説明

マンホールと下水本管との連結構造

【課題】耐震性に優れ、且つ、締具の締付作業に手間がかからない、マンホールと下水本管との連結構造の提供。
【解決手段】マンホールと下水本管との連結構造Aは、立坑12内に埋設されるマンホール1と、横穴20内に推進敷設される下水本管2と、ステンレス筒3、ステンレス筒3の後部外周34に屈曲部44を固定し、下水本管2の端部21に等径部42を外嵌させたゴムブーツ4、等径部42に取り付けられる締具5、および円筒外周面に巻着されるスポンジ6を備えたジョイントJと、取付穴内壁とジョイント外周との間の隙間に充填されるモルタル7とを具備する。マンホール1内から、スパナやレンチ等の工具で締付ボルトを廻すことができるとともに、楽な姿勢で締付作業を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールと下水本管との連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のマンホール構造用止水可とう継手は、特許文献1の様に、立坑内から締付バンドを締め付けることにより、筒状可とう体を管の外周に圧着固定している。
【特許文献1】特許第3597789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1は、以下の課題を有する。
上記特許文献1のマンホール構造用止水可とう継手は、剛性の筒状体の外周がマンホール壁用充填剤によって固定される構造である。このため、マンホール壁用充填剤が固化すると、剛性の筒状体と取付穴とが剛接合し、地震等の外力が加わると、マンホール壁用充填剤に亀裂が入り易い。
【0004】
下水本管が大径である場合には、締付バンドの締付力が不足するとともに、締付バンドを締め付けるために締付ネジを多数回、廻す必要がある。
締付バンドの締付ネジは横を向いているので、締付ネジを廻すのに特殊な工具が必要であるとともに、無理な姿勢で締付作業を行う必要がある。
【0005】
本発明の第1の目的は、耐震性に優れ、且つ、取付穴内壁とジョイント外周との間の隙間に充填されるシール材に亀裂が入り難い、マンホールと下水本管との連結構造の提供にある。
本発明の第2の目的は、耐震性に優れ、且つ、締具の締付作業に手間がかからない、マンホールと下水本管との連結構造の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1について)
マンホールは、立坑内に埋設され、断面円形の下水本管を取り付けるための円形の取付穴を、側壁に有している。
下水本管は、取付穴へ連通する横穴内に推進敷設される。
【0007】
可とうジョイントは、立坑内壁に近い側を後側とし、外径が取付穴径より径小で、内径が本管外径より径大な剛性円筒と、この剛性円筒の後部外周に一端側を固定し、取付穴へ推進させた下水本管の端部に他端側を外嵌させた可とう性円筒体と、この可とう性円筒体の他端側を下水本管の端部にマンホール内から固定するための固定具と、剛性円筒の前部外周および後部外周を除く管外周面に巻着される柔軟材とを備える。
シール材は、取付穴内壁とジョイント外周との間の隙間に充填される。
【0008】
マンホールと下水本管との連結は、以下の様に行う。
下水本管を推進させ、取付穴へ進入した下水本管の端部に、可とうジョイントをマンホール内から嵌め込む。
可とう性円筒体の他端側を下水本管の端部にマンホール内から固定具で固定する。
取付穴内壁とジョイント外周との間の隙間にシール材を充填する。
【0009】
マンホールと下水本管との連結構造は、以下の利点を有する。
剛性円筒の前部外周および後部外周を除く管外周面に柔軟材を巻着し、取付穴内壁とジョイント外周との間の隙間にシール材を充填している。このため、シール材が固化すると、剛性円筒と取付穴とが軟接合し、地震等の外力が加わって、剛性円筒と取付穴とが相対変位しても、マンホール壁用充填剤に亀裂が入り難い。
【0010】
なお、剛性円筒の前部外周には柔軟材を巻着せず、剛性円筒の前部外周面を充填剤により取付穴内壁に固定している。このため、可とうジョイントと取付穴内壁との接合に充分な強度を確保でき、充分な水密性も維持できる。
【0011】
(請求項2について)
マンホールは、立坑内に埋設され、断面円形の下水本管を取り付けるための円形の取付穴を、側壁に有している。
下水本管は、取付穴へ連通する横穴内に推進敷設される。
【0012】
可とうジョイントは、立坑内壁に近い側を後側とし、外径が取付穴径より径小で、内径が本管外径より径大な剛性円筒と、この剛性円筒の後部外周に一端側を固定し、取付穴へ推進させた下水本管の端部に他端側を外嵌させた可とう性円筒体と、この可とう性円筒体の他端側外周に取り付けられる締具と、剛性円筒の前部外周および後部外周を除く管外周面に巻着される柔軟材とを備える。締具は、可とう性円筒体の他端側外周に外嵌される内側リングと、この内側リングに外嵌される外側リングと、この外側リングの複数の円周位置に形成したネジ穴へ螺合させた複数の締付ボルトとからなる。
シール材は、取付穴内壁とジョイント外周との間の隙間に充填される。
【0013】
マンホールと下水本管との連結は、以下の様に行う。
下水本管を推進させて取付穴へ進入させ下水本管の端部に、剛性円筒の前部外周および後部外周を除く管外周面に柔軟材を巻着した可とうジョイントをマンホール内から嵌め込む。外側リングの複数の円周位置に形成したネジ穴へ螺合させた複数の締付ボルトをマンホール内から締め付ける。これにより、内側リングが縮径し、可とう性円筒体の他端側が下水本管の端部に固定される。
取付穴内壁とジョイント外周との間の隙間にシール材を充填する。
【0014】
マンホールと下水本管との連結構造は、以下の利点を有する。
剛性円筒の前部外周および後部外周を除く管外周面に柔軟材を巻着し、取付穴内壁とジョイント外周との間の隙間にシール材を充填している。このため、シール材が固化すると、剛性円筒と取付穴とが軟接合し、地震等の外力が加わって、剛性円筒と取付穴とが相対変位しても、マンホール壁用充填剤に亀裂が入り難い。
【0015】
なお、剛性円筒の前部外周には柔軟材を巻着せず、剛性円筒の前部外周面を充填剤により取付穴内壁に固定している。このため、可とうジョイントと取付穴内壁との接合に充分な強度を確保でき、充分な水密性も維持できる。
【0016】
マンホールと下水本管との連結構造は、可とう性円筒体の他端側外周に外嵌した内側リングに、複数の円周位置に形成した各ネジ穴へ締付ボルトを螺合させた外側リングを外嵌した締具を用い、各締付ボルトをマンホール内から締め付けて内側リングを縮径させて、可とう性円筒体の他端側を下水本管の端部に固定する構成である。
【0017】
このため、下水本管が大径であっても、締具の締付力が確保できるとともに、同一の締付ネジを多数回、廻す必要がない。また、比較的弱い締付トルクで内側リングを縮径させることができる。
マンホール内から、普通の工具(スパナやレンチ等)で締付ボルトを廻すことができるとともに、楽な姿勢で締付作業を行うことができる。
【0018】
(請求項3について)
可とう性円筒体は、外周に凹溝が形成されるとともに取付穴へ推進した下水本管の端部を外嵌する径小の等径部と、立坑内壁に近づくほど径大になる径拡部と、立坑内壁から遠ざかる方向に折り返される屈曲部とを順に有する。
立坑内壁から遠ざかる方向に折り返される屈曲部を有するので、締付バンド等を用いて、可とう性円筒体の屈曲部(一端側)を剛性円筒の後部外周へ容易に固定することができる。
【0019】
(請求項4について)
ジョイントを下水本管の端部に固定した時に、向き合う、内側リングの一方、他方側間に隙間が開いていると、隙間位置における、可とう性円筒体の他端側と下水本管の端部外周との間から、マンホール内に水が出入りし易くなる。
また、可とうジョイントを下水本管の端部に固定した時に、向き合う、内側リングの一方、他方側が重なっていると、重なり位置の可とう性円筒体が破損し易い。また、重なり位置で水密性が低下する。
【0020】
請求項4のマンホールと下水本管との連結構造において、締具の内側リングには、凸状部が一方側に成形され、凹状部が他方側に成形されているので、締付ボルトを締め付けて、可とうジョイントを下水本管の端部に固定すると、凸状部が凹状部へ嵌まる。
このため、向き合う、内側リングの一方、他方側間に隙間が生じたり、一方、他方側が重なったりしない。よって、水密性が確保できるとともに、可とう性円筒体の破損も防止できる。
【0021】
(請求項5について)
マンホールと下水本管との連結構造は、剛性円筒は、鉄系金属で形成されるとともに、銅プライマ処理が前部外周に施され、この前部外周の縁端を除いて、銅プライマ層の上面にブチルゴムを巻着している。
【0022】
銅プライマ層の上面にブチルゴムを巻着していない、剛性円筒の前部外周の縁端においては、外周面の銅プライマ層が充填剤を介して取付穴内壁に固定される。このため、可とうジョイントの剛性円筒前部と取付穴内壁との接合に充分な強度を維持できる。
また、銅プライマ層の上面にブチルゴムを巻着した、剛性円筒の前部外周の縁端においては、銅プライマ層がブチルゴムおよび充填剤を介して取付穴内壁に固定される。このため、可とうジョイントの剛性円筒前部において、充分な水密性を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
マンホールと下水本管との連結構造は、立坑内に埋設されるマンホールと、横穴内に推進敷設される下水本管と、ステンレス円筒、このステンレス円筒の後部外周に一端側を固定し、下水本管の端部に他端側を外嵌させたゴムブーツ、このゴムブーツの他端側外周に取り付けられる締具、および円筒外周面に巻着されるスポンジを備えたジョイントと、取付穴内壁とジョイント外周との間の隙間に充填されるモルタルとを具備する。
【0024】
締具は、ゴムブーツの他端側外周に外嵌される内側リングと、この内側リングに外嵌される外側リングと、この外側リングの複数の円周位置に形成したネジ穴へ螺合させた複数の締付ボルトとからなる。これら締付ボルトをマンホール内から締め付ければ、内側リングが縮径し、ゴムブーツの他端側が下水本管の端部に固定される。
【0025】
可とう性円筒体と下水本管との連結は、内側リングに外側リングを外嵌した締具を用い、各締付ボルトをマンホール内から締め付けて、可とう性円筒体の他端側を下水本管の端部に固定している。
このため、下水本管が大径であっても、締具の締付力が確保できるとともに、同一の締付ボルトを多数回、廻す必要がない。また、比較的弱い締付トルクで内側リングを縮径させることができる。
マンホール内から、普通の工具(スパナやレンチ等)で締付ボルトを廻すことができるとともに、楽な姿勢で締付作業を行うことができる。
【実施例1】
【0026】
本発明の実施例1(請求項2〜5に対応)を図1〜図6に基づいて説明する。
マンホールと下水本管との連結構造Aは、側壁10に円形の取付穴11を有するマンホール1と、端部21が取付穴11に臨む下水本管2と、ステンレス筒3(剛性円筒)、ゴムブーツ4(可とう性円筒体)、締具5、およびスポンジ6(柔軟材)を有するジョイントJ(可とうジョイント)と、取付穴内壁とジョイント外周との間の隙間sに充填されるモルタル7とを具備する。
【0027】
マンホール1は、コンクリート製であり、立坑12内に埋設される。
下水本管2(プラスチックやコンクリート製)は、断面円形であり、取付穴11へ連通する横穴20内に推進敷設される。
【0028】
ステンレス筒3は、外径が取付穴径より径小で、内径が本管外径より径大な円筒管である。なお、立坑内壁13に近い側を後側と規定する。このステンレス筒3は、前部外周31に銅プライマ処理が施され、前部外周31の縁端を除いて、銅プライマ層32の上面にブチルゴム33を巻着している。
また、ステンレス筒3の前部外周31および後部外周34を除く筒外周面にはスポンジ6が巻着されている。
【0029】
ゴムブーツ4(ゴム製)は、外周に凹溝41が形成されるとともに取付穴11へ推進した下水本管2の端部21を外嵌する径小の等径部42と、立坑内壁13に近づくほど径大になっていく径拡部43と、立坑内壁13から遠ざかる方向に反転して折り返される屈曲部44とを順に有する。
このゴムブーツ4は、屈曲部44(一端側)の凹溝45に配設した締付具46によりステンレス筒3の後部外周34に屈曲部44が固定され、等径部42(他端側)の凹溝41に配設した締具5により、下水本管2の端部21に等径部42が固定されている。
【0030】
締具5は、ゴムブーツ4の等径部42(他端側)の凹溝41に配設した内側リング51と、内側リング51に外嵌される外側リング52と、外側リング52の45°ずつずらした円周位置に形成したネジ穴53へ螺合させた八個の締付ボルト54とからなる。
【0031】
締具5の内側リング51には、図2の(a)に示す様に、凸状部55が一方側に成形され、凹状部56が他方側に成形されている。そして、締付ボルト54を締め付けて、内側リング51を縮径させていくと、凸状部55が凹状部56へ嵌まる{図2の(a)参照}とともに、ジョイントJのゴムブーツ4の等径部42が下水本管2の端部21に固定される。
【0032】
つぎに、ジョイントJを用いて、マンホールと下水本管とを耐震接続する施工方法について説明する。
先ずジョイントJを製造し、次にジョイントJをマンホール内から締具5で下水本管2の端部21に固定する。
【0033】
(1)ステンレス筒3の前部外周31に銅プライマ処理を施して銅プライマ層32を形成する{図3の(a)、(b)参照}。
(2)縁端を除く、銅プライマ層32の上面にブチルゴム33を巻着する{図3の(c)参照}。
(3)ブチルゴム33の表面を剥離紙35で覆う{図3の(d)参照}。
【0034】
(4)ステンレス筒3の前部外周31および後部外周34を除く管外周面にスポンジ6(柔軟材)を巻着する{図4の(a)参照}。
【0035】
(5)ステンレス筒3の後部側から筒内にゴムブーツ4を嵌め込み、屈曲部44の凹溝45に配設した締付具46を締め付けて、ステンレス筒3の後部外周34に屈曲部44を固定する{図4の(a)、(b)参照}。
【0036】
(6)図4の(b)の状態に組み付けたゴムブーツ4の、等径部42の凹溝41に、図5の(a)に示す様に締具5を配設してジョイントJとする。
【0037】
(7)横穴20内の下水本管2を、図5の(b)に示す様に推進させて端部21を取付穴11へ臨ませる。
(8)取付穴11に遊嵌されている下水本管2と取付穴壁との間隙へ、屈曲部44を先にしてマンホール1内からジョイントJを嵌め込む。つぎに、スパナやレンチ等の工具で、締付ボルト54を順に締め付けて行き、内側リング51を縮径させる{図5の(c)、図6の(a)参照}。
これにより、ジョイントJが下水本管2の端部21に固定されるとともに、内側リング51の凸状部55が凹状部56に嵌まる{図2の(a)参照}。
【0038】
(9)剥離紙35を剥がして、ブチルゴム33を露出させた状態にし、取付穴11の内壁とジョイントJの外周との間の隙間sにモルタル7を充填し、固化させる{図6の(a)、(b)参照}。
【0039】
本実施例のマンホールと下水本管との連結構造Aは、以下の利点を有する。
ステンレス筒3の前部外周31および後部外周34を除く管外周面にスポンジ6を巻着し、取付穴11の内壁とジョイントJの外周との間の隙間sにモルタル7を充填している。このため、モルタル7が固化すると、ステンレス筒3と取付穴11とが軟接合し、地震等の外力が加わって、ステンレス筒3と取付穴11とが相対変位しても、モルタル7に亀裂が入り難い。
【0040】
マンホールと下水本管との連結構造Aに用いるジョイントJのステンレス筒3の前部外周31には、銅プライマ処理が施され、この前部外周31の縁端を除いて、銅プライマ層32の上面にブチルゴム33を巻着している。
【0041】
銅プライマ層32の上面にブチルゴム33を巻着していない、ステンレス筒3の前部外周31の縁端においては、外周面の銅プライマ層32がモルタル7を介して取付穴11の内壁に固定される。このため、ジョイントJのステンレス筒3の前部と取付穴11の内壁との接合に充分な強度を維持できる。また、銅プライマ層32の上面にブチルゴム33を巻着した、ステンレス筒3の前部外周31の縁端においては、銅プライマ層32がブチルゴム33およびモルタル7を介して取付穴11の内壁に固定される。このため、ジョイントJのステンレス筒3の前部において、充分な水密性を確保できる。
【0042】
マンホールと下水本管との連結構造Aは、ゴムブーツ4の等径部42の凹溝41に配設した内側リング51に、45°ずつずらした円周位置に形成したネジ穴53へ螺合させた八個の締付ボルト54を螺合させた外側リング52を外嵌した締具5を用い、各締付ボルト54を、マンホール1内から、スパナやレンチ等の工具で締め付けて内側リング51を縮径させて、ゴムブーツ4の等径部42を下水本管2の端部21に固定する構成である。
【0043】
このため、下水本管2が大径であっても、締具5の締付力が確保できるとともに、同一の締付ボルト54を多数回、廻す必要がない。また、比較的弱いトルクで締付ボルト54を締め付けただけで、内側リングを充分、縮径させることができる。
マンホール1内から、普通の工具(スパナやレンチ等)で締付ボルト54を廻すことができるとともに、楽な姿勢で締付作業を行うことができる。なお、締付ボルト54を廻す際に、締具5と直角に工具を配するので作業し易い。一方、締具5の代わりにステンレスバンドを用いると、締め付ける際にステンレスバンドと平行に工具を配する必要があり使い勝手が悪い。
【0044】
締具5の内側リング51には、図2の(a)に示す様に、凸状部55が一方側に成形され、凹状部56が他方側に成形されている。そして、締付ボルト54を締め付けて、内側リング51を縮径させていくと、凸状部55が凹状部56へ嵌まる{図2の(a)参照}とともに、ジョイントJのゴムブーツ4の等径部42が下水本管2の端部21に固定される。このため、向き合う、内側リング51の一方、他方側間に隙間が生じたり、一方、他方側が重なったりしない。よって、水密性が確保できるとともに、ゴムブーツ4の破損も防止できる。
【実施例2】
【0045】
つぎに、本発明の実施例2(請求項1に対応)を図7、図8に基づいて説明する。
実施例2に係るマンホールと下水本管との連結構造Bは、側壁10に円形の取付穴11を有するマンホール1と、端部21が取付穴11に臨む下水本管2と、ステンレス筒3、ゴムブーツ4、円筒状スペーサー8(固定具)、およびスポンジ6を有するジョイントKと、取付穴内壁とジョイント外周との間の隙間sに充填されるモルタル7とを具備し、実施例1で用いた締具5を圧入式の円筒状スペーサー8に変更している。
【0046】
硬質の円筒状スペーサー8(ステンレス製)は、先広がりのテーパ状部81と、等径の等径部82とからなり、ゴムブーツ4の等径部42が、下水本管2の端部21の外面に圧着固定される様に、ハンマーhにより筒間隙間tに打ち込まれる。
【0047】
つぎに、ジョイントKを用いて、マンホールと下水本管とを耐震接続する施工方法について説明する。
(1)実施例1の(1)〜(6)に示す方法でジョイント本体HKを製造し、マンホール1の取付穴11へ下水本管2を推進させる。
【0048】
(2)取付穴11に推進させた下水本管2と取付穴壁との間隙rへ、屈曲部44を先にしてマンホール1内からジョイント本体HKを嵌め込む{図8の(a)、(b)参照}。
【0049】
(3)間隙へ嵌め込んだジョイント本体HKの、ステンレス筒3とゴムブーツ4の外側との間に形成される筒間隙間tへ、円筒状スペーサー8をハンマーhで打ち込む{図3の(b)参照}。円筒状スペーサー8の内方締付力により、ゴムブーツ4の等径部42が下水本管2の端部21の外面に圧着固定される{図8の(c)参照}。
【0050】
(4)剥離紙を剥がして、ブチルゴム33を露出させた状態にし、取付穴11の内壁とジョイントKの外周との間の隙間sにモルタル7を充填し、固化させる。
【0051】
本実施例のマンホールと下水本管との連結構造Bは、以下の利点を有する。
間隙rへジョイント本体HKを嵌め込んだ後に、マンホール1内から筒間隙間tに円筒状スペーサー8をハンマーhで打ち込んで、円筒状スペーサー8の内方締付力により、ゴムブーツ4の等径部42を下水本管2の端部21の外面に圧着固定する構成である。
このため、ジョイント本体HKの固定に手間がかからない。なお、取付穴11が小さい場合や、筒間隙間tが狭い場合や、下水本管2が細い場合でも円筒状スペーサー8を打ち込めるので、ジョイント本体HKを下水本管2へ容易に固定できる。
【0052】
マンホールと下水本管との連結構造Bは、ステンレス筒3の前部外周31および後部外周34を除く管外周面にスポンジ6を巻着し、取付穴11の内壁とジョイントJの外周との間の隙間sにモルタル7を充填している。
このため、モルタル7が固化すると、実施例1のマンホールと下水本管との連結構造Aと同様に、ステンレス筒3と取付穴11とが軟接合し、地震等の外力が加わって、ステンレス筒3と取付穴11とが相対変位しても、モルタル7に亀裂が入り難い。
【0053】
ジョイントKのステンレス筒3の前部外周31には、銅プライマ処理が施され、この前部外周31の縁端を除いて、銅プライマ層32の上面にブチルゴム33を巻着している。このため、実施例1のマンホールと下水本管との連結構造Aと同様に、ジョイントKのステンレス筒3の前部と取付穴11の内壁との接合に充分な強度を維持でき、且つ、充分な水密性を確保できる。
【0054】
本発明は、上記実施例以外に、つぎの実施態様を含む。
a.ゴムブーツ4の屈曲部44の凹溝45に配設する締付具46は、ワイヤー式の締め付けリングであっても良い。
b.上記実施例1、2では、ステンレス筒3の前部外周に、銅プライマ処理を施し、前部外周の縁端を除いて、銅プライマ層の上面にブチルゴムを巻着して、強度と水密性の向上を図っているが、必須条件ではない。
・ステンレス筒3の前部外周に銅プライマ処理を施さない構成でも良い。
・ステンレス筒3の前部外周に、銅プライマ処理を施すが、ブチルゴム33は巻着しない 構成でも良い。
c.上記実施例1、2において、各スポンジ6の外周面と、ゴムブーツ4の屈曲部44の外周面とを面一にしているが、面一でなくても良い。
d.内側リング51、外側リング52が大径である程、締付ボルト54の本数を増やすのが好ましい。
e.締具5を、ゴムブーツ4の等径部42と、下水本管2の端部21との固定以外に使用しても良い。例えば、締付具46の代わりに締具5を使用しても良い。
f.締付ボルト54の径を選ぶことにより、締付力を任意に増減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例1に係る、マンホールと下水本管との連結構造を説明するための断面図である。
【図2】(a)は締具の内側リングの端部の変位を説明するための説明図、(b)は締具の構造を説明するための説明図である。
【図3】(a)〜(d)はステンレス筒の前部外周の縁端において、銅プライマ層を形成し、銅プライマ層表面にブチルゴムを巻着し、ブチルゴムの上面に剥離紙を取り付ける手順を示す説明図である。
【図4】(a)はステンレス筒の後部側から筒内にゴムブーツを嵌め込むところを示す説明図であり、(b)は屈曲部の凹溝に配設した締付具を締め付けたところを示す説明図である。
【図5】(a)はゴムブーツの等径部の凹溝に締具を配設するところを示す説明図、(b)は横穴内の下水本管を推進させて端部を取付穴へ臨ませるところを示す説明図、(c)は下水本管と取付穴壁との間隙へ、屈曲部を先にしてマンホール内からジョイントを嵌め込むところを示す説明図である。
【図6】(a)は下水本管と取付穴壁との間隙へマンホール内から嵌め込んだジョイントの締付ボルトを工具で廻して、ジョイントを下水本管に固定したところを示す説明図である。(b)は隙間にモルタルを充填したところを示す説明図である。
【図7】実施例2に係る、マンホールと下水本管との連結構造を説明するための断面図である。
【図8】(a)は取付穴に推進させた下水本管と取付穴壁との間隙へ、屈曲部を先にしてマンホール内からジョイント本体を嵌め込むところを示す説明図であり、(b)は筒間隙間へ、円筒状スペーサーをハンマーで打ち込むところを示す説明図であり、(c)は円筒状スペーサーの打ち込みが完了したところを示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
A、B マンホールと下水本管との連結構造
J ジョイント(可とうジョイント)
1 マンホール
2 下水本管
3 ステンレス管(剛性円筒)
4 ゴムブーツ(可とう性円筒体)
5 締具
6 スポンジ(柔軟材)
7 モルタル(シール材)
8 円筒状スペーサー(固定具)
10 側壁
11 取付穴
12 立坑
13 立坑内壁
20 横穴
21 端部
32 銅プライマ層
33 ブチルゴム
42 等径部
43 径拡部
44 屈曲部
51 内側リング
52 外側リング
53 ネジ穴
54 締付ボルト
55 凸状部
56 凹状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁に円形の取付穴を有し、立坑内に埋設されるマンホールと、
前記取付穴へ連通する横穴内に推進敷設される断面円形の下水本管と、
立坑内壁に近い側を後側とし、外径が取付穴径より径小で、内径が本管外径より径大な剛性円筒と、該剛性円筒の後部外周に一端側を固定し、前記取付穴へ推進させた前記下水本管の端部に他端側を外嵌させた可とう性円筒体と、該可とう性円筒体の他端側を前記下水本管の前記端部にマンホール内から固定するための固定具と、前記剛性円筒の前部外周および前記後部外周を除く管外周面に巻着される柔軟材とを備えた可とうジョイントと、 取付穴内壁とジョイント外周との間の隙間に充填されるシール材とを具備するマンホールと下水本管との連結構造。
【請求項2】
側壁に円形の取付穴を有し、立坑内に埋設されるマンホールと、
前記取付穴へ連通する横穴内に推進敷設される断面円形の下水本管と、
立坑内壁に近い側を後側とし、外径が取付穴径より径小で、内径が本管外径より径大な剛性円筒と、該剛性円筒の後部外周に一端側を固定し、前記取付穴へ推進させた前記下水本管の端部に他端側を外嵌させた可とう性円筒体と、該可とう性円筒体の他端側外周に取り付けられる締具と、前記剛性円筒の前部外周および前記後部外周を除く管外周面に巻着される柔軟材とを備えた可とうジョイントと、
取付穴内壁とジョイント外周との間の隙間に充填されるシール材とを具備するマンホールと下水本管との連結構造であって、
前記締具は、前記可とう性円筒体の前記他端側外周に外嵌される内側リングと、該内側リングに外嵌される外側リングと、該外側リングの複数の円周位置に形成したネジ穴へ螺合させた複数の締付ボルトとからなり、
これら締付ボルトをマンホール内から締め付けて前記内側リングを縮径することにより、前記可とう性円筒体の他端側を前記下水本管の前記端部に固定することを特徴とするマンホールと下水本管との連結構造。
【請求項3】
前記可とう性円筒体は、
外周に凹溝が形成されるとともに前記取付穴へ推進した前記下水本管の端部を外嵌する径小の等径部と、
立坑内壁に近づくほど径大になる径拡部と、
立坑内壁から遠ざかる方向に折り返される屈曲部とを順に有することを特徴とする請求項2に記載のマンホールと下水本管との連結構造。
【請求項4】
前記締具の前記内側リングには、凸状部が一方側に成形され、凹状部が他方側に成形されており、
前記締付ボルトを締め付けて、前記可とうジョイントを前記下水本管の前記端部に固定すると、前記凸状部が前記凹状部へ嵌まることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のマンホールと下水本管との連結構造。
【請求項5】
前記剛性円筒は、鉄系金属で形成されるとともに、銅プライマ処理が前部外周に施され、該前部外周の縁端を除いて、銅プライマ層の上面にブチルゴムを巻着したことを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれかに記載のマンホールと下水本管との連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−315028(P2007−315028A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145609(P2006−145609)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【特許番号】特許第3955078号(P3955078)
【特許公報発行日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(305001009)サンリツ技研株式会社 (6)
【Fターム(参考)】