説明

マルチパスセル

【課題】汎用性を有し、光路長を無段階に可変できるマルチパスセルを提供する。
【解決手段】マルチパスセル10は、ガイドレール25上を移動する互いに対向する第1鏡面ユニット11と第2鏡面ユニット12とからなり、該鏡面ユニット11,12は、反射部13,18とベース14,19とから構成される。反射部は複数枚の鏡15,20からなり、該鏡15,20はロッド16,21で支持されている。該ロッド16,21は、ガイドスリット17,22に係合され、ロッドの基端はガイドスリット内で自在に移動し、またロッドは各個独立に回動する。そして、制御部30によって、鏡15,20の間隔と回転角が調整され、投光レンズユニット40からの入射光束を所定の回数で反射させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光器或いは光共振器の光学系を構成するマルチパスセルに関し、特に入射光を鏡面間で多重反射させて長距離の光路長を確保するマルチパスセルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分光器或いはレーザ光源の光共振器を構成するマルチパスセルが知られている。該マルチパスセルは、一対の凹面鏡の間へ平行光束を入射し、該平行光束を凹面鏡間で多重反射させることにより、鏡面間の距離に対して長距離の光路長が形成されるものである。
【0003】
上記のマルチパスセルは、例えば図3に示すように、凹面鏡M1,M2の曲率半径R1,R2が等しく、当該曲率半径R1,R2は凹面鏡間の距離lよりも僅かに短く構成されているものである。当該マルチパスセルは、凹面鏡M1の中心O1と、凹面鏡M2の中心O2は、同一のm軸上に位置し、凹面鏡M1の焦点O1’と凹面鏡M2の焦点O2’との間は間隔Δfの距離で離されている。またここで、焦点O1’と焦点O2’との中間点をOとする。
図3(a)のマルチパスセルでは、焦点O1’に入射角度θで光束を入射させると、当該光束は凹面鏡M1,M2間で多重反射して、最終的にはm軸上に集束する。そのため、入射された光束は当該マルチパスセルによって形成される光学系(以下、「マルチパス光学系」という)の外へは出射しない。
したがって、当該マルチパスセルで形成される光学系は、光量が小さく増幅させる必要のある蛍光スペクトル又はラマンスペクトルの測定に用いられ、軸mの中間点Oで垂直にフィルター等で当該蛍光スペクトル又はラマンスペクトルが抽出されている。
また、レーザ光源の光共振器として用いる場合、レーザ励起源から入射された光を凹面鏡間のm軸上で共振させて増幅した後、出射している。
【0004】
また他のマルチパスセルの例として、図3(b)に示すように、凹面鏡M1,M2を共に任意の角度Θで傾斜させたものもある。この場合、凹面鏡M1,M2の中心O1,O2がm軸上に位置すると共に、焦点O1’,O2’がm軸の中間点Oを通り、該m軸に対して直角なn軸上に間隔Δfで配されているとき、任意の角度θで焦点O1’に入射された光束は、凹面鏡M1,M2間で複数回多重反射した後に、当該マルチパス光学系の外へ出射する。そのため、図3(b)に示したマルチパスセルは、入射光量が比較的大きい可視光の分光分析や、赤外スペクトルの測定に用いられている。
【0005】
さらに、マルチパス光学系は、上記のように一対の鏡によって構成されるものに限らず、3枚以上の鏡で構成されたマルチパス光学系を有する分光器或いは光共振器も知られている。例えば、特開2005−69971号公報に開示されているマルチパスモノクロメータは、光ファイバ1からの入射光を放物面鏡2で反射させた後、回折格子3で回折させた光を平面鏡11,12で反射干渉させて少なくとも4度回折させている。
上記のように、複数の鏡で構成されたマルチパスセルを用いた分光器は、装置を小型化することができ、光路長を長距離化して高分解能を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−69971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のマルチパス光学系は、鏡面間距離を変更した場合、上記凹面鏡の焦点位置がズレたり、また上記マルチパスモノクロメータにおいては、回折格子への入射位置がズレたり、或いは鏡面間距離に対して反射角度が大きすぎて反射光が回折格子に入射しないおそれがある。
そのため、対向する凹面鏡間の距離は、使用する凹面鏡の曲率半径に応じて固定されることから、一旦設定した凹面鏡間距離を変更し、また、測定目的に合わせて自在に光路長を変更することは難しい。
一方、測定目的に合わせて光路長を変更する場合、鏡面間距離に応じて予め定められた曲率半径を有する複数の凹面鏡セットを、その都度用意しなければならない。
加えて、光路長を稼ぐために、入射光束を鏡面間で反射させる回数を調整する必要があるが、新たに凹面鏡を設置した場合、凹面鏡への入射光の入射角度と反射角度を考慮して、光路を再設計しなければならない。
したがって、上記のような従来のマルチパス光学系は、曲率半径の異なる凹面鏡を何枚も用意しなければならず、調整等のメンテナンスに時間がかかり、汎用性に欠けるという問題がある。
【0008】
一方、曲率半径の異なる複数の凹面鏡を用意した場合であっても、鏡面間距離lは、当該凹面鏡の曲率半径に応じた距離に段階的に設定されることになるので、鏡面間距離lを無段階に変化させることができない。
そのため、光路長を無段階に変化させることができないという問題がある。
【0009】
上記の課題を解決しようとする本発明は、汎用性を有し、光路長が無段階に可変できるマルチパスセルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載のマルチパスセルは、第1鏡面ユニットと第2鏡面ユニットの鏡面を対向配置した一対の鏡面ユニットからなり、
入射光を平行光束に形成する投光レンズユニットより入射された平行入射光が、前記鏡面ユニット間で複数回反射するマルチパスセルであって、
前記第1鏡面ユニットは、複数枚の鏡を並設した第1反射部を第1ベース上に設け、
前記第2鏡面ユニットは、複数枚の鏡を並設した第2反射部を第2ベース上に設け、
前記第1ベース及び前記第2ベースの上面に立設したロッドが前記鏡をそれぞれ回動可能に支持し、
前記第1反射部及び前記第2反射部を構成する前記鏡を各個独立に回動させることにより反射角度を調整する反射角度調整手段を有する制御部を設け、
前記投光レンズユニットから入射された入射光を、前記第1反射部と前記第2反射部との間で、2回乃至前記鏡の個数分のうちのいずれかの回数で、複数回反射させるようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載のマルチパスセルは、請求項1に記載の発明において、前記第1ベース上に設けた弧状のガイドスリットに前記ロッドの基端を係合し、該ロッドを所定間隔で配列させる第1反射部間隔調整手段と、
前記第2ベース上に設けた弧状のガイドスリットに前記ロッドの基端を係合し、該ロッドを所定間隔で配列させる第2反射部間隔調整手段とを前記制御部に設け、
前記第1反射部間隔調整手段及び前記第2反射部間隔調整手段、並びに前記反射角度調整手段によって前記鏡の間隔と反射角度を調整することにより、前記第1反射部と前記第2反射部とが、あたかも対向する凹面鏡のように構成されて、
前記第1反射部と前記第2反射部の曲率半径が、任意の大きさに形成されると共に、前記第1反射部と前記第2反射部の焦点が、所定の位置に配置されるようにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載のマルチパスセルは、請求項1若しくは請求項2に記載の発明において、前記第1ベースと前記第2ベースに摺動部を設け、該摺動部を同一のガイドレールに係合させて、
前記第1ベースと前記第2ベースとが、互いに平行に移動するように設け、
前記制御部に、前記第1反射部と前記第2反射部の曲率半径に応じて、前記第1鏡面ユニットと前記第2鏡面ユニットとの間の距離を調整するユニット間隔調整手段を設けて、
前記投光レンズユニットから入射される入射光の光路長を無段階に調整するようにしたことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載のマルチパスセルは、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の発明において、前記第1反射部及び前記第2反射部を構成する前記鏡が、平面鏡であることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載のマルチパスセルは、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の発明において、前記第1反射部及び前記第2反射部を構成する前記鏡が、凹面鏡であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載のマルチパスセルによれば、第1反射部及び第2反射部を構成する複数個の鏡の反射角度を調整する反射角度調整手段を制御部に設け、該鏡を各個独立に回動させるようにした。そのため、第1反射部と第2反射部との間へ入射させた入射光を所定回数反射させることができる。
そして、第1反射部及び第2反射部の中心に入射光を集束させるマルチパス光学系を構成したり、或いは、当該入射光をマルチパス光学系の外に出射させるように構成したりと、任意に光学系を構成することができる。
さらに、第1反射部及び第2反射部を構成する鏡は各個独立に回動するので、第1反射部及び第2反射部からなるマルチパス光学系において、2回乃至構成する鏡の個数に応じた回数にわたって、複数回反射させることができる。そのため、当該マルチパス光学系の光路長を無段階に調整することができる。
したがって、入射光の入射角度に応じて鏡の回転角度を調整することにより、高い汎用性を備えたマルチパスセルを提供することができる。
また、入射角度を変更させた場合であっても、同様に、各鏡の回転角度を調整することにより、可及的に入射光を捉え、対向する他の鏡に反射光を入射させることができ、所定回反射させることができる。
【0016】
請求項2に記載のマルチパスセルによれば、第1反射部及び第2反射部を構成する各鏡を支持するロッドを弧状のガイドスリットに係合し、該ロッドの間隔を調整する第1反射部間隔調整手段及び第2反射部間隔調整手段を設けることにより、鏡を弧状に配することができるので、第1反射部及び第2反射部を凹面鏡に似た構成にすることができる。そのため、各鏡の回転角度を調整すると共に、各鏡の間隔を調整することにより、第1反射部と第2反射部の曲率半径を自在に拡大又は縮小させることができ、また第1反射部及び第2反射部の焦点を、例えば同一光軸上に位置させる等、所定の位置に配することができる。
したがって、入射光の入射角度に応じて、鏡の回転角度と各鏡の互いの間隔を調整することによって第1反射部及び第2反射部の曲率半径の大きさと焦点位置を任意に決定することができるので、高い汎用性を備えたマルチパスセルを提供することができる。
【0017】
請求項3に記載のマルチパスセルによれば、第1ベースと第2ベースにキャスタを設けて、該キャスタがガイドレール上を移動するようにした。そのため、上記のように各鏡の回転角度と間隔を調整し、さらに第1鏡面ユニットと第2鏡面ユニットの間隔を調整することができるので、光路長を無段階に調整することができる。
したがって、入射光の入射角度に応じて、鏡の回転角度と各鏡の互いの間隔を調整することによって第1反射部及び第2反射部の曲率半径の大きさと焦点位置を任意に決定することができ、さらに鏡面ユニット間の距離も任意の長さに調整することができるので、高い汎用性を備えたマルチパスセルを提供することができる。
【0018】
請求項4に記載のマルチパスセルによれば、マルチパスセルの第1鏡面ユニットの第1反射部と第2鏡面ユニットの第2反射部を構成する鏡を平面鏡から構成した。当該平面鏡は比較的安価に入手することができるので、マルチパスセルの製造コストを抑えることができる。
したがって、上記の高い汎用性に加えて、安価なマルチパスセルを提供することができる。
【0019】
請求項5に記載のマルチパスセルによれば、マルチパスセルの第1鏡面ユニットの第1反射部と第2鏡面ユニットの第2反射部を構成する鏡を凹面鏡から構成した。当該凹面鏡は、比較的小型に製造される。そのため、より大きな直径を有する凹面鏡を製造する場合に比べて、歪み等の誤差が生じにくい。また、曲率半径の誤差が生じた場合であっても、上記のように、各鏡の回転角度を調整することができるので、容易に当該歪み誤差を修正することができる。さらに、凹面鏡の場合、反射光が焦点に集束するので、反射光の制御を容易に行うことができる。
したがって、誤差の修正が容易なマルチパスセルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施例に係るマルチパスセルの構成の概略を示す平面図である。
【図2】第1実施例に係るマルチパスセルの使用方法を説明する説明図である。
【図3】従来のマルチパスセルの構成の概略を示す平面図である。
【実施例1】
【0021】
本発明のマルチパスセルの実施例を添付した図面にしたがって説明する。本実施例に係るマルチパスセルの構成の概略を図1に示す。
【0022】
マルチパスセル10は、互いに対向する第1鏡面ユニット11と第2鏡面ユニット12とからなる。
該マルチパスセル10と、該マルチパスセル10内に平行光束を入射させる投光レンズユニット30とからマルチパス光学系が構成され、該マルチパス光学系の外へ平行光束が出射された場合には、受光レンズユニット40に当該平行光束を受光させることができるように構成されている。
【0023】
第1鏡面ユニット11は、第1反射部13と第1ベース14とからなる。
第1反射部13は、並設された複数枚の鏡15からなる。
鏡15は、それぞれ下端にロッド16が取り付けられている。該ロッド16は第1ベース14上で回動可能に立設されている。そのため、鏡15は、ロッド16を介して第1ベース14上で各個独立に回動する。鏡15は、直径が1cm乃至20cm程度の丸鏡か、若しくは幅1cm乃至20cm程度の矩形の鏡である。また、本実施例においては、平面鏡を用いたが、これに限定されるものではなく、同程度の大きさの凹面鏡を用いても良い。
第1ベース14の上面には、弧状のガイドスリット17が形成されている。該ガイドスリット17には、ロッド16の基端が係合している。そのため、各ロッド16はそれぞれガイドスリット17の円周方向に沿って移動することができる。
【0024】
第2鏡面ユニット12は、第2反射部18と第2ベース19とからなる。
第2反射部18は、並設された複数枚の鏡20からなる。鏡20はロッド21で支持されている。該ロッド21は第2ベース19上で回動可能に立設されている。そのため、鏡20もまた第2ベース19上で各個独立に回動する。
第2ベース19の上面には、第1ベース14のガイドスリット17に対向するガイドスリット22が形成されている。該ガイドスリット22にはロッド21の基端が係合している。そのため、各ロッド21も、ロッド16と同様に、ガイドスリット22の円周方向に沿って移動することができる。
【0025】
第1ベース14と第2ベース19の下端には、ガイドレール25に嵌合されるスライダー等からなる摺動部(図示略)が設けられている。該摺動部は、ガイドレール25上を摺動する。そのため、同一ガイドレール25上に配された第1ベース14と第2ベース19は、ガイドレール25に沿って互いに平行に移動する。
【0026】
鏡15,20の回転角度と、第1ベース14又は第2ベース19の移動は制御部30で制御される。
制御部30は、中央演算装置(CPU)31と、内部メモリ32と、外部記憶媒体33とからなり、鏡15,20をガイドスリット17,22の円周方向に沿って移動させると共に、第1反射部を構成する鏡15又は第2反射部を構成する鏡20の間隔と回転角度を調整する。
この調整によって、鏡15,20の配列を変更することができる。そのため、第1反射部13又は第2反射部18の曲率半径を変更することができる。そして変更後の曲率半径に応じて、第1ベース14と第2ベースとをガイドレール25上でスライドさせて離合し、鏡面ユニット11,12間の距離を調整する。
上記の制御によって、第1鏡面ユニット11と第2鏡面ユニット12間を反射する光束の光路長を無段階に調整することができる。
【0027】
投光レンズユニット40は、複数のレンズからなり、少なくとも一個のコリメータレンズを有する。これにより、投光レンズユニットに入射された光は、平行光束に集光変換されてマルチパスセルへ入射される。
また、受光レンズユニット45も、好ましくは複数のレンズから構成されている。受光レンズユニット45は、該受光レンズユニット45及び投光レンズユニット40、並びにマルチパスセル10からなるマルチパス光学系の外に光束が出射された際に用いられる。
一方、受光フィルタ46は第1鏡面ユニット11と第2鏡面ユニット12の中間に配され、第1鏡面ユニット11と第2鏡面ユニット12の光軸が同一直線m上に位置するように調整した際に、当該光軸に集束する光束を、第1鏡面ユニット11と第2鏡面ユニット12の中間点Oから取り出すことができるように構成されている。
受光レンズユニット45及び受光フィルタ46は測定目的に合わせて任意に選択することができるように配設されており、例えば、可視光スペクトル分析や赤外スペクトル分析の際には受光レンズユニット45が測定に用いられ、また、蛍光スペクトル分析やラマンスペクトル分析の際には受光フィルタ46が用いられる。
【0028】
上記の構成を有するマルチパスセル10は、以下のように使用される。当該使用方法を添付した図2にしたがって説明する。図2は、図1に示したマルチパスセル10の構成の概略を一部拡大して示したものである。
【0029】
図2に示すマルチパスセル10は、鏡15a,15b,15cからなる第1鏡面ユニット11と、鏡20a,20bからなる第2鏡面ユニット12とからなる。反射面に垂直な法線を図中の2点鎖線で示す。
また、図2には、第1鏡面ユニット11と第2鏡面ユニットの中心を通る直線mと、直線mに対して直角であって第1鏡面ユニット11と第2鏡面ユニット12の中間点Oを通る直線nを示す。
【0030】
投光レンズユニット30からマルチパスセル10に向けて出射された光束は、第2鏡面ユニット12の焦点として設定された直線n上の点O2’を通り、直線mに対して角度θの入射角度で第1鏡面ユニットの鏡15aに入射する。
鏡15d,15e,20c,20dは、入射光束に対して平行に回転させてある。そのため、鏡15d,15e,20c,20dの鏡面には光束が入射しない。このように、光束を入射及び反射させる鏡15a,15b,15c,20a,20bと入射及び反射をさせない鏡15d,15e,20c,20dを分けることにより、反射回数を決定することができる。
【0031】
ここで、鏡15aの反射光が、第1鏡面ユニット11の焦点として設定された直線n上の点O1’を通り、第2鏡面ユニット12の鏡20aに入射するように、ロッド16を回動させて鏡15aの回転角度を調整する。
【0032】
そして、同様に、鏡20aの反射光が、点O2’を通って鏡15bに入射するように、鏡20aの回転角度を調整する。
さらに、鏡15bの反射光が、点O1’を通って鏡20bに入射するように、鏡15bの回転角度を調整する。
さらにまた、鏡20bの反射光が、焦点O2’を通って鏡15cに入射するように、鏡20bの回転角度を調整する。
最終的に鏡15cの回転角度を調整して、鏡15cの反射光が、受光レンズユニット45に入射するようにする。
【0033】
したがって、入射光束を鏡15a,15b,15c,20a,20bで複数回にわたって、反射させることができる。上記のように複数回にわたってマルチパスセル10内を光束で走査させる場合、例えば、以下のような吸光度測定に利用することができる。
【0034】
本実施例のマルチパスセル10の第1鏡面ユニット11と第2鏡面ユニット12との間に測定対象のガス体を配する。被測定対象のガス体に対して複数回、光束を透過させると、光束がガス体を通過する度にガス体の吸収スペクトルによって所定の帯域が吸光される。このとき、一回の光束出射で複数回のにわたって、様々な方向から当該ガス体に光束が照射されるので、吸収スペクトルの帯域の輪郭をより強調させることができる。
したがって、誤差の発生を抑制することができ、より高精度な測定をすることができる。
【0035】
また、ガイドレール25に沿って、第1鏡面ユニット11と第2鏡面ユニット12を移動させて、第1鏡面ユニット11と第2鏡面ユニット12の間隔が、L1からL2に変化させた場合を図1の点線に示す。
このとき、第1鏡面ユニット11の焦点として設定した点O1’と第2鏡面ユニット12の焦点として設定した点O2’は第1鏡面ユニット11と第2鏡面ユニット12の中間点を通る直線n上から外れる。
そこで、鏡15a,15b,15c,20a,20bの間隔を広げたり、反射角度を調整することにより、第1鏡面ユニットの焦点と第2鏡面ユニット12の焦点を新たに設定することができる。
すなわち、鏡15,20をガイドスリット17,22の円周方向に沿って移動させて、間隔を広げたことにより、見かけ上の曲率半径を拡大させることができると共に、焦点までの距離を変化させることができるので、光束の光路長を長くすることができる。
同様に鏡15,20をガイドスリット17,22の円周方向に沿って、間隔を詰める方向へ移動させると共に、第1鏡面ユニット11と第2鏡面ユニット12の距離を詰めることによって、光路長を短くすることができる。
【0036】
したがって、本実施例のマルチパスセル10は、光路長を自在に伸縮することができるので、従来のように光路設計のために新たな凹面鏡を用意しなくても良い。
【0037】
さらに測定目的に合わせて、鏡面ユニット11,12の間隔を調整し、鏡15,20の間隔と角度を調整することにより、測定目的に合致したマルチパスセルを構成することができる。
さらにまた、鏡15,20の反射面を回動させて反射回数を増減させることができる。
したがって、本実施例のマルチパスセル10は、光路長を連続的に変化させることができ、高い汎用性を有している。また、容易に量産することができ、製造コストを抑えることができる。
【0038】
また、第1鏡面ユニット11と第2鏡面ユニット間で複数回にわたって入射光束を反射させることから、光路長に対して鏡面ユニット11,12間を短くすることができる。そのため、マルチパスセル10を小型化することができるので、当該マルチパスセル10を搭載した分光器或いはレーザ共振器を小型化することができる。
【符号の説明】
【0039】
10…マルチパスセル、11…第1鏡面ユニット、12…第2鏡面ユニット、
13…第1反射部、14…第1ベース、
18…第2反射部、19…第2ベース、
15,15a,15b,15c,20,20a,20b…鏡、16,21…ロッド、17,22…ガイドスリット、
25…ガイドレール、
30…制御部、31…中央演算装置、32…内部メモリ、33…外部記憶媒体、
40…投光レンズユニット、45…受光レンズユニット、46…受光フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1鏡面ユニットと第2鏡面ユニットの鏡面を対向配置した一対の鏡面ユニットからなり、
入射光を平行光束に形成する投光レンズユニットより入射された平行入射光が、前記鏡面ユニット間で複数回反射するマルチパスセルであって、
前記第1鏡面ユニットは、複数枚の鏡を並設した第1反射部を第1ベース上に設け、
前記第2鏡面ユニットは、複数枚の鏡を並設した第2反射部を第2ベース上に設け、
前記第1ベース及び前記第2ベースの上面に立設したロッドが前記鏡をそれぞれ回動可能に支持し、
前記第1反射部及び前記第2反射部を構成する前記鏡を各個独立に回動させることにより反射角度を調整する反射角度調整手段を有する制御部を設け、
前記投光レンズユニットから入射された入射光を、前記第1反射部と前記第2反射部との間で、2回乃至前記鏡の個数分のうちのいずれかの回数で、複数回反射させるようにしたことを特徴とするマルチパスセル。
【請求項2】
前記第1ベース上に設けた弧状のガイドスリットに前記ロッドの基端を係合し、該ロッドを所定間隔で配列させる第1反射部間隔調整手段と、
前記第2ベース上に設けた弧状のガイドスリットに前記ロッドの基端を係合し、該ロッドを所定間隔で配列させる第2反射部間隔調整手段とを前記制御部に設け、
前記第1反射部間隔調整手段及び前記第2反射部間隔調整手段、並びに前記反射角度調整手段によって前記鏡の間隔と反射角度を調整することにより、前記第1反射部と前記第2反射部とが、あたかも対向する凹面鏡のように構成されて、
前記第1反射部と前記第2反射部の曲率半径が、任意の大きさに形成されると共に、前記第1反射部と前記第2反射部の焦点が、所定の位置に配置されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のマルチパスセル。
【請求項3】
前記第1ベースと前記第2ベースに摺動部を設け、該摺動部を同一のガイドレールに係合させて、
前記第1ベースと前記第2ベースとが、互いに平行に移動するように設け、
前記制御部に、前記第1反射部と前記第2反射部の曲率半径に応じて、前記第1鏡面ユニットと前記第2鏡面ユニットとの間の距離を調整するユニット間隔調整手段を設けて、
前記投光レンズユニットから入射される入射光の光路長を無段階に調整するようにしたことを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載のマルチパスセル。
【請求項4】
前記第1反射部及び前記第2反射部を構成する前記鏡が、平面鏡であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のマルチパスセル。
【請求項5】
前記第1反射部及び前記第2反射部を構成する前記鏡が、凹面鏡であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のマルチパスセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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