、該湿潤した、サイズ処理したガラス繊維50は、該伝熱チャンバー52に入り、周囲空気を、該ブッシュ30の周辺から、該伝熱チャンバー52に導く。
【0031】
図4に示したように、該伝熱チャンバー52は、該サイズアプリケータ32の下方に伸びており、また該ブッシュ30と十分に近接した状態で、該伝熱チャンバー52の最上端部54を持つように配置され、結果として該伝熱チャンバー52の該最上端部54に引込まれる空気が、該ブッシュ30によって生成される大きな熱によって加熱される。更に、該伝熱チャンバー52は、基本的に該サイズ処理したガラス繊維50の周辺近傍に配置されていて、該加熱空気が、該湿潤ガラス繊維50上の該サイズ組成物中に存在する、あらゆる水および溶媒を蒸発することができる。該伝熱チャンバー52は、該湿潤した、サイズ処理したガラス繊維50を乾燥し、あるいはこれを実質的に乾燥するのに十分な距離、該サイズアプリケータ32から下方に伸びている。好ましい態様において、該ガラス繊維50の含水率は、約0.05%未満である。該湿潤ガラス繊維50は、該伝熱チャンバー52を介して移動して、乾燥されたガラス繊維56として、該チャンバー52から出てくる。このような断熱過程は、Flautt等に付与された米国特許第5,055,119号に、詳しく記載されている。
【0032】
次に、該乾燥され、サイズ処理されたガラス繊維56を集め、特定の、また望ましい数の個々のガラス繊維12を含む、乾燥繊維ストランド58に分割する。スプリッタシュー34が、該乾燥され、サイズ処理されたガラス繊維56を、乾燥繊維ストランド58に分割し、該ストランドは、次に捕集シュー38により集められて、細断のための単一のトウ59とされる。該スプリッタシュー34を、該伝熱チャンバー52の内側(図示せず)に配置して、該湿潤ガラス繊維50を、これが該伝熱チャンバー52を出る前に、繊維ストランドに分割することができるものと理解すべきである。この状況において、該捕集シュー38は、該伝熱チャンバー52内に配置されていても、またそうでなくても良い。該スプリッタシュー34を、該サイズアプリケータ32と、該伝熱チャンバー52との間に配置して、該ガラス繊維12が、該伝熱チャンバー52(図示せず)に入る前に、これを分割することも可能であると理解すべきである。
【0033】
該併合されたガラス繊維ストランドのトウ59を、公知のコット60およびカッター40の組合せにより細断して、該乾燥されたチョップト繊維束10を製造することができる。上記の如く、該乾燥されたチョップト繊維束10は、約3.18〜約76.2mm(約0.125〜約3 in)なる範囲、および好ましくは約6.35〜約31.8mm(約0.25〜約1.25 in)なる範囲の長さを持つことができる。少なくとも一つの好ましい態様において、該乾燥され、サイズ処理されたガラス繊維56は、約20〜約200g/kmなる範囲、および好ましくは約30〜約50g/kmなる範囲のバンドルテックスを持つ、乾燥繊維束58に分割される。該乾燥されたチョップトガラス繊維束10は、保存用の捕集容器48上に落下させ、あるいはチョップトストランドマットのインライン製造(態様は例示せず)用のコンベア上に置くことができる。もう一つの態様において、該乾燥されたチョップト繊維束10は、公知の誘電加熱(RF)オーブン、流動床オーブン、例えばクラテック(商標)オーブン(オーエンスコーニング社から入手できる)、または回転トレー加熱オーブンに搬送して、更に乾燥するために、コンベア(図示せず)上に置くことができる。
【0034】
使用に際して、該乾燥されたチョップトガラス繊維束10は、図5に示すような、チョップトストランドマット84を製造するのに使用できる。該乾燥されたチョップトガラス束10は、貯蔵容器60によって、コンベア62に供給することができる。該乾燥されたチョップトガラス繊維束10は、様々な界面活性剤、粘度改良剤、消泡剤、および/または他の化学薬品を含む、混合タンク64に、攪拌しつつ入れられ、チョップトガラス繊維束のスラリー(図示せず)が生成される。このスラリーを、機械のチェスト66および定水準チェスト68に通し、該サイズ組成物によって、該チョップトガラス繊維束10から選択的に放出されたあらゆる繊維を、更に分散させることも可能である。該ガラス繊維束のスラリーを、次に該定水準チェスト68からヘッドボックス70に移し、そこで該スラリーは、移動スクリーンまたは有孔コンベア74上に堆積され、また該スラリーからの水分の実質的な部分は、ウエブ72から除去される。該水は、公知の真空または吸引装置(図5には示されていない)により、該ウエブ72から除去できる。次に、バインダ76を、バインダアプリケータ78により、該ウエブ72に適用する。このバインダで被覆したウエブ80を、次に乾燥オーブン82に通して、あらゆる残留している水分を除去し、また該バインダを硬化する。該オーブン82から出てくる、このようにして生成された不織チョップトストランドマット84は、ランダムに分散したガラス繊維束を含む。該不織チョップトストランドマット84は、後に使用する目的で保存するための、巻取りロール86上に巻取られる。
【0035】
該バインダは、アクリル系バインダ、スチレンアクリロニトリルバインダ、スチレンブタジエンゴムバインダ、ウレアホルムアルデヒドバインダ、またはこれらの混合物であり得る。好ましくは、該バインダは、ポリアクリル酸と少なくとも1種のポリオール(例えば、トリエタノールアミンまたはグリセリン)から作られる、標準的な熱硬化性アクリル系バインダである。本発明において使用するのに適した、アクリル系バインダの例は、可塑化ポリビニルアセテートバインダ、例えばビナムル(Vinamul) 8831(セレネーズ(Celenese)から入手できる)および変性ポリビニルアセテート、例えばデュラセット(Duracet) 637およびデュラセット675(フランクリンインターナショナル(Franklin International)社から入手できる)を含む。該バインダは、場合によって、方法並びに製品の性能を改善するための公知の添加剤、例えば染料、オイル、フィラー、着色剤、UV安定剤、カップリング剤(例えば、アミノシラン)、潤滑剤、湿潤剤、界面活性剤、および/または帯電防止剤を含むことができる。
【0036】
多くの利点が、本発明のチョップトガラス繊維束10によって、もたらされる。例えば、該チョップトガラス繊維束10は、特に従来のエアーレイド法によって製造したガラス束と比較した場合に、著しく速い速度で製造することができる。該チョップトガラス繊維束を製造し得る速度を高めることにより、より高い処理量の達成および顧客に販売できる付随的な製品の製造が可能となる。更に、該チョップトガラス繊維束は、低い製造コストで作成できる。というのは、該繊維を、別々の段階において、乾燥し、また細断する必要がないからである。
更に、上記のような湿式法での、チョップトストランドマットの製造において使用した場合、該チョップトガラス繊維束10は、ガラスの実質的に均一な分布(気中密度(aerial density))を持つマットを与え、またその外観は白色である。該チョップトガラス繊維束を製造するのに使用した、該湿潤繊維は、該最終的なチョップトストランドマットにおいて、殆どまたは全く毛羽を生成しないことが有利である。
【実施例】
【0037】
以上、本発明を一般的に説明してきたが、以下に与えられる幾つかの特別な例を参照して、更なる理解を得ることができ、該実施例は、例示のみの目的で与えられるものであり、また特に述べない限り、網羅的なものでも、また限定的なものでもない。
実施例1:乾燥チョップトガラス繊維束の製造
以下の表1〜4に示したサイズ剤処方物を、以下において一般的に記載するように、バケット内で製造した。該サイズ組成物を製造するために、約90%の水、および該サイズ組成物において必要な場合には酸を、バケットに添加した。該シランカップリング剤を、該バケットに添加し、またこの混合物を、該シランを加水分解するために、所定期間の間攪拌した。該シランの加水分解後に、該潤滑剤およびフィルム形成剤を、攪拌しつつ該混合物に添加し、サイズ組成物を生成した。次に、このサイズ組成物を、残りの水で希釈し、約4.5%なる混合固形分という、目的の混合固形分濃度を達成した。
【0038】
【表1】

(a): ポリウレタンフィルム形成分散液(コグニス(Cognis))
(b): エポキシ硬化剤(レゾリューションパフォーマンスプローダクツ(Resolution Performance Products))
(c): γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(ゼネラルエレクトリック(General Electric))
(d): ポリウレタン-アクリルアロイ(コグニス(Cognis))
(e): ステアリックエタノールアミン(AOC)
【0039】
【表2】

(a): ポリウレタンフィルム形成分散液(ケムツラ(Chemtura))
(b): エポキシ硬化剤(レゾリューションパフォーマンスプローダクツ)
(c): γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(ゼネラルエレクトリック)
(d): ポリウレタン-アクリルアロイ(コグニス)
(e): モノオレエートエステル(コグニス)
【0040】
【表3】

(a): エポキシフィルム形成水分散液(レゾリューションパフォーマンスプローダクツ)
(b): エポキシ硬化剤(レゾリューションパフォーマンスプローダクツ)
(c): モノオレエートエステル(コグニス)
(d): メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(ゼネラルエレクトリック)
【0041】
【表4】

(a): エポキシフィルム形成分散液(レゾリューションパフォーマンスプローダクツ)
(b): エポキシ硬化剤(レゾリューションパフォーマンスプローダクツ)
(c): モノオレエートエステル(コグニス)
(d): メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(ゼネラルエレクトリック)
【0042】
該サイズ剤各々は、公知の方法で(例えば、上記のようなロール型のアプリケータ)でE-ガラスに適用した。該E-ガラスは、2052孔を持つチッププレートを備えた、約34.1kg/時(75lb/時)なる処理量で、13μmのガラスフィラメントに繊細化した。該フィラメントを集め、16個の部分に分割し、単位ガラス繊維束当たり128本のフィラメントを含み、バンドルテックス約43g/kmを持つ束を得た。次いで、これらのガラス繊維束を、機械的なコット-カッターの組合せにより、約3.18cm(約5/4 in)なる長さに細断し、プラスチックパン内に集めた。該チョップトガラス繊維束は、約15%の製造上の水分を含んでいた。該チョップトガラス繊維束中に水分を、誘電加熱オーブン(40MHz、ラジオフリーケンシー社(Radio Frequency Co.)製)内で除去して、乾燥チョップトガラス繊維束を製造した。
実施例2:乾燥チョップトガラス繊維束を用いた、チョップトストランドマットの製造
実施例1に示した手順に従って製造した、該乾燥したチョップト繊維束を使用して、4種のチョップトガラスマットを製造した。該乾燥したチョップト繊維束(各々、表1-4に示された、異なるサイズ組成物を含む)を、適当な添加剤(界面活性剤、分散剤等)が添加されている、約946 L(250ガロン)の混合タンク中で、攪拌しつつ懸濁させて、チョップトガラス繊維束のスラリーを製造した。該白水スラリーの成分を、以下の表5に示す:
【0043】
【表5】

(a) アニオン性ポリアクリルアミド(デュリューインダストリーズ(Drew Industries)社から入手);
(b) ノニオン性界面活性剤(エアープローダクツ(Air Products)社から入手);
(c) 消泡剤(デュリューインダストリーズ社から入手);
(d) 殺生物薬(ONDEOナルコ)
【0044】
該ガラススラリーを、真空引きによって該スラリー水分の大部分が除去される、移動するチェーン上に夫々堆積させて、ウエブを生成した。可塑化ポリ酢酸ビニルマットバインダを、セキ(カーテンコーター)によって、該ガラスウエブに適用した(セレニーズ(Celenese)社からのビナムル(Vinamul) 8831)。次いで、該ウエブを、約232℃(450°F)にて30秒間強制エアーオーブンに通して、該ウエブからの残留水分を除去し、該バインダを硬化し、かつ目的のチョップトガラスマットを製造した。このマットの坪量を測定したところ、約0.305kg/m2(1 oz/ft2)であった。また、該バインダが、5.0質量%なる量で、該マット上に存在することも分かった。これらのマットは、極めて白く、見掛け上は優れた気中密度を示した。更に、該チョップトガラスマットは、機械加工方向(MD)において約13.6kg(30lb)およびクロス機械加工方向(CD)において約11.4kg(25lb)なる乾燥引張強さを示した。
【0045】
積層体を、該チョップトガラスマットから、ポリエステル樹脂(AOC R937)を使用し、またアトフィナ(Attofina) DDM9触媒(2-ブタノンパーオキシド)で促進して、製造した。比較を容易にするために、本発明のチョップトガラス繊維束を含む該積層体は、全て約0.915kg/m2(3 oz/ft2)なる坪量および実質上等価な厚みをもたせた。手作業での堆積をシミュレートして、該積層体は、公称温度(約49℃(120°F))および圧力下で、約30分間水圧下で製造した。プレスレンジ(press range)の下端部における圧力は、約90.3cm2(14 in2)の積層体に対して、約4540kg(10,000lb)であったが、これは約345kPa(約50psi)に換算される。これらの積層体は、オーブン内で、約93℃(200°F)にて2時間、機械的なテスト前に後-硬化処理に付された。
本発明のチョップトガラス繊維束を含む該積層体を、引張強さおよび曲げ強さについてテストした。該引張強さは、ASTM D5083に示されているテスト手順に従って測定し、また曲げ強さは、ASTM D790に示されているテスト手順に従って測定した。比較用のマットを、表6に示す:
【0046】
【表6】

【0047】
本発明のチョップトガラス繊維束を含む該積層体の機械的なテストは、標準的なチョップトストランドマット(M723A)および驚いたことに、M8643およびM8610の連続フィラメントマット(CFM)に対して、本発明の積層体がほぼ等価な性能を持つことを明らかにした。これらの比較テスト結果は、図6-9に示した。
実施例3:伝熱チャンバーを用いた、乾燥チョップトガラス繊維束の製造
表1-4に示したサイズ剤各々を調製し、約34.1kg/時(75lb/時)なる処理量の、2052穴を持つチッププレートを備えたブッシュ内で、13μm径のガラスフィラメントに繊細化されたE-ガラスに、公知の方法で適用した。該サイズ剤処理した繊維を、16部分に分割して、ガラス繊維束1束当たり128本のフィラメントを含む束とし、伝熱チャンバーに通し、そこで該ブッシュの発生する大きな熱によって空気加熱し、得られる束を、該伝熱チャンバーに導いて、目的の乾燥ガラス繊維束を生成した。該乾燥ガラス繊維束は、約43g/kgなるバンドルテックスを有していた。該乾燥ガラス繊維束を、一つのトウに集め、機械的コット-カッターの組合せで、約3.18cm(約5/4 in)なる長さに細断した。該チョップトガラス繊維を、プラスチックパンに集めた。これらのガラス繊維は、0%なる成型上の水分を含んでいた。
【0048】
実施例4:伝熱チャンバーを用いて製造した、乾燥チョップトガラス繊維束を用いる、チョップトストランドマットの製造
実施例3において示した手順に従って製造した、該乾燥チョップト繊維束を用いて、4種のチョップトストランドマットを製造した。該乾燥チョップト繊維束(各々、表1-4に示された、異なるサイズ組成物を含む)を、適当な添加剤(界面活性剤、分散剤等)が添加されている、約946L(250ガロン)の混合タンク中で、攪拌しつつ懸濁させて、チョップトガラス繊維束のスラリーを製造した。該白水スラリーの成分(水以外)を、以下の表7に示す:
【0049】
【表7】

(a) アニオン性ポリアクリルアミド(デュリューインダストリーズ(Drew Industries)社から入手);
(b) ノニオン性界面活性剤(エアープローダクツ(Air Products)社から入手);
(c) 消泡剤(デュリューインダストリーズ社から入手);
(d) 殺生物薬(ONDEOナルコ)
【0050】
該ガラススラリーを、真空引きにより該スラリー水分の大部分が除去される、移動するチェーン上に夫々集めて、ウエブを生成した。可塑化ポリ酢酸ビニルマットバインダを、セキ(カーテンコーター)によって、該ガラスウエブに適用した(フランクリンインターナショナル(Franklin International)社からのデュラセット(Duracet) 675)。次いで、該ウエブを、約232℃(450°F)にて30秒間、強制エアーオーブンに通して、該ウエブからの残留水分を除去し、該バインダを硬化し、かつ目的のチョップトガラスマットを製造した。このマットの坪量を測定したところ、約0.305kg/m2(1 oz/ft2)であった。また、該バインダが、5.0質量%なる量で、該マット上に存在することも分かった。肉眼観察によれば、これらのマットは、極めて白く、見掛け上は優れた気中密度を示した。更に、該チョップトガラスマットは、機械加工方向(MD)において約14.5kg(32lb)およびクロス機械加工方向(CD)において約12.3kg(27lb)なる乾燥引張強さを示した。
【0051】
積層体を、該チョップトガラスマットから、ポリエステル樹脂(AOC R937)を使用し、またアトフィナ(Attofina) DDM9触媒(2-ブタノンパーオキシド)で促進して、製造した。比較を容易にするために、本発明のチョップトガラス繊維束を含む該積層体は、全て約0.915kg/m2(3 oz/ft2)なる坪量および実質上等価な厚みをもたせた。手作業での堆積をシミュレートして、該積層体は、公称温度(約49℃(120°F))および圧力下で、約30分間水圧下で製造した。プレスレンジ(press range)の下端部における圧力は、約90.3cm2(14 in2)の積層体に対して、約4540kg(10,000lb)であったが、これは約345kPa(約50psi)に換算される。これらの積層体は、オーブン内で、約93℃(200°F)にて2時間、機械的なテスト前に後-硬化処理に付された。本発明のチョップトガラス繊維束を含む該積層体を含む積層体に関する該機械的なテストは、標準的なチョップトストランドマット(M723A)および驚いたことに、M8643およびM8610の連続フィラメントマット(CFM)(表6に示されている)に対して、本発明の積層体がほぼ等価な性能を持つことを明らかにした。
【0052】
実施例5:乾燥チョップトガラス繊維束を用いた、チョップトストランドマット由来の積層体の引張強さ
実施例3において示した手順に従って製造した、該乾燥チョップト繊維束を用いて、実施例4において上述したように、4種のチョップトストランドマットを製造した。ポリウレタンサイズ組成物A(表1)でサイズ剤処理した、該乾燥チョップト繊維束を、表7に示したような成分を含有する白水スラリーに、約946L(250ガロン)の混合タンク中で懸濁させた。これらのガラススラリー各々を、真空引きにより該スラリー水分の大部分が除去される、移動するチェーン上に夫々集めて、ウエブを生成した。可塑化ポリ酢酸ビニルマットバインダ(フランクリンインターナショナル(Franklin International)社からのデュラセット(Duracet) 675または637)を、セキ(カーテンコーター)によって、該ガラスウエブに適用した。次いで、該ウエブを、約232℃(450°F)にて30秒間、強制エアーオーブンに通して、該ウエブからの残留水分を除去し、該バインダを硬化し、かつ目的のチョップトガラスマットを製造した。
【0053】
実施例4において上述した手順に従って、該チョップトガラスマットから積層体を製造した。テストした様々なサンプル(サンプル1-7)を、以下の表8に示す。サンプル1および2は、バインダとしてデュラセット637を含み、またサンプル3および4は、バインダとしてデュラセット675を含んでいた。これらの積層体を、機械加工方向(MD)およびクロス機械加工方向(CD)における、引張強さについてテストした。得られた結果を、以下の表10および11に示す。これらの結果は、該機械加工方向にあるバイアスを持つことを示した。このバイアス存在の立証は、従来のエアーレイド法に従って製造したマットとは対照的であり、このことは、全く、または見かけ上殆ど偏りがないことを示している。機械加工方向におけるバイアスは、該積層体にとって1利点である。というのは、該チョップトストランドマットは、顧客がロールから取り出す方向において、当然より強力であるからである。結果的に、より大きなロールを製造できる。更に、追加の強度が、より速い速度で該チョップトストランドマットを、該ロールから顧客が引き出すことを可能とし、該マットは、より裂け難くなるであろう。該データは、またコントロールと比較して、サイズ組成物Aでサイズ処理した該チョップトガラス繊維束を用いて作成した積層体が、より優れた強度を持つことを立証している。
【0054】
【表8】

【0055】
実施例6:様々なサイズ組成物を使用した、バルク成型配合物の製造
約0.613cm(1/4 in)の、チョップトガラス繊維サンプルを、表8に示したような処方を持つ、バルク成型配合物とした。
【0056】
【表9】

(a) 不飽和ポリエステル樹脂(AOC);
(b) 熱可塑性樹脂(AOC);
(c) t-ブチルパーベンゾエート触媒
(d) 炭酸カルシウム(カボット(Cabot));
(e) 離型剤(アルドリッチケミカル社(Aldrich Chemical Co.))。
【0057】
表8における該バルク成型配合処方物を、20質量%にて様々なサイズ組成物でサイズ処理した、様々な実験用ガラスを用いて製造した。該様々な実験用ガラス繊維は、サンプル1-10として以下に示す。該装入材料を、約30.5cm(12 in)×約45.7cm(18 in)の装置内に配置し、約129.4℃(265°F)にて5分間、約689MPa(10,000psi)にて成型した。これらの積層体を、0度および90度方向において、ASTM D256に従って、耐ノッチ付き衝撃強さについてテストした。得られた結果を、表12および13に示す。これら結果は、該実験的なサイズ組成物でサイズ処理した、該ガラス繊維が、該コントロールと、少なくとも匹敵する性能を持つことを立証した。これら結果は、予想外のものであった。というのは、少なくとも匹敵する耐衝撃強さが、ガラス繊維を少なくとも20時間に渡り熱的に乾燥する、従来の方法に比して、該ガラス繊維を短期間(30分間)乾燥することによって達成されたからである。
【0058】
サンプル1:ポリウレタンサイズ組成物A(表1)を、ガラス繊維に適用し、加熱オーブンにて、約129.4℃(265°F)にて6時間乾燥した。
サンプル2:ポリウレタンサイズ組成物A(表1)を、ガラス繊維に適用し、RFオーブンにて30分間、次いで加熱オーブンにて、約129.4℃(265°F)にて1時間乾燥した。
サンプル3:ポリウレタンサイズ組成物A(表1)を、ガラス繊維に適用し、RFオーブンにて30分間、次いで加熱オーブンにて、約129.4℃(265°F)にて2時間乾燥した。
サンプル4:ポリウレタンサイズ組成物A(表1)を、ガラス繊維に適用し、RFオーブンにて30分間、次いで加熱オーブンにて、約129.4℃(265°F)にて2時間乾燥した。
サンプル5:ポリウレタンサイズ組成物A(表1)を、ガラス繊維に適用し、RFオーブンにて30分間、次いで加熱オーブンにて、約129.4℃(265°F)にて2時間乾燥した。
サンプル6:ポリウレタンサイズ組成物A(表1)を、ガラス繊維に適用し、RFオーブンにて30分間、次いで加熱オーブンにて、約129.4℃(265°F)にて2時間乾燥した。
サンプル7:ポリウレタンサイズ組成物B(表2)を、ガラス繊維に適用し、RFオーブンにて30分間乾燥し、後加熱処理は行わなかった。
サンプル8:エポキシサイズ組成物A(表3)を、ガラス繊維に適用し、RFオーブンにて30分間乾燥し、後加熱処理は行わなかった。
【0059】
サンプル9:エポキシサイズ組成物A(表3)を、ガラス繊維に適用し、RFオーブンにて20分間乾燥し、後加熱処理は行わなかった。
サンプル10:ポリウレタンサイズ組成物B(表2)を、ガラス繊維に適用し、RFオーブンにて20分間乾燥し、後加熱処理は行わなかった。
サンプル12:コントロールバルク成型配合物(BMC)乾式用途用チョップトストランド(リオクラロ(Rio Claro)、ブラジル;オーエンスコーニング社製の101C)。
以上、本特許出願の発明を、一般的および特定の態様両者に関して説明した。本発明を、好ましい態様であると考えられるものを提示してきたが、当分野における当業者には公知の広範囲に渡る様々な変法が、一般的な開示内で選択できる。本発明は、上記の特許請求の範囲の叙述以外によって限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の例示的態様に従う、チョップトストランド束を模式的に示す図である。
【図2】本発明の少なくとも一つの態様に従う、ガラス繊維束の、例示的な製法の諸段階を示す、流れ図である。
【図3】本発明の一つの例示的な態様に従う、乾燥されたチョップトストランド束製造の、処理リングを模式的に示す図である。
【図4】本発明の少なくとも一つの他の例示的な態様に従う、乾燥されたチョップトストランド束製造の、処理ラインを模式的に示す図である。
【図5】本発明によるチョップトストランド束を用いた、チョップトストランドマットを製造するための、処理ラインを模式的に示す図である。
【図6】従来のチョップトストランドマットおよび本発明による乾燥されたチョップトガラス繊維束を用いた、チョップトストランドマットに関する、機械加工方向およびクロス機械加工方向における、積層体の引張強さを、グラフ表示した図である。
【図7】従来のチョップトストランドマットおよび本発明による乾燥されたチョップトガラス繊維束を用いた、チョップトストランドマットに関する、機械加工方向およびクロス機械加工方向における、積層体の引張弾性率を、グラフ表示した図である。
【0061】
【図8】従来のチョップトストランドマットおよび本発明による乾燥されたチョップトガラス繊維束を用いた、チョップトストランドマットに関する、機械加工方向およびクロス機械加工方向における、積層体の曲げ強さを、グラフ表示した図である。
【図9】従来のチョップトストランドマットおよび本発明による乾燥されたチョップトガラス繊維束を用いた、チョップトストランドマットに関する、機械加工方向およびクロス機械加工方向における、積層体の曲げ弾性率を、グラフ表示した図である。
【図10】本発明による乾燥されたチョップトガラス繊維束を用いて製造した、積層体に関する、機械加工方向における引張強さを、グラフ表示した図である。
【図11】本発明による乾燥されたチョップトガラス繊維束を用いて製造した、積層体に関する、クロス機械加工方向における引張強さを、グラフ表示した図である。
【図12】コントロールと比較した、0度における、本発明のサイズ組成物でサイズ処理した、ガラス繊維を用いて製造した、バルク成型配合物の、IZODノッチ付き衝撃強さを、グラフ表示した図である。
【図13】コントロールと比較した、90度における、本発明のサイズ組成物でサイズ処理した、ガラス繊維を用いて製造した、バルク成型配合物の、IZODノッチ付き衝撃強さを、グラフ表示した図である。
【符号の説明】
【0062】
10・・チョップトガラス繊維束;
12・・ガラス繊維;
30・・ブッシュ;
32・・適用ロール;
34・・スプリッターシュー;
36・・ガラス繊維ストランド;
38・・捕集シュー;
40・・カッター;
42・・サイズ処理したチョップトガラス繊維;
44・・コンベア;
46・・乾燥オーブン;
48・・捕集容器;
50・・湿潤サイズ処理ガラス繊維;
52・・伝熱チャンバー;
56・・乾燥ガラス繊維;
58・・乾燥繊維ストランド;
59・・トウ;
60・・コット;
61・・貯蔵容器;
62・・コンベア;
64・・混合タンク;
66・・マシンチェスト;
70・・ヘッドボックス;
72・・ウエブ;
74・・有孔コンベア;
76・・バインダ;
78・・バインダアプリケータ;
80・・バインダ-塗布ウエブ;
46・・乾燥オーブン;
84・・チョップトストランドマット;
86・・巻取りロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マット製造用途において使用するための、チョップトガラス繊維束(42)であって、
束ねられた配向で配置された、複数の実質的に平行なガラス繊維(12)を含み、ここで該ガラス繊維は、サイズ組成物により、少なくとも部分的に被覆されており、該組成物は、該複数のガラス繊維を、その製造中および該束ねられた配向状態でのその後のガラス繊維の処理中に、該束ねられた配向状態に維持し;
該サイズ組成物が、
ポリウレタンフィルム形成剤、不飽和ポリエステルフィルム形成剤およびエポキシ樹脂フィルム形成剤からなる群から選択される、1またはそれ以上のフィルム形成剤、
少なくとも一つのシランカップリング剤、および
少なくとも一つの潤滑剤
を含むことを特徴とする、前記チョップトガラス繊維束。
【請求項2】
該複数のガラス繊維が、約20〜約200g/kmなる範囲のバンドルテックスを持つ、請求項1記載のチョップトガラス繊維束。
【請求項3】
該ガラス繊維が、湿式用途用のチョップトストランドガラス繊維である、請求項1記載のチョップトガラス繊維束。
【請求項4】
該フィルム形成剤が、ポリウレタンフィルム形成剤であり、また該サイズ組成物が、更にポリウレタン-アクリルアロイをも含む、請求項1記載のチョップトガラス繊維束。
【請求項5】
該フィルム形成剤が、エポキシ樹脂フィルム形成剤であり、また該サイズ組成物が、更にエポキシ硬化剤をも含む、請求項1記載のチョップトガラス繊維束。
【請求項6】
該フィルム形成剤が、不飽和ポリエステルフィルム形成剤であり、また該サイズ組成物が、更にベンゾイルパーオキシド硬化触媒をも含む、請求項1記載のチョップトガラス繊維束。
【請求項7】
該1またはそれ以上のフィルム形成剤が、該サイズ組成物中に、全固形分を基準として、約80〜約95質量%なる範囲の量で存在し、該少なくとも一つのシランカップリング剤が、該サイズ組成物中に、全固形分を基準として、約3〜約15質量%なる範囲内の量で存在し、かつ該少なくとも1種の潤滑剤が、全固形分を基準として、約0.1〜約2質量%なる範囲内の量で存在する、請求項1記載のチョップトガラス繊維束。
【請求項8】
該少なくとも一つのシランカップリング剤が、アミノシランカップリング剤およびメタクリルオキシカップリング剤からなる群から選択される、請求項1記載のチョップトガラス繊維束。
【請求項9】
該サイズ組成物が、後の加工中に、該束ねられた配向状態において、該ガラス繊維をフィラメント化して、審美的に満足な最終製品を形成する、請求項1記載のチョップトガラス繊維束。
【請求項10】
チョップトガラス繊維束(42)の製造方法であって、該方法が以下の諸工程:
サイズ組成物を、複数の繊細化されたガラス繊維(12)に適用する工程、ここで該サイズ組成物は、
ポリウレタンフィルム形成剤、不飽和ポリエステルフィルム形成剤およびエポキシ樹脂フィルム形成剤からなる群から選択される、1またはそれ以上のフィルム形成剤、
少なくとも一つのシランカップリング剤、および
少なくとも一つの潤滑剤
を含み、
該複数のガラス繊維を、予め定められた数のガラス繊維を含む、ガラス繊維ストランド(36)に分割する工程、
該ガラス繊維ストランドを細断して、湿潤チョップトガラス繊維束を形成する工程、ここで該湿潤チョップトガラス繊維束は、個々別々の長さを有し、および
該湿潤チョップトガラス繊維束を、誘電加熱オーブン、流動床オーブンおよび回転トレー加熱オーブンからなる群から選択される乾燥オーブン内で乾燥して、チョップトガラス繊維束を形成する工程、
を含むことを特徴とする、前記チョップトガラス繊維束の製造方法。
【請求項11】
該ガラス繊維ストランド内の、該ガラス繊維の予め定められた数が、約20〜約200g/kmなる範囲のバンドルテックスを与えるのに十分な数である、請求項10記載のチョップトガラス繊維束の製造方法。
【請求項12】
更に、該湿潤チョップトガラス繊維を、該乾燥工程に先立って、コンベア上に載置する工程をも含む、請求項10記載のチョップトガラス繊維束の製造方法。
【請求項13】
該湿潤チョップトガラス繊維束の外側の水分の約99%以上を、該乾燥オーブン内で除去する、請求項10記載のチョップトガラス繊維束の製造方法。
【請求項14】
該オーブンが、該誘導加熱オーブンであり、また
該乾燥工程が、以下の工程:
該湿潤チョップトガラス繊維束を、該誘導加熱オーブン内に配置された、連続する逆に帯電した電極間に通して、該湿潤チョップト繊維束を攪拌することなしに、該湿潤チョップト繊維束内の水分を、蒸発させる工程を含む、請求項13記載のチョップトガラス繊維束の製造方法。
【請求項15】
該湿潤チョップト繊維束を、流動床内で乾燥し、また該ガラス繊維上の該サイズ組成物を、制御された温度を持つ高温空気流を利用して固化する、請求項13記載のチョップトガラス繊維束の製造方法。
【請求項16】
チョップトガラス繊維束(42)の製造方法であって、該方法が以下の諸工程:
サイズ組成物を、ブッシュによって繊細化された複数のガラス繊維(12)に適用する工程であって、該サイズ組成物が、
ポリウレタンフィルム形成剤、不飽和ポリエステルフィルム形成剤およびエポキシ樹脂フィルム形成剤からなる群から選択される、1またはそれ以上のフィルム形成剤、
少なくとも一つのシランカップリング剤、および
少なくとも一つの潤滑剤
を含む工程;
該複数のサイジング処理されたガラス繊維を、伝熱チャンバーに通す工程であって、該ブッシュによって加熱された空気が、該伝熱チャンバーに導かれて、該複数のサイジング処理されたガラス繊維を実質的に乾燥し、かつ乾燥されたガラス繊維を生成する工程;
該乾燥されたガラス繊維を、予め定められた数の該乾燥されたガラス繊維を含む、ガラス繊維ストランド(36)に分割する工程;および
該ガラス繊維ストランドを細断して、チョップトガラス繊維束を形成する工程であって、該チョップトガラス繊維束が、個々別々の長さを持つ工程;
を含むことを特徴とする、前記チョップトガラス繊維束の製造方法。
【請求項17】
更に、該ガラス繊維ストランドを繊細化する前に、該ストランドを集めて、単一のトウにする工程をも含む、請求項16記載のチョップトガラス繊維束の製造方法。
【請求項18】
該ガラス繊維ストランド中の、該ガラス繊維の予め定められた数が、約20〜約200g/kmなる範囲のバンドルテックスを与えるのに十分な数である、請求項16記載のチョップトガラス繊維束の製造方法。
【請求項19】
更に、該チョップトガラス繊維束を、誘電加熱オーブン、流動床オーブンおよび回転トレー加熱オーブンからなる群から選択される乾燥オーブン内で加熱して、該チョップトガラス繊維束を更に乾燥する工程をも含む、請求項16記載のチョップトガラス繊維束の製造方法。
【請求項20】
該分割工程を、該乾燥ガラス繊維が、該伝熱チャンバーを出る前に行う、請求項16記載のチョップトガラス繊維束の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2009−508018(P2009−508018A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531187(P2008−531187)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/034795
【国際公開番号】WO2007/032988
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(508076428)オーシーヴィー インテレクチュアル キャピタル リミテッド ライアビリティ カンパニー (43)
【Fターム(参考)】