説明

マルチカートリッジ式流体投与装置

【課題】薬剤の持続的な基礎投与及び/又はボーラス投与を提供すべく一以上の薬剤を投与可能な流体投与装置を提供する。
【解決手段】第1薬剤20及び第2薬剤22を投与するための流体投与装置210は、上記第1薬剤20を収容するよう構成された第1流体貯留部12と、上記第2薬剤22を収容するよう構成された第2流体貯留部14とを備える。流体投与装置210は、上記第1及び第2薬剤20,22のうちの一以上の薬剤の基礎投与を提供するために一以上の基礎駆動機構46,60を備えうる。また、流体投与装置210は、上記第1及び第2薬剤20,22のうちの一以上の薬剤のボーラス投与を提供するために一以上のボーラス駆動機構280,282を更に備えうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概ね流体投与装置に関し、特に、各薬剤の持続的な基礎投与及び/又はボーラス投与を提供すべく一以上の薬剤を患者に投与可能な流体投与装置に関する。
【0002】
<関連出願への相互参照>
本出願は、2006年3月30日に出願した米国仮出願第60/787,616号について米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張するものであり、当該出願の開示内容を参照によりここに援用する。
【0003】
また、「流体投与・測定システム及び方法(FLUID DELIVERY AND MEASUREMENT SYSTEMS AND METHODS)」と題された米国特許第6,939,324号、「長期間薬剤を投与するための油圧作動ポンプ(HYDRAULICALLY ACTUATED PUMP FOR LONG DURATION MEDICAMENT ADMINISTRATION)」と題された米国特許出願公開公報第US2005/0119618号、及び「流体投与・測定システム及び方法(FLUID DELIVERY AND MEASUREMENT SYSTEMS AND METHODS)」と題された米国特許出願第11/219,944号についても相互参照するものであり、これら各公報ないし出願の開示内容を参照によりここに援用する。
【背景技術】
【0004】
患者に液剤を投与するために、例えば携帯型輸液ポンプ等の流体投与装置が開発されている。このようなポンプないし薬物投与装置の多くは、定常状態の投与(「基礎投与」)と、必要に応じて所定量の薬物の瞬間的な急速注入(「ボーラス投与」)の両方を提供することができる。多くの場合、薬物の基礎投与を提供しつつ、場合によりボーラス投与によって補足的な追加を行うのが有益である。例えば、糖尿病治療用のインスリンや、慢性痛治療のための患者自己管理鎮痛法にあっては、継続的な基礎投与レートとボーラス投与量の両方にて投与が行われうる。このような薬物投与装置の多くは、コンパクトで、使用中はユーザないし患者に固定可能であるとともに、その後、処置完了時に廃棄することができる。
【0005】
上記のような薬剤の継続的ないし略継続的な基礎投与を提供するために、各種のポンプシステムを使用して多くの試みがなされてきた。薬物の投与量が少ないときに、基礎投与レートの精度にバラツキが生じることが多い。多くの流体投与装置は、液剤を収容するための貯留部(reservoir)を備え、経皮的に――即ち患者の皮膚を通して――挿入された針ないしその他のカテーテルを通じて患者に薬剤を投与するために、各種の機械式、ガス式若しくは電気機械式のポンプ・計量技術を用いる。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、以下に記載した一以上の特徴、若しくは添付の特許請求の範囲に記載した一以上の特徴、又はそれらの特徴の組み合わせを備える。
【0007】
本開示のある態様によれば、第1薬剤及び第2薬剤を投与するための流体投与装置が提供される。流体投与装置は、第1薬剤の基礎投与及び/又は第2薬剤の基礎投与を行うよう機能しうる。また、流体投与装置は、第1薬剤のボーラス投与及び/又は第2薬剤のボーラス投与を行うよう機能しうる。換言すると、第1及び第2薬剤それぞれの基礎及び/又はボーラス投与の任意の組み合わせが考えられる。
【0008】
流体投与装置の基礎駆動機構の各種構成により、第1及び/又は第2薬剤の基礎投与を提供しうる。例えば、単一の基礎駆動機構により、第1薬剤のみの基礎投与、第2薬剤のみの基礎投与、又は第1及び第2薬剤の両方の基礎投与を提供しうる。基礎駆動機構が第1及び第2薬剤のうちの一方のみの基礎投与を提供する場合には、流体投与装置の第2基礎駆動機構により他方の薬剤の基礎投与を提供してもよい。
【0009】
同様に、流体投与装置のボーラス駆動機構の各種構成により、第1及び/又は第2薬剤のボーラス投与を提供しうる。例えば、単一のボーラス駆動機構により、第1薬剤のみのボーラス投与、第2薬剤のみのボーラス投与、又は第1及び第2薬剤の両方のボーラス投与を提供しうる。ボーラス駆動機構が第1及び第2薬剤のうちの一方のみのボーラス投与を提供する場合には、流体投与装置の第2ボーラス駆動機構により他方の薬剤のボーラス投与を提供してもよい。
【0010】
本開示の別の態様によれば、流体投与装置は、第1及び第2薬剤を収容する第1及び第2貯留部と流体連通する一以上の針を備えてもよい。例えば、第1の針が、第1薬剤を収容する貯留部と流体連通していてもよく、一方で、第2の針が、第2薬剤を収容する貯留部と流体連通していてもよい。投与の際に第1及び第2薬剤が混じり合うことを実質的に防止するために、上記の針を、互いに間隔をおいて設けるか、流体投与装置の両端部に配置してもよい。また、一方の針は、他方の針の投与アーム(患者の皮下へ挿入するためのもの)よりも長い投与アームを備えてもよい。このような場合、第1及び第2薬剤のうちの一方は、第1及び第2薬剤のうちの他方の薬剤よりも深い皮下深度まで投与されることになる。異なる深度まで薬剤を投与することにより、第1及び第2薬剤が混じり合うことを実質的に防止することもできる。
【0011】
本開示の更に別の態様によれば、第1及び第2薬剤それぞれの貯留部と流体連通する単一の針を設けてもよい。このような針は、「Y字形状」で、第1薬剤を収容する貯留部と流体連通する第1取込みアームと、第2薬剤を収容する貯留部と流体連通する第2取込みアームとを備えてもよい。第1及び第2薬剤が患者へ投与される前に針の投与アームの中で互いに混合されうるように、針の第1及び第2取込みアームは、それぞれ、当該針の投与アームと流体連通していてもよい。
【0012】
例示的には、本開示の流体投与装置は、外側ハウジングと、ハウジング内にあり、第1薬剤を収容するよう構成された第1貯留部と、ハウジング内にあり、第2薬剤を収容するよう構成された第2貯留部とを備えてもよい。流体投与装置は、更に、第1貯留部と流体連通するよう構成された第1端部と、ハウジングから外部へ延出するよう構成された第2端部とを有する針を備えてもよい。代わりに、当該針は、第2薬剤を収容する第2貯留部と流体連通するよう構成された第3端部を備えてもよい。流体投与装置は、更に、第2貯留部と流体連通するよう構成された第1端部と、ハウジングから外部へ延出するよう構成された第2端部とを有する第2の針を備えてもよい。第1の針は、ハウジングの第1端部に配置され、第2の針は、ハウジングの第2端部に配置されていてもよい。また、第1の針の投与アームは、第2の針の投与アームよりも長くてもよい。
【0013】
更に例示的には、流体投与装置は、第1薬剤の基礎投与を提供するための基礎駆動機構を備えてもよい。同じ基礎駆動機構で、第2薬剤の基礎投与を提供してもよい。代わりに、第2基礎駆動機構により第2薬剤の基礎投与を提供してもよい。どちらの場合においても、基礎駆動機構は、コイルばねと、基礎駆動ピストンと、作動流体貯留部とを備えうる。また、流体投与装置は、第1薬剤と関連づけられた、第1流れ規制部を介して第1基礎駆動機構の作動流体貯留部と流体連通する第1ポンプチャンバを備えてもよい。同様に、第2薬剤と関連づけられた第2ポンプチャンバが、第2流れ規制部を介して第2基礎駆動機構の作動流体貯留部と流体連通していてもよい。
【0014】
更に例示的には、流体投与装置の第1投与ピストンが、第1流体貯留部内の第1薬剤に対して力を作用させるために第1流体貯留部内に配置されていてもよい。同様に、第2投与ピストンが、第2流体貯留部内の第2薬剤に対して力を作用させるために第2流体貯留部内に配置されていてもよい。
【0015】
流体投与装置は、第1薬剤のボーラス投与を提供するためのボーラス駆動機構を更に備えてもよい。同じボーラス駆動機構で、第2薬剤のボーラス投与を提供してもよい。代わりに、第2ボーラス駆動機構により第2薬剤のボーラス投与を提供してもよい。どちらの場合においても、ボーラス駆動機構は、ラチェットと、当該ラチェットに連結されたボーラスピストンとを備えてもよい。流体投与装置のポンプチャンバが第1流体貯留部に関連づけられ、ボーラスピストンは、ポンプチャンバと流体連通するボーラス流体貯留部内に配置される。
【0016】
本開示の別の態様によれば、流体投与装置から第1及び第2薬剤を投与する方法は、第1薬剤について第1基礎投与を行うことと、第2薬剤について第2基礎投与を行うこととを含む。第1基礎投与は、第2基礎投与とほぼ等しくてもよい。代わりに、第1基礎投与は、第2基礎投与より大きくてもよい。
【0017】
例示的に、第1薬剤を投与することは、第1基礎駆動機構を作動させることを含み、第2薬剤を投与することは、同様に、当該第1基礎駆動機構を作動させることを含みうる。代わりに、第2薬剤を投与することは、上記第1基礎駆動機構とは異なる第2基礎駆動機構を作動させることを含みうる。
【0018】
当該方法は、更に、第1薬剤について第1ボーラス投与を行うことと、第2薬剤について第2ボーラス投与を行うこととを含みうる。第1ボーラス投与は、第2ボーラス投与と同等であってもよい。代わりに、第1ボーラス投与は、第2ボーラス投与より大きくてもよい。
【0019】
例示的に、第1ボーラス投与を行うことは、第1ボーラス駆動機構を作動させることを含み、第2ボーラス投与を行うことは、当該第1ボーラス駆動機構を作動させることを含みうる。代わりに、第2ボーラス投与を行うことは、上記第1ボーラス駆動機構とは異なる第2ボーラス駆動機構を作動させることを含みうる。
【0020】
本開示の更に別の態様によれば、流体投与装置から第1及び第2薬剤を投与する別の方法は、(i)作動流体貯留部から第1ポンプチャンバへ作動流体を押し進めて、第1可動バリアーに対して力を作用させることと、(ii)作動流体貯留部から第2ポンプチャンバへ作動流体を押し進めて、第2可動バリアーに対して力を作用させることと、(iii)第1ピストンに対して力を作用させて、第1流体貯留部の孔を通じて第1薬剤の少なくとも一部を排出することと、(iv)第2ピストンに対して力を作用させて、第2流体貯留部の孔を通じて第2薬剤の少なくとも一部を排出すること、とを含む。
【0021】
例示的に、作動流体貯留部から作動流体を押し進めることは、作動流体貯留部内のピストンに対してばねの力を付与することを含みうる。作動流体貯留部から作動流体を押し進めることは、更に、作動流体貯留部から流れ規制部を介して第1及び第2ポンプチャンバへ作動流体を押し進めることを含みうる。
【0022】
本明細書に記載した流体投与装置は、多種多様な薬物、医薬品及び薬剤、並びに疾病や病状を治療するのに有用な他の成分を投与するのに使用されうる。ある実施形態においては、本明細書に記載した投与装置は、対応する貯留部に、予め選択された薬剤を含むか、含むように構成されているか、含むのに適している。ある態様においては、当該予め選択された薬剤は、糖尿病及び/又は糖尿病状態を治療するのに用いられる。別の態様においては、当該予め選択された薬剤は、細菌感染症及び/又は病原性細胞集団に関連する他の疾病を治療するのに用いられる。別の態様においては、当該予め選択された薬剤は、ドーパミン、及び/又は、ドーパミンアゴニスト及び/又はドーパミンアンタゴニストとして働く化合物により治療可能な疾病を含むがこれに限定されない、神経伝達物質の機能不全に関連する疾病を治療するのに用いられる。
【0023】
本開示の上記及び他の特徴は、以下の説明及び添付の図面から明らかになる。
詳細な説明では、添付の図面を特に参照する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本開示にかかる2カートリッジ式薬物投与装置であって、第1及び第2薬剤の両方の基礎投与と、第1及び第2薬剤の両方のボーラス投与とを提供する装置を示す概略図である。
【図2】本開示にかかる2カートリッジ式薬物投与装置であって、第1及び第2薬剤の両方の基礎投与と、第1及び第2薬剤の両方のボーラス投与とを提供する装置を示す概略図である。
【図3】本開示にかかる2カートリッジ式薬物投与装置であって、第1及び第2薬剤の両方の基礎投与と、第1及び第2薬剤の両方のボーラス投与とを提供する装置を示す概略図である。
【図4】本開示にかかる2カートリッジ式薬物投与装置であって、第1及び第2薬剤の両方の基礎投与と、第1及び第2薬剤の両方のボーラス投与とを提供する装置を示す概略図である。
【図5A】本開示にかかる2カートリッジ式薬物投与装置であって、第1及び第2薬剤の両方の基礎投与と、第1及び第2薬剤の両方のボーラス投与とを提供する装置を示す概略図である。
【図5B】本開示にかかる2カートリッジ式薬物投与装置であって、第1及び第2薬剤の両方の基礎投与と、第1及び第2薬剤の両方のボーラス投与とを提供する装置を示す概略図である。
【図6】本開示にかかる他の薬物投与装置であって、第1薬剤のみについて基礎投与を提供するとともに、第1及び第2薬剤のボーラス投与を提供する装置を示す概略図である。
【図7】本開示にかかる他の薬物投与装置であって、第1薬剤のみについて基礎投与を提供するとともに、第1及び第2薬剤のボーラス投与を提供する装置を示す概略図である。
【図8】本開示にかかる他の薬物投与装置であって、第1及び第2薬剤の基礎投与を提供するが、第2薬剤のみについてボーラス投与を提供する装置を更に示す概略図である。
【図9】本開示にかかる他の薬物投与装置であって、第1及び第2薬剤の基礎投与を提供するが、第2薬剤のみについてボーラス投与を提供する装置を更に示す概略図である。
【図10】本開示にかかる更なる薬物投与装置であって、第1及び第2薬剤の基礎投与を提供するが、第1及び第2薬剤のどちらについてもボーラス投与を提供しない装置を示す概略図である。
【図11】本開示にかかる更なる薬物投与装置であって、第1及び第2薬剤の基礎投与を提供するが、第1及び第2薬剤のどちらについてもボーラス投与を提供しない装置を示す概略図である。
【図12】本開示にかかる他の薬物投与装置であって、第1及び第2薬剤のボーラス投与を提供するが、第1及び第2薬剤のどちらについても基礎投与を提供しない装置を示す概略図である。
【図13】本開示にかかる他の薬物投与装置であって、第1及び第2薬剤のボーラス投与を提供するが、第1及び第2薬剤のどちらについても基礎投与を提供しない装置を示す概略図である。
【図14】本開示にかかる別の薬物投与装置であって、第1薬剤のみについてボーラス投与を提供し、第2薬剤のみについて基礎投与を提供する装置の概略図である。
【図15】本開示にかかる別の薬物投与装置であって、第1及び第2薬剤の各々に関連づけられた風船状の基礎流体貯留部と、これら基礎流体貯留部の各々に連結された代替の基礎駆動機構とを備える装置の概略図である。
【図16】図15に示す装置に類似した、本開示にかかる別の薬物投与装置であって、第1及び第2薬剤それぞれの基礎投与を提供するための単一の代替基礎駆動機構及び風船状基礎流体貯留部を備える装置の概略図である。
【図17】図1に示す装置に類似した、本開示にかかる別の薬物投与装置であって、図1の第1及び第2薬剤の各々に関連づけられた投与ピストンの代わりに可撓な部材を用いた装置の概略図である。
【図18】本開示にかかる針の構成を示す概略図であり、患者に対して異なる皮下深度で第1及び第2薬剤を投与すべく長さの異なる投与アームをそれぞれ有する第1及び第2針を含む。
【図19】第1及び第2薬剤それぞれの貯留部と流体連通するための概ね「Y字形状」の針の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
まず、図1〜図5Bを参照すると、各種の流体ないし薬物投与装置10、110、210、310、410、450が示されている。これら薬物投与装置10、110、210、310、410、450は、それぞれ、持続的な定常状態ないし基礎的態様で第1薬剤20の投与ないし輸液を行うことができるとともに、短時間の律動的ないしボーラス的な投与ないし輸液を提供すべく第1薬剤20を即効量で投与することができる。また、薬物投与装置10、110、210、310、410、450は、それぞれ、第2薬剤22の基礎投与及び第2薬剤22のボーラス投与をともに提供することができる。各装置が第1及び第2薬剤を投与する手段については以下に説明する。
【0026】
本明細書に記載する流体投与装置は、それぞれ、外部ないし外側のハウジング(不図示)を備えることを理解すべきである。したがって、図1〜図17に示す構造体は、通常、そのようなハウジングに収容される。例示的には、ハウジングは、ユーザないし患者が扱うことができ、本明細書に記載する基礎駆動機構及びボーラス駆動機構を作動させる各種のボタンないしアクチュエータを備えうる。また、以降より詳細に説明するように、図1〜図17に示す各流体投与装置の針32、34は、外側ハウジング内、及び/又は、外側ハウジングの外部ボタン内に針全体が収容される第1の非作動時配置(不図示)と、第2の作動時配置との間で移動することができる。この第2の作動時配置(図1〜図17に示す)においては、例えば、針の一部分が、第1及び第2薬剤20、22のうちの一方を収容する貯留部と流体連通する一方で、針の第2の部分が、患者の皮下への挿入のために装置の外側ハウジング外に配置されるように、針は下ろされる。例示的には、針は、複数の流体貯留部のうちの一つ(又は各貯留部に関連づけられた栓)と、患者とに概ね同時に挿入されるよう構成されている。換言すると、針を非作動時位置から作動時位置へ移動させることで、針の第1端部は、対応する流体貯留部と流体連通するようになり、これとほぼ同時に、針の第2端部は、患者の中に置かれるようになる。
【0027】
ここで、図1を参照すると、薬物投与装置10は、第1の薬物貯留部ないしカートリッジ12と、第2の薬物貯留部ないしカートリッジ14とを備える。このような構成ゆえ、薬物投与装置10(及び本明細書に記載する他の薬物投与装置)は、2カートリッジ式の装置とみなすことができる。例示的には、第1薬剤20が第1貯留部12内に収容され、第2薬剤22が第2貯留部14内に収容される。第1の隔壁ないし栓24が、第1貯留部12の近位端25からその一部が突出するように、第1貯留部12の内部チャンバ内に部分的に受け容れられる。第1の栓24は、第1貯留部12と流体連通する中空なチャンバ26を備える。同様に、第2の栓28が、第2貯留部14の近位端25からその一部が突出するように、第2貯留部14の内部チャンバ内に部分的に受け容れられる。第2の栓28は、同様に、第2貯留部14と流体連通する中空なチャンバ26を備える。例示的には、第1及び第2の栓24、28は、それぞれ、ゴム製であってもよい。しかし、第1及び第2の栓24、28を他の好適な材料で作製することも本開示の範囲内である。
【0028】
薬物投与装置10の第1及び第2の針32、34は、それぞれ、第1端部36及び第2端部38を備える。各針32、34の第1端部36は、各栓24、28の中空チャンバ26内に配置されるように、対応する各第1及び第2の栓24、28の外壁を介して受け容れられる。各針32、34の第2端部38は、患者に第1及び第2薬剤20、22を投与すべく、患者の皮下へ挿入するために設けられている。図示の例では、第1及び第2の針32、34が、それぞれ、互いに概ね平行な取込みアーム40及び投与アーム42と、取込みアーム40及び投与アーム42同士を連結する横断アーム44とを備えるように、各針32、34は「J字形状」を画成するよう図示されている。各針32、34の各アーム40、42、44にはカニューレが挿入されており、これにより、対応する第1及び第2薬剤20、22を各針32、34の第1端部36からその第2端部38まで運ぶことができるように、連続した概ねJ字形状の通路が設けられる。
【0029】
図1に示すように、各針32、34のアーム40、42は長さが異なっている。しかしながら、アーム40、42、44の長さが異なる針32、34を設けることも、長さが同じ針32、34を設けることも、本開示の範囲内である。また、針の一端部が栓24、28のうちの一方の中空チャンバ26内に配置されているか配置可能となっていて、針の他端部が患者の皮下へ挿入可能となっているような他の針設計を採用することも本開示の範囲内である。また、薬剤20、22を対応する各貯留部12、14から患者へ投与するための他の輸液装置を設けることも本開示の範囲内である。例えば、針32、34の代わりに、ルーメンと針のセット、カテーテルとカニューレのセット、及び/又は、一以上のルーメンが取り付けられたマイクロニードル若しくはマイクロニードルアレイを用いてもよい。また、各流体貯留部12、14は、各チャンバ内の薬剤20、22が排出される孔を備えてもよい。当業者であれば、薬剤を体内へ送るのに様々な装置を用いることができることを理解するであろう。したがって、本開示は、本明細書に記載したタイプの輸液ないし注入装置に限定されるものではない。
【0030】
図1を再び参照すると、薬物投与装置10は、第1薬剤20の患者への基礎投与を提供する第1基礎駆動機構46を備える。この第1基礎駆動機構46は、基礎駆動ピストン50に固定されたコイルばね48を備える。基礎駆動ピストン50は、基礎流体貯留部52の内部チャンバ内に配置されている。基礎駆動ピストン50は、流体貯留部52の壁に対して移動可能である。ポンプチャンバ54が、連接通路ないし流れ規制部56を介して基礎流体貯留部52と流体連通している。ばね48は、基礎流体貯留部52内の作動流体に圧力をかけるべく、基礎駆動ピストン50に対して概ね一定の力を作用させる。
【0031】
薬物投与装置10の従動ピストンないし投与ピストン58が、貯留部12の内部チャンバ内に配置されており、第1薬物貯留部12に収容された第1薬剤20と、ポンプチャンバ56に収容された作動流体との間でパーティションないし可動なバリアーとして働く。例示的には、ポンプチャンバ54及び基礎流体貯留部52に収容される作動流体は、油(不図示)であり、例えば、特にシリコーン油である。しかしながら、これらのチャンバは、他の非圧縮性流体や、その開示内容を参照により本明細書に援用する米国特許出願公開公報第US2005/0119618号に開示されたもので充填されていてもよい。
【0032】
動作中、第1基礎駆動機構46のコイルばね48はゆっくり伸長して基礎駆動ピストン50に付勢力を作用させ、これにより、基礎流体貯留部52及びポンプチャンバ54内の作動流体に力を作用させる。ポンプチャンバ54内の液圧がこのように増加することで、投与ピストン58は右方(図1の向きで見た場合)へ付勢される。ピストン50がこのように移動することによって、貯留部12内の第1薬剤20が所定量、針32を通じて押し出され患者へ投与される。このような基礎駆動機構の動作については、米国特許出願公開公報第US2005/0119618号により詳細に説明されている。
【0033】
薬物投与装置10は、更に、第2薬剤22の患者への基礎投与を提供する第2基礎駆動機構60を備える。この第2基礎駆動機構60は、第1基礎駆動機構46と同じであるか、もしくはこれと類似している。したがって、同様の参照符号を用いて同様の構成要素を示す。例えば、第2基礎駆動機構60は、基礎駆動ピストン50に固定されたコイルばね48を備える。この第2基礎システムの基礎流体貯留部52は、連接通路ないし流れ規制部56を介してポンプチャンバ54と流体連通している。同様に、第2薬剤に関連する流体貯留部52、ポンプ貯留部54及び流れ規制部56は、例えばシリコーン油等の油でそれぞれ満たされている。また、第2基礎駆動機構60は、第1基礎駆動機構46と同じように、又は、似たように動作して、第2貯留部14から針34を介して患者へ第2薬剤22を押し出す。
【0034】
上述のとおり、流体投与装置10は、第1及び第2薬剤20、22それぞれの基礎投与を提供するために、二つの別個の基礎駆動機構46、60を備える。動作の際、第1及び第2基礎駆動機構46、60の両方を一度に作動させるべく、単一のボタンないしアクチュエータをユーザに作動させるようにしてもよい。もちろん、各駆動機構46、60をそれぞれ独立して作動させるように、別個のアクチュエータを用いてもよい。例示的には、このような一以上のボタンないしアクチュエータは、ユーザないし患者によって作動されうるように、流体投与装置10の外側ハウジング(不図示)上もしくはハウジング内に配置されていてもよい。
【0035】
図1を再び参照すると、第1及び第2薬剤20、22それぞれのボーラス投与を提供すべく、単一のボーラス駆動機構62が用いられている。このボーラス駆動機構62は、歯付きのラック66と、歯付きラック66の歯と係合するツメ68とを有するラチェット64を備える。歯付きラック66は、第1及び第2アーム72、74を備えた2ヘッド式(先端が二つある)ピストンアセンブリ70に連結されており、第1及び第2アーム72、74は、両者に連結された横断アーム76によって互いに間隔をあけて設けられている。図示の例では、ラチェット64の歯付きラック66は、横断アーム76に連結されている。2ヘッド式ピストンアセンブリ70の第1及び第2アーム72、74のそれぞれに、ボーラス駆動ピストン78が連結されている。各ピストン78は、一対のボーラス投与貯留部80のうちの一つの内部チャンバ内に配置されている。ボーラス投与貯留部80は、それぞれ、対応するポンプチャンバ54と流体連通している。
【0036】
動作の際、歯付きラック66に付与された力によって、2ヘッド式ピストンアセンブリ70は前進し、もって、各ボーラス流体貯留部80から対応するポンプチャンバ54へと流体が押し出されて対応する従動ピストン58を移動させ、これにより、対応する第1及び第2薬物貯留部12、14から第1及び第2薬剤20、22の両方がボーラス投与される。歯付きラック66には、ユーザが押下すると歯付きラック66を所定距離だけ前進させるようなボーラス作動ボタンが連結されていてもよい。あるいは、そのようなボーラス作動ボタンは、ユーザが押下すると、ツメ68を所定距離だけ前進させるとともに歯付きラック66をも同じ所定距離だけ強制的に前進させるように、ツメ68に連結されていてもよい。このような構成においては、更なるボーラス投与を提供すべくツメ68を再度前進させることができるように、活性位置までツメ68を歯付きラック66に対して後退させるために、副次的な機構を用いてもよい。いずれの場合においても、ラチェット64のツメ68は、歯付きラック66が一度前進したら後ろへ移動しないようにする。また、ラチェット64のツメ68は、例えば基礎流体貯留部52からポンプチャンバ54へ流体が移動することによって生じるいかなる液圧増加によっても、歯付きラック66が後ろへ移動しないようにする。
【0037】
上記の通り、流体投与装置10は、二つの異なる薬剤20、22を収容する二つの別個の流体貯留部12、14を備える。図示の例では、各薬剤20、22を患者へ投与するために、別個の針32、34が設けられている。しかしながら、第1及び第2薬剤20、22それぞれを投与するのに単一の針を設けることも本開示の範囲内である。そのような実施形態については、以降、より詳細に説明する。
【0038】
ここで図2を参照する。流体投与装置110は、上記の流体投与装置10に類似している。したがって、同様の参照符号を用いて同一又は同様の構成要素を示してある。流体投与装置110は、第1ボーラス貯留部180内に配置された第1ボーラスピストン178を備える。このボーラスピストン178は、ボーラスピストン78よりも大きい。具体的には、第1ボーラスピストン178の直径D1は、第2ボーラスピストン78の直径D2よりも大きい。したがって、ボーラスピストン178の表面積の方が第2ボーラスピストン78よりも大きい。第1及び第2ボーラスピストン78、178間の大きさの差に起因して、2ヘッド式ピストンアセンブリ70の移動に応答して、第1及び第2薬剤20、22のそれぞれについて異なったボーラス投与(例えば、異なった投与薬剤量ないし分量)が施される。
【0039】
換言すると、ピストン78、178を一緒に移動させることにより、各ボーラス貯留部80、180から異なる量の流体が移動して、第1及び第2貯留部12、14それぞれに関連づけられた従動ピストン58に作用する。これにより、貯留部14に関連する圧力に比して、貯留部12に関連するピストン58により大きな圧力が作用することになる。その結果、第2薬剤22のボーラス投与と比べて、第1薬剤20の方がより大きなボーラス投与が行われる。したがって、ボーラス駆動機構62の2ヘッド式ピストンアセンブリ70を徐々に移動させていくと、第1薬剤20の方が第2薬剤22よりも多く患者に投与させることとなる。
【0040】
多くの事例において、例えば第1の量の第1薬剤を第2の量の第2薬剤と一緒に投与するのが好ましい場合がある。したがって、ボーラス駆動ピストンの大きさを変えることによって、ボーラス投与において投与される二つの薬剤の比を変えることが可能となる。換言すると、患者に投与する二つの薬剤間のボーラス投与比を任意かつ所望のものとするために、本明細書に記載の各流体投与装置のボーラスピストンの大きさを変えることも、本開示の範囲内である。
【0041】
以降より詳細に説明するように、第2薬剤とは異なるレートで第1薬剤を基礎投与するために、流体投与装置に関連する他の構成要素(例えば駆動ピストンや流れ規制部等)の大きさを変更することもできる。ここでも、第1及び第2薬剤の基礎投与レート間の比を所望のものにするために、どの寸法を適宜設定してもよい。
【0042】
ここで図3を参照すると、別の流体投与装置210が示されている。ここでも、流体投与装置210は、上記の装置10、110に類似している。したがって、同様の参照符号を用いて同様の構成要素を示してある。流体投与装置210は、第1ボーラス駆動機構280及び第2ボーラス駆動機構282を備える。第1及び第2ボーラス駆動機構280、282は、それぞれ、歯付きのラック66と、歯付きラック66の歯と係合するツメ68とを有するラチェット64を備える。また、ボーラス駆動機構280、282は、それぞれ、歯付きラック66の一端部に連結され且つ対応するボーラス流体貯留部80の内部チャンバ内に配置されたピストン78を備える。このような構成ゆえ、各薬剤20、22のボーラス投与に関連する機能は、別々のボーラス駆動機構280、282によって互いに独立して動作する。
【0043】
したがって、動作の際、ボーラス駆動機構280、282は、互いに独立して作動して、それぞれ別個のボーラス駆動機構280、282の歯付きラック66を別々に前進させることができ、これにより、ユーザは、一方の薬剤20、22のボーラス投与を提供しつつ他方の薬剤20、22のボーラス投与を行わないことが可能になる。例えば、ユーザが第1ボーラス駆動機構280を作動させると第1薬剤20のみのボーラス投与が提供され、第2ボーラス駆動機構282を作動させると第2薬剤22のみのボーラス投与が提供される。もちろん、各歯付きラック186を同時に前進させることのできる単一のアクチュエータ(不図示)によってボーラス駆動機構280、282を作動させてもよい。
【0044】
ここで図4を参照すると、流体投与装置310が図示されている。投与装置310は、上記の投与装置10、110、210に類似している。したがって、同様の参照符号を用いて同様の構成要素を示してある。流体投与装置310は、コイルばね48及び基礎駆動ピストン50を有する単一の基礎駆動機構346を備える。基礎流体貯留部352が、第1及び第2薬物貯留部12、14のそれぞれに関連づけられた対応するポンプチャンバ54の両方と流体連通している。図示の例では、流体貯留部352と、第1貯留部12に関連するポンプチャンバ54との間に第1の流れ規制部356が配置され、流体貯留部352と、第2貯留部14に関連するポンプチャンバ54との間に第2の流れ規制部358が配置されている。図示の例では、第1流れ規制部356は、第2流れ規制部358の上流に配置されている。しかしながら、第2薬剤と関連する流れ規制部が第1薬剤と関連する流れ規制部の上流に配置された同様の流体投与装置や、あるいは、二つの流れ規制部が互いに並列な流体投与装置を提供することも本開示の範囲内である。換言すると、第1及び第2基礎駆動機構それぞれと関連する流れ規制部の位置ないし配置は、所望の通りに変更することができる。
【0045】
流体投与装置310の単一の基礎駆動機構346は、第1及び第2薬剤20、22の両方についての基礎投与を駆動する。したがって、コイルばね48が基礎駆動ピストン50を前進させうるように駆動機構346を作動させると、両方の従動ピストン58も前進することになる。図示の例では、各流れ規制部356、358、各ポンプチャンバ54、各ピストン58及び各薬物貯留部12、14は概ね同じ大きさ(直径ないし幅や、長さを含む)に図示されている。このような構成ゆえ、第1及び第2薬剤20、22の基礎投与レートは、概ね同じか類似したものになる。しかしながら、どちらかの薬剤20、22に関連する一以上の上記構成要素の一以上の寸法を変更することで、第1薬剤20を第1基礎投与レートで投与しつつ、第1基礎投与レートとは異なる第2基礎投与レートで第2薬剤22を投与することのできる流体投与装置が提供されることが理解されるべきである。このようなケースにおいては、単一の基礎駆動機構を用いて異なる基礎投与レートが提供される。
【0046】
本開示の別の態様によれば、図4の流体投与装置310に類似した流体投与装置(不図示)が、同様に、第1及び第2薬剤20、22それぞれの基礎投与を提供するのに単一の基礎駆動機構を備えうる。しかしながら、その流体投与装置は、単一の流れ規制部を介して単一のポンプチャンバと連通する基礎流体貯留部を備えうる。概ねY字形状のピストン(不図示)の末端部を当該単一のポンプチャンバ内に受容しつつ、間隔をおいて設けられた当該Y字状ピストンのアームを、それぞれ、各薬剤20、22を収容した流体貯留部12、14内に受容することができる。
【0047】
このような構成ゆえ、駆動機構は、例えばシリコーン油等の作動流体を基礎流体貯留部から流れ規制部を介してポンプチャンバへと排出するよう動作して、Y字状ピストンの末端部に作用させる。Y字状ピストンにかかる力によって、ピストンは、貯留部12、14から第1及び第2薬剤20、22を排出することとなる。このような流体投与システムにおいては、単一のボーラス駆動機構によって、各第1及び第2薬剤のボーラス投与を作動させてもよい。また、ピストンの各アームの大きさを互いに異ならせたり、断面の表面積を互いに異ならせたりすることで、二つの薬剤20、22間で異なる基礎投与及び異なるボーラス投与が提供される。
【0048】
図示の例では、図4に示す流体投与装置310は、第1及び第2薬剤20、22の両方のボーラス投与を提供するために、図1及び図2に示したものと同様の単一のボーラス駆動機構62を備える。しかしながら、図4に示した単一の基礎駆動機構346と、図3に示したのと同様の別個のボーラス駆動機構280、282とを備えた、図5Aに示す流体投与装置410のような流体投与装置を提供してもよい。
【0049】
また、図5Bに示す流体投与装置450は、図5Aに示した流体投与装置410に類似している。例えば、当該装置450は、同様に、単一の基礎駆動機構346を備えて第1及び第2薬剤20、22それぞれの基礎投与を提供するとともに、二つの別個のボーラス駆動機構280、282が第1及び第2薬剤20、22それぞれのボーラス投与を提供する。しかしながら、図示の例では、二つの流れ規制部356、357によって、基礎流体貯留部352と、第1貯留部12に関連づけられたポンプチャンバ54とが流体接続されている。基礎流体貯留部352と、第2貯留部14に関連づけられたポンプチャンバ54との間には、流れ規制部358が一つだけ設けられている。流れ規制部356、357を二つ設けることによって、基礎流体貯留部352から作動流体(不図示)を第1貯留部12に関連づけられたポンプチャンバ54へ余計に流入させることができる。このような構成ゆえ、第1貯留部12に関連づけられた駆動ピストン58に対して、第2貯留部14に関連づけられた駆動ピストン58に対して作用する圧力よりも大きな圧力が働くことになる。その結果、第2薬剤22の基礎投与に比して、大きな量で(即ち、大きな投与レートで)第1薬剤20の基礎投与が提供されることとなる。流体貯留部352といずれかのポンプチャンバ54とをつなぐ流れ規制部を任意の数だけ備える他のシステムも提供することができる。
【0050】
上述の通り、各流体投与装置10、110、210、310、410、450は、第1薬剤20の基礎投与及びボーラス投与の両方を提供することができるとともに、第2薬剤22の基礎投与及びボーラス投与の両方を提供することができる。このような機能は、これらの装置10、110、210、310、410、450の各種機能を様々に組み合わせることによって達成することができる。例えば、流体投与装置10は、二つの別個の基礎駆動機構と、第1及び第2薬剤20、22両方のボーラス投与を提供可能な単一のボーラス駆動機構とを備える。一方、図3の流体投与装置210は、二つの別個の基礎駆動機構と、二つの別個のボーラス駆動機構とを備える。図4の流体投与装置310は、一つの基礎駆動機構及び一つのボーラス駆動機構のみを備え、一方で、図5a及び図5bの流体投与装置は、単一の基礎駆動機構と、二つの別個のボーラス駆動機構とを備える。
【0051】
上記の通り、図2の流体投与装置110では、単一のボーラス駆動機構62を使用して第1及び第2薬剤20、22それぞれにつき異なるボーラス投与を提供するために、第1及び第2貯留部12、13それぞれに関連づけられたボーラス駆動ピストン178、78の表面積の寸法を異ならせることが示されている。先述の通り、第1及び第2薬剤20、22の基礎投与及び/又はボーラス投与が互いに異なるような装置を提供するために、各流体投与装置10、110、210、310、410、450のその他多くの構成要素の寸法を変更してもよい。
【0052】
ここで図6及び図7を参照すると、流体投与装置510、610が示されている。流体投与装置510、610は、図1〜図5bにて上述した流体投与装置と本質的には似ている。したがって、同様の参照符号を用いて同様の構成要素を示してある。各流体投与装置510、610は、一つの薬剤――図示の例では第1薬剤20――のみについて基礎投与を提供する。換言すると、図6及び図7に示す流体投与装置510、610は、いずれも、第2薬剤22の基礎投与を提供しない。しかしながら、両薬剤20、22のボーラス投与は提供される。このような構成は、一方の薬剤についてのみ基礎投与が必要だが、両薬剤のボーラス投与が望ましい場合のように、第1及び第2薬剤を種々組み合わせて使用するのに有益な場合がある。もちろん、流体投与装置510、610を、代わりに、第2薬剤22のみの基礎投与を提供するように構成してもよい。
【0053】
まず、図6を参照する。流体投与装置510は、第1薬剤20の基礎投与を提供するための一つの基礎駆動機構46を備える。また、流体投与装置510は、第1及び第2薬剤20、22それぞれのボーラス投与を提供するための一つのボーラス駆動機構62を備える。図7の流体投与装置610は、第1薬剤20の基礎投与を提供するための一つの基礎駆動機構46を備える。また、流体投与装置610は、第1薬剤20のボーラス投与を提供するための第1ボーラス駆動機構280と、第2薬剤22のボーラス投与を提供するための第2ボーラス駆動機構282とを備える。もちろん、第1及び第2薬剤20、22のボーラス投与が互いに異なるような装置を提供するために、流体投与装置510、610の多くの構成要素の寸法を変更してもよい。
【0054】
ここで図8及び図9を参照すると、流体投与装置710、810が示されている。各流体投与装置710、810は、上述した流体投与装置と似ている。したがって、同様の参照符号を用いて同様の構成要素を示してある。図8及び図9に示す流体投与装置710、810は、第1及び第2薬剤20、22の基礎投与を提供するが、第2薬剤22についてのみボーラス投与を提供する。第1薬剤20については、ボーラス投与機能は設けられていない。もちろん、第1薬剤20のみについてボーラス投与を提供しうるように流体投与装置710、810の構造を変更してもよい。このような構成は、患者に対して二つの異なる薬剤の基礎投与を行いつつ、二つの薬剤のうちの一方についてのみボーラス投与を提供することが望ましい場合に有益となりうる。
【0055】
まず、図8を参照する。流体投与装置710は、第1薬剤20の基礎投与を提供する第1基礎駆動機構46と、第2薬剤22の基礎投与を提供する第2基礎駆動機構60とを備える。単一のボーラス投与機構282が、第2薬剤22のボーラス投与を提供する。図示の例では、ボーラス流体貯留部80は、第2貯留部14に関連づけられたポンプチャンバ54と流体連通している。このような構成ゆえ、ボーラス駆動ピストン78を前進させるべくボーラス駆動機構282の歯付きギヤ66を前進させると、従動ピストン58に圧力が働いて従動ピストン58が押し進められ、ボーラス量分の第2薬剤22が針34を通じて投与される。
【0056】
流体投与装置710同様、図9に示す流体投与装置810は、第1及び第2薬剤20、22の基礎投与を提供するが、第2薬剤22についてのみボーラス投与を提供する。第1及び第2薬剤20、22の両方の基礎投与は、単一の基礎駆動機構846を用いて提供される。第1流れ規制部856が、基礎流体貯留部52と第1薬物貯留部12に関連づけられたポンプチャンバ54とを流体接続する一方で、第2流れ規制部858が、基礎流体貯留部52と第2薬物貯留部14に関連づけられたポンプチャンバ54とを流体接続する。
【0057】
また、図示の例では、基礎駆動機構846は、両ポンプチャンバ54及び第1及び第2薬剤20、22を含む第1及び第2薬物貯留部12、14の間に位置づけられている。このような構成ゆえ、どちらの流れ規制部856、858が相手に対して上流ないし下流に配置されているということはない。ここでは単一の基礎駆動機構846が設けられているが、流体投与装置810が、例えば図4や図5に示した単一の基礎駆動機構346を備えることも本開示の範囲内である。流体投与装置810のボーラス駆動機構282は、第2薬剤22についてのみボーラス投与を提供する。もちろん、第1及び第2薬剤20、22の基礎投与が互いに異なるような装置を提供するために、流体投与装置710、810の多くの構成要素の寸法を変更してもよい。
【0058】
ここで図10及び図11を参照すると、本開示にかかる流体投与装置910、1010が示されている。装置910、1010は、上述した流体投与装置と似ている。したがって、同様の参照符号を用いて同様の構成要素を示してある。流体投与装置910、1010は、それぞれ、第1及び第2薬剤20、22の両方について、基礎投与のみを提供する。したがって、まず図10を参照すると、流体投与装置910は、第1及び第2薬剤20、22それぞれの独立した基礎投与を提供するために、対応する第1及び第2薬物貯留部12、14に関連づけられた第1及び第2基礎駆動機構46、60を備える。第1及び第2薬剤20、22のどちらについても、ボーラス機能は設けられていない。図示の例では、図10の流体投与装置910は、二つの別個の基礎駆動機構46、60を用いて第1及び第2薬剤20、22の基礎投与を提供する。しかしながら、例えば図11の流体投与装置1010に示すように、第1及び第2薬剤20、22の基礎投与を提供するために、単一の基礎駆動機構846を用いてもよい。ここでも、図11の装置1010に対しては、ボーラス投与機能は設けられていない。もちろん、第1薬剤20の基礎投与が第2薬剤22の基礎投与とは異なるような装置を提供するために、流体投与装置910、1010の多くの構成要素の寸法を変更してもよい。
【0059】
ここで図12及び図13を参照すると、本開示にかかる流体投与装置1110、1210が示されている。装置1110、1210は、上述した流体投与装置と似ている。したがって、同様の参照符号を用いて同様の構成要素を示してある。各流体投与装置1110、1210は、第1及び第2薬剤20、22の両方についてボーラス投与のみを提供し、第1及び第2薬剤20、22のどちらについても基礎投与は提供しない。したがって、まず図12を参照すると、流体投与装置1110は、第1及び第2薬剤20、22それぞれのボーラス投与を提供するために、対応する第1及び第2薬物貯留部12、14それぞれに関連づけられた一つのボーラス駆動機構62を備える。第1及び第2薬剤20、22のどちらについても、基礎投与機能は設けられていない。ここで図13を参照すると、流体投与装置1210は、第1及び第2薬剤20、22それぞれについて別々にボーラス投与を提供するために、対応する第1及び第2薬物貯留部12、14それぞれに関連づけられた第1及び第2ボーラス駆動機構280、282を備える。ここでも、第1及び第2薬剤20、22のどちらについても、基礎投与機能は設けられていない。もちろん、第1薬剤20のボーラス投与が第2薬剤22のボーラス投与とは異なるような装置を提供するために、流体投与装置1110、1210の多くの構成要素の寸法を変更してもよい。例えば、図5bの流体投与装置450に示すように、一方又は両方のボーラスピストン78の大きさないし直径を変更してもよい。
【0060】
ここで図14を参照すると、流体投与装置1310は、第2薬剤22の基礎投与と、第1薬剤20のボーラス投与を提供する。図示の例では、第1薬剤20については基礎投与が提供されず、また、第2薬剤22についてはボーラス投与が提供されない。このような構成は、第1薬剤の基礎投与のみが望まれ、第2薬剤の補足的なボーラス投与のみが望まれる場合に有益となりうる。例えば第1薬剤20についてのみ基礎投与を提供し、第2薬剤22についてのみボーラス投与を提供することができる流体投与装置を提供することも本開示の範囲内である。図示の例では、図14に示す流体投与装置1310は、第1流体貯留部12に関連づけられたボーラス駆動機構280と、第2流体貯留部14に関連づけられた基礎駆動機構60とを備える。
【0061】
上述した流体投与装置10、110、210、310、410、510、550、610、710、810、910、1010、1310、1410は、それぞれ、例えば流れ規制部56、356、357、358、856、858等の流れ規制部によって一以上のポンプチャンバ54に流体接続された一以上の基礎流体貯留部52、352を備える。図示の例では、流体貯留部52、352はそれぞれ内部チャンバを画成し、特定の基礎駆動機構の対応する基礎駆動ピストン50がその内部チャンバ内に配置されている。しかしながら、一以上のポンプチャンバと流体連通するその他各種の基礎流体貯留部を設けることもできる。例えば、図15及び図16を参照すると、油等の作動流体を含む可撓な風船状の流体投与貯留部1452をそれぞれ備えた流体投与装置1410、1510が示されている。
【0062】
具体的に図15を参照すると、第1及び第2流体貯留部12、14のうちの一つにそれぞれ関連づけられた二つの別個の流体投与貯留部1452が設けられている。また、各基礎流体貯留部1452から流れ規制部56を介してポンプチャンバ54へと流体を押し進めるために、代替の基礎駆動機構1446が設けられている。図示の例では、基礎駆動機構1446は、それぞれ、対応する可撓な基礎流体貯留部1452に連結された蝶番式の板状部材1450を備える。蝶番式板状部材1450は、作動流体を貯留部1452から流れ規制部を介してポンプチャンバ54へと押し進めて駆動ピストン58を前進させて例えば第1薬剤20の基礎投与を提供するために、ばね1460やその他の外力によって圧縮されうる。蝶番式板状部材1450及びばね1460が開示されているが、可撓な基礎流体貯留部1452を圧縮するための他の好適な駆動機構を設けることも本開示の範囲内である。
【0063】
図15に示すように、第1及び第2基礎駆動機構1446、1460は、第1及び第2薬剤20、22それぞれの基礎投与を提供するために、対応する可撓な基礎流体貯留部1452を圧縮するよう動作する。あるいは、図16に示す流体投与装置1510の単一の基礎駆動機構1446が、第1及び第2薬剤20、22の両方の基礎投与を提供すべく動作する。
【0064】
例示的に、本明細書に開示した流体投与装置は、いずれも、図15や図16に示すような蝶番式板状部材と圧縮可能な流体貯留部を備える基礎及び/又はボーラス駆動機構を備えてもよい。また、流れ規制部を通じて流体を押し進めるための他の好適な駆動機構を設けることも本開示の範囲内である。例えば、ガス式の駆動機構によって、例えば本明細書に記載した基礎・ボーラス駆動ピストン等のピストンに力を作用させたり、可撓性の膜に力を作用させて流れ規制部を通じて作動液を押し進めこれにより投与すべき薬剤を前進させたりする、例えば酸素等のガスを生成してもよい。あるいは、このような可撓性の膜は、針やその他同種の輸液機器を通じて薬剤を直接押し進めるものであってもよい。また、ばねにより圧縮されたベローズクランクや、一対のローラのセットや、作動流体を(例えば流体貯留部から)流れ規制部を介してポンプチャンバへと押し進め、それにより薬物投与チャンバ内の可動なバリアーに対して圧力を作用させて当該薬物投与チャンバの孔を通じて当該薬物投与チャンバから少なくとも幾らかの流体を排出させるための他の機構を設けてもよい。
【0065】
ここで図17を参照すると、流体投与装置1610が示されている。流体投与装置1610は、上述した流体投与装置と似ている。したがって、同様の参照符号を用いて同様の構成要素を示してある。先述の実施形態の従動ピストン58の代わりに、流体投与装置1610の可撓性部材1658が用いられている。可撓性部材1658は、ボーラス流体貯留部80、又は、流れ規制部56を介して基礎流体貯留部52からポンプチャンバ54へ押し進められた作動流体から付与される圧力に応答して変形することができる。可撓性部材1658が薬物貯留部12内へ変形することにより、貯留部12内の第1薬剤20は針32を通じて押し出される。
【0066】
例示的に、この可撓性部材1658及び先述の実施形態に記載したピストン58は、どちらかの薬剤20、22と、圧力を作用してくる作動流体との間のバリアー機構として働く。本明細書においてはピストン58及び可撓性部材1658を具体的に開示したが、薬剤20、22と作動流体とを隔てるその他同様の好適なバリアー機構を設けることも本開示の範囲内である。そのようなバリアー機構の少なくとも一部は、流体貯留部から薬剤を押し出すために、流体貯留部の外壁に対して流体貯留部の内部チャンバ内を移動することができる。その他各種のバリアー機構は、その開示内容を参照により本明細書に援用する米国特許第6,969,324号及び米国特許出願公開公報第US2005/0119618号により詳細に記載されている。
【0067】
上述した流体投与装置は、いずれも、第1薬剤20を含む貯留部12と流体連通した第1の針32と、第2薬剤22を含む貯留部14と流体連通した第2の針34とを備える。別個に設けられたこれらの針32、34は、第1及び第2薬剤20、22が一旦患者の皮下に導入されたらそれらの薬剤が混じり合ったりコミングルしたりするのを防止するために、所望の距離だけ互いに間隔をおいて設けられていてもよい。例えば二つの薬剤間に適合性の問題がありうる場合には、例えば薬剤の患者への投与前、投与中及び投与後に二つの異なる薬剤が混じり合うことを一切防止するのが望ましい場合が多い。したがって、針32、34は、二つの薬剤を患者に投与する際の薬剤間の距離を最大にするために、各流体投与装置の両端部に配置してもよい。
【0068】
上記に加えて、あるいは上記に代えて、例えば図18に示すように、第1の針32は、第2の針34の投与アーム42よりも相当長い投与アーム142を備えてもよい。このような構成ゆえ、第1の針32の投与アーム142は、第2の針34の投与アーム42よりも、患者の皮下により深く挿入されることとなる。このような場合、第1薬剤20は、第2薬剤22が投与される皮下深度とは異なる皮下深度にて患者に投与される。患者に対して針32、34の投与端を挿入する深度を変えることによって、第1及び第2薬剤20、22を一旦患者に注入した後にそれらが混じりあうことを実質的に防止することができる。
【0069】
したがって、例示的には、第1及び第2薬剤20、22を別々に投与するために別個の針32、34を用いることができる。二つの薬剤20、22の適合性が問題となりうる場合には、薬剤20、22の患者への投与中及び投与後に薬剤20、22が混じり合うことを実質的に防止するために、針32、34を適当な距離だけ互いに間隔をおいて設けてもよい。薬剤20、22の投与中又は投与後に薬剤20、22が混じり合うことを更に防止するために、上記に加えて、あるいは上記に代えて、針32、34を患者に対して異なる深度で挿入してもよい。
【0070】
図18を再び参照すると、図示の例では両方の針32、34を収容する針カバーボタン200が設けられている。このような構成ゆえ、ユーザないし患者が針カバーボタン200を作動させると、両方の針32、34は同時に作動することとなる。図示の例では、動作の際、針32、34は、第1の非作動時位置(不図示)に配置されており、もって、各針32、34の取込みアーム40は、対応する各栓24、28から間隔をおいて配置されている。また、各針32、34の投与アーム142、42は、流体投与装置の外側ハウジング(不図示)内に収容されている。針をその作動時位置まで移動するには、ユーザは、ボタン200を押下して両針32、34を下降させ、これにより、例えば図1〜17に示すように、各針32、34の取込みアーム40が対応する各栓24、28を穿孔して、第1及び第2薬剤20、22をそれぞれ含む中空チャンバ26と流体連通するようにする。また、作動時位置では、各針32、34の投与アーム142、42の遠位端38は、患者の皮下への配置のために、投与装置の外側ハウジングを越えて延出する。図18には単一の針カバーボタン200を示したが、各針32、34を別々に作動させうるように、各針32、34それぞれに関連づけられた別個の針カバーボタンを設けることも本開示の範囲内である。
【0071】
ここで図19を参照すると、本明細書に開示した一以上の投与装置にて使用可能な概ね「Y字形状」の針232が示されている。図示の例では、針232は、単一の投与アーム242と、当該投与アーム242から間隔をおいて、図示の例ではこれと平行に設けられた第1取込みアーム244と、同様に当該投与アーム242から間隔をおいて、図示の例ではこれと平行に設けられた第2取込みアーム246とを備える。第1及び第2横断アームないし連結アーム248、250が、それぞれ、取込みアーム244、246を投与アーム242に連結する。各アーム242、244、246、248、250を通じて延在する連続した通路を画成すべく、針232にはカニューレが挿入されている。作動時位置では、各取込みアーム244、246の第1端部36は、本明細書に開示した各流体投与装置の対応する第1及び第2の栓24、28の外壁を介して受容される。したがって、針232が作動時位置にある場合、各取込みアーム244、246の第1端部36は、各栓24、28の中空チャンバ26内に配置される。針232の投与アーム242の第2端部38は、患者へ第1及び第2薬剤20、22を投与するために、患者の皮下へ挿入するために設けられている。
【0072】
図示の例では、針232は、患者への投与の前に第1及び第2薬剤20、22を互いに混合することが可能となる。例えば、第1薬剤20は、針232の取込みアーム244に進入して、横断アーム248に沿って投与アーム242まで移動しうる。同様に、第2薬剤22は、針232の取込みアーム246に進入して、横断アーム250に沿って移動して、投与アーム242内の第1薬剤20と混じり合ってもよい。この針232は、投与装置に含まれる第1及び第2薬剤20、22が互いに適合性があり患者への投与前に混合されてもよいような投与装置において用いられうる。もちろん、別個の基礎・ボーラス投与機構を用いる場合、第1薬剤20のみ又は第2薬剤22のみが針232を通じて投与される場合もありうる。
【0073】
本明細書では、互いに混合可能な適合性のある薬剤での使用のために「Y字形状」の針232を開示したが、各薬剤が、それらが貯蔵されている流体貯留部を離れた後に互いに混じり合うことを可能にする他の適当な針を用いてもよいことを理解すべきである。例えば、Y字形状は、T字形状を包含することを意図していることを理解すべきである。また、例示的に、図19に、カバーボタン252が示されている。このボタン252は、それがユーザないし患者により押下ないし作動されるまでは針232を覆って非作動時位置に維持するためのものである。また、カバーボタン252を押下した際、針232は、作動時位置へ移動して、第1及び第2貯留部12、14からそれぞれ対応する取込みアーム244、246へ流体が進入することを可能とする。
【0074】
本開示の一態様によれば、流体投与装置は、複数の異なる薬剤を収容し投与するために、複数の薬物貯留部を備えてもよい。例えば、図1〜図17に示した上記流体投与装置は、第1及び第2貯留部12、14に収容された第1及び第2薬剤20、22を備えるが、第3貯留部に収容された第3薬剤を有する流体投与装置を設けることも本開示の範囲内である。第3薬剤を含む第3貯留部には、別個の、又は共用の基礎駆動機構を関連づけてもよく、また、第3薬剤を含む第3貯留部には、別個の、又は共用のボーラス駆動機構を関連づけてもよい。また、各薬剤を別々に又は一緒に投与すべく、別個の針又は共用の針を各第1、第2及び第3薬剤に関連づけてもよい。同様に、それぞれ別個の流体貯留部に含まれる四つ以上の薬剤を有する流体投与装置を設けることも本開示の範囲内である。
【0075】
本開示の別の態様によれば、本明細書に開示した投与装置は、比較的コンパクトで、携帯可能で、使用中はユーザないし患者に固定可能であるとともに、その後、処置完了時に廃棄することができる。もちろん、携帯不能で廃棄不能な他の同種の投与装置も本開示の範囲内に含まれる。
【0076】
本開示の更に別の態様によれば、本明細書に記載した流体投与装置は、二つの異なる薬剤20、22を投与するのに適している。ある実施形態においては、第1及び第2薬剤20、22は、共存症状態において起こりうる二つの異なる疾病の治療に適するよう選択される。別の実施形態では、第1及び第2薬剤20、22は、単一の疾病において現われうる二つの異なる症状の治療に適するよう選択される。別の実施形態では、第1及び第2薬剤20、22は、これら二つ以上の薬剤を組み合わせることが検討されうる、又は望ましい同一の疾病及び/又は症状を治療するのに適するように選択される。
【0077】
別の実施形態では、例えば、第1又は第2薬剤20、22の一方が、望ましくないあるいは好ましくない副作用ないし他の弊害を生じ、第1及び第2薬剤20、22のうちの他方が、当該副作用ないし弊害を調節、改善、ないし緩和させるような疾病状態の治療に適するよう選択される。
【0078】
別の実施形態では、第1又は第2薬剤20、22の一方の薬効ないし性能が、第1又は第2薬剤20、22のうちの他方を併用することで向上ないし改善するような疾病状態の治療に適するよう選択される。薬効の促進は、相加的又は相乗的であってもよく、あるいは、第1又は第2薬剤20、22の一方を使用するのに伴いうる感作、脱感作又は耐性を治したり調節しうる。このように薬効を促進・改善することで、その薬効ないし性能が向上された薬剤の総量を減らすことが可能になるものと理解されている。
【0079】
本明細書に記載した装置が、従来の手段によっては単一の投薬形態では投与できなかった二つの薬剤を対にすることが可能となりうることが理解される。例えば、化学的不適合性、安定性の要件の差、異なる調合要件や、薬効のために必要なその他の最適化パラメータに起因して、従来の単一投与形態では特定の薬剤を対にすることができない場合がある。また、第1及び第2薬剤20、22の比を変更する柔軟性が必要なため、従来の単一投与形態では特定の薬剤を対にすることができない場合がある。従来の投与形態では固定比が要求されることが示唆されている。また、所定の期間にわたって交互に投与することが要求される複雑な投薬計画に起因して、従来の単一投与形態では特定の薬剤を対にすることができない場合がある。上記では薬物を対にすることについて説明したが、これらの態様は、三つ以上の薬剤を投与するよう構成された本明細書に記載の投与装置の実施形態にも等しく適用されることも理解すべきである。
【0080】
ある実施形態では、本明細書に記載した装置は、I型及びII型の糖尿病を含む糖尿病や、糖尿病性の症状や、糖尿病状態を治療するための薬剤を投与するのに適している。
【0081】
ある実施形態では、第1又は第2薬剤20、22は、インスリン又はインスリンアナログであり、他方の薬剤20、22は、インスリン又はインスリンアナログの性能を改善するか、その副作用プロフィールを軽減すべく選択される薬物である。第1及び第2薬剤20、22が、それぞれ、インスリンとそのアナログを意味していてもよいことを理解すべきである。例えば、本明細書で用いられる「インスリンアナログ」とは、プロインスリン、プレインスリン、及び挿入、欠失、又は置換等によって各種アミノ酸で改変したインスリンを含む。本明細書に記載した装置は、ボーラス及び/又は基礎投与の有無、ボーラス投与の相対サイズ、基礎投与の相対レートや、その他の特徴に関して各種のオプションを含む。したがって、本装置の幾つかの実施形態では、インスリン又はインスリンアナログが第1薬剤20であるが、別の実施形態では、インスリン又はインスリンアナログが第2薬剤22である。したがって、本明細書を通じて用いられる「第1薬剤20」及び「第2薬剤22」の文言は、本明細書に記載した装置の異なる構成や実施形態については、その薬剤を区別することができるようにしつつ、相互に入れ替え可能である。
【0082】
別の実施形態では、第1又は第2薬剤20、22として、天然及び合成のインスリン及びインスリンアナログを使用することができる。ある態様では、使用するインスリンは、自然発生的なもの――例えば自然発生的なヒトインスリン及びそのアナログ等――であり、組換え法を用いてバクテリア等の他の生物から産生されたものを含むが、これに限定されない。別の態様では、使用するインスリンは、合成インスリン、又はインスリン配列における挿入、欠失、若しくは交換等のアミノ酸鎖の改変を含む改変型インスリンである。例示的には、インスリンは、リスプロインスリン、アスパルトインスリン、グラルギンインスリン、デテミルインスリン等である。また、インスリンは、ヒトやその他のソースからの各種インスリンのアミノ酸挿入体、アミノ酸欠失体、及びアミノ酸置換体を含むが、これに限定されない。このような改変はA鎖又はB鎖において可能であると理解されている。例示的には、本明細書における薬剤20、22としては、B鎖上のAsp28を例えばPro28又はLys28で置換したインスリン、B鎖のLys29をPro29又はGlu29で置換したインスリン、B鎖を例えばArg31又はArg31−Arg32で伸長したインスリン、A鎖上のAsn21を例えばGly21で置換したインスリン、B鎖上のAsn3を例えばLys3で置換したインスリンや、類似の改変体を含みうる。
【0083】
別の態様では、本明細書において薬剤として使用されるインスリンは、ヒューマリン(HUMULIN)L、ヒューマリンN、ノボリン(NOVOLIN)N、ノボリンR等の中間型インスリンを含むが、これらに限定されない。別の態様では、本明細書において薬剤として使用されるインスリンは、アピドラ(APIDRA)、ヒューマログ(HUMALOG)、ヒューマリンR、ノボリンR、ノボログ(NOVOLOG)等の速効型インスリンを含むが、これらに限定されない。別の態様では、本明細書において薬剤として使用されるインスリンは、ヒューマリンU、ランタス(LANTUS)等の持続型インスリンを含むが、これらに限定されない。別の態様では、本明細書において薬剤として使用されるインスリンは、ヒューマログミックス(HUMALOG MIX)75/25、ヒューマリン50/50、ヒューマリン70/30、ノボリン70/30、ノボログミックス(NOVOLOG MIX)70/30等の各種インスリンの調合剤を含むが、これらに限定されない。
【0084】
ある変形例においては、薬剤20、22の両方がインスリンである。第1薬剤20が或るインスリンで、第2薬剤22が別のインスリンであるような構成を用いることにより、特定の患者に対してより多様なインスリン調合剤を投与しうることが理解される。即入手可能なプレミックス・インスリンがあまり望ましくない、あるいは、インスリンを混合することが望ましくないような様々な患者の部分母集団のニーズに適するようインスリンを選択することができることが理解される。別の態様では、第1のインスリンが、例えばヒューマリンU、ランタス等の持続型インスリンであり、第2のインスリンが、本明細書に記載したような中間型又は短時間型のインスリンである。ある構成においては、第1及び第2薬剤20、22の両方が、基礎的な態様ではなく、主としてボーラス的な態様で、あるいはボーラス的な態様でのみ、患者に対して投与されるよう装置が選択される。そのような構成においては、例えば、持続型インスリンが1日1回のボーラス量で投与され、短時間型又は中間型のインスリンが食事時間に対応するボーラス量で投与されうることが理解される。ある変形例においては、短時間型又は中間型のインスリンを基礎的な態様でも投与しうるものと考えられ、また別の変形例では、短時間型又は中間型のインスリンを、食事時間と対応するように短時間にわたり基礎的な態様で投与することが考えられる。
【0085】
代替の実施形態では、当該他方の薬剤20、22は、薬剤として使用されるインスリン又はインスリンアナログの薬効増強、性能改善又は副作用プロフィールの軽減のために含まれていてもよい。このインスリン薬効増強ないし性能改善のための機序は、内因性インスリン産生の改善、インスリン耐性又はインスリン非感受性の軽減、周辺組織によるインスリン及びグルコース利用の改善、周辺組織によるグルコースの取込み量の増加、肝臓を含むがこれに限定されない特定の器官からの内因性の糖の産生量の減少又は産生速度の低下や、胃腸における糖の吸収量の減少又は吸収速度の低下等を含むどのようなものであってもよい。
【0086】
ある構成においては、当該他方の薬剤は、グルカゴン様ペプチド(GLP)等のインクレチン、インクレチン擬態剤やインクレチンアナログ、GLP−1アナログ、エクセナチド(アミリン社及びリリー社のバイエッタ(BYETTA))、エクセンジン−4(Extendin-4)等である。インクレチン擬態剤及び/又はインクレチンアナログは、血漿グルコース濃度の上昇に応答してインスリン分泌を促進させる天然型のペプチドであるグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)と似たように作用しうるものであり、補助薬として含まれうる。GLP−1系は、高い血漿グルコース濃度下でのみインスリン分泌を増加させ、これにより絶食中にインスリン濃度が不適切に高くなることを防止するものと理解されている。インクレチンは、グルコース依存性インスリン分泌を促進させ、循環系への放出に引き続きその他の血糖降下作用を発現しうるものと理解されている。また、インクレチンは、低血糖症に応答するグルカゴン放出を妨害することなく、食後の高血糖期間中の血清グルカゴンのピーク値を落ち着かせうる。また、インクレチンは、胃排出速度を低下させ食物摂取を減らし、これにより食後の高血糖関連事象(hyperglycemic events)の重症化の可能性を軽減するという有益な二次効果を有しうる。ある実施形態においては、本明細書に記載した装置は、約5〜10マイクログラムの範囲内の1日投与量のバイエッタを含む。このような構成においては、注射部位――あるいは、必要に応じてその近傍――において二つの薬剤が実質的に混じり合わないように、薬剤20、22を含む各貯留部のそれぞれについて別個の針を備える装置が選択されうることが理解される。
【0087】
別の構成においては、当該他方の薬剤は、プラムリンチド(アミリン社のシムリン(SIMLYN))等のアミリンペプチドである。インスリンの欠乏は、アミリン欠乏と並行して起こりうるものと理解されている。アミリンは、腸から血液への血中グルコース吸収(blood glucose absorption)を和らげる効果を有する可能性があり、これにより、食事由来のグルコース流入が減速・管理され、膵臓におけるグルカゴン分泌が制御され、結果として肝臓におけるグルコース産生が規制される。このような構成においては、注射部位――あるいは、必要に応じてその近傍――において二つの薬剤が実質的に混じり合わないように、薬剤20、22を含む各貯留部のそれぞれについて別個の針を備える装置が選択されうることが理解される。
【0088】
別の構成においては、当該他方の薬剤は、ビグアニド又はビグアニド複合薬である。ある例示的な態様では、ビグアニドは、メトホルミン(グルコファージ(GLUCOPHAGE)、フォルタメット(FORTAMET)、リオメット(RIOMET))である。別の例示的な態様では、ビグアニドは、肝臓におけるグルコース産生の阻害剤である。別の態様では、ビグアニドは、胃腸におけるグルコース吸収の阻害剤である。ビグアニドは、肝臓におけるグルコース産生を減少させること、腸におけるグルコース吸収を減少させること、及び/又は周辺におけるグルコースの取込み及び利用を増加させることにより、インスリン療法の薬効を向上させうるものと理解されている。ある変形例においては、本明細書に記載の装置は、上記のような薬剤の、薬学的に許容可能な塩を備える。
【0089】
別の構成においては、当該他方の薬剤は、例えばアカルボース(バイエル社のプレコース(PRECOSE))等のグルコシダーゼ阻害剤である。グルコシダーゼ阻害剤は、膵臓及び/又は腸における複合炭水化物のグルコースへの加水分解を減速させることにより、インスリン療法の薬効を向上させうるものと理解されている。
【0090】
別の構成においては、当該他方の薬剤は、例えばアマリール・グリメピリド(アベンティス社のアマリール(AMARYL))、グリブリド(アベンティス社のディアベータ(DIABETA))、グリピジド(ファイザー社のグルコトロール(GLUCOTROL))等のスルホニル尿素、及び同様のインスリン分泌促進薬である。スルホニル尿素は、例えば膵臓ベータ細胞等からの内因性インスリン分泌量を増加させることにより、インスリン療法の薬効を向上させうるものと理解されている。更に、スルホニル尿素は、周辺組織のインスリンに対する感受性を増大させることにより、インスリン療法の薬効を向上させうる。
【0091】
別の構成においては、当該他方の薬剤は、例えばレパグリニド(ノボ ノルディスク社のプランディン(PRANDIN))、ナテグリニド(ノバルティス社のスターリックス(STARLIX))等のメグリチニド、及び同様のインスリン分泌促進薬である。メグリチニドは、ATP依存性カリウムチャネルを遮断することで、例えば膵臓ベータ細胞等からの内因性インスリン分泌量を増加させることにより、インスリン療法の薬効を向上させうるものと理解されている。
【0092】
別の構成においては、当該他方の薬剤は、例えばPPARγ等のペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)のアゴニストである。ある実施形態では、PPARγアゴニストは、チアゾリジンジオン(TZD)インスリン抵抗性改善薬であり、ピオグリタゾン(武田薬品工業株式会社のアクトス(ACTOS))、アバンダメット(AVANDAMET)(グラクソ・スミスクライン社)、マレイン酸ロシグリタゾン(グラクソ・スミスクライン社のアバンディア(AVANDIA))、フェンホルミン、ブホルミン等を含むが、これらに限定されない。TZDインスリン抵抗性改善薬やその他のPPARγアゴニストは、周辺組織や肝臓におけるインスリン抵抗性ないし非感受性を低下させることで、インスリン依存性グルコース処理を増加させるとともに肝臓におけるグルコース産生を減少させることにより、インスリン療法の薬効を向上させうるものと理解されている。本明細書に記載した装置が、PPARα結合作用のない化合物も好適に備えうることが理解される。
【0093】
別の構成においては、上述したような他方の薬剤の調合剤が考えられる。例示的には、調合剤は、TZDインスリン抵抗性改善薬すなわちPPARγアゴニストとビグアニドとの調合剤、例えばマレイン酸ロシグリタゾンを調合したメトホルミン(グラクソ・スミスクライン社のアバンダメット)や、同様の調合剤であってもよい。肝臓における糖新生を抑える他の薬物が単独で又は組み合わされてTZDとともに含まれていてもよいことが理解される。また、腸におけるグルコース吸収を減少させる他の薬物が単独で又は組み合わされてTZDとともに含まれていてもよいことが理解される。また、周辺におけるグルコースの取込み及び利用を増加させることにより、インスリン感受性を改善する他の薬物が単独で又は組み合わされてTZDとともに含まれていてもよいことが理解される。更に、当該調合剤は、インクレチン擬態剤又はインクレチンアナログとビグアニド又はスルホニル尿素との調合剤、例えばメトホルミン又はグリメピリドを調合したエクセナチドや、同様の調合剤であってもよい。更に、当該調合剤は、ビグアニドとスルホニル尿素との調合剤、例えばグリピジドを調合したメトホルミン(ブリストル・マイヤーズ スクイブ社のメタグリップ(METAGLIP))や、同様の調合剤であってもよい。
【0094】
別の構成においては、当該他方の薬剤は、グルカゴン又はそのアナログ等の糖である。本明細書に記載した装置を用いてインスリンを投与する間、低血糖症ないし低血糖状態を引き起こしうる、インスリン投与の影響を和らげる及び/又は軽減することが望ましかったり必要であったりする場合があることが理解される。更に、このような糖の投与は、本明細書に記載した装置の基礎的な機能、あるいは本明細書に記載した装置のボーラス的な機能により制御しうることが理解される。例えば、ある例示的な実施形態においては、処置対象の患者は、低血糖症ないし低血糖状態が発症したときに、糖のボーラス投与を開始してもよい。低血糖症ないし低血糖状態の発症は、血中グルコースストリップ等を含むがこれに限定されない血中グルコース濃度をモニターする従来の方法であればどのようなものを用いても調べられることが理解される。ある変形例においては、低血糖症ないし低血糖状態を示す特定の症状を認識するトレーニング及び/又は経験を通じて、患者自身が低血糖症ないし低血糖状態の発症を知ることができる。また、他の構成においては、どの程度の濃度であってもグルカゴン投与を持続させることがあまり望ましくなく、したがって、本実施形態のある変形例では、糖の投与経路として、主として又は専ら、ボーラス投与を採用することが理解される。
【0095】
別の構成においては、当該他方の薬剤は、インスリン様成長因子(IGF)1若しくは2、又はそのアナログ若しくは誘導体である。IGF−1及び/又はIGF−2は、インスリン投与単独によって引き起こされうる低血糖症及び/又は低血糖状態を軽減するために、インスリン又はそのアナログとともに投与されうるものと理解されている。IGF−1及びIGF−2は、インスリンよりも遥かに低い親和性――例えば、インスリンよりもおよそ10倍、あるいは100倍低い親和性――にてインスリン受容体と結合する。理論に縛られるものではないが、IGF−1若しくはIGF−2、又はそのアナログ若しくは誘導体を併用することにより、インスリン感受性が下げられ、そのためインスリン投与により低血糖症及び/又は低血糖状態が発症する可能性が低下しうることが示唆されている。投与の際、IGF−1及びIGF−2が結合タンパク質と速やかに結合しうるものと理解されている。したがって、本明細書においては、IGF−1及びIGF−2の配位子複合体、並びにそのアナログも考えられる。このような配位子複合体によって、本明細書に記載するように投与されるIGF−1及びIGF−2、又はそのアナログの生体利用効率全体を向上させうる。
【0096】
別の構成においては、当該他方の薬剤は、C−ペプチド又はそのアナログである。内因性インスリン産生及び代謝の際に、プロインスリンがβ細胞において産生され、一旦放出されるとペプチダーゼによって切断されてC−ペプチド断片が放出されるものと理解されている。最終的に、カルボキシペプチダーゼEによりB鎖の末端が切り落とされて成熟インスリンが産生される。C−ペプチドを、第2薬剤として、インスリン又はそのいずれのアナログ若しくは誘導体と併用してもよいことが理解される。理論に縛られるものではないが、C−ペプチドはグルコース代謝の調節やその他の生物学的に重要なプロセスに有用であるから、内因性インスリンを外因性のものと完全に又はほぼ完全に入れ替えてしまうと、C−ペプチドが望ましくない濃度にまで達してしまう可能性があると示唆されている。例えば、神経病は、糖尿病や、その他の糖尿病状態や、グルコース調節異常状態に伴いうる共存症である。よって、C−ペプチドを投与することにより、神経病を治療したり、神経病の進行を遅くしたり、神経病の発症を遅延させたり止めたりしうることが示唆されている。本明細書に記載した装置によれば、C−ペプチドを注射により投与する方法を含む従来の方法よりも、患者コンプライアンスの改善につながりうることが理解される。
【0097】
ある態様においては、C−ペプチド、又はそのアナログ若しくは誘導体は、インスリンに対してモルベースで約1:1の比で――したがって、健康な患者の内生状態を反映して――患者に投与される。別の態様においては、C−ペプチド、又はそのアナログ若しくは誘導体は、インスリンに対してモルベースで1:1よりも少ない比で患者に投与される。後者の実施形態においては、糖尿病や関連する状態を治療するのに、C−ペプチドの濃度をインスリン濃度ほど高く維持する必要はないものと理解されている。更に、C−ペプチド投与によりプラトー効果が起こり、したがって、患者のC−ペプチド必要量は時間とともに減少しうるものと理解されている。したがって、この別の態様においては、C−ペプチド、又はそのアナログ若しくは誘導体は、インスリンに対してモルベースで約4:5、約3:4、約2:3、又は約1:2の比で患者に投与される。
【0098】
更に、第2薬剤がC−ペプチド又はそのアナログ若しくは誘導体である上記実施形態では、その投与は本明細書に記載したいずれの装置を使っても行うことができるものと理解されているが、ある変形例によれば、単一の針を備え、投与前に両薬剤20、22が調合される装置が選択される。別の変形例においては、二つ以上の針を備え、それらのうちの少なくとも二つの針が互いに近接配置され、それにより両薬剤20、22が患者の注射部位において投与直後又は投与後間もなく調合される装置が選択される。
【0099】
別の構成においては、第1及び第2薬剤20、22は、ともに、抗感染化合物である。ある態様においては、抗感染化合物は、例えば、ペニシリン系薬や、カルバセフェム系薬、カルバペネム系薬、セファロスポリン系薬等を含む関連する化合物や、モノバクタム系薬、ポリペプチド系薬、アミノグリコシド系薬、グリコペプチド系薬、バンコマイシン、エリスロマイシンを含むマクロライド系抗生物質、キノロン系薬、スルホンアミド系薬、テトラサイクリン系薬等の抗菌物質である。
【0100】
本明細書に記載した装置において含みうる例示的なアミノグリコシド系薬には、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン等が含まれるが、これらに限定されない。例示的なカルバセフェム系薬には、ロラカルベフ等が含まれる。例示的なカルバペネム系薬には、エルタペネム、イミペネム、シラスタチン、メロペネム等が含まれる。例示的なセファロスポリン系薬には、第1、第2、第3及び第4世代セファロスポリン、例えばセファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン、セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム等が含まれる。
【0101】
本明細書に記載した装置において含みうる例示的なマクロライド系薬には、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン等が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に記載した装置において含みうる例示的なグリコペプチド系薬には、テイコプラニン、バンコマイシン等が含まれる。例示的なペニシリン系薬には、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン等が含まれ、モノバクタム系薬には、アズトレオナム等が含まれる。例示的なポリペプチド系薬には、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB等が含まれる。
【0102】
例示的なキノロン系薬には、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン等が含まれる。例示的なスルホンアミド系薬には、マフェニド、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファサラジン、スルフィソキサゾール、トリメトプリム、バクトリム(BACTRIM)等が含まれる。例示的なテトラサイクリン系薬には、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン等が含まれる。本明細書に記載した装置において含みうる更に別の例示的な抗生物質には、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、フロラムフェニコール(floramphenicol)、クリンダマイシン、エタンブトール、ホスホマイシン、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ニトロフラントイン、リファンピン、スペクチノマイシン、テリスロマイシン等が含まれるが、これらに限定されない。
【0103】
別の実施形態においては、第1及び第2薬剤20、22は、神経伝達物質受容体のアゴニスト又はアンタゴニストである。ある例示的な態様においては、第1薬剤がドーパミン又はドーパミン受容体アゴニストであり、第2薬剤がドーパミン受容体アンタゴニストである。例示的なドーパミン受容体アゴニスト及びアンタゴニストは、その開示内容全体を参照により本明細書に援用するPCT国際出願番号第PCT/US2004/043145号に記載されている。ある態様においては、ドーパミンアゴニストは、ドーパミンD受容体に対して選択的である。別の態様においては、ドーパミンアンタゴニストは、ドーパミンD受容体に対して選択的である。ドーパミンD受容体アンタゴニストの併用により、ドーパミンD受容体アゴニストを含むドーパミン受容体アゴニストの薬効ないし全体としての利益が向上ないし改善されうるものと理解されている。また、ドーパミンD受容体アンタゴニストの併用により、ドーパミンD受容体アゴニストを含むドーパミン受容体アゴニストに関連する副作用が軽減、改善、ないし緩和されうるものと理解されている。
【0104】
本明細書に記載した装置において含みうる例示的なドーパミンD受容体アンタゴニストには、以下の式の化合物及びその薬学的に許容可能な塩が含まれるが、これに限定されない。
【化1】

【0105】
ここで、Rは、水素又はC〜Cのアルキル基であり、Rは、水素、例えばC〜Cのアルカノイル基、ベンゾイル基、ピバロイル基等のアシル基、又は、例えばプロドラッグ等の、置換基を有していてもよいフェニル基若しくはフェノキシ基の保護基であり、Xは、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、又は式−OR基であり、Xが式−OR基である場合、R基及びR基の両者により任意で−CH−基又は−(CH−基を形成することでメチレンジオキシ官能基又はエチレンジオキシ官能基を表しうることを条件として、Rは、水素、C〜Cのアルキル基、例えばC〜Cのアルカノイル基、ベンゾイル基、ピバロイル基等のアシル基、又は、置換基を有していてもよいフェニル基若しくはフェノキシ基の保護基であり、R、R、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素、C〜Cのアルキル基、フェニル基、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、及び−OR基から選択され、Rは、水素、例えばC〜Cのアルカノイル基、ベンゾイル基、ピバロイル基等のアシル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基若しくはフェノキシ基の保護基であり、Rは、水素、C〜Cのアルキル基、フェニル基、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、−OR基から選択され、Rは、Rのうちの少なくとも一つが−ORであることを条件として、水素、例えばC〜Cのアルカノイル基、ベンゾイル基、ピバロイル基等のアシル基、上記に定義した−OR及びX、又は置換基を有していてもよいフェニル基若しくはフェノキシ基の保護基である。
【0106】
本明細書に記載した装置において含みうる例示的なドーパミンD受容体アンタゴニストには、例示的に定型及び非定型の抗精神病薬から選択される抗精神病薬が含まれるが、これに限定されない。非定型抗精神病薬は、一般に、急性の錐体外路系症状――特に異緊張症――を引き起こしにくく、治療に関連する血清プロラクチン濃度の増加が頻繁ではなくその増加量も少ないものと理解されている。ある態様においては、定型抗精神病薬は、フェノチアジン系薬や、ロキサピン、モリンドン等の非フェノチアジン系薬を含む。別の態様においては、非定型抗精神病薬は、クロザピン様薬や、アリピプラゾール、リスペリドン(3−[2−[4−(6−フルオロ−1、2−ベンゾイソオキサゾール−3−イル)ピペリジノ]エチル]−2−メチル−6、7、8、9−テトラヒドロ−4H−ピリド−[1、2−a]ピリミジン−4−オン)、アミスルプリド、セルチンドール(1−[2−[4−[5−クロロ−1−(4−フルオロフェニル)−1H−インドール−3−イル]−1−ピペリジニル]エチル]イミダゾリジン−2−オン)等を含むその他の薬物を含む。フェノチアジン系薬は、クロルプロマジン、フルフェナジン、メソリダジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン及びトリフルオペラジンを含むが、これらに限定されない。非フェノチアジン系薬は、ハロペリドール、ピモジド及びチオチキセンを含むが、これらに限定されない。その他のクロザピン様薬は、オランザピン(2−メチル−4−(4−メチル−1−ピペラジニル)−10H−チエノ[2、3−b][1、5]ベンゾジアゼピン)、クロザピン(8−クロロ−11−(4−メチル−1−ピペラジニル)−5H−ジベンゾ[b、e][1、4]ジアゼピン)、クェチアピン(5−[2−(4−ジベンゾ[b、f][1、4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ]エタノール)、ジプラシドン(5−[2−[4−(1、2−ベンゾイソチアゾール−3−イル)−1−ピペラジニル]エチル]−6−クロロ−1、3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン)等を含むが、これらに限定されない。その他の定型及び非定型抗精神病薬を本明細書に記載したドーパミン受容体アンタゴニストとして使用しうることが理解される。また、各種の定型及び非定型抗精神病薬の組み合わせを使用しうることが理解される。
【0107】
本明細書に記載した装置は、従来の製剤に匹敵する生物学的同等性の濃度で各種の第1及び第2薬剤20、22の1日投与量を投与するよう構成されてもよい。例えば、メトホルミンを、1日あたり500、850、1000又は2000mgの従来の経口投薬に対応するレートにて投与可能である。なお、各装置について本明細書に記載した非経口的ルートによる投与量は、等価の経口投薬形態よりも実質的に小さい場合が多いことが理解されるべきである。例えば、メトホルミンは、経口投薬形態について観測されるピーク血漿濃度(Cmax)を超えない値に対応するレート――例えば約0.5〜約4μg/mLの範囲内――の律動的ないしボーラス投与プロファイルで投与されうる。あるいは、メトホルミンは、Cmaxよりも低く、且つ曲線下面積(AUC)の平均値に対応するレート――例えば約4〜約10μg・h/mLの範囲内――の持続的ないし基礎投与プロファイルで投与されうる。メトホルミンについてのこれらの値やその他の値、及び本明細書に記載したその他の第1及び第2薬剤20、22についての値は、その開示内容を参照により本明細書に援用する「医師用卓上参考書」(トムソンPDR出版、ニュージャージー州モントヴェール(第59版、2005年))(Physicians' Desk Reference, Thompson PDR, Montvale NJ (59th edition, 2005))において上記薬剤の従来の投薬形態について示されている値から求められるか、規定の手法により導出される。
【0108】
本明細書に記載した装置は、従来、製剤の問題や、便宜性や、患者コンプライアンスがあまり期待できないことに起因して1日1回又は2回投与されていた薬剤について、基礎投与、あるいはより頻回且つ低投与量のボーラス投与を行うのに特に適切でありうることが示唆される。したがって、本明細書に記載した装置は、従来の製剤では可能でなかった薬剤の薬物動態(PK)プロファイルを提供(deliver)するよう構成されてもよい。例えば、1日1回の投薬に通常伴う、山と谷を示す(peak-valley)PKプロファイルを、より低い濃度の除放性のPKプロファイルや、山が低く谷が高いより頻回で律動的なPKプロファイルに変換することができる。
【0109】
本開示には、本明細書に記載した装置及び方法の各特徴に起因する多くの利点が存在する。本開示による装置及び方法についての代替的な実施形態は、ここに記載した全ての特徴を備えない場合もあるが、そのような特徴が有する少なくとも幾つかの利点の恩恵を受けることに留意されたい。当業者であれば、本開示の一以上の特徴を備え、本開示の精神及び範疇に包含されるような装置及び方法についての独自の実装例を容易に案出しうるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1薬剤及び第2薬剤を投与するための流体投与装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内にあり、前記第1薬剤を収容するよう構成された第1貯留部と、
前記ハウジング内にあり、前記第2薬剤を収容するよう構成された第2貯留部と、
前記第1貯留部と流体連通するよう構成された第1端部と、前記ハウジングから外部へ延出するよう構成された第2端部とを有する針と
を備える流体投与装置。
【請求項2】
前記第1薬剤の基礎投与を提供するための基礎駆動機構を更に備える、請求項1に記載の流体投与装置。
【請求項3】
前記基礎駆動機構は、前記第2薬剤の基礎投与を提供する、請求項2に記載の流体投与装置。
【請求項4】
前記基礎駆動機構は、第1基礎駆動機構であり、
前記流体投与装置は、前記第2薬剤の基礎投与を提供するための第2基礎駆動機構を更に備える、請求項2に記載の流体投与装置。
【請求項5】
前記第1及び第2基礎駆動機構は、それぞれ、コイルばねと、基礎駆動ピストンと、作動流体貯留部とを備える、請求項4に記載の流体投与装置。
【請求項6】
第1流れ規制部を介して前記第1基礎駆動機構の前記作動流体貯留部と流体連通する第1ポンプチャンバと、第2流れ規制部を介して前記第2基礎駆動機構の前記作動流体貯留部と流体連通する第2ポンプチャンバとを更に備える、請求項5に記載の流体投与装置。
【請求項7】
前記第1流体貯留部内の前記第1薬剤に対して力を作用させるために前記第1流体貯留部内に配置された第1投与ピストンと、前記第2流体貯留部内の前記第2薬剤に対して力を作用させるために前記第2流体貯留部内に配置された第2投与ピストンとを更に備える、請求項6に記載の流体投与装置。
【請求項8】
前記第1薬剤のボーラス投与を提供するためのボーラス駆動機構を更に備える、請求項3に記載の流体投与装置。
【請求項9】
前記ボーラス駆動機構は、前記第2薬剤のボーラス投与を提供する、請求項8に記載の流体投与装置。
【請求項10】
前記ボーラス駆動機構は、第1ボーラス駆動機構であり、
前記流体投与装置は、前記第2薬剤のボーラス投与を提供するための第2ボーラス駆動機構を更に備える、請求項8に記載の流体投与装置。
【請求項11】
前記ボーラス駆動機構は、ラチェットと、前記ラチェットに連結されたボーラスピストンとを備える、請求項8に記載の流体投与装置。
【請求項12】
前記流体投与装置は、前記第1流体貯留部に関連づけられたポンプチャンバを更に備え、
前記ボーラスピストンは、前記ポンプチャンバと流体連通するボーラス流体貯留部内に配置される、請求項11に記載の流体投与装置。
【請求項13】
前記第2貯留部と流体連通するよう構成された第1端部と、前記ハウジングから外部へ延出するよう構成された第2端部とを有する第2の針を更に備える、請求項1に記載の流体投与装置。
【請求項14】
前記第1の針は、前記ハウジングの第1端部に配置され、前記第2の針は、前記ハウジングの第2端部に配置される、請求項13に記載の流体投与装置。
【請求項15】
前記第1の針の投与アームの方が、前記第2の針の投与アームよりも長い、請求項13に記載の流体投与装置。
【請求項16】
前記針は、前記第2貯留部と流体連通するよう構成された第3端部を備える、請求項1に記載の流体投与装置。
【請求項17】
前記針は、概ね「Y字形状」である、請求項16に記載の流体投与装置。
【請求項18】
前記針は、概ね「J字形状」である、請求項1に記載の流体投与装置。
【請求項19】
前記J字形状の針は、前記第1貯留部へ挿入されるよう構成された第1端部と、前記第1端部を前記第1貯留部へ挿入するのと概ね同時に患者へ挿入されるよう構成された第2端部とを備える、請求項18に記載の流体投与装置。
【請求項20】
前記ハウジング内にあり、第3薬剤を収容するよう構成された第3貯留部を更に備える、請求項1に記載の流体投与装置。
【請求項21】
前記第1貯留部内に収容された前記第1薬剤と、前記第2貯留部内に収容された前記第2薬剤とを更に備える、先行する請求項のいずれかに記載の流体投与装置。
【請求項22】
前記第1又は第2薬剤のうちの一方は、インスリン又はインスリンアナログであり、前記第1又は第2薬剤のうちの他方は、インクレチン(incretics)、インクレチン擬態剤、インクレチンアナログ、アミリン、インスリン分泌促進薬、インスリン抵抗性改善薬、肝臓におけるグルコース産生の阻害剤、グルコシダーゼ阻害剤、ATP依存性カリウムチャネル遮断剤、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体アゴニスト、胃腸におけるグルコース吸収の阻害剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含む、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記第1又は第2薬剤のうちの他方の薬剤は、ビグアニドを含む、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記第1又は第2薬剤のうちの他方の薬剤は、グルカゴン様ペプチド−1を含む、請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記第1又は第2薬剤のうちの他方の薬剤は、グルコシダーゼ阻害剤を含む、請求項22に記載の装置。
【請求項26】
前記第1又は第2薬剤のうちの他方の薬剤は、スルホニル尿素を含む、請求項22に記載の装置。
【請求項27】
前記第1又は第2薬剤のうちの他方の薬剤は、メグリチニドを含む、請求項22に記載の装置。
【請求項28】
前記第1又は第2薬剤のうちの他方の薬剤は、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体アゴニストを含む、請求項22に記載の装置。
【請求項29】
前記ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体アゴニストは、チアゾリジンジオンである、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記第1又は第2薬剤のうちの他方の薬剤は、C−ペプチドを含む、請求項22に記載の装置。
【請求項31】
前記第1又は第2薬剤のうちの他方の薬剤は、グルカゴンを含む、請求項22に記載の装置。
【請求項32】
前記第1又は第2薬剤のうちの他方の薬剤は、インスリン様成長因子を含む、請求項22に記載の装置。
【請求項33】
流体投与装置から第1及び第2薬剤を投与する方法であって、
前記第1薬剤について第1基礎投与を行い、
前記第2薬剤について第2基礎投与を行う
ことを含む方法。
【請求項34】
前記第1基礎投与は、前記第2基礎投与とほぼ等しい、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第1基礎投与は、前記第2基礎投与よりも大きい、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記第1基礎投与を行うことは、第1基礎駆動機構を作動させることを含み、前記第2基礎投与を行うことは、前記第1基礎駆動機構を作動させることを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記第1基礎投与を行うことは、第1基礎駆動機構を作動させることを含み、前記第2基礎投与を行うことは、第2基礎駆動機構を作動させることを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記第1薬剤について第1ボーラス投与を行うことと、前記第2薬剤について第2ボーラス投与を行うこととを更に含む、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記第1ボーラス投与は、前記第2ボーラス投与と同等である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記第1ボーラス投与は、前記第2ボーラス投与よりも大きい、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記第1ボーラス投与を行うことは、第1ボーラス駆動機構を作動させることを含み、前記第2ボーラス投与を行うことは、前記第1ボーラス駆動機構を作動させることを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記第1ボーラス投与を行うことは、第1ボーラス駆動機構を作動させることを含み、前記第2ボーラス投与を行うことは、第2ボーラス駆動機構を作動させることを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記第1薬剤のボーラス投与を行うことを更に含む、請求項33に記載の方法。
【請求項44】
流体投与装置から第1及び第2薬剤を投与する方法であって、
(i)作動流体貯留部から第1ポンプチャンバへ作動流体を押し進めて、第1可動バリアーに対して力を作用させ、
(ii)前記作動流体貯留部から第2ポンプチャンバへ作動流体を押し進めて、第2可動バリアーに対して力を作用させ、
(iii)第1ピストンに対して力を作用させて、第1流体貯留部の孔を通じて前記第1薬剤の少なくとも一部を排出し、
(iv)第2ピストンに対して力を作用させて、第2流体貯留部の孔を通じて前記第2薬剤の少なくとも一部を排出する
ことを含む方法。
【請求項45】
前記作動流体貯留部から前記作動流体を押し進めることは、前記作動流体貯留部内のピストンに対してばねの力を付与することを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記作動流体貯留部から前記作動流体を押し進めることは、前記作動流体貯留部から流れ規制部を介して前記第1及び第2ポンプチャンバへ作動流体を押し進めることを含む、請求項44に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−59645(P2013−59645A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−255233(P2012−255233)
【出願日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【分割の表示】特願2009−503245(P2009−503245)の分割
【原出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(508293922)ヴァレリタス,インコーポレイテッド (2)
【住所又は居所原語表記】9 Campus Drive,Second Floor East,Parsippany,NJ 07054 (US).
【Fターム(参考)】