説明

マルチフィラメントポリエステル二成分ヤーンの多端部パッケージ

ほどける際にヤーンが個別の端部に分離可能である多成分ヤーンの多端部パッケージが包含される。多成分ヤーンは二成分ヤーン、例えば組成的に異なるポリエステル類をサイドバイサイドまたは偏心的なシース−コア配置で含むヤーン、でありえる。そのような多端部パッケージの使用も包含される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はほどける際にヤーンが個別の端部に分離可能である多成分ヤーンの多端部パッケージに関する。より具体的に、本発明はポリエステル二成分連続フィラメントヤーンの多端部パッケージおよびそのようなパッケージ上の分離可能なヤーンに関する。本発明はまた分離可能なポリエステル二成分連続フィラメントヤーンの多端部パッケージの製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
典型的には、フィラメントヤーン製造は複数のフィラメントを紡糸口金から押し出し、次に全てのフィラメントを単一のスレッドライン(threadline)にまとめ、それが次に単一のパッケージ上に巻かれるか、またはフィラメントを複数のフィラメントスレッドラインに分割し、それらが次にそれぞれ単一のパッケージ上に巻かれることを含む。いずれの場合にも、1つの多成分スレッドラインが1つのパッケージ上に巻かれる。これはパッケージ当たり1つの「端部」を有するとしても知られる。
【0003】
ポリエステル二成分フィラメントは、それらの三次元収縮による延伸および回復特性を有する弾性フィラメントである。ポリエステル二成分フィラメントは、例えば特許文献1に、開示されていた。ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含むポリエステル二成分フィラメントの高速紡糸は、例えば特許文献2に、開示されていた。単一−端部ポリエステル二成分繊維パッケージは、例えば特許文献3に、開示されていた。
【0004】
特許文献4は複数のテキスタイルストランドまたはヤーンの巻き取りおよび巻かれたパッケージをほどく際の複数のテキスタイルストランドの分離を促進させる巻き取り改良を開示している。この発明はモノ−もしくはマルチフィラメントの天然または合成物質またはヤーン、例えばナイロン、ポリエステル、ホウ素もしくは炭素繊維またはストランド、の巻き取りを含む工程において有用であることが示唆されているが、一般的にはガラス繊維の製造および加工におけるその使用に関連して論じられている。
【0005】
特許文献5は合成フィラメント製造の分野に関しておりそして複数の個別に分離可能なヤーン端部のスパンヤーンパッケージの製造方法を開示している。この方法はナイロン類、例えばナイロン−6およびナイロン−6,6、ポリエステル類、並びにポリオレフィン類、例えばポリプロピレン、であると特許で開示されている溶融−紡糸可能な重合体に適する。
【0006】
特許文献6および7はボビンからほどかれる際に個別のフィラメントに分裂可能なエラスタンマルチフィラメントヤーンおよびそのようなヤーンの製造方法を開示している。
【0007】
通常は、ポリエステル二成分連続フィラメントの68フィラメントを有する165dtexヤーンは急冷、油さし、延伸、織り交ぜ後に紡糸口金から押し出され、165dtex−68フィラメントを有する単一スレッドラインはチューブ−単一端部パッケージ中に巻かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,671,379号明細書
【特許文献2】米国特許第6,692,687号明細書
【特許文献3】米国特許第6,824,869号明細書
【特許文献4】米国特許第5,524,841号明細書
【特許文献5】米国特許第5,665,293号明細書
【特許文献6】米国特許第6,562,456号明細書
【特許文献7】米国特許第5,723,080号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ヤーンの多端部パッケージ、すなわち、上部に2つもしくはそれ以上のヤーンの端部が巻かれている単一ヤーンパッケージ、は投資度および製造費用を低下させながらヤーン製造生産量を有意に高める方法であろう。ヤーンの多端部パッケージは比較的少ない設備および資本投資が必要であろうため下流加工操作、例えばビーミングまたはコア紡糸、の費用を減ずるためにも有利であろう。しかしながら、ヤーンがほどかれる際に一様に分離可能である多端部パッケージの製造の技術的挑戦は、特に収縮および延伸および回復性質を有する二成分連続フィラメントヤーンにとって、注目すべきである。それにもかかわらず、分離可能なポリエステル二成分ヤーンの多端部パッケージを製造する方法は、分離可能なヤーン自体と同様に、求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要旨
ある種の態様には、
A)複数のサイドバイサイドまたは偏心的なシース−コアポリエステル二成分フィラメントを形成するために、単一の合体前または合体後の紡糸口金からの2種もしくはそれ以上の組成的に異なるポリエステル類を溶融−紡糸する工程、
B)各々のスレッドラインが1つより多いフィラメントを含むようにフィラメントを少なくとも2つのスレッドライン群にする工程、
C)スレッドラインを毎分約300メートルより大きい速度で取り上げる工程、
D)各スレッドラインをインターレースする工程、
E)スレッドラインをスレッドライン束にまとめる工程、および
F)スレッドライン束をチューブコア上に毎分約300メートルより大きい速度で巻く工程、
を備え、
スレッドライン束が少なくとも2つの個別のスレッドラインに分離可能でありそして二成分フィラメントがポリ(トリメチレンテレフタレート)とポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンテレフタレート)またはそのような構成員の組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体とを含んでなる、多端部パッケージの製造方法がある。
【0011】
別の態様には、
A)複数のサイドバイサイドまたは偏心的なシース−コアポリエステル二成分フィラメントを形成するために、複数の合体前または合体後の紡糸口金からの2種もしくはそれ以上の組成的に異なるポリエステル類を単一の紡糸位置で溶融−紡糸する工程、
B)各々のスレッドラインが複数のフィラメントからなるようにフィラメントを少なくとも2つのスレッドライン群にする工程、
C)スレッドラインを毎分約300メートルより大きい速度で取り上げる工程、
D)各スレッドラインをインターレースする工程、
E)少なくとも2つのスレッドラインの複数の群を複数のスレッドライン束にまとめる工程、および
F)各スレッドライン束をチューブコア上に普遍的なマルチ−パッケージ巻き取り機を用いて巻く工程、
を備え、
各スレッドライン束が少なくとも2つのスレッドラインに分離可能でありそして二成分フィラメントがポリ(トリメチレンテレフタレート)とポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンテレフタレート)またはそのような構成員の組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体とを含んでなる、多端部パッケージの製造方法がある。
【0012】
他の態様には、
A)2つもしくはそれ以上のサイドバイサイドまたは偏心的なシース−コアポリエステル二成分フィラメントから少なくとも2つのスレッドラインを形成する工程、
B)スレッドラインをスレッドライン束にまとめる工程、および
C)スレッドライン束をチューブコア上に巻く工程、
を備え、
スレッドライン束が少なくとも2つのスレッドラインに分離可能でありそして二成分フィラメントがポリ(トリメチレンテレフタレート)とポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンテレフタレート)またはそのような構成員の組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体とを含んでなる、多端部パッケージの製造方法がある。
【0013】
各スレッドラインが複数のサイドバイサイドまたは偏心的なシース−コアポリエステル二成分フィラメントを備える少なくとも2つのスレッドラインを含むスレッドライン束であって、
スレッドライン束が少なくとも2つの個別のスレッドラインに分離可能でありそして二成分フィラメントがポリ(トリメチレンテレフタレート)とポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンテレフタレート)またはそのような構成員の組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体とを含んでなるスレッドライン束も包含される。
【0014】
さらなる態様は、チューブコア上に巻かれたスレッドライン束を有し、
スレッドライン束が少なくとも2つのスレッドラインに分離可能であり、各スレッドラインが複数のサイドバイサイドまたは偏心的なシース−コアポリエステル二成分フィラメントを備え、そして二成分フィラメントがポリ(トリメチレンテレフタレート)とポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンテレフタレート)またはそのような構成員の組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体とを含んでなる多端部パッケージを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図面の簡単な記述
【図1】図1はある種の態様のヤーン紡糸および巻き取りシステムの図式的表示である。
【図2】図2はある種の態様の紡糸および巻き取りシステムと共に使用される高速巻き取り機の側面図の図式的表示である。
【図3】図3は多端部パッケージからのコア−スパンポリエステル二成分の製造の図式的表示である。
【図4】図4は多端部パッケージからのポリエステル二成分を使用する中空スピンドル被覆の図式的表示である。
【図5】図5は多端部パッケージからのポリエステル二成分を使用する編み工程の図式的表示である。
【0016】
発明の詳細な記述
ヤーンがほどかれる際に各々のスレッドラインが複数の二成分フィラメントからなる複数の個別のスレッドラインに分離可能であるような方法でポリエステル二成分フィラメントヤーンの複数の端部を含んでなるパッケージを製造できることが今回見出された。多端部パッケージは例えばビーミング、丸編み、製織、またはコア紡糸の如き方法において複数の単一端部パッケージの代わりに直接使用することができ、それが簡便性および費用節約を与える。二成分フィラメントはポリ(トリメチレンテレフタレート)とポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンテレフタレート)またはそのような構成員の組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体とを含んでなる。
【0017】
本発明の目的のために、以下の用語が以下で定義される:
POY(部分延伸糸):重合体分子の部分的なだけの縦配向となるように延伸比が規格値より低いフィラメントヤーン。
【0018】
FDY(完全延伸糸):POYと対照したものとして、重合体分子の完全な縦配向となるように延伸比が規格値であるフィラメントヤーン。
【0019】
DW(延伸巻き取り):秩序的な分子および結晶構造に整列させるための延伸連続フィラメントヤーンの操作。延伸されたヤーンは平行チューブまたはチーズ上に取り上げられてゼロ−撚りヤーンを生ずる。
【0020】
DTY(延伸仮撚糸):製造が、分子配向を増加させる延伸と嵩を高めるためのクリンプの付与の同時工程であるフィラメントヤーン。
【0021】
DT(延伸織り):熱可塑性繊維の製造における、分子配向を増加させる延伸と嵩を高めるためのクリンプの付与の同時工程。
【0022】
複数:多くの個別部分、フィラメント、スレッドラインおよび端部を有するかまたは包括すること。
【0023】
マルチフィラメント:1つのストランドであるモノフィラメントとは対照的に多数の連続フィラメントまたはストランドよりなるヤーン。
【0024】
多成分:繊維が1種より多い重合体から構成される。ある種の態様では、これらの重合体は主としてポリ(エチレンテレフタレート)(2GT)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(3GT)、およびポリ(テトラメチレンテレフタレート)(4GT)またはそのような構成員の組み合わせである。
【0025】
コアスパンヤーン:繊維をフィラメントの周囲で撚って、コアを隠すことにより製造されるヤーン。一例は、コアヤーンが延伸−回復特性を得るために弾性ヤーン(例えば2GT3GT二成分)でありそして撚り繊維が望ましい触感を得るための綿繊維であるものである。
【0026】
コアスパンヤーンの製造における直接使用に適する寸法:慣習的には、CSY(コアスパンヤーン)用のコアヤーンはスパンデックスヤーンであり、そのパッケージ寸法はポリエステル二成分ヤーンよりはるかに小さい。従って、ポリエステル二成分ヤーンがスパンデックスヤーンに取って代わる時にはCSY機械中の巻糸軸架または空間は1つのヤーンパッケージを1つの紡糸位置に置くために利用できない。
【0027】
弾性繊維:例えば高い延伸性および回復性の如き天然ゴムの性質を有する合成繊維。
【0028】
硬質ヤーン:弾性繊維とは対照的に、例えば延伸性および回復性の如き天然ゴムの性質を有さない合成繊維。
【0029】
スパンデックス:繊維−形成物質が少なくとも85%のセグメント化ポリウレタンから構成された長鎖合成重合体である人造繊維。
【0030】
ここで使用される際には、「二成分フィラメント」は同じ一般的種類の2種の重合体が繊維の長さに沿って互いに密に付着しているため繊維断面が例えばサイドバイサイド、偏心的なシース−コアまたは有用なクリンプがそこから発展しうる他の適当な断面である連続フィラメントを意味する。
【0031】
ここで使用される際には、「サイドバイサイド」は二成分繊維の2種の成分が互いに直接隣接しておりそしていずれかの成分の少量部分だけが他の成分のくぼみ部分内にあることを意味する。「偏心的なシース−コア」は二成分の一方が他方の成分を完全に囲むが二成分が同軸でないことを意味する。
【0032】
ここで使用される際には、「スレッドライン」は2つもしくはそれより多い二成分フィラメントの群を意味する。スレッドラインのフィラメントは群として一緒に加工される。ここで使用される際には、「端部」は個別の繊維、ヤーン、またはスレッドラインを意味する。ここで使用される際には、「スレッドライン」は「端部」と互換性がある。慣習的な繊維紡糸および巻き取り方法では、単一のスレッドラインは典型的には単一のチューブコア上で巻かれて「単一端部」パッケージを製造する。慣習的な工程により製造される単一端部パッケージは「パッケージ当たり1つの端部」とも称される。
【0033】
ここで使用される際には、「スレッドライン束」は一緒になって1つの多成分物体であるスレッドライン束を形成する少なくとも2つのスレッドラインを意味する。スレッドライン束は少なくとも2つの個別のスレッドライン(端部)に分離可能のままである。ここで使用される際には、スレッドライン束は少なくとも2つの端部から構成されるヤーンも意味する。
【0034】
ここで使用される際には、「ヤーン」は編むか、織るか、または別の方法で絡ませてテキスタイル布を形成するために適する形態のテキスタイル繊維、フィラメント、または物質の連続的ストランドを意味する。
【0035】
ここで使用される際には、「多端部パッケージ」はチューブコア上に巻かれたスレッドライン束を意味する。
【0036】
ポリエステル二成分フィラメントはポリ(トリメチレンテレフタレート)とポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンテレフタレート)またはそのような構成員の組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体とを、約30:70〜約70:30の重量比で、含んでなる。重合体は、例えば異なる固有粘度の、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンテレフタレート)、またはポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレン)テレフタレートでありうるが、異なる組み合わせも可能である。或いは、組成物は場合により異なる粘度を有する例えばポリ(トリメチレンテレフタレート)ホモポリエステルおよびポリ(トリメチレンテレフタレート)コポリエステルの如く、同様であ
ることもできる。他のポリエステル二成分組み合わせ、例えばポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンテレフタレート)、または例えば異なる固有粘度のポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(エチレンテレフタレート)、またはポリ(エチレンテレフタレート)ホモポリエステルおよびポリ(エチレンテレフタレート)コポリエステル、も可能である。ここで使用される際には、記号「//」は二成分フィラメントの製造において使用される2種の重合体を区別するために使用される。それ故、例えば、「ポリ(エチレンテレフタレート)//ポリ(トリメチレンテレフタレート)」はポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含んでなる二成分フィラメントを示す。
【0037】
ポリエステル類の一方または両方がコポリエステル類であることができ、そして「ポリ(エチレンテレフタレート)」、「ポリ(テトラメチレンテレフタレート)」、および「ポリ(トリメチレンテレフタレート)」はそのようなコポリエステル類をそれらの意味の中に包含する。例えば、コポリエステルを製造するために使用されるコモノマーが4−12個の炭素原子を有する線状、環式、および分枝鎖状の脂肪族ジカルボン酸類(並びにそれらのジエステル類)(例えばブタンジオン酸、ペンタンジオン酸、ヘキサンジオン酸、ドデカンジオン酸、および1,4−シクロ−ヘキサンジカルボン酸);テレフタル酸以外の8−12個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸類(並びにそれらのジエステル類)(例えばイソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸);3−8個の炭素原子を有する線状、環式、および分枝鎖状の脂肪族ジオール類(例えば1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、および1,4−シクロヘキサンジオール);並びに4−10個の炭素原子を有する脂肪族および芳香脂肪族エーテルグリコール類(例えば、ヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、またはジエチレンエーテルグリコールを包含する約460より小さい分子量を有するポリ(エチレンエーテル)グリコール)よりなる群から選択されるコポリ(エチレンテレフタレート)を使用することができる。コモノマーはそれが発明の利点を弱めない程度まで、例えば全重合体成分を基準として約0.5−15モルパーセントの水準で、存在しうる。イソフタル酸、ペンタンジオン酸、ヘキサンジオン酸、1,3−プロパンジオール、および1,4−ブタンジオールが例示コモノマーである。
【0038】
他のコモノマーが繊維の物理的性質に悪影響を与えない限り、コポリエステル(類)は少量のそのようなコモノマーを用いて製造することもできる。そのような他のコモノマーは5−ナトリウム−スルホイソフタレート、3−(2−スルホエチル)ヘキサンジオン酸のナトリウム塩、およびそれらのジアルキルエステル類を包含し、それらは全ポリエステルを基準として約0.2−5モルパーセントで導入することができる。改良された酸染色性のために、(コ)ポリエステル(類)を重合体状の第二級アミン添加剤、例えばポリ(6,6’−イミノ−ビスヘキサメチレンテレフタルアミド)およびヘキサメチレンジアミンとのそれらのコポリアミド類、好ましくはそれらの燐酸および亜燐酸塩類、と混合することもできる。少量、例えば重合体のkg当たり約1〜6ミリ当量、のトリ−またはテトラ−官能性コモノマー、例えばトリメリト酸(その前駆体を包含する)またはペンタエリトリトール、を粘度調節用に導入することができる。
【0039】
ポリエステル二成分フィラメントは慣習的な添加剤、例えば静電防止剤、酸化防止剤、抗細菌剤、難燃剤、潤滑剤、染料、光安定剤、および艶消し剤、例えば二酸化チタン、をそれらが発明の利点を減じない限り含んでなりうる。
【0040】
二成分フィラメントの外側の断面形状に関しては特定の制限はなく、それらは非円形、円形、実質的な楕円形、三角形、「雪だるま形」、などでありうる。ここで使用される際には、「実質的な楕円形」は繊維の縦軸に対して垂直に測定したフィラメントの断面積が
楕円形状のものと比べて約20%以内だけ逸脱していることを意味する。一般的用語「楕円形」はその意味の中に「卵形(卵−形状)」および「楕円形」を包含する。そのような形状は典型的には形状の中心を通って直角にある2つの軸である主軸(A)および副軸(B)を有し、ここでは主軸Aの長さは副軸Bの長さより大きい。完全な楕円形の特定の場合には、楕円は2つの焦点からのそれらの距離の合計が一定でありそしてAに等しい軌跡点によって記述される。卵形のさらに一般的な場合には、楕円の一方の端部は他方より大きくてもよく、2つの焦点からの距離の合計が必ずしも一定である必要はなくそして楕円より20%もしくはそれ以上変動しうる。ここで使用される際には、「雪だるま形」の断面形状は長軸、短軸、および長軸に対してプロットされる時に短軸の長さにおける少なくとも2つの最大値を有するサイドバイサイドな断面として記述できる。
【0041】
二成分フィラメントの断面周囲は一定の曲率を有してもよくまたは有していなくてもよい。二成分フィラメントの断面形状は断面周囲に溝を有してもよくまたは有していなくてもよい。溝を有する断面形状の例は「雪だるま形」、「ホタテガイ−楕円形」および「鍵穴形」である。
【0042】
ここで使用される際には、「重合体界面」は二成分フィラメントの重合体間の境界を意味する。重合体界面は実質的に線状であってもまたは曲がっていてもよい。主および副軸を有する断面形状に関すると、二成分フィラメントは断面の主軸に対して実質的に垂直であるかまたは実質的に平行である重合体界面を有することができる。
【0043】
二成分フィラメントは約30%〜約90%、例えば約60%〜約80%、のクリンプポテンシャルを有する。クリンプは重合体の異なる収縮率から生じ、二成分繊維は異なる重合体から製造されておりそして異なる収縮比の結果としてクリンプを展開する。具体的には、クリンプは二成分フィラメントに対する熱の適用時に最大化される。
【0044】
異なる色のポリエステルヤーンがある種の態様では包含されうる。染料および/または顔料の使用によりポリエステルに色をつけることができる。例えば、黒色ヤーンはカーボンブラックの添加により製造できる。これらの添加剤は一般的には紡糸口金中を通る前に重合体の中に加えられそして一緒に混合される。
【0045】
図1は、単一の合体前または合体後の紡糸口金14からの2種もしくはそれ以上の組成的に異なる重合体12Aおよび12Bを溶融紡糸して複数のサイドバイサイドまたは偏心的なシース−コアポリエステル二成分フィラメントを形成することを含んでなる多端部パッケージを製造する方法を提供するためのヤーン紡糸装置10の1つの態様を示す。複数のフィラメントを各々が含む複数のヤーン端部16a−16fが製造される。仕上げは紡糸仕上げアプリケーター19により行うことができる。ヤーン端部16a−16fは急冷室18の中を通る。ヤーン端部は次にG1−G3で延伸されそして加圧された流体を含むインターレーサー20の中を通ることができる。2つもしくはそれ以上のヤーン端部が収斂案内のところで一緒にされて多端部束を形成しそしてパッケージ28a上で巻かれる。これらの多端部束は元のヤーン端部に分離することができる。
【0046】
図2はさらなる詳細を提供する。16aおよび16b、16cおよび16d、並びに16eおよび16fのそれぞれが一緒にされてそれぞれ多端部束24c、24b、および24aを形成し、それらが巻かれてそれぞれ多端部パッケージ28c、28b、および28aを形成する。パッケージがほどき用の巻糸軸架の上に置かれる時に、2つのスレッドラインがそれぞれの多端部パッケージから利用可能である。これらのスレッドラインのそれぞれは下流加工用の異なる紡糸位置に行くために利用可能である。
【0047】
説明の目的のために提供されておりそして本発明をいずれかの方法で限定するとはみな
されない以下の実施例により、本発明の特徴および利点がさらに完全に示される。
【発明を実施するための形態】
【0048】
実施例
【実施例1】
【0049】
55dtexおよび34フィラメントの2つのスレッドラインの多端部パッケージ
各々が55dtexおよび34フィラメントの2つのスレッドラインの多端部パッケージを製造するために、68フィラメントを有する各スレッドラインを単一の紡糸口金から製造しそして各々が34フィラメントを有する2つのスレッドラインに分離する。すると、各スレッドラインは34フィラメントを有する。6つの紡糸口金を有するヤーン紡糸装置に関すると、6つのスレッドラインが1つの紡糸位置において12のスレッドラインになる。
【0050】
各スレッドライン(各々34フィラメントを有する合計12)はそれ自体のヤーン路をロールおよび全ての装置上に有する。全ての12のスレッドラインは独立している。インターレースジェット中を通過した後に、2つのスレッドラインが収斂案内により1つのスレッドラインに収斂し、次にこの収斂したスレッドラインが取り上げ巻き取り機により1つのヤーンパッケージに巻かれる。これが各々が55dtexおよび34フィラメントを有するスレッドラインからの2つの端部を各々有する6つの多端部パッケージを与える。
【実施例2】
【0051】
27dtexおよび17フィラメントの2つのスレッドラインの多端部パッケージ
各々が27dtexおよび17フィラメントの2つのスレッドラインの多端部パッケージを製造するために、34フィラメントを有する各スレッドラインを単一の紡糸口金から製造しそして各々が17フィラメントを有する2つのスレッドラインに分離する。すると、各スレッドラインは17フィラメントを有する。6つの紡糸口金を有するヤーン紡糸装置に関すると、6つのスレッドラインが1つの紡糸位置において12のスレッドラインになる。
【0052】
各スレッドライン(各々17フィラメントを有する合計12)はそれ自体のヤーン路をロールおよび全ての装置上に有する。全ての12のスレッドラインは独立している。インターレースジェット中を通過した後に、2つのスレッドラインが収斂案内により1つのスレッドラインに収斂し、次にこの収斂したスレッドラインが取り上げ巻き取り機により1つのヤーンパッケージに巻かれる。これが各々が27dtexおよび17フィラメントを有するスレッドラインからの2つの端部を各々有する6つの多端部パッケージを与える。
【実施例3】
【0053】
コア紡糸用の多端部パッケージ
図3はコア紡糸方法用の多端部パッケージ28cを示す。ヤーンは2つの分配ローラー38により駆動されて、多端部パッケージ28cからの2つの多成分ヤーン16aおよび16bが分離されそしてローラー案内30に対して接線方向にほどかれ、それが分離された多成分ヤーン16aおよび16bを紡糸位置の対応する前部ローラー35に向けさせ、そこでポリエステル多成分ヤーンがステープル粗紡繊維2と一緒にされて別個のコア−スパンヤーンパッケージ4を与える。
【実施例4】
【0054】
中空スピンドル被覆用の多端部パッケージ
図4は中空スピンドル被覆方法用の多端部パッケージを示す。多端部パッケージ28は2つの分配ローラー38により駆動されそして2つの多成分ヤーン16aおよび16bが
対応する紡糸位置の個別案内アイレット42に対して接線方向に分配される。分離された多成分ヤーン16aおよび16bは第二の分配ローラー40から別々に通過し、次に中心に中空チューブを有する紡糸スピンドル44の中を通過し、そして非弾性ヤーンパッケージを外側46に運ぶ。スピンドルの紡糸作用が非弾性ヤーンを放出しそして多成分ヤーンの周囲を包みそして第三の分配ローラー41により取り上げられて他の用途のための被覆されたパッケージ48となる。
【実施例5】
【0055】
丸編み用の多端部パッケージ
図5は丸編み用の多端部パッケージ28を示す。パッケージ28上の多端部ヤーン16aおよび16bは2つの分配ローラー38により一定速度で分配されそして対応する編み位置用の個別の停止動作装置54に分離される。分離されたヤーン16aおよび16bはローラー案内50からヤーン供給機52、編み針58へと通過する。別個に、硬質ヤーンパッケージ60は供給速度調節装置56を用いて硬質ヤーンを硬質ヤーンおよび弾性二成分ヤーンを含む衣類または布を編むためのヤーン供給機52に供給する。
【0056】
実施例3、4、および5は、多端部パッケージを一定の且つ予め決められた速度で駆動して多成分ヤーンを接線方向に分配する装置を有する。多成分ヤーンの設定:より良好な加工効率のためには非弾性ヤーンと比べて多端部パッケージの分配速度は通常は1X〜1.2X、典型的には1.01X〜1.1X、の範囲である。
【0057】
発明の好ましい態様であると現在信じられていることを記載してきたが、当業者は発明の精神から逸脱せずにそれらに対して変更および改変を行えることを認識するであろうし、そして全てのそのような変更および改変は発明の範囲内に入って包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)複数のサイドバイサイドまたは偏心的なシース−コアポリエステル二成分フィラメントを形成するために単一の合体前または合体後の紡糸口金からの2種もしくはそれ以上の組成的に異なるポリエステル類を溶融−紡糸する工程、
B)各々のスレッドラインが1つより多いフィラメントを含むようにフィラメントを少なくとも2つのスレッドライン群にする工程、
C)スレッドラインを毎分約300メートルより大きい速度で取り上げる工程、
D)各スレッドラインをインターレースする工程、
E)スレッドラインをスレッドライン束にまとめる工程、および
F)スレッドライン束をチューブコア上に毎分約300メートルより大きい速度で巻く工程、
を備え、
スレッドライン束が少なくとも2つの個別のスレッドラインに分離可能でありそして二成分フィラメントがポリ(トリメチレンテレフタレート)とポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンテレフタレート)またはそのような構成員の組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体とを含んでなる、多端部パッケージの製造方法。
【請求項2】
スレッドラインを約1.2より大きい延伸比で延伸する工程、およびスレッドライン束を毎分約420メートルより大きい速度で巻く工程、をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スレッドラインを約100℃〜約200℃の間の温度で熱処理する工程をさらに備える請求項2に記載の方法。
【請求項4】
A)複数のサイドバイサイドまたは偏心的なシース−コアポリエステル二成分フィラメントを形成するために複数の合体前または合体後の紡糸口金からの2種もしくはそれ以上の組成的に異なるポリエステル類を単一の紡糸位置で溶融−紡糸する工程、
B)各々のスレッドラインが複数のフィラメントからなるようにフィラメントを少なくとも2つのスレッドライン群にする工程、
C)スレッドラインを毎分約300メートルより大きい速度で取り上げる工程、
D)各スレッドラインをインターレースする工程、
E)少なくとも2つのスレッドラインの複数の群を複数のスレッドライン束にまとめる工程、および
F)各スレッドライン束をチューブコア上に普遍的なマルチ−パッケージ巻き取り機を用いて巻く工程、
を備え、
各スレッドライン束が少なくとも2つのスレッドラインに分離可能でありそして二成分フィラメントがポリ(トリメチレンテレフタレート)とポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンテレフタレート)またはそのような構成員の組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体とを含んでなる、多端部パッケージの製造方法。
【請求項5】
スレッドラインを約1.2より大きい延伸比で延伸する工程、およびスレッドライン束を毎分約420メートルより大きい速度で巻く工程、をさらに備える請求項4に記載の方法。
【請求項6】
スレッドラインを約100℃〜約200℃の間の温度で熱処理することをさらに備える請求項5に記載の方法。
【請求項7】
A)2つもしくはそれ以上のサイドバイサイドまたは偏心的なシース−コアポリエステル二成分フィラメントから少なくとも2つのスレッドラインを形成する工程、
B)スレッドラインをスレッドライン束にまとめる工程、および
C)スレッドライン束をチューブコア上に巻く工程、
を備え、
スレッドライン束が少なくとも2つのスレッドラインに分離可能でありそして二成分フィラメントがポリ(トリメチレンテレフタレート)とポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンテレフタレート)またはそのような構成員の組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体とを含んでなる、多端部パッケージの製造方法。
【請求項8】
パッケージがコアスパンヤーンの製造における直接使用に適する寸法を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
パッケージがコア紡糸スパンデックスヤーン用の装置に適合する寸法を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
二成分フィラメントがポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含んでなる、請求項1から9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
二成分フィラメントがポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含んでなる、請求項1から9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
二成分フィラメントがポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンテレフタレート)を含んでなる、請求項1から9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
各スレッドラインが複数のサイドバイサイドまたは偏心的なシース−コアポリエステル二成分フィラメントを備える少なくとも2つのスレッドラインを含んでなるスレッドライン束であって、
スレッドライン束が少なくとも2つの個別のスレッドラインに分離可能でありそして二成分フィラメントがポリ(トリメチレンテレフタレート)とポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンテレフタレート)またはそのような構成員の組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体とを含んでなる、スレッドライン束。
【請求項14】
フィラメントが円形、楕円形、もしくは雪だるま形またはそのような構成員の組み合わせよりなる群から選択される断面形状を有する、請求項13に記載のスレッドライン束。
【請求項15】
フィラメントが非−円形断面形状を有する、請求項13に記載のスレッドライン束。
【請求項16】
各スレッドラインのデニールが約10〜約300の間である、請求項13に記載のスレッドライン束。
【請求項17】
フィラメント当たりのデニールが約0.50〜約20の間である、請求項13に記載のスレッドライン束。
【請求項18】
スレッドラインが少なくとも30%のクリンプポテンシャルを有する、請求項13に記載のスレッドライン束。
【請求項19】
二成分フィラメントがポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含んでなる、請求項13に記載のスレッドライン束。
【請求項20】
二成分フィラメントがポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含んでなる、請求項13に記載のスレッドライン束。
【請求項21】
二成分フィラメントがポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンテレフタレート)を含んでなる、請求項13に記載のスレッドライン束。
【請求項22】
チューブコア上に巻かれたスレッドライン束を有し、
スレッドライン束が少なくとも2つのスレッドラインに分離可能であり、各スレッドラインが複数のサイドバイサイドまたは偏心的なシース−コアポリエステル二成分フィラメントを備え、そして二成分フィラメントがポリ(トリメチレンテレフタレート)とポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンテレフタレート)またはそのような構成員の組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体とを含んでなる、多端部パッケージ。
【請求項23】
コアスパンヤーンの製造における直接使用に適する寸法を有する、請求項22に記載の多端部パッケージ。
【請求項24】
二成分フィラメントがポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含んでなる請求項22または23に記載の多端部パッケージ。
【請求項25】
二成分フィラメントがポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含んでなる、請求項22または23に記載の多端部パッケージ。
【請求項26】
二成分フィラメントがポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンテレフタレート)を含んでなる、請求項22または23に記載の多端部パッケージ。
【請求項27】
請求項1または4または7に記載の方法により製造される多端部パッケージ。
【請求項28】
請求項1または4または7に記載の方法により製造される多端部パッケージのスレッドライン束。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−518261(P2011−518261A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500940(P2011−500940)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/037589
【国際公開番号】WO2009/117535
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(309028329)インビスタ テクノロジーズ エス エイ アール エル (80)
【Fターム(参考)】