説明

マンコンベア

【課題】案内情報を切り替え可能な表示部を用意し、踏段に乗車する乗客に適した案内情報を表示可能なマンコンベアを得る。
【解決手段】踏段11と、乗り口15の床15aの一部を構成するように設けられ、案内情報を表示する表示面31aを有する表示部31と、複数の異なる案内情報を記憶する案内情報記憶部39aと、表示面31aから踏段11と反対側に離間する所定領域を撮影領域とする撮像手段20と、撮像手段20の出力から上記撮影領域の画像データを得る画像処理部34と、画像データから、撮影領域に入り込んだ乗客を含む移動体の特徴点を抽出し、移動体の特徴点に基づいて、案内情報を選択する画像判断部と、画像判断部が選択した案内情報を表示面31aに表示させる表示制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗り口に案内情報を表示する表示部を有するマンコンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエスカレータでは、利用者に注意を喚起するための文字等が印刷された注意喚起シートを乗り口の床上に貼り付けて、利用者への注意喚起を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−284218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のエスカレータでは、注意喚起シートの内容を変更することができないので、全ての乗客に対して一律な注意喚起しかできない。
【0005】
この発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、案内情報を切り替え可能な表示部を用意し、踏段に乗車する乗客ごとに適した案内情報を表示可能なマンコンベアを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のマンコンベアは、乗り口から降り口に乗客を搬送する踏段と、乗り口の床の一部を構成するように設けられた表示面を有し、表示面への案内情報の表示を切り替え可能な表示部と、複数の異なる案内情報を記憶する案内情報記憶部と、表示面から踏段と反対側に離間する所定領域を撮影領域とする撮像手段と、撮像手段の出力から撮影領域の画像データを得る画像処理部と、画像データから、撮影領域に入り込んだ乗客を含む移動体の特徴点を抽出し、移動体の特徴点に基づいて、案内情報を選択する画像判断部と、画像判断部が選択した案内情報を表示面に表示させる表示御部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るマンコンベアによれば、画像判断部が、撮影領域に入り込んだ乗客を含む移動体の特徴点を抽出し、移動体の特徴点に応じた案内情報を選択するので、踏段に乗車する乗客ごとに、適した案内情報に切り替えて、案内情報を表示面に表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の一実施の形態に係るエスカレータの模式図である。
【図2】この発明の一実施の形態に係るエスカレータの乗り口の正面図である。
【図3】この発明の一実施の形態に係るエスカレータの乗り口の上面図である。
【図4】この発明の一実施の形態に係るエスカレータのシステム構成図である。
【図5】この発明の一実施の形態に係るエスカレータの案内情報記憶部に記憶される案内情報を説明する図である。
【図6】この発明の一実施の形態に係るエスカレータの身体軸傾斜乗客判定手段が、乗客が身体軸傾斜乗客か否かを判定する方法を説明する図である。
【図7】この発明の一実施の形態に係るエスカレータの速度信号生成手段が生成する踏段速度指令値について説明する図である。
【図8】この発明の一実施の形態に係るエスカレータの動作を説明するフロー図である。
【図9】この発明の一実施の形態に係るエスカレータの案内情報の表示制御を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1はこの発明の一実施の形態に係るエスカレータの模式図、図2はこの発明の一実施の形態に係るエスカレータの乗り口の正面図、図3はこの発明の一実施の形態に係るエスカレータの乗り口の上面図、図4はこの発明の一実施の形態に係るエスカレータのシステム構成図である。
【0011】
図1〜図3において、マンコンベアとしてのエスカレータ1は、上下階床間に架設された主枠2と、主枠2内の上部機械室3に設けられた電動機5と、電動機5と駆動鎖6を介して連結された駆動スプロケット7と、駆動スプロケット7に同軸に取り付けられた上部スプロケット8と、主枠2内の下部機械室4に設けられた下部スプロケット9と、上部スプロケット8及び下部スプロケット9に無端状に巻き掛けられた踏段鎖10と、踏段鎖10に連結されて無端状に連なり、電動機5の駆動に連動して乗り口15と降り口16との間を循環走行する踏段11と、を備えている。なお、図1では、一部の踏段11のみを図示している。また、乗り口15は、下階側に設けられている。
【0012】
また、エスカレータ1は、主枠2の両側に踏段11を挟むように対向して立設された一対の欄干17と、一対の欄干17のそれぞれの周縁を踏段11と同期して走行する一対の移動手すり18と、乗り口15の床15aの一部を構成するように設けられ、案内情報を表示するための表示面31aを有する表示装置30と、表示面31aから踏段11と反対側に離間する所定領域を撮影領域とするように設けられた撮像手段20と、表示面31aの撮影領域側に位置し、乗り口15側に位置する踏段11から所定距離だけ離れた位置(以下、移動体通過判断位置とする)を通過する移動体を検出する移動体検出手段23と、を備えている。なお、移動体は、乗客とともに移動する個体を含むものであり、例えば、ベビーカーを押しながら移動する乗客については、ベビーカー及び乗客を移動体とする。
【0013】
さらに、エスカレータ1は、撮像手段20及び移動体検出手段23の出力に基づいて、乗り口15から踏段11に向かう移動体の状態に応じた踏段速度指令値を生成して出力する踏段速度制御用装置50と、踏段速度指令値が入力され、踏段速度指令値に応じた踏段11の速度となるように電動機5を制御するマンコンベア制御盤としてのエスカレータ制御盤13と、を備えている。
なお、エスカレータ1は、乗客がいないときには踏段11の走行を停止する自動運転型となっている。
【0014】
また、乗り口15の床15aの踏段11側の端部には、図3に示されるように、くし12が設けられて、乗り口15と踏段11との境界部を構成している。図示しないが、乗り口16の床の踏段11側の端部にも、同様にくしが設けられている。
【0015】
エスカレータ制御盤13は、各種演算を行うCPU(図示せず)、各種データを一時的に記憶する記憶領域を有し、CPUの演算処理時にワーキングスペースに使用されるRAM(図示せず)、及びCPUにエスカレータ1の制御を行わせるための各種プログラムが格納されたROM(図示せず)などにより構成される。
撮像手段20は、撮影領域に映る映像を撮像した信号を出力するように構成されている。
【0016】
また、ポスト21が、図2に示されるように、乗り口15の幅方向の両側に相対するように床15aに立設されている。ポスト21は、最も乗り口15寄りで露出されている踏段11から所定距離だけ離れた位置にある。そして、移動体検出手段23は、一対のポスト21に相対して設けられる投光器23a及び受光器23bにより構成されている。
【0017】
投光器23a及び受光器23bは、例えば、床15aからの高さが30cm程度のところに配置されている。そして、受光器23bは、受光状態に応じた電気信号を出力する。例えば、受光器23bは、投光器23aからの光を受光しているときに電気的にLow(OFF)の信号を出力し、投光器23aの光を受光しなくなったときに、電気的にHigh(ON)となる信号を出力する。
【0018】
移動体が、投光器23aと受光器23bの間を通過するときに、受光器23bに向かう投光器23aの光が遮られるので、受光器23bの出力が切り替わる。即ち、移動体検出手段23は、受光器23bが光を受光しなくなったことをもって投光器23aと受光器23bの間を通過する移動体を検出し、移動体を検出したときに、受光器23bの出力をONとするように構成されている。
ここで、投光器23a及び受光器23bの間が、踏段11に向かう移動体を検出する移動体通過判断位置となっている。
【0019】
また、一対の柵体29が、一対のポスト21から移動手すり18の端部近傍に延在するように乗り口15の幅方向に相対して設けられ、もう一対の柵体29が、一対のポスト21から踏段11とは反対側に延在するように乗り口15の幅方向に相対して設けられている。これにより、案内通路27が相対する2対の柵体29の間に形成される。
【0020】
また、ポスト21には、踏段11が自動運転であることや、上昇運転または下降運転であることを表示するための運転状況表示部22が設けられている。運転状況表示部22の表示内容は、エスカレータ制御盤13により制御される。
【0021】
表示装置30は、図2及び図4に示されるように、上述の表示部31と、ポスト21に設けられる演算処理装置32と、を備えている。
【0022】
演算処理装置32は、エスカレータ制御盤13と同様、CPU(図示せず)、RAM(図示せず)、及びROM(図示せず)などにより構成されている。
【0023】
演算処理装置32は、図4に示されるように、歩行状況判定手段としての歩行速度判定手段33、身体軸傾斜乗客判定手段37、画像判断部39、及び表示制御部41のそれぞれとして機能している。
そして、歩行速度判定手段33は、画像処理部34、速度演算部35、及び速度判断部36により構成されている。
また、身体軸傾斜乗客判定手段37は、画像処理部34、及び身体軸傾斜判断部38により構成されている。
また、画像判断部39は、表示面31aに表示するための複数の案内情報が記憶される案内情報記憶部39aを有している。
【0024】
また、表示装置30は、演算処理装置32と図示しないパソコンなどの案内情報入力機器との間で情報のやり取りを行うための信号入力部42を有しており、複数の案内情報は、信号入力部42を介して予め案内情報記憶部39aに入力されている。
【0025】
案内情報は、例えば、以下の図5に示されるものである。
図5はこの発明の一実施の形態に係るエスカレータの案内情報記憶部に記憶される案内情報を説明する図である。
【0026】
案内情報は、図5の(a)〜(d)に示されるように、「ベビーカーの乗車はご遠慮ください」、「手すりにおつかまりください」、「踏段を移動しないでください」、及び「踏段の速度を遅くします。気をつけてください」などの文字情報である。但し、案内情報は、文字により構成されるものに限定されず、絵柄としたり、文字と絵柄を組み合わせたものとしたりしてもよい。
【0027】
また、踏段速度制御用装置50は、演算処理装置32の一部の機能により実現され、上述の歩行速度判定手段33、身体軸傾斜乗客判定手段37の他、速度信号生成手段51により構成される。
【0028】
以上の構成を有するエスカレータ1のシステム構成について説明する。
図4に示されるように、撮像手段20と画像処理部34とが通信可能に接続されている。速度演算部35及び身体軸傾斜判断部38と移動体検出手段23の受光器23bとが電気的に接続されている。
【0029】
また、速度信号生成手段51とエスカレータ制御盤13とが通信可能に接続されている。エスカレータ制御盤13が、電動機5の駆動を制御可能に電動機5に接続されている。また、表示制御部41は、表示部31の駆動を制御可能に表示部31に接続されている。
速度演算部35、身体軸傾斜判断部38、及び画像判断部39と画像処理部34とが通信可能に接続されている。また、速度演算部35と速度判断部36とが通信可能に接続されている。また、速度判断部36及び身体軸傾斜判断部38と画像判断部39とが通信可能に接続されている。また、画像判断部39と表示制御部41とが通信可能に接続されている。また、速度判断部36及び身体軸傾斜判断部38と速度信号生成手段51とが通信可能に接続されている。
【0030】
以下、踏段速度制御用装置50の動作について説明する。
撮像手段20が撮影領域の映像を撮像して出力した信号は、画像処理部34に入力される。
画像処理部34は、撮像手段20から入力された信号を処理して、撮影領域内の画像データ(以下、領域内画像データとする)を取得する。
【0031】
また、速度演算部35には、受光器23bの出力が入力されて、速度演算部35は、受光器23bの出力の切り替えを認識する。また、速度演算部35は、領域内画像データを解析して、撮像手段20による撮影領域内の所定の位置(速度演算基準位置)に移動体が入り込んだと判断すると、図示しないタイマのカウントを開始する。なお、移動体通過判断位置は、速度演算基準位置と表示面31aとの間に配置される。
【0032】
さらに、速度演算部35は、受光器23bの出力がONになったとき、言い換えれば、移動体が移動体通過判断位置を通過したときのタイマのカウント時間を読み取り、移動体通過判断位置と速度演算基準位置の間の距離、及び読み取ったタイマの時間から移動体の速度を演算する。移動体には、乗客が含まれるので、移動体の速度の演算は、乗客の歩行速度を演算していることになる。
なお、移動体通過判断位置と速度演算基準位置との間の距離は、予め速度演算部35を構成する演算処理装置32のROMに格納されている。
【0033】
また、速度判断部36は、算出した歩行速度が、遅速乗客判定基準速度より遅いと判断すると、踏段11に乗り込もうとする乗客は、歩くのが遅い遅速乗客であると判断して、遅速乗客フラグをONとする。また、速度判断部36は、算出した歩行速度が、遅速乗客判定基準速度より早いと判断すると、遅速乗客フラグをOFFにする。これは、乗客が、踏段11への乗車を健常者と同じに行えない恐れがあるか否かを判断し、判断結果に応じて遅速乗客フラグのON/OFFを設定していることに相当する。なお、遅速乗客判定基準速度は、健常者の一般的な歩行速度より、若干遅い値に設定されている。つまり、遅速乗客とは、健常者の一般的な歩行速度に比べて若干遅い速度より低速で歩行する乗客をいう。
【0034】
また、速度判断部36は、算出した歩行速度が、走り乗客判定基準速度より速いと判断すると、踏段11に乗り込もうとする乗客は、走っている乗客(走り乗客)であると判断して走り乗客フラグをONとし、算出した歩行速度が、走り乗客判定基準速度より遅いと判断すると、走り乗客フラグをOFFにする。なお、走り乗客判定基準速度は、健常者の一般的な早歩きの速度より、若干速い値に設定されている。つまり、走り乗客は、健常者の一般的な歩行速度に比べて若干速い速度より高速で移動する乗客をいう。
【0035】
また、身体軸傾斜判断部38には受光器23bの出力が入力され、身体軸傾斜判断部38は、受光器23bの出力の切り替えを認識可能となっている。以下、乗客が、身体軸を鉛直方向から大きく傾けたり、大きくふらついたりしながら歩行する身体軸傾斜乗客か否かを身体軸傾斜乗客判定手段37が判定する方法を説明する。
【0036】
図6はこの発明の一実施の形態に係るエスカレータの身体軸傾斜乗客判定手段が、乗客が身体軸傾斜乗客か否かを判定する方法を説明する図である。
【0037】
身体軸傾斜判断部38は、領域内画像データを解析して、速度演算基準位置に乗客19が入り込んだと判断すると、領域内画像データを微小時間間隔でRAMに上書きせずに格納して解析する。
さらに、速度演算部35は、受光器23bの出力がONになったとき、格納した各領域内画像データから、乗客19の身体軸のずれ角度θrを演算する。ずれ角度θrは、鉛直方向に対して、乗客19の身体軸が最も傾いたときの角度により定義される。例えば、乗客19が酩酊していたり、足の不自由であったりして、大きくふらつきながら歩行すると、ずれ角度θrが大きく変動する。
【0038】
そして、身体軸傾斜判断部38は、ずれ角度θrが予め設定される傾斜歩行判定基準値θmより大きいときに、RAMに設けられた傾斜歩行乗客フラグをONとし、ずれ角度θrが傾斜歩行判定基準値θmより小さいときには、傾斜歩行乗客フラグをOFFにする。
傾斜歩行判定基準値θmは、健常者が通常に歩行しているときの鉛直方向に対する身体軸の最大の傾き角度より若干大きな角度で設定される。
なお、RAMに格納した領域内画像データは、傾斜歩行乗客フラグのON/OFF処理が終了したらRAMから消去するようになっている。
【0039】
また、速度信号生成手段51は、以下に説明する踏段速度指令値を出力するたびに、踏段速度指令値をRAMに更新して格納するように構成され、踏段速度指令値を参照することで現在の踏段11の走行速度を認識可能となっている。つまり、速度信号生成手段51は、踏段11の走行速度を認識する踏段速度判断手段としても機能している。
【0040】
また、速度信号生成手段51は、乗客が移動体通過判断位置を通過したときに設定される遅速乗客フラグ、走り乗客フラグ、及び傾斜歩行乗客フラグの状態と現在の踏段11の走行速度に基づいて、踏段11の走行速度をエスカレータ制御盤13に制御させるための踏段速度指令値を生成してエスカレータ制御盤13に出力する。
【0041】
また、速度信号生成手段51は、踏段速度指令値を参照することで、移動体検出手段23により検出された乗客が踏段11まで到達したときに予想される踏段11の走行速度を認識可能になっている。
【0042】
以下、速度信号生成手段51が生成する踏段速度指令値について説明する。
図7はこの発明の一実施の形態に係るエスカレータの速度信号生成手段が生成する踏段速度指令値について説明する図である。
【0043】
初期状態として、踏段11の走行は停止されているものとする。
歩行速度判定手段33による遅速乗客フラグ、及び身体軸傾斜乗客判定手段37による傾斜歩行乗客フラグのON/OFF設定処理が行われた直後に、速度信号生成手段51は、踏段速度指令値を生成するように構成されている。図7において、時間軸の原点は、速度信号生成手段51が、検出した乗客を踏段11に乗せて降り口16まで搬送する踏段の速度を制御するための踏段速度指令値を生成した時点としている。
【0044】
速度信号生成手段51は、遅速乗客フラグ及び傾斜歩行乗客フラグのON/OFF設定処理が行われたと判断すると、遅速乗客フラグ及び傾斜歩行乗客フラグのON/OFFを確認する。
【0045】
速度信号生成手段51は、遅速乗客フラグがOFFである場合、言い換えれば、乗客が通常に歩行する健常者であると判断した場合、以下のように踏段速度指令値を生成する。即ち、踏段速度指令値は、踏段11の走行速度を、時間0から所定の加速度αnで加速させ、時間t1で定格速度Vnに到達させ、時間t2まで定格速度Vnに保った後、加速度αnで減速させて時間t3で0となるように制御する信号として生成される。
【0046】
ここでは、時間t1は、一般的な歩行速度の乗客が、移動体通過判断位置から踏段11に到達するのに要する時間より大きくしている。即ち、一般的な歩行速度で歩く乗客が踏段11に到達したときには、踏段11の速度は定格速度Vnに到達していない。
なお、時間t1はこのものに限定されず、一般的な歩行速度で歩く乗客が踏段11に到達したときに、踏段11の速度が定格速度Vnに到達している時間に設定してもよい。
【0047】
また、時間t2と時間t3の間に、乗客を乗せた踏段11が、降り口16に到達するように時間t2及び時間t3が設定されている。このように、時間t3は、移動体通過判断位置を歩行していた乗客が、踏段11に乗って降り口16まで搬送されるまでに要する時間よりも長い所定時間になるように設定されている。
【0048】
なお、傾斜歩行乗客フラグがONであっても、遅速乗客フラグがOFFである場合、速度信号生成手段51は、上記と同様の踏段速度指令値を生成して出力する。傾斜歩行乗客フラグがONで遅速乗客フラグがOFFとなるのは、例えば、通常に歩行可能な健常者が、大きな荷物を持って体を傾けながら歩いている場合に相当する。健常者であれば、踏段11の走行速度を定格速度Vnにある程度大きな値で加速しても、問題なく踏段11に乗り降りできるため、速度信号生成手段51は、定格速度Vnで踏段11を走行させるように制御する踏段速度指令値を生成する。
【0049】
また、速度信号生成手段51は、遅速乗客フラグ及び傾斜歩行乗客フラグのON/OFFを確認した結果、遅速乗客フラグがONであり、傾斜歩行乗客フラグがOFFであると判断した場合、乗客が酩酊者、老人、及び身体障害者などの遅速乗客であるとみなし、以下のように踏段速度指令値を生成する。即ち、速度走行指令値は、踏段11の走行速度を、所定の時間t4が経過した後、αnより小さな加速度α1で加速させ、時間t5で第1速度V1に到達させ、時間t6まで第1速度V1に保った後、加速度α1で減速させて時間t7で0となるように制御する信号として生成される。
【0050】
また、時間t6と時間t7の間に、乗客を乗せた踏段11が、降り口16に到達するように時間t6及び時間t7が設定されている。このように、時間t7は、移動体通過判断位置を歩行していた乗客が、踏段11に乗り、降り口16まで搬送されるまでに要する時間よりも長い時間になるように設定されている。
【0051】
また、速度信号生成手段51は、遅速乗客フラグ及び傾斜歩行乗客フラグのON/OFFを確認した結果、遅速乗客フラグ及び客傾斜歩行信号がONであると判断した場合、乗客が遅速乗客で、かつ大きくふらつかせて歩く、または大きく身体を傾けて歩く酩酊者や身体障害者などの身体軸傾斜乗客であると判断し、以下のように踏段速度指令値を生成する。即ち、踏段速度指令値は、踏段11の走行速度を、時間t4が経過した後、α1より小さな加速度α2で加速させ、時間t8で第2速度V2に到達させ、時間t9まで第2速度V2を保った後、加速度α2で減速させて時間t10で0となるように制御する信号として生成される。
【0052】
そして、時間t9と時間t10の間に、乗客を乗せた踏段11が降り口16に到達するように時間t9と時間t10が設定されている。このように、時間t10は、移動体通過判断位置を歩行していた乗客が、踏段11に乗って降り口16まで搬送されるまでに要する時間よりも長い時間になるように設定されている。
【0053】
また、速度信号生成手段51は、時間t4を以下のように設定している。演算された乗客の歩行速度から、移動体通過判断位置にいる乗客が、踏段11に到達するまでに要する時間を予測し、予測した時間より若干早めの時間をt4としている。即ち、乗客が、踏段11に到達する直前で踏段11の加速が開始されるようになっている。
但し、時間t4はこのものに限定されず、乗客が、踏段11に到達するまでに要する時間より遅く設定してもよい。
【0054】
次いで、踏段11が停止した状態から、定格速度Vnに加速されて走行しているときに、新たな乗客が踏段11に乗り込む場合について説明する。このとき、前回踏段速度指令値を出力してから時間t11が経過しときに、新たな乗客が移動体通過判断位置を通過し、新たな踏段速度指令値が速度信号生成手段51により生成されるものとする。なお、踏段11が定格速度Vnで走行しているということは、踏段11に乗っている乗客は、通常に歩行可能な健常者である。
【0055】
速度信号生成手段51は、新たに遅速乗客フラグ及び傾斜歩行乗客フラグのON/OFF設定処理が行われたと判断すると、遅速乗客フラグ及び傾斜歩行乗客フラグのON/OFFを確認する。
【0056】
速度信号生成手段51は、遅速乗客フラグがONであり、傾斜歩行乗客フラグがOFFであると判断した場合、乗客は、遅速乗客であると判断し、以下のように踏段速度指令値を生成して更新する。
更新後の踏段速度指令値は、図7の細線の一点鎖線で示されるように、踏段11の走行速度を、第1速度V1になるまで時間t11から所定の減速度β1で緩やかに減速させ、その後、時間t3に比べて、以下の条件を満たす延長時間だけに長い時間が経過したときに0となるように制御する信号として生成される。
【0057】
延長時間は、新たに踏段11に乗った乗客が、降り口16まで搬送された後に踏段11の走行速度が0となる条件を満たすように設定されている。以下、この条件を延長時間設定条件とする。β1の値は、例えば、先に踏段11に乗っている乗客に対して減速による焦燥感を与えない範囲で、後に検出された乗客が踏段11に乗るときの踏段11の走行速度ができるだけ第1速度V1に近づくように、もしくは第1速度V1となるように、踏段11を減速させる値とする。
【0058】
また、速度信号生成手段51は、新たな乗客に対する遅速乗客フラグ及び傾斜歩行乗客フラグのON/OFFを確認した結果、遅速乗客フラグ及び傾斜歩行乗客フラグがONであると判断した場合、以下のように踏段速度指令値を生成して更新する。
更新後の踏段速度指令値は、図7の太線の一点鎖線で示されるように、踏段11の走行速度を、第2速度V2になるまで時間t11から減速度β1より小さな値の減速度β2で緩やかに減速させ、その後、時間t3に比べて、延長時間設定条件を満たす延長時間だけ長い時間が経過したときに0になるように制御する信号として生成される。
【0059】
また、β2の値は、例えば、先に踏段11に乗っている乗客に対して減速による焦燥感を与えない範囲で、後に検出された乗客が踏段11に乗るときの踏段11の走行速度ができるだけ第2速度V2に近づくように、もしくは第2速度V2となるように、踏段11を減速させる値とする。
【0060】
また、図示しないが、速度信号生成手段51は、新たな乗客に対する遅速乗客フラグがOFFであると判断すると、踏段11の走行速度を、t11から所定時間、定格速度Vnに維持させた後減速させ、t3に対して延長時間設定条件を満たす延長時間だけ長い時間が経過したときに0になるように制御させる踏段速度指令値を生成する。
【0061】
次いで、踏段11が、停止していた状態から第1速度V1に加速されて走行しているときに、新たな乗客が移動体通過判断位置を通過した場合について説明する。また、前回踏段速度指令値を出力してから時間t11が経過しときに、新たに踏段11に乗り込む乗客が移動体通過判断位置を通過するものとする。なお、第1速度V1で走行しているということは、踏段11に乗っている乗客は、遅速乗客であるが、身体軸傾斜乗客ではない乗客である。
【0062】
速度信号生成手段51は、新たな乗客に対して遅速乗客フラグ及び傾斜歩行乗客フラグのON/OFF設定処理が行われたと判断すると、遅速乗客フラグ及び傾斜歩行乗客フラグのON/OFFを確認する。
【0063】
速度信号生成手段51は、遅速乗客フラグがONであり、傾斜歩行乗客フラグがOFFであると判断した場合、以下のように踏段速度指令値を生成して更新する。
【0064】
図示しないが、更新後の踏段速度指令値は、踏段11の走行速度を、第1速度V1に所定時間維持した後減速させ、t7に対して延長時間設定条件を満たす延長時間だけ長い時間が経過したときに0とするように制御する信号として生成される。
【0065】
また、速度信号生成手段51は、新たな乗客に対する遅速乗客フラグ及び傾斜歩行乗客フラグのON/OFFを確認した結果、遅速乗客フラグ及び傾斜歩行乗客フラグがONであると判断した場合、以下のように踏段速度指令値を生成して更新する。
更新後の踏段速度指令値は、図7の二点鎖線で示されるように、踏段11の走行速度を、第2速度V2になるまで時間t11から所定の減速度β2で緩やかに減速させ、その後、時間t7に比べて、延長時間設定条件を満たす延長時間だけ長い時間が経過したときに0となるように制御する信号として生成される。
【0066】
また、速度信号生成手段51は、新たな乗客に対する遅速乗客フラグのON/OFFを確認した結果、遅速乗客フラグがOFFであると判断すると、以下のように踏段速度指令値を生成して更新する。
更新後の踏段速度指令値は、踏段11の走行速度を、t11から所定時間第1速度V1に維持した後減速させ、t7に対して延長時間設定条件を満たす延長時間だけ長い時間が経過したときに0になるように制御させる信号として生成される。
なお、更新後の踏段速度指令値は、先に踏段11に乗った乗客が降り口16まで搬送された後であれば、定格速度Vnまで踏段11の速度を加速してもよい。
【0067】
次いで、踏段11が、停止していた状態から第2速度V2に加速されて走行しているときに、新たな乗客が踏段11に乗り込む場合について説明する。また、前回踏段速度指令値を出力してから時間t11が経過しときに、新たな乗客が移動体通過判断位置を通過し、新たな踏段速度指令値が速度信号生成手段51により生成されるものとする。なお、踏段11が第2速度V2で走行しているということは、踏段11に乗っている乗客は、身体軸傾斜乗客である。
【0068】
速度信号生成手段は、遅速乗客フラグ及び傾斜歩行乗客フラグのON/OFF処理が行われたと判断すると、遅速乗客フラグ及び傾斜歩行乗客フラグのON/OFFを確認する。
【0069】
速度信号生成手段51は、遅速乗客フラグ及び傾斜歩行乗客フラグがONであると判断した場合、以下のように踏段速度指令値を生成して更新する。
即ち、更新後の踏段速度指令値は、踏段11の走行速度を、第2速度V2に所定時間維持した後に減速させ、t10に対して延長時間設定条件を満たす延長時間だけ長い時間が経過したときに、0とするように制御する信号として生成される。
【0070】
速度信号生成手段51は、新たな乗客に対する遅速乗客フラグ及び傾斜歩行乗客フラグのON/OFFを確認した結果、遅速乗客フラグがOFFであると判断した場合、または、遅速乗客フラグがONであり、傾斜歩行乗客フラグがOFFであると判断した場合、以下のように踏段速度指令値を生成して更新する。
【0071】
更新後の踏段速度指令値は、踏段11の走行速度を、少なくとも、t10が経過するまでは加速させず、t10に対して延長時間設定条件を満たす延長時間だけ長い時間が経過したときに0になるように制御させる信号として生成される。
なお、更新後の踏段速度指令値は、先に踏段11に乗った乗客が降り口16まで搬送された後であれば、踏段11の速度を、後から乗った乗客に応じて定格速度Vnまたは第1速度V1まで加速してもよい。
【0072】
以上説明した速度信号生成手段51による踏段速度指令値の生成についてまとめると、速度信号生成手段51は、踏段11が停止されている場合に、踏段11に向かう乗客が遅速乗客でないと歩行速度判定手段33が判定したと判断すると、踏段11の走行速度を定格速度Vnに加速して乗客を降り口16まで搬送させる踏段速度指令値を生成する。また、速度信号生成手段51は、乗客が遅速乗客であると歩行速度判定手段33が判定したと判断すると、乗客が身体軸傾斜乗客か否かの身体軸傾斜乗客判定手段による判定結果に応じて、踏段11の走行速度を第1速度V1または第2速度V2に加速して乗客を降り口16まで搬送させる踏段速度指令値を生成する。
【0073】
また、速度信号生成手段51は、踏段11が、定格速度Vnで走行していた場合、歩行速度判定手段33が、乗客が遅速乗客であると判定したと判断すると、言い換えれば、乗客が踏段11への乗車を健常者と同じに行うのが難しい状態にあると判定したと判断すると、以下の踏段速度指令値を生成する。即ち、速度信号生成手段51は、乗客が身体軸傾斜乗客か否かの身体軸傾斜乗客判定手段による判定結果に応じて、乗客を乗り口15から降り口16まで運搬するまでの間、踏段11の速度を定格速度より小さな第1速度V1または第2速度V2とする踏段速度指令値を生成する。
【0074】
以下、エスカレータ1の踏段11の速度制御動作について説明する。
図8はこの発明の一実施の形態に係るエスカレータの動作を説明するフロー図である。
なお、図7では、説明の便宜上、ステップ101〜ステップ110をS101〜S110と記載する。
【0075】
図8において、ステップ101〜ステップ104の動作は、歩行速度判定手段33が行う。即ち、ステップ101で、速度演算部35は、移動体検出手段23が移動体(乗客)を検出したか否かを判断する。
ステップ101で、速度演算部35は、乗客が検出されていないと判断すると、ステップ101を繰り返す。
ステップ101で、速度演算部35は、移動体検出手段23が乗客を検出したと判断すると、画像処理部34から入力される領域内画像データと移動体検出手段23の出力に基づいて、乗客の歩行速度を演算し、速度判断部36は、乗客が遅速乗客か否かを判断する(ステップ102)。
ステップ102で、速度判断部36が、乗客が遅速乗客であると判断すると、遅速乗客フラグをONとし(ステップ103)、ステップ105に進む。ステップ102で、速度判断部36が、乗客が遅速乗客でないと判断すると、遅速乗客フラグをOFFとし(ステップ104)、ステップ105に進む。
【0076】
ステップ105〜ステップ107の動作は、身体軸傾斜乗客判定手段37により行われる。
即ち、ステップ105で、身体軸傾斜判断部38は、画像処理部34から入力される領域内画像データに基づいて、乗客が身体軸傾斜乗客か否かを判断する。
ステップ105で、身体軸傾斜判断部38は、乗客が身体軸傾斜乗客であると判断すると、傾斜歩行乗客フラグをONとし(ステップ106)、ステップ108に進む。
ステップ105で、身体軸傾斜判断部は、乗客が身体軸傾斜乗客でないと判断すると、傾斜歩行乗客フラグをOFFとし(ステップ107)、ステップ108に進む。
【0077】
ステップ108で、速度信号生成手段51は、現在の踏段11の走行速度を、踏段速度指令値を参照して取得する。
ステップ109で、速度信号生成手段51は、遅速乗客フラグ及び傾斜歩行乗客フラグのON/OFFと踏段11の走行速度に基づいて、踏段速度指令値を生成して出力する。
【0078】
ステップ110で、エスカレータ制御盤13が、生成された踏段速度指令値に応じて電動機5の駆動を制御し、踏段速度指令値に応じた走行速度で踏段11を走行させる。
【0079】
次いで、表示装置30の表示面31aへの案内情報の表示制御について図9を参照しつつ説明する。
図9はこの発明の一実施の形態に係るエスカレータの案内情報の表示制御を説明するフロー図である。
【0080】
ステップ201で、画像判断部39は、領域内画像データから、撮影領域内に移動体が入り込んだか否かを以下のように判断する。画像判断部39を構成するROMには、移動体が入り込んでいない撮影領域内データである領域内比較用データが格納されており、画像判断部39は、領域内比較用画像データと現在の領域内画像データとを比較し、領域内比較用画像データと現在の領域内画像データが異なるときに、撮影領域内に移動体が入り込んだものと判断する。
【0081】
ステップ201で、画像判断部39は、画像処理部34の出力する画像データから、撮影領域内に移動体が入り込んでいないと判断すると、ステップ201を繰り返す。
ステップ201で、画像判断部39は、画像処理部34の出力する画像データから、撮影領域内に移動体が入り込んだと判断すると、移動体の特徴点を抽出する(ステップ202)。
移動体の特徴点の抽出は、領域内比較用画像データと現在の領域内画像データとの差から得た画像データの輪郭を基に行われる。例えば、ベビーカーは、どの種類でも、タイヤや子供を乗せる収納部などで構成され、おおよそ外形は一緒である。この特徴点をベビーカーの認識用に関連づけして予め画像判断部39に格納しておけば、移動体が、ベビーカー含むという特徴を有することを判断できる。
【0082】
ステップ203で、画像判断部39は、移動体に含まれる乗客が、踏段11への乗車を拒否すべき乗客か否かを判断する。つまり、画像判断部39は、移動体の画像を解析して移動体の中に踏段11への乗客の乗車を拒否すべき条件があるか否かを判断する。
例えば、移動体が、ベビーカーとともに移動する乗客である場合、ベビーカーを踏段11に乗せたときの乗客の姿勢は、不安定となるため、画像判断部39は、移動体に含まれる乗客を、踏段11への乗車を拒否すべき乗客と判断する。
このほか、移動体が、所定以上大きな荷物とともに移動する乗客である場合、踏段11に乗った時の乗客の姿勢が不安定となる恐れがあるため、このような場合にも、画像判断部39は、乗客を踏段11への乗車を拒否すべき乗客と判断する。
【0083】
ステップ203で、画像判断部39は、踏段11に乗ろうとしている乗客を踏段11への乗車を拒否すべき乗客と判断すると、移動体に含まれる乗客の踏段11への乗車を拒否すべき条件に応じた案内情報を選択する(ステップ204)。例えば、乗客が、ベビーカーを利用していた場合には、「ベビーカーの乗車はご遠慮ください」の案内情報が選択される。ステップ204の後、ステップ215に進む。
【0084】
ステップ203で、画像判断部39は、乗客を踏段11への乗車を拒否すべき乗客ではないと判断すると、ステップ205に進む。
ステップ205〜ステップ207の制御は、ステップ102〜ステップ104の制御と同様である。
ステップ208で、速度判断部36は、移動体に含まれる乗客が、走り乗客か否かを判断する。
【0085】
ステップ208で、速度判断部36は、乗客を走り乗客でないと判断すると、走り乗客フラグをOFF(ステップ209)とし、乗客を走り乗客であると判断すると、走り乗客フラグをONとし(ステップ210)とする。
ステップ211〜ステップ213の制御は、ステップ105〜ステップ107の制御と同様である。
【0086】
ステップ214で、画像判断部39は、遅速乗客フラグ、走り乗客フラグ、及び傾斜歩行乗客フラグのON/OFFに基づいて、案内情報を選択する。画像判断部39は、遅速乗客フラグ、走り乗客フラグ、及び傾斜乗客フラグがすべてOFFである場合には、「手すりにおつかまりください」の案内情報を選択する。また、画像判断部39は、遅速乗客フラグ及び傾斜乗客フラグがOFFで走り乗客フラグがONの場合には、走り乗客が、踏段11を移動する恐れが高いと判断し、「踏段では移動しないでください」とする案内情報を選択する。
また、画像判断部39は、遅速乗客フラグ及び傾斜乗客フラグのいずれかがONで、走り乗客フラグがOFFであり、踏段11が定格速度で走行している場合には、「踏段の速度を遅くします。気をつけてお乗りください。」の案内情報を選択する。つまり、踏段11の速度を定格速度より遅い速度とすることを報知する案内情報を選択する。
【0087】
ステップ215で、表示制御部41は、画像判断部39が選択した案内情報に応じた案内情報を、表示部31の表示面31aに表示する。
【0088】
この発明によるマンコンベアによれば、乗り口15から降り口16に乗客を搬送する踏段11と、乗り口15の床の一部を構成するように設けられた表示面31aを有し、表示面31aへの案内情報の表示を切り替え可能な表示部31と、複数の異なる案内情報を格納する案内情報記憶部39aと、表示面31aから踏段11と反対側に離間する所定領域を撮影領域とする撮像手段20と、撮像手段20の出力から撮影領域の画像データを得る画像処理部34と、画像データから、撮影領域に入り込んだ乗客を含む移動体の特徴点を抽出し、移動体の特徴点に応じた案内情報を選択する画像判断部39と、画像判断部39が選択した案内情報を表示面31aに表示させる表示制御部41と、を備えている。
【0089】
従って、撮影領域に入り込んだ移動体の特徴点に応じた案内表示を、表示面に表示させることができる。移動体には乗客が含まれるので、表示面31aに表示する案内情報を、踏段11に乗車する乗客ごとに適した案内情報に切り替えることができる。
【0090】
また、画像判断部39は、画像データから抽出された移動体の特徴点に基づいて、移動体に含まれる乗客が踏段11への乗車を拒否すべき乗客であると判断すると、案内情報記憶部39aから踏段11への乗車の拒否を報知するための案内情報を選択している。
これにより、踏段11への乗車が好ましくない乗客に対して、未然に乗車を拒否できるので、他の乗客は安心してエスカレータ1を利用できる。
【0091】
また、エスカレータ1は、表示面31aの撮影領域側に設けられた移動体通過判断位置を通過する移動体を検出する移動体検出手段23と、移動体に含まれる乗客が、踏段11への乗車を健常者と同じに行うのが難しい状態にあるか否かを、画像データ、及び移動体検出手段23の出力に基づいて判定する歩行速度判定手段33と、歩行速度判定手段の判定結果に応じた踏段速度指令値を生成して出力する速度信号生成手段51と、踏段11の走行速度を踏段速度指令値に基づいて制御するエスカレータ制御盤13と、を備えている。そして、速度信号生成手段51は、乗客の歩行状態が、踏段11への乗車を健常者と同じに行うのが難しい状態にあると判断すると、乗客を乗り口15から降り口16まで運搬するまでの間、踏段11の速度を定格速度Vnより遅い速度とする踏段速度指令値を生成して出力する。さらに、画像判断部39は、案内情報記憶部39aから踏段11が定格速度より遅い速度で移動することを報知するための案内情報を選択して、表示制御部41が選択した案内情報を表示部31に表示する。
【0092】
従って、乗客の踏段11への乗車が容易となるとともに、乗客は、踏段11が低速で移動することを予め知ることができるので、踏段11の速度に対して違和感を覚えることもなくなり、老人や足の不自由な乗客でも、快適にエスカレータ1を利用できる。
【0093】
なお、この実施の形態では、歩行状況判定手段は、歩行速度判定手段33であるものとして説明したが、歩行状況判定手段を歩行速度判定手段33と身体軸傾斜乗客判定手段37とで構成し、速度信号生成手段51は、遅速乗客フラグ及び傾斜歩行乗客フラグがONとなったときに、乗客を乗り口15から降り口16まで運搬するまでの間、踏段11の速度を定格速度より遅い速度とする踏段速度指令値を生成して出力するなどしてもよい。
【0094】
また、乗客が踏段11に乗って降り口16に到達した後、新たな乗客が検出されない場合には、踏段11の走行が停止されるように、速度信号生成手段51が、踏段速度指令値を生成するものとして説明したが、踏段速度指令値は、踏段11を停止させるものに限定されず、常時踏段11が走行される値に生成してもよい。この場合でも、遅速乗客が踏段11に乗るときには、走行速度が定格速度より小さくなるように、踏段速度指令値を生成すればよい。
【0095】
また、マンコンベアは、エスカレータ1であるものとして説明したが、マンコンベアとしての動く歩道にも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0096】
1 エスカレータ(マンコンベア)、11 踏段、13 エスカレータ制御盤(マンコンベア制御盤)、15 乗り口、15a 床、16 降り口、20 撮像手段、31 表示部、31a 表示面、33 歩行速度判定手段(歩行状況判定手段)、34 画像処理部、39 画像判断部、39a 案内情報記憶部、41 表示制御部、51 速度信号生成手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り口から降り口に乗客を搬送する踏段と、
上記乗り口の床の一部を構成するように設けられた表示面を有し、上記表示面への案内情報の表示を切り替え可能な表示部と、
複数の異なる案内情報を記憶する案内情報記憶部と、
上記表示面から上記踏段と反対側に離間する所定領域を撮影領域とする撮像手段と、
上記撮像手段の出力から上記撮影領域の画像データを得る画像処理部と、
上記画像データから、上記撮影領域に入り込んだ上記乗客を含む移動体の特徴点を抽出し、上記移動体の特徴点に応じた上記案内情報を選択する画像判断部と、
上記表示部を制御して上記画像判断部が選択した上記案内情報を上記表示面に表示させる表示制御部と、
を備えることを特徴とするマンコンベア。
【請求項2】
上記画像判断部は、上記画像データから抽出された上記移動体の特徴点に基づいて、上記移動体に含まれる乗客が上記踏段への乗車を拒否すべき乗客であると判断すると、上記案内情報記憶部から上記踏段への乗車の拒否を報知するための案内情報を選択することを特徴とする請求項1に記載のマンコンベア。
【請求項3】
上記表示面の上記撮影領域側に設けられた移動体通過判断位置を通過する上記移動体を検出する移動体検出手段と、
上記移動体に含まれる乗客の歩行状態が、上記踏段への乗車を健常者と同じに行うのが難しい状態にあるか否かを、上記画像データ、及び上記移動体検出手段の出力に基づいて判定する歩行状況判定手段と、
上記歩行状況判定手段の判定結果に応じた踏段速度指令値を生成して出力する速度信号生成手段と、
上記踏段の走行速度を上記踏段速度指令値に基づいて制御するマンコンベア制御盤と、
を備え、
上記歩行状況判定手段が、上記乗客の歩行状態が、上記踏段への乗車を健常者と同じに行うのが難しい状態にあると判断した場合、上記速度信号生成手段は、上記乗客を上記乗り口から上記降り口まで運搬するまでの間、上記踏段の速度を定格速度より遅い速度とする上記踏段速度指令値を生成して出力し、上記画像判断部は、上記案内情報記憶部から上記踏段が定格速度より遅い速度で移動することを報知するための上記案内情報を選択することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマンコンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−6669(P2012−6669A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141403(P2010−141403)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(591036457)三菱電機エンジニアリング株式会社 (419)
【Fターム(参考)】