説明

マンホール用可撓継手及びその設置方法

【課題】低コストで、かつ、施工作業性が良好で長期間に亘って止水性を確保でき、しかも、可撓継手自体の損傷やマンホールの損傷も抑制することができるマンホール用可撓継手及びその設置方法を提供する。
【解決手段】マンホールとボックスカルバート20との接続部分に設置されるマンホール用可撓継手1は、固定板部30と、固定板部30に連なり、屈曲するように形成された可撓板部31と、可撓板部31に連なり、マンホールの側壁を構成するコンクリート内に埋設される埋設板部32と、可撓板部31が外力を受けないときに可撓板部31を所定形状で保持する保持板部3とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、下水道管渠や雨水幹線等を構築するマンホールと管路部材との接続部分に使用される可撓継手及びその設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、マンホールと管路部材との接続部分には両者の相対変位を許容しながら止水性を確保するための可撓継手が設置されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1の可撓継手は、蛇腹部を有するゴムバンドと、ステンレス鋼製のカラーとを備えており、カラーをマンホールの側壁に形成された貫通孔にコンクリートを用いて固定する一方、ゴムバンドの一端をカラーに、他端を管路部材の外周面に固定している。特許文献1では、例えば地震等によって管路部材が変位すると、ゴムバンドの蛇腹部が変形することによってその変位が許容される。
【0004】
特許文献2の可撓継手は、管路部材の外方に配設される鋼製管と、鋼製管と管路部材の外周面との間に配設されるゴムパッキンと、鋼製管に設けられてゴムパッキンを管路部材側へ押圧するためのボルトとを備えている。鋼製管はマンホールの側壁に形成された貫通孔にコンクリートを用いて固定されている。特許文献2では、管路部材が変位すると、ゴムパッキンが変形することによってその変位が許容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−332651号公報
【特許文献2】特開2009−114771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では鋼製カラーを用い、特許文献2では鋼製管を用いており、このような鋼製の部品は高価であるため、コスト高の要因となる。
【0007】
また、特許文献1では鋼製カラーをコンクリートによってマンホールに固定するようにしているが、鋼製カラー及びコンクリートはそれ自体が変形しにくいものであるため、マンホール等の微小な変形に追従することができず、長期間に亘って鋼製カラーとコンクリートとの界面の止水性を確保するのが困難であることが考えられる。このことは特許文献2の鋼製管をマンホールに固定する構造においても同様である。
【0008】
さらに、特許文献1では、ゴムバンドを管路部材に固定した後にマンホールの貫通孔に挿入する必要があるが、このとき、ゴムバンドが蛇腹部を有していて変形し易いため、正規の位置に保持するために、バックアップ材と呼ばれる位置決め部材を設けなければならず、施工作業が煩雑である。
【0009】
また、特許文献2では、鋼製管を管路部材に固定した後にマンホールの貫通孔に挿入する必要があるが、このとき、鋼製管が管路部材の外側へ大きく張り出した状態となっており、マンホールに当たって鋼製管自体が変形すること、ボルトが変形すること、及びマンホールを損傷させてしまうことが考えられる。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、低コストで、かつ、施工作業性が良好で長期間に亘って止水性を確保でき、しかも、可撓継手自体の損傷やマンホールの損傷も抑制することができるマンホール用可撓継手及びその設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、第1の発明は、マンホールの側壁に形成された貫通孔に管路部材の端部を挿入した状態で該マンホールと該管路部材とを接続する場合にその接続部分に設置されるマンホール用可撓継手において、止水性を有する可撓性部材を、上記管路部材を囲む環状に形成してなり、上記管路部材の外周面に固定される固定部と、上記固定部に連なり、上記管路部材の外周面から径方向に離れる方向へ延びるとともに屈曲するように形成された可撓部と、上記可撓部に連なり、上記マンホールの側壁を構成するコンクリート内に埋設される埋設部と、設置前に上記可撓部を所定形状で保持するとともに、設置後に上記マンホール及び上記管路部材の相対変位時に外力を受けた場合に該可撓部の変形を許容するように構成された保持部とを備えていることを特徴とするものである。
【0012】
この構成によれば、施工作業時には、可撓部が保持部により所定形状で保持されるので、従来例のようなバックアップ材を不要にしながら、形状が崩れてしまうのを抑制することが可能になる。
【0013】
また、管路部材の外側に突出しているのは可撓性部材からなる可撓部や埋設部であるので、これらがマンホールに当たったとしても撓むことによって変形するだけである。これにより、可撓部や埋設部、マンホールが損傷することはない。
【0014】
また、可撓性を有する埋設部をコンクリートに埋設することで、従来の鋼製部品に比べて界面の止水性が長期間に亘って確保される。
【0015】
施工後には、例えば管路部材がマンホールに対し変位した場合を想定すると、可撓継手の固定部と埋設部とが相対変位することになるが、このとき、外力を受けた保持部は可撓部の変形を許容するので、可撓部は管路部材の変位に追従するように変形する。従って、従来例のような鋼製カラーや鋼製管を不要にしながら、止水性と可撓性とを両立させることが可能になる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明において、上記埋設部は、上記管路部材の径方向外方へ延びるように形成され、該埋設部の先端部には、該埋設部の延びる方向と交差する方向へ突出する突起形状部が形成され、上記突起形状部の外面には、非加硫ブチルゴム製のシール材が設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
この構成によれば、埋設部の突起形状部がアンカーとして機能することになるので、埋設部に対してコンクリートから引き抜く方向の力が作用した際、埋設部がコンクリートから抜けるのが抑制される。さらに、突起形状部のシール材がコンクリートに密着することになるので、埋設部とコンクリートとの界面からの水漏れがより一層起こりにくくなる。
【0018】
第3の発明は、第1または2の発明において、上記固定部は、上記管路部材の外周面に沿って中心線方向、かつ、外部水圧が作用する方向に延びるように形成されていることを特徴とするものである。
【0019】
この構成によれば、固定部に対して外部から水圧が作用した際、固定部が管路部材の外周面に沿って中心線方向、かつ、外部水圧が作用する方向に延びているので、管路部材の外周面に押し付けられて密着するようになる。
【0020】
第4の発明は、マンホールの側壁に形成された貫通孔に管路部材の端部を挿入した状態で該マンホールと該管路部材とを接続する場合にその接続部分にマンホール用可撓継手を設置する設置方法において、止水性を有する可撓性部材を、上記管路部材を囲む環状に形成してなるマンホール用可撓継手を用意し、上記マンホール用可撓継手には、上記管路部材の外周面に固定される固定部と、上記固定部に連なり、上記管路部材の外周面から径方向に離れる方向へ延びるとともに径方向に屈曲するように形成された可撓部と、上記可撓部に連なり、上記マンホールの側壁を構成するコンクリート内に埋設される埋設部と、設置前の上記可撓部を所定形状で保持するとともに、設置後に上記マンホール及び上記管路部材の相対変位時に外力を受けた場合に該可撓部の変形を許容するように構成された保持部とを形成しておき、上記マンホール用可撓継手の固定部を上記管路部材の外周面に固定した後、上記管路部材及び上記マンホール用可撓継手を上記マンホールの貫通孔に挿入してから、上記埋設部が埋め込まれるように貫通孔内にコンクリートを供給して硬化させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
第1、4の発明では、管路部材の外周面に固定される固定部に連なる可撓部と、可撓部に連なり、マンホールの側壁を構成するコンクリートに埋設される埋設部と、可撓部を所定形状で保持する保持部とを設け、設置後の外力を受けた場合に可撓部の変形を許容させるようにしている。これにより、施工時のバックアップ材が不要になり、施工時の作業性を良好にできるとともに、施工時における可撓継手やマンホールの損傷を回避できる。さらに、鋼製カラー等も不要になるので、低コスト化を図ることができる。しかも、コンクリートと埋設部との界面の止水性を長期間に亘って確保することができる。
【0022】
第2の発明によれば、埋設部の先端部に突起形状部を形成したので、埋設部がコンクリート内から抜けるのを抑制することができ、さらに、突起形状部の外面に非加硫ブチルゴム製のシール材を設けたので、界面の止水性をより一層高めることができる。
【0023】
第3の発明によれば、固定部が管路部材の外周面に沿って中心線方向、かつ、外部水圧が作用する方向に延びているので、外部の水圧を利用して固定部を管路部材の外周面に押し付けることができ、止水性をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態にかかるマンホール用可撓継手が設置されたマンホールの断面構造を示す図である。
【図2】マンホール用可撓継手の断面斜視図である。
【図3】マンホールと管路部材との接続部分近傍を拡大して示す断面図である。
【図4】管路部材をマンホールに接続する手順を説明する図である。
【図5】クラック及び空隙が発生した場合の図1におけるa部拡大図である。
【図6】クラック及び空隙が発生した場合の図1におけるb部拡大図である。
【図7】管路部材が中心線方向に変位した場合の図3相当図である。
【図8】外部の水圧が作用した場合の図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0026】
図1は、本発明の実施形態にかかるマンホール用可撓継手1が設置されたマンホール10及びボックスカルバート(管路部材)20の断面構造を示すものである。マンホール10及びボックスカルバート20は、地中に埋設されており、マンホール10及びボックスカルバート20の接続部分に可撓継手1が設置されて止水効果を得るとともに、両者の相対変位を許容するようになっている。
【0027】
マンホール10は上下方向に延びるものであり、その下側は、水平断面が略矩形状となるように形成された矩形部10aである一方、上側は円筒状に形成された円筒部10bである。矩形部10aの側壁を貫通するようにボックスカルバート20が接続されている。
【0028】
マンホール10は、二次製品メーカーの工場で作製されたプレキャスト製品を施工現場まで搬送して組み立ててなる組立マンホールの場合と、施工現場で型枠を組み立てて生コンクリートを打設して作製する現場打ちマンホールの場合とがあり、本発明はいずれの場合であっても適用できる。これについては後述する。
【0029】
ボックスカルバート20は、角筒状に形成されており、中心線が水平に近い方向に延びる姿勢となるように配置されて複数のボックスカルバート20が接続されることによって略水平方向に延びる水路が形成される。ボックスカルバート20はプレキャスト製品を使用する。尚、図には示さないが、通常、水路には、マンホール10に向かって下る勾配が設定されており、この勾配を形成するようにボックスカルバート20が配置される。
【0030】
次に、可撓継手1の構造について説明する。可撓継手1は、止水性を有する可撓性部材をボックスカルバート20の外形状と略相似な矩形枠状に成形してなる環状部材、即ち、無端帯状部材である。可撓性部材としては、例えばゴム、熱可塑性エラストマー等が挙げられるが、これらに限られるものではなく、可撓性を有する各種材料を使用することができる。
【0031】
図2及び図3に示すように、可撓継手1は、ボックスカルバート20に固定される固定板部(固定部)30と、可撓継手1に可撓性を付与するための可撓板部(可撓部)31と、マンホール10の側壁に埋設される埋設板部(埋設部)32と、可撓板部31の形状を保持するための保持板部(保持部)33とを備えており、これら固定板部30、可撓板部31、埋設板部32及び保持板部33は、一体成形されている。
【0032】
固定板部30は、ボックスカルバート20の外周面に沿ってボックスカルバート20の中心線方向(図3の左右方向)に延びるとともに、ボックスカルバート20の周方向全周に亘って延びている。図2に示すように、固定板部30のボックスカルバート20側の面(裏面)30aには、可撓継手1の周方向全周に亘って延びる一対の止水用突条部30b,30bが固定板部30の幅方向に間隔をあけて形成されている。止水用突条部30b,30bは、固定板部30の裏面30aとボックスカルバート20の外周面との間に止水材を介在させる場合(後述する)には、省略してもよい。
【0033】
固定板部30には、複数のボルト挿通孔30cが周方向に互いに間隔をあけて貫通形成されている。このボルト挿通孔30cには、後述するがボックスカルバート20に固定板部30を締結固定するためのボルトB(図3に示す)が挿通するようになっている。
【0034】
可撓板部31は、固定板部30のマンホール内側の縁部に連なり、全体として屈曲している。具体的には、可撓板部31は固定板部30の縁部からマンホール内側へ延びながらボックスカルバート20の外周面から径方向に離れる方向へ湾曲しながら延び、その後、マンホール外側へ向かって湾曲しながら延びており、断面がマンホール外側に開放する略U字状をなしている。これにより、可撓板部31は、ボックスカルバート20の径方向両側への変形が可能になるとともに、中心線方向両側への変形が可能になる。この可撓板部31の肉厚は固定板部30と同じ程度に設定されている。
【0035】
埋設板部32は、可撓板部31の外端部に連なり、ボックスカルバート20の径方向外方へ突出するように延びるとともに、周方向全周に亘って延びている。埋設板部32の突出方向の寸法は、可撓板部31の径方向の寸法と同じ程度に設定されている。
【0036】
埋設板部32の先端部には、該埋設板部32の延びる方向と交差する両方向(厚み方向)へ突出する突起形状部32a,32aが形成されている。各突起形状部32aは、埋設板部32の本体側面に一体成形されており、突起形状部32aにおける埋設板部32の本体側面からの突出高さは埋設板部32の肉厚と略同程度に設定されている。
【0037】
突起形状部32a,32aの外面には、非加硫ブチルゴム製のシール材34が層状に設けられている。このシール材34は、一方の突起形状部32aの外面から他方の突起形状部32aの外面に達するように延びており、両突起形状部32a,32aの外面が1枚のシール材34により覆われている。
【0038】
シール材34は、ブチル再生ゴムを含んだ従来周知の非加硫型粘着性塑性体であり、生コンクリートの硬化反応が進行するのに従って生コンクリートと化学的結合するという接着性を有している。この化学的結合については、セメント中に含まれる金属酸化物(例えばCaO、SiO、Al、Fe)が生コンクリート中の水の存在下で金属水酸化物に変わり、この金属水酸化物が、再生ブチルゴム粒子の活性基(例えばカルボキシル基及びヒドロペルオキシド基)とイオン反応を起こすことによるものと考えられている。シール材34は、ブチル再生ゴムの他、充填材及び粘着材を含んでいる。
【0039】
また、埋設板部32の本体の肉厚は、固定板部30や可撓板部31の肉厚と略同程度に設定されている。
【0040】
保持板部33は、可撓板部31における固定板部30側の端部から可撓板部31における埋設板部32側の端部に亘って延びており、可撓板部31の両端部が保持板部33によって連結された状態となっている。この保持板部33と可撓板部31とによって閉断面状の中空部Rが構成されている。
【0041】
保持板部33は、可撓板部31が設置前において重力以外の外力を受けないときに、可撓板部31の形状が上記した略U字状の形状(所定形状)のままとなるように保持するためのものであり、例えば何らかの部材が埋設板部32や可撓板部13に当たった場合や、後述する設置後にマンホール10及びボックスカルバート20の相対変位時に引張力が作用した場合のように重力以外の外力を受けた場合には可撓板部31の変形を許容するように構成されている。これは、保持板部33の肉厚や形状設定によって実現できる。本実施形態では、保持板部33の肉厚は、固定板部30や可撓板部31等の肉厚よりも薄く設定されており、例えば、固定板部30の1/3程度の肉厚である。
【0042】
保持板部33における可撓板部31と反対側の側面には、周方向全周に亘って延びる凹条部33aが形成されている。この凹条部33aの形成によって保持板部33に脆弱部が形成されることになる。
【0043】
次に、上記のように構成された可撓継手1の設置方法について説明する。まず、マンホール10が組立マンホールである場合について説明する。
【0044】
図4(a)に示すように、ボックスカルバート20の端部に可撓継手1を取り付ける。この場合、ボックスカルバート20の端部の外側には、複数のインサート材40を周方向に間隔をあけて埋め込む。このインサート材40は、ボルトBがねじ込まれて螺合するものである。
【0045】
その後、可撓継手1の中にボックスカルバート20の端部を挿入する。このとき、固定板部30がボックスカルバート20の外周面に摺接していく。そして、固定板部30のボルト挿通孔30cをインサート材40と一致させる。
【0046】
しかる後、押さえ板41を固定板部30の外面に重ねる。押さえ板41は、可撓継手1の全周に亘って設けておく。押さえ板41には、ボルト挿通孔30cと一致する孔部(図示せず)が形成されている。
【0047】
次いで、ボルトBを、押さえ板41の孔部、固定板部30のボルト挿通孔30cに挿通してからインサート材40に螺合させる。これにより、固定板部30の全周がボックスカルバート20に固定される。
【0048】
尚、固定板部30の裏面30aとボックスカルバート20の外周面との間には、非加硫ブチルゴム系シーラー等の止水材を介在させておくのが好ましい。
【0049】
一方、マンホール10の側壁には、可撓継手1が固定された状態のボックスカルバート20の挿入が可能な大きさの貫通孔43を形成しておく。貫通孔43の形状は矩形状であり、大きさは、可撓継手1の外形よりも大きく設定しておき、可撓継手1の外周部との間に所定の隙間が形成されるようにしておく。
【0050】
貫通孔43を形成した後、図4(b)に示すように可撓継手1が固定された状態のボックスカルバート20を貫通孔43に挿入していく。このとき、可撓継手1がボックスカルバート20の外周面に固定されているので、可撓板部31や埋設板部32がボックスカルバート20の外周面から突出した状態になっており、これら可撓板部31や埋設板部32が貫通孔43の周縁部に当たることがある。可撓板部31や埋設板部32が貫通孔43の周縁部に当たると、これらが可撓性部材で構成されているので変形するだけで済み、可撓板部31や埋設板部32の損傷を抑制できるとともに、マンホール10の損傷も抑制できる。
【0051】
ボックスカルバート20の挿入量は、ボックスカルバート20のマンホール内側の端面20aが、マンホール10の内面10dと略同一面上に位置するまでとする。ボックスカルバート20はこの状態で保持しておく。
【0052】
ボックスカルバート20の挿入が完了したら、押さえ板41及びボルトBを保護するためのスポンジ等からなるクッション材45(図3、図4(c)に示す)を、押さえ板41及びボルトBを覆うように取り付ける。
【0053】
クッション材45の取り付け後、図4(b)に仮想線で示すように、型枠Dを設置してマンホール10の貫通孔43とボックスカルバート20の外周面との間に生コンクリートを打設するための空間を区画形成する。
【0054】
また、この時に、貫通孔43と後述する生コンクリートを打設してマンホール10の側壁の一部となるコンクリート打設部53との界面の止水性を向上させるために、図4(b)にのみ示すように貫通孔43の周りに水膨張系のシーリング材Sを設置しておいても良い。
【0055】
また、可撓板部31が保持板部33により所定形状で保持されるので、従来例のようなバックアップ材を不要にしながら、可撓継手1の形状が崩れてしまうのを抑制することが可能になる。
【0056】
その後、生コンクリートを打設する。このとき、保持板部33を設けていることで中空部Rにコンクリートが浸入するのを防止することができる。
【0057】
生コンクリートを硬化させると、マンホール10の側壁の一部となるコンクリート打設部53が得られ、可撓継手1の埋設板部32がコンクリート打設部53に埋設された状態となる。コンクリートが硬化する際には、シール材34がコンクリートに接着されるので、界面において高い止水性が得られる。
【0058】
コンクリートの硬化後、型枠Dを外し、図3に示すように、ボックスカルバート20とコンクリート打設部53との間のマンホール内側にバックアップ材50を挿入し、さらにコーキング51を塗布する。
【0059】
次に、上記可撓継手1の作用について説明する。
【0060】
通常時、固定板部30がボックスカルバート20の外周面に固定されていることで、固定板部30とボックスカルバート20の外周面との間の止水性が確保されるとともに、埋設板部32がコンクリート打設部53に埋設されていることで、埋設板部32とマンホール10の側壁との間の止水性が確保される。特に、変形が容易な可撓性部材で埋設板部32を形成しているので、コンクリート打設部53が多少変形したり変位しても、それに埋設板部32が追従して長期間に亘る止水性が得られる。また、シール材34がコンクリート打設部53に接着しているので、より一層高い止水性が得られることになる。
【0061】
また、本実施形態では、図5及び図6に示すようにコンクリート打設部53にクラックが発生しても止水性を確保できる。すなわち、生コンクリートが打設され硬化していく過程において、ブリーディング(コンクリート打設後に砂やセメントが沈み、水が表面に上がる現象)を伴うコンクリートの沈下が発生し、生コンクリート中にある物の下層部に空隙ができやすい。空隙が発生すると、その空隙が水の通り道となり、漏水の原因となる場合がある。しかし、本実施形態のシール材34は突起形状部32aを覆うように取り付けられているため、突起形状部32aがその周囲のどのような方向であってもいずれかの部分がシール材34を介してコンクリートと接着することになり、空隙が発生した場合においても高い止水性が得られる。
【0062】
また、コンクリート打設部53に埋め込まれる埋設部32が断面欠損となり、コンクリート打設部53にクラックが発生した場合においてもシール材34が突起形状部32aを覆うように取り付けられているため、浸入してくる水をシール材34の部分で止めることができる。
【0063】
また、図7に示すように、例えば地震等によってボックスカルバート20がマンホール10に対しボックスカルバート20の中心線方向(マンホール内外方向)に変位した場合を想定すると、固定板部30と埋設板部32とが互いにボックスカルバート20の中心線方向反対側に引っ張られることになる。これにより外力を受けた保持板部33は、変位量が大きい場合には凹条部33aの形成箇所に応力が集中し凹条部33aを起点として破断し、可撓板部31の変形を許容する。これにより、止水性を確保したまま変位が許容されることになる。
【0064】
尚、凹条部33aは省略してもよいし、凹条部33aの代わりに、応力が集中する形状の応力集中部を設けてもよい。
【0065】
また、変位量が小さい場合には、保持板部33は破断しないが、変形することによって可撓板部31の変形を許容する。
【0066】
変位時、埋設板部32にはコンクリート打設部53から引き抜く方向に力が作用することになるが、埋設板部32の突起形状部32a,32aがアンカーとして機能することになるので、埋設板部32がコンクリート打設部53から抜けてしまうのを回避できる。さらに、シール材34がコンクリート打設部53に接着していることによっても埋設板部32が抜け難くなる。
【0067】
尚、ボックスカルバート20が、その中心線が傾くように変位した場合も、可撓板部31の変形が許容されて止水性を確保したままにすることができる。
【0068】
図7のようにボックスカルバート20が変位すると、固定板部30のマンホール内側がボックスカルバート20の外周面から離れる方向に引っ張られる。このとき、固定板部30は幅方向中間部がボルトBにより押さえ板41を介して固定されているので、押さえ板41は、ボルトBよりもマンホール内側の部分がボックスカルバート20の外周面から離れる方向(矢印X方向)へ引っ張られる。すると、ボルトBを支点として、その反力が、押さえ板41のボルトBよりもマンホール外側の部分をボックスカルバート20の外周面に圧接する方向(矢印Y方向)へ押し付けるように作用する。これにより、固定板部30のマンホール外側部分がボックスカルバート20の外周面に圧接することになるので、通常時(図3に示す)に比べて止水性が向上する。
【0069】
また、図8に示すように、マンホール外側において地下水等による水圧(外部水圧)が矢印Wで示すように押さえ板41及び固定板部30に作用することになる。この水圧によって固定板部30がボックスカルバート20の外周面に圧接することになるので高い止水性が得られる。尚、図7及び図8ではクッション材45等を省略している。
【0070】
以上説明したように、この実施形態によれば、保持板部33によって可撓板部31の形状を保持するようにしたので、施工時の作業性を良好にできる。また、可撓板部31や埋設板部32が可撓性部材で構成されていることから、施工時には可撓継手1やマンホールの損傷を回避できる。さらに、従来例の鋼製カラー等を用いることなく、止水性を確保できるので低コスト化を図ることができる。しかも、コンクリート打設部53と埋設板部32との界面の止水性を長期間に亘って確保することができる。
【0071】
また、埋設板部32の先端部に突起形状部32a,32aを形成したので、埋設板部32がコンクリート打設部53から抜けるのを抑制することができ、さらに、突起形状部32a,32aの外面に非加硫ブチルゴム製のシール材34を設けたので、界面の止水性をより一層高めることができる。
【0072】
また、固定板部30がボックスカルバート20の外周面に沿って中心線方向に延びているので、外部の水圧を利用して固定板部30をボックスカルバート20の外周面に押し付けることができ、止水性をより一層高めることができる。
【0073】
尚、上記実施形態では、組立マンホール10にボックスカルバート20を接続する場合について説明したが、上述したように現場打ちマンホールにも適用することができる。現場打ちマンホールの場合には、マンホールの側壁に貫通孔を予め設けるようにしてもよいし、可撓継手1が固定されたボックスカルバート20を先行して現場に設置し、その後、マンホール用の型枠を設置してコンクリートを打設するようにしてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、可撓継手1の全体を同一材料で構成したが、例えば、保持板部33のみ他の部分に比べて引き裂き強度の低い材料で構成してもよい。このようにした場合、凹条部33aを省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上説明したように、本発明にかかるマンホール用可撓継手及びその設置方法は、例えば地震等による不等変位が発生した場合でも変位を吸収して止水性を確保し、下水や雨水の流下機能を損なうことがないので、例えば震災時においても機能の継続が必要とされる下水道管渠や雨水幹線等に使用されることが望ましい。
【符号の説明】
【0076】
1 マンホール用可撓継手
10 マンホール
20 ボックスカルバート(管路部材)
30 固定板部(固定部)
30c ボルト挿通孔
31 可撓板部(可撓部)
32 埋設板部(埋設部)
32a 突起形状部
33 保持板部(保持部)
33a 凹条部
34 シール材
41 押さえ板
43 貫通孔
53 コンクリート打設部
B ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホールの側壁に形成された貫通孔に管路部材の端部を挿入した状態で該マンホールと該管路部材とを接続する場合にその接続部分に設置されるマンホール用可撓継手において、
止水性を有する可撓性部材を、上記管路部材を囲む環状に形成してなり、
上記管路部材の外周面に固定される固定部と、
上記固定部に連なり、上記管路部材の外周面から径方向に離れる方向へ延びるとともに屈曲するように形成された可撓部と、
上記可撓部に連なり、上記マンホールの側壁を構成するコンクリート内に埋設される埋設部と、
設置前に上記可撓部を所定形状で保持するとともに、設置後に上記マンホール及び上記管路部材の相対変位時に外力を受けた場合に該可撓部の変形を許容するように構成された保持部とを備えていることを特徴とするマンホール用可撓継手。
【請求項2】
請求項1に記載のマンホール用可撓継手において、
上記埋設部は、上記管路部材の径方向外方へ延びるように形成され、該埋設部の先端部には、該埋設部の延びる方向と交差する方向へ突出する突起形状部が形成され、
上記突起形状部の外面には、非加硫ブチルゴム製のシール材が設けられていることを特徴とするマンホール用可撓継手。
【請求項3】
請求項1または2に記載のマンホール用可撓継手において、
上記固定部は、上記管路部材の外周面に沿って中心線方向、かつ、外部水圧が作用する方向に延びるように形成されていることを特徴とするマンホール用可撓継手。
【請求項4】
マンホールの側壁に形成された貫通孔に管路部材の端部を挿入した状態で該マンホールと該管路部材とを接続する場合にその接続部分にマンホール用可撓継手を設置する設置方法において、
止水性を有する可撓性部材を、上記管路部材を囲む環状に形成してなるマンホール用可撓継手を用意し、
上記マンホール用可撓継手には、上記管路部材の外周面に固定される固定部と、
上記固定部に連なり、上記管路部材の外周面から径方向に離れる方向へ延びるとともに径方向に屈曲するように形成された可撓部と、
上記可撓部に連なり、上記マンホールの側壁を構成するコンクリート内に埋設される埋設部と、
設置前の上記可撓部を所定形状で保持するとともに、設置後に上記マンホール及び上記管路部材の相対変位時に外力を受けた場合に該可撓部の変形を許容するように構成された保持部とを形成しておき、
上記マンホール用可撓継手の固定部を上記管路部材の外周面に固定した後、
上記管路部材及び上記マンホール用可撓継手を上記マンホールの貫通孔に挿入してから、上記埋設部が埋め込まれるように貫通孔内にコンクリートを供給して硬化させることを特徴とするマンホール用可撓継手の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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