説明

マンデロニトリル類の製造方法

【課題】ベンズアルデヒド類(1)を良好な転化率で反応させて、マンデロニトリル類(2)を良好な収率で製造すること。
【解決手段】有機溶媒中、有機塩基の存在下、オルト位に所定の置換基を有するベンズアルデヒド類(1)を、該アルデヒド類(1)に対して1.2〜5.0モルの青酸と反応させるマンデロニトリル類(2)の製造方法。ベンズアルデヒド類(1)としては2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドが好ましい。また、有機塩基としてはアミン類が好ましく、有機溶媒としては芳香族炭化水素が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンズアルデヒド類を青酸と反応させてマンデロニトリル類を製造する方法に関する。マンデロニトリル類は、例えば、医農薬の原料として有用である。
【背景技術】
【0002】
ベンズアルデヒド類を青酸と反応させてマンデロニトリル類を製造する方法として、例えば、特開平7−33727号公報(特許文献1)には、水溶媒中、無機塩基であるアルカリ金属塩の存在下、メタ位又はパラ位に置換基を有するベンズアルデヒド類を、該アルデヒド類1モルに対して1〜1.1モルの青酸と反応させる方法が記載されている。また、特開2005−232105号公報(特許文献2)には、水溶媒中、無機塩基である炭酸ナトリウムや酢酸ナトリウムの存在下、オルトクロロベンズアルデヒドやメタクロロベンズアルデヒドを、該アルデヒド類1モルに対して約1.1モルの青酸と反応させる方法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−33727号公報
【特許文献2】特開2005−232105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、オルト位に塩素原子以外の所定の置換基を有するベンズアルデヒド類を、水溶媒中、無機塩基の存在下で青酸と反応させる場合、上記従来法と同様に青酸の使用量を該アルデヒド類1モルに対して1.0〜1.1モルにすると、該アルデヒド類の転化率が低くなり、マンデロニトリル類の収率は満足のできるものとはならなかった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記所定のベンズアルデヒド類を良好な転化率で反応させて、マンデロニトリル類を良好な収率で製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討の結果、有機溶媒中、有機塩基の存在下、上記所定のベンズアルデヒド類を、該アルデヒド類1モルに対して1.2〜5.0モルの青酸と反応させることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、有機溶媒中、有機塩基の存在下、下記式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Xは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいフェノキシ基、又は置換されていてもよいアミノ基を表す。Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいフェノキシ基、置換されていてもよいアミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を表す。mは0〜4の整数を表す。mが2〜4の整数を表す場合、Rは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0010】
で示される化合物〔以下、ベンズアルデヒド類(1)ということがある。〕を、該化合物1モルに対して1.2〜5.0モルの青酸と反応させることを特徴とする下記式(2)
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、X、R及びmはそれぞれ前記と同じ意味を表す。)
【0013】
で示される化合物〔以下、マンデロニトリル類(2)ということがある。〕の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ベンズアルデヒド類(1)を良好な転化率で反応させて、マンデロニトリル類(2)を良好な収率で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、有機溶媒中、有機塩基の存在下、オルト位に所定の置換基を有するベンズアルデヒド類(1)を、該アルデヒド類(1)に対して1.2〜5.0モルの青酸と反応させるマンデロニトリル類(2)の製造方法である。ベンズアルデヒド類(1)は、オルト位に所定の置換基を有するため反応性が低く、従来法のように、水溶媒中、無機塩基の存在下で、ベンズアルデヒド類(1)1モルに対して1.0〜1.1モル程度の青酸を使用して反応を行うと、十分な転化率が得られない。本発明では、有機溶媒中、有機塩基の存在下で、かかる反応性の低いベンズアルデヒド類(1)1モルに対して1.2〜5.0モルの青酸を使用して反応を行うことにより、転化率を向上させ、良好な収率でマンデロニトリル類(2)を製造するものである。
【0016】
ベンズアルデヒド類(1)のXにおいて、置換されていてもよいアルキル基は、通常その炭素数は1〜12程度であり、無置換のアルキル基であってもよく、ハロゲン原子や、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基等で置換されているアルキル基であってもよい。置換されていてもよいアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基の如き無置換のアルキル基や、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基の如きハロアルキル基、ヒドロキシメチル基、ニトロメチル基、アミノメチル基等が挙げられる。
【0017】
また、アルコキシ基で置換されているアルキル基の例としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、イソブトキシメチル基、s−ブトキシメチル基、t−ブトキシメチル基のほか、下記式(3)
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、Rは置換されていてもよいフェニル基を表す。)で示される基等が挙げられる。式(3)中、Rは置換されていてもよいフェニル基を表し、例えば、無置換のフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2−ニトロフェニル基、3−ニトロフェニル基、4−ニトロフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基等が挙げられる。
【0020】
ベンズアルデヒド類(1)のXにおいて、置換されていてもよいアルケニル基は、通常、その炭素数は2〜12程度であり、無置換のアルケニル基であってもよく、ハロゲン原子や、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基等で置換されているアルケニル基であってもよい。置換されていてもよいアルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−オクテニル基の如き無置換のアルケニル基や、3−ヒドロキシ−1−プロペニル基、3−ニトロ−1−プロペニル基、3−アミノ−1−プロペニル基、3−メトキシ−1−プロペニル基等が挙げられる。
【0021】
ベンズアルデヒド類(1)のXにおいて、置換されていてもよいアルキニル基は、通常、その炭素数は2〜12程度であり、無置換のアルキニル基であってもよく、ハロゲン原子や、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基等で置換されているアルキニル基であってもよい。置換されていてもよいアルキニル基の例としては、1−エチニル基、プロパルギル基、1−ブチニル基、1−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、1−オクチニル基の如き無置換のアルキニル基や、3−ヒドロキシ−1−プロピニル基、3−ニトロ−1−プロピニル基、3−アミノ−1−プロピニル基、3−メトキシ−1−プロピニル基等が挙げられる。
【0022】
ベンズアルデヒド類(1)のXにおいて、置換されていてもよいアルコキシ基は、通常、その炭素数は1〜12程度であり、無置換のアルコキシ基であってもよく、ハロゲン原子や、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基等で置換されているアルコキシ基であってもよい。置換されていてもよいアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、1−ヘキシルオキシ基、1−オクチルオキシ基の如き無置換のアルコキシ基や、トリフルオロメチルオキシ基、ヒドロキシメチルオキシ基、ニトロメチルオキシ基、アミノメチルオキシ基、メトキシメチルオキシ基等が挙げられる。
【0023】
ベンズアルデヒド類(1)のXにおいて、置換されていてもよいフェニル基は、例えば、前述したRと同様の置換基を挙げることができる。
【0024】
ベンズアルデヒド類(1)のXにおいて、置換されていてもよいフェノキシ基は、無置換のフェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2,3−ジメチルフェノキシ基、2,4−ジメチルフェノキシ基、2,5−ジメチルフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、2−クロロフェノキシ基、3−クロロフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、2−ヒドロキシフェノキシ基、3−ヒドロキシフェノキシ基、4−ヒドロキシフェノキシ基、2−ニトロフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、4−ニトロフェノキシ基、2−メトキシフェノキシ基、3−メトキシフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基等が挙げられる。
【0025】
ベンズアルデヒド類(1)のXにおいて、置換されていてもよいアミノ基は、無置換のアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基等が挙げられる。
【0026】
ベンズアルデヒド類(1)のRにおいて、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいフェノキシ基、置換されていてもよいアミノ基は、それぞれXと同様の置換基であることができ、前述した置換基と同様のものを例示することができる。
【0027】
本発明では、ベンズアルデヒド類(1)において、m=0である化合物が好ましく、また、Xが式(3)で示される化合物が好ましい。さらに、ベンズアルデヒド類(1)が、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド〔式(1)において、Xが2,5−ジメチルフェノキシメチル基であり、m=0である化合物〕であるのがより好ましい。
【0028】
本発明で使用する青酸は、ガス状であっても、液状であってもよい。また、青酸を有機溶媒に溶解してなる溶液を用いてもよい。青酸の使用量は、ベンズアルデヒド類(1)1モルに対して1.2〜5.0モルであり、好ましくは1.2〜3.0モルであり、より好ましくは1.2〜2.5モルである。前述したとおり、青酸の使用量が、ベンズアルデヒド類(1)1モルに対して1.0〜1.1モル程度であると、ベンズアルデヒド類(1)の転化率が低くなる。ベンズアルデヒド類(1)と青酸との反応は、理論的には1:1のモル比で起こるが、オルト位に所定の置換基を有する反応性の低いベンズアルデヒド類(1)を用いた場合には、反応時間を延長したり、反応温度を上げたりしても十分な転化率を得るのは困難であり、本発明で規定するように所定量の青酸が必要となる。尚、青酸の使用量が多すぎると、未反応の青酸がより多く残るため好ましくない。
【0029】
本発明では、ベンズアルデヒド類(1)と青酸とを有機塩基の存在下に反応させる。ここでいう有機塩基としては、ジエチルアミン、トリエチルアミンの如きアミン、ピリジン等が挙げられる。また、必要に応じてそれらの2種以上を用いることができる。中でも、トリエチルアミンが好ましい。有機塩基の使用量は、ベンズアルデヒド類(1)1モルに対して、通常0.001〜1モルであり、好ましくは0.005〜0.1モルである。
【0030】
ベンズアルデヒド類(1)と青酸との反応は有機溶媒中で行う。有機溶媒としては、水に不溶性なものが好ましく、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンのような芳香族炭化水素、n−へキサン、n−へプタンのような脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンのような脂環式炭化水素、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランのようなエーテル等が挙げられる。また、必要に応じてそれらの2種以上を用いることができる。中でも、芳香族炭化水素が好ましい。有機溶媒の使用量はベンズアルデヒド類(1)1重量部に対して、通常0.5〜10重量部、好ましくは1〜5重量部である。尚、本反応においては、反応系内の水分濃度は低いほうが好ましく、例えば、有機溶媒の飽和水分濃度より低い濃度であるのが好ましい。
【0031】
有機溶媒、有機塩基、ベンズアルデヒド類(1)及び青酸の混合方法としては、例えば、有機溶媒、有機塩基及びベンズアルデヒド類(1)の混合物に青酸を一括で加えるか又は滴下する方法が挙げられ、中でも青酸を滴下する方法が好ましい。青酸を滴下する場合、その時間は、通常0.5〜20時間、好ましくは1〜10時間である。
【0032】
反応温度は、通常−20〜50℃であり、好ましくは0〜30℃である。また、ベンズアルデヒド類(1)及び青酸の全量を混合した後、通常0.5〜20時間、好ましくは1〜10時間、保温攪拌して熟成する。
【0033】
かくしてマンデロニトリル類(2)を良好な収率で得ることができる。尚、必要に応じて、従来公知の手段により精製することができ、例えば、反応により得られる反応混合物に塩酸(塩化水素の水溶液)や硫酸水溶液等の酸性水を添加した後、油水分離し、得られる油層から溶媒等を除去することにより精製することができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。尚、反応混合物中のベンズアルデヒド類(1)及びマンデロニトリル類(2)の量を液体クロマトグラフィーにより分析し、ベンズアルデヒド類(1)の転化率及び残存率、並びにマンデロニトリル類(2)の収率を算出した。
【0035】
実施例1
300mlフラスコに、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド〔式(1)において、Xが2,5−ジメチルフェノキシメチル基であり、m=0である化合物〕30.0g(0.12モル)、キシレン75.00g及びトリエチルアミン0.13g(0.0012モル)を入れて混合した後、攪拌しながら15℃に冷却した。次いで、該混合物に2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド1モルに対して1.2モルの青酸4.05g(0.15モル)を2時間で滴下した。滴下終了後、反応混合物を15℃で4時間攪拌した。この反応混合物を分析したところ、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドの転化率は96.6%、残存率は3.4%であり、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)マンデロニトリル〔式(2)において、Xが2,5−ジメチルフェノキシメチル基であり、m=0である化合物〕の収率は96.6%であった。
【0036】
実施例2
300mlフラスコに、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド30.00g(0.12モル)、キシレン75.00g及びトリエチルアミン0.13g(0.0012モル)を入れて混合した後、攪拌しながら15℃に冷却した。次いで、該混合物に2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド1モルに対して1.5モルの青酸5.06g(0.19モル)を2時間で滴下した。滴下終了後、反応混合物を15℃で4時間攪拌した。この反応混合物を分析したところ、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドの転化率は98.8%、残存率は1.2%であり、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)マンデロニトリルの収率は98.8%であった。
【0037】
実施例3
300mlフラスコに、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド50.00g(0.21モル)、キシレン125.00g及びトリエチルアミン0.21g(0.0021モル)を入れて混合した後、攪拌しながら15℃に冷却した。次いで、該混合物に2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド1モルに対して2.0モルの青酸11.25g(0.42モル)を2時間で滴下した。滴下終了後、反応混合物を15℃で4時間攪拌した。この反応混合物を分析したところ、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドの転化率は99.0%、残存率は1.0%であり、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)マンデロニトリルの収率は99.0%であった。
【0038】
実施例4
300mlフラスコに、2−エトキシベンズアルデヒド〔式(1)において、Xがエトキシ基であり、m=0である化合物〕10.00g(0.066モル)、キシレン25.00g及びトリエチルアミン0.07g(0.00066モル)を入れて混合した後、攪拌しながら15℃に冷却した。次いで、該混合物に2−エトキシベンズアルデヒド1モルに対して2.0モルの青酸3.60g(0.13モル)を2時間で滴下した。滴下終了後、反応混合物を15℃で1時間攪拌した。この反応混合物を分析したところ、2−エトキシベンズアルデヒドの転化率は90.1%、残存率は9.9%であり、2−エトキシマンデロニトリル〔式(2)において、Xがエトキシ基であり、m=0である化合物〕の収率は90.1%であった。
【0039】
実施例5
300mlフラスコに、2−ビフェニルアルデヒド〔式(1)において、Xがフェニル基であり、m=0である化合物〕3.00g(0.016モル)、キシレン7.50g及びトリエチルアミン0.017g(0.00016モル)を入れて混合した後、攪拌しながら15℃に冷却した。次いで、該混合物に2−ビフェニルアルデヒド1モルに対して2.0モルの青酸0.89g(0.033モル)を2時間で滴下した。滴下終了後、反応混合物を15℃で1時間攪拌した。この反応混合物を分析したところ、2−ビフェニルアルデヒドの転化率は95.6%、残存率は4.4%であり、2−フェニルマンデロニトリル〔式(2)において、Xがフェニル基であり、m=0である化合物〕の収率は95.6%であった。
【0040】
比較例1
300mlフラスコに、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド30.00g(0.12モル)、キシレン75.00g、酢酸ナトリウム0.30g及び水12.60gを入れて混合した。この時、水相のpHは6.4であった。攪拌しながら15℃に冷却した。次いで、該混合物に2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド1モルに対して1.0モルの青酸(3.37g、0.12モル)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、反応混合物を15℃で4時間攪拌した。この反応混合物を分析したところ、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドは全く反応していなかった〔2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドの転化率は0%、残存率は100%であった。〕。
【0041】
比較例2
300mlフラスコに、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド44.00g(0.16モル)、キシレン125.00g及びトリエチルアミン0.21g(0.0021モル)を入れて混合した後、攪拌しながら15℃に冷却した。次いで、該混合物に2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド1モルに対して1.0モルの青酸(4.36g、0.16モル)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、反応混合物を15℃で4時間攪拌した。この反応混合物を分析したところ、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドの転化率は65.8%、残存率は34.2%であり、2−(2、5−ジメチルフェノキシメチル)マンデロニトリルの収率は65.8%であった。
【0042】
比較例3
300mlフラスコに、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド30.00g(0.12モル)、キシレン75.00g及びトリエチルアミン0.13g(0.0012モル)を入れて混合した後、攪拌しながら20℃に冷却した。次いで、該混合物に2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド1モルに対して1.0モルの青酸(3.37g、0.12モル)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、反応混合物を20℃で4時間攪拌した。この反応混合物を分析したところ、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドの転化率は71.9%、残存率は28.1%であり、2−(2、5−ジメチルフェノキシメチル)マンデロニトリルの収率は71.9%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒中、有機塩基の存在下、下記式(1)
【化1】

(式中、Xは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいフェノキシ基、又は置換されていてもよいアミノ基を表す。Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいフェノキシ基、置換されていてもよいアミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を表す。mは0〜4の整数を表す。mが2〜4の整数を表す場合、Rは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
で示される化合物を、該化合物1モルに対して1.2〜5.0モルの青酸と反応させることを特徴とする下記式(2)
【化2】

(式中、X、R及びmはそれぞれ前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物の製造方法。
【請求項2】
式(1)において、mが0である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
式(1)において、Xが下記式(3)
【化3】

(式中、Rは置換されていてもよいフェニル基を表す。)
で表される請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
式(1)で示される化合物が、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドである請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
有機塩基がアミン類である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
有機溶媒が芳香族炭化水素である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。

【公開番号】特開2010−30982(P2010−30982A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12862(P2009−12862)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】