マーキング装置及びマーキングプログラム
【課題】マークが欠けることを抑制できる。
【解決手段】マーキング面218が形成されたマーキング部材216と、マーキング部材216とタイヤの側面部とを相対的に接離させる接離機構と、接離機構によりマーキング部材216のマーキング面218を側面部に接触させた状態で、マーキング部材216を側面部に対して複数の方向に傾斜させる傾斜機構206と、を備える。
【解決手段】マーキング面218が形成されたマーキング部材216と、マーキング部材216とタイヤの側面部とを相対的に接離させる接離機構と、接離機構によりマーキング部材216のマーキング面218を側面部に接触させた状態で、マーキング部材216を側面部に対して複数の方向に傾斜させる傾斜機構206と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーキング装置及びマーキングプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気入りタイヤなどのタイヤの側面部には、メーカー名や製品名等のマークがマーキングされている。
【0003】
このようなマーキングは、従来から、マーキング面をタイヤ側面部と平行にした状態で当該タイヤ側面部に押圧及び熱転写することにより当該タイヤ側面部にマーキングするマーキング装置によって行われている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−5774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、タイヤ側面部には、平らな面だけでなく、曲面や凹凸面、文字面、ローレット加工された面等の複雑な面(以下、複雑面という)がある。このような複雑面に対してマーキングするとき、マーキング装置のマーキング面の一部が複雑面に接触せず、マーク(印影)が欠ける場合があった。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、マークが欠けることを抑制できるマーキング装置及びマーキングプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係るマーキング装置は、マーキング面が形成されたマーキング部材と、前記マーキング部材とタイヤの側面部とを相対的に接離させる接離機構と、前記接離機構により前記マーキング部材の前記マーキング面を前記側面部に接触させた状態で、前記マーキング部材を前記側面部に対して複数の方向に傾斜させる傾斜機構と、を備える。
【0008】
この構成によれば、傾斜機構が、接離機構によりマーキング部材のマーキング面を側面部に接触させた状態で、マーキング部材を側面部に対して複数の方向に傾斜させるので、タイヤの側面部にマーキングが施され、当該側面部にマークが形成されることになる。
この結果、タイヤの側面部のうちマーキングする面が複雑面であっても、マーキング面が当該複雑面へ食い込み、マーキング面が単純にタイヤの側面部に接触した状態では接触しなかった箇所にも接触するようになる。これにより、タイヤの側面部に形成されるマークが欠けることを抑制できる。
【0009】
本発明の第2態様に係るマーキング装置では、第1態様において、前記傾斜機構は、前記マーキング面の中心点を固定しつつ、前記マーキング部材を傾斜させる機構であり、前記傾斜の際に、前記マーキング部材を傾斜状態とさせたまま、前記中心点を固定しつつ、前記中心点を通る前記マーキング部材の中心軸の一端を、前記中心点を通る前記マーキング部材の傾斜前の中心軸に対して公転させる。
【0010】
この構成によれば、傾斜機構は、上記傾斜の際に、マーキング部材を傾斜状態とさせたまま、マーク面の中心点を固定しつつ、当該中心点を通るマーキング部材の中心軸の一端を、中心点を通るマーキング部材の傾斜前の中心軸に対して公転させるので、マーキング部材のマーキング面が傾斜した状態でマーキング面は回転しないまま、マーキング部材及びマーキング面の傾斜の方向が前後左右を含んだ全方向に順に切り替わる。
これにより、複雑面にマーキング面が均等に当たるようになるので、形成されるマークが欠けることをより一層抑制できる。
【0011】
本発明の第3態様に係るマーキング装置では、第1態様又は第2態様において、前記傾斜機構を制御して、前記マーキング部材を複数の方向に傾斜させる制御手段、を備える。
【0012】
この構成によれば、傾斜機構は、マーキング部材をタイヤの側面部に対して複数の方向に傾斜させる構成を備えるだけでよく、その機能を実現する構成(傾斜を開始させる構成(タイマなど)などは、制御手段が代替するので、不要となる。
【0013】
本発明の第4態様に係るマーキング装置では、第3態様において、前記制御手段は、マーキングする前記タイヤに応じて、前記傾斜の角度を調整する。
【0014】
この構成によれば、制御手段は、マーキングするタイヤに応じて、傾斜の角度を調整するので、そのタイヤの側面部の複雑面に適したマーキング面の傾斜の角度とすることができ、マークが欠けることをより一層抑制できる。
【0015】
本発明の第5態様に係るマーキング装置では、第3態様又は第4態様において、前記側面部の形状を測定する形状測定装置を備え、前記制御手段は、前記形状測定装置の測定結果に応じて、前記傾斜の角度を調整する。
【0016】
この構成によれば、制御手段は、マーキングするタイヤの側面部の形状に応じて、傾斜の角度を調整するので、そのタイヤの側面部の複雑面に適したマーキング面の傾斜の角度とすることができ、形成されるマークが欠けることをより一層抑制できる。
【0017】
本発明の第6態様に係るマーキング装置では、第3態様〜第5態様の何れか1つにおいて、前記マーキング部材を傾斜させるか否かの要否情報を予め記憶する記憶部を備え、前記制御手段は、前記要否情報に基づき、前記マーキング部材を傾斜させるか否か判断する。
【0018】
この構成によれば、例えばマーキングするタイヤの側面部が平らである場合にまで、マーキング面を傾斜させないようにすることができる。
【0019】
本発明の第7態様に係るマーキングプログラムは、マーキング装置の中央処理装置に対し、マーキング面が形成されたマーキング部材をタイヤの側面部に対して接離させる接離機構により前記マーキング部材の前記マーキング面が前記側面部に接触した状態で、前記マーキング部材を傾斜させる傾斜機構を制御させ、前記マーキング部材を左右又は前後に傾斜させるステップ、を実行させるためのマーキングプログラムである。
【0020】
この構成によれば、タイヤの側面部のマーキングする面が複雑面であっても、マーキング面が当該複雑面へ食い込み、マーキング面が単純にタイヤの側面部に接触した状態では接触しなかった箇所にも接触するようになる。これにより、タイヤの側面部に形成されるマークが欠けることを抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、上記構成としたので、マークが欠けることを抑制できるマーキング装置及びマーキングプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係るマーキング装置の全体構成図である。
【図2】図2は、図1のI−I矢視断面図である。
【図3】図3は、図1のII−II矢視断面図である。
【図4】図4は、マーキング部の概略構成を示す図である。
【図5】図5(A)及び(B)は、図4に示すマーキング部の作用を示す図である。
【図6】図6は、本発明の第1実施形態に係るマーキング装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、マーキングに関連するシステムコントローラの処理の流れを示すフローチャートである。以下、括弧内は図中のステップ識別符号である。
【図8】図8(A)〜(E)は、第1実施形態に係る傾斜制御部の制御によるマーキング部材の動きの流れを示す図である。
【図9】図9は、マーキングする面がローレット加工された複雑面の場合に、本発明の第1実施形態に係るマーキング装置のマーキング処理を実行した結果を示す図である。
【図10】図10(A)〜(E)は、第2実施形態に係る傾斜制御部の制御によるマーキング部材の動きの流れを示す図である。
【図11】図11は、マーキングする面がローレット加工された複雑面の場合に、従来のマーキング装置のマーキング処理を実行した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る記録媒体搬送装置及び画像形成装置について具体的に説明する。なお、図中、同一又は対応する機能を有する部材(構成要素)には同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0024】
−マーキング装置の装置構成−
図1は、本発明の第1実施形態に係るマーキング装置の全体構成図である。図2は、図1のI−I矢視断面図である。
【0025】
本発明の第1実施形態に係るマーキング装置10は、支持リム12、またはビード支持機構によって横置きの状態で支持された空気入り、又は空気無しとされたタイヤTの側面部Sの所定位置にマーキングする装置である。空気入りタイヤTは、支持リム12と共に垂直軸回りに回転することができ、マーキングするタイヤTの側面部Sには、走行時に路面に接地するトレッド部14以外の箇所を含み、例えばビード部やショルダー部、サイド部等が含まれる。
【0026】
マーキング装置10は、上端が固定フレーム16に固定された上下方向に延びる支持軸18を有し、この支持軸18には該支持軸18と同軸の円筒状をした回転体20の上端部が回転可能に支持されている。また、マーキング装置10は、この回転体20の上端部と固定フレーム16の双方に挿入されているが取り外し可能である停止部材としてのストッパーピン22を有しており、このストッパーピン22が挿入されると、固定フレーム16と回転体20とは連結されて回転体20の回転が停止され、一方、このストッパーピン22を抜き出すと、回転体20は垂直軸回りに自由に回転することができる。そして、このように回転体20が自由回転できるときに、この回転体20を、例えば作業者が110度程度回転させると、後述のマーキング部200はタイヤTから大きく離れた退避位置まで移動し、マーキング時に用いる消耗品としてのマーキングテープのリール交換作業が容易となる。
【0027】
この回転体20の下端には前後方向に延びる矩形板状をした水平プレート24が固定され、この水平プレート24の直下には該水平プレート24に平行な矩形板状の移動プレート26が設置されている。この移動プレート26の上面には長手方向に延びる一対のガイドレール28が敷設され、これらのガイドレール28には水平プレート24の下面に固定された一対のスライドベアリング30が摺動可能に係合している。
【0028】
図2に示すように、水平プレート24の一側方には、ヘッド側が該水平プレート24の後端部に連結されたエアシリンダ32が設けられてり、このエアシリンダ32は移動プレート26を含む後述の移動台100の移動方向に延びるとともに、ピストンロッド34の先端が前記移動プレート26に連結されている。この結果、前記エアシリンダ32が作動してピストンロッド34が突出したり引っ込んだりすると、移動プレート26を含む移動台100に前後方向の駆動力が付与され、これにより、該移動台100はガイドレール28に案内されながら長手方向に移動してタイヤTに対し接近離隔する。前述した回転体20、水平プレート24は全体として、固定フレーム16に支持され垂直軸回りに回転することができるベース25を構成する。
【0029】
ベース25、詳しくは水平プレート24の他側端に固定されたブラケット36には、変更手段としてのエアシリンダ38が取り付けられている。このエアシリンダ38は、移動プレート26を含む移動台100の移動方向、ここでは前後方向に延びている。
エアシリンダ38のシリンダ室40に摺動可能の収納されたピストン42には、ピストンロッド44、46が設けられ、ピストンロッド44は前方に向かってエアシリンダ38から突出し、一方、ストッパーとしてのピストンロッド46は後方に向かってエアシリンダ38から突出している。
【0030】
このエアシリンダ38より後方の移動プレート26には、ねじブロック48が取り付けられる。このねじブロック48には、ピストンロッド46と同軸のねじ軸50がねじ込まれ、このねじ軸50の先端(前端)には当接ブロック52が、また、その後端には手回し用のハンドル54が設けられている。そして、エアシリンダ38の前側シリンダ室40aにエアが供給されてピストンロッド46が後側ストロークエンドまで突出しているとき、エアシリンダ32のピストンロッド34が突出すると、移動プレート26は前方に移動するが、この移動は移動台100の一部である当接ブロック52がピストンロッド46の先端(後端)に当接したとき停止し、このとき、後述するマーキング部200はタイヤTの側面部Sのマーキングを行う所定位置近傍まで移動される。ここで、マーキングを行うタイヤTのサイズが異なると、マーキングを行う所定位置も変化するが、この場合には手動で又は自動でハンドル54を回転させてねじ軸50のねじ込み位置を変化、即ちねじ軸50を前後方向に移動させることにより、移動プレート26(マーキング部200)の停止位置を変更して対処する。なお、エアシリンダ38やハンドル54の駆動を自動で行う場合は、後述するシステムコントローラ300によって行う。
【0031】
また、エアシリンダ38より前方の水平プレート24には、ブラケット56が固定されている。このブラケット56にはピストンロッド44と同軸のストッパーボルト58がねじ込まれている。ここで、前述のようにエアシリンダ38の前側シリンダ室40aにエアが供給されてピストンロッド46が後側ストロークエンドまで突出しているとき、このストッパーボルト58の後端とピストンロッド44の先端(前端)との間には所定、ここでは10mmの間隙60が形成されている。
【0032】
そして、前述のように当接ブロック52がピストンロッド46の先端に当接して移動プレート26が前方限まで移動しているとき、エアシリンダ38の後側シリンダ室40bにエアを供給すると、ピストンロッド44はその先端(前端)がストッパーボルト58の後端に当接するまで移動台100の移動方向、ここでは前方に移動するが、このとき、ストッパーとしてのピストンロッド46も同量だけ前方に移動するため、移動プレート26(移動台100)はエアシリンダ32から付与された移動力によりピストンロッド46に追従移動して、その停止位置が変更される。この結果、移動プレート26(移動台100)は2つの停止位置で停止することができる。これにより、マーキングを行うタイヤTの側面部Sの所定位置に文字等が存在してマーキング部200によるマーキングを行うことができないときには、このマーキング位置を前記間隙60分だけ前方にずらして文字等の存在しない位置に簡単な構成で容易に変更することができる。なお、前記間隙60の値、即ち前述のずらし量はストッパーボルト58のねじ込み位置を変化させることで容易に変更することができる。また、前述の前方へのずらし量が一定値でよい場合には、ストッパーボルト58を省略し、ピストン42を前側ストロークエンドまで移動させてエアシリンダ38に当接させることで前方にずらすようにすればよい。
【0033】
図1において、移動プレート26の下面には前後方向に離れた一対の支持体62、64が固定され、これらの支持体62、64には前後方向に延びる水平な回転軸66が軸受68、70を介して回転可能に支持されている。そして、この回転軸66の回転軸線の延長線はタイヤTの赤道面と同一高さに位置している。支持体64にはロータリーアクチュエータ72が固定され、このロータリーアクチュエータ72は回転軸66を回転軸線回りに回転させる。
【0034】
そして、後述するマーキング部200によってタイヤTの下側の側面部Sにマーキングを行う場合には、このロータリーアクチュエータ72を作動して回転軸66を半回転させることで、該マーキング部200をタイヤTの下側まで移動させる。
【0035】
図3は、図1のII−II矢視断面図である。
【0036】
回転軸66の前端には上下方向に延びる矩形の垂直プレート74が固定され、この垂直プレート74の前面には上下方向に延びる一対のガイドレール76が敷設されている。また、この垂直プレート74の前方には、該垂直プレート74に平行に延びる昇降プレート78が設置されている。この昇降プレート78の後面にはガイドレール76に摺動可能に係合する一対のスライドベアリング80が固定されている。
【0037】
垂直プレート74の一側方には、上下方向に延びるブレーキ付きのシリンダ82が設置されている。このシリンダ82のヘッド側は垂直プレート74の下端部に連結されている。また、シリンダ82のピストンロッド84の先端(上端)はブラケット86を介して昇降プレート78に連結されており、この結果、シリンダ82が作動してピストンロッド84が突出したり引っ込んだりすると、昇降プレート78は上下方向に移動し、後述するマーキング部200をタイヤTのサイズ変更に応じて上下方向に移動させる。
【0038】
図1の参照に戻って、昇降プレート78の前面には、前方に向かって延びる支持アーム88が固定されている。この支持アーム88の前端部には一側他側方向に延びる水平な回動軸90が回動可能に支持されている。前述した移動プレート26、ねじ軸50、当接ブロック52、支持体62、64、回転軸66、垂直プレート74、昇降プレート78、支持アーム88は全体として、ベース25に前後方向に移動可能に支持された移動台100を構成する。この移動台100の先端部、即ち、回動軸90にはタイヤTの側面部Sの所定位置にマーキングを行うマーキング部200が取り付けられている。
【0039】
また、回転軸90には、連結アーム92の前端が固定されている。この連結アーム92の後端には昇降プレート78の他側端にヘッド側が連結された上下方向に延びるエアシリンダ94のピストンロッド96の先端(上端)が連結されている。この結果、エアシリンダ94が作動してピストンロッド96が突出したり引っ込んだりすると、マーキング部200は回動軸90を中心として揺動しながら下降、上昇し、マーキングを行う所定位置に対して接近離隔するとともに、タイヤTの側面部Sに対する傾斜角度が変化する。昇降プレート78の前面に固定されたブラケット98であり、このブラケット98には上下方向に延びるストッパーボルト102がねじ込まれており、このストッパーボルト102はブラケット98に対するねじ込み位置を調節することができる。
また、連結アーム92の途中には、ストッパー104が取り付けられており、このストッパー104は、連結アーム92がピストンロッド96の突出によって上方に揺動したとき、ストッパーボルト102の下端に当接して連結アーム92およびマーキング部200の揺動を停止させ、マーキング部200のタイヤTへの過接近を阻止する。そして、マーキングを行う所定位置、タイヤTの種類等の変更に応じてマーキング部200のタイヤTに対する傾斜角度を変更する必要がある場合には、ストッパーボルト102のねじ込み量を調節することにより容易に対処することができる。
【0040】
−マーキング部200の構成−
図4は、マーキング部200の概略構成を示す図である。
【0041】
図4に示すように、マーキング部200は、主として、板部材202と、マーキング機構204と、傾斜機構206と、で構成されている。
【0042】
板部材202は、後端が回転軸90に回転可能に支持された矩形状の板部材である。この板部材202の先端部には、当該板部材202の上面から下面へ貫通した平面視が円形状の貫通口208が設けられている。この貫通口208には、当該貫通口208に固定された状態で円柱状のゴム部材210が埋設されている。
【0043】
このゴム部材210の中心部には、当該ゴム部材210の上面から下面へ貫通した平面視が円形状の貫通口212が設けられている。この貫通口212には、マーキング機構204の一部が挿入されている。
【0044】
具体的に、マーキング機構204は、円柱状の支持軸棒214を備えており、この支持軸棒214の一部が、貫通口212に固定された状態で真っ直ぐ挿入されている。また、マーキング機構204は、支持軸棒214の下端に固定され、下面として平らなマーキング面218を有する円柱状のマーキング部材216を備えている。このマーキング面218は、ゴム等の弾性体で構成されており、マーキングの際にマーキングテープが貼られる。なお、マーキングテープの貼り付け及び供給は、手作業で行ってもよいし、不図示のテープ供給手段及びテープ貼付手段をマーキング機構204に設けてもよい。
【0045】
また、支持軸棒214は、ゴム部材210と傾斜機構206により、前後左右を含む全方向(円形状のゴム部材210を平面視したとき、その円の360度の全角度方向である)へ傾斜可能されており、所謂「ジョイスティック構造」のような動きが可能とされている。
【0046】
傾斜機構206は、マーキング部材216におけるマーキング面218の中心点Oを固定して(支点として)、マーキング面218を上述のように全方向へ傾斜させる機構である。
【0047】
具体的に、傾斜機構206は、主として、モータ220と、ギア222と、エアシリンダ224と、で構成されている。
【0048】
モータ220は、板部材202の貫通口208の付近に埋設されている。モータ220の回転軸226は、板部材202の上面から突出しており、その突出部分に回転軸226とともに回転する円柱状のギア228が設けられている。
【0049】
このギア228には、ギア222と噛み合っている。ギア222は、中央が中空部230の円筒状とされており、その中空部230の内壁が、貫通口208を囲むように板部材202の上面に配置されている。中空部230の中心部には、貫通口208の中心部から上方に向かって延びる支持軸棒214が、傾斜可能に位置している。
【0050】
また、ギア222には、当該ギア222の径方向に延びるエアシリンダ224が埋設されている。エアシリンダ224は、ピストンロッド232の先端が支持軸棒214に当接している。なお、ピストンロッド232の先端には、エアシリンダ224がギア222とともに回転したときでも、ピストンロッド232の先端が支持軸棒214に当接するように(支持軸棒214がピストンロッド232の先端から逃げないように)、支持軸棒214の周面を回転可能に囲うリング部材234が設けられている。
この結果、エアシリンダ224が作動してピストンロッド232が突出したり引っ込んだりすると、支持軸棒214に中空部230の径方向への駆動力が付与される。具体的に、図5(A)に示すように、ピストンロッド232が突出すると、支持軸棒214が板部材202に対して起立状態から所定の方向(例えば図5(A)の紙面左側方向)へ傾斜し、マーキング面218の中心点Oを支点として、マーキング部材216及びそのマーキング面218が板部材202(タイヤTの側面部S)に対して傾斜する。また、ピストンロッド232が引っ込むと、支持軸棒214が傾斜状態から起立状態に戻り、マーキング面218の中心点Oを支点として、マーキング部材216及びそのマーキング面218が板部材202(タイヤTの側面部S)に対して平行となる。
また、図5(B)に示すように、モータ220によるギア228の回転をすると、ギア222とともにエアシリンダ224が平面視で時計回りに回転する。これにより、ギア228の時計回りの回転量を調整することで、マーキング面218をどの方向へも傾斜させるようにすることができる。
【0051】
−マーキング装置の制御構成−
図6は、本発明の第1実施形態に係るマーキング装置10の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0052】
図6に示すように、マーキング装置10は、システムコントローラ300、通信部302、接離制御部304、傾斜制御部306、操作部308、表示部310等が備えられる。
【0053】
システムコントローラ300は、マーキング装置10の各部を統括制御する制御手段として機能するとともに、各種演算処理を行う演算手段として機能する。このシステムコントローラ300は、CPU300A、ROM300B、RAM300C等を備えており、所定の制御プログラムに従って動作する。ROMには、このシステムコントローラ300が、実行するマーキングプログラム314を含む制御プログラム、及び、制御に必要な各種データが格納される。
【0054】
通信部302は、所要の通信インターフェースを備え、その通信インターフェースと接続されたホストコンピュータとの間でデータの送受信を行う。
【0055】
接離制御部304は、システムコントローラ300からの指令に応じて、接離機構312を制御し、マーキング面218がタイヤTの側面部Sに対して略平行に接触するように、マーキング部200を角度調整しながら移動させる。なお、接離機構312は、マーキング部材216をタイヤTの側面部Sに接離させる機構であり、エアシリンダ32、エアシリンダ38、ロータリーアクチュエータ72、シリンダ82、エアシリンダ94等を含んで構成されている。なお、接離制御部304の制御内容は、操作部308で手動によっても行うことができる。
【0056】
傾斜制御部306は、システムコントローラ300からの指令に応じて、傾斜機構206を制御する。具体的な制御については、後述する。
【0057】
操作部308は、所要の操作手段(たとえば、操作ボタンやキーボード、タッチパネル等)を備え、その操作手段から入力された操作情報をシステムコントローラ300に出力する。システムコントローラ300は、この操作部308から入力された操作情報に応じて各種処理を実行する。
【0058】
−処理内容−
図7は、マーキングに関連するシステムコントローラ300の処理の流れを示すフローチャートである。以下、括弧内は図中のステップ識別符号である。
システムコントローラ300は、マーキングプログラム314に従って、図7及び以下に示すようなマーキング処理を実行する。
【0059】
(ステップS100)システムコントローラ300は、通信部302を介してホストコンピュータからマーキング情報を取得する。なお、このマーキング情報には、マーキングの要否情報やマーキング部材216を傾斜させるか否かの要否情報、マーキングの位置情報、タイヤTの種類、タイヤTの高さ情報、タイヤ位相情報、タイヤ面入射角度情報等が含まれている。また、取得するマーキング情報は、RAM等の記憶装置に格納される。
【0060】
(ステップS102)システムコントローラ300は、取得したマーキング情報のうちマーキングの要否情報を参照し、例えば「マーキング必要」という情報であれば、次のステップS104に進み、例えば「マーキング不要」という情報であれば、処理を終える。
【0061】
(ステップS104)システムコントローラ300は、マーキングの位置情報やタイヤ位相情報、タイヤ面入射角度情報等に基づき、すなわちマーキングするタイヤTに応じて、位置決めする。具体的には、システムコントローラ300は、マーキングするタイヤTに応じて、接離制御部304に指令を与える。そして、接離制御部304は、この指令に応じて、接離機構312を制御して、マーキング部材216がタイヤTの側面部Sにおいてマーキング位置の上方に位置するまでマーキング部200全体を移動させ、マーキング面218がタイヤTの側面部Sと略平行になるようにマーキング部200全体の傾斜角度を調整する。
【0062】
(ステップS106)
システムコントローラ300は、タイヤTの高さ情報に応じて、接離制御部304に指令を与える。そして、接離制御部304は、この指令に応じて、接離機構312を制御して、マーキング部材216がタイヤTの側面部Sにおいてマーキング位置の上方の位置から低速下降し、マーキング部材216のマーキング面218が側面部Sのマーキング位置に接触し、押圧するまで、マーキング部200全体を移動させる。また、システムコントローラ300は、適宜、マーキング部材216を不図示の加熱手段で加熱して、押圧及び以下の傾斜の際に、マーキングテープをタイヤTの側面部Sに熱転写できるようにしておく。
【0063】
(ステップS106)システムコントローラ300は、タイヤTの高さ情報に応じて、接離制御部304に指令を与える。そして、接離制御部304は、マーキング面218が側面部Sのマーキング位置に接触した状態を保ちつつ、マーキング部200全体の移動を停止させる。
【0064】
(ステップS110)システムコントローラ300は、取得したマーキング情報のうちマーキング部材216を傾斜させるか否かの要否情報を参照し、例えば「傾斜必要」という情報であれば、次のステップS112に進み、例えば「傾斜不要」という情報であれば、ステップS116に進む。
【0065】
(ステップS112)システムコントローラ300は、タイヤTの種類に応じて、傾斜制御部306に指令を与える。そして、傾斜制御部306は、この指令に応じて、傾斜機構206を制御して、マーキング部材216のマーキング面218を側面部Sに接触させた状態で、マーキング部材216を、タイヤTの種類に適した傾斜角度に調整しつつ、左右前後を含んだ全方向へ傾斜させる。
【0066】
図8(A)〜(E)は、傾斜制御部306の制御によるマーキング部材216の動きの流れを示す図である。なお、図8では、側面部Sのマーキングする面が曲面形状の複雑面となっている。
【0067】
第1実施形態では、マーキング部材216を、左右前後を含んだ全方向へ傾斜させるために、傾斜制御部306は、具体的に図8及び以下に示すような制御をする。
【0068】
まず図8(A)及び(B)に示すように、傾斜制御部306は、傾斜機構206を制御して、形成されるマークがずれないようにマーキング面218の中心点Oを少なくとも側面部Sの平面方向において固定しつつ、マーキング部材216のマーキング面218を側面部Sに接触させた状態で、マーキング部材216を傾斜させる。ここで、傾斜前のマーキング部材216の中心軸をL1とし、傾斜後のマーキング部材216の中心軸をL2とすると、中心軸L1は、中心点Oを通り、且つ、タイヤTの側面部Sの法線と略一致する。なお、マーキング面218の中心点Oを少なくとも側面部Sの平面方向において固定させるのは、傾斜制御部306が制御する必要はなく、傾斜機構206自体の構造において実現されている。
【0069】
次に、図8(B)〜(E)に示すように、傾斜制御部306は、傾斜機構206を制御して、形成されるマークがずれないようにマーキング面218の中心点Oを少なくとも側面部Sの平面方向において固定しつつ、マーキング部材216を傾斜状態とさせたまま、中心点Oを通るマーキング部材216の中心軸L2の一端を、中心点Oを通るマーキング部材216の傾斜前の中心軸L1に対して公転させる。
なお、この制御を実現するためには、具体的に、まず傾斜機構206のエアシリンダ224を作動させ、ピストンロッド232を所定距離突出させる。これにより、支持軸棒214の端部が押されて傾斜し、上述したマーキング部材216の「傾斜」を実現できる。また、傾斜機構206のモータ220を制御させ、ピストンロッド232を所定距離突出させた状態を保ちつつ、エアシリンダ224を平面視で時計回りに回転させる。これにより、上述した「公転」を実現できる。
【0070】
(ステップS114)システムコントローラ300は、傾斜制御部306に指令を与える。そして、傾斜制御部306は、傾斜機構206を制御して、中心軸L2の一端を少なくとも1回転公転させたら、傾斜制御部306に指令を与える。そして、傾斜制御部306は、この指令に応じて、傾斜機構206を制御して、マーキング部材216の傾斜を停止させる。具体的には、ピストンロッド232を引っ込ませることで、支持軸棒214が傾斜状態から起立状態に戻り、マーキング面218の中心点Oを支点として、マーキング部材216及びそのマーキング面218が板部材202(タイヤTの側面部S)に対して平行となる。
【0071】
(ステップS116)システムコントローラ300は、接離制御部304に指令を与える。そして、接離制御部304は、この指令に応じて、接離機構312を制御して、マーキング部材216が原点(初期位置)に戻るまで、マーキング部200全体を移動させる。
【0072】
以上のマーキング処理によれば、マーキング部材216を、左右前後を含んで傾斜させることにより、タイヤTの側面部Sにマーキングが施され、当該側面部Sにマークが形成されることになる。
この結果、タイヤTの側面部Sのうちマーキングする面が、図8に示すように曲面形状の複雑面であっても、マーキング面218が当該複雑面へ食い込み、マーキング面218が単純にタイヤTの側面部Sに接触した状態では接触しなかった箇所にも接触するようになる。これにより、タイヤTの側面部Sに形成されるマークが欠けることを抑制できる。
【0073】
また、上記傾斜の際に、マーキング部材216を傾斜状態とさせたまま、マーキング面218の中心点Oを固定しつつ、当該中心点Oを通るマーキング部材216の中心軸L2の一端を、中心点Oを通るマーキング部材216の傾斜前の中心軸L1に対して公転させるので、マーキング部材216のマーキング面218が傾斜した状態でマーキング面218は回転しないまま、マーキング部材216及びマーキング面218の傾斜の方向が前後左右を含んだ全方向に順に切り替わる。これにより、複雑面にマーキング面218が均等に当たるようになるので、形成されるマークが欠けることをより一層抑制できる。
【0074】
なお、マーキングする面は、曲面形状の複雑面である場合を説明したが、どのような複雑面であっても、上記マーキング処理を実行することにより、タイヤTの側面部Sに形成されるマークが欠けることを抑制できる。
例えば、図9は、マーキングする面がローレット加工された複雑面の場合に、本発明の第1実施形態に係るマーキング装置10のマーキング処理を実行した結果を示す図である。図11は、マーキングする面がローレット加工された複雑面の場合に、従来のマーキング装置のマーキング処理を実行した結果を示す図である。
【0075】
図11に示すように、タイヤTの側面部Sにマーキングする面が、ローレット加工された複雑面Pの場合に、従来のマーキング装置のマーキング処理を実行すると、タイヤTの側面部Sに形成されるマークMが欠けてしまう。
一方で、図9に示すように、タイヤTの側面部Sにマーキングする面が、ローレット加工された複雑面Pの場合に、本発明の第1実施形態に係るマーキング装置10のマーキング処理を実行すると、タイヤTの側面部Sに形成されるマークMが欠けることを抑制できる。
なお、マーキング対象の「複雑面」は、曲面形状やローレット加工された複雑面の他に、文字面等の凹凸面やタイヤスピュー(タイヤから出るヒゲ)面、図9中のフィン面等であってもよい。
【0076】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るマーキング装置について説明する。本発明の第2実施形態に係るマーキング装置の構成は、第1実施形態に係るマーキング装置10の構成と同じである。ただし、システムコントローラ300が実行するマーキング処理及びそのマーキングプログラム314のステップS112の処理のみ異なる。
【0077】
第2実施形態では、ステップS112において、システムコントローラ300は、タイヤTの種類に応じて、傾斜制御部306に指令を与える。そして、傾斜制御部306は、この指令に応じて、傾斜機構206を制御して、マーキング部材216のマーキング面218を側面部Sから接触させた状態で、マーキング部材216を、タイヤTの種類に適した傾斜角度に調整しつつ、前後左右にのみ傾斜させる。
【0078】
図10(A)〜(E)は、第2実施形態に係る傾斜制御部306の制御によるマーキング部材216の動きの流れを示す図である。なお、図10では、側面部Sのマーキングする面が曲面形状の複雑面となっている。
【0079】
具体的に、図10(A)及び(B)に示すように、まず傾斜制御部306は、傾斜機構206を制御して、形成されるマークがずれないようにマーキング面218の中心点Oを少なくとも側面部Sの平面方向において固定しつつ、マーキング部材216のマーキング面218を側面部Sに接触させた状態で、マーキング部材216を紙面手前側(前方向)に傾斜させる。ここで、傾斜前のマーキング部材216の中心軸をL1とし、傾斜後のマーキング部材216の中心軸をL2とすると、中心軸L1は、中心点Oを通り、且つ、タイヤTの側面部Sの法線と略一致する。また、中心軸L2は、紙面手前側に傾斜させると、正確には中心軸L1と重なって見えるはずだが、図10(B)においては、傾斜を分かり易くするため、中心軸L2は中心軸L1と重ならないようにしている。
【0080】
次に、傾斜制御部306は、傾斜機構206を制御して、形成されるマークがずれないようにマーキング面218の中心点Oを少なくとも側面部Sの平面方向において固定しつつ、マーキング部材216のマーキング面218を側面部Sに接触させた状態で、マーキング部材216を、図10(A)に示すように傾斜前の状態に戻す。その後、傾斜制御部306は、傾斜機構206を制御して、形成されるマークがずれないようにマーキング面218の中心点Oを少なくとも側面部Sの平面方向において固定しつつ、マーキング部材216のマーキング面218を側面部Sに接触させた状態で、マーキング部材216を、図10(C)に示すように、紙面奥側(後方向)に傾斜させる。なお、中心軸L2は、紙面奥側に傾斜させると、正確には中心軸L1と重なって見えるはずだが、図10(C)においては、傾斜を分かり易くするため、中心軸L2は中心軸L1と重ならないようにしている。
【0081】
次に、傾斜制御部306は、傾斜機構206を制御して、形成されるマークがずれないようにマーキング面218の中心点Oを少なくとも側面部Sの平面方向において固定しつつ、マーキング部材216のマーキング面218を側面部Sに接触させた状態で、マーキング部材216を、図10(A)に示すように傾斜前の状態に戻す。その後、傾斜制御部306は、傾斜機構206を制御して、形成されるマークがずれないようにマーキング面218の中心点Oを少なくとも側面部Sの平面方向において固定しつつ、マーキング部材216のマーキング面218を側面部Sに接触させた状態で、マーキング部材216を、図10(D)に示すように、紙面左側(左方向)に傾斜させる。
【0082】
次に、傾斜制御部306は、傾斜機構206を制御して、形成されるマークがずれないようにマーキング面218の中心点Oを少なくとも側面部Sの平面方向において固定しつつ、マーキング部材216のマーキング面218を側面部Sに接触させた状態で、マーキング部材216を、図10(A)に示すように傾斜前の状態に戻す。その後、傾斜制御部306は、傾斜機構206を制御して、形成されるマークがずれないようにマーキング面218の中心点Oを少なくとも側面部Sの平面方向において固定しつつ、マーキング部材216のマーキング面218を側面部Sに接触させた状態で、マーキング部材216を、図10(E)に示すように、紙面右側(右方向)に傾斜させる。
【0083】
以上により、ステップS112の処理を終える。なお、以上の処理は、具体的には、モータ220を駆動させてエアシリンダ224を回転させ、前後左右の各位置で、エアシリンダ224を作動させ、ピストンロッド232を突出させたり引っ込んだりさせることにより実現できる。
【0084】
本発明の第2実施形態に係るマーキング装置のマーキング処理によれば、以上のように前後左右にマーキング部材216を傾斜させることにより、タイヤTの側面部Sにマーキングが施され、当該側面部Sにマークが形成されることになる。
この結果、タイヤTの側面部Sのうちマーキングする面が、図10に示すように曲面形状の複雑面であっても、マーキング面218が当該複雑面へ食い込み、マーキング面218が単純にタイヤTの側面部Sに接触した状態では接触しなかった箇所にも接触するようになる。これにより、タイヤTの側面部Sに形成されるマークが欠けることを抑制できる。
また、マーキング部材216を傾斜させる方向が、第1実施形態に比べて少ないので、処理時間を早くすることができる。
【0085】
<変形例>
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであり、例えば上述の複数の実施形態は、適宜、組み合わせて実施可能である。また、以下の変形例を、適宜、組み合わせてもよい。
【0086】
例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、図4に示すマーキング部200の構成を説明したが、マーキング部200の構成は、図4に示す構成に限定されず、マーキングテープ供給機構等様々な構成を追加や削除、変更することができる。同様に、傾斜機構206も、図4に構成に限定されず、様々な構成を追加や削除、変更することができる。例えば、第1実施形態では、構成を説明し易いようなものを用いて説明したが、従来から用いられてきた傾斜機構を用いて上述の制御をするようにしてもよい。ここで、従来から用いられてきた傾斜機構を用いて上述の制御をする場合にも、形成されるマークがずれないようにマーキング面218の中心点Oを少なくとも側面部Sの平面方向において固定しつつ、マーキング部材216を傾斜させることのできる機構であることが好ましい。
【0087】
また、第2実施形態では、マーキング部材216を前後左右に順に傾斜させたが、この傾斜の順序は特に限定はなく、例えばマーキング部材216を左右前後に順に傾斜させてもよい。さらに、マーキング部材216を左右のみ又は前後のみ傾斜させてもよい。なお、この場合も、順序は特に問わない。さらにまた、左右前後にとらわれず、複数の方向に順に傾斜させるようにしてもよい。
【0088】
また、システムコントローラ300は、タイヤTの種類に応じて、マーキング部材216の傾斜の角度を調整する場合を説明したが、マーキング装置10がタイヤTの側面部Sの形状を測定する不図示の形状測定装置を備え、システムコントローラ300は、マーキングする前に、この形状測定装置を用いて、タイヤTの側面部Sの形状を測定しておき、マーキングの際にその測定した結果に応じて、マーキング部材216の傾斜の角度を調整するようにしてもよい。
【0089】
また、第1実施形態では、接離制御部304は、接離機構312を制御し、マーキング面218がタイヤTの側面部Sに対して略平行に接触するように、マーキング部200を角度調整しながら移動させる場合を説明したが、マーキング面218がタイヤTの側面部Sに対して元々傾斜した状態で接触するように、マーキング部200を角度調整しながら移動させてもよい。
【0090】
また、接離機構312は、マーキング部材216をタイヤTの側面部Sに接離させる機構である場合を説明したが、マーキング部材216とタイヤTの側面部Sとを相対的に接離させるものであればよい。すなわち、接離機構312は、タイヤTの側面部Sをマーキング部材216に接離させる例えばジャッキのような機構であってもよい。
【0091】
また、図7に示すステップS104又はステップS106、ステップS116の処理は、手動で行ってもよい。
【0092】
また、図7に示すステップS112のマーキング部材216の傾斜については、システムコントローラ300による制御で行う場合を説明したが、傾斜機構206自体が、システムコントローラ300による制御に代替する物理的構成を備えるようにしてもよい。このような構成としては、例えばタイマと、タイマに連動してエアシリンダ224を左右に動かす移動機構と、タイマに連動してモータ220を駆動する電子回路等を備える物理的構成が挙げられる。
【0093】
また、マーキング面218は、平らである場合を説明したが、中心部が凸状の形状であってもよいし、文字等が刻まれて凹凸状になっていてもよい。
【0094】
また、操作部308や表示部310は、省略することもできる。
また、マーキング面218は、弾性体で構成される場合を説明したが、金属等で構成されるようにしてもよい。ただし、傾斜の際に、弾性体の方が、側面部Sの複雑面にある隙間や凹部などにもマーキング面218が食い込む可能性が高いため、マーキング面218は、弾性体で構成されることが好ましい。
【0095】
また、マーキングの際、支持リム12は省略することもできる。支持リム12を省略する場合、例えばアゴ機構を使用してマーキング方向の逆方向から力をかけてマーキングすることができる。
【0096】
また、以上のマーキング処理は、熱転写にてマーキングを行う場合を説明したが、シールのように貼り付けてマーキングを行う場合にも適用ができる。
【符号の説明】
【0097】
10 マーキング装置
206 傾斜機構
216 マーキング部材
218 マーキング面
300 システムコントローラ(制御手段)
304 接離制御部(制御手段)
306 傾斜制御部(制御手段)
312 接離機構
314 マーキングプログラム
L1 傾斜前の中心軸
L2 傾斜後の中心軸
O 中心点
S 側面部
T タイヤ
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーキング装置及びマーキングプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気入りタイヤなどのタイヤの側面部には、メーカー名や製品名等のマークがマーキングされている。
【0003】
このようなマーキングは、従来から、マーキング面をタイヤ側面部と平行にした状態で当該タイヤ側面部に押圧及び熱転写することにより当該タイヤ側面部にマーキングするマーキング装置によって行われている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−5774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、タイヤ側面部には、平らな面だけでなく、曲面や凹凸面、文字面、ローレット加工された面等の複雑な面(以下、複雑面という)がある。このような複雑面に対してマーキングするとき、マーキング装置のマーキング面の一部が複雑面に接触せず、マーク(印影)が欠ける場合があった。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、マークが欠けることを抑制できるマーキング装置及びマーキングプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係るマーキング装置は、マーキング面が形成されたマーキング部材と、前記マーキング部材とタイヤの側面部とを相対的に接離させる接離機構と、前記接離機構により前記マーキング部材の前記マーキング面を前記側面部に接触させた状態で、前記マーキング部材を前記側面部に対して複数の方向に傾斜させる傾斜機構と、を備える。
【0008】
この構成によれば、傾斜機構が、接離機構によりマーキング部材のマーキング面を側面部に接触させた状態で、マーキング部材を側面部に対して複数の方向に傾斜させるので、タイヤの側面部にマーキングが施され、当該側面部にマークが形成されることになる。
この結果、タイヤの側面部のうちマーキングする面が複雑面であっても、マーキング面が当該複雑面へ食い込み、マーキング面が単純にタイヤの側面部に接触した状態では接触しなかった箇所にも接触するようになる。これにより、タイヤの側面部に形成されるマークが欠けることを抑制できる。
【0009】
本発明の第2態様に係るマーキング装置では、第1態様において、前記傾斜機構は、前記マーキング面の中心点を固定しつつ、前記マーキング部材を傾斜させる機構であり、前記傾斜の際に、前記マーキング部材を傾斜状態とさせたまま、前記中心点を固定しつつ、前記中心点を通る前記マーキング部材の中心軸の一端を、前記中心点を通る前記マーキング部材の傾斜前の中心軸に対して公転させる。
【0010】
この構成によれば、傾斜機構は、上記傾斜の際に、マーキング部材を傾斜状態とさせたまま、マーク面の中心点を固定しつつ、当該中心点を通るマーキング部材の中心軸の一端を、中心点を通るマーキング部材の傾斜前の中心軸に対して公転させるので、マーキング部材のマーキング面が傾斜した状態でマーキング面は回転しないまま、マーキング部材及びマーキング面の傾斜の方向が前後左右を含んだ全方向に順に切り替わる。
これにより、複雑面にマーキング面が均等に当たるようになるので、形成されるマークが欠けることをより一層抑制できる。
【0011】
本発明の第3態様に係るマーキング装置では、第1態様又は第2態様において、前記傾斜機構を制御して、前記マーキング部材を複数の方向に傾斜させる制御手段、を備える。
【0012】
この構成によれば、傾斜機構は、マーキング部材をタイヤの側面部に対して複数の方向に傾斜させる構成を備えるだけでよく、その機能を実現する構成(傾斜を開始させる構成(タイマなど)などは、制御手段が代替するので、不要となる。
【0013】
本発明の第4態様に係るマーキング装置では、第3態様において、前記制御手段は、マーキングする前記タイヤに応じて、前記傾斜の角度を調整する。
【0014】
この構成によれば、制御手段は、マーキングするタイヤに応じて、傾斜の角度を調整するので、そのタイヤの側面部の複雑面に適したマーキング面の傾斜の角度とすることができ、マークが欠けることをより一層抑制できる。
【0015】
本発明の第5態様に係るマーキング装置では、第3態様又は第4態様において、前記側面部の形状を測定する形状測定装置を備え、前記制御手段は、前記形状測定装置の測定結果に応じて、前記傾斜の角度を調整する。
【0016】
この構成によれば、制御手段は、マーキングするタイヤの側面部の形状に応じて、傾斜の角度を調整するので、そのタイヤの側面部の複雑面に適したマーキング面の傾斜の角度とすることができ、形成されるマークが欠けることをより一層抑制できる。
【0017】
本発明の第6態様に係るマーキング装置では、第3態様〜第5態様の何れか1つにおいて、前記マーキング部材を傾斜させるか否かの要否情報を予め記憶する記憶部を備え、前記制御手段は、前記要否情報に基づき、前記マーキング部材を傾斜させるか否か判断する。
【0018】
この構成によれば、例えばマーキングするタイヤの側面部が平らである場合にまで、マーキング面を傾斜させないようにすることができる。
【0019】
本発明の第7態様に係るマーキングプログラムは、マーキング装置の中央処理装置に対し、マーキング面が形成されたマーキング部材をタイヤの側面部に対して接離させる接離機構により前記マーキング部材の前記マーキング面が前記側面部に接触した状態で、前記マーキング部材を傾斜させる傾斜機構を制御させ、前記マーキング部材を左右又は前後に傾斜させるステップ、を実行させるためのマーキングプログラムである。
【0020】
この構成によれば、タイヤの側面部のマーキングする面が複雑面であっても、マーキング面が当該複雑面へ食い込み、マーキング面が単純にタイヤの側面部に接触した状態では接触しなかった箇所にも接触するようになる。これにより、タイヤの側面部に形成されるマークが欠けることを抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、上記構成としたので、マークが欠けることを抑制できるマーキング装置及びマーキングプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係るマーキング装置の全体構成図である。
【図2】図2は、図1のI−I矢視断面図である。
【図3】図3は、図1のII−II矢視断面図である。
【図4】図4は、マーキング部の概略構成を示す図である。
【図5】図5(A)及び(B)は、図4に示すマーキング部の作用を示す図である。
【図6】図6は、本発明の第1実施形態に係るマーキング装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、マーキングに関連するシステムコントローラの処理の流れを示すフローチャートである。以下、括弧内は図中のステップ識別符号である。
【図8】図8(A)〜(E)は、第1実施形態に係る傾斜制御部の制御によるマーキング部材の動きの流れを示す図である。
【図9】図9は、マーキングする面がローレット加工された複雑面の場合に、本発明の第1実施形態に係るマーキング装置のマーキング処理を実行した結果を示す図である。
【図10】図10(A)〜(E)は、第2実施形態に係る傾斜制御部の制御によるマーキング部材の動きの流れを示す図である。
【図11】図11は、マーキングする面がローレット加工された複雑面の場合に、従来のマーキング装置のマーキング処理を実行した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る記録媒体搬送装置及び画像形成装置について具体的に説明する。なお、図中、同一又は対応する機能を有する部材(構成要素)には同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0024】
−マーキング装置の装置構成−
図1は、本発明の第1実施形態に係るマーキング装置の全体構成図である。図2は、図1のI−I矢視断面図である。
【0025】
本発明の第1実施形態に係るマーキング装置10は、支持リム12、またはビード支持機構によって横置きの状態で支持された空気入り、又は空気無しとされたタイヤTの側面部Sの所定位置にマーキングする装置である。空気入りタイヤTは、支持リム12と共に垂直軸回りに回転することができ、マーキングするタイヤTの側面部Sには、走行時に路面に接地するトレッド部14以外の箇所を含み、例えばビード部やショルダー部、サイド部等が含まれる。
【0026】
マーキング装置10は、上端が固定フレーム16に固定された上下方向に延びる支持軸18を有し、この支持軸18には該支持軸18と同軸の円筒状をした回転体20の上端部が回転可能に支持されている。また、マーキング装置10は、この回転体20の上端部と固定フレーム16の双方に挿入されているが取り外し可能である停止部材としてのストッパーピン22を有しており、このストッパーピン22が挿入されると、固定フレーム16と回転体20とは連結されて回転体20の回転が停止され、一方、このストッパーピン22を抜き出すと、回転体20は垂直軸回りに自由に回転することができる。そして、このように回転体20が自由回転できるときに、この回転体20を、例えば作業者が110度程度回転させると、後述のマーキング部200はタイヤTから大きく離れた退避位置まで移動し、マーキング時に用いる消耗品としてのマーキングテープのリール交換作業が容易となる。
【0027】
この回転体20の下端には前後方向に延びる矩形板状をした水平プレート24が固定され、この水平プレート24の直下には該水平プレート24に平行な矩形板状の移動プレート26が設置されている。この移動プレート26の上面には長手方向に延びる一対のガイドレール28が敷設され、これらのガイドレール28には水平プレート24の下面に固定された一対のスライドベアリング30が摺動可能に係合している。
【0028】
図2に示すように、水平プレート24の一側方には、ヘッド側が該水平プレート24の後端部に連結されたエアシリンダ32が設けられてり、このエアシリンダ32は移動プレート26を含む後述の移動台100の移動方向に延びるとともに、ピストンロッド34の先端が前記移動プレート26に連結されている。この結果、前記エアシリンダ32が作動してピストンロッド34が突出したり引っ込んだりすると、移動プレート26を含む移動台100に前後方向の駆動力が付与され、これにより、該移動台100はガイドレール28に案内されながら長手方向に移動してタイヤTに対し接近離隔する。前述した回転体20、水平プレート24は全体として、固定フレーム16に支持され垂直軸回りに回転することができるベース25を構成する。
【0029】
ベース25、詳しくは水平プレート24の他側端に固定されたブラケット36には、変更手段としてのエアシリンダ38が取り付けられている。このエアシリンダ38は、移動プレート26を含む移動台100の移動方向、ここでは前後方向に延びている。
エアシリンダ38のシリンダ室40に摺動可能の収納されたピストン42には、ピストンロッド44、46が設けられ、ピストンロッド44は前方に向かってエアシリンダ38から突出し、一方、ストッパーとしてのピストンロッド46は後方に向かってエアシリンダ38から突出している。
【0030】
このエアシリンダ38より後方の移動プレート26には、ねじブロック48が取り付けられる。このねじブロック48には、ピストンロッド46と同軸のねじ軸50がねじ込まれ、このねじ軸50の先端(前端)には当接ブロック52が、また、その後端には手回し用のハンドル54が設けられている。そして、エアシリンダ38の前側シリンダ室40aにエアが供給されてピストンロッド46が後側ストロークエンドまで突出しているとき、エアシリンダ32のピストンロッド34が突出すると、移動プレート26は前方に移動するが、この移動は移動台100の一部である当接ブロック52がピストンロッド46の先端(後端)に当接したとき停止し、このとき、後述するマーキング部200はタイヤTの側面部Sのマーキングを行う所定位置近傍まで移動される。ここで、マーキングを行うタイヤTのサイズが異なると、マーキングを行う所定位置も変化するが、この場合には手動で又は自動でハンドル54を回転させてねじ軸50のねじ込み位置を変化、即ちねじ軸50を前後方向に移動させることにより、移動プレート26(マーキング部200)の停止位置を変更して対処する。なお、エアシリンダ38やハンドル54の駆動を自動で行う場合は、後述するシステムコントローラ300によって行う。
【0031】
また、エアシリンダ38より前方の水平プレート24には、ブラケット56が固定されている。このブラケット56にはピストンロッド44と同軸のストッパーボルト58がねじ込まれている。ここで、前述のようにエアシリンダ38の前側シリンダ室40aにエアが供給されてピストンロッド46が後側ストロークエンドまで突出しているとき、このストッパーボルト58の後端とピストンロッド44の先端(前端)との間には所定、ここでは10mmの間隙60が形成されている。
【0032】
そして、前述のように当接ブロック52がピストンロッド46の先端に当接して移動プレート26が前方限まで移動しているとき、エアシリンダ38の後側シリンダ室40bにエアを供給すると、ピストンロッド44はその先端(前端)がストッパーボルト58の後端に当接するまで移動台100の移動方向、ここでは前方に移動するが、このとき、ストッパーとしてのピストンロッド46も同量だけ前方に移動するため、移動プレート26(移動台100)はエアシリンダ32から付与された移動力によりピストンロッド46に追従移動して、その停止位置が変更される。この結果、移動プレート26(移動台100)は2つの停止位置で停止することができる。これにより、マーキングを行うタイヤTの側面部Sの所定位置に文字等が存在してマーキング部200によるマーキングを行うことができないときには、このマーキング位置を前記間隙60分だけ前方にずらして文字等の存在しない位置に簡単な構成で容易に変更することができる。なお、前記間隙60の値、即ち前述のずらし量はストッパーボルト58のねじ込み位置を変化させることで容易に変更することができる。また、前述の前方へのずらし量が一定値でよい場合には、ストッパーボルト58を省略し、ピストン42を前側ストロークエンドまで移動させてエアシリンダ38に当接させることで前方にずらすようにすればよい。
【0033】
図1において、移動プレート26の下面には前後方向に離れた一対の支持体62、64が固定され、これらの支持体62、64には前後方向に延びる水平な回転軸66が軸受68、70を介して回転可能に支持されている。そして、この回転軸66の回転軸線の延長線はタイヤTの赤道面と同一高さに位置している。支持体64にはロータリーアクチュエータ72が固定され、このロータリーアクチュエータ72は回転軸66を回転軸線回りに回転させる。
【0034】
そして、後述するマーキング部200によってタイヤTの下側の側面部Sにマーキングを行う場合には、このロータリーアクチュエータ72を作動して回転軸66を半回転させることで、該マーキング部200をタイヤTの下側まで移動させる。
【0035】
図3は、図1のII−II矢視断面図である。
【0036】
回転軸66の前端には上下方向に延びる矩形の垂直プレート74が固定され、この垂直プレート74の前面には上下方向に延びる一対のガイドレール76が敷設されている。また、この垂直プレート74の前方には、該垂直プレート74に平行に延びる昇降プレート78が設置されている。この昇降プレート78の後面にはガイドレール76に摺動可能に係合する一対のスライドベアリング80が固定されている。
【0037】
垂直プレート74の一側方には、上下方向に延びるブレーキ付きのシリンダ82が設置されている。このシリンダ82のヘッド側は垂直プレート74の下端部に連結されている。また、シリンダ82のピストンロッド84の先端(上端)はブラケット86を介して昇降プレート78に連結されており、この結果、シリンダ82が作動してピストンロッド84が突出したり引っ込んだりすると、昇降プレート78は上下方向に移動し、後述するマーキング部200をタイヤTのサイズ変更に応じて上下方向に移動させる。
【0038】
図1の参照に戻って、昇降プレート78の前面には、前方に向かって延びる支持アーム88が固定されている。この支持アーム88の前端部には一側他側方向に延びる水平な回動軸90が回動可能に支持されている。前述した移動プレート26、ねじ軸50、当接ブロック52、支持体62、64、回転軸66、垂直プレート74、昇降プレート78、支持アーム88は全体として、ベース25に前後方向に移動可能に支持された移動台100を構成する。この移動台100の先端部、即ち、回動軸90にはタイヤTの側面部Sの所定位置にマーキングを行うマーキング部200が取り付けられている。
【0039】
また、回転軸90には、連結アーム92の前端が固定されている。この連結アーム92の後端には昇降プレート78の他側端にヘッド側が連結された上下方向に延びるエアシリンダ94のピストンロッド96の先端(上端)が連結されている。この結果、エアシリンダ94が作動してピストンロッド96が突出したり引っ込んだりすると、マーキング部200は回動軸90を中心として揺動しながら下降、上昇し、マーキングを行う所定位置に対して接近離隔するとともに、タイヤTの側面部Sに対する傾斜角度が変化する。昇降プレート78の前面に固定されたブラケット98であり、このブラケット98には上下方向に延びるストッパーボルト102がねじ込まれており、このストッパーボルト102はブラケット98に対するねじ込み位置を調節することができる。
また、連結アーム92の途中には、ストッパー104が取り付けられており、このストッパー104は、連結アーム92がピストンロッド96の突出によって上方に揺動したとき、ストッパーボルト102の下端に当接して連結アーム92およびマーキング部200の揺動を停止させ、マーキング部200のタイヤTへの過接近を阻止する。そして、マーキングを行う所定位置、タイヤTの種類等の変更に応じてマーキング部200のタイヤTに対する傾斜角度を変更する必要がある場合には、ストッパーボルト102のねじ込み量を調節することにより容易に対処することができる。
【0040】
−マーキング部200の構成−
図4は、マーキング部200の概略構成を示す図である。
【0041】
図4に示すように、マーキング部200は、主として、板部材202と、マーキング機構204と、傾斜機構206と、で構成されている。
【0042】
板部材202は、後端が回転軸90に回転可能に支持された矩形状の板部材である。この板部材202の先端部には、当該板部材202の上面から下面へ貫通した平面視が円形状の貫通口208が設けられている。この貫通口208には、当該貫通口208に固定された状態で円柱状のゴム部材210が埋設されている。
【0043】
このゴム部材210の中心部には、当該ゴム部材210の上面から下面へ貫通した平面視が円形状の貫通口212が設けられている。この貫通口212には、マーキング機構204の一部が挿入されている。
【0044】
具体的に、マーキング機構204は、円柱状の支持軸棒214を備えており、この支持軸棒214の一部が、貫通口212に固定された状態で真っ直ぐ挿入されている。また、マーキング機構204は、支持軸棒214の下端に固定され、下面として平らなマーキング面218を有する円柱状のマーキング部材216を備えている。このマーキング面218は、ゴム等の弾性体で構成されており、マーキングの際にマーキングテープが貼られる。なお、マーキングテープの貼り付け及び供給は、手作業で行ってもよいし、不図示のテープ供給手段及びテープ貼付手段をマーキング機構204に設けてもよい。
【0045】
また、支持軸棒214は、ゴム部材210と傾斜機構206により、前後左右を含む全方向(円形状のゴム部材210を平面視したとき、その円の360度の全角度方向である)へ傾斜可能されており、所謂「ジョイスティック構造」のような動きが可能とされている。
【0046】
傾斜機構206は、マーキング部材216におけるマーキング面218の中心点Oを固定して(支点として)、マーキング面218を上述のように全方向へ傾斜させる機構である。
【0047】
具体的に、傾斜機構206は、主として、モータ220と、ギア222と、エアシリンダ224と、で構成されている。
【0048】
モータ220は、板部材202の貫通口208の付近に埋設されている。モータ220の回転軸226は、板部材202の上面から突出しており、その突出部分に回転軸226とともに回転する円柱状のギア228が設けられている。
【0049】
このギア228には、ギア222と噛み合っている。ギア222は、中央が中空部230の円筒状とされており、その中空部230の内壁が、貫通口208を囲むように板部材202の上面に配置されている。中空部230の中心部には、貫通口208の中心部から上方に向かって延びる支持軸棒214が、傾斜可能に位置している。
【0050】
また、ギア222には、当該ギア222の径方向に延びるエアシリンダ224が埋設されている。エアシリンダ224は、ピストンロッド232の先端が支持軸棒214に当接している。なお、ピストンロッド232の先端には、エアシリンダ224がギア222とともに回転したときでも、ピストンロッド232の先端が支持軸棒214に当接するように(支持軸棒214がピストンロッド232の先端から逃げないように)、支持軸棒214の周面を回転可能に囲うリング部材234が設けられている。
この結果、エアシリンダ224が作動してピストンロッド232が突出したり引っ込んだりすると、支持軸棒214に中空部230の径方向への駆動力が付与される。具体的に、図5(A)に示すように、ピストンロッド232が突出すると、支持軸棒214が板部材202に対して起立状態から所定の方向(例えば図5(A)の紙面左側方向)へ傾斜し、マーキング面218の中心点Oを支点として、マーキング部材216及びそのマーキング面218が板部材202(タイヤTの側面部S)に対して傾斜する。また、ピストンロッド232が引っ込むと、支持軸棒214が傾斜状態から起立状態に戻り、マーキング面218の中心点Oを支点として、マーキング部材216及びそのマーキング面218が板部材202(タイヤTの側面部S)に対して平行となる。
また、図5(B)に示すように、モータ220によるギア228の回転をすると、ギア222とともにエアシリンダ224が平面視で時計回りに回転する。これにより、ギア228の時計回りの回転量を調整することで、マーキング面218をどの方向へも傾斜させるようにすることができる。
【0051】
−マーキング装置の制御構成−
図6は、本発明の第1実施形態に係るマーキング装置10の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0052】
図6に示すように、マーキング装置10は、システムコントローラ300、通信部302、接離制御部304、傾斜制御部306、操作部308、表示部310等が備えられる。
【0053】
システムコントローラ300は、マーキング装置10の各部を統括制御する制御手段として機能するとともに、各種演算処理を行う演算手段として機能する。このシステムコントローラ300は、CPU300A、ROM300B、RAM300C等を備えており、所定の制御プログラムに従って動作する。ROMには、このシステムコントローラ300が、実行するマーキングプログラム314を含む制御プログラム、及び、制御に必要な各種データが格納される。
【0054】
通信部302は、所要の通信インターフェースを備え、その通信インターフェースと接続されたホストコンピュータとの間でデータの送受信を行う。
【0055】
接離制御部304は、システムコントローラ300からの指令に応じて、接離機構312を制御し、マーキング面218がタイヤTの側面部Sに対して略平行に接触するように、マーキング部200を角度調整しながら移動させる。なお、接離機構312は、マーキング部材216をタイヤTの側面部Sに接離させる機構であり、エアシリンダ32、エアシリンダ38、ロータリーアクチュエータ72、シリンダ82、エアシリンダ94等を含んで構成されている。なお、接離制御部304の制御内容は、操作部308で手動によっても行うことができる。
【0056】
傾斜制御部306は、システムコントローラ300からの指令に応じて、傾斜機構206を制御する。具体的な制御については、後述する。
【0057】
操作部308は、所要の操作手段(たとえば、操作ボタンやキーボード、タッチパネル等)を備え、その操作手段から入力された操作情報をシステムコントローラ300に出力する。システムコントローラ300は、この操作部308から入力された操作情報に応じて各種処理を実行する。
【0058】
−処理内容−
図7は、マーキングに関連するシステムコントローラ300の処理の流れを示すフローチャートである。以下、括弧内は図中のステップ識別符号である。
システムコントローラ300は、マーキングプログラム314に従って、図7及び以下に示すようなマーキング処理を実行する。
【0059】
(ステップS100)システムコントローラ300は、通信部302を介してホストコンピュータからマーキング情報を取得する。なお、このマーキング情報には、マーキングの要否情報やマーキング部材216を傾斜させるか否かの要否情報、マーキングの位置情報、タイヤTの種類、タイヤTの高さ情報、タイヤ位相情報、タイヤ面入射角度情報等が含まれている。また、取得するマーキング情報は、RAM等の記憶装置に格納される。
【0060】
(ステップS102)システムコントローラ300は、取得したマーキング情報のうちマーキングの要否情報を参照し、例えば「マーキング必要」という情報であれば、次のステップS104に進み、例えば「マーキング不要」という情報であれば、処理を終える。
【0061】
(ステップS104)システムコントローラ300は、マーキングの位置情報やタイヤ位相情報、タイヤ面入射角度情報等に基づき、すなわちマーキングするタイヤTに応じて、位置決めする。具体的には、システムコントローラ300は、マーキングするタイヤTに応じて、接離制御部304に指令を与える。そして、接離制御部304は、この指令に応じて、接離機構312を制御して、マーキング部材216がタイヤTの側面部Sにおいてマーキング位置の上方に位置するまでマーキング部200全体を移動させ、マーキング面218がタイヤTの側面部Sと略平行になるようにマーキング部200全体の傾斜角度を調整する。
【0062】
(ステップS106)
システムコントローラ300は、タイヤTの高さ情報に応じて、接離制御部304に指令を与える。そして、接離制御部304は、この指令に応じて、接離機構312を制御して、マーキング部材216がタイヤTの側面部Sにおいてマーキング位置の上方の位置から低速下降し、マーキング部材216のマーキング面218が側面部Sのマーキング位置に接触し、押圧するまで、マーキング部200全体を移動させる。また、システムコントローラ300は、適宜、マーキング部材216を不図示の加熱手段で加熱して、押圧及び以下の傾斜の際に、マーキングテープをタイヤTの側面部Sに熱転写できるようにしておく。
【0063】
(ステップS106)システムコントローラ300は、タイヤTの高さ情報に応じて、接離制御部304に指令を与える。そして、接離制御部304は、マーキング面218が側面部Sのマーキング位置に接触した状態を保ちつつ、マーキング部200全体の移動を停止させる。
【0064】
(ステップS110)システムコントローラ300は、取得したマーキング情報のうちマーキング部材216を傾斜させるか否かの要否情報を参照し、例えば「傾斜必要」という情報であれば、次のステップS112に進み、例えば「傾斜不要」という情報であれば、ステップS116に進む。
【0065】
(ステップS112)システムコントローラ300は、タイヤTの種類に応じて、傾斜制御部306に指令を与える。そして、傾斜制御部306は、この指令に応じて、傾斜機構206を制御して、マーキング部材216のマーキング面218を側面部Sに接触させた状態で、マーキング部材216を、タイヤTの種類に適した傾斜角度に調整しつつ、左右前後を含んだ全方向へ傾斜させる。
【0066】
図8(A)〜(E)は、傾斜制御部306の制御によるマーキング部材216の動きの流れを示す図である。なお、図8では、側面部Sのマーキングする面が曲面形状の複雑面となっている。
【0067】
第1実施形態では、マーキング部材216を、左右前後を含んだ全方向へ傾斜させるために、傾斜制御部306は、具体的に図8及び以下に示すような制御をする。
【0068】
まず図8(A)及び(B)に示すように、傾斜制御部306は、傾斜機構206を制御して、形成されるマークがずれないようにマーキング面218の中心点Oを少なくとも側面部Sの平面方向において固定しつつ、マーキング部材216のマーキング面218を側面部Sに接触させた状態で、マーキング部材216を傾斜させる。ここで、傾斜前のマーキング部材216の中心軸をL1とし、傾斜後のマーキング部材216の中心軸をL2とすると、中心軸L1は、中心点Oを通り、且つ、タイヤTの側面部Sの法線と略一致する。なお、マーキング面218の中心点Oを少なくとも側面部Sの平面方向において固定させるのは、傾斜制御部306が制御する必要はなく、傾斜機構206自体の構造において実現されている。
【0069】
次に、図8(B)〜(E)に示すように、傾斜制御部306は、傾斜機構206を制御して、形成されるマークがずれないようにマーキング面218の中心点Oを少なくとも側面部Sの平面方向において固定しつつ、マーキング部材216を傾斜状態とさせたまま、中心点Oを通るマーキング部材216の中心軸L2の一端を、中心点Oを通るマーキング部材216の傾斜前の中心軸L1に対して公転させる。
なお、この制御を実現するためには、具体的に、まず傾斜機構206のエアシリンダ224を作動させ、ピストンロッド232を所定距離突出させる。これにより、支持軸棒214の端部が押されて傾斜し、上述したマーキング部材216の「傾斜」を実現できる。また、傾斜機構206のモータ220を制御させ、ピストンロッド232を所定距離突出させた状態を保ちつつ、エアシリンダ224を平面視で時計回りに回転させる。これにより、上述した「公転」を実現できる。
【0070】
(ステップS114)システムコントローラ300は、傾斜制御部306に指令を与える。そして、傾斜制御部306は、傾斜機構206を制御して、中心軸L2の一端を少なくとも1回転公転させたら、傾斜制御部306に指令を与える。そして、傾斜制御部306は、この指令に応じて、傾斜機構206を制御して、マーキング部材216の傾斜を停止させる。具体的には、ピストンロッド232を引っ込ませることで、支持軸棒214が傾斜状態から起立状態に戻り、マーキング面218の中心点Oを支点として、マーキング部材216及びそのマーキング面218が板部材202(タイヤTの側面部S)に対して平行となる。
【0071】
(ステップS116)システムコントローラ300は、接離制御部304に指令を与える。そして、接離制御部304は、この指令に応じて、接離機構312を制御して、マーキング部材216が原点(初期位置)に戻るまで、マーキング部200全体を移動させる。
【0072】
以上のマーキング処理によれば、マーキング部材216を、左右前後を含んで傾斜させることにより、タイヤTの側面部Sにマーキングが施され、当該側面部Sにマークが形成されることになる。
この結果、タイヤTの側面部Sのうちマーキングする面が、図8に示すように曲面形状の複雑面であっても、マーキング面218が当該複雑面へ食い込み、マーキング面218が単純にタイヤTの側面部Sに接触した状態では接触しなかった箇所にも接触するようになる。これにより、タイヤTの側面部Sに形成されるマークが欠けることを抑制できる。
【0073】
また、上記傾斜の際に、マーキング部材216を傾斜状態とさせたまま、マーキング面218の中心点Oを固定しつつ、当該中心点Oを通るマーキング部材216の中心軸L2の一端を、中心点Oを通るマーキング部材216の傾斜前の中心軸L1に対して公転させるので、マーキング部材216のマーキング面218が傾斜した状態でマーキング面218は回転しないまま、マーキング部材216及びマーキング面218の傾斜の方向が前後左右を含んだ全方向に順に切り替わる。これにより、複雑面にマーキング面218が均等に当たるようになるので、形成されるマークが欠けることをより一層抑制できる。
【0074】
なお、マーキングする面は、曲面形状の複雑面である場合を説明したが、どのような複雑面であっても、上記マーキング処理を実行することにより、タイヤTの側面部Sに形成されるマークが欠けることを抑制できる。
例えば、図9は、マーキングする面がローレット加工された複雑面の場合に、本発明の第1実施形態に係るマーキング装置10のマーキング処理を実行した結果を示す図である。図11は、マーキングする面がローレット加工された複雑面の場合に、従来のマーキング装置のマーキング処理を実行した結果を示す図である。
【0075】
図11に示すように、タイヤTの側面部Sにマーキングする面が、ローレット加工された複雑面Pの場合に、従来のマーキング装置のマーキング処理を実行すると、タイヤTの側面部Sに形成されるマークMが欠けてしまう。
一方で、図9に示すように、タイヤTの側面部Sにマーキングする面が、ローレット加工された複雑面Pの場合に、本発明の第1実施形態に係るマーキング装置10のマーキング処理を実行すると、タイヤTの側面部Sに形成されるマークMが欠けることを抑制できる。
なお、マーキング対象の「複雑面」は、曲面形状やローレット加工された複雑面の他に、文字面等の凹凸面やタイヤスピュー(タイヤから出るヒゲ)面、図9中のフィン面等であってもよい。
【0076】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るマーキング装置について説明する。本発明の第2実施形態に係るマーキング装置の構成は、第1実施形態に係るマーキング装置10の構成と同じである。ただし、システムコントローラ300が実行するマーキング処理及びそのマーキングプログラム314のステップS112の処理のみ異なる。
【0077】
第2実施形態では、ステップS112において、システムコントローラ300は、タイヤTの種類に応じて、傾斜制御部306に指令を与える。そして、傾斜制御部306は、この指令に応じて、傾斜機構206を制御して、マーキング部材216のマーキング面218を側面部Sから接触させた状態で、マーキング部材216を、タイヤTの種類に適した傾斜角度に調整しつつ、前後左右にのみ傾斜させる。
【0078】
図10(A)〜(E)は、第2実施形態に係る傾斜制御部306の制御によるマーキング部材216の動きの流れを示す図である。なお、図10では、側面部Sのマーキングする面が曲面形状の複雑面となっている。
【0079】
具体的に、図10(A)及び(B)に示すように、まず傾斜制御部306は、傾斜機構206を制御して、形成されるマークがずれないようにマーキング面218の中心点Oを少なくとも側面部Sの平面方向において固定しつつ、マーキング部材216のマーキング面218を側面部Sに接触させた状態で、マーキング部材216を紙面手前側(前方向)に傾斜させる。ここで、傾斜前のマーキング部材216の中心軸をL1とし、傾斜後のマーキング部材216の中心軸をL2とすると、中心軸L1は、中心点Oを通り、且つ、タイヤTの側面部Sの法線と略一致する。また、中心軸L2は、紙面手前側に傾斜させると、正確には中心軸L1と重なって見えるはずだが、図10(B)においては、傾斜を分かり易くするため、中心軸L2は中心軸L1と重ならないようにしている。
【0080】
次に、傾斜制御部306は、傾斜機構206を制御して、形成されるマークがずれないようにマーキング面218の中心点Oを少なくとも側面部Sの平面方向において固定しつつ、マーキング部材216のマーキング面218を側面部Sに接触させた状態で、マーキング部材216を、図10(A)に示すように傾斜前の状態に戻す。その後、傾斜制御部306は、傾斜機構206を制御して、形成されるマークがずれないようにマーキング面218の中心点Oを少なくとも側面部Sの平面方向において固定しつつ、マーキング部材216のマーキング面218を側面部Sに接触させた状態で、マーキング部材216を、図10(C)に示すように、紙面奥側(後方向)に傾斜させる。なお、中心軸L2は、紙面奥側に傾斜させると、正確には中心軸L1と重なって見えるはずだが、図10(C)においては、傾斜を分かり易くするため、中心軸L2は中心軸L1と重ならないようにしている。
【0081】
次に、傾斜制御部306は、傾斜機構206を制御して、形成されるマークがずれないようにマーキング面218の中心点Oを少なくとも側面部Sの平面方向において固定しつつ、マーキング部材216のマーキング面218を側面部Sに接触させた状態で、マーキング部材216を、図10(A)に示すように傾斜前の状態に戻す。その後、傾斜制御部306は、傾斜機構206を制御して、形成されるマークがずれないようにマーキング面218の中心点Oを少なくとも側面部Sの平面方向において固定しつつ、マーキング部材216のマーキング面218を側面部Sに接触させた状態で、マーキング部材216を、図10(D)に示すように、紙面左側(左方向)に傾斜させる。
【0082】
次に、傾斜制御部306は、傾斜機構206を制御して、形成されるマークがずれないようにマーキング面218の中心点Oを少なくとも側面部Sの平面方向において固定しつつ、マーキング部材216のマーキング面218を側面部Sに接触させた状態で、マーキング部材216を、図10(A)に示すように傾斜前の状態に戻す。その後、傾斜制御部306は、傾斜機構206を制御して、形成されるマークがずれないようにマーキング面218の中心点Oを少なくとも側面部Sの平面方向において固定しつつ、マーキング部材216のマーキング面218を側面部Sに接触させた状態で、マーキング部材216を、図10(E)に示すように、紙面右側(右方向)に傾斜させる。
【0083】
以上により、ステップS112の処理を終える。なお、以上の処理は、具体的には、モータ220を駆動させてエアシリンダ224を回転させ、前後左右の各位置で、エアシリンダ224を作動させ、ピストンロッド232を突出させたり引っ込んだりさせることにより実現できる。
【0084】
本発明の第2実施形態に係るマーキング装置のマーキング処理によれば、以上のように前後左右にマーキング部材216を傾斜させることにより、タイヤTの側面部Sにマーキングが施され、当該側面部Sにマークが形成されることになる。
この結果、タイヤTの側面部Sのうちマーキングする面が、図10に示すように曲面形状の複雑面であっても、マーキング面218が当該複雑面へ食い込み、マーキング面218が単純にタイヤTの側面部Sに接触した状態では接触しなかった箇所にも接触するようになる。これにより、タイヤTの側面部Sに形成されるマークが欠けることを抑制できる。
また、マーキング部材216を傾斜させる方向が、第1実施形態に比べて少ないので、処理時間を早くすることができる。
【0085】
<変形例>
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであり、例えば上述の複数の実施形態は、適宜、組み合わせて実施可能である。また、以下の変形例を、適宜、組み合わせてもよい。
【0086】
例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、図4に示すマーキング部200の構成を説明したが、マーキング部200の構成は、図4に示す構成に限定されず、マーキングテープ供給機構等様々な構成を追加や削除、変更することができる。同様に、傾斜機構206も、図4に構成に限定されず、様々な構成を追加や削除、変更することができる。例えば、第1実施形態では、構成を説明し易いようなものを用いて説明したが、従来から用いられてきた傾斜機構を用いて上述の制御をするようにしてもよい。ここで、従来から用いられてきた傾斜機構を用いて上述の制御をする場合にも、形成されるマークがずれないようにマーキング面218の中心点Oを少なくとも側面部Sの平面方向において固定しつつ、マーキング部材216を傾斜させることのできる機構であることが好ましい。
【0087】
また、第2実施形態では、マーキング部材216を前後左右に順に傾斜させたが、この傾斜の順序は特に限定はなく、例えばマーキング部材216を左右前後に順に傾斜させてもよい。さらに、マーキング部材216を左右のみ又は前後のみ傾斜させてもよい。なお、この場合も、順序は特に問わない。さらにまた、左右前後にとらわれず、複数の方向に順に傾斜させるようにしてもよい。
【0088】
また、システムコントローラ300は、タイヤTの種類に応じて、マーキング部材216の傾斜の角度を調整する場合を説明したが、マーキング装置10がタイヤTの側面部Sの形状を測定する不図示の形状測定装置を備え、システムコントローラ300は、マーキングする前に、この形状測定装置を用いて、タイヤTの側面部Sの形状を測定しておき、マーキングの際にその測定した結果に応じて、マーキング部材216の傾斜の角度を調整するようにしてもよい。
【0089】
また、第1実施形態では、接離制御部304は、接離機構312を制御し、マーキング面218がタイヤTの側面部Sに対して略平行に接触するように、マーキング部200を角度調整しながら移動させる場合を説明したが、マーキング面218がタイヤTの側面部Sに対して元々傾斜した状態で接触するように、マーキング部200を角度調整しながら移動させてもよい。
【0090】
また、接離機構312は、マーキング部材216をタイヤTの側面部Sに接離させる機構である場合を説明したが、マーキング部材216とタイヤTの側面部Sとを相対的に接離させるものであればよい。すなわち、接離機構312は、タイヤTの側面部Sをマーキング部材216に接離させる例えばジャッキのような機構であってもよい。
【0091】
また、図7に示すステップS104又はステップS106、ステップS116の処理は、手動で行ってもよい。
【0092】
また、図7に示すステップS112のマーキング部材216の傾斜については、システムコントローラ300による制御で行う場合を説明したが、傾斜機構206自体が、システムコントローラ300による制御に代替する物理的構成を備えるようにしてもよい。このような構成としては、例えばタイマと、タイマに連動してエアシリンダ224を左右に動かす移動機構と、タイマに連動してモータ220を駆動する電子回路等を備える物理的構成が挙げられる。
【0093】
また、マーキング面218は、平らである場合を説明したが、中心部が凸状の形状であってもよいし、文字等が刻まれて凹凸状になっていてもよい。
【0094】
また、操作部308や表示部310は、省略することもできる。
また、マーキング面218は、弾性体で構成される場合を説明したが、金属等で構成されるようにしてもよい。ただし、傾斜の際に、弾性体の方が、側面部Sの複雑面にある隙間や凹部などにもマーキング面218が食い込む可能性が高いため、マーキング面218は、弾性体で構成されることが好ましい。
【0095】
また、マーキングの際、支持リム12は省略することもできる。支持リム12を省略する場合、例えばアゴ機構を使用してマーキング方向の逆方向から力をかけてマーキングすることができる。
【0096】
また、以上のマーキング処理は、熱転写にてマーキングを行う場合を説明したが、シールのように貼り付けてマーキングを行う場合にも適用ができる。
【符号の説明】
【0097】
10 マーキング装置
206 傾斜機構
216 マーキング部材
218 マーキング面
300 システムコントローラ(制御手段)
304 接離制御部(制御手段)
306 傾斜制御部(制御手段)
312 接離機構
314 マーキングプログラム
L1 傾斜前の中心軸
L2 傾斜後の中心軸
O 中心点
S 側面部
T タイヤ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マーキング面が形成されたマーキング部材と、
前記マーキング部材とタイヤの側面部とを相対的に接離させる接離機構と、
前記接離機構により前記マーキング部材の前記マーキング面を前記側面部に接触させた状態で、前記マーキング部材を前記側面部に対して複数の方向に傾斜させる傾斜機構と、
を備えるマーキング装置。
【請求項2】
前記傾斜機構は、前記マーキング面の中心点を固定しつつ、前記マーキング部材を傾斜させる機構であり、前記傾斜の際に、前記マーキング部材を傾斜状態とさせたまま、前記中心点を固定しつつ、前記中心点を通る前記マーキング部材の中心軸の一端を、前記中心点を通る前記マーキング部材の傾斜前の中心軸に対して公転させる、
請求項1に記載のマーキング装置。
【請求項3】
前記傾斜機構を制御して、前記マーキング部材を複数の方向に傾斜させる制御手段、
を備える請求項1又は請求項2に記載のマーキング装置。
【請求項4】
前記制御手段は、マーキングする前記タイヤに応じて、前記傾斜の角度を調整する、
請求項3に記載のマーキング装置。
【請求項5】
前記側面部の形状を測定する形状測定装置を備え、
前記制御手段は、前記形状測定装置の測定結果に応じて、前記傾斜の角度を調整する、
請求項3又は請求項4に記載のマーキング装置。
【請求項6】
前記マーキング部材を傾斜させるか否かの要否情報を予め記憶する記憶部を備え、
前記制御手段は、前記要否情報に基づき、前記マーキング部材を傾斜させるか否か判断する、
請求項3〜請求項5の何れか1項に記載のマーキング装置。
【請求項7】
マーキング装置の中央処理装置に対し、
マーキング面が形成されたマーキング部材をタイヤの側面部に対して接離させる接離機構により前記マーキング部材の前記マーキング面が前記側面部に接触した状態で、前記マーキング部材を傾斜させる傾斜機構を制御させ、前記マーキング部材を左右又は前後に傾斜させるステップ、
を実行させるためのマーキングプログラム。
【請求項1】
マーキング面が形成されたマーキング部材と、
前記マーキング部材とタイヤの側面部とを相対的に接離させる接離機構と、
前記接離機構により前記マーキング部材の前記マーキング面を前記側面部に接触させた状態で、前記マーキング部材を前記側面部に対して複数の方向に傾斜させる傾斜機構と、
を備えるマーキング装置。
【請求項2】
前記傾斜機構は、前記マーキング面の中心点を固定しつつ、前記マーキング部材を傾斜させる機構であり、前記傾斜の際に、前記マーキング部材を傾斜状態とさせたまま、前記中心点を固定しつつ、前記中心点を通る前記マーキング部材の中心軸の一端を、前記中心点を通る前記マーキング部材の傾斜前の中心軸に対して公転させる、
請求項1に記載のマーキング装置。
【請求項3】
前記傾斜機構を制御して、前記マーキング部材を複数の方向に傾斜させる制御手段、
を備える請求項1又は請求項2に記載のマーキング装置。
【請求項4】
前記制御手段は、マーキングする前記タイヤに応じて、前記傾斜の角度を調整する、
請求項3に記載のマーキング装置。
【請求項5】
前記側面部の形状を測定する形状測定装置を備え、
前記制御手段は、前記形状測定装置の測定結果に応じて、前記傾斜の角度を調整する、
請求項3又は請求項4に記載のマーキング装置。
【請求項6】
前記マーキング部材を傾斜させるか否かの要否情報を予め記憶する記憶部を備え、
前記制御手段は、前記要否情報に基づき、前記マーキング部材を傾斜させるか否か判断する、
請求項3〜請求項5の何れか1項に記載のマーキング装置。
【請求項7】
マーキング装置の中央処理装置に対し、
マーキング面が形成されたマーキング部材をタイヤの側面部に対して接離させる接離機構により前記マーキング部材の前記マーキング面が前記側面部に接触した状態で、前記マーキング部材を傾斜させる傾斜機構を制御させ、前記マーキング部材を左右又は前後に傾斜させるステップ、
を実行させるためのマーキングプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−107236(P2013−107236A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252569(P2011−252569)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
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