説明

マルチプルビュー液晶表示装置

【課題】マルチプルビュー液晶表示装置において、視差バリアとブラックマトリクスとの間のギャップを確保しつつ、逆視現象および逆視クロストークの発生を抑える。
【解決手段】液晶パネル10の対向基板6には、TFT基板4との対向面にブラックマトリクス7が設けられ、ブラックマトリクス7上に、所定の厚みのギャップ層を介して配設された視差バリア8が設けられる。ブラックマトリクス7は、視差バリア8の開口部80の真下に配設された第1遮光部71と、真上が視差バリア8で覆われた第2遮光部72を含む。第2遮光部72は、それと隣り合う第1遮光部71との間の画素開口部70に接する端部に、液晶5よりも屈折率が低い低屈折率膜72a(逆視防止膜)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置に関し、特に、複数の画像をそれぞれ異なる方向に向けて表示可能なマルチプルビュー液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、低消費電力や小型軽量といったメリットを生かし、パーソナルコンピュータ(PC)や携帯情報端末機器等のモニタ、あるいはテレビジョン受信装置など、あらゆる表示装置に応用されている。液晶表示装置は、マトリクス状に配置された複数の画素を備え、各画素に対する光変調を行うことによって画像表示を行うデバイスである。液晶表示装置の代表的なものとしては、各画素に画像信号を供給するスイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;TFT)を用いたアクティブマトリクス型のものが広く知られている。
【0003】
近年、1つの液晶表示パネル(液晶パネル)を用いて、複数の画像をそれぞれ異なる方向の視野角で表示することが可能なマルチプルビュー液晶表示装置(複数画面液晶表示装置)が開発されている。例えば、下記の特許文献1〜3には、視差バリア方式のマルチプルビュー液晶表示装置、特に、画面の正面よりも右側から見たときと左側から見たときとで異なる画像が表示されるデュアルビュー液晶表示装置(2画面液晶表示装置)が開示されている。
【0004】
視差バリア方式のマルチプルビュー液晶表示装置は、複数の画像を表示する画素が所定の規則に従い混在して配列された液晶パネルと、その前面側(視認側)に配設された視差バリア(パララックスバリア)と呼ばれる遮光層とを備えた構造となる。視差バリアは、液晶パネルの各画素から特定の方向に向かう光を遮るように配置される。それにより、液晶パネルからの光が複数の方向に分離され、液晶パネルが表示した複数の画像が、それぞれ異なる方向に向けて表示される。
【0005】
視差バリア方式のマルチプルビュー液晶表示装置には、ある方向に向けて表示された画像に、他の方向に向けて表示されるべき画像の一部が漏れて観察される「クロストーク」の問題がある。
【0006】
例えば、2つの画像を左右に分けて表示する視差バリア方式のデュアルビュー液晶表示装置でクロストークが生じた場合、画面を正面よりも左から見たときに表示されるべき画像(左用画像)と、右から見たときに表示されるべき画像(右用画像)とが重なって見える。このクロストークは、各画像の視野角の範囲(視野範囲)が重複したときに生じるため、各画像の視野範囲の境界付近で生じやすい。つまりデュアルビュー液晶表示装置では、右用画像の視野範囲と左用画像の視野範囲との境界である、画面の正面から見たときに生じやすい。特に、黒表示が多い画像を表示しているときには、他方の画像からの漏れが僅かでも視認されやすいため、画質に与える影響が大きくなる。
【0007】
クロストークは、マルチプルビュー液晶表示装置の設計上の問題の他、視差バリアの開口部での光の回折現象や、液晶パネル内での光の散乱現象なども主な要因となっていると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−264082号公報
【特許文献2】特開2008−064917号公報
【特許文献3】再表2007/001071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、液晶パネルは、画素電極およびそれに画像信号を供給するスイッチング素子や信号線などが配設される第1の基板と、各画素の領域を規定するブラックマトリクスやカラーフィルタ(CF)が配設される第2の基板と、その間に挟持された液晶を備える構造となっている。視差バリア方式のデュアルビュー液晶表示装置では、第2の基板における第1の基板との対向面前面に画素領域を規定するブラックマトリクスが形成され、その反対面(視認側)に視差バリアが形成される。よって視差バリアとブラックマトリクスとの間には、所定の厚みのギャップが存在する。例えば、ブラックマトリクス上に、第2の基板を構成するガラス基板等の透光性基板を介して視差バリアが配置される場合には、この透光性基板の厚さが上記ギャップに相当する。このギャップの大きさは、視差バリアの開口部の大きさや画素のピッチ等と共に、同時に表示する複数の画像それぞれの視野範囲の方向および広さを決定する要素となる。
【0010】
視差バリア方式のマルチプルビュー液晶表示装置では、視差バリアとブラックマトリクスとの間のギャップの存在に起因して、画面を正面から大きく外れた方向から見たときに、逆方向に向けて表示されるべき画像が見える「逆視」と呼ばれる現象が生じる。例えば、観察者が、デュアルビュー液晶表示装置に対して画面の正面から右へ移動すると、まず右用画像が見えるが、さらに右へ移動し続けると左用画像が見える範囲がある。これは、視差バリアの開口部を通して、本来見えるべき画素の隣の他の画素が見えてしまうことによるものである(詳細は後述する)。
【0011】
つまり、視差バリア方式のデュアルビュー液晶表示装置においては、右用画像の視野範囲の外側に、逆視現象による左用画像の視野範囲が存在し、左用画像の視野範囲の外側に、逆視現象による右用画像の視野範囲が存在する。そのため右用画像と左用画像のクロストークは、画面の正面付近だけでなく、実際には、右用画像および左用画像それぞれの視野範囲の外端付近においても生じやすい。以下、画面の正面付近で生じるクロストークを「正面クロストーク」、各画像それぞれの視野範囲の外端付近で生じる逆視現象に起因するクロストークを「逆視クロストーク」と称する。
【0012】
正面クロストークおよび逆視クロストークは、デュアルビュー液晶表示装置のみならず、視差バリア方式の任意のマルチプルビュー液晶表示装置においても問題となる。
【0013】
上記の特許文献1〜3には、主にデュアルビュー液晶表示装置の正面クロストークを防止する方法について開示されているが、逆視クロストークへの対策は充分でない。例えば特許文献1では、逆視クロストークの問題は全く言及されていない。特許文献2では、逆視クロストークの発生は示唆されているが、特に有効な対策はとられていない。特許文献3では、車載のデュアルビュー液晶表示装置において、逆視現象が生じる範囲を運転席および助手席からほぼ見えない範囲(正面から45°以上外側)にすることが示されているが、実質的に逆視クロストークを防止するための方法は言及されていない。
【0014】
仮に、特許文献3の技術を応用して逆視現象が生じる角度を極めて外側にすれば、理論上、逆視クロストークを防止できるであろうが、それを実施するには視差バリアとブラックマトリクスとの間のギャップをより狭く、画素ピッチをより大きくする必要がある。但し、近年では、表示装置の高解像度化に伴い画素ピッチは狭くなる傾向にあるため、事実上、視差バリアとブラックマトリクスとの間のギャップを極めて小さくすることが必要になる。例えば、第2の基板を構成する透光性基板によりギャップが形成されている場合には、透光性基板を極めて薄くする必要があるが、物理的な限界があるため実施が困難である。
【0015】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、視差バリアとブラックマトリクスとの間のギャップの大きさを確保しつつ、逆視現象および逆視クロストークの発生を抑制できるマルチプルビュー液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の局面に係るマルチプルビュー液晶表示装置は、複数の画像に対応する画像信号が供給される複数の画素電極が配設された第1基板と、前記第1基板に対向配置された第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶とを備え、前記第2基板は、前記第1基板との対向面に配設され各画素の領域を規定する開口部を有する遮光膜であるブラックマトリクスと、前記ブラックマトリクス上に配置される所定の厚みのギャップ層と、前記ギャップ層を介して前記ブラックマトリクス上に配設され、前記ブラックマトリクスの開口部を通過した光を異なる方向へ分離することにより、前記複数の画像を分離してそれぞれ前記異なる方向へ表示させる遮光膜である視差バリアとを備え、前記ブラックマトリクスは、前記視差バリアの開口部の真下に配設された第1遮光部と、真上が前記視差バリアで覆われた第2遮光部とを備え、前記第2遮光部は、当該第2遮光部と隣り合う前記第1遮光部との間の開口部に接する端部に、前記液晶よりも屈折率が低い逆視防止膜を有するものである。
【0017】
本発明の第2の局面に係るマルチプルビュー液晶表示装置は、複数の画像に対応する画像信号が供給される複数の画素電極が配設された第1基板と、前記第1基板に対向配置された第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶とを備え、前記第2基板は、前記第1基板との対向面に配設され各画素の領域を規定する開口部を有する遮光膜であるブラックマトリクスと、前記ブラックマトリクス上に配置される所定の厚みのギャップ層と、前記ギャップ層を介して前記ブラックマトリクス上に配設され、前記ブラックマトリクスの開口部を通過した光を異なる方向へ分離することにより、前記複数の画像を分離してそれぞれ前記異なる方向へ表示させる遮光膜である視差バリアとを備え、前記ブラックマトリクスは、前記視差バリアの開口部の真下に配設された第1遮光部と、真上が前記視差バリアで覆われた第2遮光部とを備え、前記第2遮光部は、当該第2遮光部と隣り合う前記第1遮光部との間の開口部に接する端部に、当該開口部よりも光の透過率が低い逆視防止膜を有するものである。
【0018】
本発明の第3の局面に係るマルチプルビュー液晶表示装置は、複数の画像に対応する画像信号が供給される複数の画素電極が配設された第1基板と、前記第1基板に対向配置された第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶とを備え、前記第2基板は、前記第1基板との対向面に配設され各画素の領域を規定する開口部を有する遮光膜であるブラックマトリクスと、前記ブラックマトリクス上に配置される所定の厚みのギャップ層と、前記ギャップ層を介して前記ブラックマトリクス上に配設され、前記ブラックマトリクスの開口部を通過した光を異なる方向へ分離することにより、前記複数の画像を分離してそれぞれ前記異なる方向へ表示させる遮光膜である視差バリアとを備え、前記ブラックマトリクスは、前記視差バリアの開口部の真下に配設された第1遮光部と、真上が前記視差バリアで覆われた第2遮光部とを備え、前記第2遮光部は、隣り合う前記第1遮光部よりも幅が広いものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、視差バリアとブラックマトリクスとの間のギャップ層の厚さをある程度の大きさに確保しつつ、逆視現象および逆視クロストークを抑えることができる。従って、視差バリア方式のマルチプルビュー液晶表示装置における表示画面の視認性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態1に係るマルチプルビュー液晶表示装置の概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】視差バリアのパターン例を示す図である。
【図3】視差バリアのパターン例を示す図である。
【図4】従来のマルチプルビュー液晶表示装置の表示パネル構成を示す断面図である。
【図5】従来のマルチプルビュー液晶表示装置のブラックマトリクスの構成を示す図である。
【図6】従来のマルチプルビュー液晶表示装置における規格化開口率の視野角特性を示すグラフである。
【図7】実施の形態1に係るマルチプルビュー液晶表示装置の表示パネル構成を示す断面図である。
【図8】実施の形態1に係るマルチプルビュー液晶表示装置のブラックマトリクスの構成を示す図である。
【図9】実施の形態1の変更例に係るマルチプルビュー液晶表示装置の表示パネル構成を示す断面図である。
【図10】実施の形態1の変更例に係るマルチプルビュー液晶表示装置のブラックマトリクスの構成を示す図である。
【図11】実施の形態2に係るマルチプルビュー液晶表示装置の表示パネル構成を示す断面図である。
【図12】実施の形態2に係るマルチプルビュー液晶表示装置のブラックマトリクスの構成を示す図である。
【図13】実施の形態2の変更例に係るマルチプルビュー液晶表示装置の表示パネル構成を示す断面図である。
【図14】実施の形態2の変更例に係るマルチプルビュー液晶表示装置のブラックマトリクスの構成を示す図である。
【図15】実施の形態3に係るマルチプルビュー液晶表示装置の表示パネル構成を示す断面図である。
【図16】実施の形態3に係るマルチプルビュー液晶表示装置のブラックマトリクスの構成を示す図である。
【図17】実施の形態3に係るマルチプルビュー液晶表示装置における規格化開口率の視野角特性を示すグラフである。
【図18】実施の形態3の変更例に係るマルチプルビュー液晶表示装置の表示パネル構成を示す断面図である。
【図19】実施の形態3の変更例に係るマルチプルビュー液晶表示装置のブラックマトリクスの構成を示す図である。
【図20】実施の形態3の変更例に係るマルチプルビュー液晶表示装置における規格化開口率の視野角特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係るマルチプルビュー液晶表示装置の概略構成を示す分解斜視図である。同図の如く、当該マルチプルビュー液晶表示装置は、光源および導光板などから成る面状光源装置であるバックライト1上に、直線偏光子2a、視野角補償フィルム3a、液晶パネル10、視野角補償フィルム3b、直線偏光子2bがこの順に重なって成る、透過型の表示装置である。液晶パネル10は、バックライト1側のTFT基板4と、前面側(視認側)の対向基板6との間に、液晶5が挟持された構造を有している。
【0022】
対向基板6は、基材となるガラス基板等の透光性基板を備えており、この透光性基板におけるTFT基板4との対向面にブラックマトリクス7、視認側の面に視差バリア8が配設されている。つまり本実施の形態において、対向基板6の透光性基板は、視差バリア8とブラックマトリクス7との間に配設され、視差バリア8とブラックマトリクス7との間隔を規定するギャップ層として機能する。
【0023】
以下の各実施の形態では、対向基板6の基材となる透光性基板がギャップ層となる例を示すが、ギャップ層は透光性基板とは別に設けてもよい。例えば、対向基板6の基材となる透光性基板よりも内側に(例えば透光性基板におけるTFT基板4との対向面に)、視差バリア層、ブラックマトリクス、およびその間のギャップ層を配設してもよい。例えば、対向基板6の基材となる透光性基板とは別に、ギャップ層として、所定厚みのガラス基板や、所定厚みに塗布形成した樹脂層などを設けてもよい。対向基板6は、少なくともTFT基板4との対向面に、ブラックマトリクスと、このブラックマトリクス上に配置される所定の厚みのギャップ層と、このギャップ層を介してブラックマトリクス上に配設される視差バリアを備えていればよい。
【0024】
なお、ここで用いた「基材」という用語は、例えば、対向基板6の基材と用いた場合には、対向基板6全体の強度、剛性などを決定する主要な構成部材を意味し、本明細書中では同様の意味にて用いることとする。
【0025】
なお、図1に示す各矢印は、液晶5の配向方向、直線偏光子2a,2bの吸収軸、及び視野角補償フィルム3a,3bの配向方向を示している。
【0026】
本実施の形態では、液晶パネル10は、電界無印加状態において液晶5が略90°ツイスト配向したTN(Twisted Nematic)モードのものとする。但し、本発明の適用はこれに限られるものではなく、IPS(In-Plane Switching)モードあるいはFFS(Fringe Field Switching)モード等の横電界駆動方式や、液晶が電界無印加状態で略垂直配向したVA(Vertical Alignment)モード等のあらゆる液晶モードの液晶パネル10に対しても適用可能である。
【0027】
液晶パネル10において、TFT基板4および対向基板6は、その周縁部に塗布されたシール材を介して貼着されており、そのシール材で囲まれた領域内に液晶5が封止されている。
【0028】
TFT基板4は、ガラス基板等の透光性基板上に、各画素の画素電極、それら画素電極に画像信号を供給するためのスイッチング素子であるTFT(Thin Film Transistor)、TFTのゲート電極に駆動信号を供給するためのゲート配線(走査信号配線)、TFTのソース電極に画像信号を供給するソース配線(表示信号配線)などが配設されて成っており、さらに、その液晶5側の最表面に配向膜を備えている。
【0029】
対向基板6は、ガラス基板等の透光性基板における液晶5側の面に、対向電極(共通電極)、赤(R)・緑(G)・青(B)各色の着色層から成るカラーフィルタ、画素間を遮光することにより各画素の領域を規定する遮光膜であるブラックマトリクス7などが配設されて成る。視差バリア方式のマルチプルビュー液晶表示装置では、対向基板6の視認側の面に、更に、視差バリア8が設けられる。よって、本実施の形態では、ブラックマトリクス7と視差バリア8とのギャップは、対向基板6を構成するガラス基板等の透光性基板の厚さに相当することとなる。
【0030】
直線偏光子2a,2bは、特定の直線偏光(P偏光あるいはS偏光)を選択的に透過させるフィルムである。また視野角補償フィルム3a,3bは、視野角が広がるようにその光を補償するλ/4板(λは光の波長)などのWV(Wide Viewing)フィルムである。
【0031】
本実施形態では、直線偏光子2a,2bとして、セルローストリアセテートフィルム(TAC)を基板とした、透過させる直線偏光に直交する偏光軸(吸収軸)の直線偏光を吸収する、吸収型のものを用いている。直線偏光子2a,2bは、透過させる直線偏光に直交する偏光軸の直線偏光を反射する反射型のものを用いてもよい。
【0032】
通常のTNモードでは、液晶5のツイスト角は90°に設定され、一対の直線偏光子2a,2bの偏光軸方向は、それぞれ液晶5の近い側の端面の液晶分子の配向方向に対して略平行又は略垂直に設計される。
【0033】
ここで、本実施の形態に係るマルチプルビュー液晶表示装置は、2つの異なる画像を正面よりも右側と左側に分けて表示するデュアルビュー液晶表示装置であると仮定する。
【0034】
また本実施の形態では、液晶5は、電界無印加状態において略90°ツイスト配向しており、且つ、波長550nmにおける屈折率異方性Δnと液晶層厚dとの積であるΔnd値が300nm以上400nm以下であるとする。さらに、直線偏光子2a,2bの偏光軸方向は、それぞれ液晶5の近い側の端面の液晶分子の配向方向に対して略平行であり、当該直線偏光子2a,2bの偏光軸が互いになす角度が85°以上90°未満に設計されているものとする。
【0035】
この設計条件により、正面近傍の視野におけるコントラスト(CR)が比較的低く、所望の斜め視野(例えば正面から左右に20〜60°程度の範囲)におけるコントラストが比較的高いマルチプルビュー液晶表示装置が得られる。
【0036】
デュアルビュー液晶表示装置の液晶パネル10には、画面の正面よりも右側の視野範囲へ向けて表示する画像(右用画像)を構成する画素(右用画素)と、画面の正面よりも左側の視野範囲へ向けて表示する画像(左用画像)を構成する画素(左用画素)とが、所定の規則に従い混在して配設される。視差バリア8は、右用画素の光と左用画素の光とをそれぞれ画面の正面よりも右側と左側に分離することにより、右用画像と左用画像を分離してそれぞれ異なる方向へ表示させる。
【0037】
視差バリア8は、画面の正面よりも右側に対しては左用画素の光を遮り、画面の正面よりも左側に対しては右用画素の光を遮る遮光膜である。言い方を変えれば、視差バリア8には、画面の正面よりも右側へ右側画素の光のみを通し、画面の正面よりも左側へ左用画素の光のみを通す開口部を有する遮光膜である。
【0038】
視差バリア8のパターンは、液晶パネル10における右用画素および左用画素の配列パターンに応じて異なる。視差バリア8は、右側画像を画面の正面よりも右側へ、左側画像を画面の正面よりも左側へ正しく表示できるように設計されていれば、そのパターンは任意でよい。例えば、図2のように視差バリア8に開口部80が市松状(千鳥状)に配置されていてもよいし、図3のように視差バリア8に開口部80がストライプ状に配置されていてもよい。
【0039】
ここで、比較例として、従来の視差バリア方式のマルチプルビュー液晶表示装置(デュアルビュー液晶表示装置)の構成を説明する。図4はその液晶パネル10の構成を示す断面図である。
【0040】
上記したように、液晶パネル10は、背面側(バックライト1側)のTFT基板4と、前面側(視認側)の対向基板6との間に、液晶5が挟持されて成る構造を有する(図4では、液晶5中の液晶分子51を模式的に図示している)。TFT基板4には、各画素の画素電極、TFT、ゲート配線、ソース配線などが配設されるが、図4においてはそれらのうちソース配線41のみが図示されている。
【0041】
対向基板6には、TFT基板4との対向面にブラックマトリクス7が形成され、ブラックマトリクス7の視認側には、所定の厚みのガラス基板等の透光性基板を介し、視差バリア8が形成される。実際には、対向基板6におけるTFT基板4との対向面には、ブラックマトリクス7の他に対向電極(共通電極)やカラーフィルタなども形成されるが、それらの図示は省略している。
【0042】
ブラックマトリクス7は、各画素の領域を規定する開口部(画素開口部)70を備える遮光膜である。ここでは左用画素PLと右用画素PRとが、画素列ごとに交互に配置されるものとする。つまり平面視で、右用画素PRの画素列と、左用画素PLの画素列とがストライプ状に交互に配置される。
【0043】
画素開口部70は、視差バリア8の開口部80からずれた位置に配設される。つまり視差バリア8の開口部80の真下には、ブラックマトリクス7の遮光部71が配設される。視差バリア8の同一の開口部80から視認されるべき右用画素PRおよび左用画素PLは、その遮光部71を挟むように配設される。また視差バリア8の遮光部で覆われた領域においても、互いに隣り合う右用画素PRと左用画素PLとの間に、ブラックマトリクス7の遮光部72が配設される。以下、視差バリア8の開口部80の真下に配設された遮光部71を「第1遮光部」、真上が視差バリア8で覆われた第2遮光部72を「第2遮光部」と称する。
【0044】
この比較例では右用画素PRの画素列と、左用画素PLの画素列とストライプ状に交互に配置されるので、図5のように、ブラックマトリクス7には複数の画素開口部70がストライプ状に配置され、ブラックマトリクス7の遮光部は、その画素開口部70を挟んで第1遮光部71と第2遮光部72とが交互に配置されるパターンとなる。
【0045】
視差バリア8の開口部80とブラックマトリクス7の画素開口部70との位置関係が、上記の関係を成すことにより、右用画素PRが生成する右用画像は画面の正面よりも右側へ向けて表示され、左用画素PLが生成する左用画像は画面の正面よりも左側へ向けて表示される。図4を参照し、例えば右用画素PRが生成する右用画像は、視野範囲IR1から視認でき、左用画素PLが生成する左用画像は、視野範囲IL1から視認できる。
【0046】
右用画像の視野範囲IR1と左用画像の視野範囲IL1とが重複した位置では、クロストークが生じる。そのため、液晶パネル10では、それらがなるべく重ならないように、ブラックマトリクス7と視差バリア8とのギャップ(対向基板6を構成する透光性基板の厚みに相当)や、画素開口部70および視差バリア8の開口部80それぞれの位置や径の設計が行われる。このブラックマトリクス7と視差バリア8とのギャップは、表示装置に要求される視野角の条件や画素サイズに応じて、所定の距離に定められるが、例えば画素サイズが200μm、視野角範囲が正面から左右60度までを条件とすると、許容されるギャップの最大値は0.09mm程度であり、このギャップに相当する対向基板6を構成する透光性基板の厚みとしても、最大0.09mm程度が許容範囲となる。従って、対向基板6の透光性基板の厚みは、上記厚みの許容範囲を満たす所定の厚みに設定される。
【0047】
図6はその条件に基づいて設計したマルチプルビュー液晶表示装置における規格化開口率の視野角特性のシミュレーション結果を示すグラフである。規格化開口率とは、画素の幅すべてを光の透過部として利用できる場合を「1」とした開口率である。点線のグラフは、右用画像についての規格化開口率であり、実線のグラフは、左用画像についての規格化開口率である。
【0048】
右用画像の規格化開口率は、正面から右へ30度の位置付近でピークとなり、左用画像の規格化開口率は、正面から左へ30度の位置付近でピークとなる。また正面(0°)付近は、右用画像および左用画像の両方の規格化開口率が0、つまり右用画像と左用画像のどちらも見えない領域となっている。これは、右用画像の視野範囲IR1と左用画像の視野範囲IL1とが分離され、正面クロストークが生じないことを意味している。
【0049】
一方、右用画像の規格化開口率は、正面から右へ60度の位置付近で0となるが、その外側に左用画像の規格化開口率が上昇する領域がある。同様に、左側画像の規格化開口率は、正面から左へ60度の位置付近で0となるが、その外側に右用画像の規格化開口率が上昇する領域がある。これらはそれぞれ逆視現象の発生を示している。
【0050】
図4を参照し、逆視現象が発生するメカニズムを説明する。図4に示す視差バリア8の左側の開口部80に注目すると、この開口部80は、本来、その真下の第1遮光部71に隣接する右用画素PR1の光を右用画像の視野範囲IR1へと通過させると共に、左用画素PL1の光を左用画像の視野範囲IL1へと通過させるためのものである。
【0051】
しかし、ブラックマトリクス7と視差バリア8との間にはギャップが存在するため、右用画像の視野範囲IR1の外側に、右用画素PR1に第2遮光部72を隔てて隣接する、当該開口部80から本来は見えないはずの左用画素PL2が見えてしまう範囲IL2が現れる。これが逆視現象である。図示は省略するが、右用画像の視野範囲IR1の外側においても同様に、本来は見えないはずの右用画素が見えてしまう範囲が存在する。
【0052】
図6のシミュレーション結果では、左右60度の付近が、右用画像および左用画像の両方の規格化開口率が0、つまり右用画像と左用画像のどちらも見えない領域となっている。これは逆視現象によるクロストーク(逆視クロストーク)が生じないことを意味している。
【0053】
しかし実際には、視差バリア8の開口部での光の回折現象や、液晶パネル10内での光の散乱現象などに起因して、逆視クロストークが発生することがある。以下、この問題を解決することができる、本発明に係るマルチプルビュー液晶表示装置について説明する。
【0054】
図7は、実施の形態1に係るマルチプルビュー液晶表示装置の表示パネル構成を示す断面図である。図7において、図4に示したものと同様の機能を有する要素にはそれと同一符号を付しているので、ここではそれらの説明は省略する。また図8は、図7のマルチプルビュー液晶表示装置が備えるブラックマトリクス7の上面図である。
【0055】
図7の液晶パネル10は、図4の構成に対し、ブラックマトリクス7の第2遮光部72の左右両端に、逆視防止膜として、液晶5よりも屈折率が低い透明な部材である低屈折率膜72aを設けたものである。つまり図8のように、ブラックマトリクス7の第2遮光部72は、隣り合う第1遮光部71との間の画素開口部70に接する端部のそれぞれに、低屈折率膜72aを有している。
【0056】
本実施の形態のマルチプルビュー液晶表示装置において、ブラックマトリクス7と視差バリア8との間のギャップや、ブラックマトリクス7の画素開口部70並びに視差バリア8の開口部80それぞれの位置および径は、従来と同様に、右用画像の視野範囲IRと左用画像の視野範囲ILと分離されるように設計されている。なお、本実施の形態では、ブラックマトリクス7と視差バリア8との間のギャップは、このギャップに相当する対向基板6を構成する透光性基板の厚みとした。ここでは、図4を用いて説明した従来のマルチプルビュー液晶表示装置との比較のため、従来のマルチプルビュー液晶表示装置での許容範囲内となる0.08mm程度を透光性基板の厚みとして設定した。
【0057】
低屈折率膜72aは透明な部材であるが、その屈折率は液晶5の屈折率よりも小さいため、液晶5側から低屈折率膜72aに入射した光は、スネルの法則に従い、入射前よりも外側へ向けて出射される。よって、低屈折率膜72aを通過した光が逆視現象に寄与することが抑えられる。
【0058】
本実施の形態に係るマルチプルビュー液晶表示装置では、右用画像の視野範囲IR1および逆視現象による右用画像の視野範囲IR2、並びに、左用画像の視野範囲IL1および逆視現象による左用画像の視野範囲IL2それぞれの幅が、従来例(図6)と比較して狭くなる。よって、右用画像の視野範囲IR1の外端付近(−60度付近)および左用画像の視野範囲IL1の外端付近(60度付近)において、右用画像および左用画像の両方の規格化開口率が0となる範囲の幅が従来よりも広くなる。つまり右用画像の視野範囲IR1と逆視現象による左用画像の視野範囲IL2との間のマージン、並びに、左用画像の視野範囲IL1と逆視現象による右用画像の視野範囲IR2との間のマージンが、それぞれ広くなる。
【0059】
従って、視差バリア8の開口部での光の回折現象や、液晶パネル10内での光の散乱現象などが生じても、それに起因して、逆視クロストークが発生することを防止することができる。また逆視現象による右用画像の視野範囲IR2と、逆視現象による左用画像の視野範囲IL2がそれぞれ外側にずれるため、逆視現象そのものが発生も抑えることができる。
【0060】
なお、図8からも分かるように、本実施の形態では、第2遮光部72の左右両端に低屈折率膜72aを設けた分、画素開口部70の実効的な面積が小さくなるため、透過光の利用効率に若干のロスが生じる。それが問題となる場合には、ブラックマトリクス7の画素開口部70の幅に対する遮光部(第1および第2遮光部71,72)の幅の比率を下げる(つまりブラックマトリクス7における画素開口部70の面積率を上げる)ことにより、透過光の利用効率を改善できる。
【0061】
但し、第1遮光部71の幅を狭くした結果、第1遮光部71の幅がその真上に位置する視差バリア8の開口部80の幅よりも狭くなると、ほぼ無限遠とみなせる実質的な観察領域においても、液晶パネル10の正面で右用画像の視野範囲IR1と左用画像の視野範囲IL1とが重なる正面クロストークが発生する。そのため、ブラックマトリクス7の第1遮光部71の幅は、少なくともその真上の視差バリア8の開口部80よりも広くすることが好ましい。
【0062】
また、第2遮光部72についても、第1遮光部71と同様に、視差バリア8の開口部80よりも幅を広くすると、低屈折率膜72aの存在を考慮せずとも、ほぼ無限遠とみなせる実質的な観察領域における逆視クロストークを防止できる。
【0063】
以上より、本実施の形態に係るマルチプルビュー液晶表示装置では、ブラックマトリクス7の第2遮光部72の左右両端に低屈折率膜72aを設け、且つ、第1遮光部71および第2遮光部72それぞれの幅が視差バリア8の開口部80の幅よりも広くなる範囲で、ブラックマトリクス7における画素開口部70の面積率を適正化することが望ましい。それにより、透過光の利用効率の低下を抑制しつつ、正面クロストークおよび逆視クロストークの両方を防止できる。
【0064】
また、本実施の形態に係るマルチプルビュー液晶表示装置では、ブラックマトリクス7と視差バリア8との間のギャップ層に相当する透光性基板の厚みについて、従来のマルチプルビュー液晶表示装置での、画素サイズが200μm、視野角範囲が正面から左右60度までを条件とした場合における許容範囲内となる0.08mm程度を所定の厚みとして設定したが、正面クロストークおよび逆視クロストークの両方を防止しながらも、より厚い所定の厚みを設定することができる。つまり、従来例と同じ画素サイズ、視野角範囲の条件であっても、0.09mm程度を超える程度の厚みに所定の厚みを設定してもよい。
【0065】
更に、以上のとおり、視差バリア8とブラックマトリクス7との間のギャップ層を、例えば0.09mm程度以下にまで薄くする必要がないため、本実施の形態のように対向基板6の基材となる透光性基板によりギャップ層を構成した場合にも、例えば0.09mm程度以下にまで、透光性基板として極端に薄い厚みとする必要が無い。つまり、対向基板6の基材、すなわち、対向基板6自体の強度、剛性を決定する主要な部材となる透光性基板の厚みについて極端に薄くする必要がないため、対向基板6自体の強度、剛性が比較的高くなり、製造の容易性や耐久性なども含め、比較的容易に実施することが可能である。
【0066】
また、本実施の形態に係るマルチプルビュー液晶表示装置では、比較的狭い画素ピッチの場合においても正面クロストークおよび逆視クロストークの両方を防止する効果について得ることができることから、画素ピッチを特段広く設定する必要もないため、マルチプルビュー液晶表示装置の高解像度化にも寄与できる。
【0067】
本実施の形態では、左右2方向に異なる画像を表示するデュアルビュー液晶表示装置を例として挙げたが、例えば3つ以上の異なる画像を表示する画素を2次元的に配置して、3方向以上へ異なる画像を表示するマルチプルビュー液晶表示装置などにも適用可能である。また上記の説明では、視差バリア8は1層としたが、必要に応じて複数層設けてもよい。
【0068】
[変更例]
実施の形態1では、逆視防止膜である低屈折率膜72aを、第2遮光部72の左右両端に設けたが、図9のように片方の端のみに設けてもよい。即ち、低屈折率膜72aを、第2遮光部72に対して特定方向に隣り合う第1遮光部71との間の画素開口部70に接する端部のみに設けてもよい。図9の例では、第2遮光部72に隣接する左用画素PL側の端部のみに低屈折率膜72aを設けている。図10は、図9のブラックマトリクス7の上面図である。
【0069】
本変更例では、右用画像の視野範囲IR1と逆視現象による右用画像の視野範囲IR2の幅は従来(図6)と同じであるが、左用画像の視野範囲IL1と逆視現象による左用画像の視野範囲IL2の幅は実施の形態1と同様に狭くなる。よって実施の形態1ほどではないが、右用画像の視野範囲IR1と逆視現象による左用画像の視野範囲IL2との間のマージン、並びに、左用画像の視野範囲IL1と逆視現象による右用画像の視野範囲IR2との間のマージンが、それぞれ広くなるので、逆視クロストークを防止する効果が得られる。
【0070】
<実施の形態2>
図11は、実施の形態2に係るマルチプルビュー液晶表示装置の表示パネル構成を示す断面図である。実施の形態2では、ブラックマトリクス7の第2遮光部72の端部に設ける逆視防止膜として、実施の形態1の低屈折率膜72aの代わりに、画素開口部70よりも光の透過率が低い低透過率膜72bを設けたものである。図12は、図11のブラックマトリクス7の上面図である。その他の構成は実施の形態1(図7,図8)と同様であるので、説明は省略する。
【0071】
低透過率膜72bを設ける位置も、実施の形態1の低屈折率膜72aと同じでよい。すなわち本実施の形態の第2遮光部72は、隣り合う第1遮光部71との間の画素開口部70に接する端部のそれぞれに、低透過率膜72bを有する構成となる。
【0072】
第2遮光部72の左右両端に設けられた低透過率膜72bが、その部分を通過する光を弱めるため、実質的に実施の形態1と同様に、右用画像の視野範囲IR1および逆視現象による右用画像の視野範囲IR2の幅、並びに、左用画像の視野範囲IL1と逆視現象による左用画像の視野範囲IL2の幅がそれぞれ狭くなる。つまり右用画像の視野範囲IR1と逆視現象による左用画像の視野範囲IL2との間のマージン、並びに、左用画像の視野範囲IL1と逆視現象による右用画像の視野範囲IR2との間のマージンが、それぞれ広くなるので、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0073】
本実施の形態において、逆視クロストークを防止する効果は、低透過率膜72bの光透過率が液晶5の最大光透過率よりも低く、両者間に有意の差があればある程度得られる。低透過率膜72bの幅が一定の場合、低透過率膜72bの光透過率が低いほど(遮光性が高いほど)その効果は高くなり、光透過率が0のとき最大となる。
【0074】
また、低透過率膜72bとして光を透過するもの、つまり光透過率が0でないものを用いた場合には、低透過率膜72bを透過する光は、右用画像の視野範囲IR1或いは左用画像の視野範囲IL1での透過光に加えて本来の表示光としても作用する。そのため、本来の表示に寄与する透過光の低下を抑えながら、逆視クロストークの防止に寄与する低透過率膜72bの幅を大きく設定することもできる。
【0075】
例えば、光透過率が0.5(50%)の低透過率膜72bを用いた場合、光透過率が0である低透過率膜72bを用いた場合に比べ、低透過率膜72bの幅を二倍にしても本来の表示光全体としての光透過率は同等となる。また、低透過率膜72bの幅を二倍に広げると、逆視現象に寄与する画素開口部70が視差バリア8の開口部80からより遠くになるため、逆視現象が視認されにくい角度範囲がより外側まで広がり、逆視クロストーク防止の効果は向上する。つまり、光透過率が0.5の低透過率膜72bを用いた場合は、光透過率が0で幅が半分の低透過率膜72bを用いた場合と比較して、本来の表示光全体としての光透過率を変えることなく、角度に応じた逆視クロストーク防止の効果を向上できることなる。
【0076】
以上の説明からも解るとおり、低透過率膜72bの光透過率と幅を自由に調整して設計することにより、角度ごとの本来の表示での輝度特性と、逆視クロストークの防止効果の程度を調整することができる。従って、低透過率膜72bが光を透過する構成、つまり光透過率が0でない構成は、設計の観点からは、自由度が高く有利な構成と言える。
【0077】
[変更例]
実施の形態2では、逆視防止膜である低透過率膜72bを、第2遮光部72の左右両端に設けたが、図13のように片方の端のみに設けてもよい。即ち、低透過率膜72bを、第2遮光部72に対して特定方向に隣り合う第1遮光部71との間の画素開口部70に接する端部のみに設けてもよい。図13の例では、第2遮光部72に隣接する左用画素PL側の端部のみに低透過率膜72bを設けている。図14に、図13のブラックマトリクス7の上面図を示す。
【0078】
本変更例では、右用画像の視野範囲IR1と逆視現象による右用画像の視野範囲IR2の幅は従来(図6)と同じであるが、左用画像の視野範囲IL1と逆視現象による左用画像の視野範囲IL2の幅は実施の形態2と同様に狭くなる。よって実施の形態2ほどではないが、右用画像の視野範囲IR1と逆視現象による左用画像の視野範囲IL2との間のマージン、並びに、左用画像の視野範囲IL1と逆視現象による右用画像の視野範囲IR2との間のマージンが、それぞれ広くなるので、逆視クロストークを防止する効果が得られる。
【0079】
<実施の形態3>
図15は、実施の形態3に係るマルチプルビュー液晶表示装置の表示パネル構成を示す断面図である。実施の形態3では、実施の形態2の逆視防止膜である低透過率膜72bを、ブラックマトリクス7の遮光部(第1および第2遮光部71,72)と同じ材質の遮光膜72cにより構成したものである。図16は、図15のブラックマトリクス7の上面図である。その他の構成は実施の形態2(図13,図14)と同様であるので、説明は省略する。
【0080】
遮光膜72cを設ける位置は、実施の形態2の低透過率膜72bと同じでよい。すなわち本実施の形態の第2遮光部72は、隣り合う第1遮光部71との間の画素開口部70に接する端部のそれぞれに、遮光膜72cを有する構成となる。本実施の形態では、第2遮光部72の左右両端にそれと同じ材質の遮光膜72cが設けられるため、第2遮光部72の幅がそれと隣り合う第1遮光部71の幅よりも広くなる。
【0081】
第2遮光部72の左右両端に設けられた遮光膜72cの部分は光が通過しないため、実施の形態1と同様に、右用画像の視野範囲IR1および逆視現象による右用画像の視野範囲IR2の幅、並びに、左用画像の視野範囲IL1と逆視現象による左用画像の視野範囲IL2の幅がそれぞれ狭くなる。つまり右用画像の視野範囲IR1と逆視現象による左用画像の視野範囲IL2との間のマージン、並びに、左用画像の視野範囲IL1と逆視現象による右用画像の視野範囲IR2との間のマージンが、それぞれ広くなるので、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0082】
図17は、本実施の形態に係るマルチプルビュー液晶表示装置における規格化開口率の視野角特性のシミュレーション結果を示すグラフである。当該シミュレーションにおいて、マルチプルビュー液晶表示装置の対向基板6の厚さや画素サイズ等のパラメータは、第2遮光部72の両側に遮光膜72cが設けられたことを除いて、図6の場合と同じである。
【0083】
本実施の形態の逆視防止膜(遮光膜72c)は、ブラックマトリクス7の第2遮光部72と同じ材質であるため、第2遮光部72と同じ工程で形成可能である。つまり、第2遮光部72の幅が広くなるようにブラックマトリクス7のパターン設計を変更するだけでよく、遮光膜72cの形成工程を別途行う必要はない。よって、設計の容易性および製造コストの観点から、最も優れた実施形態と言える。
【0084】
なお、本実施の形態のブラックマトリクス7の第2遮光部72と同じ材質の逆視防止膜は、第2遮光部72のパターニング形成時において、公知のハーフトーン露光技術などを用いて部分的に薄膜化して形成することで、光を透過する構成、つまり光透過率が0でない構成としても良く、上記説明の第2遮光部72と同じ工程で形成可能という利点を有したまま、実施の形態2において説明した低透過率膜72bが光を透過する構成と同様の効果を得ることもできる。
【0085】
[変更例]
実施の形態3では、逆視防止膜である遮光膜72cを、第2遮光部72の左右両端に設けた(第2遮光部72の幅を左右両方に広げた)が、図18のように片方の端のみに設けてもよい。即ち、第2遮光部72の幅を広げる方向を、第2遮光部72に対して特定方向に隣り合う第1遮光部71に向かう方向のみにしてもよい。
【0086】
図18の例では、第2遮光部72に隣接する左用画素PL側の端部のみに、第2遮光部72の幅を広げている。その結果、第2遮光部72に隣接する左用画素PLに対応する画素開口部70の幅(特定方向に隣り合う第1遮光部71との間隔)は、当該第2遮光部72に隣接する右用画素PRに対応する画素開口部70(他の方向に隣り合う第1遮光部71との間隔)よりも狭くなる。図19に、図18のブラックマトリクス7の上面図を示す。
【0087】
また図20は、本変更例に係るマルチプルビュー液晶表示装置における規格化開口率の視野角特性のシミュレーション結果を示すグラフである。本変更例では、右用画像の視野範囲IR1と逆視現象による右用画像の視野範囲IR2の幅は従来(図6)と同じであるが、左用画像の視野範囲IL1と逆視現象による左用画像の視野範囲IL2の幅は実施の形態3と同様に狭くなる。よって実施の形態3ほどではないが、右用画像の視野範囲IR1と逆視現象による左用画像の視野範囲IL2との間のマージン、並びに、左用画像の視野範囲IL1と逆視現象による右用画像の視野範囲IR2との間のマージンが、それぞれ広くなるので、逆視クロストークを防止する効果が得られる。
【符号の説明】
【0088】
10 液晶パネル、1 バックライト、2a,2b 直線偏光子、3a,3b 視野角補償フィルム、4 TFT基板、41 ソース配線、5 液晶、51 液晶分子、6 対向基板、7 ブラックマトリクス、70 画素開口部、71 第1遮光部、72 第2遮光部、72a 低屈折率膜、72b 低透過率膜、72c 遮光膜、8 視差バリア、80 視差バリアの開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像に対応する画像信号が供給される複数の画素電極が配設された第1基板と、
前記第1基板に対向配置された第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶とを備え、
前記第2基板は、
前記第1基板との対向面に配設され各画素の領域を規定する開口部を有する遮光膜であるブラックマトリクスと、
前記ブラックマトリクス上に配置される所定の厚みのギャップ層と、
前記ギャップ層を介して前記ブラックマトリクス上に配設され、前記ブラックマトリクスの開口部を通過した光を異なる方向へ分離することにより、前記複数の画像を分離してそれぞれ前記異なる方向へ表示させる遮光膜である視差バリアとを備え、
前記ブラックマトリクスは、
前記視差バリアの開口部の真下に配設された第1遮光部と、
真上が前記視差バリアで覆われた第2遮光部とを備え、
前記第2遮光部は、
当該第2遮光部と隣り合う前記第1遮光部との間の開口部に接する端部に、前記液晶よりも屈折率が低い逆視防止膜を有する
ことを特徴とするマルチプルビュー液晶表示装置。
【請求項2】
複数の画像に対応する画像信号が供給される複数の画素電極が配設された第1基板と、
前記第1基板に対向配置された第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶とを備え、
前記第2基板は、
前記第1基板との対向面に配設され各画素の領域を規定する開口部を有する遮光膜であるブラックマトリクスと、
前記ブラックマトリクス上に配置される所定の厚みのギャップ層と、
前記ギャップ層を介して前記ブラックマトリクス上に配設され、前記ブラックマトリクスの開口部を通過した光を異なる方向へ分離することにより、前記複数の画像を分離してそれぞれ前記異なる方向へ表示させる遮光膜である視差バリアとを備え、
前記ブラックマトリクスは、
前記視差バリアの開口部の真下に配設された第1遮光部と、
真上が前記視差バリアで覆われた第2遮光部とを備え、
前記第2遮光部は、
当該第2遮光部と隣り合う前記第1遮光部との間の開口部に接する端部に、当該開口部よりも光の透過率が低い逆視防止膜を有する
ことを特徴とするマルチプルビュー液晶表示装置。
【請求項3】
前記第2遮光部の前記逆視防止膜は、当該第2遮光部に対し特定方向に隣り合う前記第1遮光部との間の開口部に接する端部のみに設けられている
請求項1または請求項2記載のマルチプルビュー液晶表示装置。
【請求項4】
複数の画像に対応する画像信号が供給される複数の画素電極が配設された第1基板と、
前記第1基板に対向配置された第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶とを備え、
前記第2基板は、
前記第1基板との対向面に配設され各画素の領域を規定する開口部を有する遮光膜であるブラックマトリクスと、
前記ブラックマトリクス上に配置される所定の厚みのギャップ層と、
前記ギャップ層を介して前記ブラックマトリクス上に配設され、前記ブラックマトリクスの開口部を通過した光を異なる方向へ分離することにより、前記複数の画像を分離してそれぞれ前記異なる方向へ表示させる遮光膜である視差バリアとを備え、
前記ブラックマトリクスは、
前記視差バリアの開口部の真下に配設された第1遮光部と、
真上が前記視差バリアで覆われた第2遮光部とを備え、
前記第2遮光部は、隣り合う前記第1遮光部よりも幅が広い
ことを特徴とするマルチプルビュー液晶表示装置。
【請求項5】
前記第2遮光部と特定方向に隣り合う第1遮光部との間隔は、当該第2遮光部と他の方向に隣り合う第1遮光部との間隔よりも狭い
請求項4記載のマルチプルビュー液晶表示装置。
【請求項6】
前記第2遮光部の幅は、前記視差バリア層の開口部の幅よりも広い
請求項1から請求項5のいずれか一項記載のマルチプルビュー液晶表示装置。
【請求項7】
前記ギャップ層は、前記第2基板の基材となる透光性基板である
請求項1から請求項6のいずれか一項記載のマルチプルビュー液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−64839(P2013−64839A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203023(P2011−203023)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】