説明

マルチパック用包装箱

【課題】マルチパック用包装箱同士の接触に基づく底面板の開口部側の端部や、底面板と側面板との接合箇所が、破損ないし損傷するという不都合を極力回避することができる新規な形態のマルチパック用包装箱を提供する。
【解決手段】容器群の上面を覆う上面板2と、各容器の側面を覆う側面板4,5と、互いに係着しうる係止部を有する第1および第2の底面板5,6とを備え、第1および第2の底面板を係着することにより容器群を包むように収納するとともに、側面板が存在しない両端部において開口部が形成されているマルチパック用包装箱1であり、底面部の開口部側の端部には、折り込み片の折込による容器保持機能が形成されておらず、底面部を構成する第1および第2の底面板5,6の端面がそのまま存在する状態で底面部の開口部側が形成されており、第1および第2の底面板のいずれか一方にのみ、開口部側の端部に所定形状の切り欠き部200が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば小壜ビール、壜入り栄養ドリンク、缶ビール、缶ジュース等の一定数量の容器を並列した状態のまま包装するマルチパック用包装箱に関する。特に、底面板の開口部側の端部には、折り込み片の折込による容器保持機能が形成されておらず、底面板の端面が底板面に沿ったまま露出する状態で底面板の開口部側が形成されているマルチパック用包装箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、小壜ビール、壜入り栄養ドリンク、缶ビール、缶ジュース等の複数個の容器を複数個一列あるいは複数列で起立させた状態のまま整列させて置き、つぎに容器の上部、側部および下部を包み込むようにして包装した紙製のマルチパック用包装箱が使用されている。
【0003】
このようなマルチパック用包装箱の使用により、複数個の容器を1個の包装体にまとめて一度にかつ簡易に持ち運ぶことができるようになり、さらに、纏め売りの効果も相俟って当該マルチパック用包装箱の使用が近年急速に拡大しつつある。
【0004】
このようなマルチパック用包装箱に収納された、例えば小壜ビールは、卸元から小売店等に引き渡す場合には、通常1個の出荷カートンケースの上面を構成するフラップを開いて開口部を形成し、この開口部からマルチパック用包装箱を2〜4個、あるいは4個を超える複数個を並べて収納して搬出するようにしている。
【0005】
小壜ビールを含めて栄養ドリンク用壜等の壜製品を収納するマルチパック用包装箱は、底面板の開口部側の端部に、折り込み片の折込による容器保持機能が形成されておらず、底面板の端面が底板面に沿ったまま露出する状態で底面板の開口部側が形成されているものが多い。この一方で、缶ビール等の缶製品を収納するマルチパック用包装箱は、いわゆるボトムガセットと呼ばれる折り込み片の折込による容器保持機能が形成されているものが多い。
【0006】
上述したように、いわゆるボトムガセットと呼ばれる容器保持機能を有さない壜製品を収納するマルチパック用包装箱では、底面板の端面が底板面に沿ったまま露出する状態で底面板の開口部側が形成されている。つまり、底面板と側面板との接合箇所も板厚を形成する端部がそのまま露出している。
【0007】
そのため、製造過程でコンベア上を搬送されているマルチパック用包装箱が、(1)詰まって動かなくなり、互いに位置がずれたまま前後を押し合う状況が生じたり(いわゆる位置ずれ状態でのジャム発生)、あるいは、(2)搬送路のコーナーで互いに位置がずれた状態で、前後が当接する状況が生じたりした場合には、搬送の位置ずれを起こしたまま底面板の開口部側が相互に接触して、マルチパック用包装箱同士の接触に基づく底面板の開口部側の端部や、底面板と側面板との接合箇所が、破損ないし損傷するという不都合が生じる(図5には、底面板と側面板との接合箇所が損傷している状態の一例が示されている)。
【0008】
このような不良の発生は、2次配送等で、専用外(汎用)のコンテナ等に詰め替えられて輸送された場合等においては、輸送時にも起こり得ると言える。
【0009】
【特許文献1】特開2005−350105号公報
【特許文献2】特開2005−343469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような課題を解決するために本願発明は創案されたものであって、その目的は、マルチパック用包装箱同士の接触に基づく底面板の開口部側の端部や、底面板と側面板との接合箇所が、破損ないし損傷するという不都合を極力回避することができる新規な形態のマルチパック用包装箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決するために、本発明は、複数個を並列に配置された容器群の上面を覆う上面板と、この上面板の両側部に連接され並列された各容器の側面を覆う側面板と、これら側面板に連接され互いに係着しうる係止部を有する第1および第2の底面板とを備え、前記第1および第2の底面板を係着することにより前記容器群を包むように収納することができる底面部が形成され、側面板が存在しない両端部において容器群の一部の側面が覗く開口部が形成されているマルチパック用包装箱において、前記底面部の開口部側の端部には、いわゆるボトムガセットと呼ばれる折り込み片の折込による容器保持機能が形成されておらず、底面部を構成する第1および第2の底面板の端面がそのまま存在する状態で底面部の開口部側が形成されており、前記第1および第2の底面板のいずれか一方にのみ、当該開口部側の端部において切り欠き部が形成されており、当該切り欠き部は、マルチパック用包装箱同士の接触に基づく底面板の開口部側の端部、および底面板と側面板との接合箇所が、破損ないしは損傷するのを防止するように作用するように構成される。
【0012】
また、本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記切り欠き部は、底面板の開口部側の端から端までの幅をW1とした場合、幅W1の実質的な中央を中心線PとしてW2の幅に形成されており、W2/W1=0.2〜0.7の範囲内となるように構成される。
【0013】
また、本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記切り欠き部は、前記中心線Pを中心として形成された山部と、この山部の両側の裾部に連結して形成された2つの谷部を備えてなるように構成される。
【0014】
また、本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記山部の頂部位置は、底面板の開口部側の端から端までを結んだラインよりも包装箱の内側に存在するように構成される。
【0015】
また、本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記山部の頂部位置が、底面板の開口部側の端から端までを結んだラインから内側に存在する距離D1は、D1=0〜5mmの範囲内となるように構成される。
【0016】
また、本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記切り欠き部を構成する2つの谷部の最下点同士を結んだ距離をL1とした場合、L1/W1=0.2〜0.64の範囲内となるように構成される。
【0017】
また、本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記谷部の最下点位置が、底面板の開口部側の端から端までを結んだラインから内側に存在する距離D2は、D2=2〜9mmの範囲内となるように構成される。
【0018】
また、本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記切り欠き部は、その形態が、前記中心線Pを中心として鏡像関係に形成される。
【0019】
また、本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記第1の底面板と側面板の境目である折り線、および前記第2の底面板と側面板の境目である折り線を分断するように、かつ、容器の収納配列に合せて、容器底係止ホールが形成される。
【0020】
また、本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、マルチパック用包装箱の中に収納される容器は、2列配置であり、前記第1および第2の底面板を係着することにより形成される係止片の一部は、折り曲げられて底面から立てられた状態とされ、2列配置の容器を1列ごとに区分けする分離帯の機能を果たすように構成される。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、第1および第2の底面板のいずれか一方にのみ、当該開口部側の端部において切り欠き部が形成されており、当該切り欠き部は、所定の形状からなり、マルチパック用包装箱同士の接触に基づく底面板の開口部側の端部、および底面板と側面板との接合箇所が、破損ないしは損傷するのを防止するように作用するように構成されている。そのため、マルチパック用包装箱同士の接触に基づく底面板の開口部側の端部や、底面板と側面板との接合箇所が、破損ないし損傷してしまうという問題を回避することができる。
【0022】
これにより包装箱の歩留まりが向上し、例えば、不良箱の検出に基づいて、再度、容器をマルチパック用包装箱に詰め替えるという操作も必要なくなる、という効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明のマルチパック用包装箱1の具体的実施の形態の一例(第1実施形態)について、図1〜図4を参照しつつ説明する。
【0024】
第1実施形態の説明
図1は、本発明のマルチパック用包装箱1の展開図の一例を示したものであり、図2は、図1に示されるように展開された箱オリジナル紙を組み立てた斜視図である。
【0025】
本発明の実施例では、マルチパック用包装箱1の中に、小サイズ壜ビール(いわゆるビールの小壜であり、以下、『小壜ビール』という場合もある)で代表される容器が、2列配置で1列あたり3本が配置されて合計6本(2×3)、収納される場合を例に取って説明する。
【0026】
本発明のマルチパック用包装箱1は、図1に示される展開シート(パック用シート)を組み立てることによって形成することができ、展開シートは、図1に示されるごとく横長の略矩形形状をなしている。
【0027】
図1に示される展開シートにおいて、その中央部は上面板2を構成し、その両端に側面板3,4がそれぞれ連接されている。
【0028】
図1において、上面板2の幅エリアは、符号L2で示される領域であり、側面板3の幅エリアは、符号L3で示される領域であり、側面板4の幅エリアは、符号L4で示される領域である。
【0029】
側面板3の端側となる図面の左側部分には底面板5が形成され、これとは反対位置である側面板4の端側となる図面の右側部分には底面板6が形成されている。
【0030】
この実施例においては、便宜上、図1の左側に位置する底面板5を『第1の底面板5』と称し、図1の右側に位置する底面板6を『第2の底面板6』と称する。第1の底面板5の幅エリアは、符号L5で示される領域であり、第2の底面板6の幅エリアは、符号L6で示される領域である。
【0031】
第1および第2の底面板5,6を互いに係着させることにより、帯の端部を係止したような筒体が形成され、これにより内部の容器群を包むように収納することができる。
【0032】
第1および第2の底面板5,6の係着により箱の底面部が形成される。底面部の底部幅W1(図2参照)は、図1で言えば(L5−Q5)+(R6−Q6)の長さに相当する。図1に示される第2の底面板6のQ6で示される幅エリアは、第1および第2の底面板5,6の係着によって第1の底面板5のQ5で示される幅エリアと重なり合って重複する箇所である。図1に示される第2の底面板6のP6は、第1および第2の底面板5,6の係着により、余剰のエリアであり、底面部の底部幅W1を構成するものではない。
【0033】
第2の底面板6のP6は、後述するように、折り曲げられて底面から立てられた状態とされ、2列配置の容器を1列ごとに区分けする、いわゆる分離帯のような機能を果たしている(図2の符号8bを参照)。
【0034】
第1および第2の底面板5,6の係着によって形成される底面部は、直列3個を並列2列に起立状態に整列させた『小壜ビール』6本の底部をホールドできるように、実質的に、図面の縦辺1a方向には『小壜ビール』約3本分を載置でき、横片1b方向には『小壜ビール』約2本分を載置できる面積を備えている。ここで、『実質的に』として表現しているのは、後述する容器底係止ホールを設けていることに起因して、本実施形態における横片1b方向の底面幅W1は、『小壜ビール』約2本分の長さよりはわずかに短く設定されているからである。
【0035】
上面板2は、直列3個を並列2列に起立状態に整列させた『小壜ビール』6個の上部をホールドできるように、図面の縦辺1a方向には、『小壜ビール』3本の口部、横片1b方向には『小壜ビール』2本分の口部を、実質的に覆うことができる面積を備えている。『実質的に覆うことができる面積』としているのは、後述する孔部31、41の存在意義を考慮しているためである。
【0036】
なお、符号16は、包装箱を持ち上げたり、持ち運びする際に、例えば、親指と人差し指を挿入することができるフィンガーホール(2箇所)を示している。
【0037】
上面板2の両側には『小壜ビール』の側部を覆うようにして、その長さに相当する側面板3,4がそれぞれ、境界線をなす折り線2a,2bを介して連設されている。これらの折り線2a,2bに沿うように、側面板3,4側には、それぞれ3個づつの孔部31,41が形成されている。孔部31,41は、『小壜ビール』の先端口部の近傍の一部を露出させるとともに、『小壜ビール』の先端口部を係止・固定させる機能を有している。
【0038】
側面板3は折り線3aを介して、第1の底面板5に連接され、側面板4は折り線4aを介して、第2の底面板6に連接されている。
【0039】
図1に示されるごとく、第1および第2の底面板5,6には、容器を包み込むような筒状体を形成することができるように、先端部で互いに係着し得る雌側の係止部7(第1の底面板5側(図面左側))および雄側の係止部8(第2の底面板6側(図面右側))が、それぞれ形成されている。
【0040】
図面の左側に位置している第1の底面板5側の係止部7は、先端部を形成する展開シートの一方の縦辺1aに平行な第1係止部7aと、その内側に同じく縦辺1aに平行に設けられた第2係止部7bとから構成されている。これら第1係止部7a、および第2係止部7bは、図1に示されるごとく、縦辺1aの中央とその両端側の3箇所に、それぞれ設けられている。
【0041】
この実施形態において、第1係止部7aの形状は切り抜かれた縦長の略四角孔となっていて、その孔の一辺aが係合部に形成され、第2係止部7bの形状は切り込みとなっている。
【0042】
これに対し、図面の右側に位置している第2の底面板6側の雄側の係止部8は、前記第1係止部7aおよび第2係止部7bとに、それぞれ係着し得るように形成された第1係止部8aおよび第2係止部8bとから構成されている。この実施の形態において、第1係止部8aの形状は、縦辺1aに平行な直線で中央が内側に凹部bとなる切り込みとなっている。第2係止部8bの形状は、第1係止部8aの幅から縦辺1aの外側へ先細りとなって首部dに至り、これに続く先端は首部dより幅のある頭部cとして形成されている。
【0043】
具体的な係合の仕方は次の通りである。すなわち、第2の底面板6の縦辺1aに設けられている雄側の第2係止部8bを頭部cから第1の底面板5側の縦辺1a方向に設けられている雌側の第1係止部7aの孔を通して第2係止部7bと互いに係着させて第1係止部8aの首部dで抜け止めするとともに、雄側の第1係止部8aの凹部bを雌側の第1係止部7aの横長の四角孔を形成する一辺aに係着させる。これによりマルチパック用シートは無端状態に形成されて缶ビールに帯がかかった状態の缶入りマルチパック用包装箱となる。
【0044】
なお、本実施形態の場合、頭部c(符号8b)の部分は、図2に示されるように、通常、係止された後、折り曲げられて底面から立てられた状態とされ、あたかも、2列の『小壜ビール』を1列ごとに区分けする、いわゆる分離帯のような役目をさせている。
【0045】
図1に示されるように第1の底面板5と側面板3の境目である折り線3a近傍、および第2の底面板6と側面板4の境目である折り線4a近傍には、『小壜ビール』の収納配列に合せて、『小壜ビール』の壜底の一部分と係止し、各『小壜ビール』の配置位置を規制するための壜底係止ホール51および61が、それぞれ3個ずつ形成されている。さらに、壜底係止ホール51および61の側面板側の上部には、図1に示されるように、壜底係止ホール51および61に連接して、押さえフラップ片71および81が、それぞれ、形成されている。押さえフラップ片71,81は、万年筆のペン先形状のごとく中央にスリット71a,81aが形成されており、これにより、押さえフラップ71,81片全体の動きが柔軟になり、『小壜ビール』の壜底係止ホール51,61への装着を容易ならしめている。
【0046】
なお、側面板3には、略中央部に位置し、端から端まで亘って帯状に形成される切り取り用のジッパー90を備えている。このジッパー90は開封性を容易にするために形成されている。このジッパー90は、反対の側面である側面板4側に形成するようにしてもよい。
【0047】
このような第1および第2の底面板5,6を係着することにより、『小壜ビール』等の容器群を包むように収納できるマルチパック用包装箱1が組み立てられる。第1および第2の底面板5,6の係着により、包装箱の底となる底面部が形成される。そして、図2に示されるようにマルチパック用包装箱1の側面板3,4が存在しない両端部において容器群の一部の側面が覗く開口部100がそれぞれ両端に形成される。
【0048】
〔本発明の要部の説明〕
本発明のマルチパック用包装箱1は、その底面部の開口部100側の端部には、いわゆるボトムガセットと呼ばれる折り込み片の折込による容器保持機能が形成されておらず、底面部を構成する第1および第2の底面板の端面がそのまま存在する状態で底面部の開口部100側が形成されているタイプのものを対象としている。従って、例えば、従来技術の特開2005−343469号公報の図3や図4に示されるような容器保持機能付きマルチパック用包装箱は対象外とされる。
【0049】
本発明のマルチパック用包装箱1は、図1や図2に示されるように、底面部を構成する第1および第2の底面板5,6の端面がそのまま存在する状態で底面部の開口部100側が形成されている。つまり、開口部100側の端部における第1および第2の底面板5,6は、その端面において、底面板の厚さ部分がそのまま露出している(底面板の厚さ部分を隠すような折込等の処理はなされていない)。それゆえ、何の手立ても講じなければ従来技術で説明したような問題が生じ得る。
【0050】
そのような従来技術の問題点を解決するために、本発明のマルチパック用包装箱1は、第1および第2の底面板5,6のいずれか一方にのみ、両開口部100側の端部において切り欠き部200が形成されている。第1および第2の底面板5,6のいずれか一方にのみに切り欠き部200を形成することにより、切り欠き部200の形態の安定性を保証することができる。(2枚の底面板5,6を合体させて切り欠き部200を形成するのであれば、2枚の底面板5,6の合体部の緩み等により、切り欠き部200の形態が変動するおそれが生じる。)
【0051】
本発明における切り欠き部200は、マルチパック用包装箱同士の接触に基づく底面板の開口部側の端部、および底面板と側面板との接合箇所が、破損ないしは損傷するのを防止するように作用するように設けられている。
【0052】
このような切り欠き部200は、図2に示されるように、底面板の開口部側の端から端までの幅をW1とした場合、幅W1の実質的な中央を中心線PとしてW2の幅に形成されており、W2/W1=0.2〜0.7の範囲、より好ましくは、0.26〜0.55の範囲に形成される。本願発明の作用効果を確実に奏させるためである。そして、切り欠き部200の形態は、中心線Pを中心として形成された山部201と、この山部201の両側の裾部に連結して形成された2つの谷部208,209を備えている。切り欠き部200は、その形態が、前記中心線Pを中心として鏡像関係に形成されていることが望ましい。
【0053】
山部201の頂部位置は、底面板5の開口部側の端から端までを結んだラインG1よりも包装箱の内側に存在していることが好ましい。山部201の頂部位置が、底面板の開口部側の端から端までを結んだラインG1から内側に存在する距離D1は、D1=0〜5mm、好ましくは0.5〜3mmの範囲内とすることが好ましい。
【0054】
このD1値が下限値である0mm未満となり、ラインG1よりも外方に出っ張ると、マルチパック用包装箱同士の接触に基づく底面板の開口部側の端部や、底面板と側面板との接合箇所が、破損ないし損傷するという不都合を回避させることの確実性が格段と優れたものとは言えなくなるおそれがある。また、このD1値が上限値である5mmを越えると、図3に示される切り欠き部200近傍の第2係止部7bの一部を構成する切り取り線部7cとの距離が短くなって、強度の点からの問題が生じる。
【0055】
2つの谷部208,209の最下点位置が、底面板の開口部側の端から端までを結んだラインG1から内側に存在する距離D2は、D2=2〜9mmの範囲内、好ましくは2〜5mmの範囲内とすることが好ましい。本願発明の作用効果を奏させるためである。
【0056】
切り欠き部200を構成する2つの谷部208,209の最下点同士を結んだ距離をL1とした場合、L1/W1=0.2〜0.64、好ましくは、0.26〜0.45とするのが良い。本願発明の作用効果を奏させるためである。
【0057】
なお、底面板の開口部側の端から端までの幅W1は、胴部径Dbの『小壜ビール』容器の2本分2Dbに対して、W1=(0.71〜0.83)2Dbの範囲内、好ましくは(0.74〜0.80)2Dbの範囲内に設定される。『小壜ビール』の壜底の一部分と係止する壜底係止ホール51および61により、配置位置を確実に規制できるようにするためである。
【0058】
なお、図1における符号9は、開口部近傍において収納される容器の頭部を支えるための折込片であり、符号2cは山折り、符号10bは谷折り、符号10aは山折りとされる。
【0059】
第2実施形態の説明
次に、本発明のマルチパック用包装箱1の他の具体的実施形態(第2実施形態)について、図4を参照しつつ説明する。
【0060】
図4は、図1に相当する本発明のマルチパック用包装箱の展開図(第2実施形態)を示したものである。図4に示される第2実施形態が、前述した第1実施形態(図1)と異なるのは、図4に示されるように、第2係止部7bの近傍に、いわゆるガードロック片79が設けられている点にある。ガードロック片79は、底面部にカット線と罫線を組み合わせて、ほぼ3角錐状に隆起させることで、壜と壜の空間を埋めて、壜のずれを防止し、底部の保持力を強化させるという機能を発揮させるために形成されている。ただし、ガードロック片79は、切り欠き部200と極めて近接する箇所に形成されているために、強度上の問題が生じるおそれがある。従って、強度の点を特に考慮すれば、第1実施形態(図1)の方が好ましいと言える。
【0061】
なお、ガードロック片79の有無を除けば、第2実施形態(図4)と第1実施形態(図1)は、双方同じ構造であり、図4において、省略可能な部材符号は省略してある。
【0062】
なお、本発明における実施形態では、小壜ビールの包装を例にとって説明したが、このものに限定されるものではない。例えば、栄養ドリンク用壜等の各種壜製品にも適用できることは勿論のことである。
【実施例】
【0063】
(本発明サンプル1の作製)
図1に示されるような展開図から構成される本発明のマルチパック用包装箱のサンプルを作製した。
【0064】
主要寸法は、以下のとおりとした。
【0065】
L2=76mm
L3=199mm
L4=199mm
L5=86mm
L6=69.5mm
Q5=33.5mm
R6=17.5mm
Q6=33.5mm
P6=18.5mm
W1=(L5−Q5)+(R6−Q6)=103.5
【0066】
容器として使用した『小壜ビール』の胴部径Dbは、62mmであり、2Dbは124mm。
【0067】
<切り欠き部200の形態の設定>
切り欠き部200の形態は、図1および図3に示されるように、中心線Pを中心として形成された山部と、この山部の両側の裾部に連結して形成された2つの谷部(同じ形状)を備えてなる形態とした。なお、山部の頂部位置は、図3に示されるように、底面板の開口部側の端から端までを結んだラインG1よりも包装箱の内側に存在するように設定した。
【0068】
山部は、約40Rの円弧、谷部は約18Rの円弧とし、谷部からラインG1近傍に到達する箇所は約20Rの円弧とした。
【0069】
切り欠き部200の基本的な寸法設定は以下の通りとした。
【0070】
W2=56.75mm、W2/W1=0.55
D1=1.44mm
D2=3mm
L1=27mm、L1/W1=0.26
【0071】
このような本発明サンプル1を用いて、マルチパック用包装箱同士の開口部側同士を衝突させる実験をおこなった。すなわち、対向する開口部の位置を0.3W1ピッチ程度ずらした状態でいわゆるオフセット押圧し、底面板の開口部側の端部や、底面板と側面板との接合箇所が、破損ないし損傷するという不都合が生じるか否かの確認を行った。サンプル数Nは、N=20個とした。この実験の結果、本発明サンプル1では、不良レベルに至るまでの破損ないし損傷の発生率は、0%であった。
【0072】
これに対して、切り欠き部200を備えていない従来の比較サンプル1では、不良レベルに至るまでの破損ないし損傷の発生率は、100%であった。
【0073】
また、山部および谷部の円弧を変えつつ、L1およびW2を大きくして、W2/W1およびL1/W1の上限値を越えた比較サンプル2では、図3の7Cに徐々に接近するためにサンプルの作製が困難となる傾向がある。サンプル作製できたものについての不良レベルに至るまでの破損ないし損傷の発生率は、本発明サンプル1の極めて良好なレベルまでには到達することができなかった。
【0074】
同様に、山部および谷部の円弧を変えつつ、L1およびW2を小さくして、W2/W1およびL1/W1の下限値を未満の比較サンプル3では、不良レベルに至るまでの破損ないし損傷の発生率は、本発明サンプル1の極めて良好なレベルまでには到達することができなかった。
【0075】
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。すなわち、本発明のマルチパック用包装箱は、複数個を並列に配置された容器群の上面を覆う上面板と、この上面板の両側部に連接され並列された各容器の側面を覆う側面板と、これら側面板に連接され互いに係着しうる係止部を有する第1および第2の底面板とを備え、前記第1および第2の底面板を係着することにより前記容器群を包むように収納することができる底面部が形成され、側面板が存在しない両端部において容器群の一部の側面が覗く開口部が形成されているマルチパック用包装箱であり、前記底面部の開口部側の端部には、いわゆるボトムガセットと呼ばれる折り込み片の折込による容器保持機能が形成されておらず、底面部を構成する第1および第2の底面板の端面がそのまま存在する状態で底面部の開口部側が形成されており、前記第1および第2の底面板のいずれか一方にのみ、当該開口部側の端部において切り欠き部が形成されており、当該切り欠き部は、マルチパック用包装箱同士の接触に基づく底面板の開口部側の端部、および底面板と側面板との接合箇所が、破損ないしは損傷するのを防止するように作用する。従って、マルチパック用包装箱同士の接触に基づく底面板の開口部側の端部や、底面板と側面板との接合箇所が、破損ないし損傷してしまうという問題を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、本発明の包装箱の展開図の一例を示したものである。
【図2】図2は、図1に示されるように展開された箱オリジナル紙を組み立てた斜視図である。
【図3】図3は、本発明の要部である切り欠き部200の近傍の拡大図であり、特に、切り欠き部200の形態を説明するための図面である。
【図4】図4は、本発明の包装箱の他の展開図の一例を示したものである。
【図5】図5は、従来技術の問題点を説明するための図面であり、底面板と側面板との接合箇所が損傷している状態の一例を示す図面である。
【符号の説明】
【0077】
1…マルチパック用包装箱
2…上面板
3,4…側面板
5…第1の底面板
6…第2の底面板
50…切り欠き部
200…切り欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個を並列に配置された容器群の上面を覆う上面板と、
この上面板の両側部に連接され並列された各容器の側面を覆う側面板と、
これら側面板に連接され互いに係着しうる係止部を有する第1および第2の底面板とを備え、前記第1および第2の底面板を係着することにより前記容器群を包むように収納することができる底面部が形成され、側面板が存在しない両端部において容器群の一部の側面が覗く開口部が形成されているマルチパック用包装箱において、
前記底面部の開口部側の端部には、いわゆるボトムガセットと呼ばれる折り込み片の折込による容器保持機能が形成されておらず、底面部を構成する第1および第2の底面板の端面がそのまま存在する状態で底面部の開口部側が形成されており、
前記第1および第2の底面板のいずれか一方にのみ、当該開口部側の端部において切り欠き部が形成されており、
当該切り欠き部は、マルチパック用包装箱同士の接触に基づく底面板の開口部側の端部、および底面板と側面板との接合箇所が、破損ないしは損傷するのを防止するように作用することを特徴とするマルチパック用包装箱。
【請求項2】
前記切り欠き部は、底面板の開口部側の端から端までの幅をW1とした場合、幅W1の実質的な中央を中心線PとしてW2の幅に形成されており、W2/W1=0.2〜0.7である請求項1に記載のマルチパック用包装箱。
【請求項3】
前記切り欠き部は、前記中心線Pを中心として形成された山部と、この山部の両側の裾部に連結して形成された2つの谷部を備えてなる請求項2に記載のマルチパック用包装箱。
【請求項4】
前記山部の頂部位置は、底面板の開口部側の端から端までを結んだラインよりも包装箱の内側に存在する請求項3に記載のマルチパック用包装箱。
【請求項5】
前記山部の頂部位置が、底面板の開口部側の端から端までを結んだラインから内側に存在する距離D1は、D1=0〜5mmの範囲内である請求項4に記載のマルチパック用包装箱。
【請求項6】
前記切り欠き部を構成する2つの谷部の最下点同士を結んだ距離をL1とした場合、L1/W1=0.2〜0.64である請求項3ないし請求項5のいずれかに記載のマルチパック用包装箱。
【請求項7】
前記谷部の最下点位置が、底面板の開口部側の端から端までを結んだラインから内側に存在する距離D2は、D2=2〜9mmの範囲内である請求項6に記載のマルチパック用包装箱。
【請求項8】
前記切り欠き部は、その形態が、前記中心線Pを中心として鏡像関係に形成されている請求項3ないし請求項7のいずれかに記載のマルチパック用包装箱。
【請求項9】
前記第1の底面板と側面板の境目である折り線、および前記第2の底面板と側面板の境目である折り線を分断するように、かつ、容器の収納配列に合せて、容器底係止ホールが形成されている請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のマルチパック用包装箱。
【請求項10】
マルチパック用包装箱の中に収納される容器は、2列配置であり、
前記第1および第2の底面板を係着することにより形成される係止片の一部は、折り曲げられて底面から立てられた状態とされ、2列配置の容器を1列ごとに区分けする分離帯の機能を果たす請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のマルチパック用包装箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−58790(P2010−58790A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223095(P2008−223095)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】