説明

マルチセンサー

【課題】 本発明は、ヴェーパクロミズム現象を有する新規化合物、及び当該化合物を用いたマルチセンサーを提供することにある。
【解決手段】
本発明の化合物は、式、
[化1]
R4[Pt(pop)X]・nH
(式中、Rは、アルカリ金属イオン、アルキルアンモニウムイオン、歩きルジアンモニウム、Xは、ハロゲンイオンである。popは、POH2−である。)からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物及びそれを用いたマルチセンサーに関し、特に、ヴェーパクロミズム現象を有する新規化合物、及びそれを用いたマルチセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
この数10年間の間に、一次元(1D)物質は、化学及び物理学の両方の分野において大きな注目を浴びている。なぜなら、それらは1D構造から生じる特徴的な光学特性及び磁性及びトランスファー特性を示すからである。いくつかの1D物質は、揮発性有機化合物(VOC)及び水蒸気へさらした際、色及び/又は蛍光における飛躍的不可逆的変化を示すことを報告した。蒸気の存在下におけるこれらの分光変化は、vapochromismとよばれ、化学気相センサー装置への現象を保証する(C.L. Exstrom, J. R. Sowa, Jr., C.A.Daws, D. Janzen, and K.R.Mann, Chem. Mater. 1995, 7, 15-17; b)C. A. Daws, C.L. Exstrom, J.R. Sawa, Jr., and K. R. Mann, Chem. Mater. 1997, 9, 363-368. c) M.A. Mansour, W.B. Connick, R. J. Lachicotte, H. J. Gysling, and R. Eisenberg, J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 1329-1330; d)C. E. Buss and K.R. Mann, J. Am. Chem. Soc. 2001, 124, 1031-1039.など)。
【0003】
【非特許文献1】C.L. Exstrom, J. R. Sowa, Jr., C.A.Daws, D. Janzen, and K.R.Mann, Chem. Mater. 1995, 7, 15-17;
【非特許文献2】C. A. Daws, C.L. Exstrom, J.R. Sawa, Jr., and K. R. Mann, Chem. Mater. 1997, 9, 363-368.
【非特許文献3】M.A. Mansour, W.B. Connick, R. J. Lachicotte, H. J. Gysling, and R. Eisenberg, J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 1329-1330;
【非特許文献4】C. E. Buss and K.R. Mann, J. Am. Chem. Soc. 2001, 124, 1031-1039.など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水分を脱吸着して色が変化する現象、いわゆるヴェーパクロミズム現象を有する化合物はこれまでも見出されているが、この現象に加えて、他の物理特性などにおける変化を有する化合物についてはこれまで知られていない。
また、水蒸気を感知するセンサーは多いが、磁性や電子状態まで連動して変化するセンサーは存在しない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、ヴェーパクロミズム現象を有する新規化合物、及び当該化合物を用いたマルチセンサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、発明者らは、ナノワイヤー原子価錯体について鋭意研究を重ねた結果、本発明の化合物及び当該化合物を用いたマルチセンサーを見出すに至った。
【0007】
すなわち、本発明の化合物は、式、
[化1]
R4[Pt(pop)X]・nH
(式中、Rは、アルカリ金属イオン、アルキルアンモニウムイオン、歩きルジアンモニウム、Xは、ハロゲンイオンである。popは、POH2−である。)からなることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の化合物の好ましい実施態様において、R4が、[NH3(CH)NH3]であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の化合物の好ましい実施態様において、Xが、Iであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のマルチセンサーは、請求項1記載の化合物を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の化合物によれば、バルクの結晶レベルでも、ナノサイズレベルでも応用可能であり、応用範囲が広いという有利な効果を奏する。
【0012】
また、本発明の化合物を用いたセンサーは、色の変化のみならず、磁性及び電子状態の変化も同時に感知することが可能であり、マルチセンサーとしての応用範囲が広いという有利な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の化合物は、式、
[化2]
R4[Pt(pop)X]・nH
(式中、Rは、アルカリ金属イオン、アルキルアンモニウムイオン、歩きルジアンモニウム、Xは、ハロゲンイオンである。popは、POH2−である。)からなる。このましくは、R4が、[NH3(CH)NH3]である。また、好ましくは、Xが、Iである。
【0014】
本発明の新規化合物は、より高感度に色、磁性等を認知できるマルチセンサーを提供しうるという観点から、[NH3(CH)NH3][Pt(pop)I]・4H0(pop=POH2−)からなることが好ましい。このような化合物は、後述するように、温度の変化、又は湿度の変化に伴って、水分子を吸脱着することが可能であり、ひいては、色の変化(例えば、緑と金色)、磁性の変化(常磁性と反磁性)、及び電子状態の変化(例えば、電荷分極相と電荷密度波状態)などを利用して、水蒸気の脱吸着に基づくマルチセンサーとして使用すること可能である。
【0015】
すなわち、本発明は、ナノワイヤー白金混合原子価錯体における水蒸気の脱着による色の変化(緑と金色)とそれに伴う磁性の変化(常磁性=電荷分極相と反磁性=電荷密度波状態)を感知するセンサーとして応用することができる。水分を脱着して色が変わる現象をヴェーパクロミズムというが、本発明の新規化合物はこの現象に加えて、電子状態の変化(電荷分極相と電荷密度波状態)が伴い、磁性も変化をするというこれまでにない現象であり、分子デバイスとしての基盤技術となる。
【0016】
本発明の化合物は、(室温)では水分子を有しており、架橋イオン(X)、例えばヨウ素イオンなどが白金間の中央から1方向にずれているためにPtII−PtIII−X...PtII-PtIII−Xの電化分極相を取ることができる。
【0017】
例えば、[NH3(CH)NH3][Pt(pop)I]・4H0の錯体は電荷移動吸収帯を2.37eVにもつために緑色をしている。またPtII-PtIII上に不対電子をもつために常磁性である。ラマン散乱もv(PtII-PtIII)が98cm−1に観察される。一方、340K(摂氏66度)以上に温度を上昇させると、水分子が脱着する。この脱着に伴って架橋イオン(X)が2倍周期に対称にずれた...PtII−PtII...X-PtIII−PtIII-X..電荷密度波状態となる。このために不対電子はなくなり、反磁性となる。また電荷移動吸収帯が1.12eVまで低エネルギー側にシフトするために金色となる。ラマン錯乱がv(PtII−PtII)が86cm−1に、v(PtIII−PtIII)が94cm−1に観測される。
【0018】
このような色の変化と磁性の変化と電子状態の変化が何度も繰り返し観察される。このためにセンサーとして応用することができることがわかる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定して解釈される意図ではない。
【0020】
一次元電子系は、基礎科学及び用途の両方の関心から十分注目を浴びている。用途の観点から、これらの系は、非線形光学及びナノ電子デバイスの分野において非常に見込みがある一方、基礎科学の観点から、多くの特徴的な物理特性、例えば、スピン電子ウエーブ(SDW)、チャージ電子ウエーブ(CDW)、及び有機コンダクターにおける金属状態、π共役ポリマーにおける孤立、ポラロン、バイポラロンなどが観察される。これら化合物の中で、それらの電子状態の波長可変性、光学及び磁性特性の生じた多量の種類のために、準1次元ハロゲン結合二核Pt錯体は、魅力的なターゲットである。これら二核Pt錯体は、結合ハロゲンイオン及び二核Ptイオンの位置に依存する4つの酸化状態、例えば、(1)平均バランス状態、(2)CDW状態、(3)チャージ分極状態、及び(4)選択チャージ分極状態、を取ることができる。
【0021】
そこで、当方は、MMX(金属―金属―ハロゲン)鎖における増大した温度でチャージ分極とCDW状態との間の相転位に伴う最初の新規ヴェーパクロミズム(vapochromic) 現象について検討を行った。
【0022】
典型的なヴェーパクロミック材料は、Pt(CNR)2+方向及びPt(CN)42-方向を選択する直線鎖を形成する平面四角形のPtII化合物である[Pt(CNR)4][Pt(CN)4](R=p-CN-C6H4-CH2n+1;n=1,2,6,10,12,14)化合物の系である。これら錯体のバポクロミズムは、パイエルス及びスピンーパイエルス不安定性などの1D電子構造不安定性と関係が無いPt-Pt距離における変化のためであると示唆される。
【0023】
当方は、1D系への相転位特性を経て行われる新しいタイプのヴェーパクロミズムを見出した。本発明の化合物は、構造及び光学特性におけける顕著に変化し、蒸気によって可逆的な相転移を示す1Dハロゲン結合二核白金化合物である。この化合物は、M=Pt及びX=Iで金属―金属―ハロゲン(M−M-X)単位を繰り返す1D鎖構造化合物を有し、MMX鎖と呼ばれる。
【0024】
MMX鎖化合物において、1D電子構造は、Mのdz2軌道及びXのp軌道によって形成される。Mの通常のバランスは、2.5+であり、3つの電子が2つのdz2軌道当たりに存在する。4つのチャージオーダー(CO)状態は、以下に示すようにこの系において理論的に予想される。
【0025】

(a) ―M2.5 +−M2.5+―x−M2.5+−M2.5+-X- (平均バランス(AV)状態)
(b) ―――M2+-M2+---X-M3+-M3+−X--- (チャージ密度ウエーブ(CDW)状態)
(c) ―――M2+-M3+-X---M2+-M3+-X--- (チャージ分極(CP)状態)
(d) ―――M2+-M3+-X-M3+-M2+---X--- (選択チャージ分極(ACP)状態)
【0026】
MMX鎖化合物の2つのファミリー、すなわち、R4[Pt2(pop)4X]nH2O(pop=p2O5H22-;R=K,NH4;X=Cl,Br)及びM2(dta)4I(M=Pt,Ni,dta=CH3CS2-)は、本研究の初期の段階において判明した。前者のグランド状態は、CDWであると明らかにされた。Pt2(dta)Iに対して、CPからACPへの転移は、80Kで生じると示唆される一方、Ni2(dta)4Iは、AV状態を有すると考えられる。I結合化合物は、Cl又はBr結合化合物よりXのp軌道とMのd軌道との間のより大きいハイブリダイゼーションを有し、種々のCO状態は安定化されると予想される。当方は、アルカリ金属(R=Na、NH4、Rb及びCs)及びアルカリアンモニウム[R=CnH2n+1NH3、(CH2n+1NH2及びR’=NH3(CnH2n)NH3]の異なるカウンターカチオンを有する、R4[Pt2(pop)4I]nH2O及びR‘[Pt2(pop)4I]nH2Oの約20の化合物を合成し、それらの置換はPt-I-Pt距離(d(Pt-I−Pt)が広範に変化し、PtPtI鎖の電子構造が、反磁性CDW及び常磁性CP状態間に制御されることを証明した。得られた相ダイアグラムを、最も低いチャージトランスファー(CT)エネルギーEctは、d(Pt-I−Pt)の関数としてプロットされる図1に示す。相境界線は、約d(Pt-I-Pt)=6.1オングストロームに位置する。さらに、当方は、[(CHNH][Pt(pop)I](図1における材料17)における CP及びCDW状態間の圧力及び光誘導相転移を報告した。本研究における目標材料は、常磁性CP状態と反磁性CDW状態との間の転移を伴う新規ヴェーパクロミック作用を示す[NH3(CH)NH3][Pt(pop)I]・4H0(図1の材料18)である。
【0027】
実施例2
次に、ヴェーパクロミズム現象を良好に示す[NH3(CH)NH3][Pt(pop)I]・4H0について詳細に検討を行った。
【0028】
図2は、296Kでの[NH3(CH)NH3][Pt(pop)I]・4H0(以下、1という。)の結晶構造の透視図を示す。2つのPt原子が、4つのpop配位子によって結合され、Pt2(pop)ユニットを形成する。2つの隣接するPt2(pop)ユニットは、Iイオンによって結合し、c軸に沿ってPtPtI直線鎖を形成する。図において表現されたように、結合するIイオンは、隣接Pt-Ptユニット化の真中から半占有状態で無秩序となる。なぜなら、Iイオンの置換は、3次元的に規定されてないからである。x線構造解析から、それゆえ、1のグランド状態がCDWかCPであるかを決定するのは困難である。Pt-Pt距離は、2.837オングストロームであり、[PtII(pop)I]・2H0(2.925オングストローム)のものと、[PtIII(pop)I](2.755オングストローム)のものとの間の中間の距離である。より短く、より長い距離は、それぞれ、2.722オングストロームと、4.249オングストロームである。カウンターカチオンNH3(CH)NH32+は、4つの鎖の間の空間に位置し、pop配位子へのH結合を形成する。4つのH2O分子は空間において位置する。
【0029】
ラマンスペクトルを1のCO構造についての情報を得るために測定した。図3は、1の極性ラマンスペクトルである。80〜100cm−1の強いシグナルは、Pt-PtユニットのPt-Ptストレッチングモードv(Pt-Pt)へ寄与する。296Kで、シグナルv(Pt-Pt)バンドを、98cm-1で観察して、Pt-Ptユニットの1つの種類のみの形成を示す。相対的に弱いバンドが約115cm-1でも観察された。このバンドは、隣接Pt-Ptユニット間の真中からIイオンの置換によって活性化されたPt-I伸縮モードへ割り当てることができる。この事実は、上述した1の結晶構造と一致する。これらの結果から、それゆえ、296Kでの1のグランド状態は、CPであると考えられる。温度を296Kから340Kへ上げたとき、v(Pt-Pt)バンドは明らかに2つの成分へ分裂し、2つの種類のPt-Ptユニット、この場合、PtII−PtII(86cm-1)及びPtIII−PtIII(94cm-1)がある一方、Pt=I伸縮モードは、なお活性化されているようにみえる。それゆえ、340Kでの電子相は、CDWへ分類される。
【0030】
1の最も印象的な特徴は、CPからCDWへの転移は、結晶の顕著な色変化を伴うことである。サンプルの偏光反射スペクトル及び、対応する顕微鏡像を図4a)に示す。296Kで、1は、イエローグリーンである。温度を約340Kまで上げると、サンプルの色は、レッドーブラウンへ変化する。296Kで2.37eVでのピークは、イエローグリーン色へ変化する一方、340Kでのレッドブラウン色は、近赤外線領域から約2eVへの強い反射バンドの結果が主である。このような色クロミズムは、また、図4b)の光学伝導性スペクトル(σ)から確認される。図から証明されるように、Ectは、劇的に2.37eV(520nm)から1.12
eV(1110nm)へシフトする。このスペクトル変化は、以前に報告されたヴェーパクロミック材料のものより大変大きい。MMX鎖化合物の光学励起における以前の理論的研究からCP相において2.37eVで観察される最も低いCTバンドは、[-I---Pt2+−P3+−I---Pt2+−Pt3+−I-]から[-I-Pt3+−P2+−--I---Pt2+−Pt3+−I-]への内部二量体CT励起に割り当てられる一方、CDW相において1.12eVでのCTバンドは、[-I---Pt2+−P2+−I---Pt3+−Pt3+−I-]から[-I-Pt2+−P3+-I---Pt2+−Pt3+−I-]への外部二量体へ寄与する。すなわち、CP―CDW転移、及び光学的ギャップの起源から生じた変化は、観察されるクロミズムを担う。340KでのギャップエネルギーEct=1.12eVは、図1に示すように、CDW相における化合物のものとほとんど等しい。それゆえ、観察されたCP―CDW転移はd(PT-I-Pt)における減少によって行われると考えるのが自然である。
【0031】
相転移のメカニズムの洞察を得るために、熱質量分析(TGA)をドライ窒素雰囲気中で行った。TGAの結果を図5に示す。温度を室温から上げたとき、1は、穏やかな重量損失を示し、395Kで5.450%放出した。この値は、配合ユニット当たり4つのH2O分子の損失に対して計算したもの(5.365%)と良好に一致する。その後、この化合物は、およそ500Kまで少ない質量損失を示す(<0.5%)。レッドーブラウン相(CDW)は、結晶を室温へ冷却及び/又は水蒸気へさらすことによって、背景をもとのイエローグリーン(CP)相へと変化する。これらの結果は、ヴェーパクロミック反応が、不可逆的であり、CP及びCDW間のトランジションが、水分子の吸収及び脱離によってトリガーされることを証明する。パウダーX線回折測定もヴェーパクロミック構造変化を調べるために行った。真空中で353Kで加熱した1の集められたX線パターンは、固体がある新しいがまだ未同定の結晶構造へ変化することを示す。さらに構造の研究がこの構造転移の詳細を決定するのに必要であろう。
【0032】
結論として、当方は、MMX化合物、[NH3(CH)NH3][Pt(pop)I]・4H0において、常磁性CP状態と反磁性CDW状態との間の相転移にともなう新規可逆的ヴェーパクロミック作用を見出した。ここで提出される結果は、MMX鎖化合物がさらなる化学気相センサー装置の候補であることを予期する。
【0033】
出発化合物、K[Pt(pop)]・2H0及びK[Pt(pop)I]を以前に述べた方法によって調整した。すなわち、合成方法は、KPtCl4と亜リン酸を水に溶かし120℃で、2時間加熱することにより、K[Pt(pop)]・2H0が得られる。これを水に溶かし、I2を加えて酸化するとK[Pt(pop)I]が得られる。1のシングル結晶をH形状ガラスセルを使用する標準拡散法によって成長させた。[NH3(CH)NH3]SO4の2ml水溶液(2mg)及び問うモル量のK[Pt(pop)]・2H0(20mg)及びK[Pt(pop)I](20mg)の2ml水溶液をセルの両端に置き、室温で水中でゆっくりと拡散させた。1週間後、イエローグリーンニードル結晶を得た。元素分析は、以下のとおりである。
【0034】
C10H48IN4O24P8Pt2に対する計算値(%):C7.14;H3.30;N4.16
理論値:C7.15;H3.20;N4.13
【0035】
1のX線構造分析は、グラファイト単色Mo-Kα放射を有する(λ=0.7107オングストローム)を有するRigaku RAXIS-RAPID像プレート回折計を使用して行った。296Kでの1の結晶データ:Mr=1343.31、テトラゴーナル、space group I4/m、α=13.3473(8)オングストローム、c=9.8091(7)恩グストローム、V=1747.5(2)オングストローム3、Z=2、ρcal=2.553gcm−3、最終R=0.0351、wR=0.138、I>3.00ρ(I)でGOF=1.587。CCDC245189は、この論文の補足的結晶グラフィックデータを含む。
【0036】
1の極性ラマンスペクトルは、cwHe-Neレーザー(1.96eV)及び光学顕微鏡を有するRenishow Ramanscope 1000B ラマンスペクトルメータを使用して測定された。極性反射スペクトルは25cm格子モノクロメーター及び光学顕微鏡を有する特別に設計されたスペクトロメータを使用することによって得られる。TGAは、Rigaku Thermo Plus2TG 8120を使用して乾燥窒素ガス雰囲気下で行った。
【0037】
これらの結果をまとめると、296Kで本発明の化合物は、4H2O分子を有し、チャージ分極状態を取った。それは、ラマンスペクトルにおいて、98cm-1でシングルPtII−PtIIIモードを示し、約2.4eVでPtIIからPtIIIへのチャージトランスファーバンドを示す。340Kで、本発明の化合物は4H2Oを放出し、CDW状態へ変化する。この転位後、ラマンスペクトルにおけるPt-Ptバンドは、86cm-1でPt II−Pt IIモードへ、94cm-1でPtIII−PtIIIモードへ分裂し、チャージトランスファーバンドは、1.1eVへ顕著なレッドシフトを示す。このvapochromic動作は、温度を変え、及び/又は気化水へさらすことによって繰り返し行われる。
【0038】
このような結果から、本発明の化合物は、室温、又は蒸気下では、[-I---Pt2+−P3+−I---Pt2+−Pt3+−I-]の電荷密度波状態をとり、Pt2+−Pt3+上に1個の不対電子が存在するので、常磁性をとり、色は緑色を示す。また、高温、又は蒸気が無い状態では、Pt2+−P2+−--I-Pt3+−Pt3+−I]の電荷密度波状態を示し、すべての電子が対を作ってしまうために反磁性であり、金色である。
【0039】
つまり、本発明の化合物を用いれば、蒸気の程度を色の変化及び磁性の変化で感知することが可能であり、いわゆるマルチセンサーとして使用することができることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0040】
ナノワイヤー白金混合原子価錯体において、ヴェーパクロミズムとそれに伴う電子状態の変化及び磁性の変化が連携する現象は世界で始めてであり、非常に画期的な発明である。水蒸気の吸脱着にともない色の変化と磁性の変化と電子状態の変化を同時に感知するマルチセンサー・分子デバイスとして応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、ヨウ素イオンによって結合された2つのPtイオン間の距離d(Pt-I‐Pt)の関数としてCTバンドECTのピークエネルギーを示す。
【図2】図2は、[NH3(CH)NH3][Pt(pop)I]・4H0化合物の結晶構造を示す。H原子は、明確化のために省略された。
【図3】図3は、a)296K、b)340Kでのz(xx)z(x並行c軸)の分極に対する分極ラマンスペクトルを示す。
【図4】図4は、296K及び340Kでの[NH3(CH)NH3][Pt(pop)I]・4H0化合物におけるc軸に並行な光の分極を有するa)分極反射率、b)光導電性スペクトルを示す。
【図5】図5は、5K/分のドライ窒素浄化下の[NH3(CH)NH3][Pt(pop)I]・4H0化合物のTGA透写を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式、
[式1]
R4[Pt(pop)X]・nH
(式中、Rは、アルカリ金属イオン、アルキルアンモニウムイオン、歩きルジアンモニウム、Xは、ハロゲンイオンである。popは、POH2−である。)からなる化合物。
【請求項2】
R4が、[NH3(CH)NH3]である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Xが、Iである請求項1又は2項に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1〜3項のいずれか1項に記載の化合物を用いたマルチセンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−76972(P2006−76972A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265394(P2004−265394)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】