説明

マルチ接続用コネクタ

【構成】 一対のコネクタハーフ2、4同士の嵌合により相互に電気接続する端子8、15の上部にケーブル心線3、5をそれぞれ搭載して蓋部材7、13を嵌合させることによりUスリット9、16にケーブル心線3、5を押し込んで端子8、15に接続するものであって、両コネクタハーフ2、4嵌合時の前記両蓋部材7、13の隙間23からケーブル心線3を取り出し、溝部31から外部に導きつつカバー32で蓋部材7、13の上面を覆う。
【効果】 コネクタハーフ2、4にケーブル心線3、5を搭載し蓋部材7、13を嵌合させるという簡単な方法でしかも確実にマルチ接続でき、接続の長期的な信頼性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、一対のコネクタハーフを相互に嵌合することにより各コネクタハーフにそれぞれ接続されたケーブル心線をマルチに電気接続することができるマルチ接続用コネクタに関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、既設のケーブルに新たなケーブルを電気接合する等の、いわゆるマルチ接続をする際には、従来、図5に示すように既存のケーブル中の接続対象心線51の中間部分に、新たなケーブル中の接続対象心線52の端部を手ひねりで接続し半田付けする方法、あるいは図6に示すようにスリーブ型のコネクタ53を用いて加締めにより接続する方法等が主に用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記方法では人的要素が大きいため、接続の長期的な信頼性に劣るとともに接続替えが困難であるという問題があった。また、多対ケーブルをマルチ接続する場合には接続部分が大きくなり接続端子函などの限られた収納スペース内に収めることが難しく、さらに、接続形態が一様でないためケーブルの線番の視認に混乱を生じやすく誤接続を生じる可能性があった。
【0004】したがって、本発明の目的は、接続の長期的な信頼性が高く、多対ケーブルを接続する場合にも接続部分をコンパクトにでき、接続替えが容易であるとともに接続形態が一様で線番の視認が容易であるマルチ接続用コネクタを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明のマルチ接続用コネクタは、相互に電気的に接続する雄、雌形状の端子を少なくとも一対有する嵌合自在なコネクタハーフからなるもので、これら端子の他端部には前記コネクタハーフの上部に突出するUスリットをそれぞれ有し、該Uスリット上に心線をそれぞれ搭載して各コネクタハーフ上部に蓋部材を嵌合させることにより前記Uスリットに前記心線を押し込んで該心線をそれぞれの端子に電気的に接続するものであって、前記両コネクタハーフ嵌合時に前記両蓋部材の間には心線取出用の隙間が設けられ、嵌合状態の前記コネクタハーフの両蓋部材の上面を覆うとともに、該蓋部材の前記隙間から取り出された心線を外部に導く溝部を内壁面に有するカバーを具備することを特徴としている。
【0006】
【作用】本発明のマルチ接続用コネクタによれば、各コネクタハーフの端子のUスリット上に心線をそれぞれ搭載して蓋部材を各コネクタハーフ上部に嵌合させることにより各心線を各Uスリットに押し込んで接続し、両コネクタハーフ同士を嵌合することにより両端子を接続して両心線間の導通をとることになるが、この時、心線の一方をその中間部分で端子に接続し他方をその端部で端子に接続して前記一方の心線の片側部分を両蓋部材の間の隙間から取り出すことにより前記一方の心線に前記他方の心線をマルチ接続することになる。したがって、各心線は端子のUスリットに押し込められて確実に接続されるため、接続の長期的な信頼性が向上する。また、多対ケーブルをマルチ接続する場合にも、両コネクタハーフに端子を所定数並列させ各端子に上記と同様に心線を接続して両コネクタハーフを嵌合することにより各心線間の導通をとることができるため、接続部分がコンパクトで且つ接続形態が一様の並列状態となる。さらに、蓋部材の隙間から取り出された心線をその溝部で外部に導きつつカバーをコネクタハーフの蓋部材の上面に被せることにより外部から隙間への不要物の侵入を防ぐことになるため、接続の長期的な信頼性がより向上することになる。
【0007】
【実施例】本発明の一実施例によるマルチ接続用コネクタについて図面を参照して以下に説明する。
【0008】図1中符号1は本実施例のマルチ接続用コネクタ、符号2はマルチ接続用コネクタ1のうち例えば既設ケーブル心線3に接続される既設側コネクタハーフ、符号4は例えば新設ケーブル心線5に接続される新設側コネクタハーフをそれぞれ示している。なお、既設側コネクタハーフ2および新設側コネクタハーフ4は少なくとも一対以上の端子(後述する)を有するものであればよいが、本実施例においては複数対有するものとする。また、これらの複数対の端子は各対が同様の構造であるため一対の端子についてのみ以下に説明する。
【0009】新設側コネクタハーフ4は、主として本体6と蓋部材7とからなり、本体6には、上端にUスリット9が設けられた端子8が図1における紙面を貫く方向に沿って複数並列するようにその内部に設けられている。そして、この端子8のUスリット9は本体6の上部に突出しており、該Uスリット9上にその端部を搭載しつつ新設ケーブル心線5をコネクタハーフ同士の嵌合方向(図1における左右方向、以下単に嵌合方向と称す)に沿って設け、この状態で蓋部材7を新設側コネクタハーフ4の上部に上方から嵌合させることにより、蓋部材7の下面に上記Uスリット9に対応して複数設けられた突出部10が新設ケーブル心線5をUスリット9に図2(a)に矢印で示すように押し込むことになる。これにより、Uスリット9が新設ケーブル心線5の絶縁層11を切って内部の導体12に電気的に接触し、この状態で新設ケーブル心線5を支持するようになっている。したがって、新設ケーブル心線5はUスリット9に確実に接続されることになるため、接続の長期的な信頼性が向上することになる。
【0010】また、既設側コネクタハーフ2も上述と同様の構造であり、既設側コネクタハーフ2の蓋部材13を本体14に嵌合させることにより、図2(b)に示すように、端子15の上端のUスリット16に既設ケーブル心線3の中間部分が押し込まれ、Uスリット16が既設ケーブル心線3の絶縁層17を切って内部の導体18に電気的に接続するようになっている(図1において、蓋部材13の突出部は現れず)。
【0011】既設側コネクタハーフ2及び新設側コネクタハーフ4は、既設側コネクタハーフ2の凸部19と新設側コネクタハーフ4の凹部20とを嵌合させ、この状態で各コネクタハーフ2、4の両脇に設けられた図示せぬクランプ手段によって相互に接合するようになっている。そして、既設側コネクタハーフ2の端子15は上述のようにUスリット16を上端に有するとともに嵌合方向に沿って延在する雄部21が下部に設けられており、一方新設側コネクタハーフ4の端子8も上端に上記Uスリット9を有するとともに嵌合方向に沿って延在する雌部22が下部に設けられている。そして、既設側コネクタハーフ2と新設側コネクタハーフ4とを嵌合することにより雄部21と雌部22は電気的に接続するようになっている。よって、この両コネクタハーフ2、4の嵌合により既設ケーブル心線3に新設ケーブル心線5を接続するいわゆるマルチ接続が行なわれることになる。ここで、この両コネクタハーフ2、4嵌合時において、両蓋部材7、13の間には所定の隙間23が設けられるようになっており、この隙間23から既設側コネクタハーフ2に接続された既設ケーブル心線3の片側部分24が図1R>1に示すように取り出されるようになっている。
【0012】また、既設側コネクタハーフ2には端子15を外部と電気的に接続するための穴部25が下面に設けられており、新設側コネクタハーフ4にも端子8を外部と電気的に接続するための穴部26が同様に下面に設けられている。なお、これらの穴部25、26は、例えば無瞬断切替を行なう際に図示せぬ導通用プローブの導通ピンが挿入されるものである。
【0013】そして、嵌合状態の両コネクタハーフ2、4には、両蓋部材7、13間の隙間23からのホコリ等の不要物の侵入を防ぐためにカバー27が、両蓋部材7、13の上面7a、13aおよび図示せぬ両端面を覆うように取り付けられる。このカバー27は図3に示すような構造のもので、両蓋部材7、13の上面7a,13a(図1参照)を覆うため嵌合方向と直交して延在する平板部28と、平板部28の両端から該平板部28と直交する下方向に延在し嵌合状態の両コネクタハーフ2、4の図示せぬ両端面を覆う両側板部29と、両側板部29の下端からカバー27中心に向けてそれぞれ突出し両コネクタハーフ2、4の下面2a、4a(図1参照)に係止して該カバー27を両コネクタハーフ2、4に取り付けるための係止部30とを有している。そして、平板部28の内壁面27aには該裏面略中央から嵌合方向に沿うとともに新設側コネクタハーフ4方向に開口するように延在する溝部31が既設ケーブル心線3の数、位置等に応じて並列して形成されており、嵌合状態の両コネクタハーフ2、4に該カバー27を設けることにより、溝部31が隙間23から取り出された既設ケーブル心線3をそれぞれ外部に導くようになっている。
【0014】そして、既設ケーブル心線3の片側部分24を必要に応じて除去する場合等があると、上記カバー27には、既設ケーブル心線3取り出しのため溝部31が内壁面27aに設けられており、この溝部31からホコリ等が侵入する可能性があるため、上記カバー27に対し溝部31をもたない図4に示すような構造のカバー32と交換することによって、よりマルチ接続用コネクタ1内をクリーンな状態に保つことができる。
【0015】なお、以上のように、本実施例のマルチ接続用コネクタ1においては、多対ケーブルを接続する場合にも、両コネクタハーフ2、4に端子8、15を所定数並列させ各端子8、15に上記のように各ケーブル心線3、5を接続して両コネクタハーフ2、4を嵌合することによりそれぞれのケーブル心線3、5間の導通をとることができるため、接続部分がコンパクトであり且つ各対応ケーブル心線3、5同士の接続形態が一様の並列状態となって、対応ケーブル心線3、5同士の線番の視認に混乱を生じることがなく誤接続を生じる可能性が激減することになる。
【0016】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明のマルチ接続用コネクタによれば、コネクタハーフに心線を搭載し蓋部材を嵌合させるという簡単な方法でしかも確実にマルチ接続できるため、人的要素が少なく接続の長期的な信頼性が向上する。また、多対ケーブルをマルチ接続する場合にも、両コネクタハーフに端子を所定数並列させ各端子に上記と同様に心線を接続して両コネクタハーフを嵌合することにより各心線の導通をとることができるため、接続部分がコンパクトで且つ接続形態が一様となり、ケーブルの線番の視認に混乱を生じることがなく誤接続を生じる可能性が激減する。さらに、蓋部材の隙間から取り出されたケーブル心線をその溝部で外部に導きつつカバーを嵌合状態のコネクタハーフの蓋部材の上面に被せることにより外部から隙間への不要物の侵入を防ぐことになるため、接続の長期的な信頼性がより向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例によるマルチ接続用コネクタを示す主断面図である。
【図2】 本発明の一実施例によるマルチ接続用コネクタのケーブル心線と端子を示す概略斜視図で、(a)は新設ケーブル心線と対応する端子とを、(b)は既設ケーブル心線と対応する端子とをそれぞれ示すものである。
【図3】 本発明の一実施例によるマルチ接続用コネクタのカバーの一例を示す斜視図である。
【図4】 本発明の一実施例によるマルチ接続用コネクタのカバーの別の例を示す斜視図である。
【図5】 従来のケーブル心線のマルチ接続方法の一例を示す概略図である。
【図6】 従来のケーブル心線のマルチ接続方法の別の例を示す概略図である。
【符号の説明】
1…マルチ接続用コネクタ、2…既設側コネクタハーフ、3…既設ケーブル心線、4…新設側コネクタハーフ、5…新設ケーブル心線、7,13…蓋部材、8,15…端子、9,16…Uスリット、23…隙間、27…カバー、27a…内壁面、31…溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 相互に電気的に接続する雄、雌形状の端子(8,15)を少なくとも一対有する嵌合自在なコネクタハーフ(2,4)からなるコネクタ(1)であり、これら端子(8,15)の他端部には前記コネクタハーフ(2,4)の上部に突出するUスリット(9,16)をそれぞれ有し、該Uスリット(9,16)上に心線(3,5)をそれぞれ搭載して各コネクタハーフ(2,4)上部に蓋部材(7,13)を嵌合させることにより前記Uスリット(9,16)に前記心線(3,5)を押し込んで該心線(3,5)をそれぞれの端子(8,15)に電気的に接続するマルチ接続用コネクタ(1)であって、前記両コネクタハーフ(2,4)嵌合時に前記両蓋部材(7,13)の間には心線取出用の隙間(23)が設けられ、嵌合状態の前記コネクタハーフ(2,4)の両蓋部材(7,13)の上面を覆うとともに、該蓋部材(7,13)の前記隙間(23)から取り出された心線(3)を外部に導く溝部(31)を内壁面(27a)に有するカバー(27)を具備することを特徴とするマルチ接続用コネクタ(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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