説明

マーキング装置

【課題】インクジェットヘッドのインク吐出面のインク汚れを省スペースで効率よく除去することができるマーキング装置を提供する。
【解決手段】基板12を保持したままマーキング位置へ往復動する基板搬送部4に、インクジェットヘッド6のインク吐出面を拭き取るワイパー機構が一体に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば検査後のサブストレート基板へのマーキング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップが搭載されるサブストレート基板は、自動検査機で良不良の判定が行われた後、不良品に識別マークが付与される。この検査により不良品と判定されたサブストレート基板であっても、製品の歩留まりを向上させるため、作業者が目視により再度確認して良不良の判定を行ってからマーキングする作業が行われている。マーキングは、基板の不良箇所に対応する入力データから画像データを作成し、該画像データから記録データを生成してインクジェットヘッドより記録データに基づいて基板の対応する不良箇所へノズルからインク滴を吐出してマーキングが行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記マーキング装置において、インクジェットヘッドはノズルよりインク滴が吐出されるため、ミスト化したインク滴が飛散してインク吐出面に付着して滴るおそれがある。またノズルに残留するインク滴の粘度が増大して吐出口付近にこびりついて吐出不良を起こし易くなる。
【0004】
また、固定されたライン型のインクジェットヘッドのインク吐出面を拭き取る装置をマーキング位置の直下に常設する設置スペ−スが無く、インクジェットヘッドのノズルの吸引を行って回復処理を行う回復機構を設けたり、インクの乾燥を防ぐためインク吐出面を覆うキャップを設けたりする場合には、長手方向の長さが大きい固定ヘッドの場合、装置が大型化してコストが上昇する。従って、インクジェットヘッドのインク吐出面にインク汚れが発生した時点で装置を停止して手作業で拭き取り作業を行うのが現状である。
【0005】
本発明は上述した課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、インクジェットヘッドのインク吐出面のインク汚れを省スペースで効率よく除去することができるマーキング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
基板の不良箇所にマーキングするマーク形状及びマーク座標を含む入力データから画像データを作成し、該画像データから記録データを生成する制御部と、記録データに基づいて基板の対応する不良箇所へインクジェットヘッドからインク滴を吐出してマーキングを行うマーキング部と、基板を保持したままマーキング位置へ往復動する基板搬送部を具備し、基板搬送部には、インクジェットヘッドのインク吐出面を拭き取るワイパー機構が一体に設けられていることを特徴とする。
また、ワイパー機構は、インクジェットヘッドの長手方向へ往復動可能なワイパーヘッドを備えていることを特徴とする。
また、ワイパー機構は、マーキング位置でインクジェットヘッドに対向するトレイが設けられていることを特徴とする。
また、インク滴が吐出された基板を乾燥する乾燥器を具備し、ワイパーヘッドは、原点位置において周囲を遮光カバーに覆われて収納されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上述したマーキング装置を用いれば、基板を保持したままマーキング位置へ往復動する基板搬送部にインクジェットヘッドのインク吐出面を拭き取るワイパー機構が一体に設けられているので、例えばマーキング回数や使用期間などを見計らってマーキング位置直下へワイパー機構を移動させてインクジェットヘッドのインク吐出面を定期的に拭き取ることで、インク吐出面のインク汚れを省スペースで効率よく除去することができる。
また、ワイパー機構は、インクジェットヘッドの長手方向へ往復動可能なワイパーヘッドを備えていることにより、インク吐出面全体のインク汚れを効率よく除去することができる。
また、ワイパー機構は、マーキング位置でインクジェットヘッドに対向するトレイが設けられていると、インク吐出面をワイパーヘッドにより拭き取る際に滴り落ちるインクやインクかすをトレイに回収することができ、装置を汚さずにメンテナンスが行える。
また、インク滴が吐出された基板を乾燥する乾燥器を具備し、ワイパーヘッドは原点位置において周囲を遮光カバーに覆われて収納されることにより、通常マーキング動作においてワイパーヘッドが熱により劣化するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係るマーキング装置の最良の実施形態について添付図面とともに詳細に説明する。本実施形態のマーキング装置は、基板の不良箇所にマーキングするマーク形状及びマーク座標を含む入力データから画像データを作成し、該画像データから記録データを生成する制御部と、記録データに基づいて基板の対応する不良箇所へノズルからインク滴を吐出してマーキングを行うマーキング部とを具備したマーキング装置について広く適用可能である。本実施例では、半導体装置製造用のサブストレート基板の不良箇所へのマーキング装置について説明する。
【0009】
マーキング装置の概略構成について説明する。
マーキング動作に先だって、検査装置(導通検査、画像検査、その他の機能検査を含む装置)によりサブストレート基板(以下「シート」という)の不良箇所がモニター画面に出力される。この検査結果の出力画面をもとに作業者がシートを目視により確認しながらマーキング装置への入力動作が行われる。入力部は、サブストレート上の個々のICチップ(以下「ピース」という)の不良箇所にマーキングするマーク形状及びマーク座標を含む入力データを入力する。この入力部としては、例えば液晶タブレット又はイメージスキャナが好適に用いられる。液晶タブレットは、後述するようにモニター画面への押圧によりマーク形状やマーク座標等の位置データが直接入力でき、入力された画像を出力できるようになっている。
【0010】
以下、マーキング装置の概略構成について図6の外観図を参照して説明する。
上述した入力部より入力データが送信されると、制御部1は入力データからマーク画像データ(ビットマップファイル)を作成し、該マーク画像データ(ビットマップファイル)から記録データを生成する。制御部1としては例えばパーソナルコンピュータ(PC)が用いられ、キーボードやマウスなどの入力部、コンピュータによる演算処理や制御命令を出力するCPU、制御プログラムを記憶するROM、CPUのワークエリアやデータの一時記憶を行うRAM等のメモリ、ディスプレイ等が設けられている。
【0011】
パーソナルコンピュータ(PC)1は、マーク形状及びマーク座標を含む画像データから記録データを生成し、マーキング部2へ出力する。具体的には、シートの不良ピースにマーキングするマーク形状やマーク座標が各々通信ケーブルを通じて送信され、各データをもとに指定位置にマーキングするビットマップファイルが作成される。ビットマップファイルは、アプリケーションソフトに基づいて作成される。
【0012】
また、パーソナルコンピュータ(PC)1は、ビットマップファイルをドライバーソフトに基づいてプリント用のデータ構造にフォーマット変換し、該記録データ(ノズルデータ)が通信ケーブル(USBコード)を通じてマーキング部2へ送信される。マーキング部2はパーソナルコンピュータ(PC)1より出力された記録データ(ノズルデータ)に基づいてシートを構成するピースのうち対応する不良ピースへインクジェットヘッドのノズルからインク滴を吐出してマーキングを行う。マーキング部2には装置本体側の操作部3が設けられている。基板搬送部4は基板を保持したままマーキング位置へ往復動する。基板搬送部4は、基板をベルト面に吸着保持したままマーキング位置へ往復動する。基板搬送部4には、後述するインクジェットヘッドのインク吐出面を拭き取るワイパー機構が一体に設けられている。UV乾燥器5はインク滴が吐出された基板にUV光を照射してインクを乾燥する。UV乾燥器5は、UV硬化性インクを用いる場合に好適に用いられる。以下、本願発明の特徴部分に関連する構成を中心に説明する。
【0013】
マーキング部2の構成について具体的に説明する。図3において、マーキング部2には入力データに基づいてシートの対応する不良ピースにインクを吐出するライン型のインクジェットヘッド6が設けられている。インクジェットヘッド6には、図示しないインク供給部よりインクチューブを通じてインクが供給される。基板搬送部4はシートを保持したままマーキング位置へ搬送しインクジェットヘッド6よりインクが吐出され、UV乾燥器5へ搬送してインクを乾燥させる動作を繰り返す。このマーキング動作を行うたびにインクジェットヘッド6を長手方向へ所定ピッチだけ移動させて必要なドット数のインク滴をシートに定着することで所定のマーキングが行われる。
【0014】
インクジェットヘッド6の制御系について、図5のブロック図を参照して説明する。CPU7はマーキング動作を制御する。インク吐出方式は、圧電素子タイプでも熱抵抗素子タイプの何れであっても良い。USBコントローラ(I/F)8にはパーソナルコンピュータ(PC)1から記録データ(ノズルデータ)が送信される。USBコントローラ8は、マーキングデータをDMA(Direct Memory Access)により直接SDRAM(Synchronous DRAM)9に送信し、SDRAM9は入力クロック信号に同期して送信されたマーキングデータが一時記憶される。そして、CPU7の動作指令によりマーキングデータはSDRAM9からDMA送信によりFPGA(Field Program Gate Array)10を通じてインクジェットヘッド6の各ノズルのインク吐出制御素子への通電信号として送信される。
【0015】
次に、基板搬送部4の構成について図3及び図4を参照して説明する。
図3において、スライドテーブル11は、シート(基板)12を吸着保持して往復動する。スライドテーブル11の表面には、シートを吸着するための吸引孔11aが設けられている。図4において、スライドテーブル11は支持部13に一体に支持されている。支持部13はガイド軸14に沿って移動可能に連繋している。スライドテーブル11の一部は無端状のタイミングベルト15に連繋している。タイミングベルト15は、移動原点側に設けられたステップモータ16のモータプーリと移動終端側に設けられたプーリ間に掛け渡されている(図4参照)。タイミングベルト15を回転する移動終端側に設けられるプーリにはスライドテーブル11の移動量を検出するエンコーダ17が同軸に設けられている(図3参照)。ステップモータ16を正逆回転駆動することにより、スライドテーブル11はシート12の吸着保持位置から記録位置を経て乾燥位置との間を往復して移動する。
【0016】
次に、基板搬送部4に設けられるワイパー機構の構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1において、スライドテーブル11にはトレイ18が一体に連結されている。トレイ18は、上面が開放された筐体状に形成されており、マーキング位置でインクジェットヘッド6に対向する大きさに設けられている。トレイ18は支持部19に支持されており、支持部19はガイド軸14に移動可能に連繋している。トレイ18の両側面部にはガイド軸14と交差する方向にガイド軸20が設けられている。このガイド軸20にはブロック21が移動可能に連繋している。ブロック21にはアーム22が設けられている。アーム22にはインクジェットヘッド6の長手方向へ往復動可能なワイパーヘッド(例えばワイパーゴム)23と遮光板24が一体に設けられている。アーム22の先端はスリット25に挿通しており、ガイド軸20とともにアーム22の移動をガイドする。図2(a)(b)において、トレイ18には、ワイパーヘッド23を原点位置(インクジェットヘッド6の長手方向一端側位置)において格納する遮光カバー26が設けられている。ワイパーヘッド23は遮光カバー26内に収納されると、遮光カバー26の開口部が遮光板24に塞がれて遮光されるようになっている(図2(b)参照)。これによって、通常マーキング動作において、UV乾燥器5を通過する際にワイパーヘッド23が劣化するのを防ぐことができる。
【0017】
図2(a)において、ブロック21は無端状のタイミングベルト27に連繋している。タイミングベルト27は、ステップモータ28のモータプーリとトレイ18の両側に設けられたプーリ29a、29b間に掛け渡されている。ステップモータ28を正逆回転駆動することにより、ブロック21はワイパーヘッド23の原点位置からガイド軸20に沿って往復動する。ブロック21にはセンサ板30が設けられており、ガイド軸20の原点位置にはセンサ板30を検出する原点センサ31が設けられている。
【0018】
図5において、インクジェットヘッド6の動作を制御するCPU7はモ−タドライバ32を通じてステップモータ28の動作を制御している。また、CPU7にはワイパーヘッド23の位置を検出する原点センサ31の検出信号が入力されるようになっている。
【0019】
マーキング装置のマーキング動作について図3及び図4を参照して説明する。
スライドテーブル11にシート12を吸着保持させてから(図3参照)、ステップモータ16を起動すると、移動ベース部13がガイド軸14に沿って移動し、スライドテーブル11がインクジェットヘッド6に対向するマーキング位置へ搬送される。このとき、パーソナルコンピュータ(PC)1から送信されたマーキングデータに基づいてインクジェットヘッド6よりシート12の不良ピースへインク滴(1ドット分)が吐出される。インク滴が吐出されるとインクジェットヘッド6を長手方向へ1ピッチ移動させる。ステップモータ16をさらに回転駆動し、スライドテーブル11はUV乾燥器5の乾燥位置を通過する際に1ドット分のインク滴にUV光が照射されてインクの乾燥が行われる。
【0020】
マーキング動作が例えば所定回数(所定時間)に到達すると、基板搬送部4はトレイ18をインクジェットヘッド6に対向するマーキング位置直下へセットする。そして、原点センサ31はワイパーヘッド23が原点位置にあることを検出すると、CPU7はステップモータ28を起動して(図5参照)ワイパーヘッド23をインクジェットヘッド6の一端側である原点位置から他端側に向かって所定回数往復動させる。このとき、インクジェットヘッド6のインク吐出面がワイパーヘッド23によって拭き取られるため、インク滴や増粘したインクかすがトレイ18に掻き落とされる。拭き取りが終了すると、ワイパーヘッド23が遮光カバー26内に格納されて開口部が遮光板24に塞がれて遮光される。そして、基板搬送部4のスライドテーブル11には次の基板が供給されてマ−キング動作が続行される。
【0021】
上述したように、基板搬送部4にインクジェットヘッド6のインク吐出面を拭き取るワイパー機構が一体に設けられているので、インクジェットヘッド6のインク吐出面の汚れを、マーキング回数やマーキング時間などを見計らってワイパー機構を作動させてインク吐出面を定期的に拭き取ることで、インク汚れを省スペースで効率よく除去することができる。
また、ワイパー機構は、インクジェットヘッドの長手方向へ往復動可能なワイパーヘッドを備えていることにより、インク吐出面全体のインク汚れを効率よく除去することができる。
【0022】
尚、トレイ18にはインク滴を吸収可能なインク吸収パッドが設けられ、マーキング動作を開始前にノズルよりインク滴をインク用パッド部へ吐出して回復処理を行うようにしても良い。インクジェットヘッド6は単数でもよいが、複数個並設するようにしても良い。インクジェットヘッド6は基板搬送方向と直交配置する場合に限らず、斜めに傾けて配置されていても良い。また、基板は半導体装置(ICチップ)製造用のサブストレート基板に限らず、他の電子部品製造用の樹脂基板、フィルム基板、ガラス基板などであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】基板搬送部の斜視図である。
【図2】ワイパー機構の斜視図及び断面図である。
【図3】マーキング装置の平面図である。
【図4】マーキング装置の内視正面図である。
【図5】インクジェットヘッドの制御系を示すブロック図である。
【図6】マーキング装置の外観斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1 パーソナルコンピュータ
2 マーキング部
3 操作部
4 基板搬送部
5 UV乾燥機
6 インクジェットヘッド
7 CPU
8 USBコントローラ
9 SDRAM
10 FPGA
11 スライドテーブル
11a 吸引孔
12 シート
13、19 支持部
14、20 ガイド軸
15 タイミングベルト
16、28 ステップモータ
17 エンコーダ
18 トレイ
21 ブロック
22 アーム
23 ワイパーヘッド
24 遮光板
25 スリット
26 遮光カバー
27 タイミングベルト
29a、29b プーリ
30 センサ板
31 原点センサ
32 モータドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の不良箇所にマーキングするマーク形状及びマーク座標を含む入力データから画像データを作成し、該画像データから記録データを生成する制御部と、
記録データに基づいて基板の対応する不良箇所へインクジェットヘッドからインク滴を吐出してマーキングを行うマーキング部と、
基板を保持したままマーキング位置へ往復動する基板搬送部を具備し、
基板搬送部には、インクジェットヘッドのインク吐出面を拭き取るワイパー機構が一体に設けられていることを特徴とするマーキング装置。
【請求項2】
ワイパー機構は、インクジェットヘッドの長手方向へ往復動可能なワイパーヘッドを備えていることを特徴とする請求項1記載のマーキング装置。
【請求項3】
ワイパー機構は、マーキング位置でインクジェットヘッドに対向するトレイが設けられていることを特徴とする請求項1記載のマーキング装置。
【請求項4】
インク滴が吐出された基板を乾燥する乾燥器を具備し、ワイパーヘッドは、原点位置において周囲を遮光カバーに覆われて収納されることを特徴とする請求項1記載のマーキング装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−205517(P2006−205517A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19913(P2005−19913)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000106944)シナノケンシ株式会社 (316)
【Fターム(参考)】