説明

マルチリーフコリメータおよび放射線治療装置

【課題】放射線を遮蔽するリーフを移動するときの摩擦力を低減すること。
【解決手段】被検体の放射線が照射される照射野の形状を変更するために放射線を遮蔽する複数リーフ62と、複数リーフ62を複数転がり軸受107により移動可能にフレーム61に支持するガイド71とを備えている。このとき、マルチリーフコリメータは、複数リーフ62を滑り摩擦で移動可能に支持することに比較して、複数リーフ62を移動するときの摩擦力を低減することができ、より低駆動力で複数リーフ62を移動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチリーフコリメータおよび放射線治療装置に関し、特に、放射線を被検体に照射するときの照射野の形状を変更するマルチリーフコリメータおよび放射線治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
患部(腫瘍)に治療用放射線を照射することにより患者を治療する放射線治療が知られている。その放射線治療は、治療効果が高いことが望まれ、その治療用放射線は、患部の細胞に照射される線量に比較して、正常な細胞に照射される線量がより小さいことが望まれている。
【0003】
複数のリーフを用いて放射線を遮蔽するマルチリーフコリメータが知られている。このようなマルチリーフコリメータは、その複数のリーフを所定の位置に配置することにより、その治療用放射線が患者に照射するときの照射野の形状を変更することができる。このようなマルチリーフコリメータによれば、正常な細胞に照射される線量をより小さくすることができる。その治療用放射線が照射される照射野の形状をより高精度に制御することが望まれている。
【0004】
特開2002−224230号公報には、多数のリーフ板を用い高精度の照射野を形成するときの位置決め時間を短縮し、患者の肉体的・精神的負担の軽減を図れるマルチリーフコリメータが開示されている。そのマルチリーフコリメータは、複数のリーフ板をそれぞれ可動に配設したリーフ板駆動体を一方側及び他方側に備え、前記一方側のリーフ板駆動体の複数のリーフ板と前記他方側のリーフ板駆動体の複数のリーフ板とを対向させその間に放射線ビームの照射野を形成するマルチリーフコリメータにおいて、各リーフ板駆動体は、前記複数のリーフ板に対し共通に設けた1つの駆動手段と、前記1つの駆動手段の駆動力を、前記複数のリーフ板に対し同時に伝達可能であるとともに各リーフ板で自在に遮断可能な駆動力伝達・遮断手段とを備えることを特徴とする。
【0005】
特許2543373号公報には、本発明の一目的は、扇形断面にわたり放射線強度分布の高精度の制御を可能にすることにより処置における分解能および精度を向上させる放射線処理方法が開示されている。その装置は、放射線場を長方形限界に限定するため、ジョーフレーム内に取付けられたジョーを有する放射線治療機械内でコリメータとして機能する装置であって、放射線場を長方形限界内に限定し成形するためのリーフ手段であって、X線に対して不透明な複数のリーフを含むリーフ手段と、該リーフ手段をジョーフレームに取付けるための、リーフ支持フレーム組立体を含む取付け手段と、前記リーフ支持フレームに対する前記リーフ手段の移動、および前記ジョーフレームに対する前記リーフ支持フレームの移動をもたらす駆動手段と、から成る。
【0006】
特開2004−097646号公報には、放射線の照射治療中においても、リアルタイムに治療野の状態をモニタすることが可能な放射線治療装置が開示されている。その放射線治療装置は、被検体の治療野へ治療用放射線を照射する放射線照射ヘッドと、前記被検体の前記治療野に診断用X線を照射するX線源と、前記被検体を透過した前記診断用X線の透過X線を検出して、診断画像データとして出力するセンサアレイと、を具備し、前記センサアレイは、前記放射線照射ヘッドの移動に連動して動く。
【0007】
【特許文献1】特開2002−224230号公報
【特許文献2】特許2543373号公報
【特許文献3】特開2004−097646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、放射線を遮蔽するリーフを移動するときの摩擦力を低減するマルチリーフコリメータおよび放射線治療装置を提供することにある。
本発明の他の課題は、放射線を遮蔽するリーフをより確実に支持するマルチリーフコリメータおよび放射線治療装置を提供することにある。
本発明のさらに他の課題は、放射線を遮蔽するリーフのうちの隣接するリーフが干渉することを低減するマルチリーフコリメータおよび放射線治療装置を提供することにある。
本発明のさらに他の課題は、放射線を遮蔽するリーフと転がり軸受とをより容易に接触させるマルチリーフコリメータおよび放射線治療装置を提供することにある。
本発明のさらに他の課題は、放射線を遮蔽するリーフと転がり軸受とをより確実に接触させるマルチリーフコリメータおよび放射線治療装置を提供することにある。
本発明のさらに他の課題は、放射線を遮蔽するリーフをより高精度に移動させるマルチリーフコリメータおよび放射線治療装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に、発明を実施するための最良の形態・実施例で使用される符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を記載する。この符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための最良の形態・実施例の記載との対応を明らかにするために付加されたものであり、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0010】
本発明によるマルチリーフコリメータ(56)は、被検体(43)の放射線(23)が照射される照射野の形状を変更するために放射線(23)を遮蔽する複数リーフ(62)と、複数リーフ(62)を複数転がり軸受(107)により移動可能にフレーム(61)に支持するガイド(71〜78、71’〜78’)とを備えている。このとき、マルチリーフコリメータ(56)は、複数リーフ(62)を滑り摩擦で移動可能に支持することに比較して、複数リーフ(62)を移動するときの摩擦力を低減することができ、より低駆動力で複数リーフ(62)を移動させることができる。
【0011】
複数リーフ(62)は、複数転がり軸受(107)に接触する縁(81,82)を有している。このとき、縁(81,82)の各々は、複数転がり軸受(107)のうちの複数に接触している。このとき、マルチリーフコリメータ(56)は、複数リーフ(62)が直線または円弧に沿って移動することができるように、複数リーフ(62)をより確実に支持することができる。
【0012】
複数リーフ(62)の各々は、第1面(101)と、第1面(101)の反対側の第2面(102)とを有している。複数転がり軸受(107)の各々は、縁(81,82)のうちの第1面(101)の側に接触する第1ガイド面(117)と、縁(81,82)のうちの第2面(102)の側に接触する第2ガイド面(118)とを有している。このとき、マルチリーフコリメータ(56)は、複数リーフ(62)が厚さ方向にずれないように支持することができ、隣接するリーフが干渉することを低減することができる。
【0013】
本発明によるマルチリーフコリメータ(56)は、位置調整可能にフレーム(61)に支持される複数ベース(106)をさらに備えている。このとき、複数ベース(106)の各々は、複数転がり軸受(107)のうちの複数を支持している。このとき、ユーザは、複数ベース(106)の位置を調整することにより、複数転がり軸受(107)の複数が複数リーフ(62)の縁(81,82)に接触するように、複数転がり軸受(107)の複数の位置を容易に一度に調整することができる。
【0014】
複数転がり軸受(107)は、各々が位置調整可能にフレーム(61)に支持されている。このとき、マルチリーフコリメータ(56)は、製作精度が悪いときでも、複数転がり軸受(107)の各々の位置を調整することにより、複数転がり軸受(107)が複数リーフ(62)の縁(81,82)に接触することをより確実にすることができる。
【0015】
複数リーフ(62)は、複数転がり軸受(107)のうちの複数に挟まれて支持されている。複数転がり軸受(107)は、複数リーフ(62)の複数転がり軸受(107)に挟まれる方向に移動可能にフレーム(61)に支持されている。ガイド(71〜78、71’〜78’)は、複数転がり軸受(107)に複数リーフ(62)の側に弾性力を与える弾性体をさらに備えている。このとき、マルチリーフコリメータ(56)は、複数リーフ(62)の縁(81,82)に複数転がり軸受(107)をより確実に接触させることができる。
【0016】
本発明によるマルチリーフコリメータ(56)は、複数リーフ(62)に形成されるラック(97)に噛み合うピニオン(96)を回転させる駆動装置(64)をさらに備えている。このとき、マルチリーフコリメータ(56)は、リーフ(62)が移動する方向以外の側に、駆動装置(64)を配置することができる。この結果、マルチリーフコリメータ(56)は、リーフ(62)が移動する方向の長さをより小さくすることができる。ピニオン(96)は、ピニオン(96)のうちのピニオン歯面がラック(97)のうちのラック歯面に接触するときにピニオン歯面がラック歯面に非平行になるように、支持されている。このような支持は、ラック(97)の歯とピニオン(96)の歯とのバックラッシ量を低減することができ、駆動装置(64)を用いてリーフ(62)をより確実に移動させることができる。
【0017】
駆動装置(64)は、フレーム(61)に支持されるモータ(91)により回転されるモータ軸と、ピニオン(96)を回転するピニオン軸と、モータ軸からピニオン軸に回転動力を伝達するユニバーサルジョイント(93)と、ピニオン(96)がラック(97)に噛み合うように、フレーム(61)に対してピニオン軸に弾性力を与えるばね(99)とを備えている。このとき、マルチリーフコリメータ(56)は、ピニオン(96)とラック(97)とが磨耗したときでも、ピニオン(96)とラック(97)とをより確実に接触させることができ、リーフ(62)をより高精度に移動させることができる。
【0018】
駆動装置は、ピニオン(96)を回転するピニオン軸を回転するモータ(91)と、モータ(91)をフレーム(61)に回転可能に支持するヒンジと、ピニオン(96)がラック(97)に噛み合うように、フレーム(61)に対してピニオン軸に弾性力を与えるばね(99)とを備えている。このとき、マルチリーフコリメータ(56)は、ピニオン(96)とラック(97)とが磨耗したときでも、ピニオン(96)とラック(97)とをより確実に接触させることができ、リーフ(62)をより確実に移動させることができる。
【0019】
本発明によるマルチリーフコリメータ(56)は、フレーム(61)に対して複数リーフ(62)をそれぞれ移動させる複数リニアモータをさらに備えていることが好ましい。
【0020】
本発明による放射線治療装置(3)は、本発明によるマルチリーフコリメータ(56)と、放射線(23)を放射する照射装置(16)とを備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によるマルチリーフコリメータおよび放射線治療装置は、放射線を遮蔽するリーフを移動するときの摩擦力を低減することができる。
本発明によるマルチリーフコリメータおよび放射線治療装置は、放射線を遮蔽するリーフをより確実に支持することができる。
本発明によるマルチリーフコリメータおよび放射線治療装置は、放射線を遮蔽するリーフのうちの隣接するリーフが干渉することを低減することができる。
本発明によるマルチリーフコリメータおよび放射線治療装置は、放射線を遮蔽するリーフと転がり軸受とをより容易に接触させることができる。
本発明によるマルチリーフコリメータおよび放射線治療装置は、放射線を遮蔽するリーフと転がり軸受とをより確実に接触させることができる。
本発明によるマルチリーフコリメータおよび放射線治療装置は、放射線を遮蔽するリーフをより高精度に移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図面を参照して、本発明による放射線治療装置の実施の形態を記載する。その放射線治療装置3は、図1に示されているように、放射線治療システム1に適用されている。放射線治療システム1は、放射線治療装置制御装置2と放射線治療装置3とを備えている。放射線治療装置制御装置2は、パーソナルコンピュータに例示されるコンピュータである。放射線治療装置制御装置2は、双方向に情報を伝送することができるように放射線治療装置3に接続されている。
【0023】
図2は、放射線治療装置3を示している。放射線治療装置3は、旋回駆動装置11とOリング12と走行ガントリ14と治療用放射線照射装置16とを備えている。旋回駆動装置11は、回転軸17を中心に回転可能にOリング12を土台に支持し、放射線治療装置制御装置2により制御されて回転軸17を中心にOリング12を回転させる。回転軸17は、鉛直方向に平行である。Oリング12は、回転軸18を中心とするリング状に形成され、回転軸18を中心に回転可能に走行ガントリ14を支持している。回転軸18は、鉛直方向に垂直であり、回転軸17に含まれるアイソセンタ19を通る。回転軸18は、さらに、Oリング12に対して固定され、すなわち、Oリング12とともに回転軸17を中心に回転する。走行ガントリ14は、回転軸18を中心とするリング状に形成され、Oリング12のリングと同心円になるように配置されている。放射線治療装置3は、さらに、図示されていない走行駆動装置を備えている。その走行駆動装置は、放射線治療装置制御装置2により制御されて回転軸18を中心に走行ガントリ14を回転させる。
【0024】
治療用放射線照射装置16は、放射線治療装置制御装置2により制御されて、治療用放射線23を放射する。治療用放射線照射装置16は、治療用放射線23がアイソセンタ19を通るように、走行ガントリ14に支持されている。治療用放射線23は、このように治療用放射線照射装置16が走行ガントリ14に支持されることにより、旋回駆動装置11によりOリング12が回転し、または、その走行駆動装置により走行ガントリ14が回転しても、常に概ねアイソセンタ19を通る。即ち、走行・旋回を行うことで任意方向からアイソセンタ19に向けて治療用放射線23の照射が可能になる。
【0025】
放射線治療装置3は、さらに、複数のイメージャシステムを備えている。すなわち、放射線治療装置3は、診断用X線源24、25とセンサアレイ32、33とを備えている。診断用X線源24は、走行ガントリ14に支持されている。診断用X線源24は、走行ガントリ14のリングの内側に配置され、アイソセンタ19から診断用X線源24を結ぶ線分とアイソセンタ19から治療用放射線照射装置16を結ぶ線分とがなす角が鋭角になるような位置に配置されている。診断用X線源24は、放射線治療装置制御装置2により制御されてアイソセンタ19に向けて診断用X線35を放射する。診断用X線35は、診断用X線源24が有する1点から放射され、その1点を頂点とする円錐状のコーンビームである。診断用X線源25は、走行ガントリ14に支持されている。診断用X線源25は、走行ガントリ14のリングの内側に配置され、アイソセンタ19から診断用X線源25を結ぶ線分とアイソセンタ19から治療用放射線照射装置16を結ぶ線分とがなす角が鋭角になるような位置に配置されている。診断用X線源25は、放射線治療装置制御装置2により制御されてアイソセンタ19に向けて診断用X線36を放射する。診断用X線36は、診断用X線源25が有する1点から放射され、その1点を頂点とする円錐状のコーンビームである。
【0026】
センサアレイ32は、走行ガントリ14に支持されている。センサアレイ32は、診断用X線源24により放射されてアイソセンタ19の周辺の被写体を透過した診断用X線35を受光して、その被写体の透過画像を生成する。センサアレイ33は、走行ガントリ14に支持されている。センサアレイ33は、診断用X線源25により放射されてアイソセンタ19の周辺の被写体を透過した診断用X線36を受光して、その被写体の透過画像を生成する。センサアレイ32、33としては、FPD(Flat Panel Detector)、X線II(Image Intensifier)が例示される。
【0027】
このようなイメージャシステムによれば、センサアレイ32、33により得た画像信号に基づき、アイソセンタ19を中心とする透過画像を生成することができる。
【0028】
なお、診断用X線源24は、アイソセンタ19から診断用X線源24を結ぶ線分とアイソセンタ19から治療用放射線照射装置16を結ぶ線分とがなす角が鈍角になるような位置に配置されることもできる。すなわち、センサアレイ32は、アイソセンタ19からセンサアレイ32を結ぶ線分とアイソセンタ19から治療用放射線照射装置16を結ぶ線分とがなす角が鋭角になるような位置に配置される。診断用X線源25は、アイソセンタ19から診断用X線源25を結ぶ線分とアイソセンタ19から治療用放射線照射装置16を結ぶ線分とがなす角が鈍角になるような位置に配置されることもできる。すなわち、センサアレイ33は、アイソセンタ19からセンサアレイ33を結ぶ線分とアイソセンタ19から治療用放射線照射装置16を結ぶ線分とがなす角が鋭角になるような位置に配置される。このとき、センサアレイ32、33は、治療用放射線照射装置16から放射される治療用放射線23に照射されにくく、好ましい。
【0029】
放射線治療装置3は、さらに、カウチ41とカウチ駆動装置42とを備えている。カウチ41は、放射線治療システム1により治療される患者43が横臥することに利用される。カウチ41は、図示されていない固定具を備えている。その固定具は、その患者が動かないように、その患者をカウチ41に固定する。カウチ駆動装置42は、カウチ41を土台に支持し、放射線治療装置制御装置2により制御されてカウチ41を移動させる。
【0030】
図3は、治療用放射線照射装置16を示している。治療用放射線照射装置16は、電子ビーム加速装置51とX線ターゲット52と1次コリメータ53とフラットニングフィルタ54と2次コリメータ55とマルチリーフコリメータ56とを備えている。電子ビーム加速装置51は、電子を加速して生成される電子ビーム57をX線ターゲット52に照射する。X線ターゲット52は、高原子番号材(タングステン、タングステン合金等)から形成され、電子ビーム57が照射された際の制動放射により生成される放射線59を放出する。放射線59は、X線ターゲット52が内部に有する点である仮想的点線源58を通る直線に概ね沿って放射される。1次コリメータ53は、高原子番号材(鉛、タングステン等)から形成され、所望の部位以外に放射線59が照射されないように放射線59を遮蔽する。フラットニングフィルタ54は、アルミニウム等から形成され、概ね円錐形の突起が形成される板に形成されている。フラットニングフィルタ54は、前記突起部がX線ターゲット側に面するように配置される。フラットニングフィルタ形状は、本フラットニングフィルタを通過した後に、その放射方向に垂直である平面の所定領域における線量が概ね一様に分布するように形成される。2次コリメータ55は、高原子番号材(鉛、タングステン等)から形成され、放射線60が所望の部位以外に照射されないように放射線60を遮蔽する。このようにして形成された一様強度分布を持つ放射線60は、放射線治療装置制御装置2により制御を受けたマルチリーフコリメータ56により、一部が遮蔽されて、別途構築した治療計画に基づく性状である治療用放射線23を生成することになる。
【0031】
図4は、マルチリーフコリメータ56を示している。マルチリーフコリメータ56は、フレーム61と複数のリーフ62とベース63と駆動装置64とストッパ68とフランジ70とを備えている。フレーム61は、直方体状の筐体に形成されており、上下方向に対して貫通した開口部69を有している。フレーム61は、放射線59が開口部69を通過するように、医療用放射線治療装置16に対して配される。複数のリーフ62は、それぞれ、高原子番号材(タングステン、タングステン合金等)から形成され、概ね長方形の板に形成されている。複数のリーフ62は、それぞれ、フレーム61の内部に配置されている。ベース63は、フレーム61に対して脱着可能であり、フレーム61に対して移動可能な位置に固定を行い得る。駆動装置64は、複数のリーフ毎に用意されており、それぞれ、ベース63に支持されている。駆動装置64は、ユーザにより調整されて個々にベース63に対してその固定位置が調整可能である。駆動装置64は、放射線治療装置制御装置2により制御されて、それぞれ、リーフ62を任意の位置に移動することが可能である。ストッパ68は、それぞれ、フレーム61に同体に接合されている。フランジ70は、フレーム61の上面に同体に接合されている。フランジ70には、凹凸形状の嵌合部65が形成されている。治療用放射線照射装置16の本体部分(電子ビーム加速装置51とX線ターゲット52と1次コリメータ53とフラットニングフィルタ54と2次コリメータ55と)には、嵌合部65に嵌合する接続部(図示されていない)が形成されている。このような嵌合は、マルチリーフコリメータ56を治療用放射線照射装置16の本体部分の所定の位置に設置することを容易になる点で望ましい。フランジ70には、さらに、図示されていない複数の穴が形成されている。マルチリーフコリメータ56は、その複数の穴にボルトが通されて、治療用放射線照射装置16の他の部品(電子ビーム加速装置51とX線ターゲット52と1次コリメータ53とフラットニングフィルタ54と2次コリメータ55と)に同体に接合されている。なお、フランジ70は、さらに、ピンを備えることができる。このとき、治療用放射線照射装置16の本体部分には、その合いピンに嵌合する接続部が形成されている。このような嵌合は、嵌合部65と同様にして、マルチリーフコリメータ56を治療用放射線照射装置16の本体部分の所定の位置に設置することを容易になる点で望ましい。
【0032】
リーフ62は、図5に示されているように、リーフ62−1〜62−30、62−1’〜62−30’から形成されている。リーフ62−1〜62−30、62−1’〜61−30’は、それぞれ、概ね長方形状に形成され、前方縁79と後方縁80と上縁81と下縁82とを有している。リーフ62−1〜62−30とリーフ62−1’〜61−30’とは、前方縁79が向かい合うように配置されている。各リーフ62−i(i=1,2,3,…,30,1’,2’,3’,…,30’)は、切り欠き83、84が形成されている。切り欠き83、84は、リーフ62−iのうちの放射線60に照射されない中央の部分に形成されている。すなわち、切り欠き83、84の縁は、前方縁79と後方縁80と上縁81と下縁82とに繋がっていない。リーフ自身には、後述するように駆動系が接続される箇所を要するが、当該箇所で遮蔽機能を備える必要がない箇所は、当該切り欠きを設けることで当該リーフ自身の軽量化を図り得る。このため、当該リーフは、より低駆動力にて任意位置に設定することが可能になる。リーフ62−iは、切り欠き83が形成されている部分に第1縁85と第2縁86とを有している。リーフ62−iは、切り欠き84が形成されている部分に第3縁87と第4縁88とを有している。上縁81と下縁82と第1縁85と第2縁86と第3縁87と第4縁88とは、互いに平行である複数の直線に沿って配置されている。
【0033】
マルチリーフコリメータ56は、さらに、ガイド71〜78、71’〜78’を備えている。ガイド71〜74とガイド71’〜74’とは、アイソセンタ19と仮想的点線源58とを結ぶ直線を含む対称面90に対して対称に配置されている。ガイド71〜74、71’〜74’は、フレーム61の内部の上面側に配置され、フレーム61に支持されている。ガイド72は、ガイド71の近傍に配置されている。ガイド73は、ガイド72より対称面90から遠い位置に配置されている。ガイド74は、ガイド73の近傍に配置されている。ガイド72とガイド73との距離は、ガイド71とガイド72との距離またはガイド73とガイド74との距離に比較して十分に大きい。ガイド72’は、ガイド71’の近傍に配置されている。ガイド73’は、ガイド72’より対称面90から遠い位置に配置されている。ガイド74’は、ガイド73’の近傍に配置されている。ガイド72’とガイド73’との距離は、ガイド71’とガイド72’との距離またはガイド73’とガイド74’との距離に比較して十分に大きい。ガイド75〜78、75’〜78’は、フレーム61の内部の下面側に配置され、フレーム61に支持されている。ガイド76は、ガイド75の近傍に配置されている。ガイド77は、ガイド76より対称面90から遠い位置に配置されている。ガイド78は、ガイド77の近傍に配置されている。ガイド76とガイド77との距離は、ガイド75とガイド76との距離またはガイド77とガイド78との距離に比較して十分に大きい。ガイド76’は、ガイド75’の近傍に配置されている。ガイド77’は、ガイド76’より対称面90から遠い位置に配置されている。ガイド78’は、ガイド77’の近傍に配置されている。ガイド76’とガイド77’との距離は、ガイド75’とガイド76’との距離またはガイド77’とガイド78’との距離に比較して十分に大きい。
【0034】
ガイド71〜78、71’〜78’は、それぞれ、複数の転がり軸受を備え、リーフ62の上縁81と下縁82とに常時に接触しながら転がり摩擦により、リーフ62−1〜62−30、62−1’〜62−30’をそれぞれ複数の案内面に沿って直線的に移動することができるように支持している。その案内面は、それぞれ、対称面90に垂直である平面であり、仮想的点線源58を通るように配置されている。リーフ62−k(k=1,2,3,…,30)が案内される案内面は、リーフ62−k’が案内される案内面に一致している。このとき、ガイド71〜78は、リーフ62−1〜62−30、62−1’〜61−30’の前方縁79が対称面90に常時に平行になるように支持することができる。
【0035】
ストッパ68は、ストッパ68−1〜68−30、68−1’〜68−30’から形成されている。ストッパ68−iは、リーフ62−iの後方縁80に対向する壁面を形成している。ストッパ68−iの壁面は、リーフ62−i以外のリーフ62−j(j≠i)に接触しない位置に配置され、その壁面の位置は、ユーザにより他のストッパ68−jの壁面の位置に独立に調節されることできる。ストッパ68−iは、その壁面をリーフ62−iに衝突させて、所定の位置より対称面90から遠い側に移動しないように、リーフ62−iの可動域を制限している。ストッパ68−iは、フレーム61から落下することを防止することができると共に、リーフ62−iの移動位置の原点位置とし得る。
【0036】
リーフ62−iは、図6に示されているように、リーフ62−(i+1)に隣接している。リーフ62−iの上縁81は、添字iがプライム無しの奇数を示すときに、ガイド71の外輪の1つとガイド73の外輪の1つとに接触している。リーフ62−iの上縁81は、添字iがプライム無しの偶数を示すときに、ガイド72の外輪の1つとガイド74の外輪の1つとに接触している。リーフ62−iの下縁82は、添字iがプライム無しの奇数を示すときに、ガイド75の外輪の1つとガイド77の外輪の1つとに接触している。リーフ62−iの下縁82は、添字iがプライム無しの偶数を示すときに、ガイド76の外輪の1つとガイド78の外輪の1つとに接触している。リーフ62−iの上縁81は、添字iがプライム付きの奇数を示すときに、ガイド71’の外輪の1つとガイド73’の外輪の1つとに接触している。リーフ62−iの上縁81は、添字iがプライム付きの偶数を示すときに、ガイド72’の外輪の1つとガイド74’の外輪の1つとに接触している。リーフ62−iの下縁82は、添字iがプライム付きの奇数を示すときに、ガイド75’の外輪の1つとガイド77’の外輪の1つとに接触している。リーフ62−iの下縁82は、添字iがプライム付きの偶数を示すときに、ガイド76’の外輪の1つとガイド78’の外輪の1つとに接触している。
【0037】
すなわち、リーフ62−iは、上縁81が2つの外輪に接触して下縁82が2つの外輪に接触して支持されている。このとき、MLC56は、リーフ62が直線(または円弧)に沿って移動することができるように、リーフ62をより確実に支持することができる。さらに、隣接する2つのリーフ(リーフ62−iとリーフ62−(i+1)と)にそれぞれ接触する2つの外輪は、接触しないように配置することができ、このような外輪の配置は、リーフ62−iとリーフ62−(i+1)とをより近接して支持することに好適である。
【0038】
ベース63は、4つのベースから形成されている。その第1のベースは、フレーム61のリーフ62−1に近接する部位に配置されている。その第2のベースは、フレーム61のリーフ62−30に近接する部位に配置されている。その第3のベースは、フレーム61のリーフ62−1’に近接する部位に配置されている。その第4のベースは、フレーム61のリーフ62−30’に近接する部位に配置されている。駆動装置64は、複数の駆動装置64−1〜64−30、64−1’〜64−30’から形成されている。駆動装置64−iは、リーフ62−iを駆動する。駆動装置64−1〜64−15は、フレーム61のリーフ62−1に近接する部位に配置されるベース63に支持されている。駆動装置64−16〜64−30は、フレーム61のリーフ62−30に近接する部位に配置されるベース63に支持されている。駆動装置64−1’〜64−15’は、フレーム61のリーフ62−1’に近接する部位に配置されるベース63に支持されている。駆動装置64−16’〜64−30’は、フレーム61のリーフ62−30’に近接する部位に配置されるベース63に支持されている。
【0039】
図7は、リーフ62−iを示している。リーフ62−iは、面101と面102とを有している。面101は、リーフ62−(i+1)が案内される案内面に対向している。面102は、リーフ62−(i−1)が案内される案内面に対向している。面101には、突起103が形成されている。突起103は、所定の幅を有する帯状に形成され、前方縁79から切り欠き83、84まで連なって、上縁81と下縁82とに平行に形成されている。突起103の高さは、リーフ62−iとリーフ62−(i+1)との間隔より大きい。面102には、溝104が形成されている。溝104は、前方縁79から切り欠き83、84まで連なって、上縁81と下縁82とに平行に形成されている。溝104は、幅が突起103の幅より少し広く、深さが突起103の高さより少し浅くなるように形成されている。このとき、リーフ62−iは、は、厚さ方向にずれないように支持され、隣接するリーフと干渉することが低減される。すなわち、リーフ62−iは、突起103がリーフ62−(i+1)に形成される溝104に挿入され、リーフ62−(i−1)に形成される突起103が溝104に挿入されるように、ガイド71〜78、71’〜78’により支持される。このとき、マルチリーフコリメータ56は、隣接するリーフの隙間から放射線60が漏洩することを防止することができる。
【0040】
図8は、ガイド71を示している。ガイド71は、ガイドベース106と複数の転がり軸受107とを備えている。ガイドベース106は、スペーサ108を介して、ボルト109によりフレーム61に締結されている。ガイドベース106は、スペーサ108を厚さが異なる他のスペーサに置換することにより、フレーム61に対する位置が調整される。転がり軸受107は、リーフ62のうちのガイド71に支持される複数のリーフ毎に設けられている。転がり軸受107は、各々、カバー111と軸受113と外輪114とを備えている。カバー111は、位置を調整可能にガイドベース106に支持されている。すなわち、ガイド71は、さらに、ボールプランジャ115を備えている。ボールプランジャ115は、ボール116と図示されていないばねとを備えている。ボール116は、ボールプランジャ115の先端に配置されている。そのばねは、ボールプランジャ115の内部に配置され、ボール116がボールプランジャ115の内側に向かって押されたときに、その正反対の方向に弾性力を与える。ボールプランジャ115は、図9に示されているように、カバー111に対して2個が設けられ、リーフ62−iの移動方向に並んでいる。ボールプランジャ115は、ガイドベース106に締結され、カバー111がボールプランジャ115の先端より、ガイドベース106の側に移動しないように可動域を制限している。ボールプランジャ115は、さらに、ボール116がカバー111に接触し、そのばねがカバー111にガイドベース106から離れる方向の力を与えている。軸受113は、図8に示されているように、回転軸112を中心に回転可能に外輪114をカバー111に支持している。回転軸112は、対称面90に平行である。外輪114は、回転軸112を軸とする円筒形に形成され、リーフ62−iがはめ込まれる溝がその円筒の側面に形成されている。
【0041】
外輪114に形成される溝は、図10に示されているように、面117と面118とを有している。面117は、回転軸112を軸とする円錐の側面の一部に一致している。面118は、回転軸112を軸とする円錐の側面の一部に一致している。面117と面118とは、それぞれ、面117と面118との境界に近づくにつれ、回転軸112に近づくように形成されている。ガイド71がリーフ62−iを支持するときに、面117は、上縁81のうちのリーフ62−iの一方の面101の側の端に接触し、面118は、上縁81のうちのリーフ62−iの他方の面102の側の端に接触する。
【0042】
このとき、ガイド71は、複数リーフ62を滑り摩擦で移動可能に支持することに比較して、リーフ62を移動するときの摩擦力を低減することができ、より低駆動力でリーフ62を移動させることができる。ガイド71は、適当な厚さのスペーサ108を介してフレーム61に締結することにより、複数のリーフに関して外輪114とリーフ62−iとが接触するように、より容易に調整されることができる。ガイド71は、さらに、製作精度が悪いときでも、転がり軸受107がリーフ62に接触するように、転がり軸受107の位置を個々に調整することができる。ガイド71は、リーフ62−iが変形して放射線60の放射方向に短縮したときに、ボールプランジャ115により転がり軸受107がリーフ62−iの側に移動し、外輪114とリーフ62−iとの接触をより確実にする。さらに、ガイド71は、面117と面118とにより、リーフ62−iが回転軸112の方向に移動することを防止し、この結果、リーフ62−iの突起103がリーフ62−(i+1)の溝104に挿入されることをより確実にし、リーフ62−(i−1)の突起103がリーフ62−iの溝104に挿入されることをより確実にする。ガイド72〜78、71’〜78’は、ガイド71と同様に形成されている。すなわち、ガイド71〜78、71’〜78’は、リーフ62がそれぞれ案内面に案内されることをより確実にし、マルチリーフコリメータ56がリーフの隙間から放射線60を漏洩することを防止する。
【0043】
なお、ガイドベース106は、フレーム61に固定されることもできる。このとき、複数のリーフに関して外輪114とリーフ62−iとが接触するように転がり軸受107の位置を一度に調整することができないが、転がり軸受107ごとに位置を調整することにより、リーフ62がそれぞれ案内面に案内されることをより確実にし、マルチリーフコリメータ56がリーフの隙間から放射線60を漏洩することを防止することができる。
【0044】
なお、リーフ62−iの上縁81に接触するガイドと下縁82とに接触するガイドとのうちの一方は、ボールプランジャ115をボール116とばねとを備えていない他のボルトに置換することもできる。このときも、同様にして、リーフ62がそれぞれ案内面に案内されることをより確実にし、マルチリーフコリメータ56がリーフの隙間から放射線60を漏洩することを防止することができる。
【0045】
なお、ボールプランジャ115は、ボール116とばねとを備えていない他のボルトに置換されることができる。このとき、ガイド71〜78、71’〜78’は、リーフ62−iが変形し難いときに、リーフ62がそれぞれ案内面に案内されることをより確実にし、マルチリーフコリメータ56がリーフの隙間から放射線60を漏洩することを防止することができる。
【0046】
なお、外輪114の面117と面118との境界は、他の形状に置換することもできる。たとえば、外輪114は、面117と面118と間に他の面を形成することもできる。その面は、回転軸112を軸とする円柱の側面に一致している。このとき、リーフ62−iは、ガイド71がリーフ62−iを支持するときに、その面に接触しないように形成されている。このような形状の外輪は、既述の外輪114と同様にして、リーフ62−iが回転軸112の方向に移動することを防止することができる。
【0047】
図11は、駆動装置64−iを示している。駆動装置64−iは、モータ91とロータリエンコーダ92とユニバーサルジョイント93とカバー94と伝達軸95とピニオン96とばね機構99とを備えている。モータ91は、ユーザにより調整されて個々にベース63に対して移動されることができるように、ベース63に支持されている。モータ91は、図示されていないシャフトを備え、放射線治療装置制御装置2により制御されて、供給される電力を用いてそのシャフトを回転させる。ロータリエンコーダ92は、モータ91のシャフトの回転量を測定し、その回転量を放射線治療装置制御装置2に出力する。カバー94は、中空の管状に形成され、その管の中に伝達軸95を回転可能に支持している。ユニバーサルジョイント93は、モータ91に対して屈曲可能にカバー94を支持し、モータ91のシャフトに対して屈曲可能に伝達軸95を支持している。ユニバーサルジョイント93は、さらに、モータ91のシャフトの回転軸が伝達軸95の回転軸に一致しているかどうかに独立に、モータ91のシャフトの回転を伝達軸95に伝達する。ピニオン96は、伝達軸95に同体に接合され、伝達軸95の回転軸に概ね平行である複数の歯を備えている。ばね機構99は、弾性体により形成され、一端がカバー94に接合され、他端がフレーム61に接合されている。
【0048】
リーフ62−iは、第1縁85と第2縁86と第3縁87と第4縁88とのうちのいずれかの縁の一部にラック97が形成されている。ラック97は、リーフ62−iが案内される案内面に垂直である複数の歯から形成されている。ばね機構99は、ピニオン96の歯がリーフ62−iに形成されるラック97の歯に噛み合うように、カバー94に弾性力を与えている。
【0049】
図12は、カバー94を示している。カバー94は、軸受け130を備えている。軸受け130は、カバー94のユニバーサルジョイント93に支持される端の反対側の端に接合されている。軸受け130は、カバー94に対して伝達軸95を回転可能に支持している。駆動装置64−iは、モータ91が支持されるベース63とリーフ62−iとの距離に応じて、カバー94と伝達軸95との長さが異なっている。カバー94は、伝達軸95が自重などにより変形することを防止し、モータ91とリーフ62−iとが離れているときでもピニオン96の歯がラック97の歯に噛み合うことをより確実にする。カバー94は、切り欠き100が形成されている。切り欠き100は、リーフ62−iよりモータ91の側に配置される他のリーフの近傍に形成されている。このとき、駆動装置64−iは、カバー94がリーフ62−iよりモータ91の側に配置される他のリーフの第1縁85と第2縁86と第3縁87と第4縁88とに接触しないで、他のリーフの移動を阻害しない点で好ましい。なお、カバー94は、他のリーフに接触する可能性がないときに、切り欠き100が形成される必要がない。
【0050】
リーフ62−iは、突起であるターゲット98が形成されている。ターゲット98は、リーフ62−iの上縁81のうちのカメラ67の視野に含まれる位置に形成されている。リーフ62−1〜62−30のターゲット98は、リーフ62−1〜62−30の前方縁79が1つの平面上に揃うときに、直線上に揃うように形成されている。リーフ62−1’〜62−30’のターゲット98は、リーフ62−1’〜62−30’の前方縁79が1つの平面上に揃うときに、直線上に揃うように形成されている。なお、ターゲット98は、カメラ67により位置が認識可能である他の印に置換することができ、たとえば、上縁81に塗布される塗料に置換することができる。
【0051】
なお、リーフ62−iは、切り欠き83、84の縁がリーフ62−iの縁(前方縁79と後方縁80と上縁81と下縁82と)に繋がるように形成されることもできる。たとえば、切り欠き83、84は、リーフ62−iの後方縁80から中央に向かって凹むように形成されることもできる。このとき、リーフ62−iは、強度が低下するが、駆動装置64によりその案内面に沿って移動することができる。
【0052】
なお、上縁81と下縁82と第1縁85と第2縁86と第3縁87と第4縁88とは、複数の曲線に沿って配置されることもできる。その曲線は、仮想的点線源58を中心とする弧である。このとき、ガイド71〜78、71’〜78’は、リーフ62−1〜62−30、62−1’〜61−30’をそれぞれその案内面に沿って仮想的点線源58を中心にして回転移動することができるように支持し、リーフ62−1〜62−30、62−1’〜61−30’の前方縁79が仮想的点線源58を通る直線に常時に沿うように支持することができる。治療用放射線23は、上縁81と下縁82と第1縁85と第2縁86と第3縁87と第4縁88とが直線であるときに、リーフ62の前方縁79に入射して下縁82から抜ける放射線を含むことがあり、すなわち、ビーム強度が中途半端な放射線の部分(半影)を含むことがある。治療用放射線23は、上縁81と下縁82と第1縁85と第2縁86と第3縁87と第4縁88とが弧であるときに、その半影を低減することができ好ましい。
【0053】
なお、駆動装置64−iは、モータ91がヒンジを介してベース63に支持される他の駆動装置に置換されることができる。そのヒンジは、ピニオン96がラック97に近づいたり遠ざかったりすることができるように、モータ91を回転可能に支持している。このとき、その駆動装置は、駆動装置64−iと同様にして、ばね機構99がカバー94に弾性力を与えてピニオン96の歯がラック97の歯に噛み合うことをより確実にしている。このとき、その駆動装置は、カバー94をモータ91に同体に接合し、伝達軸95をモータ91のシャフトに同体に接合することができ、ユニバーサルジョイント93を省略することができる。
【0054】
なお、駆動装置64−iは、ユニバーサルジョイント93を備えない他の駆動装置に置換されることができる。その駆動装置は、カバー94がモータ91に同体に接合され、伝達軸95がモータ91のシャフトに同体に接合されている。その駆動装置は、ピニオン96の歯がラック97の歯に噛み合う弾性力をカバー94と伝達軸95とが与えるように、モータ91がベース63に支持されている。このとき、その駆動装置は、駆動装置64−iと同様にして、ピニオン96の歯がラック97の歯に噛み合うことをより確実にし、ばね機構99を省略することができる。
【0055】
駆動装置64−iは、ラック97の歯とピニオン96の歯とは、図13に示されているように、ラック97の歯の方向とピニオン96の歯の方向とが所定の偏角θ(θ≠0)だけずれるように、設置される。すなわち、駆動装置64−iは、ラック97の歯がピニオン96の歯に接触する部位と仮想的点線源58とを通る直線(リーフ62−iの案内面上にある)が伝達軸95の回転軸120に概ね垂直になるように、かつ、図13に示されているように、伝達軸95の回転軸120とピニオン96の歯が並ぶ方向とがなす角が直角から偏角θだけずれるように、設置される。このような偏角θは、ラック97の歯とピニオン96の歯とのバックラッシ量を低減することができ、駆動装置64は、リーフ62をより高精度に移動させることができる。この結果、マルチリーフコリメータ56は、リーフ62により形成される開口部の形状をより高精度に制御することができ、放射線治療システム1は、より高度な治療行為に利用されることができる。なお、駆動装置64−iは、そのバックラッシ量が十分に小さいときに、ラック97の歯の方向とピニオン96の歯の方向とが平行になるように(すなわち、θ=0になるように)、設置されることもできる。
【0056】
放射線治療システム1を用いて治療する動作では、まず、ユーザは、治療計画で指示される姿勢に放射線治療装置3のカウチ41に患者43を固定し、治療計画で指示される照射角度で治療用放射線23が患者43の患部位置を照射するように、旋回駆動装置11と走行駆動装置とを用いて治療用放射線照射装置16を移動させる。放射線治療装置制御装置2は、マルチリーフコリメータ56を用いて治療用放射線23の照射野の形状をその治療計画で指示される形状に変更し、治療用放射線照射装置16を用いてその治療計画で指示される線量の治療用放射線23をその患部に照射する。
【0057】
本発明によるマルチリーフコリメータの実施の他の形態は、既述の実施の形態におけるマルチリーフコリメータ56の駆動装置64が他の駆動装置に置換されている。その駆動装置は、リニアモータにより形成されている。このようなマルチリーフコリメータは、マルチリーフコリメータ56と同様にして、リーフ62と転がり軸受とを容易に確実に接触させることができ、リーフ62をより確実に支持し、隣接するリーフが干渉することを防止し、リーフ62を移動するときの摩擦力を低減し、リーフ62をより高精度に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、放射線治療システムの実施の形態を示すブロック図である。
【図2】図2は、放射線治療装置を示す斜視図である。
【図3】図3は、治療用放射線照射装置を示す断面図である。
【図4】図4は、マルチリーフコリメータを示す斜視図である。
【図5】図5は、リーフを示す図である。
【図6】図6は、マルチリーフコリメータを示す断面図である。
【図7】図7は、リーフを示す斜視図である。
【図8】図8は、ガイドを示す断面図である。
【図9】図9は、転がり軸受を示す断面図である。
【図10】図10は、転がり軸受を示す他の断面図である。
【図11】図11は、駆動装置を示す斜視図である。
【図12】図12は、カバーを示す斜視図である。
【図13】図13は、ラックとピニオンとが噛み合う部分を示す平面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 :放射線治療システム
2 :放射線治療装置制御装置
3 :放射線治療装置
11:旋回駆動装置
12:Oリング
14:走行ガントリ
16:治療用放射線照射装置
17:回転軸
18:回転軸
19:アイソセンタ
23:治療用放射線
24:診断用X線源
25:診断用X線源
32:センサアレイ
33:センサアレイ
35:診断用X線
36:診断用X線
41:カウチ
42:カウチ駆動装置
43:患者
51:電子ビーム加速装置
52:X線ターゲット
53:1次コリメータ
54:フラットニングフィルタ
55:2次コリメータ
56:マルチリーフコリメータ
58:仮想的点線源
59:放射線
60:放射線
61:フレーム
62:リーフ
62−1〜62−30:リーフ
63:ベース
64:駆動装置
64−1〜64−30:複数の駆動装置
65:嵌合部
68:ストッパ
68−1〜68−30:ストッパ
69:穴
70:フランジ
71〜78:ガイド
79:前方縁
80:後方縁
81:上縁
82:下縁
83:切り欠き
84:切り欠き
85:第1縁
86:第2縁
87:第3縁
88:第4縁
90:対称面
91:モータ
92:ロータリエンコーダ
93:ユニバーサルジョイント
94:カバー
95:伝達軸
96:ピニオン
97:ラック
98:ターゲット
99:ばね機構
130:軸受け
100:切り欠き
101:面
102:面
103:突起
104:溝
106:ガイドベース
107:転がり軸受
108:スペーサ
109:ボルト
111:カバー
112:回転軸
113:軸受
114:外輪
115:ボールプランジャ
116:ボール
117:面
118:面
120:回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の放射線が照射される照射野の形状を変更するために前記放射線を遮蔽する複数リーフと、
前記複数リーフを複数転がり軸受により移動可能にフレームに支持するガイド
とを具備するマルチリーフコリメータ。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数リーフは、前記複数転がり軸受に接触する縁を有し、
前記縁の各々は、前記複数転がり軸受のうちの複数に接触する
マルチリーフコリメータ。
【請求項3】
請求項2において、
前記複数リーフの各々は、
第1面と、
前記第1面の反対側の第2面とを有し、
前記複数転がり軸受の各々は、
前記縁のうちの前記第1面の側に接触する第1ガイド面と、
前記縁のうちの前記第2面の側に接触する第2ガイド面とを有する
マルチリーフコリメータ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかにおいて、
位置調整可能に前記フレームに支持される複数ベースを更に具備し、
前記複数ベースの各々は、前記複数転がり軸受のうちの複数を支持する
マルチリーフコリメータ。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれかにおいて、
前記複数転がり軸受は、各々が位置調整可能に前記フレームに支持される
マルチリーフコリメータ。
【請求項6】
請求項1〜請求項3のいずれかにおいて、
前記複数リーフは、前記複数転がり軸受のうちの複数に挟まれて支持され、
前記複数転がり軸受は、前記複数リーフの前記複数転がり軸受に挟まれる方向に移動可能に前記フレームに支持され、
前記ガイドは、前記複数転がり軸受に前記複数リーフの側に弾性力を与える弾性体を更に備える
マルチリーフコリメータ。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかにおいて、
前記複数リーフに形成されるラックに噛み合うピニオンを回転させる駆動装置
を更に具備するマルチリーフコリメータ。
【請求項8】
請求項7において、
前記ピニオンは、前記ピニオンのうちの1つのピニオン歯面が前記ラックのうちのラック歯面に接触するときに前記ピニオン歯面が前記ラック歯面に非平行になるように、支持される
マルチリーフコリメータ。
【請求項9】
請求項7または請求項8のいずれかにおいて、
前記駆動装置は、
前記フレームに支持されるモータにより回転されるモータ軸と、
前記ピニオンを回転するピニオン軸と、
前記モータ軸から前記ピニオン軸に回転動力を伝達するユニバーサルジョイントと、
前記ピニオンが前記ラックに噛み合うように、前記フレームに対して前記ピニオン軸に弾性力を与えるばねとを備える
マルチリーフコリメータ。
【請求項10】
請求項7または請求項8のいずれかにおいて、
前記駆動装置は、
前記ピニオンを回転するピニオン軸を回転するモータと、
前記モータを前記フレームに回転可能に支持するヒンジと、
前記ピニオンが前記ラックに噛み合うように、前記フレームに対して前記ピニオン軸に弾性力を与えるばねとを備える
マルチリーフコリメータ。
【請求項11】
請求項1〜請求項6のいずれかにおいて、
前記フレームに対して前記複数リーフをそれぞれ移動させる複数リニアモータ
を更に具備するマルチリーフコリメータ。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれかに記載されるマルチリーフコリメータと、
前記放射線を放射する照射装置
とを具備する放射線治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−319440(P2007−319440A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153189(P2006−153189)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】