説明

マヨネーズ様食品及びその製造方法

【課題】卵黄によるアレルギーのおそれがなく、かつ低カロリーでコレステロールを含まず、本来のマヨネーズと同等の風味、食感を有し、かつ増粘剤による心理的違和感を与えることのない、マヨネーズ様食品の製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】加熱した豆乳の表面からすくいあげられた皮膜を水分率30重量%以上に保ってなる生ゆばと、食用油脂、食酢、柑橘類果汁のいずれかまたは両方と、調味料とを含んでなるマヨネーズ様食品であり、加熱した豆乳の表面からすくいあげられた皮膜を水分率30重量%以上に保ってなる生ゆばと、食用油脂、食酢、柑橘類果汁のいずれかまたは両方と、調味料とを混合し攪拌により乳化するマヨネーズ様食品の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵黄を含まないマヨネーズ様食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マヨネーズ、ドレッシングなどの食用乳化物は、通常、卵黄を乳化剤として食酢、食塩、砂糖、香辛料、植物性油脂を水中油滴型に乳化して製造されるが、マヨネーズには卵黄が含まれており、卵黄に対するアレルギーを持っている人にとっては卵黄を含まないマヨネーズが望まれている。また、卵黄はコレステロールの蓄積の要因のひとつになる可能性があるともいわれ、卵黄を含まないマヨネーズ風の食品がいわゆる健康食品として望まれている。また、マヨネーズに比べて低カロリーのマヨネーズ風の食品が健康食品として望まれている。
【0003】
このような要望に答えるため、卵黄を含まない、豆乳を用いたマヨネーズ風の食品が開示されている。例えば特開2008−35768には豆乳発酵物及び水性調味液を主成分とし、これらに澱粉及び寒天を加えて粘性を付与したマヨネーズ風の食品が開示されている。
【0004】
また、特開2003−102424には豆乳を主成分とし、該豆乳にグルコマンナン等の増粘剤を加えて所定の粘性を付与したマヨネーズ風の食品が開示されている。
【0005】
さらに、特開2003−274899には、所定量の豆乳に、適宜量の調味料及び所定量の寒天を混入して攪拌加熱し、寒天を液状とした後適温の醸造酢又は柑橘類果汁を添加し、寒天が固化する温度まで冷却させた後、食用植物油を滴下し乍ら乳化して製造するマヨネーズ風の食品が開示されている。
【0006】
このように豆乳を用いてマヨネーズ風の食品を得るには澱粉、寒天、グルコマンナンのような増粘剤を用いて粘度調整しなければならないが、これら多糖類の増粘剤は、食する者に本来のマヨネーズに対比して実際の食感、風味の違いのみならず、増粘剤使用というだけでもたらされる心理的な違和感を与えることが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−35768号公報
【特許文献2】特開2003−102424号公報
【特許文献3】特開2003−274899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、卵黄によるアレルギーのおそれがなく、かつ低カロリーでコレステロールを含まず、本来のマヨネーズと同等の風味、食感を有し、かつ増粘剤による食感、風味の違いや心理的違和感を与えることのない、マヨネーズ様食品及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨とするところは、
加熱した豆乳の表面からすくいあげられた皮膜を水分率30重量%以上に保ってなる生ゆばと、
食用油脂と、
食酢、柑橘類果汁のいずれかまたは両方と、
調味料と
を含んでなるマヨネーズ様食品であることにある。
【0010】
また、本発明の要旨とするところは、
加熱した豆乳の表面からすくいあげられた皮膜を水分率30重量%以上に保ってなる生ゆばと、
食用油脂と、
食酢、柑橘類果汁のいずれかまたは両方と、
調味料と
を混合し攪拌により乳化するマヨネーズ様食品の製造方法であることにある。
【0011】
前記マヨネーズ様食品の製造方法においては、前記生ゆばと、前記食酢、柑橘類果汁のいずれかまたは両方と、前記調味料とを攪拌して混ぜ合わせたのち、前記食用油脂とともに攪拌して乳化し得る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、卵黄によるアレルギーのおそれがなく、かつ低カロリーでコレステロールを含まず、本来のマヨネーズと同等の風味、食感を有し、かつ増粘剤による心理的違和感を与えることのない、マヨネーズ様食品及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のマヨネーズ様食品は
加熱した豆乳の表面からすくいあげられた皮膜を水分率30重量%以上に保ってなる生ゆばと、
食用油脂と、
食酢、柑橘類果汁のいずれかまたは両方と、
調味料と
を含んでなるマヨネーズ様食品である。
【0014】
水分率は、水分を含む皮膜の総重量に対する、その水分の比率(重量%)である。
【0015】
本発明においては、豆乳から精製した大豆たんぱくを卵黄に代えて用いる。この精製にはゆばの製法を適用することができる。すなわち、本発明においては、加熱した豆乳の表面にできる皮膜をすくいあげて用いる。この皮膜は乾燥すると乾燥ゆばとなるが、本発明においては水分率が30重量%以上である皮膜からなる生ゆばを用いる。
【0016】
本発明において用いる生ゆばは加熱した豆乳の表面にできる皮膜をすくいあげた直後の生ゆばであってもよい。この皮膜には豆乳が付着していてもよい。あるいは、すくいあげた皮膜を室温下で放置した生ゆばであってもよい。この放置により皮膜に付着している豆乳が落下してもよい。
【0017】
このように、本発明において用いる生ゆばは、水分を含んだ状態に保たれた生ゆばであり、加熱した豆乳の表面からすくいあげられた皮膜を水分率30重量%以上に保ってなる生ゆばである。
【0018】
この生ゆばは、皮膜を加熱した豆乳の表面からすくいあげ、室温下で放置して、水分率が30重量%以上の所定の水分率に達したのち、水分が過剰に失われない状態で水分率が30重量%未満とならないように所定時間保管されたものであってもよい。
【0019】
このように、水分率が10重量%以下のいわゆる乾燥ゆばではなく、乾燥される前の皮膜からなる生ゆばを卵黄に代えて、あとは従来のマヨネーズと同様に食用油脂、食酢もしくは柑橘類果汁及び調味料と混合して乳化し、マヨネーズの風味、食感を有する本発明のマヨネーズ様食品を得ることができる。
【0020】
生ゆば、食用油脂、食酢もしくは柑橘類果汁及び調味料は同時に混ぜ合わせてもよい。逐次混ぜ合わせてもよい。あるいは、それらのうちの2種類を同時に混ぜ合わせ、他は逐次混ぜ合わせてもよい。逐次混ぜ合わせの場合の順番は限定されない。また、本発明は、生ゆば、食用油脂、食酢もしくは柑橘類果汁及び調味料に加えて既存の乳化剤等の食品添加物を補助的に添加することを排除するものではない。
【0021】
生ゆばは卵黄に代えてそのまま食用油脂に加えて攪拌してもよいが、食用油脂に加える前にミキサー、フードカッターなどで破砕攪拌し無定形化してから卵黄に代えて食用油脂などに加えて攪拌することで、より本来のマヨネーズの風味、食感に近い風味、食感を有する本発明のマヨネーズ様食品を得ることができる。
【0022】
生ゆば、あるいは攪拌により無定形化された生ゆばと食用油脂とを混合して合せるときには、従来のマヨネーズの製造方法におけると同様に食酢もしくは柑橘類果汁と調味料を添加する。
【0023】
本発明の他の態様においては、生ゆば、あるいは攪拌により無定形化された生ゆばに食酢もしくは柑橘類果汁と調味料を添加して攪拌して予備乳化したのち、食用油脂と混合して乳化することにより、さらに本来のマヨネーズの風味、食感に近い風味、食感を有する本発明のマヨネーズ様食品を得ることができる。
【0024】
皮膜を得るための豆乳の加熱温度は、従来のゆばの製造における加熱温度と同じである。すなわち、80〜90℃であることが好ましい。皮膜のすくいあげも従来のゆばの製造における皮膜のすくいあげと同様にして行うことができる。
【0025】
本発明のマヨネーズ様食品の製造方法においては、皮膜をすくいあげたのち過剰に乾燥して水分率が30重量%未満となったものを用いた場合は、出来上がった製品の乳化状態が不均一であり、本来のマヨネーズの風味、食感に近い風味、食感が得られない。
【0026】
本発明のマヨネーズ様食品の製造方法は、豆腐や豆乳などの他の大豆製品を使う従来製法と異なり、天然糊料、安定剤や乳化剤などの食品添加物を必要としない。また、一般に流通している生ゆばを卵黄の代わりに使用するだけで、マヨネーズと同じ製造工程で製品を作ることが出来る。
【0027】
本発明に用いられる食用油脂としては、大豆油、綿実油、菜種油、コーン油、ごま油、サンフラワー油、ひまわり油、こめ油、オリーブ油、ぶどう油、落花生油、紅花油、パーム油、サラダ油、小麦はい芽油、食用調合油、油脂に香味原料を加えた香味食用油などが挙げられる。食酢としては、りんご酢、ぶどう酢、バルサミコ酢などの果実酢、米酢、米黒酢などの穀物酢、サトウキビ酢などのその他の醸造酢、合成酢などが挙げられる。柑橘類果汁としてはレモン果汁、ゆず果汁、すだち果汁、ゆこう果汁、だいだい果汁、かぼす果汁、シークワーサー果汁などが挙げられる。調味料としては砂糖、ぶどう糖、果糖、或いはこれらの混合液糖、水あめ、蜂蜜、還元水飴などの甘味料、食用塩、豆乳や豆腐などの大豆加工品、コショウ、からし、唐辛子などの香辛料、酵母エキス、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウムなどの化学調味料、動物又は植物の蛋白質の加水分解物などのアミノ酸調味料などが挙げられる。また、必要により醤油、みそなどの発酵調味料、チーズや生クリームなどの乳製品、魚介類エキス、野菜抽出物、海藻エキスなどのエキス類、清酒、ワイン、みりんなどの酒精飲料、たまねぎ、きゆうり、人参、セロリ、しようが、ニンニク、トマト、ごま、バジル、パセリなどの野菜の加工処理物(ピューレ、ペースト、練状物、細断粒状物、粉末、漬物等)、りんご、オレンジ、ゆず、もも、ぶどうなどの果実、果汁の加工処理物(同上)などを適宣添加混和してもよい。
【0028】
本発明のマヨネーズ様食品全量に対する各原材料の好適な配合比(重量%)を以下に示す。
食用油脂: 40〜60
生ゆば:10〜40
食酢: 5〜15
砂糖: 0〜5
食塩: 1〜5
香辛料: 0〜5
【0029】
前述のように、通常のマヨネーズの工程では卵黄、食酢もしくは柑橘類の果汁、調味料、香辛料を混合し、これに食用油脂を加えミキサーで乳化し、油脂を水相に微細粒子として分散させて、水中油滴型エマルションを形成するのが一般的である。また、これまでの大豆製品を使ったマヨネーズ様食品は、加熱冷却工程、発酵、乳化剤の添加等、工程が複雑であった。
【0030】
これに対して、本発明では生ゆばを卵黄の代わりに使うだけで、マヨネーズと同じ工程でマヨネーズ様食品を作ることができるため、製造工程を大幅に簡略化して作業効率を向上できる。 さらに、生ゆばの含有率を調整することで、卵、澱粉や寒天などの糊料、増粘剤や乳化剤などの食品添加物を使用することなく乳化液状ドレッシングなどの乳化物が容易に調製出来る。また、本発明においては卵黄、全卵を使用しないため、卵アレルギー、コレステロールの点で問題が無く、また、乳化剤などの食品添加物を使用しなくともよいため、食品添加物の長期間の摂取による健康上の問題を起こす危険性がない。かつ多量の増粘剤添加による心理的違和感を与えることがない。このように本発明は消費者のニーズに適合した新たな乳化物を市場に提供できる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。ただし本発明の技術的範囲は、この例に限定されるものではない。
【0032】
[実施例1]
豆乳を80℃に加熱して生成した皮膜をすくいあげ、水分を自然落下により除去し室温で放置して水分率が59重量%となった生ゆば350gをミキサーでペースト状に破砕後、食酢50g、砂糖20g、食塩17g、通常のマヨネーズに用いる香辛料4gと特殊機化製 T.K. ホモミクサーMark 2 で混合攪拌(3000rpm 、3 分)、植物性油脂(コーン油)559gを少量ずつ加え混合攪拌(6000 rpm 、 5 分)後、回転数を上げ攪拌(12000rpm 、 10 分)し、マヨネーズ様食品を得た。
得られたマヨネーズ様食品の食感、風味は従来の卵黄使いのマヨネーズと同等であった。
【0033】
(粘度測定)実施例 1 で得られたマヨネーズ様食品の粘度を B 型粘度計で測定した(測定条件: No.4 ローター、 25℃ 、1000 rpm )ところ、65Pa・s という高い粘度であることが確認された。(ドレッシング及びドレッシングタイプ調味料品質表示基準並びにドレッシング類公正競争規約におけるマヨネーズの粘度: 30Pa・s以上)
【0034】
[応用例]
醤油48g、食酢54g、砂糖57g、練り胡麻22.5gを TK ホモミクサー Mark
2で混合攪拌(2500rpm 、 5 分)、実施例 1 で得られたマヨネーズ様食品118.5gを混合攪拌( 3000rpm 、 5 分)し、乳化液状ドレッシングを得た。
【0035】
[比較例1]
生ゆばに代えて市販の乾燥ゆば(水分率6.5重量%)150gを用い、ミキサーで粉砕後、水200g、食酢、砂糖、食塩、香辛料と特殊機化製 T.K. ホモミクサーMark 2 で混合攪拌した他は実施例1と同様にしてマヨネーズ様食品を得た。このマヨネーズ様食品の食感は従来の卵黄使いのマヨネーズに比べ舌ざわりの滑らかさに欠け、劣っていた。風味もマイルドさに欠けていた。
【0036】
[比較例2]
豆乳を80℃に加熱して生成した皮膜をすくいあげ、水分を自然落下により除去し室温で風乾して水分率が25重量%となったゆば190gを用い、ミキサーで破砕後、水70g、食酢、砂糖、食塩、香辛料と特殊機化製 T.K. ホモミクサーMark 2 で混合攪拌した他は実施例1と同様にしてマヨネーズ様食品を得た。このマヨネーズ様食品の食感は従来の卵黄使いのマヨネーズに比べ舌ざわりの滑らかさにやや欠け、劣っていた。風味もマイルドさにやや欠けていた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、マヨネーズ様食品に限らず卵黄を含まない乳化液状ドレッシングの製造に広く適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱した豆乳の表面からすくいあげられた皮膜を水分率30重量%以上に保ってなる生ゆばと、
食用油脂と、
食酢、柑橘類果汁のいずれかまたは両方と、
調味料と
を含んでなるマヨネーズ様食品
【請求項2】
加熱した豆乳の表面からすくいあげられた皮膜を水分率30重量%以上に保ってなる生ゆばと、
食用油脂と、
食酢、柑橘類果汁のいずれかまたは両方と、
調味料と
を混合し攪拌により乳化するマヨネーズ様食品の製造方法。
【請求項3】
前記生ゆばと、前記食酢、柑橘類果汁のいずれかまたは両方と、前記調味料とを攪拌して混ぜ合わせたのち、前記食用油脂とともに攪拌して乳化する請求項2に記載のマヨネーズ様食品の製造方法。


【公開番号】特開2011−130681(P2011−130681A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290733(P2009−290733)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(598171092)株式会社ユーサイド (1)
【Fターム(参考)】