説明

マーキング用カプセル及びカプセル内視鏡システム

【課題】内臓器官における検査画像の位置を容易に知ることができ、読影する者の負担を軽減することが可能な、マーキング用カプセル及びカプセル内視鏡システムを提供すること。
【解決手段】検査対象の内臓器官を通りこの内臓器官内を撮像して検査画像を得るカプセル内視鏡が通る前に、前記内臓器官内に通されるマーキング用カプセルであって、前記内臓器官の内部に可視のマーカーを付けるマーキング部と、このマーキング部を駆動する駆動部と、位置を示す位置信号を外部に送信する送信部と、前記マーキング部、前記駆動部及び前記送信部を内蔵するカプセル筐体と、を有するマーキング用カプセル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば消化管疾患のスクリーニング検査時に使用される、マーキング用カプセル及びカプセル内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
2001年にイスラエルのギブン・イメージング社の小腸用カプセル内視鏡(特許文献1参照)が米国FDAの認可を受けて以来、欧米で普及して来たカプセル内視鏡は、近年日本でも国内のメーカーが厚生労働省の製造販売承認を取得するなどして、普及しつつある(特許文献2,3参照)。
【0003】
これらのカプセル内視鏡は、主に、体腔内の画像を撮像するための撮像部(CCDカメラ等)と体腔内部を照明するための照明部(LED等)と撮影した画像情報を体外の受信装置に送るための送信部と、これらに電力を供給する電源部(酸化銀ボタン電池等)を備える。
【0004】
カプセル内視鏡が被検者に口から投与されると、通常の食物と同じように各消化管の主に蠕動運動によって、食道から小腸あるいは大腸までを一秒間に数枚の撮影をしながら移動する。目的の小腸を撮影し終わるまでに8時間程度を要し、約10時間後に肛門から体外へ排出される。
【0005】
これまで内視鏡による観察が困難であった小腸を観察するための手段としては、ダブルバルーン内視鏡(非特許文献1参照)がある。しかし、この種の内視鏡による検査には被検者への多少の負担があるので、まずはより負担の少ないカプセル内視鏡でスクリーニング検査を行うという流れができつつある。
【0006】
また、カプセル内視鏡による内視鏡検査は、患者の負担が少ないという利点においては、これまで行われて来た上部消化管内視鏡検査や下部消化管内視鏡検査に勝るため、食道から大腸までのそれぞれの、あるいは全ての消化管を観察するためのカプセル内視鏡も研究、開発されつつある。
【0007】
ところでカプセル内視鏡は、上記に示した通り被検者に経口投与されてから自然に排出されるまでの約8時間〜10時間の間に、数枚/秒の体腔内画像を撮影する。例えば1秒間に2枚の画像を8時間撮影したとすると、全画像枚数は5万7,600枚と膨大な数になり、読影者にはかなりの負担がかかる。更に普及が進み、例えば健診にも用いられるようになった場合には、一日に何人もの被検者のカプセル内視鏡画像を読影することになるため、画像枚数が更に増加し、読影することは困難である。
【0008】
この膨大な読影枚数の問題を解決するために、例えば特許文献2に記載されているように、色情報等を用いて自動的に臓器別に分類して画像を表示する等、検索性を向上させる技術が知られている。また、特徴量を算出することにより、自動的に異常が含まれる画像を抽出する技術も知られている(特許文献4参照)。
【0009】
上記の特徴量を算出する技術は、小腸のみまたは、予め定められた臓器の読影をする場合には有効であるが、食道から大腸までの全ての消化管臓器を対象とする場合には、自動的に行われるとしても、膨大な時間が必要と思われる。また、バルーン内視鏡やCT、MRI等の他のモダリティによる再検査や開腹手術の際に、カプセル内視鏡画像からCAD等によって検出された異常が体内のどの位置にあったかを推測するには、特に長い小腸のような場合、カプセル内視鏡の画像を臓器ごとに時系列的に並べて表示しただけでは困難である。
【0010】
しかも、膨大な数の画像を臓器のどこの位置におけるものかを正確に特定する必要がある。臓器における位置を特定するために、腫瘍等の目標物に目印(組織マーカー)を付けておくことは知られている。更に、マーカー部材を射出するユニットをカプセル内視鏡に内蔵するものも知られている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5604531号明細書
【特許文献2】特許第3810381号明細書
【特許文献3】特開2007−159642号公報
【特許文献4】特開2009−027558号公報
【特許文献5】特許第4436631号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「臨床消化器内科」 18, 1203-1208頁,2003年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述のような従来のカプセル内視鏡システムの問題点を考慮し、本発明は、内臓器官における検査画像の位置を容易に知ることができ、読影する者の負担を軽減することが可能な、マーキング用カプセル及びカプセル内視鏡システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一実施形態は、検査対象の内臓器官を通りこの内臓器官内を撮像して検査画像を得るカプセル内視鏡が通る前に、前記内臓器官内に通されるマーキング用カプセルであって、前記内臓器官の内部に可視のマーカーを付けるマーキング部と、このマーキング部を駆動する駆動部と、位置を示す位置信号を外部に送信する送信部と、前記マーキング部、前記駆動部及び前記送信部を内蔵するカプセル筐体と、を有するマーキング用カプセルを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係るカプセル内視鏡システムの構成図である。
【図2】同実施形態においてマーキング用カプセルの動作を説明するための図である。
【図3】同実施形態においてカプセル内視鏡及びこのシステムの動作を説明するための図である。
【図4】同実施形態において識別番号を付与されるマーカーを説明するための図である。
【図5】同実施形態において最初にマーカーの識別番号付与を説明するための図である。
【図6】同実施形態においてマーカーの識別番号付与のつけ直しを説明するための図である。
【図7】第2の実施形態のマーキング用カプセルの構成を示す図である。
【図8】第3の実施形態のマーキング用カプセルの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。本発明では、まず、体内の通過経路にマーキングを行うためのマーキング用カプセルを経口投与し、その後にカプセル内視鏡を経口投与する。カプセル内視鏡は、通常、小腸、大腸、食道など消化管の検査に用いられる。ここでは、小腸の検査に用いる場合を例にして説明する。
【0017】
<第1の実施形態>
被検者に最初に経口投与されるマーキング用カプセルと、その後に投与されるカプセル内視鏡及び全体システムの構成例を、図1に示す。カプセル検知画像記憶装置1は、マーキング用カプセル2とカプセル内視鏡3の消化管内の位置を検知し、マーキング用カプセル2におけるマーキングの制御を行い、カプセル内視鏡3において撮像された画像の記憶を行う装置である。
【0018】
カプセル検知画像記憶装置1は、例えば操作者が着る上着(チョッキ)に設けられ、マーキング用カプセル2及びカプセル内視鏡3の位置信号を受信する体表アンテナ4と、体表アンテナ4からの信号を受信してマーキング用カプセル2及びカプセル内視鏡3の位置を検知する位置検知部5と、マーキング用カプセル2にマーキングの指示を行うマーキング制御部6と、カプセル内視鏡3において撮像した画像を受信する画像受信部7と、これらの画像を記憶する画像記憶部8と、マーキングの回数を計数する計数部9と、これらの各部を制御する全体制御部10とを有する。マーキング制御部6には、マーキング開始ボタン6aが付いている。
【0019】
なお、図1では、マーキング用カプセル2のすぐ後に、カプセル内視鏡3を示しているが、実際には、両カプセルの投与の間には所定の時間がある。
【0020】
マーキング用カプセル2は、このカプセルの位置を知らせるための信号などを生成し送信する送信部11と、マーキング液、例えば墨汁が収容されているマーキング液タンク12と、このタンク12からマーキング液を供給され、消化管13の粘膜下層にマーキングを行うマーキング部14と、所定位置においてマーキング部14でマーキングを行わせる駆動部15と、外部から指示制御信号を受信し駆動部15にマーキングを指示する通信部16と、これらの各部に電圧を供給する電池17と、これらの各部を収納し、人間が飲み込みやすい楕円形状をしたカプセル筐体18を有する。このマーキング用カプセル2は、被検者が飲み込むことにより、口部から入り、食道から胃、小腸、大腸(消化管)へと蠕動運動によって矢印Aに示す方向に移動し、排泄される。その間に、消化管13内でマーキングを行う。駆動部15は上記のように、マーキング液の吐出の駆動の他に、このマーキング用カプセルを回転させる回転駆動の機能も有する。
【0021】
マーキング部14は、マーキング液を押しだすピストン部14aと押し出されたマーキング液を消化管13の粘膜下層に注入する、注射針の形状をした針部14bとから成る。
【0022】
駆動部15は、例えば超音波振動子により構成されピストン部14a内のマーキング液に圧力を加えて、針部14bからマーキング液を消化管13の粘膜下層に注入する。実際には、針部14bの先端が消化管13内の適切な位置に来るように移動位置制御がなされる。
【0023】
電池17としては、Liイオン二次電池、Ni水素電池などを用いることができ、充電式であってもよく、また外部から無線給電されるようにしてもよい。
【0024】
本実施形態におけるマーキング用カプセルの大きさは、従来のカプセル内視鏡と同じく、人間が無理なく飲み込める、例えば直径約10mm、長さ約25mm程度である。
【0025】
マーキング液としては、墨汁のほか、これにヘプロピレン・グリコール、セラミック、水酸化アンモニウム、界面活性剤、ゼラチンなど接着材料を加えたものでもよい。また、マーキング液として、部分脱アセチル化キチン又はキトサンに炭素粉末を加えたものや、人体に適用可能な色素を加えたものを用いることができる。そのほか、およそ臓器内にマーカーと用いるものならいずれでもよい。
【0026】
マーキング用カプセル2は、消化管内を蠕動によって移動しながら、例えば2秒に1回、ピストンを用いて針部14bの注射針を前後に移動させて、消化管13の粘膜下層にマーキング液を注入する。
【0027】
注射針が消化管13を貫通して副作用を起こすことがないようにするため、注射針の長さは粘膜下層を貫かないような、2mm程度が望ましい。または超音波等を用いた厚みセンサー(図示せず)を用いることも考えられる。
【0028】
なお、マーキングの方法として、マーキング液の注入ではなく、ナノ、マイクロサイズの微小針そのものをマーカーとして消化管壁に打ち込みマーカーを付することも可能である。このように微小針を用いて皮膚の奥に有効成分を送り込むようにしてもよい。この微小針として糖質性のものを用いれば、人体への影響を最小限にすることが可能である。
【0029】
このようにマーキング用カプセル2を消化管内に通すことにより、マーカーMを付ける。
【0030】
ここではマーキングは、所定時間毎に行うようにする。
【0031】
マーキング用カプセル2の方向制御を行わない場合は、マーキングカプセル2は、自然に回転することもあり、マーカーが消化管内で一列に付くとは限らない。所定の位置でマーキング用カプセルを回転させて、消化管内で複数個所にマーキングを行うことも可能である。このように複数個所にマーキングを行うようにすると、後で来るカプセル内視鏡にとって位置を検知しやすい利点がある。また、所定距離進む毎にマーカーを付けるようにしてもよい。
【0032】
また、特に調べたい器官がある場合は、所定間隔でなく、その器官に近いところで、細かくマーキングするようにできる。このようにすれば、その器官の近くでは正確に、後でカプセル内視鏡3によって撮像した画像を得ることができる。
【0033】
上述のようなマーキング用カプセルを用いてマーカーMを小腸などの消化管に付した後に、カプセル内視鏡3を消化管に経口投与する。
【0034】
次に、カプセル内視鏡3について説明する。カプセル内視鏡3は、体内の画像を所定の解像度で撮像するための光学系21と、この光学系により得た光学像を電気的な画像処理により電子画像として得る画像取得部22と、この画像取得部22により得た画像を無線により外部に送信する画像送信部23と、カプセル内視鏡3の位置のデータなどを外部に送信するための送信部24と、これらの各部に電力を供給する電池25と、これらを収容する楕円形状の内視鏡筐体26とを有する。
【0035】
内視鏡筐体26は、カプセル筐体18と同様な外形を有するが、その前方頭部には透光部26aを有し、外部の光が入射するようになっている点が、カプセル筐体18と異なる。
【0036】
マーキング用カプセル2は、消化管内にマーカーMを付ける機能を有するが、カプセル内視鏡3は、消化器管内の画像を取得する機能を有する。したがって、マーキング用カプセル2には、マーキング液タンク12と、マーキング部14などを有する。一方、カプセル内視鏡3はこれらの代わりに、体内を撮像するための光学系21と、画像取得部22を有する。画像取得部22から画像送信部23に送られてきた検査画像は、画像送信部23から、順次、カプセル検知画像記憶部1の画像受信部7に、無線で伝送される。
【0037】
電池25は、マーキング用カプセル2の電池17と同じように、Liイオン二次電池、Ni水素電池などを用いることができ、充電式であってもよく、また外部から無線給電されるようにしてもよい。
【0038】
送信部24は、カプセル内視鏡3の位置を、カプセル検知画像記憶部1に知らせる機能を有する。具体的には、カプセル内視鏡3の位置を体表アンテナ4に無線で送り、体表アンテナ4は受信した位置信号を位置検知部5に送る。実際には位置検知部5がカプセル内視鏡の現在位置を検知する。
【0039】
カプセル内視鏡3も、マーキング用カプセル2と同様に、消化管の蠕動運動により、矢印B方向に移動する。マーキング用カプセル2やカプセル内視鏡3が蠕動運動により移動する速度は、通常、1mから1.5m/H程度である。
【0040】
次に、マーキング用カプセルを経口投与したときの実施形態のシステムの動作を、図2に示すフローチャートを用いて説明する。
【0041】
まず被検者は、所定の絶食時間、例えば12時間の後に健康診断を実施する医療機関に行き、健診予約システム等を用いて受付を済ませる。そして医師からインフォームドコンセントを受けた後、ステップS201で、被検者はマーキング用カプセル2を少量の水等の液体と共に飲み込む。ステップS202では、マーキング用カプセル2の送信部11からその位置信号を送信する。この位置信号は体表アンテナ4により受信され、位置検知部5においてマーキング用カプセル2の位置が常時検知される。次のステップS203では、マーキングを開始する。
【0042】
医師等の医療関係者は、被検者がマーキング用カプセルを飲み込んだタイミングで、マーキング用カプセル2の消化管13へのマーキングを開始する。具体的には、医師がカプセル内視鏡システムのマーキング開始ボタン6aを押す。これにより、マーキング制御部6が制御信号を送りマーキング用カプセル2の通信部16を通じて、マーキング用カプセル2の駆動部15に駆動開始信号を送り、駆動部15がマーキング液注入用のピストン部14aを駆動して、針部14bからマーキング液を出してマーキングが開始される。マーキング開始のタイミングは、医師等の医療関係者の判断によらず、予めプログラムされていて、自動的に駆動を開始することにしてもよい。
【0043】
尚、マーキング開始のタイミングは、被検者がカプセルを飲み込んだ時点に限定されない。カプセルに封入された送信部と体表に装着した体表アンテナ4等を用いてカプセルが胃の幽門部を通過したと予測されるタイミング等、予め決められたタイミングでもよい。この場合には、所定の器官に来たことは、カプセル検知画像記憶装置1の位置検知部5が、マーキング用カプセル2の送信部11から位置信号を受信することにより検知する。そして、マーキング制御部6は、通信部16にマーキング制御信号を送る。
【0044】
ステップS204で所定時間経過する毎にステップS205でマーキングを繰り返す。
【0045】
マーキング制御信号を受信した通信部16は、駆動部15にマーキングの指示を伝え、駆動部15は、ピストン部14aに圧力を加えて、マーキング液である墨汁を、針部14bから吐出させる。この結果、消化管13の内壁にマーカーMを付すことができる。
【0046】
このマーキングの回数は、駆動時刻と共に駆動部15から通信部16に伝えられ、ステップS206に示すように、通信部16はカプセル検知画像記憶装置1の計数部9に送る。計数部9における計数値が、各マーカーMを示すことになる。
【0047】
一方、マーキング用カプセル2の送信部11からは、常時、位置信号が送信させており、ステップS207では、位置信号によりマーキング用カプセル2の位置が具体的に特定される。
【0048】
ステップS208では、そのマーキング回数とマーキング用カプセルの位置を関連づけて、例えば位置検知部5に記憶する。
【0049】
ステップS209において、まだ消化管13の終点に到達していないならば、ステップS204に戻り、所定時間経過したならばステップS205でマーキングを行う。
【0050】
このようにして消化管13の終わりまで、マーキングを行い、そのマーキング回数とマーキング用カプセルの関連付けを行うことを繰り返す。消化管の終点に到達したらマーキングを終える。
【0051】
マーキング用カプセル2は、例えば2秒に1回のタイミングで、消化管13の内壁にマーキングを繰り返しながら、約8時間かけて、小腸の出口まで、蠕動によって送られる。
【0052】
次に、カプセル内視鏡3を経口投与したときのこの実施形態のシステムの動作を図3に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0053】
マーキング用カプセル2の送信部11からの位置信号により、マーキング用カプセル2が消化管、例えば小腸の出口に到達したと判断されると、医師等の医療関係者は、検査用のカプセル内視鏡3を被検者に経口投与する。すなわち、ステップS301で、被検者はカプセル内視鏡3を口部から飲み込む。このタイミングで行えば、カプセル内視鏡がマーキング用カプセルを追い越して、マーカーがない消化管内を撮影してしまうことはない。
【0054】
しかし、マーキング用カプセルもカプセル内視鏡も同じ蠕動運動により消化管内を移動するため、マーキング用カプセルを飲み込んだ直後にすぐにカプセル内視鏡を飲み込まなければカプセル内視鏡が先になることはほとんどあり得ず、マーキング用カプセルが消化管の終点に到達した後にカプセル内視鏡を経口投与する場合に限定されない。
【0055】
なお、マーカーとして、飲食しても容易に失われないものを用いるならば、マーキング用カプセルにより、マーキングを行った日の後の別の日に、カプセル内視鏡による検査を行うことも可能である。
【0056】
ステップS301で、被検者がカプセル内視鏡3を飲み込んだ後、ステップS302では、カプセル内視鏡3はその位置情報の送信を開始する。カプセル内視鏡3においても、マーキング用カプセル2の場合と同じように、消化管内をカプセル内視鏡3が移動する間、カプセル検知画像記憶装置1はカプセル内視鏡3の位置を常時、把握している。すなわち、具体的には送信部24から位置信号が体表アンテナ4を介して位置検知部5に送られ、カプセル内視鏡3の消化管内の位置が検知される。
【0057】
マーキング用カプセル2により、小腸内にマーキングを行った後、カプセル内視鏡を飲み込んだ時の様子を模式的に、図4(a)に示す。Mn0,Mn1・・はマーキング用カプセル2によりマーキングされたマーカーを示す。図4(b)は、マーカーを小腸内から見たときの様子であり、図4(c)は小腸内をマーキング用カプセル2が移動してマーカーMny,Mny+1を付する様子を示す図である。
【0058】
次のステップS303で、カプセル内視鏡3による撮影を開始する。カプセル内視鏡3内の画像取得部22で画像取得(撮影)を行い、取得した撮影画像は画像送信部23から画像受信部7に送信する。
【0059】
消化管内の開始のタイミングは、マーキング用カプセル2のマーキング開始と同じように、所定のタイミングで、医師等の医療関係者による手動、または予めプログラムされていた通りに行う。
【0060】
これ以降の手順は、カプセル内視鏡3により被検者の体内から送られるリアルタイム画像を用いて行われても、カプセル内視鏡3が被検者の小腸の出口に到達するか、大腸まで検査する場合には、カプセルが被検者から排出されるかして、体内の撮影が終了した後に、画像記憶部8に蓄積されている内視鏡撮像画像を用いて行われてもよい。
【0061】
ランドマークとは、消化管内で可視的に他と区別できる部位のことである。例えば、胃の幽門部や、十二指腸乳頭や空調と回腸に輪状ひだの違いや、小腸・大腸の生理的狭窄部は画像として特徴的であるため、ランドマークとなる。医師等の医療関係者による目視でも見つけられると思われるが、特徴量を用いてCADで検出してもよい。
【0062】
ここで、ランドマークが写っている画像をランドマーク画像として、例えばランドマークID=LG(後述)という情報を付し、画像記憶部8に記録する。
【0063】
次のステップS305では、ランドマーカーを決定する。例えば、上述のランドマークID=LGの画像の中に写っているマーカーを医師等の医療関係者による目視、または、色等の特徴を用いてCADにより検出できたとする。これをランドマークに一番近いマーカー、すなわちランドマークマーカーとし、マーカーNo.n0という情報を付けて、画像記憶部8に記録する。
【0064】
一方、ランドマークID=LGの画像の中にマーカーが写っていない場合は、医師等の医療関係者による目視、又は、色等の特徴を用いてCADにより、ランドマークID=LGの画像に最も近い、ランドマークが写っている画像を検索し、ここに写っているマーカーをランドマークマーカーとし、マーカーNo.n0という情報を付加して、画像記憶部8に記録する。
【0065】
ランドマークマーカーが決められたら、ステップS306に移り、それ以降に画像上に現れるマーカーを医師等の医療関係者による目視、または、色等の特徴を用いてCADにより検出し、順に識別番号をつけると共に、消化管内の異常があるかどうかを確認して行く。同じマーカーが複数の画像に重複して写っている場合も考えられるが、その場合はマーカーの周りの組織の特徴を目視やCADを用いて比較することにより、同じかどうかを判断することができると思われる。色、その他の特徴が異なるマーカーを交互に用いることで、このような危険を回避することもできると思われる。色、その他の特徴が異なるマーカーを交互に用いることで、このような危険を回避することができると思われる。
【0066】
図5に、時刻とそのマーカーM及びサムネイル画像の関係の例を示す。マーカーNo.は各マーカーに付された識別番号、画像(サムネイル)はカプセル内視鏡に撮影された体内画像のうちマーカーを含む画像、時刻Mはマーキング用カプセル2が小腸内を通ったz時刻、時刻Gはカプセル内視鏡3が小腸内を通った時刻、をそれぞれ意味する。
【0067】
図5において、FG1は生理的狭窄部を示し、このような部位がランドマークとなる。そしてこのランドマークとなった部位から最も近い位置に付けられたマーカーMn0をランドマークマーカーとし、これを起点として以降のマーカーに順次、識別番号が付けられる。そして画像もランドマークマーカーMn0が写っている画像を起点として以降の画像に画像番号が付けられる。
【0068】
図6に別のランドマークマーカー決定の様子を示す。図5と同様に、マーカーNo.は各マーカーに付された識別番号、画像(サムネイル)はカプセル内視鏡に撮影された体内画像のうちマーカーを含む画像、時刻Mはマーキング用カプセル2が小腸内を通った時刻、時刻Gはカプセル内視鏡3が小腸内を通った時刻、を意味する。
【0069】
画像番号が、mx−3の画像には、生理的狭窄部F2が見つかったので、この位置のマーカーからa0と識別番号を振り直している。ランドマークマーカーは、最初の1つでもよいが、なるべく複数のランドマークを検出する方がよい。消化管内に異常がある場合に、最も近いランドマークを基準に探すことが望ましいからである。
【0070】
上述したように、或るランドマークから番号をつけて行き、ランドマークが現れる毎に識別番号の記号を変えて行くことが望ましい。例えば図6に示すように、ランドマークID=LGnの画像に写っているマーカーをn0とし、ランドマークID=LGaの画像が出てくるまでは、n属性のマーカーとして記録し、ランドマークID=LGaの画像以降のマーカーはa0から付け始める。
【0071】
ステップS307はステップS306と同時進行で、消化管に異常があるかどうかの判定を行う。すなわち、識別番号を付けたマーカーが写っている画像に異常が確認された場合は、異常画像を示すマーカーとして、その識別番号が異常値番号として別途記録される。
【0072】
または、画像中のマーカーの識別番号の付与と消化管内の異常の確認を別々に行うこともできる。このように両者を別々に行う場合には、類似画像を検索する手段(図示せず)を用いて、マーカーの識別番号を検索することができる。
【0073】
そして次のステップS309では、その異常画像をマーカーの番号と共にサムネイル化し、再検査や手術など次の医療行為に備える。
【0074】
ステップS310では、検査消化管の終点に到達したかをチェックし、まだ到達していない場合には、ステップS306に戻って画像マーカーの識別番号の付与と異常有無の確認を続ける。
【0075】
この実施形態によれば、カプセル内視鏡を投与する前に、マーキング用カプセルを投与し、マーキングを行っているので、カプセル内視鏡による撮影画像に確実にマーカーが映り、消化管内の異常のある位置を正確に把握することが可能となる。例えば、異常部位の付近に映っているマーカーがMnxであれば、MnxはランドマークマーカーMn0から数えてx番目のマーカーであることが理解される。
【0076】
この実施形態によれば、マーキング液を消化管の粘膜層下に注射することにより、刺青の要領で付着させているので、確実にマーカーを付することが可能であるが、マーキング液を消化管壁の表面に吹き付けるだけの方法もある。マーキング液は、人体に無害なものを選択するのは当然であるが、その条件が満たされていれば、食紅等により色がつくものや、蛍光物質により光を当てると光るものや、可視光以外の光線を当てることによって検出されるものが考えられる。交互または決められた順に色の違うマーカーをつけて、識別しやすくすることも考えられる。更に、造影剤やマイクロカプセルを混入させて、CTやMRI、超音波等の他のモダリティによって検出できるものであることも考えられる。
【0077】
<第2の実施形態>
第2の実施形態では、針を消化管内面に突き刺すことによりマーカーとするマーキングを行う。
【0078】
マーキング用カプセル42は、このカプセル42の位置を知らせるための信号などを生成し送信する送信部71と、針72を収容する筒状のマーカー供給部73と、このマーカー供給部73から先端が尖った形状の針72を射出し消化管43の粘膜下層にマーキングを行うマーキング部74と、所定位置においてマーキング部74で針72を射出しマーキングを行わせる駆動部75と、外部から指示制御信号を受信し駆動部75にマーキングを指示する通信部76と、これらの各部に電圧を供給する電池77と、これらの各部を収納し、人間が飲み込みやすい楕円形状をしたカプセル筐体78を有する。
【0079】
このマーキング用カプセル42は、被検者が飲み込むことにより、口部から入り、食道から胃、小腸、大腸を経て、最後に排泄される。その間に、消化管43内でマーキングを行う。駆動部15は上記のように、針72の射出の駆動の他に、このマーキング用カプセル42を回転させる回転駆動の機能も有する。
【0080】
このマーキング用カプセル42を経口投与した後、第1の実施形態の場合と同様に、カプセル内視鏡を経口投与する。このカプセル内視鏡としては、第1の実施形態のような構造のものを用いることができる。
【0081】
第2の実施形態で用いるマーカーMとなる先の尖った針72について説明する。ここで用いる針は微小な針であり、その材質は、ポリマー、セラミック、金属、二酸化ケイ素、シリコンなどやその組み合わせであり、例えば中空であって消化管内壁に固定されやすいように、先端が尖った形状とされる。
【0082】
ポリマーとしては、ポリウレタン、ポリヒドロキシン酸、ポリブチル酸など及びその組み合わせの生分解ポリマーである。生分解性のポリマーを用いると後で溶けてしまうので、人体に与える影響は少ない。金属としては、白金、パラジウム、ステンレス鋼、銅、チタン、スズ、ニッケル、金、鉄など及びこれらの合金から選択される。
【0083】
このような微小針を、注射式の打ち込み機により、マーカー供給部73に直列に収容されている針72を1つずつ、所定のタイミングで消化管43の内壁に打ち込む。なお、針自体に異なる色を付けたものを用いれば、撮像した画像内におけるマーカーを識別しやすくマーカーの特定がしやすい利点がある。微小針として糖質性のものを用いてもよい。
【0084】
第2の実施形態によれば、マーカーの先端が尖っており、マーカーの位置を正確に決めることができる利点がある。
【0085】
<第3の実施形態>
第3の実施形態におけるマーキング用カプセルの構造を図3に示す。
【0086】
マーキング用カプセル52は、このカプセル52の位置を知らせるための信号などを生成し送信する送信部(図示せず)と、先端が尖った形状の針82を収容し回転する環状のマーカー打込部83と、このマーカー打ち込み部83を背後から押し上げ、針82を射出し消化管53の粘膜下層にマーキングを行うマーキング部84と、所定位置においてマーキング部84で針82を射出しマーキングを行わせる駆動部(図示せず)と、外部から指示制御信号を受信し駆動部にマーキングを指示する通信部(図示せず)と、これらの各部に電圧を供給する電池(図示せず)と、これらの各部を収納し、人間が飲み込みやすい楕円形状をしたカプセル筐体88を有する。
【0087】
このような構造のマーキング用カプセル52を被検者に経口投与した後、検査のためのカプセル内視鏡を経口投与する。
【0088】
この実施形態においても第2の実施形態におけると同様に先のとがった針82を用いる。この針の材質などは、第2の実施形態と同様なものを用いることが可能である。
【0089】
但し、針82は円環状のマーカー打込部83に収容されており、回転させて1つずつ消化管に打ち込む。色の異なる針82をこのマーカー打込部83に円環状に収容する。そして、この実施形態では、どの色の針をマーカーとするかを円環の動きを選択することによってマーカーの色を適宜選択できることになる。またこのような円環状のマーカー打込部を有すれば、多くの針を収容でき、検査器官の比較的長い距離に渡って、細かくマーキングを行える利点がある。
【0090】
第3の実施形態において、各針の色を変えれば、カプセル内視鏡に置いて撮像した画像からそのマーカーの色を容易に識別でき、マーカーの特定が容易となる利点がある。
【0091】
<その他の変形例>
上記実施形態では、消化管、特に小腸の検査に本発明を適用する場合について述べた。しかし、本発明は他の内臓器官にも適用できる。
【0092】
実施形態によれば、カプセル内視鏡を内臓器官に投与する前に、マーキング用カプセルを投与し、マーキングを行っているので、カプセル内視鏡による撮影画像に確実にマーカーが映り、消化管内の異常のある位置を正確に把握することが可能となる。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態を説明したがこれらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
1・・・・カプセル検知画像記憶装置、
2,42,52・・・・マーキング用カプセル、
3・・・・カプセル内視鏡、
4・・・・・体表アンテナ、
5・・・・位置検知部、
6・・・・マーキング制御部、
7・・・・画像受信部、
8・・・・画像記憶部、
9・・・・制御部、
11,24,71,・・・送信部、
12・・・・マーキング液タンク、
13,43,53・・・・消化管、
14・・・・マーキング部、
14a・・・ピストン部、
14b・・・・針部、
15・・・駆動部、
16,76・・・通信部、
17,25・・・電池、
18・・・カプセル筐体、
21・・・光学系、
22・・・画像取得部、
23・・・画像送信部、
26・・・・内視鏡筐体、
72,82・・・針、
73・・・・マーカー供給部、
74・・・・マーキング部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の内臓器官を通りこの内臓器官内を撮像して検査画像を得るカプセル内視鏡が通る前に、前記内臓器官内に通されるマーキング用カプセルであって、
前記内臓器官の内部に可視のマーカーを付けるマーキング部と、
このマーキング部を駆動する駆動部と、
位置を示す位置信号を外部に送信する送信部と、
前記マーキング部、前記駆動部及び前記送信部を内蔵するカプセル筐体と、
を有するマーキング用カプセル。
【請求項2】
前記内臓器官は、消化管である請求項1記載のマーキング用カプセル。
【請求項3】
前記マーカーは、マーキング液である請求項2記載のマーキング用カプセル。
【請求項4】
前記マーキング部は、有色のマーキング液を収容するマーキング液タンクと、前記消化管の内壁に突き刺し前記マーキング液を前記消化管に注入する針部とを有する請求項3記載のマーキング用カプセル。
【請求項5】
前記マーカーは、先端の尖った針である請求項2記載のマーキング用カプセル。
【請求項6】
前記マーキング部は、前記針を直列に収容し、前記駆動部の駆動によって前記針を前記消化管の内壁に射出する請求項5記載のマーキング用カプセル。
【請求項7】
前記マーキング部は、前記針を外側に向けて環状で回転可能に配置させ、前記駆動部の駆動によって前記針を前記消化管の内壁に射出する請求項5記載のマーキング用カプセル。
【請求項8】
前記環状で回転可能に配置された針は、異なる色を有する請求項7記載のマーキング用カプセル。
【請求項9】
検査対象の内臓器官内を通るとき、前記内臓器官の内壁に可視のマーカーを付けるマーキング用カプセルと、
このマーキング用カプセルの通った後に、前記内臓器官を通りこの内臓器官内を撮像して画像を得るカプセル内視鏡と、
前記マーキング用カプセルの位置を検知し前記マーキング用カプセルにより前記内臓器官の内壁に付けられたマーカーを検知し、マーカーの識別番号を付ける手段と、
前記カプセル内視鏡が前記内臓器官を通るときに撮像した検査画像を受信する画像受信手段と、
この画像受信手段により受信された前記内臓器官の複数の検査画像を調べて、生理的な特徴部分の画像に関連する位置に付けられている前記マーカーを基準となるランドマークマーカーとして、前記マーカーの識別番号をつけ直して、このつけ直した識別番号により、前記検査画像を特定する画像位置特定手段と、
を有するカプセル内視鏡システム。
【請求項10】
前記内臓器官は消化管である請求項9記載のカプセル内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−22291(P2013−22291A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160703(P2011−160703)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】