説明

マルチシストロン性ベクター及びそれらの設計方法

本発明は、全般的に、マルチシストロン性ベクター並びに被験者中に免疫応答を誘起可能な、又は抗原を発現する遺伝子又は標的を抑制可能な免疫治療薬として使用するためのそれらの設計及び構築方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本明細書は、2007年5月23日に出願された米国仮出願第60/939,837号に基づく優先権を主張するものであり、該仮出願は、参照によりその全体が本明細書に加えられる。
【0002】
(コンパクトディスクで提出された資料の参照による援用)
本明細書は、電子フォーマットの配列表と共に出願されている。配列表は、2008年5月23日に作られた、20Kbの010_080523_SeqListing_MANNK_058VPC.TXTというタイトルのファイルとして提出した。配列表の電子フォーマット中の情報は、参照によりその全体が本明細書に加えられる。
【0003】
本明細書に開示される発明は、全般的に、マルチシストロン性ベクター並びに被験者に免疫応答を誘起可能な、或いは抗原を発現する遺伝子又は標的を抑制可能な免疫治療剤として使用するためのそれらの設計及び構築方法に関する。
【背景技術】
【0004】
DNAに基づく免疫は、宿主細胞へのプラスミドDNAの導入後にインビボで発現されるタンパク質抗原への免疫応答の誘起を意味する。多くの場合、DNAワクチンの設計は比較的単純である。これらのワクチンはマウスで見込みがあったが、マウスで要求される投与量と比べ、ヒトでの検出可能な免疫応答を惹起するためにより高い投与量のワクチンが必要になりうるので、ヒトでの効力は問題となったままである。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態は、マルチシストロン性ベクター及びそれらの設計方法に関する。本発明の方法及び組成物は、少なくとも2つのシストロンを含むベクターを含むが、第1シストロンは、第1プロモーターと、1種以上の治療薬をコードする第1核酸配列とを含み、第2シストロンは、第2プロモーターと、生体応答調節物質又は前記治療薬の発現に干渉する1種以上のRNA分子をコードする第2核酸配列とを含み、第1配列の発現は第1プロモーターの制御下にあり、第2配列の発現は第2プロモーターの制御下にある。本発明のいくつかの実施形態において、前記ベクターはプラスミドベクター又はウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、第1プロモーターは機能的に連結されたプロモーター/エンハンサー配列である。いくつかの実施形態において、プロモーター/エンハンサー配列は、CMVプロモーター/エンハンサー配列である。
【0006】
本発明のいくつかの実施形態において、生体応答調節物質の発現に干渉する1種以上のRNA分子は、RNAiである。いくつかの実施形態において、生体応答調節物質の発現に干渉する1種以上のRNA分子は、siRNA又はshRNAである。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態において、生体応答調節物質は、免疫応答の制御又は調節、抗原プロセシング及び提示又は遺伝子サイレンシングに関与している。いくつかの実施形態において、免疫応答の制御又は調節に関与している生体応答調節物質は、サイトカイン、ケモカイン、共刺激分子、チェックポイントタンパク質、転写因子及びシグナル伝達分子からなる群から選択される。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態において、抗原プロセシング及び提示に関与している生体応答調節物質は、TAPタンパク質、免疫プロテアソーム、標準プロテアソーム、β2マイクログロブリン、MHCクラスI分子及びMHCクラスII分子からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、遺伝子サイレンシングに関与している生体応答調節物質は、DNAメチル化剤、クロマチン制御分子及びRNA調節分子からなる群から選択される。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態において、抗原プロセシング及び提示に関与している生体応答調節物質は、転写因子T−bet、STAT−1、STAT−4又はSTAT−6である。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態において、抗原プロセシング及び提示に関与している生体応答調節物質は、サイトカインIFN−α、IFN−γ、IL−10、IL−18m、IL−12又はTGF−βである。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態において、抗原プロセシング及び提示に関与している生体応答調節物質は、共刺激因子CD40、B7.1又はB7.2である。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態において、抗原プロセシング及び提示に関与している生体応答調節物質は、チェックポイントタンパク質FOXp3又はB7様分子である。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態において、抗原プロセシング及び提示分子は、MHCクラスI分子、MHCクラスI分子又はTAPタンパク質である。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態において、抗原プロセシング及び提示に関与している生体応答調節物質は、TLR又はTLR下流シグナル伝達分子である。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態において、抗原プロセシング及び提示に関与している生体応答調節物質は、TLR下流シグナル伝達分子MyD88又はNFκ−Bである。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態において、抗原プロセシング及び提示に関与している生体応答調節物質は、LAG−3リガンドである。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態において、抗原プロセシング及び提示に関与している生体応答調節物質は、樹状細胞活性化抑制剤SOCS1である。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態において、抗原プロセシング及び提示に関与している生体応答調節物質は、DNAメチル化剤DMNT1である。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態において、1種以上の治療薬には、免疫治療剤又は免疫原がある。本発明のいくつかの実施形態において、1種以上の治療薬には、遺伝子治療薬がある。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態において、1種以上の治療薬は、腫瘍関連抗原、腫瘍特異性抗原、分化抗原、胎児抗原、癌精巣抗原、発癌遺伝子の抗原、変異した腫瘍抑制遺伝子、染色体転座から生じる独特な腫瘍抗原、ウイルス抗原、及びこれらの断片からなる群から選択される免疫原である。いくつかの実施形態において、免疫原は、腫瘍特異性抗原又はその断片を含む。さらなる実施形態において、治療薬は、Melan−A、チロシナーゼ、PRAME、PSMA、NYESO−1及びSSX−2からなる群から選択される腫瘍抗原である。いくつかの実施形態において、免疫原は、Melan−A26-35、又はそのA27LアナログELAGIGILTV(配列番号1)から基本的になる。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態において、ベクターは少なくとも2つのシストロンを含むが、第1シストロンは第1プロモーター及び1つ以上のMelan−A−エピトープをコードする第1核酸配列を含み、第2シストロンは第2プロモーター及び生体応答調節物質の発現に干渉する1種以上のRNA分子をコードする第2核酸を含むが、第1配列の発現は第1プロモーターの制御下にあり、第2配列の発現は第2プロモーターの制御下にある。いくつかの実施形態において、生体応答調節物質の発現に干渉する1種以上のRNA分子は、Melan−AsiRNAである。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態において、ベクターは、pSEM−U6−Melan−A(配列番号6)である。
【0023】
本発明の実施形態は、同じベクター内で、第1プロモーター、1種以上の治療薬をコードする第1配列、第2プロモーター、及び生体応答調節物質の発現に干渉する1種以上のRNA分子をコードする第2配列を配置する工程を含む、2つのシストロンを含むベクターの設計方法を含むが、第1配列の発現は第1プロモーターの制御下にあり、第2配列の発現は第2プロモーターの制御下にある。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態において、ベクターを設計する方法は、同じベクター内で、第1プロモーター、1種以上の治療薬をコードする第1配列、第2プロモーター、及び生体応答調節物質の発現に干渉する1種以上の薬剤をコードする第2配列を配置する工程を含むが、第1配列の発現は第1プロモーターの制御下にあり、第2配列の発現は第2プロモーターの制御下にあり、第1及び第2プロモーターは、テトラサイクリン応答プロモーター、プロバシンプロモーター、CMVプロモーター、及びSV40プロモーターからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、ベクターはプラスミドベクターである。さらなる実施形態において、ベクターはウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、ベクターは、pSEM(配列番号5又は配列番号6)、pBPL(配列番号7)及びpROC(配列番号8)からなる群から選択されるプラスミドベクターである。いくつかの実施形態において、ベクターはpSEMプラスミドである。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態において、ベクターを設計する方法は、ベクター中に機能的に連結されたプロモーター/エンハンサー配列を配置する工程もさらに含む。いくつかの実施形態において、プロモーター/エンハンサー配列はCMVプロモーターである。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態において、ベクターを設計する方法は、同じベクター内で、第1プロモーター、1種以上の治療薬をコードする第1配列、第2プロモーター、及び生体応答調節物質の発現に干渉する1種以上のRNA分子をコードする第2配列を配置する工程を含むが、第1配列の発現は第1プロモーターの制御下にあり、第2配列の発現は第2プロモーターの制御下にあり、第2配列はRNAiヘアピン型配列である。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態において、ベクターを設計する方法は、レポーター遺伝子、選択マーカー及びベクター中で免疫調節活性又は免疫刺激活性を持つ薬剤からなる群の少なくとも1つを配置する工程を含む。
【0028】
本発明の実施形態は、少なくとも2つのシストロンを含むベクターで形質転換された哺乳動物細胞を含むが、第1シストロンは、第1プロモーターと、1種以上の治療薬をコードする第1核酸配列とを含み、第2シストロンは、第2プロモーターと、生体応答調節物質又は前記治療薬の発現に干渉する1種以上のRNA分子をコードする第2核酸とを含み、第1配列の発現は第1プロモーターの制御下にあり、第2配列の発現は第2プロモーターの制御下にある。
【0029】
本発明の実施形態は、少なくとも2つのシストロンを含むベクターを含む治療薬組成物を含むが、第1シストロンは、第1プロモーターと、1種以上の治療薬をコードする第1核酸配列とを含み、第2シストロンは、第2プロモーターと、生体応答調節物質又は前記治療薬の発現に干渉する1種以上のRNA分子をコードする第2核酸とを含み、第1配列の発現は第1プロモーターの制御下にあり、第2配列の発現は第2プロモーターの制御下にある。いくつかの実施形態において、治療薬組成物は、薬剤的に許容できるキャリアをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0030】
当業者は、以下に示す図面が説明目的のみのものであると理解するであろう。図面は、どのような点でも本教示の範囲を限定するものではない。
【0031】
【図1】図1は、バイシストロン性ベクターの構造及び構築の実施形態を示すが、U6プロモーター及びGFP siRNAに対応するヘアピン型DNA配列を含む断片がCMVプロモーターの遠位端の制限部位に挿入され、pSEM−U6−GFPを生成した。
【図2】siRNAとバイシストロン性プラスミドとの種々の組み合わせのノックダウン効果を表すゲルを示す。
【図3】種々のベクター(pSEM、pSEM―U6−GFP、SEM―U6−Melan−A)が鼠径部リンパ節への直接注入により投与された(1日及び4日に、PBS25μl中の25μgのベクターを各リンパ節に注入、第2クラスターのベクター注入を11日及び14日に投与、次いで、1mg/mlのMelan−A26-35A27Lペプチドを34日及び37日に注入)5群のHHDトランスジェニックマウス(n=10/群)を含む免疫プロトコルの実験構成を表す。
【図4】免疫実験(図3に描写)の結果を棒グラフとして表すが、親プラスミド(pSEM)でのマウスの免疫が、マウスでの検出可能な応答を生み出した(7%Melan−A26-35−特異的CD8+T細胞応答が、プラスミドのみの免疫後に測定された)
【図5】図3に描写及び実施例3に記載のとおり、ベクター(pSEM、pSEM―U6−GFP、SEM―U6−Melan−A)が鼠径部リンパ節への直接注入により投与された5群のHHDトランスジェニックマウス(n=10/群)のそれぞれの平均IFN−γスポットカウントを表す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(定義)
特記されない限り、用語は、関連分野の当業者による従来の使用により理解されるものとする。
【0033】
本明細書では、「マルチシストロン性ベクター」又は「マルチシストロン性コンストラクト」という用語は、少なくとも2つのプロモーター配列を有する変換可能なDNA配列を包含する。マルチシストロン性コンストラクトにおいて、各プロモーター配列はコード配列に機能的に連結され、各遺伝子カセットの発現が対応するリボ核酸の産生をもたらすように、遺伝子カセットを形成する。したがって、マルチシストロン性コンストラクトは、複数の遺伝子カセットを含みうる。本発明の好ましい実施形態は、バイシストロン性ベクター又はバイシストロン性コンストラクトを含む。さらに、「バイシストロン性」ベクター又はコンストラクトへの言及は、「マルチシストロン性」ベクター又はコンストラクトを表し、場合によっては交換可能である。
【0034】
本明細書では、「プロモーター」という用語は、それに機能的に連結されている核酸の発現を制御する核酸配列を意味する。そのようなプロモーターは、その下流にある配列を転写するDNA依存性RNAポリメラーゼに結合するよう機能するので、転写に必要なシス作用配列因子として知られている。
【0035】
本明細書では、「機能的に連結されている」という用語は、第2の核酸分子に結合している第1核酸分子であって、第1核酸分子が第2核酸分子の機能及び/又は発現に影響を与えるように配列されている第1核酸分子を意味する。2つの核酸分子は、単一の連続的なポリヌクレオチド分子の一部のことがあり、隣接することがありうる。例えば、プロモーターは、対象とする連結されたポリヌクレオチド分子の転写をプロモーターが調節する場合、対象とするポリヌクレオチド分子に機能的に連結されている。
【0036】
「エピトープ」という用語は、抗体又は抗原レセプターにより認識される抗原上の部位を意味する。T細胞エピトープは、タンパク質抗原から誘導された短いペプチドである。エピトープはMHC分子に結合し、特定のT細胞により認識される。本明細書に開示される本発明の実施形態に記載されるエピトープは、免疫応答を刺激可能な分子又は物質である。エピトープには、免疫応答を刺激可能なポリペプチド又はポリペプチドをコードする核酸があるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、エピトープは、細胞の表面に提示されているペプチドであって、T細胞レセプター(TCR)と相互作用できるようにクラスIMHCの結合溝に非共有結合で結合しているペプチドがあるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書では、「免疫エピトープ」という用語は、MHCエピトープであり、免疫プロテアソームが圧倒的に活性である細胞上に提示されているポリペプチド断片を意味する。いくつかの実施形態において、「免疫エピトープ」は、1種以上の追加のアミノ酸が横付けされている、上記の定義による免疫エピトープを含むポリペプチドを意味する。いくつかの実施形態において、「免疫エピトープ」は、クラスIMHCに対する公知又は予測される親和性を有する少なくとも2つのポリペプチド配列を有するエピトープクラスター配列を含むポリペプチドを意味する。いくつかの実施形態において、「免疫エピトープ」は、上記の定義のいずれかによる免疫エピトープをコードする核酸を意味する。
【0038】
本明細書では、「ハウスキーピングエピトープ」という用語は、MHCエピトープであり、ハウスキーピングプロテアソーム(「標準プロテアソーム」としても知られる)が圧倒的に活性である細胞上に提示されるポリペプチド断片を意味する。いくつかの実施形態において、「ハウスキーピングエピトープ」は、上記の定義によるハウスキーピングエピトープを含み、1種以上の追加のアミノ酸に横付けされているポリペプチドを意味する。いくつかの実施形態において、「ハウスキーピングエピトープ」は、クラスIMHCに対する公知又は予測される親和性を有する少なくとも2つのポリペプチド配列を有するエピトープクラスター配列を含むポリペプチドを意味する。いくつかの実施形態において、「ハウスキーピングエピトープ」は、上記の定義のいずれかによるハウスキーピングエピトープをコードする核酸を意味する。
【0039】
本明細書では、「遊離配列」という用語は、例えば、直接或いはN末端トリミング又は他の生理学的過程と組み合わせた免疫プロテアソーム及びハウスキーピングプロテアソームプロセシングを含む、プロセシング活性によりエピトープ又はエピトープアナログを遊離可能にする状況を与える、より大きな配列に埋め込まれているエピトープ又はエピトープアナログを含むか、又はコードするペプチドを意味する。
【0040】
本明細書では、「機能的類似性」という用語は、配列が実質的に類似でないかもしれないが、生物学的又は生化学的性質の調査により判断して、些細な点しか参照配列とは異ならない配列を意味する。例えば、2つの核酸は同じ配列に対するハイブリダイゼーションプローブとして有用であるが、異なるアミノ酸配列をコードすることがある。交差反応性CTL応答を誘導する2つのペプチドは、それらが非保存的アミノ酸置換により異なる場合でも機能的に類似である(したがって、実質的な類似性の定義内ではない)。同じエピトープを認識する一組の抗体又はTCRは、どのような構造的差異が存在していても、互いに機能的に類似でありうる。免疫原生の機能的類似性の試験は、「変化した」抗原で免疫し、惹起された応答、例えば、限定はされないが、抗体応答、CTL応答、サイトカイン産生などが標的抗原を認識する能力を試験して実施できる。したがって、2つの配列を、ある点では異なるが、同じ機能を保ったまま設計又は操作できる。開示又は特許請求された配列のそのように設計又は操作された配列バリアントは、本発明の実施形態の中にある。
【0041】
本明細書では、「コードする」という用語は、特定のアミノ酸配列をコードする核酸が、ポリペプチドを特定するコドンからなるか、或いは、翻訳可能な追加配列であって、その存在が転写、翻訳、又は複製の制御に有用であるか、宿主核酸コンストラクトの操作を容易にするのに有用である追加の配列も含みうるように、開放型な用語である。
【0042】
本明細書では、抗原の文脈で使用される場合、「断片」という用語は、完全な抗原の長さの約10%から約99%である抗原の部分を意味し、前記の抗原の部分が、MHC分子に結合し、特定のT細胞により認識されるエピトープを含む。例えば、抗原の断片は、完全な抗原の長さの少なくとも約10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、又は25%でありうる。抗原の断片は、完全な抗原の長さの少なくとも約25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%でもありうる。
【0043】
本明細書では、「発現カセット」という用語は、プロモーター並びに他の転写及び翻訳制御因子、例えば、限定はされないが、エンハンサー、停止コドン、配列内リボソーム進入部位、又はポリアデニル化部位などに機能的に連結されているポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を意味する。カセットは、ある宿主分子から他への移動を容易にする配列を含んでもよい。
【0044】
本明細書では、「エピトープクラスター」という用語は、共有されるMHC制限因子に対する結合親和性を有する2つ以上の公知又は予測されたエピトープを含むネイティブタンパク質配列のセグメントである、ポリペプチド又はそれをコードする核酸配列を意味するが、前記クラスター中のエピトープの密度は、完全なタンパク質配列内の共有されるMHC制限因子に対する結合親和性を有する公知又は予測されたエピトープ全ての密度より大きい。エピトープクラスター及びそれらの使用は、2000年4月28日出願の「エピトープクラスター」という名称の米国特許出願第09/561,571号;全て「抗原提示細胞中のエピトープ同調」という名称の2001年11月7日出願の同第10/005,905号;2001年12月7日に出願の同第10/026,066号(米国特許出願公開第2003−0215425号);2004年7月20日に出願の同第10/895,523号(米国特許出願公開第2005−0130920号);及び2004年7月20日に出願された同第10/896,325号に記載されており、それぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0045】
本明細書では、「ミニ遺伝子」は、免疫応答を活性化するための、核酸配列内にコードされるエピトープの効率的なプロセシング及び提示を促進するための1種以上のポリペプチド断片をコードするcDNAを意味する。ポリペプチド断片は、参照により全体が本明細書に取り込まれている、2004年2月10日に出願の「標的関連抗原のエピトープをコードする発現ベクター及びその設計方法」という名称の米国特許出願第10/777,053号(米国特許出願公開第2004−0132088号)に開示されているとおり、「一連のビーズ」アレイ(すなわち、2つ以上のエピトープ又は少なくとも1つのエピトープ及び少なくとも1つのエピトープクラスター)でも;エピトープクラスター(上述のとおり)でもよい。
【0046】
本明細書では、「標的細胞」は、免疫系の要素により影響を受ける病原性状態に関連する細胞を意味し、例えば、ウイルス又は他の細胞内寄生体に感染している細胞或いは新生物細胞がある。一実施形態において、標的細胞は、本明細書開示のワクチン及び方法により標的にされる細胞である。この定義による標的細胞には、新生物細胞があるが、これに限定されない。
【0047】
本明細書では、「標的関連抗原(TAA)」は、標的細胞中に存在するタンパク質又はポリペプチドを意味する。
【0048】
本明細書では、「腫瘍関連抗原(TuAA)」は、標的細胞が新生物細胞であるTAAを意味する。いくつかの実施形態において、TuAAは、腫瘍微小環境内の腫瘍新生血管系又は他の間質細胞などの、腫瘍の非ガン性細胞に関連した抗原である。
【0049】
免疫原性を最適化し効力を向上できる新しいワクチンの生成が必要とされる。本明細書に開示される本発明の実施形態の前には、DNAワクチン治療は2種以上の治療ペプチド又はタンパク質を発現するバイシストロン性ベクター、或いは、治療ペプチド/タンパク質及び免疫増強剤をコードするバイシストロン性ベクターの使用に集中していた。したがって、バイシストロン性ベクターは、送達された治療ペプチドの発現レベルを上げること及び/又は免疫増強剤の発現により、送達されたペプチドへの免疫応答を有益に制御することにより、免疫応答を上昇させるように意図されていた。対照的に、本明細書に開示される本発明の実施形態は、新しい種類の遺伝子ベクターの提供、並びに予防薬及び/又は治療ペプチドを、生体応答調節物質の発現に干渉する薬剤とともに同時発現するマルチシストロン性プラスミドの設計方法を提供する。新しい種類のベクターは、DNAワクチンの免疫原性並びに疾病又は状態の治療における治療薬としてのそれらの用途を向上させるように設計されている。
【0050】
好ましい実施形態において、マルチシストロン性ベクター実施形態によりコードされる干渉剤は、干渉RNAである。例えばRNAiなどの干渉RNA実施形態は、以前は、DNAワクチン及びDNAワクチン組成物中の成分として使用されていなかった。したがって、本明細書に開示されるベクター及び組成物中の干渉剤としてのRNAiの使用は、当分野に以前は考えられなかった新規な使用を表す。本明細書に開示されるベクター及び組成物は、細胞中に干渉剤(例えばsiRNAなど)を別に同時注入する必要を無くす点で、著しい利点を与える。さらに、本明細書に開示されるベクター及び組成物は、対象とする抗原を発現する抗原提示細胞(APC)を特異的に標的にできる。本明細書に開示される本発明を限定することを望まないが、本明細書に開示されるバイシストロン性ベクターは、免疫応答の調節因子との干渉により免疫治療薬として、及び/又は遺伝子発現のサイレンシング又はアポトーシスの誘起に責任のある細胞成分を阻害又は下方制御することにより遺伝子治療薬として機能できると考えられている。
【0051】
(ベクター/プラスミド)
本明細書中に議論するとおり、本発明の実施形態は、1種以上の治療薬をコードする第1配列及び生体応答調節物質(BRM)の発現に干渉する1種以上の薬剤が発現される第2配列を含む、新しい種類のベクターを提供する。好ましい実施形態において、干渉剤は、RNAi分子のこともある。単一のベクターから2種以上のタンパク質の発現を指示する核酸ベクターは、バイシストロン性又はマルチシストロン性ベクターとして当分野に公知である。シストロンは、単一のポリペプチドをコードする遺伝学的単位として定義される。本明細書でのシストロンは、哺乳動物宿主中で活性であり、その産物が、免疫治療又は遺伝子療法に直接関与する。いくつかの実施形態において、治療薬は、免疫療法で使用するための、1種以上の免疫原性剤のことがある。1種以上の免疫原性剤は、例えば、腫瘍関連抗原などの抗原でありうるが、これに限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、治療薬は、遺伝子治療に使用するための、1種以上の遺伝子治療薬のことがある。
【0052】
いくつかの実施形態において、1つのシストロンは、ペプチドである治療薬をコードし、限定はされないが、例えばMelan−Aミニ遺伝子であってよい。いくつかの実施形態において、第2シストロンは、BRM又は治療薬の発現に干渉する薬剤、例えばRNAi分子などのことがある。したがって、本発明の実施形態において、限定はされないが、例えばガン、慢性疾病及び炎症性疾病などの疾病又は状態の治療のためのバイシストロン性ベクターが提供される。
【0053】
本発明の種々のバイシストロン性ベクター実施形態を設計する際(例えば図1参照)、プラスミド中の治療薬をコードする核酸配列(例えばcDNA)は、細胞、例えば抗原提示細胞(APC)による取り込み時にポリペプチドのためのメッセンジャーRNAの効率よい転写を可能とするプロモーター/エンハンサー配列の制御下に配置される。本発明の実施形態に使用できるプロモーターは当業者に周知である。そのようなプロモーターには、例えば、ウイルスプロモーター及び細胞プロモーターがある。ウイルスプロモーターには、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、アデノウイルス2由来の主要後期プロモーター及びSV40プロモーターがあるが、これらに限定されない。細胞プロモーターの例には、例えば、マウスメタロチオネイン1プロモーター、伸長因子1α(EF1)、MHCクラスI及びIIプロモーター及びT細胞特定性発現のためのCD3プロモーターがあるが、これらに限定されない。
【0054】
いくつかの実施形態において、生体応答調節物質(BRM)の発現に干渉する1種以上の薬剤が発現する核酸配列の制御は、短分子ヘアピン型RNA(shRNA)の発現カセットに使用されるプロモーターにモデル化される。shRNA送達ベクターの発現カセットは、典型的にはRNAポリメラーゼIII(Pol III)プロモーターを使用し、いくつかの実施形態においては、Pol IIプロモーターも使用できる。しかし、shRNA産生のためのPol IIプロモーターの使用には考慮すべき点がいくつかあり、例えば、Pol IIプロモーターとshRNA配列の間の非常に短い距離(約6bp)並びに短いポリアデニル化シグナル(Zhou et al. 2005. Nucleic Acids Res. 33, e62、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる)の両方の必要性;及び効率的な産生のためのPol IIプロモーターとshRNA配列の間のイントロンの必要性(Yang et al. 2004. FEBS Lett. 576: 221-225、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる)である。好ましくは、shRNAの発現の指示に使用されるプロモーターは、H1プロモーター、U6プロモーター又はCMVプロモーターである。本明細書に開示されるバイシストロン性ベクターの設計に使用できる他のプロモーターは、当業者により容易に決定できる。本発明の特定の実施形態は、サイトメガロウイルス由来のプロモーター/エンハンサー配列を利用する(CMVp)。
【0055】
本明細書に開示されるバイシストロン性ベクターの設計実施形態において、コード配列の3’末端でのウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(BGH polyA)は、安定性を増すためのメッセンジャーRNAのポリアデニル化のためのシグナルとして、並びに翻訳のために細胞核から細胞質へ移送するためのシグナルとして提供できる。取り込みの後細胞核中のプラスミド輸送を促進するため、サルウイルス40(SV40)由来の核内移行配列(NIS)をプラスミド骨格に挿入できる。プラスミド設計は、免疫刺激性モチーフを含んでよい。例えば、いくつかの実施形態において、ベクター(図1のpSEM−U6プラスミドに例示されているとおり)は、CpG免疫刺激性モチーフの2つのコピーを、1つはNIS配列に、もう1つはプラスミド骨格に含んでよい。
【0056】
いくつかの実施形態において、バイシストロン性又はマルチシストロン性ベクター中の少なくとも1つのさらなるシストロンはレポーター遺伝子を含む。レポーター遺伝子は当分野に周知であり、ベクターから機能性タンパク質を発現している細胞の検出を促進できる。レポータータンパク質の検出は、直接でも、顕微鏡により、又は顕微鏡無しで、肉眼又は検出器により容易に検出できる有色、発光、蛍光の生成物を生み出す酵素反応用の基質を与えても実施できる。レポーター遺伝子の例には、β−ガラクトシダーゼ、ホタルルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)又はディスコソマ種由来の赤色蛍光タンパク質をコードする遺伝子がある。特定の実施形態において、緑色蛍光タンパク質(GFP)がレポーター遺伝子として使用される。
【0057】
本明細書に議論されるベクター成分を利用し、本発明のいくつかの実施形態は、例えば、pSEM−U6−Melan−A、pSEM−U6−T−bet、pSEM−U6−MyD88、pSEM−U6−SOCSl、pSEM−U6−DMNTl、pSEM−U6−HLA、pSEM−U6−TAPs、及びpSEM−U6−FoxP3など、RNAiを含む種々のバイシストロン性ベクターの設計及び構築を含む。いくつかの実施形態において、治療薬として使用するためのpSEM−U6−Melan−Aバイシストロン性ベクターが提供される。いくつかの実施形態において、pSEMベクター、pROCベクター又はpBPLベクター(参照により本明細書にその全体が取り込まれている米国特許公開第20030228634号に詳細に記載され、pMA2Mと称されている;それぞれ参照により本明細書にその全体が取り込まれている、米国仮特許出願第60/691,579号及び米国特許公開第20030220634号に開示されている)を含むリコンビナントDNAプラスミドワクチンが利用される。本明細書に開示されるpSEMプラスミドは、Melan−A26-35 A27L由来のHLA A2−特異性CTLエピトープELAGIGILTV(配列番号1)及びアミノ酸31〜48及び56〜69にエピトープクラスターを含むMelan−A(配列番号2)の一部(アミノ酸31〜96)を持つポリペプチドをコードする。これらのエピトープクラスターは、参照によりその全体が本明細書に取り込まれている、「エピトープクラスター」という名称の米国特許出願第09/561,571号に先に開示された。Melan−A26-35 A27Nvaのペプチドアナログは、参照によりその全体が本明細書に取り込まれている、どちらも「エピトープアナログ」という名称の米国特許出願第11/156,369号及び米国仮特許出願第60/691,889号に開示されている。pSEMプラスミドは、Melan−Aエピトープの発現及びpAPCによる提示が可能となるようにそれらをコードしている。
【0058】
(免疫療法アプローチ)
本明細書に開示されるマルチシストロン性ベクターは、疾患、疾病、状態又は感染に関連する抗原に向けられた場合、被験者中の免疫応答を誘起又は増強又は刺激することにより、そのような疾患、疾病、状態又は感染を予防又は治療するための免疫療法に効力がある。
【0059】
免疫療法は、宿主免疫系刺激のプロセスにより、能動的にも受動的にも、特異的にも非特異的にもなりうる。いくつかの実施形態において、能動的な免疫療法アプローチが提供される。本明細書に開示される免疫原性マルチシストロン性ベクターは、生体応答調節物質の発現に干渉する1種以上の薬剤と同時発現する、治療タンパク質又はペプチドの効率よく、一過性の、長期持続発現を可能とするが、前記治療タンパク質及び干渉剤は同じベクター内にコードされ、その発現は異なるプロモーターの制御下にある。1種以上の治療タンパク質又はペプチドには、腫瘍関連抗原、腫瘍特異性抗原、分化抗原、胎児抗原、癌精巣抗原、発癌遺伝子の抗原、変異した腫瘍抑制遺伝子、染色体転座から生じる独特な腫瘍抗原、ウイルス抗原、及びこれらの断片などから選択されるが、これらに限定されない免疫原がある。
【0060】
免疫療法用マルチシストロン性ベクターは、免疫化抗原と、免疫応答を調節する分子(IL−10、TGF−β及びFoxP3など)の発現を抑制する1種以上の干渉RNAとを同時発現するベクターを含みうる。そのようなベクターは、特に慢性感染症及びガンにおいて、強力で持続的な免疫を誘起するために重要である。他の例示的なベクターには、免疫化抗原又は寛容化抗原と、炎症誘発経路(STAT、T−bet、NF−κB、TLR、IFN−α、IFN−γ)をブロックする1種以上のsiRNAとを同時発現するプラスミドがあるが、これらに限定されない。そのようなベクターは、例えば自己免疫疾患に関与するものなど、疾病関連タンパク質に対する治療/調節応答又は寛容を誘起できる。いくつかの実施形態において、プラスミド又は他のベクターは、抗原プロセシングのための標準プロテアソームの活性がAPC中で優性になるように、免疫化タンパク質と、免疫プロテアソームの発現を特異的に阻害するsiRNAとを同時発現できる。そのようなベクターは、腫瘍細胞により発現されるエピトープのスペクトルを、より高い程度模し、ネイティブ抗原配列の操作を必要とせずにエピトープ同調を達成するAPCによる2種以上のエピトープの発現を可能にする。このような種類のベクターは、ガン又は他の種類の疾病の予防又は治療に有用なエピトープの同定に使用できる。この種類のベクター戦略は、標的細胞からのエピトープ溶出を含む煩わしい逆免疫方法又は類似の方法の利用を回避することもできる。さらに、そのようなベクターは、より深遠な存在論的欠陥を有するプロテアソームノックアウトマウスを使用する必要を除外する。本明細書に開示される実施形態により与えられる追加のベクターには、予防又は治療タンパク質と、免疫制御分子を標的とする1種又は多数のRNA干渉配列を同時発現するものがある。そのようなベクターは、ベクターの有益な効果(感染症、腫瘍及び炎症性疾患における用途とともに)を増大する目的で最適な組み合わせを定義するためのスクリーニングにおいて貴重である。
【0061】
予備研究は、プロフェッショナル抗原提示細胞(pAPC)に典型的な免疫プロテアソームよりもハウスキーピングプロテアソームによるプロセシングから生じるエピトープを使用して、より効率よいCTL応答が誘起可能であることを示唆している。ハウスキーピングエピトープは、標準又は構成的プロテアソームとも呼ばれるハウスキーピングプロテアソームが圧倒的に活性である細胞においてタンパク質分解プロセシングにより産生されるエピトープである。一般的に、ほとんどの細胞は、プロフェッショナル抗原提示細胞(pAPC)並びに細胞内寄生体、特に急性ウイルス感染症に感染しているほとんどの細胞及び他の方法でインターフェロン誘起遺伝子発現を起こしている細胞を除いては、ハウスキーピングプロテアソームを発現する。これらの細胞では、免疫プロテアソームは、圧倒的なタンパク質分解プロセシング活性を与え、それによりpAPC及び感染した細胞の両方により提示されるエピトープにおける同調を確立し、効率よい免疫制御に導く。しかし、予備的なデータは、細胞が厳密には免疫プロテアソームを発現せず、総プロテアソームの約10〜20%である基礎レベルのハウスキーピングプロテアソームが細胞中に典型的に存在することも示唆している。
【0062】
免疫プロテアソーム活性からハウスキーピングプロテアソームの活性へのシフトを指示し、促進し、又は押し進めるために、本発明のバイシストロン性ベクターを使用できる。ハウスキーピングプロテアソーム活性よりも免疫プロテアソーム活性を主に発現するpAPCは、腫瘍関連抗原と、免疫プロテアソーム活性を阻害し、低下させ、又は排除するRNAiとを同時発現する本発明のバイシストロン性ベクターによりトランスフェクトすることができる。それにより、pAPCはハウスキーピングエピトープを提示し、ハウスキーピングプロテアソームの圧倒的な発現に基づくCTL応答を誘起する。したがって、いくつかの実施形態において、抗原と、免疫プロテアソーム活性を阻害する干渉剤とを同時発現するバイシストロン性ベクターが提供される。免疫プロテアソーム阻害剤の実施形態には、B型肝炎ウイルスのXタンパク質及び免疫プロテアソーム特異性サブユニットに対して向けられたリーダーのない単鎖抗体があるが、これらに限定されない。
【0063】
ペプチドによる免疫化は、細胞傷害性/細胞溶解性T細胞(CTL)応答を起こすことができるが、この応答をさらに増幅する試み(例えば、追加の注入により)は、代わりに、調節T細胞集団の拡大及びその後の観察可能なCTL活性の低下につながることがある。CTL活性に対する調節T細胞の効果を制御するため、いくつかの実施形態において、バイシストロン性ベクターを使用して、これらの細胞の発生及び/又は拡大を制御し、それにより所望の免疫応答を促進又は可能にすることができる。腫瘍関連抗原と、調節T細胞を除去又は下方制御するRNAiとを同時発現するバイシストロン性ベクターをpAPCに導入することにより、腫瘍又はガン内のT細胞活性を、誘起、促進、又は増大することができる。
【0064】
マルチシストロン性ベクター実施形態を利用して、自己免疫の制御のため寛容化されたT細胞集団及び/又は調節T細胞を誘起することもできる。そのような実施形態において、自己抗原と、共刺激シグナル、(シグナル3)、又は炎症誘発性分子を減少又は下方制御するRNAiとを同時発現するバイシストロン性ベクターを使用して、T細胞活性化を弱めることができる。これは、免疫シナプスとの干渉によって達成でき、調節T細胞及び/又は寛容化されたT細胞及び/又はアネルギー状態のT細胞の生成につがなる。
【0065】
先に議論された疾病及び状態の他に、免疫原性マルチシストロン性組成物は、被験者の他の疾病及び/又は状態を治療するために投与できる。そのような疾病及び/又は状態には、例えば、ガンなど細胞増殖性疾病がある。本発明の免疫原性バイシストロン性ベクター組成物実施形態を利用して治療可能なガンには、例えば、非限定的に、メラノーマ、非小細胞肺ガン(NSCLC)又は小細胞肺ガン(SCLC)を含む肺ガン、肝細胞ガン、網膜芽細胞腫、星状細胞腫、神経膠芽腫、白血病、神経芽細胞腫、頭頸部ガン、乳ガン、膵臓ガン、腎臓ガン、骨ガン、精巣ガン、卵巣ガン、中皮腫、子宮頸ガン、消化器ガン、リンパ腫、結腸ガン、膀胱ガン及び/又は血液、脳、皮膚、眼、舌、歯肉のガンがある。
【0066】
本明細書に開示される免疫原性マルチシストロン性ベクター組成物を使用して、ガン以外の細胞増殖性疾病を治療することができる。他の細胞増殖性疾病には、例えば、形成異常症、前ガン性病変(例えば、腺腫性増殖症、前立腺上皮細胞内腫瘍、子宮頚部異形成、結腸ポリポーシス)又は非浸潤性ガンなどがあるが、これらに限定されない。本発明のいくつかの実施形態において、本明細書に開示されるバイシストロン性ベクター組成物は、新生血管系及び/又は間質細胞の疾病又は状態の治療に使用できる。
【0067】
(遺伝子治療アプローチ)
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるマルチシストロン性ベクターは、遺伝子治療にも適用できる。そのような遺伝子治療ベクターは、例えば、干渉RNA技術を利用して、抗原を発現する標的細胞における遺伝子又は複数の遺伝子を抑制するのに適用できる。本明細書に開示される遺伝子治療マルチシストロン性ベクターは、同じベクター内だが異なるプロモーターの制御下にある生体応答調節物質の発現に干渉する1種以上の薬剤と同時発現する治療タンパク質の効率よい安定した発現を可能にする。BRM発現の干渉は、遺伝子発現のサイレンシング又はアポトーシスの誘起に責任がある細胞成分の阻害又は下方制御に通じうる。
【0068】
いくつかの実施形態において、免疫化タンパク質と、DNAメチル化酵素の活性を直接又は間接に抑制する干渉RNAとを同時発現するプラスミドを含む、マルチシストロン性ベクターが提供される。DNAメチル化によりサイレンシングされる種々のクラスの遺伝子には、例えば、腫瘍抑制遺伝子、腫瘍の浸潤及び転移を抑制する遺伝子;DNA修復遺伝子;ホルモンレセプターの遺伝子;及び血管新生を阻害する遺伝子があるが、これらに限定されない。そのような遺伝子治療ベクターは、安定な、持続的な高レベルの導入遺伝子の発現を生じうる。本発明の実施形態は、治療抗原と、アポトーシス経路におけるタンパク質を阻害、減少又は抑制する1種以上のsiRNAとを同時発現するベクターも含むことがある。例えば、そのようなベクターは、対象とする抗原を発現するAPCの半減期を延ばすことがある。
【0069】
さらに、いくつかの実施形態において、導入遺伝子と、先天性免疫の誘起に中心的な役割を果たすdsRNA依存性タンパク質キナーゼR(PKR依存性)機構に干渉する1種以上の阻害因子(例えば、shRNA)との同時発現のためのプラスミド又はウイルスベクターが提供される。そのようなベクターは、より高レベルの、及び/又はより長期の導入遺伝子の発現をもたらすことができる。同様に、クラスI又はクラスIIMHC発現、β2−マイクログロブリン発現、TAP又はプロテアソーム発現に干渉するsiRNAを同時発現するプラスミド又はウイルスベクターは、本明細書に開示される実施形態により提供される。治療導入遺伝子を発現するそのようなベクター、特にインビボ導入率が高い非複製ウイルスベクターは、免疫系による細胞除去の機構を回避できるので、遺伝子治療のための有効な道具となりうる。
【0070】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるバイシストロン性遺伝子治療ベクターは、例えば、ガン及び炎症性疾病などがあるがこれらに限定されない、先に議論された疾病及び状態の治療に使用できる。
【0071】
(RNA干渉(RNAi))
本明細書に開示される本発明の実施形態は、生体応答調節物質の発現に干渉する1種以上の薬剤を含むシストロンを含むバイシストロン性又はマルチシストロン性ベクターを提供する。ベクターが免疫治療薬として作用する実施形態において、1種以上の干渉剤(複数可)を、免疫応答を制御する分子(IL−10、TGF−β、及びFoxP3があるがこれらに限定されない)の発現に対して向けることができる。いくつかの実施形態において、1種以上の干渉剤(複数可)は、例えば、STAT、T−bet、NF−κB、TLR、IFN−α、IFN−γなどがあるがこれらに限定されない分子の発現を阻害することにより、炎症誘発経路を阻害することができる。いくつかの実施形態において、1種以上の干渉剤(複数可)は、抗原プロセシングのための標準プロテアソームの活性がAPC中で優性になるように、免疫プロテアソームの発現を特異的に阻害できる。ベクターが遺伝子治療薬として作用する実施形態において、1種以上の干渉剤(複数可)を使用して、遺伝子発現のサイレンシング又はアポトーシスの誘起に責任がある細胞成分の発現を阻害又は下方制御できる。そのような薬剤は、例えば、干渉RNAである。
【0072】
RNA干渉(「RNA媒介干渉」又はRNAi)は、当業者に周知の機構であり、哺乳類細胞中の特定の遺伝子発現が抑制される機構である。RNAiは、短分子干渉RNA(siRNA)が、相補的RNA分子と二本鎖構造を形成し、その分解を媒介する、保存されたプロセスである。治療用途向けの他のアンチセンス系アプローチに対するRNAiの主な利点は、相補的な転写産物を効率よく標的にできる細胞機構を利用しており、遺伝子発現の非常に強力な下方制御を生み出すことが多い。RNAiの欠点には、タイプIインターフェロン応答の活性化及びインビボでの非効率な送達がある。哺乳類細胞中でRNAiを達成するDNAベクター系アプローチは、インビボでの送達の障害を克服するように作用できる。DNA系RNAiベクターは、ウイルス送達系にも、非ウイルス送達系にも取り込むことができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、干渉RNA又は干渉RNAをコードするshRNAを使用して、生体応答調節物質(生体応答調節物質は、本明細書中で、より詳細に議論される)の発現を調整することができる。したがって、特定の実施形態は、生体応答調節物質の発現を阻害、サイレンシング、低減、下方制御又は除去することにより、生体応答調節物質の発現を調整又は制御できる、1種以上のshRNA、siRNA、ヘアピン型RNAi分子などの因子を提供する。本発明の一態様における、そのようなRNA分子は、抗原、例えば、本明細書中で議論される腫瘍関連抗原に対して向けられる。いくつかの実施形態において、例えば、MART−1/Melan−Aなどの予防薬及び/又は治療薬に対する干渉RNAを包含するshRNAが提供されるが、これらに限定されない。
【0074】
siRNAは、対象とする遺伝の発現の抑制に特異的かつ効果的であるように設計できる。標的配列、すなわちsiRNAが、分解機構を導く対象とする遺伝子(複数可)に存在するそのような配列を選択する方法は、遺伝子又は複数の遺伝子に特異的な配列を含みながら、siRNAのガイド機能に干渉する配列を回避することを対象とする。典型的には、長さが約19から23ヌクレオチドのsiRNA標的配列が非常に効果的である。この長さは、はるかに長いRNAのプロセシングから生じた消化産物の長さを反映している(Montgomery et al, 1998)。
【0075】
siRNAは、直接的な化学合成により;ショウジョウバエ胚溶解物への暴露による長い二本鎖RNAのプロセシングにより;S2細胞から誘導されるインビトロシステムにより作ることができる。細胞溶解物又はインビトロプロセシングの利用は、溶解物からの短い(約21〜23ヌクレオチド)のその後の単離などをさらに含むことがあるが、そのためこの方法は幾分煩わしく費用がかかる。化学合成は、2つの一本鎖RNAオリゴマーを二本鎖RNAにしアニーリングして進行する。そのような化学合成の方法は多様であり、当分野に周知である。この方法論の非限定的な例は、それぞれ参照によりその全体が本明細書に取り込まれている、米国特許第5,889,136号;同第4,415,732号;同第4,458,066号;及びWincottら(1995)により提供されている。
【0076】
それぞれ参照によりその全体が本明細書に取り込まれている、国際公開第99/32619号及び同第01/68836号は、siRNA中に使用するためのRNAは、化学的にも、酵素的にも合成可能であると示唆している。これらの参考文献に開示されている酵素合成は、当分野に公知の(例えば、参照によりその全体が本明細書に取り込まれている、米国特許第5,795,715号を参照)発現コンストラクトの使用及び製造による、細胞RNAポリメラーゼ又はバクテリオファージRNAポリメラーゼ(例えば、T3、T7、SP6)による。前記参考文献中に開示されているコンストラクトは、標的遺伝子の一部に同一なヌクレオチド配列を含むRNAを産生するテンプレートを提供する。これらの参考文献により提供される同一な配列の長さは、少なくとも約25塩基であり、約400又はそれ以上もの塩基の長さにもなりうる。この参考文献の重要な態様は、著者らが、長いdsRNAをsiRNAにインビボで変換する内因性ヌクレアーゼ複合体による、長いdsRNAの約21〜25ヌクレオチドの短い配列への消化を開示していることである。しかし、著者らは、インビトロで転写された21〜25量体のdsRNAの合成及び使用を記載せず、データも示さなかった。RNA干渉でのその使用において、化学的又は酵素的合成されたdsRNAに期待される性質の間に違いは全くない。
【0077】
同様に、参照によりその全体が本明細書に取り込まれている国際公開第00/44914号は、RNAの一本鎖が、酵素的に、又は部分的/全体有機合成により製造可能であると示唆している。好ましくは、一本鎖RNAは、DNAテンプレート、好ましくはクローニングされたcDNAテンプレートのPCR産物から酵素合成され、RNA産物はcDNAの完全な転写産物であり、数百のヌクレオチドを含むことがある。参照によりその全体が本明細書に取り込まれている国際公開第01/36646号は、マニュアル及び/又は自動化手順を利用して、RNAがインビトロでもインビボでも合成できるとの条件で、siRNAが合成される方法に何も制限を設けていない。この参考文献は、インビトロ合成が、内因性DNA(又はcDNA)テンプレート、又はその両方の混合物の転写のためにクローニングされたRNAポリメラーゼ(例えば、T3、T7、SP6)を利用し、化学的にも酵素的にもなることを規定した。やはり、化学的又は酵素的合成されたsiRNAの間に、RNA干渉に使用するための望ましい性質の違いは全くない。
【0078】
RNAi技術の治療用途を利用する際に解決すべき難題は、siRNAを効率よく哺乳類細胞に送達する系の開発である。そのために、RNAポリメラーゼIII(pol III)プロモーターにより促進される短分子ヘアピン型RNA又はステムループRNA構造を発現するプラスミドが設計されてきた(それぞれ参照によりその全体が本明細書に取り込まれている、Brummelkamp et al. 2002. Science 296: 550-553; Paddison et al. 2002. Genes Dev. 16: 948-958参照)。ヘアピン型RNAは、プロセシングを受け細胞中でsiRNAを生じ、それにより遺伝子サイレンシングを誘起する。Pol IIIプロモーターは、それらの転写産物が必ずしも転写後修飾されないので、また哺乳類細胞に導入される場合非常に活性であるので有利である。本明細書に開示される本発明の実施形態に使用される例示的なポリメラーゼIII(pol III)プロモーターは、RNAポリメラーゼIIIプロモーターU6である。
【0079】
(生体応答調節物質)
本明細書に開示されるバイシストロン性プラスミドの実施形態は、生体応答調節物質の発現に干渉する1種以上の薬剤を含む。一般的に、本発明の実施形態は、免疫学的標的又は免疫応答の妨害物を構成するタンパク質の使用を提供する。生体応答調節物質は、免疫抑制的又は免疫賦活的に作用し、限定はされないが例えば、エフェクター応答の促進又は調節T細胞応答の阻害により、免疫応答を調整できる。本明細書に使用するために開示される生体応答調節物質には、さらに、先天性免疫の経路を刺激することにより免疫調整効果を発揮する天然又は合成の有機小分子がある。
【0080】
本明細書に開示される実施形態で使用される生体応答調節物質には、例えば、非限定的に、免疫応答の制御に関与する薬剤、例えば、サイトカイン、ケモカイン、共刺激分子、チェックポイントタンパク質、転写因子、及びシグナル伝達因子など;抗原プロセシング及び提示に関与する薬剤、例えばTAP1及びTAP2タンパク質、免疫又は標準プロテアソーム、β2−マイクログロブリン、及びMHCクラスI又はII分子など;アポトーシス経路の調節に関与する薬剤;遺伝子制御又はサイレンシングに関与する薬剤、例えばDNAメチル化酵素、クロマチン制御分子及びRNA調節分子などがある。例えば、細胞レセプター、サイトカインレセプター、ケモカインレセプター、シグナル伝達因子、又は転写制御因子を、本明細書に記載の文脈においてBRMとして使用できる。
【0081】
いくつかの実施形態において、生体応答調節物質には、例えば、非限定的に、サイトカイン又はケモカイン産生を活性化する分子、例えば、トール様レセプター(TLR)のリガンド、ペプチドグリカン、LPS又はアナログ、イミキモド、非メチル化CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)など;APC上のバクテリアdsDNA(CpGモチーフを含む)及び合成dsRNA(polyI:C)などのdsDNA並びにそれぞれTLR9及びTLR3に結合する先天性免疫細胞などがある。
【0082】
本明細書に開示される本発明の実施形態に有用であると考えられる生体応答調節物質の1種には、先天性免疫の経路を刺激して免疫調整効果を発揮する有機の天然又は合成小分子がある。マクロファージ、樹状細胞及び他の細胞が、いわゆるトール様レセプター(TLR)を保持し、それが微生物上の病原体関連分子パターン(PAMP)を認識することが示されている(Thoma-Uszynski, S. et al, Science 291 : 1544- 1547, 2001; Akira,
S., Curr. Opin. Immunol., 15: 5-11, 2003;それぞれ参照によりその全体が本明細書に取り込まれている)。さらに、いくつかの実施形態において、TLR7及び8への結合により免疫の細胞経路を刺激することが見いだされた、新世代の全く合成による抗ウイルスイミダゾキノリン、例えばイミキモド及びレシキモドなど、TLRに結合する小分子が使用できる(Hemmi, H. et al, Nat Immunol 3: 196-200, 2002; Dummer, R. et al, Dermatology 207: 116-118, 2003;それぞれ参照によりその全体が本明細書に取り込まれている)。
【0083】
微生物成分を検出するレセプターと直接相互作用する生体応答調節物質も、本発明のバイシストロン性ベクターの設計に使用できる。さらに、シグナル伝達経路の下流に作用する分子も使用できる。共刺激分子(例えば、抗CD40、CTLA−4、抗OX40など)に結合する抗体も本発明の実施形態に有用である。いくつかの実施形態において、使用される生体応答調節物質には、例えば、IL−2、IL−4、TGF−β、IL−10、IFN−γなど;又はそれらの産生を活性化する分子があるが、これらに限定されない。他の生体応答調節物質には、例えば、IL−12、IL−18、GM−CSF、flt−3リガンド(flt3L)、インターフェロン、TNF−αなどのサイトカインがあるが、これらに限定されない。さらに、例えば、IL−8、MIP−3α、MIP−1α、MCP−1、MCP−3、RANTESなどがあるがこれらに限定されないケモカインも、本明細書に開示される本発明の実施形態に使用できる。
【0084】
さらに、生体応答調節物質には、T細胞増殖を刺激するB7分子などがあるが、これに限定されない共刺激分子がある。干渉剤(例えばRNAi)は、IL−6、IL−12、IL−18、IFN−アルファ、及びIFN−ガンマなどの炎症誘発性ケモカインに干渉できる。
【0085】
いくつかの実施形態において、生体応答調節物質には、共刺激シグナル、(シグナル3)、又はT細胞活性化に影響する炎症誘発性分子を含むことがある。そのようなBRMに対して向けられる干渉剤は免疫シナプスに干渉し、調節T細胞及び/又は寛容化されたT細胞及び/又はアネルギー状態のT細胞を生み出す。
【0086】
(治療薬)
疾病又は状態を治療又は根絶するための治療DNAワクチンを使用する際、抗原は好ましくは捕捉されプロセシングされてペプチドになり、その後、CTL応答を刺激するために、pAPC表面に位置するクラスIMHCペプチド複合体上に提示される。それにより、CTLは増殖するように誘起され、表面に類似のクラスIMHCペプチド複合体がある標的疾病細胞を探しに体内を再循環する。次いで、これらの複合体を提示している細胞は、CTLの細胞溶解活性により破壊される。標的疾病細胞が、pAPCにより発現される優勢に発現されるプロテアソームを発現しない場合、エピトープは、「同調」しないことがあり、CTLは疾病細胞の表面上の望ましいペプチド標的を見つけることができない。
【0087】
したがって、効果的なDNAワクチンを設計する場合、標的組織上に存在するクラスIMHCペプチド複合体を考慮し捕らえる(account for)ことが望ましい。すなわち、CTLを刺激し標的疾病組織を攻撃するのに使用される効果的な抗原は、疾病組織の表面上に自然にプロセシング及び提示されるものである。腫瘍及び慢性感染症では、これは一般的にCTLエピトープがハウスキーピングプロテアソームによりプロセシングされたものであることを意味する。効果的な治療ワクチンを生成するために、CTLエピトープは、そのようなエピトープがハウスキーピングプロテアソームシステムにより産生されるという知識に基づき、同定される。一旦同定されると、これらのエピトープは、適切にコードされた核酸ベクターにより発現したペプチド又は産物として具体化されているが、これらを使用して宿主中に標的細胞を発現するハウスキーピングプロテアソームに対する治療CTL応答をうまく免疫又は誘起することができる。
【0088】
DNAワクチンを設計する際、考慮する追加の状況は、DNAによる免疫化には、APCがDNAを取り込み、コードされたタンパク質又はペプチドを発現することが必要な点である。したがって、生成したベクターによる免疫時に、APCは刺激されてエピトープを発現し、ついでエピトープが、適切なCTL応答を刺激するために細胞表面のクラスIMHC上に提示される。
【0089】
リンパ節内のプラスミド推進抗原発現の重要性を評価し、プライミングが、プラスミド−TLR相互作用による先天性免疫の活性化により専ら起こるかを研究するため、実験的研究を実施し、免疫応答の誘起に対するMART−1/Melan−A発現の特異的RNA干渉の影響がもしあればそれを調べた。したがって、抗原と、MART−1/Melan−Aに対するRNAiを包含するshRNAとを同時発現する、新規バイシストロン性ベクターの実施形態が設計され、投与された。
【0090】
本明細書に開示されるバイシストロン性ベクターの設計において、本発明の実施形態は、生体応答調節物質の発現に干渉する薬剤と同時発現される予防又は治療タンパク質も提供する。いくつかの実施形態において、抗原を治療薬として使用することができ、生体応答調節物質の発現に干渉する薬剤と同時発現させることができる。本発明の実施形態に使用される抗原には、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド及びそれらの誘導体があるが、これらに限定されず、非ペプチド高分子でもよい。
【0091】
本発明の実施形態において、抗原は、悪性腫瘍又は感染性疾病を有する被験者の免疫系を刺激して腫瘍又は病原体を攻撃し、それによりその成長を阻害し、又はそれを除去し、疾病を治療又は治癒するものである。いくつかの場合において、抗原を、治療される被験者に見いだされる特定の疾病に合わせて、CTL応答を誘起し(細胞媒介免疫応答とも呼ばれる)、それにより、細胞傷害性反応を免疫系により惹起し、標的細胞(例えば、悪性腫瘍細胞又は病原体感染細胞)の溶解をもたらすことができる。
【0092】
本発明の実施形態は、長さが約8〜15アミノ酸のペプチド抗原を利用することができる。そのようなペプチドは、より大きな抗原のエピトープ、すなわちMHC/HLA分子により提示され、例えば抗原レセプター又はT細胞レセプターにより認識可能なより大きい抗原の一部位に対応するアミノ酸配列を有するペプチドでよい。そのようなペプチド抗原は、当業者に利用可能であり、例えば、それぞれ参照によりその全体が本明細書に取り込まれている米国特許第5,747,269号及び同第5,698,396号;1995年7月4日に出願の国際出願第PCT/EP95/02593号;及び1996年2月26日に出願の国際出願第PCT/DE96/00351号に開示されている。追加のエピトープ並びにエピトープ発見の方法は、例えば、それぞれ参照によりその全体が本明細書に取り込まれている米国特許第6,037,135号及び同第6,861,234号に記載されている。
【0093】
一般的な場合にT細胞により最終的に認識される抗原はペプチドであるが、免疫原性製剤として実際に投与される抗原の形態はペプチド自体である必要はない。投与時に、エピトープペプチド又は複数のペプチドはより長いポリペプチド中に含まれてよく、それらは、例えば完全なタンパク質抗原又はそのセグメント或いはそのようなものに機能的類似性を有する操作された配列でよい。操作された配列には、例えば、キャリア配列に取り入れられたポリエピトープ及びエピトープ、抗体又はウイルスキャプシドタンパク質などがある。そのような長いポリペプチドには、エピトープクラスター、例えば、参照によりその全体が本明細書に取り込まれている「エピトープクラスター」という名称の米国特許出願第09/561,571号に記載されるものがある。エピトープペプチド、又はそれが含まれているより長いポリペプチドは、微生物(例えば、ウイルス、バクテリア、原生動物など)、哺乳類細胞(例えば、腫瘍細胞又は抗原提示細胞)、或いは上記のいずれかの、全体的又は部分的に精製された溶解物を含む、溶解物の成分でありうる。エピトープペプチド、又はそれが含まれているより長いポリペプチドは、他のタンパク質、例えばヒートショックタンパク質と複合体として使用できる。いくつかの実施形態において、エピトープペプチド、又はそれが含まれているより長いポリペプチドは、例えば脂質化など、共有結合により修飾できる。或いは、エピトープペプチド、又はそれが含まれているより長いポリペプチドは、例えば、デンドリマー、多重抗原ペプチドシステム(MAPS)及びポリオキシムなどの合成化合物の成分として作ることもできる。いくつかの実施形態において、エピトープペプチド、又はそれが含まれているより長いポリペプチドは、リポソーム又は微小球などに取り入れることができる。本明細書では、「ポリペプチド抗原」という用語は、そのような可能性及び組み合わせを全て包含する。
【0094】
本発明の実施形態は、抗原が、微生物又は哺乳類細胞の天然の成分でありうることを規定する。抗原は、リコンビナントDNA技術により微生物又は哺乳類細胞により、或いは、抗原提示細胞(APC)の場合には、投与の前にポリペプチド抗原により細胞をパルシング又はローディングすることにより発現させることができる。さらに、細胞への核酸の投与後に細胞により抗原が発現されるように、抗原を発現する核酸として抗原を投与することもできる。最後に、クラシカルなクラスIMHC分子はペプチド抗原を提示するが、追加のクラスI分子は、非ペプチド高分子の提示に適合できる。代表的な非ペプチド高分子には、脂質及び糖脂質があるが、これらに限定されない。本明細書では、「抗原」という用語は、そのような高分子も含む。さらに、核酸系ワクチンは、そのような高分子の合成のための1種以上の酵素をコードし、APC上の高分子の抗原発現を促進することができる。いくつかの実施形態において、核酸系ワクチンは、APC上の高分子の合成及び抗原発現のための2種、3種、4種又は5種の酵素をコードすることができる。
【0095】
本発明の実施形態に有用な他の治療タンパク質又は予防タンパク質には、例えば、腫瘍特異性抗原、分化抗原、胎児抗原、癌精巣抗原、発癌遺伝子の抗原、変異した腫瘍抑制遺伝子、染色体転座から生じる独特な腫瘍抗原、ウイルス抗原、及び現在当業者に明らかであるか、将来明らかになるであろう他の抗原がある。本発明の実施形態に利用可能な追加の抗原には、例えば、構造及び非構造ウイルスタンパク質などの、感染性疾病微生物に見いだされるものがある。
【0096】
上記のことに照らし、本発明の実施形態に有用な抗原には、腫瘍特異性抗原(TSA)又は腫瘍関連抗原(TuAA)がある。TSAは腫瘍細胞に独特であり、体内の他の細胞には存在しない。TuAAは、標的細胞が新生物細胞であるTAAである。TuAAは、免疫系が未熟で応答できない場合胎児発育の間通常細胞上に発現する抗原であり、或いは、通常細胞上に非常に低レベルで通常存在するが、腫瘍細胞上にははるかに高レベルで発現する抗原でもある。いくつかの実施形態において、TuAAは、例えば、腫瘍微小環境内の腫瘍新生血管系又は他の間質細胞などの、腫瘍の非ガン性細胞に関連した抗原である。
【0097】
いくつかの実施形態において、抗原は、1型糖尿病の治療用のインスリン、GAD65、又はHSPなどがあるがこれらに限定されない自己抗原でもありうる。いくつかの実施形態において、自己抗原には、限定はされないが、多発性硬化症の治療用のミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)、又はミエリン乏突起神経膠細胞糖タンパク(MOG)などでもありうる。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態において、MART−1(T細胞に認識されるメラノーマ抗原)とも呼ばれるTuAA Melan−Aが使用される。Melan−A/MART−1は、メラノーマ中に高レベルで発現されるメラニン生合成タンパク質である。Melan−A/MART−1は当分野に周知であり、それぞれ参照によりその全体が本明細書に取り込まれている米国特許第5,994,523号;同第5,874,560号;及び同第5,620,886号に開示されている。好ましい実施形態は、本明細書において配列番号1により示される、Melan−A TuAA、Melan−A26-35を与える。本発明の実施形態に有用な他のTuAAの非限定的な例には、チロシナーゼ、SSX−2、NY−ESO−1、PRAME、及びPSMA(前立腺特異的膜抗原)がある。本明細書に開示される本発明の実施形態に有用なTuAAは、それぞれ参照によりその全体が本明細書に取り込まれている米国仮特許出願第60/691,889号;米国特許出願第11/455,278号、同第11/454,633号及び同第11/454,300号;及び国際出願第PCT/US2006/023489号;及び米国特許出願公開第20060057673号及び同第20060063913号に開示されるものなど、天然配列又はそのアナログを含むことがある。
【0099】
本発明の実施形態に利用可能な追加のペプチド及びペプチドアナログは、それぞれ参照によりその全体が本明細書に取り込まれている、2004年6月17日に出願の「SSX−2ペプチドアナログ」という名称の米国特許出願第60/581,001号;及び「NY−ESOペプチドアナログ」という名称の同第60/580,962号;2001年11月7日に出願の「抗原の商業化の方法」という名称の米国特許出願第09/999,186号;2005年12月29日に出願の「予防又は治療目的のMHCクラスI制限エピトープに対する免疫応答の誘導、増強、及び保持する方法」という名称の米国特許出願第11/323,572号;及び2005年12月29日に出願の「免疫応答の誘起におけるCD4+細胞の回避方法」という名称の米国特許出願第11/323,520号に開示されている。免疫療法のための有益なエピトープ選択原理は、それぞれ参照によりその全体が本明細書に取り込まれている、米国特許出願第09/560,465号(2000年4月28日出願)、同第10/026,066号(2001年12月7日出願;公開番号第20030215425 Al号)、及び同第10/005,905号(2001年11月7日出願)、以上全て「抗原提示細胞中のエピトープ同調」という名称;「エピトープクラスター」という名称の米国特許出願第09/561,571号(2000年4月28日出願);「ガンのための抗新生血管製剤」という名称の同第10/094,699号(2002年3月7日出願;公開番号第20030046714 Al号);及び同第10/117,937号(2002年4月4日出願;公開番号第20030220239 Al号)及び同第10/657,022号(2003年9月5日出願;公開番号第20040180354 Al号)及び国際出願第PCT/US2003/027706号(国際公開第04022709A2号)、以上「エピトープ配列」という名称;及び米国特許第6,861,234号に開示されている。
【0100】
いくつかの実施形態において、使用できる追加の抗原には、例えば、非限定的に、gpl00(Pmel 17)、TRP−1、TRP−2、MAGE−1、MAGE−3、BAGE、GAGE−1,GAGE−2、CEA、RAGE、SCP−1、Hom/Mel−40、p53、H−Ras、HER−2/neu、BCR−ABL、E2A−PRL、H4−RET、IGH−IGK、MYL−RAR、エプスタイン・バールウイルス抗原、EBNA、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6及びE7、TSP−180、MAGE−4、MAGE−5、MAGE−6、pl85erbB2、pl80erbB−3、c−met、nm−23H1、PSA、TAG−72−4、CAM 17.1、NuMa、K−ras、β−カテニン、CDK4、Mum−1、pl6、pl5、43−9F、5T4、791Tgp72、アルファフェトプロテイン、β−HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15−3\CA27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA−50、CAM43、CD68\KP1、CO−029、FGF−5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp−175、M344、MA−50、MG7−Ag、M0V18、NB/70K、NY−CO−1、RCASl、SDCCAGl6、PLA2、TA−90\Mac−2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLP、及びTPSがある。これらのタンパク質系抗原は公知であり、文献において、及び/又は商業的に、当業者には利用可能である。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態において有用な追加の治療分子にはT−bet、STAT−1、STAT−4及びSTAT−6などの転写因子があるが、これらに限定されない。本発明のいくつかの実施形態において、標的分子には、TLR及びその下流のシグナル伝達分子、例えば、MyD88、NFκ−Bなどがあるがこれらに限定されない。サイトカインも本発明の実施形態に有用であり、例えば、G−CSF、GM−CSF、IFN、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、IL−2、IL−3、IL−4、IL−8、IL−9、IL−10、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−18、TNF、TGF−α、TGF−βなどがあるが、これらに限定されない。CD40 B7.1及びB7.2などの共刺激因子も、いくつかの実施形態において有用である。いくつかの実施形態において、FOXp3、B7様分子、LAG−3リガンドなどがあるが、これらに限定されないチェックポイントタンパク質が使用できる。抗原提示経路中に存在するタンパク質、例えば、HLA及びTAP(抗原プロセシング関連トランスポーター1及び2(TAP1及びTAP2))も本発明の実施形態に使用できる。樹状細胞活性化抑制因子SOCS1及びDMNT1などのDNAメチル化経路中のタンパク質も本明細書に開示される実施形態に使用できる。アポトーシス経路に存在するタンパク質も本明細書に開示される実施形態に使用できる。本発明の実施形態は、本発明のバイシストロン性ベクターの設計時に、本明細書に開示される1種以上の分子を、単独でも、種々の組み合わせにおいても利用することができる。
【0102】
本明細書に開示される抗原は、バイシストロン性ベクターの設計に使用するために、一連のビーズアレイ又はポリエピトープとして連結できる。一連のビーズアレイ又はポリエピトープは当分野に周知であり、例えば、それぞれ参照によりその全体が本明細書に取り込まれている、国際公開第01/19408A1号;同第99/55730A2号;同第00/40261A2号;同第96/03144A1号;同第01/23577A3号;同第97/41440Al号;同第98/40500A1号;同第01/18035A2号;同第02/068654A2号;同第01/58478A号;同第01/11040A1号;同第01/89281A2号;同第00/73438A1号;同第00/71158Al号;同第00/52451Al号;同第00/52157Al号;同第00/29008A2号;同第00/06723A1号及び米国特許第6,074,817号;同第5,965,381号;同第6,130,066号;同第6,004,777号;同第5,990,091号に開示されているとおりである。
【0103】
いくつかの実施形態において、「エピトープ発見の方法」という名称の米国特許第6,861,234号及び「抗原提示細胞におけるエピトープ同調」という名称の2000年12月7日に出願の米国特許出願第10/026,066号(公開番号第2003−0215425号)(それぞれ参照によりその全体が本明細書に取り込まれている)に開示されている方法により同定されている、当業者に現在明らかな、又は将来明らかになるであろう新しいペプチドを、本明細書に開示される実施形態において使用できる。
【0104】
治療ペプチドとして使用可能な追加の代表的なペプチドには、国際公開第02/081646号(参照によりその全体が本明細書に取り込まれている)の表1A〜1Cに開示されているもの並びに国際公開第04/022709号(参照によりその全体が本明細書に取り込まれている)の表1A及び1Bに開示されているものがある。
【0105】
(組成物を送達する方法)
いくつかの実施形態において、生体応答調節物質の発現に干渉する1種以上の薬剤と同時発現する1種以上の治療タンパク質を含む、バイシストロン性ベクターの好ましい投与は、リンパ節注入による。リンパ節注入は、最適化された免疫スケジュールにより免疫応答が開始し増幅する器官に直接送達できるので、好ましい。
【0106】
本明細書に開示される免疫原性バイシストロン性ベクター組成物を患者のリンパ系に導入するには、組成物が、リンパ管、リンパ節、脾臓、又はリンパ系の他の適当な部分に向けられることが好ましい。本明細書に開示されるバイシストロン性ベクターの利点は、これらのベクターが、対象とする治療分子を別々に注射する必要を回避できることである。本発明の実施形態において、バイシストロン性ベクターは、プライム/ブーストプロトコルで使用でき(参照によりその全体が本明細書に取り込まれている、「予防又は治療目的のMHCクラスI制限エピトープに対する免疫応答の誘導、増強、及び保持方法」という名称の米国特許出願第60/831,256号に開示のとおり)、バイシストロン性ベクター組成物が鼠径部リンパ節に注射され、次いで、ボーラスとしてペプチド抗原が投与される。いくつかの実施形態において、1種以上の成分を、一般的に数時間から数日にわたり、注入によって送達可能である。好ましくは、組成物は、節へカテーテル又は針を挿入し、送達の間カテーテル又は針を維持して、鼠径部又は腋窩リンパ節などのリンパ節に向けられる。金属又はプラスチックでできた好適な針又はカテーテルが利用できる(例えば、ポリウレタン、ポリビニルクロライド(PVC)、TEFLON、ポリエチレンなど)。例えば、鼠径節にカテーテル又は針を挿入する際、鼠径節に、超音波検査により制御しながら、Vialon(商標)InsyteW(商標)カニューレ及びTegaderm(商標)トランスペアレントドレッシング(Tegaderm(商標)、セントポール、ミネソタ州、米国)を利用して固定されている24G3/4(Becton Dickinson、米国)のカテーテルを利用して穿刺した。この手順は、一般的に経験のある放射線医師により行われる。鼠径リンパ節内部のカテーテル先端の位置は、最低限の体積の塩水を注入して確認されるが、これは直ちに目に見えてリンパ節の大きさを大きくする。後者の手順により、先端が節の内部にあることが確認できる。この手順を、先端がリンパ節から滑り出ないことを確実にするために実施でき、カテーテルの埋め込みの後いろいろな日に繰り返すことが可能である。先端がリンパ節内部の位置から滑り出た場合、新しいカテーテルを埋め込むことができる。
【0107】
本明細書に開示される治療組成物は、当業者に周知の標準ワクチン送達プロトコルに一致する方法で、患者に投与できる。生体応答調節物質の発現に干渉する1種以上の薬剤とともに1種以上の予防薬又は治療薬を含む本発明の免疫原性バイシストロン性ベクター組成物実施形態を投与する方法には、経皮、節内、節周囲、経口、静脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、粘膜投与、並びに注射、点滴又は吸入による送達があるが、これらに限定されない。CTL応答を惹起するワクチン送達の特に有用な方法は、それぞれ参照によりその全体が本明細書に取り込まれている、オーストラリア国特許第739189号;両者とも「CTL応答を誘起する方法」という名称である米国特許第6,994,851号及び同第6,977,074号に開示されている。
【0108】
患者へのバイシストロン性ベクター免疫原性組成物の送達又は投与において、種々のパラメータを考察することが有用である。さらに、投与計画及び免疫スケジュールを利用できる。一般的に、治療組成物中の成分の量は、患者毎に、治療薬毎に、生体応答調節物質毎に変わり、以下のような因子:治療薬又は応答を誘起する生体応答調節物質の活性;患者の系を通るリンパの流速;被験者の体重及び年齢;治療される疾病及び/又は状態の種類;疾病又は状態の重症度;以前の又は同時の治療介入;抗体を合成する個人の免疫系の能力;望まれる保護の程度;投与の方法などにより変わるであろうが、それらは全て経験のある医師により容易に決定できる。
【0109】
一般的に、本発明の治療組成物は、約1から約500マイクロリットル/時又は約24から約12,000マイクロリットル/日の速度で送達できる。治療組成物の濃度は、約0.1マイクログラムから約10,000マイクログラムの治療組成物が24時間の間に送達されるようなものである。流速は、毎分、おおよそ約100から約1000マイクロリットルのリンパ液が成人の鼠径リンパ節を流れるという知識に基づく。目的は、リンパ系中のワクチン製剤の局所濃度を最大にすることである。患者に対する経験的な研究をある程度実施して、ヒトにおいてあるワクチン製剤の最も効能のよいレベル又は最適レベルの注入を決定することができる。
【0110】
一実施形態において、本明細書に開示される免疫原性組成物は、複数の連続投与量として投与できる。そのような複数の投与量は、有効であると見いだされるとおり、2、3、4、5、6、又はそれ以上の投与量でよい。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される免疫原性バイシストロン性組成物の投与量は、約数週間又は数日内の互いの、及び/又は右又は左の鼠径リンパ節内のペプチドブーストの投与である。本発明の免疫原性バイシストロン性ベクター組成物及び/又はペプチドブーストの複数の投与量を、数日あけて投与することが望ましく、数日(1、2、3、4、5、6、又は7日、或いはそれ以上の日数)が、その後の投与の間に経過する。他の場合において、本発明の組成物のその後の投与(複数可)が、最初の投与量投与の後、約1、2、3週、又はそれ以上の週以内或いは約1、2、3月、又はそれ以上の月以内に両側の鼠径リンパ節注入により投与されることが望ましいこともある。
【0111】
投与は、投与製剤と適合する任意の方法で、治療上有効であろう量で行ってよい。本発明の免疫原性組成物実施形態の有効な量又は投与量は、治療すべき被験者に望ましい応答を与えると見いだされる量である。
【0112】
(キット)
本明細書に開示された組成物のいずれも、キットにまとめることができる。より詳細には、本発明のバイシストロン性ベクター実施形態を設計又は構築するための成分の全て又はサブセットを、キット中に共に包装することができる。1種以上の治療薬及び生体応答調節物質の発現に干渉する1種以上の同時発現する薬剤は、別にでも、共にでも包装できる。いくつかの実施形態において、プラスミドを、1種以上の治療薬又は生体応答調節物質の発現に干渉する1種以上の同時発現する薬剤と共に包装することが好ましい。本発明の実施形態において、治療タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、エピトープ又はそのようなものをコードする核酸は、共にでも、単一の分子としても、分子のセットとしても包装できる。いくつかの実施形態において、生体応答調節物質の発現に干渉する同時発現する1種以上の薬剤を、共にでも、単一の分子としても、分子のセットとしても包装できる。いくつかの実施形態において、1種以上の治療分子及び生体応答調節物質の発現に干渉する同時発現する1種以上の薬剤をキット中に共に包装できる。或いは、本明細書に開示される組成物は、治療薬としての使用のために、互いに組み合わせて使用し本明細書で開示されるバイシストロン性ベクターを設計及び構築する方法を記載する、印刷形態又は機械読み取り媒体での説明書と共に、個別に包装及び販売される。
【0113】
非限定的な例において、本明細書に開示される遺伝子治療ベクターの設計又は構築のための1種以上の薬剤又は試薬は、単独でキット中に、又はガンなどの疾病又は状態を治療するための追加の薬剤又は試薬と組み合わせて提供できる。しかし、これらの成分は限定的なものではない。いくつかの実施形態において、キットは、薬剤又は試薬を貯蔵及び分注するための好適な容器手段を提供するであろう。
【0114】
いくつかの実施形態において、キットは、好適な容器手段中に、1種以上の治療分子及び/又は生体応答調節物質の発現に干渉する1種以上の薬剤及び、例えば、pSEMプラスミドなどのベクター及びバイシストロン性ベクターを設計及び構築するための説明書を含んでよい。一実施形態において、キットは単一の容器手段を含み、かつ/又は、例えばガンなどの増殖性疾病による疾病又は状態を治療するための1種以上の治療薬の免疫学的/治療上有効な製剤などの追加の化合物のための個別の容器手段を有してもよい。いくつかの実施形態において、キットは、好適な容器手段中に、生体応答調節物質の発現に干渉する同時発現する1種以上の薬剤を、それぞれ別の容器手段中にでも、単一の容器手段中にセットとしてでも、さらに含みうる。
【0115】
キットの構成成分が1種以上の溶液で与えられている場合、溶液は水溶液であり、滅菌水溶液が特に好ましい。組成物は、送達可能及び/又は注射可能な組成物としても処方できる。そのような実施形態において、容器手段はそれ自体シリンジ、ピペット、及び/又は他のそのような装置でよく、そこから製剤を被験者に送達又は注射可能であり、かつ/又はキットの他の成分に適用及び/又は混合することができる。いくつかの実施形態において、キットの成分は、乾燥粉体(複数可)として提供可能である。成分(例えば試薬)が乾燥粉体として提供される場合、粉体は、好適な溶媒を加えて再構成できる。溶媒も他の容器手段中に備えられることが企図される。
【0116】
いくつかの実施形態において、プラスミドは、予防又は治療タンパク質、ペプチド、エピトープ又はそのようなものをコードする核酸及び/又は生体応答調節物質の発現に干渉する薬剤(複数可)と共に販売することができる。いくつかの実施形態において、予防又は治療タンパク質、ペプチド、エピトープ又はそのようなものをコードする核酸のセットは、プラスミド無しで共に販売できる。生体応答調節物質の発現に干渉する薬剤に対応する分子のセットは、プラスミド無しで共に販売できる。
【0117】
容器手段は、一般的に少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、瓶、シリンジ及び/又は他の容器手段を含み、その中に、1種以上の予防又は治療薬及び生体応答調節物質の発現に干渉する1種以上の薬剤を含むバイシストロン性ベクターを配置できる。キットは、滅菌された薬剤的に許容できる緩衝液及び/又は他の希釈剤を収容するための第2の容器手段を含んでよい。いくつかの実施形態において、キットは、本明細書に開示される方法を実施するための材料を収容する手段及び他の試薬容器を市販のために密着させて含んでよい。そのような容器には、例えば、所望のバイアルが保持される、射出成型又は吹込成型されたプラスチック容器がある。容器の数又は種類に関係なく、本発明のキット(複数可)は、被験者の体内で、1種以上の予防又は治療薬及び生体応答調節物質の発現に干渉する1種以上の薬剤を含むバイシストロン性ベクターの注射/投与を助けるための装置を含んでよく、又はそれと共に包装されていてよい。そのような装置は、例えば、シリンジ、ポンプ、及び/又は医学的に承認された送達手段があるが、これらに限定されない。
【0118】
本発明を詳細に説明したので、添付される請求項に定義される本発明の範囲から逸脱せずに、修正、変形、及び等価な実施形態が可能であることが明らかであろう。さらに、本開示の中の全ての例は、非限定的な例として提供されることを認識されたい。
【実施例】
【0119】
以下の非限定的な例は、本明細書に開示される本発明の実施形態をさらに説明するために与えられる。以下の実施例に開示される技術が本発明の実施において良好に機能すると見いだされた手法を表し、その実施のための様式の例を構成すると見なすことができることを、当業者は認識されたい。しかし、当業者は、本開示に照らして、開示されている特定の実施形態に多くの変更を行うことができ、それでも本発明の精神及び範囲から逸脱せずに同様又は類似の結果が得られることを認識されたい。
【0120】
(実施例1 免疫遺伝子及びRNAiを同時発現するバイシストロン性ベクターの設計及び構築)
pSEMプラスミド(pMA2Mとしても知られる)の構造及び構築は、すでに開示されている(米国特許出願公開第20030228634号及び国際公開第03/063770号)。簡単に述べると、pSEMプラスミドは、Melan−A26-35 A27L由来のHLA A2特異的CTLエピトープELAGIGILTV(配列番号1)及びアミノ酸31〜48及び56〜69にエピトープクラスターを含むMelan−A(配列番号2)の一部(アミノ酸31〜96)を持つ1ポリペプチドをコードする。これらのクラスターは、参照によりその全体が本明細書に取り込まれている、「エピトープクラスター」という名称の2000年4月28日出願の米国特許出願第09/561,571号にすでに開示された。ヒトチロシナーゼから誘導された短いアミノ酸配列(配列番号3及び4)が、定義されたMelan−ACTLエピトープに横付けし、免疫プロテアソームによるプロセシングによるMelan−4ハウスキーピングエピトープの遊離を促進する。さらに、これらのアミノ酸配列は、潜在的なCTLエピトープ自体を表す。プラスミド中のポリペプチドのcDNA配列は、サイトメガロウイルス由来のプロモーター/エンハンサー(CMVp)の制御下にあり、APCによる取り込みの際ポリペプチドのメッセンジャーを有効に転写する。コード配列の3’末端のウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(BGHpolyA)は、安定性増大のためのメッセンジャーのポリアデニル化のための、並びに翻訳のための核から細胞質への移送のためのシグナルを与える。取り込み後の核へのプラスミド輸送を容易にするため、サルウイルス40(SV40)由来の核内移行配列(NIS)をプラスミド骨格に挿入した。プラスミドは、CpG免疫刺激性モチーフの2コピーを、1つはNIS配列に、1つはプラスミド骨格に保持する。最後に、プラスミド中の2つの原核生物遺伝因子は、大腸菌、カナマイシン耐性遺伝子(Kan R)及びpMB1細菌複製起点中の増幅に責任がある。
【0121】
PCR反応を実行して、U6プロモーター及びGFP siRNAに対応するヘアピン型DNA配列の断片を、pSilencer(Invitrogen)をテンプレートとして増幅した。得られた断片を、CMVプロモーターの遠位末端で、BspH IとBstE I部位との間にライゲーションし、RNAiのオフターゲット効果のコントロールとして使用するためのpSEM−U6−GFPを生成した(図1)。次いで、Melan−AのsiRNAに対応する配列及び他の標的分子を使用して、GFP siRNAのヘアピンに対応する配列を置換し、RNAiの内部コントロールとして使用するプラスミドpSEM−U6−Melan−Aを生成した。上述の2つのプラスミド、pSEM−U6−GFP及びpSEM−U6−Melan−Aの配列を、それぞれ配列番号5及び配列番号6として開示する。
【0122】
(実施例2 過剰発現系におけるインビトロノックダウン)
HEK 293T細胞を、Melan−A発現プラスミドpcDNA−Melan―Aのみによりトランスフェクトし、或いは、それぞれ、pSEM−U6−Melan−A、pSEM−U6−GFP、Melan−AのsiRNA、又はコントロールsiRNAとコトランスフェクトした。トランスフェクトの48時間後、細胞を採取し、細胞溶解物を調製し、SDS−PAGE及び免疫ブロットにかけた。種々のsiRNA及びバイシストロン性プラスミドのノックダウン効果を評価した(図2)。Melan−Aに特異的なsiRNAのコトランスフェクションは、トランスフェクトされた細胞中でのMelan−A発現のレベルを著しく低下させ、ノックダウン効果は90%を超えた。pcDNA−Melan―A及びpSEM−U6−Melan−Aとコトランスフェクトされた細胞では、Melan−A発現のノックダウン効果は、80〜90%と見積もられる。Melan−A発現プラスミド及びpSEM−U6−GFP、又はコントロールsiRNAとそれぞれコトランスフェクトされた細胞のサンプルでは、Melan−A発現レベルのわずかな低下が観察された。
【0123】
(実施例3 抗原発現のインビボノックダウンは消失した免疫応答を生み出す)
5群のHHDトランスジェニックマウス(n=10/群)を、第1日及び第4日に、各リンパ節に25μlのPBS中25μgを鼠径リンパ節に直接注入し、プラスミド(pSEM、pSEM−U6−GFP、pSEM−U6−Melan−A)で免疫した。10日後、第11日及び第14日に、マウスに、第2クラスターのDNA注入を行い、第34日及び第37日にMelan−A26-35A27Lペプチド(1mg/ml)を注入した(図3)。後眼窩静脈叢からの採血により個々のマウスから末梢血液を単離し、密度遠心分離(Lympholyte Mammal、Cedarlane Labs)を行った後、単核細胞を赤血球から分離した。免疫動物中の特異性CTL応答を、HLA−A2.1 MART−126-35(ELAGIGILTV)−APC及びFITCコンジュゲートラット抗マウスCD8a(Ly−2)モノクローナル抗体(BD Biosciences)により、40℃で1時間、単核細胞を同時染色して定量した。FACS Caliburフローサイトメーター(BD Biosciences)によりデータを集め、リンパ球集団にゲーティングし、CD8+集団内のテトラマー+細胞のパーセントを計算して、CellQuestソフトウェアにより分析した。値は各群内のテトラマー平均+/−SEMを表し、ナイーブの同腹仔のコントロールと比較した(図4)。
【0124】
(実施例4 ナイーブコントロールマウス中の抗原発現のインビボノックダウン)
図4に示されるとおり、親プラスミド、pSEMによる免疫は、プラスミドのみの免疫後の7%のMelan−A26-35特異性CD8+T細胞の存在により、マウス中の検出可能な応答をもたらした。そのような細胞のパーセンテージは、Melan−Aペプチドの注入によるブーストの後、全CD8細胞の40%超までマウス中で著しく増加した。対照的に、ベースラインテトラマー陽性CD8細胞は、プラスミド、pSEM−U6−Melan−A、プレ及びポストペプチドブーストにより免疫されたマウス中に検出可能であった。これは、Melan−Aの発現が、pSEM−U6−Melan−Aを取り込んだ抗原提示細胞中で阻害され、そのようなプラスミド促進抗原発現が、プライムブーストレジームにおける免疫応答の誘起に必須であることを示している。pSEM−U6−GFPにより免疫されたマウスでは、おそらくdsRNAに関連するMAK/インターフェロンα経路の活性化により、pSEMで免疫されたマウスに比べ免疫応答の低下が見られた。しかし、ペプチドブースト後のこれらのマウスからの著しい応答(20%テトラマー陽性CD8細胞)は、プライミング事象の間のプラスミドからの抗原発現の重要性をさらに実証する。
【0125】
(実施例5 マウスにおける抗原発現のインビボノックダウンのエリスポット分析)
細胞傷害性の測定の代わりに、エリスポットアッセイにおいて特異的なエフェクター細胞によるIFN−γ産生を測定して、CD8+CTL応答を評価できる。このアッセイでは、抗原提示細胞(APC)は、マイクロタイターウェルのプラスチック表面上に固体化されており、エフェクター細胞は種々のエフェクター:標的比で加えられる。抗原特異性エフェクター細胞によるAPCの結合により、エフェクター細胞によるIFN−γを含むサイトカインの産生が活性化される。細胞を染色して細胞内IFN−γの存在を検出でき、陽性に染色されている増殖巣(スポット)を顕微鏡下で計測する。
【0126】
エリスポットアッセイのため、免疫動物の全てを、ペプチドの最終注入の7日後に屠殺した。IFN−γ産生スポット形成コロニー(SFC)の頻度を測定してエリスポット分析を実施した。簡単に述べると、安楽死させた動物から脾臓を取り出し、密度遠心分離(Lympholyte Mammal、 Cedarlane Labs)の後で、単核細胞をHL−1培地に再懸濁した。脾細胞(ウェル当たり5×105又は2.5×105細胞)を、96ウェルフィルターメンブレンプレート(Multi−screen IP membrane 96−well plate、Millipore)の3連のウェルに10μgのMelan−A26-35 A27Lペプチドとインキュベートした。展開の前に、試料を37℃で5%CO2及び100%湿度で42時間インキュベートした。マウスIFN−γコーティング抗体(IFN−γ antibody pair、U−Cy Tech Biosciences)を脾細胞とのインキュベーションの前にコーティング試薬として使用し、次いで、添付されているビオチン化検出抗体を使用した。U−Cy Tech BiosciencesのGABAコンジュゲート及び専売基質をIFN−γスポット展開に使用した。免疫された動物におけるCTL応答を、IFN−γスポット分析用に較正したELISpot Readerソフトウェアバージョン3.2.3を利用しAID Internationalプレートリーダー上で展開の24時間後に測定した。
【0127】
図5に示される結果は、各実験群の平均IFN−γスポットカウントを示す。pSEM−U6−GFPで免疫したマウスに比べ、pSEM−U6−Melan−Aで免疫したマウスの試料では、スポットカウントの3分の1の減少が見られた(p=0.002)。この結果は、プラスミドプライミングの間の抗原発現の欠如が、定量的並びに定性的に抗原特異性免疫応答を著しく消失させることを示唆する、テトラマーアッセイからの結果と対応する。
【0128】
(実施例6 バイシストロン性ベクターを利用する自己免疫の制御)
免疫シナプスの形成により、T細胞レセプターは、APC表面上の抗原とMHCの複合体を認識する。T細胞活性化には、T細胞とAPC上のB7ファミリー遺伝子との相互作用を含む共刺激シグナルも要する。さらに、新しく定義されたシグナル3サイトカイン(IL−12又はIL−1b)もT細胞のエフェクター機能に有用でありうる。
【0129】
バイシストロン性ベクターを使用し、自己免疫の制御のために、寛容化されたT細胞集団及び/又は調節T細胞を誘起することができる。自己抗原と、共刺激シグナル、(シグナル3)、又は炎症誘発性分子を低減又は下方制御するRNAiとを同時発現するバイシストロン性ベクターでpAPCをトランスフェクトすると、免疫シナプスとの干渉により、T細胞活性化の減衰が達成でき、調節T細胞及び/又は寛容化されたT細胞及び/又はアネルギー状態のT細胞が生成する。
【0130】
バイシストロン性ベクターを設計し、サイトメガロウイルス由来のプロモーター/エンハンサー配列(CMVp)の制御下におかれた自己抗原のcDNA配列を含むが、これは、APCなどの細胞による取り込み時に自己抗原のためのメッセンジャーの効率よい転写を可能にする。さらに、バイシストロン性ベクターは、U6プロモーターの制御下におかれた、B7分子の活性をサイレンシングし、阻害し、又は下方制御するsiRNAに対応する配列を含む。
【0131】
バイシストロン性ベクターの投与を利用して、1型糖尿病及び多発性硬化症などの疾病又は疾患を治療する。
【0132】
(実施例7 T調節経路の調節によるCTL活性の促進)
バイシストロン性ベクターを設計し、サイトメガロウイルス由来のプロモーター/エンハンサー配列(CMVp)の制御下におかれたMelan−A26-35をコードする核酸配列を含む。さらに、バイシストロン性ベクターは、U6プロモーターの制御下におかれた、B7分子に対して向けられるsiRNAに対応する配列を含む。
【0133】
バイシストロン性ベクターを、ガンと診断された患者の集団に医薬組成物として投与する。調節T細胞をサイレンシングするためのsiRNAを含まないMelan−A26-35をコードする核酸配列を含む第2のベクターを、ガンと診断された患者の第2の集団に医薬組成物として投与する。どのシストロンも(Melan−A26-35及び調節T細胞に対するsiRNA)も含まない第3のベクターを、ガンと診断された患者の第3の集団に医薬組成物として投与する。バイシストロン性ベクターを投与された集団が、他の患者集団に観察されるより著しく高いMelan−A26-35に対するCTL応答を示すことが観察される。
【0134】
(実施例8 抗原提示細胞における免疫プロテアソーム活性のサイレンシング)
バイシストロン性ベクターを設計し、サイトメガロウイルス由来のプロモーター/エンハンサー配列(CMVp)の制御下におかれたMelan−A26-35A27Lペプチド抗原の配列を含む。さらに、バイシストロン性ベクターは、U6プロモーターの制御下におかれた、抗原提示細胞(APC)中の免疫プロテアソーム活性をサイレンシングし、阻害し、又は下方制御するsiRNAに対応する配列を含む。Melan−A26-35A27Lペプチド抗原の配列の3’末端のウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(BGHpolyA)は、その安定性を増すためのメッセンジャーのポリアデニル化のための、並びに翻訳のための核から細胞質への移送のためのシグナルを与える。取り込み後の核へのプラスミド輸送を促進するため、サルウイルス40(SV40)由来の核内移行配列(NIS)をプラスミド骨格に挿入した。プラスミドは、CpG免疫刺激性モチーフの2コピーを、1つはNIS配列に、1つはプラスミド骨格に保持する。最後に、プラスミド中の2つの原核生物遺伝因子は、大腸菌、カナマイシン耐性遺伝子(Kan R)及びpMB1細菌複製起点中の増幅に責任がある。
【0135】
バイシストロン性ベクターを、ガンと診断された患者の集団に医薬組成物として投与する。免疫プロテアソーム活性をサイレンシングするためのsiRNAを含まないMelan−A26-35をコードする核酸配列を含む第2のベクターを、ガンと診断された患者の第2の集団に医薬組成物として投与する。どのシストロンも(Melan−A26-35及び免疫プロテアソーム活性に対するsiRNA)も含まない第3のベクターを、ガンと診断された患者の第3の集団に医薬組成物として投与する。バイシストロン性ベクターを投与された集団が、他の患者集団に観察されるより著しく高いMelan−A26-35に対するCTL応答を示すことが観察される。
【0136】
(実施例9 遺伝子治療用途のバイシストロン性ベクターの使用)
バイシストロン性ベクターを設計し、サイトメガロウイルス由来のプロモーター/エンハンサー配列(CMVp)の制御下におかれたMelan−A26-35A27Lペプチド抗原の配列を含む。さらに、バイシストロン性ベクターは、U6プロモーターの制御下におかれた、ベクターが投与される標的細胞中のDNAメチルトランスフェラーゼをサイレンシングし、阻害し、又は下方制御するsiRNAに対応する配列を含む。Melan−A26-35A27Lペプチド抗原の配列の3’末端のウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(BGHpolyA)は、その安定性を増すためのメッセンジャーのポリアデニル化のための、並びに翻訳のための核から細胞質への移送のためのシグナルを与える。取り込み後の核へのプラスミド輸送を促進するため、サルウイルス40(SV40)由来の核内移行配列(NIS)をプラスミド骨格に挿入した。プラスミドは、CpG免疫刺激性モチーフの2コピーを、1つはNIS配列に、1つはプラスミド骨格に保持する。最後に、プラスミド中の2つの原核生物遺伝因子は、大腸菌、カナマイシン耐性遺伝子(Kan R)及びpMB1細菌複製起点中の増幅に責任がある。
【0137】
バイシストロン性ベクターを、ガンと診断された患者の集団に医薬組成物として投与する。DNAメチルトランスフェラーゼ活性を阻害するsiRNAを含まないMelan−A26-35をコードする核酸配列を含む第2のベクターを、ガンと診断された患者の第2の集団に医薬組成物として投与する。どのシストロンも(Melan−A26-35及びDNAメチルトランスフェラーゼ活性に対するsiRNA)も含まない第3のベクターを、ガンと診断された患者の第3の集団に医薬組成物として投与する。バイシストロン性ベクターを投与された集団が、他の患者集団に観察されるより著しく高いMelan−A26-35に対する持続した永続的なCTL応答を示すことが観察される。
【0138】
本明細書に言及された全参考文献は、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる。さらに、本発明の実施形態は、全て参照によりその全体が取り込まれる、以下のものの種々の態様を利用することがある:1999年9月1日に出願の「CTL応答を誘起する方法」という名称の米国特許出願第09/380,534号;2001年2月2日に出願の「CTL応答を誘起する方法」という名称の同第09/776,232号;2000年11月16日に出願の「プラスミド増殖における望ましくない複製中間体の回避」という名称の同第09/715,835号;2001年11月7日に出願の「抗原の商業化の方法」という名称の同第09/999,186号;及び2001年3月7日に出願の「ガンのための抗新生血管ワクチン」という名称の米国仮特許出願第60/274,063号。
【0139】
先に記載した種々の方法及び技術は、本発明の実施する多くの方法を提供する。もちろん、記載される目的又は利点の必ずしも全てが、本明細書に記載される特定の実施形態により達成できるわけではないことを理解されたい。したがって、例えば、当業者は、方法が、本明細書に教示又は示唆される他の目的又は利点を必ずしも達成することなく、本明細書に教示される1つの利点又は利点の群を達成又は最適化するように実施できることを認識するであろう。種々の有利及び不利な代替物が本明細書に言及されている。いくつかの好ましい実施形態が、1つ、もう1つの、又はいくつかの有利な特徴を具体的に含むが、他の実施形態が、1つ、もう1つの、又はいくつかの不利な特徴を具体的に排除し、さらに他の実施形態が、1つ、もう1つの、又はいくつかの有利な特徴の包含により本発明の不利な特徴を具体的に緩和することを理解されたい。
【0140】
さらに、当業者は、異なる実施形態からの種々の特徴の適応性を認識するであろう。同様に、先に議論されている種々の要素、特徴、及び工程並びにそのような要素、特徴、又は工程の他の公知の等価物を、当業者が混ぜて結びつけ、本明細書に記載されている原理により方法を実施できる。種々の要素、特徴、及び工程のうち、いくつかは具体的に多様な実施形態に含まれるであろうし、他のものは具体的に排除されるであろう。
【0141】
本発明が、特定の実施形態及び実施例の文脈で開示されてきたが、本発明の実施形態が、具体的に開示される実施形態を越えて他の代替実施形態及び/又は使用及び修飾物及び等価物に拡がることを当業者は理解するであろう。
【0142】
多くの変形物及び代替要素が本発明の実施形態に開示されてきた。さらなる変形物及び代替要素は、当業者に明らかであろう。これらの変形物のなかに、限定はされないが、スクリーニングパネル中の、又は治療薬製品に標的にされる特定の数の抗原、抗原の種類、ガンの種類、特定される抗原(複数可)がある。本発明の種々の実施形態は、これらの変形物又は要素のいずれかを具体的に包含又は排除する。
【0143】
いくつかの実施形態において、本発明の特定の実施形態を記載し特許請求するために使用される成分の量を表す数、分子量などの性質、反応条件などが、場合によって「約(about)」という用語により修飾されていることを理解されたい。したがって、いくつかの実施形態において、書かれた記載及び添付される請求項に述べられる数値パラメータは、特定の実施形態により得られるように求められる所望の性質により変動しうる概数である。いくつかの実施形態において、数値パラメータは、報告される有意な桁数に照らし、通常の丸め技術を適用して解釈すべきである。本発明のいくつかの実施形態の広い範囲を述べている数値範囲及びパラメータが概数であるにもかかわらず、特定の実施例に記載された数値は、実行可能な限り正確に報告される。本発明のいくつかの実施形態に表される数値は、それぞれの試験測定に見いだされる標準偏差から生じるある誤差を必然的に含むことがある。
【0144】
いくつかの実施形態において、本発明の特定の実施形態を記載する文脈において(特に以下の請求項のいくつかの文脈において)使用される「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「前記(the)」という用語及び類似の言及は、単数及び複数の両方を含むと解釈可能である。本明細書での値の範囲の列挙は、単に、範囲に入る別々な値のそれぞれを個別に言及する省略方法として機能するものである。本明細書に特に断りのない限り、個別の値のそれぞれは、それは個別に本明細書に述べられているかのように明細書に取り入れられる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に特に断りのない限り、又は文脈により明らかに否定されない限り、任意の好適な順序で実施できる。本明細書の特定の実施形態に関して与えられるいくつか及び全ての実施例或いは例示的な言葉(例えば、「など(such as)」)の使用は、単に、本発明をより良く説明するものであり、他の方法で特許請求される本発明の範囲に制限を設けない。明細書中のどのような言葉も、本発明の実施に必須な任意の非請求要素を示していると解釈されるべきでない。
【0145】
本明細書に開示される本発明の代替要素又は実施形態の分類は、限定として解釈されるものでない。各群の数は、個別に、或いは、群の他の要素又は本明細書に見られる他の要素と任意の組み合わせで言及及び特許請求することができる。群の1つ以上の要素が、簡便のため及び/又は特許性のため、群に含まれ、又は除去されることがある。そのような包含又は除去が起こる場合、その詳述は、修飾され、そのため添付する請求項に使用される全マーカッシュ群の書かれた記載を満たす群を含むと本明細書においてみなされる。
【0146】
本発明の好ましい実施形態は、本発明を実施するための発明者らに知られている最良の形態を含んで、本明細書に記載されている。これらの好ましい実施形態の変形は、上記の記載を読めば当業者には明らかであろう。当業者は、そのような変形物を適宜利用でき、本発明は、本明細書に具体的に記載された以外の方法で実施可能である。したがって、本発明の多くの実施形態は、適用される法律が許可するとおり、本明細書に添付の請求項に列挙されている主題の修飾物及び等価物の全てを含む。さらに、可能な変形物中の上述の要素の任意の組み合わせは、本明細書に特に断りのない限り、又は文脈により明らかに否定されない限り、本発明に包含される。
【0147】
さらに、本明細書全体で、特許及び印刷された刊行物に多くの言及がなされた。上記の引用文献及び印刷された刊行物のそれぞれは、参照によりその全体が個別に本明細書に取り込まれる。
【0148】
終わりに、本明細書に開示される本発明の実施形態は、本発明の原理を表すものであると理解されたい。利用できる他の修飾物は、本発明の範囲の中に入りうる。例えば、限定のためでなく例示のために、本発明の代替構成が、本明細書の開示により利用できる。したがって、本発明の実施形態は、示され記載されたままのものに限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのシストロンを含むベクターであって、第1シストロンが、第1プロモーターと、1種以上の治療薬をコードする第1核酸配列とを含み、第2シストロンが、第2プロモーターと、生体応答調節物質又は前記治療薬の発現に干渉する1種以上のRNA分子とをコードする第2核酸配列を含み、第1配列の発現が第1プロモーターの制御下にあり、第2配列の発現が第2プロモーターの制御下にあるベクター。
【請求項2】
前記ベクターがプラスミドベクター又はウイルスベクターである、請求項1に記載のベクター。
【請求項3】
前記第1プロモーターが、機能的に連結されたプロモーター/エンハンサー配列である、請求項1又は2に記載のベクター。
【請求項4】
前記プロモーター/エンハンサー配列が、CMVプロモーター/エンハンサー配列である、請求項3に記載のベクター。
【請求項5】
生体応答調節物質の発現に干渉する1種以上のRNA分子が、RNAi、siRNA、又はshRNAである、請求項1から4のいずれかに記載のベクター。
【請求項6】
前記第2プロモーターがU6プロモーター配列である、請求項1から5のいずれかに記載のベクター。
【請求項7】
前記生体応答調節物質が、免疫応答の制御又は調節、抗原プロセシング及び提示、又は遺伝子サイレンシングに関与している、請求項1から6のいずれかに記載のベクター。
【請求項8】
免疫応答の制御又は調節に関与している前記生体応答調節物質が、サイトカイン、ケモカイン、共刺激分子、チェックポイントタンパク質、転写因子、及びシグナル伝達分子からなる群から選択される、請求項7に記載のベクター。
【請求項9】
抗原プロセシング及び提示に関与している前記生体応答調節物質が、TAPタンパク質、免疫プロテアソーム、標準プロテアソーム、β2マイクログロブリン、MHCクラスI分子及びMHCクラスII分子からなる群から選択される、請求項7に記載のベクター。
【請求項10】
遺伝子サイレンシングに関与している前記生体応答調節物質が、DNAメチル化剤、クロマチン制御分子及びRNA調節分子からなる群から選択される、請求項7に記載のベクター。
【請求項11】
前記転写因子が、T−bet、STAT−1、STAT−4、又はSTAT−6である、請求項8に記載のベクター。
【請求項12】
前記サイトカインが、IFN−α、IFN−γ、IL−10、IL−18m、IL−12、又はTGF−βである、請求項8に記載のベクター。
【請求項13】
前記共刺激因子が、CD40、B7.1、又はB7.2である、請求項8に記載のベクター。
【請求項14】
前記チェックポイントタンパク質が、FOXp3又はB7様分子である、請求項8に記載のベクター。
【請求項15】
前記抗原プロセシング及び提示分子が、MHCクラスI分子、MHCクラスI分子、又はTAPタンパク質である、請求項9に記載のベクター。
【請求項16】
前記生体応答調節物質が、TLR又はTLR下流シグナル伝達分子である、請求項1から15のいずれかに記載のベクター。
【請求項17】
前記TLR下流シグナル伝達分子が、MyD88又はNFκ−Bである、請求項16に記載のベクター。
【請求項18】
前記生体応答調節物質が、LAG−3リガンドである、請求項1から17のいずれかに記載のベクター。
【請求項19】
前記生体応答調節物質が、樹状細胞活性化抑制剤SOCS1である、請求項1から18のいずれかに記載のベクター。
【請求項20】
前記DNAメチル化剤が、DMNT1である、請求項10に記載のベクター。
【請求項21】
前記1種以上の治療薬が、免疫原を含む、請求項1から20のいずれかに記載のベクター。
【請求項22】
前記免疫原が、腫瘍関連抗原、腫瘍特異性抗原、分化抗原、胎児抗原、癌精巣抗原、発癌遺伝子の抗原、変異した腫瘍抑制遺伝子、染色体転座から生じる独特な腫瘍抗原、ウイルス抗原、及びこれらの断片からなる群から選択される、請求項21に記載のベクター。
【請求項23】
前記免疫原が、腫瘍特異性抗原又はその断片を含む、請求項22に記載のベクター。
【請求項24】
前記免疫原が、腫瘍関連抗原又はその断片を含む、請求項22に記載のベクター。
【請求項25】
前記1種以上の治療薬が、Melan−A、チロシナーゼ、PRAME、PSMA、NY−ESO−1及びSSX−2からなる群から選択される腫瘍抗原である、請求項1から24のいずれかに記載のベクター。
【請求項26】
前記免疫原が、Melan−A26-35、又はそのアナログELAGIGILTVから基本的になる、請求項21に記載のベクター。
【請求項27】
少なくとも2つのシストロンを含むベクターであって、第1シストロンが、第1プロモーターと、1種以上のMelan−Aエピトープをコードする第1核酸配列とを含み、第2シストロンが、第2プロモーターと、生体応答調節物質の発現に干渉する1種以上のRNA分子をコードする第2核酸配列とを含み、第1配列の発現が第1プロモーターの制御下にあり、第2配列の発現が第2プロモーターの制御下にあるベクター。
【請求項28】
生体応答調節物質の発現に干渉する前記1種以上のRNA分子がMelan−A−siRNAである、請求項27に記載のベクター。
【請求項29】
前記ベクターが、pSEM−U6−Melan−A(配列番号6)である、請求項27又は28に記載のベクター。
【請求項30】
少なくとも2つのシストロンを含むベクターを設計する方法であって、同じベクター内で、第1プロモーター、1種以上の治療薬をコードする第1配列、第2プロモーター及び生体応答調節物質又は治療薬の発現に干渉する1種以上のRNA分子をコードする第2配列を配置する工程を含み、第1配列の発現が第1プロモーターの制御下にあり、第2配列の発現が第2プロモーターの制御下にある、ベクターの設計方法。
【請求項31】
前記第1及び第2プロモーターが、テトラサイクリン応答プロモーター、プロバシンプロモーター、CMVプロモーター、及びSV40プロモーターからなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ベクターが、プラスミドベクター又はウイルスベクターである、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
前記プラスミドが、pSEM、pBPL(配列番号7)及びProc(配列番号8)からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記プラスミドが、pSEMプラスミドである、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記ベクター中に、機能的に連結されたプロモーター/エンハンサー配列を配置する工程もさらに含む、請求項30から34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記プロモーター/エンハンサー配列が、CMVプロモーターである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第2配列が、RNAiヘアピン型配列である、請求項30〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記ベクター中に、レポーター遺伝子、選択マーカー及び免疫調節活性又は免疫刺激活性を持つ薬剤の少なくとも1つを配置する工程を含む、請求項30から37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
請求項1に記載のバイシストロン性ベクターにより形質転換された哺乳類細胞。
【請求項40】
請求項1に記載のバイシストロン性ベクター組成物を含む治療薬組成物。
【請求項41】
薬剤的に許容できるキャリアをさらに含む、請求項40に記載の治療薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−528591(P2010−528591A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509582(P2010−509582)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/064801
【国際公開番号】WO2008/148068
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(503208552)マンカインド コーポレイション (50)
【Fターム(参考)】