説明

マツタケ菌の検出および定量プライマーセット、およびマツタケ菌の検出方法ならびにマツタケ菌の定量方法

【課題】マツタケの発生予測に用いる事のできる。特異性の高いマツタケ菌(Tricholoma matsutake)の検出方法、および定量方法を提供する。
【解決手段】マツタケ菌をPCR法により検出または定量するためのプライマーセットであって、特定の塩基配列からなるフォワード側プライマーと、リバース側プライマーとからなる。また、該プライマーセットを利用したリアルタイムおよび定量PCR法による、土壌中のマツタケ菌子体の検出方法と定量方法。これにより、マツタケの発生予測を行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マツタケ菌の検出、定量に用いるプライマーセット、および当該プライマーセットを用いたマツタケ菌の検出、定量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マツタケ(Tricholoma matsutake)の生産量は年々減少方向にある。マツタケ生産量を増加させるため、マツタケ発生環境整備事業が行われているが、生産量の増加には結び付いていない。
【0003】
ところで、マツタケが発生するためにはそのもととなる菌糸体が一定量存在することが必要である。この点、秋までに蓄積された菌糸体量が少なければ、発生するマツタケの量も少なくなるという報告もある。マツタケ生産量増加を推し進めるためには、土壌中の菌糸体量を把握することが重要である。
【0004】
しかしながら、形態的な特徴に乏しいマツタケ菌子体を土壌などから直接的に分離し、形態的な特徴に乏しいマツタケ菌子体を同定して定量することは多大な労力を必要とする。
【0005】
一方、マツタケ菌をPCR(polymerase chain reaction)法により増幅して検出することができるプライマーが報告されている(例えば特許文献1)。本先行技術では、マツタケ菌の固有の核酸配列に対して結合するプライマーを用いてPCR法による増幅を行うことによりマツタケ菌を検出することが提案されている。
【0006】
このほか、マツタケ菌を特異的に検出するプライマーとしては非特許文献1に記載のプライマーが提案されている。また、当該プライマーを用いたマツタケ発生土壌についての調査の報告もなされている(非特許文献2)。
【0007】
しかしながら、特許文献1のマツタケ菌のプライマーを用いたPCRでは、特許文献1に記載された実施例から理解されるように、マツタケのDNAとともに、マツタケ近縁菌であるアメリカマツタケのDNAが増幅されている。すなわち、当該プライマーはマツタケに特異的なプライマーということはできず、当該プライマーを用いて土壌からマツタケ菌糸体を検出した場合であっても、そのデータの信用性は十分とはいえない。
【0008】
また、特許文献1のプライマーは上述のとおりアメリカマツタケ等他の菌根菌を増幅し、目的増幅産物であるマツタケ菌のみを増幅することができない非特異的プライマーであることにより、また、非特許文献1のプライマーはPCRで増幅するサイズが長すぎる(約1000bp以上)ことによる増幅効率の大きな低下により、正確な定量(定量PCR)を行うことが困難である。
【0009】
マツタケはその近縁種等と比較して現在の市場における価値が非常に高い。そのため、マツタケのみを他の近縁種等から区別して検出できることが必要である。また、マツタケにおいては土壌中の菌子体量と子実体の発生との間に、他のキノコ類と比較して非常に密接な関連性があると考えられている。言い換えれば、マツタケにおいて土壌中から菌子体を検出することができただけでは、他のキノコ類と比較してマツタケ子実体の発生を予測するに当たっての確実性が低いという、マツタケ独自の特殊な事情がある。
【0010】
このように、マツタケにおいては土壌中のマツタケのみの菌子体量を把握することが非常に重要である。しかしながら、マツタケ菌のみを特異的に検出でき、且つPCR法を用いた定量において高い増幅効率を有するという条件を満たすプライマーがなく、そのためにPCR法を用いてマツタケ菌子体の定量を行うという発想は従来なかった。
【特許文献1】特開平05−252999号公報
【非特許文献1】Lian et al., Mycorrhiza, 13: 27-31, 2003
【非特許文献2】Lian et al., New physiologist 171: 825-836, 2006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような事情に基づきなされたものであり、マツタケ菌のみの検出、およびマツタケ菌の定量を可能とすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明はマツタケ菌を検出または定量するためのPCRプライマーセットであって、配列表の配列番号1に示される塩基配列からなるフォワード側プライマーと、配列表の配列番号2に示される塩基配列からなるリバース側プライマーとからなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の他の態様として、本発明はマツタケ菌の検出方法であって、請求項1に記載のPCRプライマーセットを用い、被検試料から抽出したマツタケ遺伝子を鋳型としてPCR法により増幅を行い、増幅産物を検出することによって被検試料中のマツタケ菌を検出することを特徴とする。ここで、PCR法はリアルタイムPCR法とすることができる。
【0014】
さらに、本発明の他の態様として、本発明はマツタケ菌の定量方法であって、請求項1に記載のPCRプライマーセットを用い、被検試料から抽出したマツタケ遺伝子を鋳型として定量PCR法により増幅を行い、定量PCR法による増幅産物の測定結果に基づき被検試料中のマツタケ菌を定量することを特徴とする。ここで、定量PCR法はリアルタイムPCR法とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被検試料中のマツタケ菌を特異的に検出し、定量を行うことができるので、例えばマツタケ発生地の土壌などにおけるマツタケ菌糸体の検出および定量を容易に行うことができる。このため、年毎のマツタケ発生地におけるマツタケ子実体の発生量を予測することができる。また、子実体発生に必要な菌糸体量を決定することができるので、被検試料として土壌を採取した場所のマツタケ子実体発生の判別が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の好ましい実施形態について詳しく説明する。
【0017】
本実施形態のPCRプライマーセットは、マツタケ菌を検出、定量するためのマツタケに特異的なPCRプライマーセットである。
【0018】
マツタケには近縁種として、ニセマツタケ、マツタケモドキ、バカマツタケ、アメリカマツタケが存在する。また、この他にマツタケ発生地に繁茂にみられるきのこ類としてキシメジ、ホンシメジ、ショウロ、バラタケ、テングダケ、クロカワ、ハツタケ、コツブタケ、アミタケ、チチアワタケ、ヌメリイグチが挙げられる。
【0019】
本発明者は鋭意研究の結果、マツタケのみを他の近縁種等から区別して検出することができるとともに、土壌等から採取した被検試料中のマツタケ菌子体を定量することができるプライマーを発明した。
【0020】
本実施形態のプライマーセットは、PCR法においてマツタケ遺伝子を鋳型として増幅し、当該増幅産物を検出、定量するマツタケ菌の検出、定量方法への応用に適する。定量PCR法としては競合PCR法やPCR-MPN法を挙げることができる。このうち、増幅するDNAサイズが小さいこと、および増幅するPCR断片が1種類(非特異的な増幅がないこと)であることから定量に関する操作、測定が容易であるため、リアルタイムPCR法が好適である。また、増幅後の電気泳動等の手間がなく短時間で検出できること、および検出とともに定量も行うことが可能であることから、検出を実行するときにおいてもPCR法による増幅過程でリアルタイムPCR法を用いるようにしてもよい。
【0021】
リアルタイムPCR法は定量PCR法の1つであり、PCRにより増幅された増幅産物をリアルタイムでモニタリングする。このため、電気泳動を行ってバンドの強度を測定するいわゆるエンドポイント解析と比較して、電気泳動の手間を省くことができ迅速な測定が可能となるほか、定量をより正確に行うことができる。
【0022】
リアルタイムPCR法においては、増幅産物を蛍光によって検出する。検出方法としては、インカレーター法や蛍光プローブ法が公知となっており、適宜選択することができる。また、検出に当たっては、通常の、サーマルサイクラーおよび分光蛍光光度計が一体化されたリアルタイムPCR専用装置や試薬キットを用いて実施することができる。すなわち、これらは本発明を限定するものではない。
【0023】
また、本実施形態のプライマーセットを用いることができる被検試料は特に限定されないが、例えばアカマツ、ツガ、コメツガなどが生育している林の土壌を例示することができる。
【0024】
本実施形態のプライマーセットは、配列表の配列番号1に示される塩基配列とからなるフォワード側プライマーと、配列表の配列番号2に示される塩基配列とからなるリバース側プライマーと、からなる。定量PCR、特にリアルタイムPCR法においては用いるプライマーが特異性を有するとともに高い増幅効率を有することが重要である。また、プライマーの配列は短いほど特異性が高まるため、より短いプライマーを設計することが好ましい。しかしながら、特異性を有して、増幅効率が高く、且つ短い配列のプライマーを設計することは容易ではなく、本発明の発明者は鋭意研究の結果、マツタケ遺伝子についてこれらの条件を満たすプライマーを見出した。
【0025】
本実施形態に係るプライマーの設計に当たってはマツタケのマンガンパーオキシダーゼをコードする配列の一部と相同性のある短鎖DNAをプライマーとして用いた。具体的には、まず、マンガンパーオキシダーゼの遺伝子(イントロン、エキソンを含む)をマツタケからクローニングし、配列を決定した。次いでこの配列よりプライマー設計専用ソフトウェア LightCycler Probe Design Software Ver1.0 (Roche社)にて定量にふさわしいと思われるプライマーセットを解析し、その数あるプライマーセット中からイントロンを含むプライマーセットを選択して、検出及び定量が可能なプライマーとした。
【0026】
次に、インカレーター法を用いて被検試料からマツタケDNAの定量を行う場合を例示する。具体的には、被検試料から抽出したマツタケ遺伝子を鋳型として、本実施形態のプライマーセットを用いてインカレーター法によるリアルタイムPCR法で増幅を行い、前記リアルタイムPCR法による蛍光強度の測定結果に基づき、被検試料中のマツタケ菌を定量する場合を例示する。
【0027】
まず、被検試料から抽出したDNA、PCR reaction バッファー(SYBR Green Iを含む)、および本実施形態のプライマーセットを用いてリアルタイムPCRを行う。本実施形態のプライマーセットを用いたPCRによりマツタケの二本鎖DNAのみが増幅されるが、このときマツタケ二本鎖DNAに、インカレーターであるSYBR Green Iが結合する。結合したSYBR Green Iは励起光の照射により蛍光を発するため、反応の間この蛍光強度を検出することにより増幅産物の生成量をモニターすることができる。
【0028】
ここで、PCRによりマツタケ二本鎖DNA(増幅産物)が蛍光検出可能な量に達すると、急激な蛍光強度の増加が観察される(このときのサイクル数をThreshold Cycleという。以下、Ct値と略す)。すなわち、被検試料中においてマツタケのDNA量が多いほど、少ないCt値で蛍光検出可能となる。
【0029】
Ct値と最初に含まれていたDNA量の常用対数との間には直線関係があり、これを基に検量線を作成することができる。従って、算出したCt値を、既知量のDNAサンプルを基に予め作成した検量線に当てはめることにより、被検試料中に含まれていたマツタケDNA量を求めることができる。
【実施例】
【0030】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0031】
(実施例1)
本実施例においては、マツタケ菌のみを特異的に検出、定量可能であるプライマーを作成し、その特異性について評価を行った。
【0032】
まず、マツタケのマンガンパーオキシダーゼの遺伝子(イントロン、エキソンを含む)をマツタケからクローニングし、当該遺伝子の配列を決定した。この配列よりLightCycler Probe Design Software Ver1.0(Roche社)にて定量にふさわしいと思われるプライマーセットを解析し、その数あるプライマーセット中より、イントロンを含むプライマーセットを選択して、検出及び定量が可能なプライマー((forward プライマー: 配列5’−GAGACACAACGGCGAGATT−3’、配列番号1)、及びreverse プライマー: 配列5’−ACCCTTACCCGCTCAGT−3’ 、配列番号2)))を選択した。
【0033】
次いで、作成したプライマーセットの特異性を評価するために、マツタケ、マツタケ近縁種(ニセマツタケ、マツタケモドキ、バカマツタケ、アメリカマツタケ)およびマツタケ発生地に繁茂にみられるきのこ類(キシメジ、ホンシメジ、ショウロ、バラタケ、テングダケ、クロカワ、ハツタケ、コツブタケ、アミタケ、チチアワタケ、ヌメリイグチ)についてPCR法を用いた遺伝子の増幅を行った。PCRの反応は94℃にて1分間前加熱後、94℃30秒変性・57℃2分アニーリング・72℃1分伸長からなるサイクルを30回行い、72℃にて10分間加熱後4℃に冷却した。
【0034】
これらの増幅産物を1%アガロースゲル電気泳動により分離し、エチジウムブロミド染色後UV照射により検出した。
【0035】
図1に示すように、本実施例のプライマーセットを使用したPCRにおいては、マツタケのみにおいて増幅が確認され、近縁種および他のきのこ類については増幅が確認されなかった。
【0036】
以上のことから、実施例1のプライマーセットの特異性が示された。
【0037】
(実施例2)
実施例1のプライマーセットのDNAの定量性を確認するために、超遠心塩化セシウム密度勾配法で高度に精製抽出したマツタケゲノムを用いて、実施例1のプライマーセットを使用したリアルタイムPCRを行った。リアルタイムPCRは、Roche社製のLightCycler330を用いておこなった。
【0038】
抽出されたゲノムをA260で吸光測定し得られたDNA濃度を元に、鋳型DNA量3mg〜300ngで、増幅を検討した。各サンプルにおいて、n=3で実験を行った。PCR反応液としては、PCR MasterMix液(polymerase、PCR反応用Buffer(SYBR Green Iを含む)、2mM MgCl、0.2mM dNTP、0.5uM 実施例1のプライマーセット(forward プライマー: 配列5’−GAGACACAACGGCGAGATT−3’、配列番号1)、及びreverse プライマー: 配列5’ACCCTTACCCGCTCAGT−3’ 、配列番号2))を含む)20ul反応液中に超遠心で精製したマツタケDNAを鋳型として使用して、反応に供した。PCR反応条件は95℃にて10分間前加熱後、95℃15秒変性、71℃5秒アニーリング・72℃1秒伸長からなるサイクルを45回行った。また、サイクル毎に72℃と95℃の間での82℃1秒間励起波長470nmでPCR反応物を励起し、蛍光波長530nmを測定した。各サンプルのPCRサイクルにおける蛍光強度を図2に示す。
【0039】
PCRで定量を行う際の重要な点は、PCR反応でDNA増幅が指数的に増加しているところでは、初期鋳型DNA量とDNA増幅量に相関がある点である。各サンプルにおいて、ある蛍光強度に達するために必要なPCR反応サイクル数を決定するために、ベースライン(ある蛍光強度の値)を設定してそれとの交点(PCR反応におけるサイクル数)をグラフにしたものを図3に示す。
【0040】
図3に示すように、3mg〜300ngの範囲において初期DNA濃度とサイクル数に相関があり、マツタケゲノムを特異的に増幅可能なプライマーが、DNA濃度の定量に300ngの検出限界で使用可能であることが示された。
【0041】
(実施例3)土壌からの抽出と定量
続いて、本実施形態のプライマーがマツタケ発生地における土壌を被検試料とした場合でも定量性を示すか明らかにするために、マツタケ発生地周辺から採取した土壌に既知量の菌糸を混和し、定量試験を行った。
【0042】
まず、マツタケ培養菌糸体を土壌に一定の割合で混和(乾燥菌体重量比に換算して100mg〜100ug菌糸体/1g 土壌)した土壌試料を作成した。混合した土壌はマツタケ発生地(岩手)周辺から採取し、DNA抽出によってマツタケDNAが含まれていないことを確認した土壌を使用した。
【0043】
次に、混合土壌を、液体窒素を用いて瞬間凍結した。瞬間凍結した土壌を、凍結乾燥機(凍結真空乾燥機FM−25−EL−VP−SF、バーチス社製)で温度−85℃、減圧度13.33Pa以下で凍結乾燥した。凍結乾燥した土壌を、打撃剪断方式細胞破砕機(商品名マルチビーズショッカー、安井器械(株)製)を用いて2000rpmにて10秒間3回粉砕した。
【0044】
粉砕された乾燥土壌30mgを秤取し、CTABバッファー(1%セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、50mM Tris−HCl(pH9.5)、10mM EDTA、0.7M塩化ナトリウム)を650ul加えた。65℃で5分毎に攪拌しながら1時間処理した。
【0045】
次いで、クロロホルム/イソアミルアルコール(24:1)液を650ul加え、室温で20分間混合した。さらに、室温で20,000×gで15分間遠心し、上層を分取した。この操作を2回繰り返した。
【0046】
得られた上層600ulに、−20℃の100%イソプロパノールを分取した上層液量に対して0.6vol加え、静かに混和した後、−20℃で1,000×gにて5分間遠心し、上清を除去し沈殿を回収した。さらに、−20℃の70%エタノールを600ul加え、攪拌した後、−20℃で1,000×gにて5分間遠心し、上清を除去し沈殿を回収した。沈殿物を自然乾燥後、TE buffer(10mM Tris HCl、1mM EDTA(pH8.0))100ulを加え、55℃で沈殿回収されたDNAを溶解した。
【0047】
上記のようにして得られたDNA溶液のうち、2ulを投入DNA溶液とし、実施例2と同様の条件でPCR反応に供し、蛍光強度測定をした。
【0048】
当該測定結果から作成したグラフを図4に示す。このように、サイクル数と混和した菌体量との間には相関があり、本実施例のプライマーはマツタケ発生地の土壌を被検試料とした場合でも定量可能であることが示された。
【0049】
(実施例4)
さらに、本実施例のプライマーセットを用い、マツタケ発生地における検定を行った。具体的には、マツタケ発生地のマツタケシロ(マツタケの根圏集落をいい、菌根と気中菌糸がアカマツ等の根圏で発達して形成される。)直下の土壌中のマツタケ菌糸体量を深度別に測定した。
【0050】
マツタケ発生地のマツタケシロにおける区画(5cm×5cm)内の地上部から深さ30cmまでの土壌を、深さ5cmごとに採取した。当該6つの土壌サンプルを被検試料として、実施例1で作成したプライマーを用い、被検試料中における菌子体量の測定を行った。
【0051】
なお、土壌からの遺伝子の抽出、およびリアルタイムPCRの方法、および条件は実施例3に記載したものと同じ方法、条件で行った。また、本実施例においては、既知の菌糸体量をマツタケ発生地周辺土壌(マツタケDNAが存在しないことを確認済み)に混和し、実施例3に記載した方法、および条件で抽出およびリアルタイムPCRを行い、検量線を作成した。
【0052】
土壌深度と菌子体量との関係を図5に示す。このように、本実施例のプライマーは既知量の菌子体量を添加しない場合であっても、マツタケ菌子体を検出することができ、さらに定量することができた。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例1のプライマーの特異性を示すための電気泳動図(図面代用写真)である。
【図2】マツタケDNAを鋳型とし、実施例1のプライマーセットを用いてリアルタイムPCR法を実行したときの蛍光強度とサイクル数の関係を示すグラフである。
【図3】図2における蛍光強度が1になるときのサイクル数を縦軸に、鋳型DNA量を横軸にとり、相関を示したグラフである。
【図4】図2における蛍光強度が1になるときのサイクル数を縦軸に、土壌に混和した鋳型DNA量を横軸にとり、相関を示したグラフである。
【図5】土壌中の菌糸体量を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マツタケ菌を検出または定量するためのPCRプライマーセットであって、
配列表の配列番号1に示される塩基配列からなるフォワード側プライマーと、
配列表の配列番号2に示される塩基配列からなるリバース側プライマーと、からなることを特徴とするPCRプライマーセット。
【請求項2】
請求項1に記載のPCRプライマーセットを用い、被検試料から抽出したマツタケ遺伝子を鋳型としてPCR法により増幅を行い、増幅産物を検出することによって前記被検試料中のマツタケ菌を検出することを特徴とするマツタケ菌の検出方法。
【請求項3】
前記PCR法がリアルタイムPCR法である請求項2に記載のマツタケ菌の検出方法。
【請求項4】
請求項1に記載のPCRプライマーセットを用い、被検試料から抽出したマツタケ遺伝子を鋳型として定量PCR法により増幅を行い、前記定量PCR法による増幅産物の測定結果に基づき前記被検試料中のマツタケ菌を定量することを特徴とするマツタケ菌の定量方法。
【請求項5】
前記定量PCR法がリアルタイムPCR法である請求項4に記載のマツタケ菌の定量方法。


【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公開番号】特開2009−183202(P2009−183202A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26135(P2008−26135)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(501186173)独立行政法人森林総合研究所 (91)
【Fターム(参考)】