説明

ミキソピロニン誘導体含有抗菌剤

【課題】ミキソピロニンの溶解性及び細胞移行性が改善され、広域抗菌スペクトルを示す新規抗菌剤の提供。
【解決手段】極性基であることに加え高細胞移行性を有する抗菌性化合物ホロチンを用いたミキソピロニン類とのハイブリッド型分子として、式(I)


(式中、Yは2価の炭化水素基を示し、R及びRは水素又はCアルキル基を示し、Rはピロン骨格を含む基である)で示されるミキソピロニン誘導体又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする抗菌剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミキソピロニン誘導体及びその用途、特に抗菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ミキソピロニン(下記式参照)は、Myxococcus fulvus Mxf50 から単離されたポリケチド由来の細菌性代謝産物であり、細菌DNA依存性RNAポリメラーゼ(RNAP)を選択的に阻害することによって、グラム陽性菌及びグラム陰性菌に対して抗菌作用を示す(非特許文献1〜3)。
【0003】
【化1】

【0004】
ミキソピロニンは、原核生物のRNAPには作用するが真核生物のRNAPには作用しないという選択性を有する。また、リファンピシン耐性 Staphylococcus aureus への作用が確認されていることに加え、RNAPにおける作用部位がリファンピシンとは異なる蝶番部位であることが同定されているため、リファンピシン耐性Mycobacterium tuberculosis をはじめ、幅広い耐性菌への適応が期待されている(非特許文献4、5)。よって、昨今急速に増えている薬剤耐性菌感染症や結核等の新興・再興感染症に対する方策の一つとして、その薬理作用の活用が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Hofle, G. et al., Liebigs Ann. Chem.(1983)1656-1667
【非特許文献2】Hofle, G. et al., Liebigs Ann. Chem.(1984)1088-1093
【非特許文献3】Hofle, G. et al., The Journal of Antibiotics(1983)36, 1651-1658
【非特許文献4】Panek, S. J. et al., The Journal of Organic Chemistry(1998)63, 2401-2406
【非特許文献5】Ebright, H. R. et al., Cell(2008)135, 295-307
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ミキソピロニンは高脂溶性であるため溶解性が低く、細胞移行性にも際限を有することから、ミキソピロニンを用いた創薬研究は滞っていた。そこで、本発明では、溶解性及び細胞移行性を改善し、広域抗菌スペクトルを示すミキソピロニン誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、極性基であることに加え高細胞移行性を有する抗菌性化合物ホロチンを用いて、ミキソピロニン類とのハイブリッド型分子として設計することで、有効な抗菌活性を発揮し得る化合物を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の発明を包含する。
[1]下記式(I):
【化2】

[式中、
は、炭素数1〜8の2価の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基であり;
及びRは、同一又は異なり、水素原子又は置換もしくは非置換のCアルキル基であり;
は下記式(a):
【化3】

又は下記式(b):
【化4】

(式中、
は水素原子又は置換もしくは非置換のC炭化水素基であり;
は水素原子又は置換もしくは非置換のC炭化水素基であり;
は置換又は非置換のC10炭化水素基であり;
は水素原子又は置換もしくは非置換のC炭化水素基であり;
は−CH−、−NH−、−O−又は−S−である)
である]
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を含有する抗菌剤。
【0009】
[2]Yが、炭素数1〜8の2価の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基であり;
及びRが、同一又は異なり、水素原子又はメチル基であり;
が水素原子又は置換もしくは非置換のC炭化水素基であり;
が水素原子又は置換もしくは非置換のC炭化水素基であり;
が置換又は非置換のC10炭化水素基であり;
が水素原子又は置換もしくは非置換のC炭化水素基であり;
が−CH−、−NH−又は−O−である、
[1]に記載の抗菌剤。
【0010】
[3]Yが、炭素数4〜7の2価の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基であり;
及びRが水素原子であり;
が水素原子又はメチル基であり;
が水素原子又はメチル基であり;
が−CH=CR(式中、Rは置換又は非置換のC炭化水素基であり、Rは置換又は非置換のC炭化水素基である)であり;
が水素原子又はメチル基であり;
が−CH−又は−NH−である、
[1]に記載の抗菌剤。
【0011】
[4]下記式(II):
【化5】

で示される化合物又はその塩。
【0012】
[5]下記式(III):
【化6】

(式中、nは4又は7である)
で示される化合物又はその塩。
【0013】
[6][4]もしくは[5]に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、グラム陽性菌及びグラム陰性菌等の生育を阻害することができるミキソピロニン誘導体及びそれを用いた抗菌剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、ペーパーディスク法による抗菌活性試験の結果を示す。図中、RFPはリファンピシンを表す。また、阻止円のうち、ペーパーディスクの直径である8mmを越える部分を黒色で表した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、「C1−3炭化水素基」とは、例えば炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を意味する(本明細書において、それぞれC1−3アルキル基、C2−3アルケニル基、C2−3アルキニル基と称す)。「C1−3アルキル基」としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。「C2−3アルケニル基」としては、例えばビニル基、1−プロペニル基、アリル基が挙げられる。「C2−3アルキニル基」としては、例えばエチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル(プロパルギル)基が挙げられる。
【0017】
本発明において、「C1−6炭化水素基」とは、例えば炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を意味する(本明細書において、それぞれC1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基と称す)。「C1−6アルキル基」としては、上記C1−3アルキル基において例示した基の他に、例えばブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。「C2−6アルケニル基」としては、上記C2−3アルケニル基において例示した基の他に、1−ブテニル基、2−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が挙げられる。「C2−6アルキニル基」としては、上記C2−3アルキニル基において例示した基の他に、例えば3−ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基が挙げられる。
【0018】
本発明において、「C1−10炭化水素基」とは、例えば炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を意味する(本明細書において、それぞれC1−10アルキル基、C2−10アルケニル基、C2−10アルキニル基と称す)。「C1−10アルキル基」としては、上記C1−6アルキル基において例示した基の他に、例えば1−エチル−n−プロピル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、2−エチル−1,1−ジメチル−n−ブチル基、1,2,3−トリメチル−n−ブチル基、1,5−ジメチル−n−ヘプタン−3−イル基が挙げられる。「C2−10アルケニル基」としては、上記C2−6アルケニル基において例示した基の他に、例えば1−ヘプテニル基、1−オクテニル基、1−ノネニル基が挙げられる。「C2−10アルキニル基」としては、上記C2−3アルキニル基において例示した基の他に、例えば1−ヘプチニル基、4−エチルヘプタン−5−イニル基が挙げられる。
【0019】
本発明において、「CX−Y炭化水素基」とは、上記の通り、炭素数X〜Yの直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を意味する。従って、例えば、本明細書中の「C3−5炭化水素基」は、上記で示したプロピル基、1−プロペニル基、2−プロピニル基等に限定することなく、その範囲の炭素数を有するアルキル基等を含む。
【0020】
本発明において、「2価の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基」とは、例えばアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基が挙げられる。「アルキレン基」とは、特に断りがない限り、炭素原子及び水素原子からなる2価の直鎖状又は分岐鎖状の飽和炭化水素基を意味し、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基が挙げられる。「アルケニレン基」は、特に断りがない限り、炭素原子及び水素原子からなり、少なくとも1個の二重結合を有し、かつ2価の直鎖状又は分岐鎖状の不飽和炭化水素基を意味する。アルケニレン基は、非対称性の炭素により生じるシス又はトランス((E)又は(Z))異性体の基を含む。アルケニレン基の例としては、エテニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、2−ブテニレン基が挙げられる。「アルキニレン基」は、特に断りがない限り、炭素原子及び水素原子からなり、少なくとも1個の三重結合を有し、かつ2価の直鎖状又は分岐鎖状の不飽和炭化水素基を意味する。アルキニレン基の例としては、エチニレン基、1−プロピニレン基、2−プロピニレン基が挙げられる。
【0021】
本明細書におけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等は、特に断りがない限り、芳香族基、アシル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基(−NH)、ニトロ基、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基)等から選択される1以上の置換基で置換されていてもよい。
【0022】
芳香族基としては、例えばフェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、キノリル基、イソキノリル基等の芳香族複素環基が挙げられる。
【0023】
アシル基としては、例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基(プロパノイル基)、ブチリル基(ブタノイル基)、バレリル基(ペンタノイル基)、ヘキサノイル基等のC1−6脂肪族アシル基;ベンゾイル基、トルオイル基等の芳香族アシル基(アロイル基)が挙げられる。
【0024】
ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0025】
前記式(I)で示される化合物の薬学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、ピロ硫酸、メタリン酸等の無機酸、又はクエン酸、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸)等の有機酸との塩が挙げられる。また、フェノール性水酸基又はカルボキシル基を有する場合には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩として用いることもできる。
【0026】
本発明の式(I)で示される化合物において、Yの直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基は、炭素数が1〜8であり、好ましくは4〜7である。R、R、R及びRは、同一又は異なり、水素原子又は置換もしくは非置換のCアルキル基であり、好ましくは水素原子又はメチル基である。Rは置換又は非置換のC10炭化水素基であり、好ましくは−CH=CR(式中、Rは置換又は非置換のC炭化水素基であり、Rは置換又は非置換のC炭化水素基である)であり、特に好ましくは、Rはメチル基であり、Rはブチル基である。また、Rは水素原子又は置換もしくは非置換のC炭化水素基であり、好ましくは水素原子又はメチル基である。Yは−CH−、−NH−、−O−又は−S−であり、好ましくは−CH−又は−NH−である。
【0027】
【化7】

【0028】
前記式(I)で示される化合物のうち、R、R及びRが水素原子であり、Yが−CH(CH)CHCHCH=CH−である化合物は、上記のスキーム1に従い得ることができる(Rは前記と同義である)。既存の合成方法(Panek, S. J. et al., The Journal of Organic Chemistry(1998)63, 2401-2406)に従いピロン体1を合成後、ピロン体1をピリドン体2へと変換する(Xiang, X. A. et al, Heterocycles(2006)68, 1099-1103)。続いて、アルドール縮合により左側鎖を導入して得られたカルボン酸3をクルチウス転位に付し、別途合成したホロチン塩酸塩4とともに縮合させることで、アミド体5を合成する。
【0029】
【化8】

【0030】
前記式(I)で示される化合物のうち、R及びRが水素原子であり、Yが−NH−である化合物は、上記のスキーム2に従い得ることができる(Y及びRは前記と同義である)。市販の4−ヒドロキシ−6−メチル−2H−ピラン−2−オン(7)を出発原料として、カルボン酸6とDIC、DMAPを用いて縮合後、加熱還流を行うことで、転位体8を得る。続いて、エステル部位を塩基性条件下において加水分解してカルボン酸9へと変換後、オキサリルクロライドにより酸塩化物へと導き、ホロチン塩酸塩4と縮合することでハイブリッド体10を合成する。
【0031】
【化9】

【0032】
前記式(I)で示される化合物のうち、R及びRが水素原子であり、Yがメチレン基であり、Yが−NH−である化合物は、上記のスキーム3に従い得ることができる(Rは前記と同義である)。市販の4−ヒドロキシ−6−メチル−2H−ピラン−2−オン(7)を出発原料として、トリエチルアミン存在下、イソシアネートとともにキシレン溶媒中にて加熱還流することで、アミド体を得る。次に、エステル部位を、水酸化バリウムを用いて加水分解することにより、カルボン酸11へ変換する。最後に、オキサリルクロライドにより酸塩化物へと導いた後、ホロチン塩酸塩4と縮合することでハイブリッド体12を合成する。
【0033】
前記のようにして得られる生成物を精製するには、通常用いられる手法、例えばシリカゲル等を担体として用いたカラムクロマトグラフィーやプレパラティブ薄層クロマトグラフィー、メタノール、エタノール、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、水等を用いた再結晶法によればよい。カラムクロマトグラフィーの溶出溶媒及びプレパラティブ薄層クロマトグラフィーの展開溶媒としては、メタノール、エタノール、クロロホルム、アセトン、ヘキサン、ジクロロメタン、酢酸エチル、及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0034】
本発明では、感染性疾患、特に、動物において例えばブドウ球菌、枯草菌、レンサ球菌及び結核菌等のグラム陽性菌及びその耐性菌、大腸菌、肺炎桿菌、赤痢菌、変形菌、セラチア及びエンテロバクター等のグラム陰性菌及びその耐性菌、バクテロイデスフ、ラジリス等の嫌気性菌を包含する広範囲な病原菌によって引き起こされる疾患を処置するための方法が提供される。本発明の化合物は、特にMicrococcus luteus によって引き起こされる感染を処置するのに有用である。また、この化合物は、Staphylococcus aureus、Enterococcus faecalisを含む、腸球菌による感染を処置するのに有用である。このような疾患の例には、重篤なブドウ球菌性の感染、例えば、ブドウ球菌中毒性表皮壊死症及びブドウ球菌性肺炎が挙げられる。
【0035】
前記式(I)で示される化合物はそのまま、あるいは慣用の製剤担体と共に動物及びヒトに投与することができる。投与形態としては、特に限定がなく、必要に応じ適宜選択して使用され、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、徐放性製剤、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、エリキシル剤等の経口剤、注射剤、坐剤、塗布剤、貼付剤等の非経口剤が挙げられる。
【0036】
経口剤は、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を用いて常法に従って製造される。
【0037】
この種の製剤には、適宜前記賦形剤の他に、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を使用することができる。
【0038】
結合剤としては、例えばデンプン、デキストリン、アラビアゴム末、ゼラチン、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴールが挙げられる。
【0039】
崩壊剤としては、例えばデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
【0040】
界面活性剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート80が挙げられる。
【0041】
滑沢剤としては、例えばタルク、ロウ類、水素添加植物油、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0042】
流動性促進剤としては、例えば軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムが挙げられる。
【0043】
注射剤は常法に従って製造され、希釈剤として一般に注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、オリブ油、ゴマ油、ラッカセイ油、ダイズ油、トウモロコシ油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等を用いることができる。更に必要に応じて、殺菌剤、防腐剤、安定剤を加えてもよい。また、注射剤は安定性の点から、バイアル等に充填後冷凍し、通常の凍結乾燥技術により水分を除去し、使用直前に凍結乾燥物から液剤を再調製することもできる。更に、必要に応じて適宜、等張化剤、安定剤、防腐剤、無痛化剤等を加えてもよい。
【0044】
その他の非経口剤としては、外用液剤、軟膏等の塗布剤、貼付剤、直腸内投与のための坐剤等が挙げられ、常法に従って製造される。
【0045】
本発明の製剤は、剤形、投与経路等により異なるが、例えば1日1〜数回から1〜数回/週〜月の投与が可能である。
【0046】
経口剤として所期の効果を発揮するためには、患者の年令、体重、疾患の程度により異なるが、通常成人でミキソピロニン誘導体(I)の重量として1〜200mgを、1日数回に分けての服用が適当である。
【0047】
非経口剤として所期の効果を発揮するためには、患者の年令、体重、疾患の程度により異なるが、通常成人でミキソピロニン誘導体(I)の重量として1日1〜50mgの静注、点滴静注、皮下注射、筋肉注射が適当である。
【0048】
以下、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0049】
[実施例1]
(E)−6−(3−((2E,4E)−2,5−ジメチルノナ−2,4−ジエノイル)−4−ヒドロキシ−2−オキソ−2H−ピラン−6−イル)−N−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2]ジチオロ[4,3−b]ピロール−6−イル)ヘプト−2−エナミド(1)の合成
【化10】

【0050】
前記スキーム1に従い、アルゴン雰囲気下、(2E)−6−(5−((2E,4E)−2,5−ジメチルノナ−2,4−ジエノイル)−4−ヒドロキシ−6−オキソ−6H−ピラン−2−イル)−ヘプト−2−エノイルクロライドの無水トルエン溶液(2mL)に、ホロチン塩酸塩の無水THF溶液(2mL)と無水トルエン溶液(1mL)を加えた。続いて、トリエチルアミン(50mL、0.36mmol)を注意深く加え、室温で30分間撹拌した。反応溶液を除去し、得られた残留物をプレパラティブ薄層クロマトグラフィー(10%メタノール/クロロホルム)で精製し、黄色油状物1(2.2mg、12%)を得た。
HRMS (ESI)m/z calcd for C28H32N2O6S2[M+H]+ 557.1780, found 557.1727。
【0051】
[実施例2]
6−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−6−オキソ−N−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2]ジチオロ[4,3−b]ピロール−6−イル)ヘキサナミド(2)の合成
【化11】

【0052】
〈実施例2.1〉
4−ヒドロキシ−6−メチル−2−ピロンからメチル6−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−6−オキソヘキサノエートの合成
前記スキーム2に従い、アルゴン雰囲気下、4−ヒドロキシ−6−メチル−2−ピロン(200mg、1.59mmol)の無水トルエン溶液(5mL)に、アジピン酸モノメチル(253mg、1.59mmol)、DMAP(38.8mg、0.32mmol)、DIC(0.24mL、1.59mmol)を加え、室温で3時間撹拌した後、さらに6時間加熱還流した。反応溶液を除去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、橙色結晶6−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−6−オキソヘキサノエート(270mg、64%)を得た。
mp 65.3-65.8 ℃
IR (neat) cm-1: 2956, 1746, 1725, 1644, 1550, 1252, 1163, 987
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 5.89 (1H, s), 3.61 (3H, s), 3.03 (2H, t, J = 6.6 Hz), 2.31 (2H, t, J = 6.8 Hz), 2.20 (3H, s), 1.66-1.64 (4H, m)
13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 207.10, 181.09, 173.74, 168.92, 160.85, 101.39, 99.38, 51.41, 41.10, 33.73, 24.32, 23.17, 20.57
HRMS (ESI) m/z calcd for C13H17O6 [M+H]+ 269.1025, found 269.1012。
【0053】
〈実施例2.2〉
6−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−6−オキソヘキサノエートから6−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−6−オキソヘキサン酸の合成
アルゴン雰囲気下、6−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−6−オキソヘキサノエート(268mg、1.00mmol)のTHF溶液(4mL)に、1.0M水酸化リチウム水溶液(1mL)を加え、室温で20時間撹拌した。反応溶液に、1.0M塩酸を加え酸性とした後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄、乾燥(MgSO)した後、溶媒除去して黄色結晶6−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−6−オキソヘキサン酸(197mg、78%)を得た。
mp 121.6-122.3 ℃
IR (neat) cm-1: 2940, 1716, 1692, 1644, 1614, 1567, 1451, 1413, 1240
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 5.93 (1H, s), 3.11 (2H, t, J = 6.5 Hz), 2.41 (2H, t, J = 6.5 Hz), 2.26 (3H, s), 1.72 (4H, m)
13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 207. 50, 181.53, 179.52, 169.31, 161.38, 101.85, 99.84, 41.53, 34.08, 24.47, 23.53, 21.00
HRMS (ESI) m/z calcd for C12H14O6Na [M+Na]+ 277.0688, found 277.0679。
【0054】
〈実施例2.3〉
6−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−6−オキソヘキサン酸から化合物2の合成
アルゴン雰囲気下、6−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−6−オキソヘキサン酸(50mg、0.20mmol)の無水トルエン溶液(2mL)に、オキサリルクロリド(50mL、0.60mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応溶媒を除去した後、得られた粗生成物である酸クロライドは精製することなく、すぐさま次の反応に用いた。続いて酸クロライドの無水トルエン溶液(2mL)に、ホロチン塩酸塩の無水THF溶液(2mL)と無水トルエン溶液(1mL)を加えた。続いて、トリエチルアミン(84mL、0.60mmol)を注意深く加え、室温で30分間撹拌した。反応溶液を除去し、得られた残留物をプレパラティブ薄層クロマトグラフィー(100%酢酸エチル)で精製し、黄色油状物2(39mg、48%)を得た。
IR (neat) cm-1: 3393, 2921, 2850, 1715, 1644, 1557, 1455, 1246
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 10.58 (1H, s), 9.79 (1H, s), 7.05 (1H, s), 6.27 (1H, s), 2.96-3.01 (2H, m), 2.38 (1H, t, J = 6.4 Hz), 2.26 (3H, s), 1.58 (2H, br s), 1.21 (2H, br s)
13C NMR (100 MHz, DMSO-d6): δ 207.27, 180.91, 174.75, 172.10, 170.43, 168.40, 160.78, 134.17, 115.82, 111.01, 101.51, 99.60, 41.09, 34.95, 24.99, 23.37, 20.54
HRMS (ESI) m/z calcd for C17H16N2O6NaS2[M+Na]+ 431.0347, found 431.0330。
【0055】
[実施例3]
8−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−8−オキソ−N−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2]ジチオロ[4,3−b]ピロール−6−イル)オクタナミド(3)の合成
【化12】

【0056】
〈実施例3.1〉
4−ヒドロキシ−6−メチル−2−ピロンからメチル8−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−8−オキソオクタノエートの合成
前記スキーム2に従い、アルゴン雰囲気下、4−ヒドロキシ−6−メチル−2−ピロン(200mg、1.59mmol)の無水トルエン溶液(5mL)に、スベリン酸モノメチル(299mg、1.59mmol)、DMAP(38.8mg、0.32mmol)、DIC(0.24mL、1.59mmol)を順次加え、室温で3時間撹拌した後、さらに6時間加熱還流した。反応溶液を除去後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(30%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、黄色結晶メチル8−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−8−オキソオクタノエート(438mg、93%)を得た。
mp 111.9-112.4 ℃
IR (neat) cm-1: 2939, 1738, 1718, 1649, 1550, 1454, 1345, 1239, 1163, 995
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 5.93 (1H, s), 3.66 (3H, s), 3.06 (2H, t, J = 7.4 Hz), 2.31 (2H, t, J = 7.5 Hz), 2.26 (3H, s), 1.60-1.69 (4H, m), 1.34-1.41 (4H, m)
13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 207.83, 181.30, 174.23, 168.86, 161.00, 101.57, 99.51, 51.46, 41.53, 34.03, 28.93, 28.82, 24.78, 23.75, 20.67
HRMS (ESI) m/z calcd for C15H20O6Na [M+Na]+ 319.1158, found 319.1141。
【0057】
〈実施例3.2〉
メチル8−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−8−オキソオクタノエートから8−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−8−オキソオクタン酸の合成
アルゴン雰囲気下、メチル8−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−8−オキソオクタノエート(100mg、0.33mmol)のTHF溶液(4mL)に1.0M水酸化リチウム水溶液(1mL)を加え、室温で20時間撹拌した。反応溶液に1.0M塩酸を加え酸性とした後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄、乾燥(MgSO)した後、溶媒除去して黄色結晶8−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−8−オキソオクタン酸(54mg、58%)を得た。
mp 99.1-101.1 ℃
IR (neat) cm-1: 2938, 1713, 1664, 1555, 1461, 1245, 994
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 5.95 (1H, s), 3.08 (2H, t, J = 3.7 Hz), 2.37 (2H, t, J = 7.5 Hz), 2.29 (3H, s), 1.63-1.72 (4H, m), 1.37-1.47 (4H, m)
13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 207.88, 181.36, 179.63, 168.94, 161.12, 101.63, 99.59, 41.59, 33.99, 28.86, 28.71, 24.57, 23.79, 20.73
HRMS (ESI) m/z calcd for C14H19O6 [M+H]+ 283.1182, found 283.1186。
【0058】
〈実施例3.3〉
8−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−8−オキソオクタン酸から化合物3の合成
アルゴン雰囲気下、8−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−8−オキソオクタン酸(50mg、0.18mmol)の無水トルエン溶液(2mL)に、オキサリルクロリド(45mL、0.54mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応溶媒を除去した後、得られた酸クロライドは、精製することなくすぐさま次の反応に用いた。続いて、酸クロライドの無水トルエン溶液(2mL)に、ホロチン塩酸塩の無水THF溶液(2mL)と無水トルエン溶液(1mL)を加えた。続いて、トリエチルアミン(76mL、0.54mmol)を注意深く加え、室温で30分間撹拌した。反応溶液を除去した後、得られた残留物をプレパラティブ薄層クロマトグラフィー(100%酢酸エチル)で精製し、黄色油状物3(45.5mg、58%)を得た。
IR (neat) cm-1: 3248, 2933, 2857, 1715, 1643, 1609, 1557, 1456, 1241, 996
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.71 (1H, br s), 8.24 (1H, br s), 6.90 (1H, s), 5.94 (1H, s), 3.04-3.09 (2H, m), 2.34-2.41 (2H, m), 2.27 (3H, s), 1.67 (4H, m), 1.41 (4H, m)
13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 207.79, 181.28, 178.22, 172.11, 168.87, 161.07, 136.32, 133.35, 114.55, 113.24, 101.57, 99.51, 41.52, 35.04, 28.87, 28.81, 24.93, 23.71, 20.66
HRMS (ESI) m/z calcd for C19H20N2O6NaS2 [M+Na]+ 459.0660, found 459.0641。
【0059】
[実施例4]
9−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−9−オキソ−N−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2]ジチオロ[4,3−b]ピロール−6−イル)ノナナミド(4)の合成
【化13】

【0060】
〈実施例4.1〉
4−ヒドロキシ−6−メチル−2−ピロンからメチル9−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−9−オキソノナノエートの合成
前記スキーム2に従い、アルゴン雰囲気下、4−ヒドロキシ−6−メチル−2−ピロン(200mg、1.59mmol)の無水トルエン溶液(5mL)に、アゼライン酸モノメチル(318mg、1.59mmol)、DMAP(38.8mg、0.32mmol)、DIC(0.24mL、1.59mmol)を順次加え、室温で3時間撹拌した後、さらに6時間加熱還流した。反応溶液を除去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、黄色結晶メチル9−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−9−オキソノナノエート(345mg、70%)を得た。
mp 120.2-120.9 ℃
IR (neat) cm-1: 2939, 1717, 1692, 1644, 1614, 1567, 1239
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 5.94 (1H, s), 3.67 (3H, s), 3.07 (2H, t, J = 7.4 Hz), 2.31 (2H, t, J = 7.5 Hz), 2.28 (3H, s), 1.59-1.69 (4H, m), 1.33-1.43 (6H, m)
13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 207.94, 181.30, 174.29, 168.84, 161.00, 101.56, 99.52, 51.46, 41.59, 34.09, 29.05, 29.02, 28.98, 24.90, 23.89, 20.94
HRMS (ESI) m/z calcd for C16H22O6 [M+H]+ 311.1495, found 311.1498。
【0061】
〈実施例4.2〉
メチル9−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−9−オキソノナノエートから9−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−9−オキソノナン酸の合成
アルゴン雰囲気下、メチル9−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−9−オキソノナノエート(100mg、0.32mmol)のTHF溶液(4mL)に、1.0M水酸化リチウム水溶液(1mL)を加え、室温で20時間撹拌した。反応溶液に、1.0M塩酸を加え酸性とした後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄、乾燥(MgSO)した後、溶媒除去して黄色結晶9−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−9−オキソノナン酸(84mg、88%)を得た。
mp 101.6-102.5 ℃
IR (neat) cm-1: 2942, 1717, 1645, 1607, 1557, 1459, 1427, 1241, 995
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 5.96 (1H, s), 3.09 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.37 (2H, t, J = 7.5 Hz), 2.30 (3H, s), 1.64-1.69 (4H, m), 1.38 (4H, m)
13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 207.94, 181.31, 179.54, 168.84, 161.04, 101.57, 99.52, 41.58, 33.96, 29.03, 28.99, 28.29, 24.63, 23.88, 20.67
HRMS (ESI) m/z calcd for C16H20O6Na [M+Na]+ 319.1158, found 319.1146。
【0062】
〈実施例4.3〉
9−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−9−オキソノナン酸から化合物4の合成
アルゴン雰囲気下、9−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−9−オキソノナン酸(50mg、0.17mmol)の無水トルエン溶液(2mL)に、オキサリルクロリド(43mL、0.51mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応溶媒を除去した後、得られた酸クロライドは精製することなくすぐさま次の反応に用いた。続いて、酸クロライドの無水トルエン溶液(2mL)に、別途合成したホロチン塩酸塩の無水THF溶液(2mL)と無水トルエン溶液(1mL)を加えた。続いて、トリエチルアミン(71mL、0.51mmol)を注意深く加え、室温で30分間撹拌した。反応溶液を除去し、得られた残留物をプレパラティブ薄層クロマトグラフィー(100%酢酸エチル)で精製し、黄色油状物4(39.8mg、52%)を得た。
IR (neat) cm-1: 3248, 2927, 2852, 1716, 1644, 1601, 1556, 1455, 1288, 1245, 996
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.70 (1H, br s), 7.66 (1H, br s), 6.79 (1H, s), 5.93 (1H, s), 3.07 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.36 (2H, t, J = 7.4 Hz), 2.27 (3H, s), 1.64-1.67 (5H, m), 1.37 (5H, m)
13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 207.92, 181.30, 171.74, 168.83, 168.71, 161.04, 135.86, 133.17, 114.57, 111.74, 101.58, 99.52, 41.56, 36.37, 29.70, 29.01, 28.96, 25.32, 23.87, 20.67
HRMS (ESI) m/z calcd for C20H22N2O6NaS2[M+Na]+ 473.0817, found 473.0819。
【0063】
[実施例5]
4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−N−(2−オキソ−2−((5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2]ジチオロ[4,3−b]ピロール−6−イル)アミノ)エチル)−2H−ピラン−3−カルボキサミド(5)の合成
【0064】
【化14】

【0065】
〈実施例5.1〉
4−ヒドロキシ−6−メチル−2−ピロンからエチル2−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−カルボキサミド)アセテートの合成
前記スキーム3に従い、アルゴン雰囲気下、4−ヒドロキシ−6−メチル−2−ピロン(300mg、2.38mmol)のキシレン溶液(15mL)に、イソシアナート酢酸エチル(0.30mL、2.85mmol)とトリエチルアミン(0.33mL、2.38mmol)を加え、4時間、加熱還流した。反応溶媒を除去した後、茶褐色固体エチル2−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−カルボキサミド)アセテート(540mg、89%)を得た。このものは精製することなく次の反応に用いた。続いて、アルゴン雰囲気下、エチル2−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−カルボキサミド)アセテート(150mg、0.58mmol)に水(12mL)と水酸化バリウム(201mg、1.17mmol)を加え、73℃で2時間撹拌した。反応溶液に塩酸を注意深く加え、クロロホルムで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、乾燥(MgSO)後、溶媒除去して橙色不定形物2−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−カルボキサミド)酢酸(83mg、63%)を得た。
IR (neat) cm-1: 3297, 2981, 2932, 2638, 1740, 1704, 1633, 1566, 1454, 1396, 1370, 1297, 1252, 1158, 1037, 994
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 9.36 (1H, t, J = 5.2 Hz), 6.44 (1H, s), 4.18 (2H, d, J = 5.6 Hz), 2.40 (3H, s)
13C NMR (100 MHz, DMSO-d6): δ 179.07, 170.38, 169.92, 167.48, 162.53, 101.82, 90.17, 41.07, 19.92
HRMS (ESI) m/z calcd for C9H10NO6 [M+H]+ 228.0508, found 228.0529。
【0066】
〈実施例5.2〉
2−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−カルボキサミド)酢酸から化合物5の合成
アルゴン雰囲気下、2−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−カルボキサミド)酢酸(50mg、0.22mmol)の無水トルエン溶液(2mL)に、オキサリルクロリド(55mL、0.66mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応溶媒を除去した後、得られた酸クロライドは精製することなくすぐさま次の反応に用いた。続いて酸クロライドの無水トルエン溶液(2mL)に、ホロチン塩酸塩の無水THF溶液(2mL)と無水トルエン溶液(1mL)を加えた。続いて、トリエチルアミン(93mL、0.66mmol)を注意深く加え、室温で30分間撹拌した。反応溶液を除去し、得られた残留物をプレパラティブ薄層クロマトグラフィー(10%メタノール/クロロホルム)で精製し、褐色油状物5(31.8mg、38%)を得た。
IR (neat) cm-1: 3318, 2920, 2849, 1698, 1640, 1510, 1247, 1224, 1175, 1156
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ11.57 (1H, s), 10.74 (1H, s), 10.18 (1H, s), 7.09 (1H, s), 6.30 (1H, s), 3.16 (2H, s), 2.26 (3H, s)。
【0067】
[実施例6]
(E)−6−(4−ヒドロキシ−2−オキソ−3−プロピオニル−2H−ピラン−6−イル)−N−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2]ジチオロ[4,3−b]ピロール−6−イル)ヘプト−2−エナミド(6)の合成
【化15】

【0068】
〈実施例6.1〉
3−(1−プロピオニル)−4−ヒドロキシ−6−(5−(メトキシカルボニル)−1−メチル−4−ペンテニル)−2−ピロンから(2E)−6−(4−ヒドロキシ−6−オキソ−5−プロピオニル−6H−ピラン−2−イル)ヘプト−2−エノン酸の合成
アルゴン雰囲気下、3−(1−プロピオニル)−4−ヒドロキシ−6−(5−(メトキシカルボニル)−1−メチル−4−ペンテニル)−2−ピロン(56.8mg、0.18mmol)に、1.0M水酸化リチウム水溶液(3mL)、THF/水(4:1、3mL)を加え、室温で20時間撹拌した。反応溶液に、5%塩酸を加え酸性とし、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、乾燥(MgSO)した後、溶媒除去して黄色油状物(2E)−6−(4−ヒドロキシ−6−オキソ−5−プロピオニル−6H−ピラン−2−イル)ヘプト−2−エノン酸(52.9mg、100%)を得た。このものは精製することなく、次の反応に用いた。
IR (neat) cm-1: 2923, 1728, 1636, 1560, 1448, 1378, 1233
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ6.97-7.04 (1H, m), 5.93 (1H, s), 5.83 (1H, d, J = 15.6 Hz), 3.10 (2H, q, J = 7.2 Hz), 2.57-2.26 (1H, m), 2.25 (2H, q, J = 6.9 Hz), 1.67-1.94 (2H, m), 1.26 (3H, d, J = 6.9 Hz), 1.15 (3H, t, J = 7.2 Hz)
13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ208.38, 180.99, 174.76, 171.19, 160.98, 150.10, 121.60, 100.21, 99.80, 38.42, 35.35, 32.12, 29.71, 17.83, 7.75
HRMS (ESI) m/z calcd for C15H19O6 [M+H]+ 295.1182, found 295.1183。
【0069】
〈実施例6.2〉
(2E)−6−(4−ヒドロキシ−6−オキソ−5−プロピオニル−6H−ピラン−2−イル)ヘプト−2−エノン酸から化合物6の合成
アルゴン雰囲気下、(2E)−6−(4−ヒドロキシ−6−オキソ−5−プロピオニル−6H−ピラン−2−イル)ヘプト−2−エノン酸(52.9mg、0.18mmol)の無水トルエン溶液(2mL)に、オキサリルクロリド(45mL、0.54mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応溶媒を除去した後、得られた酸クロライドは精製することなく次の反応に用いた。続いて、酸クロライドの無水トルエン溶液(2mL)に、ホロチン塩酸塩の無水THF溶液(2mL)と無水トルエン溶液(1mL)を加えた。続いて、トリエチルアミン(75mL、0.54mmol)を注意深く加え、室温で30分間撹拌した。反応溶液を除去し、得られた残留物をプレパラティブ薄層クロマトグラフィー(10%メタノール/クロロホルム)で精製し、褐色油状物6(32.6mg、40%)を得た。
IR (neat) cm-1: 3236, 3018, 2918, 2849, 1720, 1635, 1558, 1446, 1290, 1215
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 10.71 (1H, br s), 9.91 (1H, br s), 7.07 (1H, s), 6.71 (1H, dt, J = 15, 6.6), 6.32 (1H, d, J = 15), 6.20, (1H, s), 2.95 (2H, m), 2.66 (1H, m), 2.19-2.13 (2H, m), 1.79-1.55 (2H, m), 1.17 (3H, d, J = 6.6), 1.00 (3H, t, J = 7.4)
HRMS (ESI) m/z calcd for C20H21N2O6S2[M+H]+ 449.0841, found 449.0866。
【0070】
[実施例7]
(E)−N−(2,2−ジオキシド−5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2]ジチオロ[4,3−b]ピロール−6−イル)−6−(4−ヒドロキシ−2−オキソ−3−プロピオニル−2H−ピラン−6−イル)ヘプト−2−エナミド(7)の合成
【化16】

【0071】
化合物6(15mg、0.033mmol)のアセトン/水(1:1)(1mL)溶液に、氷冷撹拌下においてOxone(登録商標)(47mg、0.10mmol)を加え20分間撹拌後、室温に昇温してさらに60分間撹拌した。続いて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1mL)を添加し30分間撹拌後、反応溶液に水を加え、酢酸エチルを用いて抽出を行い、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄、乾燥(MgSO)した。溶媒除去後、得られた残留物をプレパラティブ薄層クロマトグラフィー(10%メタノール/クロロホルム)で精製し、黄色油状物7(2.6mg、16%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 10.5 (1H, br s), 9.9 (1H, br s), 7.2 (1H, s), 6.8 (1H, m), 6.5 (1H, d, J = 16), 6.3 (1H, s), 2.8 (2H, m), 2.6 (2H, m), 2.2 (2H, t, J = 7.3), 1.7-1.4 (2H, m), 1.1 (3H, m), 0.96 (3H, m)。
【0072】
[実施例8]
N−(2,2−ジオキシド−5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2]ジチオロ[4,3−b]ピロール−6−イル)−8−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−イル)−8−オキソオクタナミド(8)の合成
【化17】

【0073】
化合物3(20mg、0.046mmol)のアセトン/水(1:1)(4mL)溶液に、氷冷撹拌下においてOxone(登録商標)(70mg、0.15mmol)を加え20分間撹拌後、室温に昇温しさらに60分間撹拌した。続いて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1mL)を添加し30分間撹拌後、反応溶液に水を加え、酢酸エチルを用いて抽出を行い、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄、乾燥(MgSO)した。溶媒除去後、得られた残留物をプレパラティブ薄層クロマトグラフィー(100%酢酸エチル)で精製し、黄色油状物8(8.6mg、40%)を得た。
IR (neat) cm-1: 2918, 2849, 1725, 1682, 1661, 1644, 1607, 1547, 1450, 1283, 1219, 1029, 993
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 11.48 (1H, br s), 10.52 (1H, br s), 7.25 (1H, s), 6.28 (1H, s), 2.98 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.45 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.27 (3H, s), 1.48-1.61 (4H, m), 1.26-1.36 (4H, m)
13C NMR (100 MHz, DMSO-d6): δ 207.22, 180.91, 175.00, 174.03, 166.16, 160.93, 143.79, 123.79, 115.62, 109.87, 101.73, 99.64, 41.40, 35.13, 29.46, 28.69, 24.92, 23.74, 20.52
HRMS (ESI) m/z calcd for C19H20N2O8NaS2 [M+Na]+ 491.0559, found 491.0548。
【0074】
[実施例9]
4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−N−(3−((5−オキソ−4,5−ジヒドロ−[1,2]ジチオロ[4,3−b]ピロール−6−イル)カルバモイル)フェニル)−2H−ピラン−3−カルボキサミド(9)の合成
【化18】

【0075】
〈実施例9.1〉
4−ヒドロキシ−6−メチル−2−ピロンからメチル3−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−カルボキサミド)ベンゾエートの合成
アルゴン雰囲気下、4−ヒドロキシ−6−メチル−2−ピロン(100mg、0.79mmol)のキシレン溶液(5mL)に、イソシアン酸3−カルボメトキシフェニル(153.9mg、0.87mmol)とトリエチルアミン(0.11mL、0.79mmol)を加え、4時間加熱還流した。反応溶媒を除去した後、橙色結晶メチル3−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−カルボキサミド)ベンゾエート(162mg、68%)を得た。このものは精製することなく次の反応に用いた。
【0076】
〈実施例9.2〉
メチル3−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−カルボキサミド)ベンゾエートから3−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−カルボキサミド)安息香酸の合成
アルゴン雰囲気下、メチル3−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−カルボキサミド)ベンゾエート(200mg、0.66mmol)の水(13.2mL)とメタノール(9mL)溶液に、水酸化バリウム(226mg、1.32mmol)を加え、73℃で2時間撹拌した。反応溶液に塩酸を注意深く加え、クロロホルムで抽出後、有機層を飽和食塩水で洗浄、乾燥(MgSO)した。溶媒除去を行うことにより、淡褐色結晶3−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−カルボキサミド)安息香酸(153mg、80%)を得た。
mp 278.6-282.1 ℃
IR (neat) cm-1: 2955, 2923, 2850, 1698, 1557, 1445, 1409, 1259, 1219, 1124, 1078, 1025
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 15.81 (1H, br s), 13.07 (1H, br s), 11.01 (1H, s), 8.24 (1H, s), 7.73-7.76 (2H, m), 7.50 (1H, t, J = 7.8 Hz), 6.40 (1H, s), 2.30 (3H, s)
13C NMR (100 MHz, DMSO-d6): δ 179.16, 168.59, 168.14, 167.33, 163.61, 137.12, 132.16, 129.92, 126.33, 125.68, 122.09, 102.44, 91.61, 20.30
HRMS (ESI) m/z calcd for C14H12NO6 [M+H]+ 290.0665, found 290.0658。
【0077】
〈実施例9.3〉
3−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−カルボキサミド)安息香酸から化合物9の合成
アルゴン雰囲気下、3−(4−ヒドロキシ−6−メチル−2−オキソ−2H−ピラン−3−カルボキサミド)安息香酸(50mg、0.17mmol)の無水トルエン溶液(2mL)に、オキサリルクロリド(43mL、0.51mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応溶媒を除去した後、精製することなくすぐさま次の反応に用いた。続いて、酸クロライドの無水トルエン溶液(2mL)に、ホロチン塩酸塩の無水THF溶液(2mL)と無水トルエン溶液(1mL)を加えた。続いて、トリエチルアミン(72mL、0.51mmol)を注意深く加え、室温で30分間撹拌した。反応溶液を除去し、得られた残留物をプレパラティブ薄層クロマトグラフィー(10%メタノール/クロロホルム)で精製し、褐色油状物9(41.4mg、55%)を得た。
IR (neat) cm-1: 2920, 2850, 1723, 1692, 1678, 1642, 1592, 1550, 1444, 1280
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ10.75 (1H, s), 10.08 (1H, s), 8.11 (1H, s), 7.85 (1H, d, J = 6.9 Hz), 7.71 (1H, d, J = 8.4 Hz), 7.44 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.11 (1H, s), 6.93 (1H, s), 2.24 (3H, s)
HRMS (ESI) m/z calcd for C19H13N3O6S2[M+H]+ 444.0324, found 444.0361。
【0078】
[実施例10]抗菌活性評価(ペーパーディスク試験)
枯草菌(B.subtillis ATCC6633)懸濁液(10cfu/mL)を20μLずつ内径90mmの滅菌シャーレに播いた。続いて、高圧蒸気滅菌したニュートリエント寒天培地を10mLずつシャーレに入れ、菌と十分に混合させた後、1時間静置して固化させた。8mmペーパーディスク(Advantec社)に、以下の表1に示した試験化合物を溶解させたメタノール溶液(1mg/ml)30μLを浸した。続いて、上記の作製した固化培地上にペーパーディスクを置き、温度37℃、相対湿度95%以上で一晩培養した。菌の発生を目視で観察し、形成した阻止円(直径mm)を計測した。なお、リファンピシン(RFP)を正対照とし、化合物を含まないメタノール溶液のみのものを負対照とした。
【0079】
【表1】


【0080】
表1及び図1より、化合物1〜5では、有意な阻止円が形成され、抗菌活性を示すことがわかった。一方、化合物6〜15では、有意な阻止円は形成されず、ペーパーディスク直径(8mm)のままであったことから、十分な抗菌活性を示さないことがわかった。ホロチン部とピロン部とのハイブリッド型である化合物1〜5と、α-ピロン含有カルボン酸を有する化合物10〜13及び化合物14〜15とを比較することにより、ホロチン部やピロン部単独の化合物ではなく、ハイブリッド型の化合物であることが活性発現に大きく影響を与えることも示唆された。特に、式(I)中の置換基Rの構造が活性発現に重要であるといえる。また、置換基R7 については、ミキソピロニンC7位側鎖構造と大きく異なる置換基でも活性を示すことが明らかとなった。
【0081】
[実施例11]化合物4及び5の抗菌活性評価(最小阻止濃度測定試験)
菌株は、グラム陽性球菌のStaphylococcus aureus ATCC29213株、Enterococcus faecalis ATCC29212株、及びKocuria rizophila(Micrococcus luteus)ATCC9341株、グラム陽性桿菌のBacillus subtilis ATCC6633株、グラム陰性桿菌のEscherichia coli ATCC25922株、Pseudomonas aeruginosa ATCC27853株、及びSerratia marcescens ATCC13880株、並びに真菌としてCandida albicans ATCC10231株を使用した。薬剤感受性は、Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI, M7-A8)に記載の微量液体希釈法により測定した。試験菌液の調製は、Muller-Hinton寒天培地(Oxoid)で35℃、24時間培養したコロニーをMuller-Hinton液体培地(MHB, Oxoid)にMcFarland standard(bioMerieux)0.5と同程度(1.5×10cells/ml)になるように懸濁した。この菌懸濁液をMHBで10倍希釈し、96ウェルマイクロプレート(Stem)に100mlずつ分注した。薬剤は、各濃度が128mg/ml〜0.125mg/mlとなるようにMHBに溶解し、96ウェルマイクロプレートに100mlずつ分注した。MIC2000イノキュレーター(Dynatech)を用いて、菌液プレートを薬剤プレートに約1ml(10cells/well)接種した。接種後、35℃、24及び48時間培養し、ILLUMINATED VIEWER MIC-2000(Dynatech)を用いて菌の生育の有無を判定した。菌の発育を阻止した薬剤の最小濃度をその菌株に対する最小発育阻止濃度(MIC)とした。
【0082】
【表2】

【0083】
表2より、Micrococcus luteus及びBacillus subtilisでは、ミキソピロニンの文献値(Hofle, G. et al., The Journal of Antibiotics(1983)36, 1651-1658)との比較においてMIC値が小さく、非常に高い活性値が得られた。また化合物4は、グラム陽性菌に対する選択的阻害活性を示す一方で、ピロン環C3位にアミド部位を導入した化合物5は、グラム陽性・陰性菌、真菌のいずれにおいても活性を示した。さらに、ミキソピロニンでは、連鎖球菌であるEnterococciには細胞移行性の低さから高い活性値を示さないと報告されているが(Haebich, D. et al., Angewandte Chemie International Edition(2009)48, 3397-3400)、本発明のハイブリッド型化合物では中程度の活性値を示した。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は抗菌剤等の医薬の分野で利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】

[式中、
は、炭素数1〜8の2価の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基であり;
及びRは、同一又は異なり、水素原子又は置換もしくは非置換のCアルキル基であり;
は下記式(a):
【化2】

又は下記式(b):
【化3】

(式中、
は水素原子又は置換もしくは非置換のC炭化水素基であり;
は水素原子又は置換もしくは非置換のC炭化水素基であり;
は置換又は非置換のC10炭化水素基であり;
は水素原子又は置換もしくは非置換のC炭化水素基であり;
は−CH−、−NH−、−O−又は−S−である)
である]
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を含有する抗菌剤。
【請求項2】
が、炭素数1〜8の2価の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基であり;
及びRが、同一又は異なり、水素原子又はメチル基であり;
が水素原子又は置換もしくは非置換のC炭化水素基であり;
が水素原子又は置換もしくは非置換のC炭化水素基であり;
が置換又は非置換のC10炭化水素基であり;
が水素原子又は置換もしくは非置換のC炭化水素基であり;
が−CH−、−NH−又は−O−である、
請求項1に記載の抗菌剤。
【請求項3】
が、炭素数4〜7の2価の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基であり;
及びRが水素原子であり;
が水素原子又はメチル基であり;
が水素原子又はメチル基であり;
が−CH=CR(式中、Rは置換又は非置換のC炭化水素基であり、Rは置換又は非置換のC炭化水素基である)であり;
が水素原子又はメチル基であり;
が−CH−又は−NH−である、
請求項1に記載の抗菌剤。
【請求項4】
下記式(II):
【化4】

で示される化合物又はその塩。
【請求項5】
下記式(III):
【化5】

(式中、nは4又は7である)
で示される化合物又はその塩。
【請求項6】
請求項4もしくは5に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−201669(P2012−201669A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70428(P2011−70428)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者:社団法人日本薬学会医薬化学部会 刊行物名:第29回メディシナルケミストリーシンポジウム講演要旨集 掲載頁:162頁〜163頁(1P−52) 刊行物発行年月日:2010年10月18日
【出願人】(592068200)学校法人東京薬科大学 (32)
【Fターム(参考)】