説明

マルチキャスト受信端末およびマルチキャスト受信方法ならびにマルチキャストグループ把握方法

【課題】各家庭に対して同時に配信できるIP放送チャンネル数に上限を設けたIP放送システムにおいて、受信端末が起動時にラストチャンネルとして記憶されているIP放送チャンネルが上限数を超えている時に受信できずにブラックアウトしてしまう。
【解決手段】テレビの受信要求生成部は、起動直後、各チャンネルに相当するマルチキャストグループに対するLeaveメッセージを送信する(S101)ことで、ルータからのQueryメッセージを誘発し、各端末からのメンバーシップレポートを監視・受信して(S102)当該家庭に配信中のマルチキャストリストを作成する(S103)。配信中のマルチキャストの数が上限に達している、かつ、該マルチキャストリストにラストチャンネルに相当するマルチキャストアドレスが含まれていない場合、現在配信中のいずれかのマルチキャストを代わりに受信する(S105)ことで、ブラックアウトを回避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IPマルチキャストを使った通信分野において、特定のLAN(Local Area Network)に対して配信されているマルチキャストアドレスを把握する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
IPネットワーク上で映像コンテンツを提供する放送型サービス(以下、IP放送)は、IPマルチキャスト技術を用いて実現されることが一般的である。なぜならば、IP放送のように同一のデータを同時に多数の端末に対して配信するようなサービスでは、このIPマルチキャストを用いることにより、サーバの負荷、および配信ネットワークの負荷を軽減させることが可能となるためである。
【0003】
IPマルチキャストでは、サーバが1つのIPデータグラムをマルチキャストグループ宛に送信すると、配信ネットワークを構成するルータ群がIPデータグラムを必要な数だけコピーし、当該マルチキャストグループに参加している全ての端末に対してそのIPデータグラムを配信することができる。
【0004】
端末がルータに対して、マルチキャストグループへの参加・離脱を通知するためのプロトコルとして、IGMP(Internet Group Management Protocol)やMLD(Multicast Listener Discovery)が規定されている。IGMPはIPv4で使用されるプロトコルで、MLDはIPv6で使用されるプロトコルである。端末が特定のマルチキャストグループに参加する場合には、IGMPやMLDのJoinメッセージを端末のゲートウェイとなっているルータに対して送信すればよい。反対に、端末が参加中のマルチキャストグループから離脱する場合は、IGMPやMLDのLeaveメッセージを端末のゲートウェイとなっているルータに対して送信すればよい。Joinメッセージ、およびLeaveメッセージには参加・離脱するマルチキャストグループのアドレスが含まれており、Joinメッセージを受信したルータは、当該マルチキャストグループ宛のIPデータグラムをJoinメッセージを送信した端末が設置されているLANに転送する。また、Leaveメッセージを受信したルータは、Leaveメッセージを送信した端末が設置されているLANに対して、当該マルチキャストグループに参加している端末が存在するかどうかをQueryメッセージで問い合わせ、当該マルチキャストグループに参加している端末が1台も存在していなければ、当該マルチキャストグループ宛のIPデータグラムを当該LANに転送するのを中止する。(例えば、非特許文献1および非特許文献2を参照)。
【0005】
ここで、FTTH(Fiber to the Home)やADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)等のアクセス回線を介してIP放送を一般家庭に提供する場合、ネットワーク帯域確保の問題が生じる。IP放送では、地上デジタル放送やBS放送のように1本のTS(Transport Stream)の中に複数のチャンネルを多重するのではなく、1本のTSに1チャンネルのみ含め、そのTSを1つのマルチキャストグループに対応させている。このようにすることで、家庭内のIP放送用の映像受信端末が必要とするチャンネル数に応じた帯域のみ占有すればサービスを受けられるようにしている。例えば、10Mbpsで10チャンネル配信するIP放送の場合、1本のTSに全てのチャンネルを多重する場合は常に100Mbpsの帯域が必要となるが、1本のTSに1チャンネルのみとすると、当該家庭が1チャンネルのみ受信するのであれば10Mbpsの帯域、2チャンネル受信するのであれば20Mbpsの帯域を占有する必要がある。しかしながら、各家庭のアクセス回線が許容できるネットワーク帯域には限界があり、また、IGMPやMLDでは、上述の通り、単純なJoin、Leaveの制御を行なうだけであり、ネットワーク帯域を考慮した映像ストリーム制御を行なうことは出来ない。
【0006】
そこで、ネットワーク上のルータに各家庭に配信するチャンネル数を制限する機能を与え、一家庭に対して配信するチャンネル数に上限値を設け、それ以上のチャンネル配信を制限する方法が考えられている。
【0007】
しかしながら、上記のような方法を用いた場合、以下のような課題があった。すなわち、各家庭のルータにおいてチャンネル数が上限値に達した場合、当該家庭においてはそれ以上のチャンネル数の受信ができなくなるため、IP放送用の映像受信端末は映像チャンネルを受信・再生できず、ブラックアウトしてしまう。特に、IP放送用の映像受信端末が起動直後にブラックアウトしてしまうと、ユーザに故障と判断されてしまう恐れが高いため、何かしらの映像出力を行う必要がある。その対応として、当該家庭に配信されているチャンネルを検索し、映像出力が行えない場合に自動的に受信可能なチャンネルに再選局するという方法が考えられる。
【0008】
当該家庭に配信されているチャンネル、すなわち、家庭内のIP放送用の映像受信端末が参加しているマルチキャストグループを検索する手段として、いくつかの従来例が存在する。
【0009】
一つ目の方法は、当該マルチキャストグループ宛に探索パケット(PINGパケット)を送信する方法である。(例えば特許文献1)。IGMPやMLDでは、当該マルチキャストグループに参加している端末は、当該マルチキャストグループ宛のPINGに応答するよう規定されている。そのため、全チャンネルに対応するマルチキャストグループに対するPINGをIP放送用の映像受信端末が送信し、その応答を検出することで、当該LANに配信されているマルチキャストグループを把握することができる。しかしながら、昨今、ネットワークセキュリティの観点から、マルチキャストグループ宛のPINGに応答しないように推奨する傾向がある。例えば、悪意を持った端末Aが、PINGパケットの送信元アドレスを端末Bのアドレスに詐称してマルチキャストグループへのPINGを行うと、当該マルチキャストグループに参加している端末群は、端末Aではなく端末Bに対してPINGの応答を返してしまう。すなわち端末Bは、DDoS攻撃(Distributed Denial of Service)を受けてしまい、システム障害を起こしてしまう可能性がある。
【0010】
二つ目の方法は、IGMPまたはMLDのQueryメッセージに対する応答であるメンバーシップレポートをIP放送用の映像受信端末が監視する手法である。Queryメッセージはルータが無駄なマルチキャストグループ宛のIPデータグラムを送信していないかどうかを確認するために使用され、Queryメッセージがルータから送信されると、マルチキャストグループに参加している端末は、自分が参加しているマルチキャストグループのアドレスを応答しなければならない。このメンバーシップレポートをIP放送用の映像受信端末が監視することで、当該LANに配信されているマルチキャストグループを把握することができる(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−174201号公報
【特許文献2】特開2006−295339号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】RFC2326 IGMP Version2
【非特許文献2】RFC3810 MLD Version2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記二つ目の方法にも課題が存在する。前述のQueryメッセージは定期的(60秒ごと)に送信されるものであり、IP放送用の映像受信端末が起動した直後にメンバーシップレポートを受信できるという保証が無い。また、ルータの代わりにIP放送用の映像受信端末自身がQueryメッセージを送信することも可能であるが、IGMPおよびMLDでは、同一LANにおいて複数のルータがQueryメッセージを送信しないように防止する機能が備えられており、IP放送用の映像受信端末がQueryメッセージを送信することで、ルータがQueryメッセージを送信しなくなる可能性が生じる。
【0014】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、IP放送用の映像受信端末が要求した当該チャネルの受信ができない場合においても、受信可能なチャネルに自動的に切替えることができるIP放送用の映像受信端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明のマルチキャスト受信端末は、複数のマルチキャスト受信端末が参加可能なマルチキャストグループの総数が上限数以下に制限されたマルチキャストシステムにおけるマルチキャスト受信端末であって、他のマルチキャスト受信端末から送信された、参加中のマルチキャストグループを表明する参加表明メッセージを受信する参加表明メッセージ受信手段と、前回電源が切られる直前に参加していたマルチキャストグループを記憶するラストチャンネル記憶手段と、電源投入時に、前記参加表明メッセージ受信手段が受信した参加表明メッセージが表明する参加中のマルチキャストグループの総数が前記上限数に一致し、かつ、前記ラストチャンネル記憶手段が記憶していたマルチキャストグループが前記参加中のマルチキャストグループに含まれない場合は、前記参加中のマルチキャストグループの何れかに参加することを特徴とするものである。
【0016】
また、電源投入時に、マルチキャストグループからの離脱を表明する離脱メッセージを送信する離脱メッセージ送信手段を備え、参加表明メッセージ受信手段は、前記離脱メッセージ送信手段が前記離脱メッセージを送信したことにより送信されてきた前記参加表明メッセージを受信することを特徴とするものである。
【0017】
また、前記参加表明メッセージ受信手段は、1つ以上のマルチキャストグループのアドレスを格納し、前記受信した参加表明メッセージが表明する参加中のマルチキャストグループの前記アドレスにフラグを付けることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明のマルチキャスト受信方法は、複数のマルチキャスト受信端末が参加可能なマルチキャストグループの総数が上限数以下に制限されたマルチキャストシステムを使用するマルチキャスト受信方法であって、他のマルチキャスト受信端末から送信された、参加中のマルチキャストグループを表明する参加表明メッセージを受信する参加表明メッセージ受信段階と、前回電源が切られる直前に参加していたマルチキャストグループを記憶するラストチャンネル記憶段階と、電源投入時に、前記参加表明メッセージ受信段階で受信した参加表明メッセージが表明する参加中のマルチキャストグループの総数が前記上限数に一致し、かつ、前記ラストチャンネル記憶段階で記憶していたマルチキャストグループが前記参加中のマルチキャストグループに含まれない場合は、前記参加中のマルチキャストグループの何れかに参加する段階とを有するものである。
【0019】
また、本発明のマルチキャストグループ把握方法は、マルチキャスト受信端末が、電源投入時に、ルータ宛に、マルチキャストグループからの離脱を表明する離脱メッセージを送信する段階と、前記離脱メッセージを受信したルータから複数のマルチキャスト受信端末宛に送信したQueryメッセージに応答して他のマルチキャスト受信端末から送信されてきた参加表明メッセージを受信する段階とを有し、前記受信した参加表明メッセージを基に、電源投入時に、他のマルチキャスト受信端末が参加しているマルチキャストグループを把握するものである。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明ではIP放送用の映像受信端末が起動したときに、ラストチャンネルとして設定された当該IP放送チャンネルの受信ができない場合、受信可能なチャンネルを検索し、そのチャンネルに自動選局することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1における映像配信システムの構成図
【図2】本発明の実施の形態1における放送チャンネルとマルチキャストアドレスの対応表600を示す図
【図3】本発明の実施の形態1におけるテレビ500〜502の内部構成図
【図4】本発明の実施の形態1におけるルータ300の内部構成図
【図5】本発明の実施の形態1におけるパケット転送部330の内部構成図
【図6】本発明の実施の形態1におけるチャンネル監視テーブル700を示す図
【図7】本発明の実施の形態1におけるテレビ500〜502の起動時におけるフローチャート
【図8】本発明の実施の形態1における放送チャンネルとマルチキャストアドレスの対応表800を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
(実施の形態1)
はじめに図1〜図6を用いて本発明の前提となるIP放送を行う映像配信システムの構成と基本動作を説明する。本映像配信システムでは、各家庭に対して配信するチャンネル数に上限値2を設けており、3チャンネル以上は配信できないように制限している。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態1における映像配信システムの概要を示したブロック図である。図1において、映像配信サーバ100は、映像コンテンツをIPマルチキャストにより配信ネットワーク200へ送出する機能を備えており、配信ネットワーク200を構成するルータ300〜304のいずれかと接続されている。本実施の形態では、映像配信サーバ100はルータ304と接続されている。テレビ500〜502はIPマルチキャストで送信されるIP放送を受信・再生する機能を備えており、ユーザ宅400〜405の中に1台以上設置されている。本実施の形態では、ユーザ宅400にテレビ500〜502の3台が設置されている。ルータ300〜304は、映像配信サーバ100とユーザ宅400〜405のテレビ500〜502間のIPマルチキャスト通信を制御する機能を備える。本実施の形態では、テレビ500〜502はハブ400aによりルータ300に接続されている。
【0025】
本発明の実施の形態1における映像配信システムでは、映像配信サーバ100は複数の映像コンテンツを時間ごとのプログラムに組み、テレビ放送のようにチャンネル単位で放送している。1つのチャンネルには1つのマルチキャストアドレスが対応しており、映像配信サーバ100は1台で複数のチャンネルを放送する能力を有している。本実施の形態では、映像配信サーバ100は、図2に示す対応表600に示すチャンネルA〜Cの3本のチャンネルを放送している。
【0026】
図2の対応表600では、チャンネルAはマルチキャストアドレス225.1.1.1を用いて配信することが規定されており、チャンネルBにはマルチキャストアドレス225.1.1.2、チャンネルCにはマルチキャストアドレス225.1.1.3が規定されている。この対応表600は、映像配信システム全体として、一意に定まるものであり、テレビ500は、例えば、配信ネットワーク200に接続された映像配信サーバ100又は図示しない他のサーバから取得するなどの方法により、対応表600を取得できるものとする。
【0027】
次に、図3は、テレビ500の構成図である。
【0028】
図3において、制御入力インタフェース(I/F)510は、ユーザからのチャンネル選択、電源のオン/オフ等の制御入力をリモコンにより、又は直接受け付ける手段である。受信要求生成部530は、テーブル格納部520に格納された対応表600を参照して、制御入力I/F510に入力されたチャンネルに対応するマルチキャストアドレスを設定することによりIGMP Joinメッセージを生成し、マルチキャスト通信部540を介してルータ300に対して送信することができる。又、マルチキャスト通信部540はマルチキャストアドレスを用いてルータ300と通信するための手段である。
【0029】
又、応答受信部550はマルチキャスト通信部540により受信されたテレビ500宛のマルチキャストパケットを受信する手段であり、映像コンテンツその他のデータを受信する。デコーダ560は、応答受信部550で受信した各放送チャンネルの映像コンテンツを復号するための手段である。表示部570は、デコーダ560で復号した映像を表示するモジュールである。ラストチャンネル記憶部580は、テレビ500の電源が切られる前に表示していたチャンネルを記憶する手段である。テレビ500の電源が入ると、ラストチャンネル記憶部580に格納されているチャンネルを受信要求生成部530に入力し選局する。マルチキャスト上限数記憶部590は、当該家庭に配信されるマルチキャストの上限数を格納しており、対応表600を取得する方法と同様の方法で取得できる物とする。本実施の形態では上限数2が格納されている。
【0030】
なお、テレビ501、502も同様の構成を有する。
【0031】
次に、図4はルータ300の構成図である。
【0032】
図4において、ユーザ宅用ポート310〜314はユーザ宅400などと接続するためのポートである。本実施の形態ではユーザ宅用ポート310はユーザ宅400に、ユーザ宅用ポート311はユーザ宅401に接続されているものとする。ルータ用ポート320〜321はルータ301など配信ネットワーク200内のルータ群と接続するためのルータ用ポートである。本実施の形態ではルータ用ポート320はルータ301に、ルータ用ポート321はルータ304に接続されているものとする。パケット転送部330はユーザ宅用ポート310〜314およびルータ用ポート320〜321間でのパケット転送を制御している。
【0033】
図5にパケット転送部330の内部構成図を示す。図5において、331はルータ用ポート320,321に接続され、配信ネットワークと通信するためのネットワーク側通信部であり、332はユーザ宅用ポート310〜314に接続され、ユーザ宅と通信するためのユーザ宅側通信部である。333は後述のチャンネル監視テーブル700が保持されるテーブル格納部である。334は、チャンネル監視テーブル700を用いて各ユーザ宅用ポートに配信されるチャンネル数が上限数以下になるように管理するための配信数管理部である。
【0034】
通常マルチキャストパケットは、ネットワーク側通信部331により、ルータ用ポート320から321へ、もしくはルータ用ポート321から320へ転送され続けている。一旦テーブル格納部333のチャンネル監視テーブル700にユーザ宅へ配信すべきマルチキャストが登録されると、ネットワーク側通信部331は該マルチキャストパケットをユーザ宅側通信部332へコピーする。なお、その間もルータ用ポート320と321の間のマルチキャストパケットの転送は継続する。マルチキャストパケットを受け取ったユーザ宅側通信部332は、ユーザ宅用ポート310〜314のうち、該マルチキャストパケットを必要とする全てのポートに該マルチキャストパケットをコピーして配信する。
【0035】
パケット転送部330には、図6に示すチャンネル監視テーブル700が保持される。チャンネル監視テーブル700では、ユーザ宅用ポート番号と配信チャンネル数、および配信しているマルチキャストアドレスが対応付けされている。図6に示すチャンネル監視テーブル700を詳細に説明する。図6によると、ユーザ宅400には現在マルチキャストを何も配信しておらず、ユーザ宅401には1本のマルチキャスト(225.1.1.1)を配信しており、ユーザ宅402には2本のマルチキャスト(225.1.1.1と225.1.1.2)を配信していることを示している。すなわち、各家庭に配信するチャンネルの上限数は2であるため、ユーザ宅402から225.1.1.3のマルチキャストグループへ参加するためのIGMP Joinメッセージを受信したとしても、ルータ300はそのマルチキャスト宛のデータグラムをユーザ宅402に配信しないし、チャンネル監視テーブル700の更新も行わない。
【0036】
なお、以上の構成において、映像配信システムは本発明のマルチキャストシステムに相当し、テレビ500は本発明のマルチキャスト受信端末に相当し、Joinメッセージは本発明の参加表明メッセージに相当し、マルチキャスト通信部540および応答受信部550は本発明の参加表明メッセージ受信手段に相当し、Leaveメッセージは本発明の離脱メッセージに相当し、受信要求生成部530およびマルチキャスト通信部540は本発明の離脱メッセージ送信手段に相当する。
【0037】
以上のような構成を有する本実施の形態の映像配信システムの動作を説明するとともに、これにより本発明の映像受信端末について説明を行う。
【0038】
図7は、本実施の形態におけるテレビ500〜502の起動時におけるフローチャートを示している。はじめに、テレビ501、およびテレビ502はいずれのチャンネルも受信していない時に、テレビ500を起動したものとして説明する。
【0039】
テレビ500は、電源が切れている間は、他のテレビからのメンバーシップレポートを受信することはできない。そこで、テレビ500が起動すると、テレビ500の受信要求生成部530は、テーブル格納部520に格納されている対応表600を取得し、各チャンネルに対応するマルチキャストグループに対するLeaveメッセージをルータ300宛に送信する(S101)。IGMPやMLDの実装によっては、Joinメッセージを送信した後でないと、当該マルチキャストグループに対するLeaveメッセージを送信できない場合もあり、その時は一旦Joinメッセージを送信した後、Leaveメッセージを送信する。
【0040】
テレビ500からのLeaveメッセージを受け取ったルータ300は、各テレビ宛にQueryメッセージを送信する。このQueryメッセージに応答して、他の映像受信端末であるテレビ501,502からメンバーシップレポートが送信される。
【0041】
応答受信部550は、このメンバーシップレポートを監視・受信する(S102)。そして、応答受信部550は、テーブル格納部520に格納されている対応表600に結果を記入するが、テレビ501もテレビ502もいずれのチャンネルも受信していないため、図8(a)に示す対応表(マルチキャストリスト)800を作成する(S103)。図8において、使用フラグが0のときは、当該マルチキャストグループに参加している映像受信端末が存在しないことを示しており、使用フラグが1のときは、当該マルチキャストグループに参加している映像受信端末が存在することを示す。
【0042】
受信要求生成部530は、テーブル格納部520に格納されている対応表800と、ラストチャンネル記憶部580に記憶しているラストチャンネルであるチャンネルCとを照合し、マルチキャストグループが上限数である2を超えるかどうか判断する(S104)。図8(a)に示す対応表800の場合、受信要求生成部530は、チャンネルCが受信可能と判断し、チャンネルCに対応するマルチキャストグループへのJoinメッセージを送信する(S106)。
【0043】
次に、テレビ500がチャンネルAを受信している時に、テレビ501を起動したものとして説明する。
【0044】
テレビ501が起動すると、受信要求生成部530は、テーブル格納部520に格納されている対応表600を取得し、各チャンネルに対応するマルチキャストグループに対するLeaveメッセージを送信する(S101)。
【0045】
応答受信部550は、その他の映像受信端末であるテレビ500、およびテレビ502からのメンバーシップレポートを監視・受信する(S102)。そして、応答受信部550は、テーブル格納部520に格納されている対応表600に結果を記入するが、テレビ500がチャンネルAを受信中であるため、図8(b)に示す対応表800を作成する(S103)。
【0046】
受信要求生成部530は、テーブル格納部520に格納されている対応表800と、ラストチャンネル記憶部580に記憶しているラストチャンネルであるチャンネルCとを照合し、マルチキャストグループが上限数である2を超えるかどうか判断する(S104)。図8(b)に示す対応表800の場合、受信要求生成部530は、チャンネルCが受信可能と判断し、チャンネルCに対応するマルチキャストグループへのJoinメッセージを送信する(S106)。
【0047】
最後に、テレビ500がチャンネルA、テレビ501がチャンネルBを受信している時に、テレビ502を起動したものとして説明する。
【0048】
テレビ502が起動すると、受信要求生成部530は、テーブル格納部520に格納されている対応表600を取得し、各チャンネルに対応するマルチキャストグループに対するLeaveメッセージを送信する(S101)。
【0049】
応答受信部550は、その他の映像受信端末であるテレビ500、およびテレビ501からのメンバーシップレポートを監視・受信する(S102)。そして、応答受信部550は、テーブル格納部520に格納されている対応表600に結果を記入するが、テレビ500がチャンネルA、テレビ501がチャンネルBを受信中であるため、図8(c)に示す対応表800を作成する(S103)。
【0050】
受信要求生成部530は、テーブル格納部520に格納されている対応表800と、ラストチャンネル記憶部580に記憶しているラストチャンネルであるチャンネルCとを照合し、マルチキャストグループが上限数である2を超えるかどうか判断する(S104)。図8(c)に示す対応表800の場合、受信要求生成部530は、チャンネルCが受信不可能と判断し、チャンネルCから受信できるチャンネルAを受信するように切替え(S105)、チャンネルAに対応するマルチキャストグループへのJoinメッセージを送信する(S106)。なお、S105において、チャンネルBを受信するように切替えることも可能である。
【0051】
以上、説明したように、本実施の形態1による映像受信端末によれば、起動直後に受信可能なマルチキャストグループのリストを作成することが可能となる。各家庭ごとに配信可能なチャンネル数の上限を設けたIP放送システムにおいて、映像受信端末が起動直後にブラックアウトしてしまうという事態を避けることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明にかかるIP放送におけるラストチャンネル自動切替方法によれば、映像受信端末起動時にラストチャンネルとして記憶されているIP放送チャンネルの受信ができない場合、受信可能なチャンネルに切替えることができるため、IP放送サービスにおけるトラブルの一要因を除去することが可能となる。
【0053】
また、本発明は端末起動時に、当該LANに配信されているマルチキャストを把握する方法としても有用である。
【符号の説明】
【0054】
100 映像配信サーバ
200 配信ネットワーク
300〜304 ルータ
310〜314 ユーザ宅用ポート
320〜321 ルータ用ポート
330 パケット転送部
331 ネットワーク側通信部
332 ユーザ宅側通信部
333 テーブル格納部
334 配信数管理部
400〜405 ユーザ宅
400a ハブ
500〜502 テレビ
510 制御入力I/F
520 テーブル格納部
530 受信要求生成部
540 マルチキャスト通信部
550 応答受信部
560 デコーダ
570 表示部
580 ラストチャンネル記憶部
590 マルチキャスト上限数記憶部
600 対応表
700 チャンネル監視テーブル
800 対応表

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のマルチキャスト受信端末が参加可能なマルチキャストグループの総数が上限数以下に制限されたマルチキャストシステムにおけるマルチキャスト受信端末であって、
他のマルチキャスト受信端末から送信された、参加中のマルチキャストグループを表明する参加表明メッセージを受信する参加表明メッセージ受信手段と、
前回電源が切られる直前に参加していたマルチキャストグループを記憶するラストチャンネル記憶手段と、
電源投入時に、前記参加表明メッセージ受信手段が受信した参加表明メッセージが表明する参加中のマルチキャストグループの総数が前記上限数に一致し、かつ、前記ラストチャンネル記憶手段が記憶していたマルチキャストグループが前記参加中のマルチキャストグループに含まれない場合は、前記参加中のマルチキャストグループの何れかに参加することを特徴とするマルチキャスト受信端末。
【請求項2】
電源投入時に、マルチキャストグループからの離脱を表明する離脱メッセージを送信する離脱メッセージ送信手段を備え、
参加表明メッセージ受信手段は、前記離脱メッセージ送信手段が前記離脱メッセージを送信したことにより送信されてきた前記参加表明メッセージを受信することを特徴とする請求項1記載のマルチキャスト受信端末。
【請求項3】
前記参加表明メッセージ受信手段は、1つ以上のマルチキャストグループのアドレスを格納し、前記受信した参加表明メッセージが表明する参加中のマルチキャストグループの前記アドレスにフラグを付けることを特徴とする請求項1記載のマルチキャスト受信端末。
【請求項4】
複数のマルチキャスト受信端末が参加可能なマルチキャストグループの総数が上限数以下に制限されたマルチキャストシステムを使用するマルチキャスト受信方法であって、
他のマルチキャスト受信端末から送信された、参加中のマルチキャストグループを表明する参加表明メッセージを受信する参加表明メッセージ受信段階と、
前回電源が切られる直前に参加していたマルチキャストグループを記憶するラストチャンネル記憶段階と、
電源投入時に、前記参加表明メッセージ受信段階で受信した参加表明メッセージが表明する参加中のマルチキャストグループの総数が前記上限数に一致し、かつ、前記ラストチャンネル記憶段階で記憶していたマルチキャストグループが前記参加中のマルチキャストグループに含まれない場合は、前記参加中のマルチキャストグループの何れかに参加する段階とを有するマルチキャスト受信方法。
【請求項5】
マルチキャスト受信端末が、電源投入時に、ルータ宛に、マルチキャストグループからの離脱を表明する離脱メッセージを送信する段階と、
前記離脱メッセージを受信したルータから複数のマルチキャスト受信端末宛に送信したQueryメッセージに応答して他のマルチキャスト受信端末から送信されてきた参加表明メッセージを受信する段階とを有し、
前記受信した参加表明メッセージを基に、電源投入時に、他のマルチキャスト受信端末が参加しているマルチキャストグループを把握するマルチキャストグループ把握方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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