説明

ミコフェノール酸免疫原および抗体

ミコフェノール酸に高度に特異的であり、ミコフェノール酸のグルクロニド代謝産物、特にアシル-グルクロニド代謝産物と反応しないか、または実質的に交差反応性を有しない抗体の生成に有用な免疫原性化合物を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2007年11月14日に出願された米国仮特許出願第60/987,840号に対する35 USC §119(e)の恩典を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、ミコフェノール酸(ミコフェノール酸化合物(mycophenolate))に高度に特異的、かつミコフェノール酸のグルクロニド代謝産物、特にアシル-グルクロニド代謝産物との交差反応性を実質的に有しない抗体の生成に有用な免疫原化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
現在のミコフェノール酸の測定のための免疫アッセイ法には、ミコフェノール酸のカルボン酸においてミコフェノール酸が誘導体化された免疫原由来の抗体(例えば、Dade-Behringから入手可能なEMITアッセイ)または還元型ミコフェノール酸カルボン酸由来の抗体(すなわち、MicrogenicsのCEDIAアッセイに使用される「ミコフェノール酸アルコール」)が使用される。

【0004】
ミコフェノール酸分子は、カルボン酸または還元型カルボン酸で担体Xと結合するので、該分子の末端は免疫系から隠され、そのために免疫原性応答の際にこの位置のエピトープに対応する抗体パラトープの形成を刺激できない。これらの公知の免疫アッセイは、アシル-グルクロニド代謝産物に対する望ましくない高い交差反応性が欠点である。
【0005】
ミコフェノール酸のHPLC-UVおよびLC/MSアッセイも公知である。Roche社は、組換えイノシンモノホスフェートデヒドロゲナーゼ(IMPDH)を用いた、ミコフェノール酸の非競合的酵素阻害アッセイを開発し、市場に出した。Roche社はまた、薬物およびIMPDHに対する抗体が使用される非競合的酵素阻害免疫アッセイ形式のための該薬物のコンジュゲートの調製における4'-および5'-ミコフェノール酸誘導体を開示した。しかし、4'-および5'-ミコフェノール酸誘導体から調製された免疫原は先行技術には開示されていない。
【発明の概要】
【0006】
(発明の概要)
上記背景に対して、本発明は、先行技術と比べてある一定の非自明の利点および進歩を提供する。特に、本発明者は、特にミコフェノール酸のグルクロニド代謝産物よりもミコフェノール酸親薬物に対して向上した特異性を有する抗体の生成に有用なミコフェノール酸免疫原を改善する必要があると認識している。
【0007】
本発明には、ミコフェノール酸カルボン酸部分が遊離であり、遮られていない新規の免疫原が記載される。該カルボン酸部分は、先行技術の免疫原のように隠されておらず、そのためにエピトープとして機能させるのに十分に利用可能である。このことは、アルキル側鎖の種々の位置、すなわち以下の構造:


(式中、Lは、直鎖または分岐鎖に配置された1〜40個の炭素原子を含み、飽和または不飽和であり、2個以下の環構造および0〜20個のヘテロ原子を含むリンカーである、ただし、2個以下のヘテロ原子は連続して連結していてもよく、Xは、ポリペプチド、多糖および合成ポリマーからなる群より選択される)
に示される4'および5'位を介したミコフェノール酸の結合により達成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、ミコフェノール酸5'-置換芳香族NHSエステル(10)、N-{2-[(E)-3-カルボキシ-7-(4-ヒドロキシ-6-メトキシ-7-メチル-3-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソベンゾフラン-5-イル)-5-メチル-ヘプト-5-エノイルアミノ]-エチル}-テレフタル酸2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルエステルの合成を模式的に示す。
【図2】図2は、ミコフェノール酸5'-置換芳香族NHSエステル(10)のKLHコンジュゲート(11)およびBSAコンジュゲート(12)の合成を模式的に示す。
【図3】図3は、5'位マレイミド-結合ミコフェノール酸(14)、(E)-2-({2-[3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-ピロール-1-イル)-プロピオニルアミノ]-エチルカルバモイル}-メチル)-6-(4-ヒドロキシ-6-メトキシ-7-メチル-3-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソベンゾフラン-5-イル)-4-メチル-ヘキス-4-エン酸の合成を模式的に示す。
【図4】図4は、5'位結合ミコフェノール酸-スクシンイミジル-スルファニルプロピオニル-BSAコンジュゲート(15)の合成を模式的に示す。
【図5】図5は、5'位結合ミコフェノール酸スクシンイミジル-スルファニルブチリミドイル-KLH(16)の合成を模式的に示す。
【図6】図6は、4'-(2,5-ジオキソ-ピロリジニル-1-イル-オキソカルボニル-4”-フェニル-1”-カルボニルアミノ-エチル-2-アミノカルボニルメチル)-MPA(18)の4’位結合KLHコンジュゲート(19);およびBSAコンジュゲート(20)の合成を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
「好ましくは」、「一般的に」および「典型的に」などの用語は、本明細書において、特許請求の範囲に記載の発明の範囲を限定するため、または特定の性質が特許請求の範囲に記載の発明の構造もしくは機能に決定的、不可欠もしくは非常に重要であることを意味するために使用しているのではないことに注意されたい。むしろ、これらの用語は、本発明の特定の態様において使用されてもよく、されなくてもよい代替的または付加的な特徴を強調することだけを目的とする。
【0010】
本発明を説明および規定するために、用語「実質的に」は、本明細書において、任意の定量的な比較、値、測定値または他の表示に寄与し得る固有の不確かさの程度を示すために使用されることに注意されたい。用語「実質的に」はまた、本明細書において、問題となっている主題の事項の基本的な機能の変化をもたらすことなく、定量的な表示が記述内容から異なり得る程度を示すために使用される。
【0011】
本発明は、ミコフェノール酸のグルクロニド代謝産物、特に以下に示されるアシル-グルクロニド代謝産物と反応しない、ミコフェノール酸に高度に特異的な抗体の生成のための免疫原を提供する:

【0012】
添付の図面には、活性エステル化学により調製されるミコフェノール酸-4'-および5'-免疫原それぞれについての好ましい態様の調製が示される(図1、2および6参照)。別の好ましい態様は、マレイミド/チオール化学による免疫原の調製である(図3〜5参照)。
【0013】
5'または4'位リンカーを介して担体とコンジュゲートされたミコフェノール酸は、ミコフェノール酸分子、例えば末端カルボン酸を免疫系に最適に提示する。置換基の5'および4'位はミコフェノール酸免疫原では新規である。
【0014】
一般的に、非末端位のアルキル側鎖の誘導体化により調製される免疫原は通常のものではなく、特に、ミコフェノール酸について、交差反応性抗体の問題の解決として自明ではない。
【0015】
一態様において、本発明は、式


(式中、Lは、直鎖または分岐鎖に配置された1〜40個の炭素原子を含み、飽和または不飽和であり、2個以下の環構造および0〜20個のヘテロ原子を含むリンカーである、ただし、2個以下のヘテロ原子は連続して連結していてもよく、Xは、ポリペプチド、多糖および合成ポリマーからなる群より選択される)
を有する化合物に関する。
【0016】
別の態様において、本発明は直上の化合物に応答して生成される抗体に関する。
【0017】
別の態様において、本発明は、


(式中、Lは、直鎖または分岐鎖に配置された1〜40個の炭素原子を含み、飽和または不飽和であり、2個以下の環構造および0〜20個のヘテロ原子を含むリンカーである、ただし、2個以下のヘテロ原子は連続して連結していてもよく、Xは、ポリペプチド、多糖および合成ポリマーからなる群より選択される)
を有する化合物に関する。
【0018】
別の態様において、本発明は直上の化合物に応答して生成される抗体に関する。
【0019】
本発明の別の目的は、本発明の免疫原から生成される、MPAに対する抗体を提供することである。抗体を生成するために、凍結乾燥免疫原を再水和して免疫原の溶液または懸濁液を形成することで、宿主動物に注射するための免疫原を調製し得る。あるいは、免疫原は事前に調製されたバッファ中の溶液または懸濁液として使用され得る。その後、免疫原溶液は、フロイントアジュバントなどのアジュバントと合わされて、免疫原混合物を形成する。該免疫原は、数回用量で、一回以上、何週間にもわたり、様々な部位に投与され得る。
【0020】
本発明の免疫原を用いたポリクローナル抗体の調製は、当業者に公知の通常の技術のいずれかに従うものであり得る。一般的に、ウサギ、ヤギ、マウス、モルモットまたはウマなどの宿主動物に免疫原混合物を注射する。最適な抗体力価に達することが測定されるまで、さらなる注射がなされ、抗体力価について血清が評価される。その後、宿主動物は、適当量の特異的抗血清を得るために採血される。所望の場合は、精製工程を行い、非特異的抗体などの所望でない物質が取り除き、その後抗血清はアッセイの実施における使用に適切であると見なされる。
【0021】
Methods in Enzymology 73 (Part B), pp. 3-46, 1981に記載される技術のようなポリエチレングリコール融合法を使用して、上述のように免疫したマウス由来のマウスのリンパ球とミエローマ細胞をハイブリダイズさせ、モノクローナル抗体が得られ得る。
【0022】
本発明がより容易に理解され得るように以下の実施例が記載されるが、実施例は本発明を説明することを目的とし、本発明の範囲を限定することを目的としない。以下の実施例において、下線が引かれ、太字になった数字は図面中の対応する構造を言及する。
【実施例】
【0023】
(具体的な態様)
実施例1. ミコフェノール酸メチルエステル(2)の作製
無水メタノール中、5.0g(15.6mmol)のミコフェノール酸の溶液に100□Lの濃H2SO4を添加した。この茶色透明溶液を、アルゴン雰囲気下、室温で18時間攪拌した。得られた反応混合物を減圧下で濃縮し、茶色がかった白色の粉末を得た。これを150mLのジクロロメタンに溶解し、飽和重炭酸ナトリウム(3x100mL)、その後100mLの水で洗浄した。ジクロロメタン層を回収して、乾燥し(無水Na2SO4)、濃縮して淡褐色粉末の4.72g(14.1mmol)のミコフェノール酸メチルエステル(2)を得た。
【0024】
実施例2. 5'-t-ブトキシカルボニルメチル-ミコフェノール酸メチルエステル(3)の作製
26mL(26mmol)のビス(トリメチルシリル)アミドナトリウム溶液(THF中1.0M溶液)を、ドライアイス/アセトン浴中、アルゴン雰囲気下で-78℃に冷却した。この冷却溶液に、2.6mL(22mmol)のジメチルプロピレンウレア(DMPU)を添加して、-78℃で15分間攪拌した。45mLの新しく蒸留したTHF中2.86g(8.56mmol)のミコフェノール酸メチルエステル(2)の溶液を反応混合物に滴下した。反応混合物を-78℃で1時間攪拌すると、反応混合物の色が淡黄色から黄色がかった橙色に変わった。反応混合物に1.9mL(912mmol)のt-ブチルブロモアセテートを添加して、反応混合物を-78℃で3時間攪拌した。20mLの飽和塩化アンモニウム溶液で反応を停止して、得られた混合物を室温まで温めた。さらに200mLの飽和塩化アンモニウム水溶液を添加して、反応混合物を3x200mLの酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を300mLの飽和塩化アンモニウムで洗浄し、乾燥して(無水Na2SO4)、濃縮した。粗生成物を、酢酸エチル中30%のヘキサンを使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、3.87gの半固体を得た。0.1%のトリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル/水の勾配系を使用して、この生成物の一部(1.45g)をRP-HPLC [Rainin C-18(ODS)21.4mmx250mm]で数回精製した。生成物を含む画分を合わせ、アセトニトリルを蒸発させた。残渣を凍結乾燥して、669mg(1.49mmol、47%)の5'-t-ブトキシカルボニルメチル-ミコフェノール酸メチルエステル(3)を得た。
【0025】
実施例3. 5'-カルボキシメチル-ミコフェノール酸メチルエステル(4)の作製
300mg(0.67mmol)の5'-t-ブトキシカルボニルメチル-ミコフェノール酸メチルエステル(3)に、ジクロロメタン中トリフルオロ酢酸の溶液15mLを添加した。混合物を室温で0.5時間攪拌して濃縮した。酢酸エチル中20%のメタノールを使用して、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで残渣を精製し、250mg(0.63mmol、95%)の5'-カルボキシメチル-ミコフェノール酸メチルエステル(4)を得た。
【0026】
実施例4. 5’-(スクシンイミド-N-オキシ)カルボニルメチル-ミコフェノール酸メチルエステル(5)の作製
2mLの新たに蒸留したTHF中200mg(0.51mmol)の5’-カルボキシメチル-ミコフェノール酸メチルエステル(4)に、244mg(2.12mmol)のN-ヒドロキシスクシンイミドおよび437mg(2.12mmol)のジシクロヘキシルカルボジイミドを添加した。混合物を室温で2時間攪拌した。沈殿したジシクロヘキシル尿素を濾過して除去し、分取用RP-HPLC (Waters Delta Pak C-18 50×250 mm、水/アセトニトリル/0.1%TFA)を用いて濾液を精製した。
【0027】
生成物含有画分をプールし、直ちに凍結乾燥し、129mg(52%、0.26mmol)の5’-(スクシンイミド-N-オキシ)カルボニルメチル-ミコフェノール酸メチルエステル(5)を得た。
【0028】
実施例5. 5’-(N-2-t-ブトキシカルボニルアミノエチル)アミノカルボニルメチル-ミコフェノール酸メチルエステル(6)の作製
680mg(1.73mmol)の5’-カルボキシメチル-ミコフェノール酸メチルエステル(4)に、75mLの新たに蒸留したジクロロメタンを添加した。反応混合物に、新たに蒸留したジクロロメタン中516mg(3.25mmol)のt-ブチルN-(2-アミノエチル)-カルバメートの20ml溶液を添加した。得られた混合物を室温で攪拌し、503mg(2.62mmol)の1(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩を添加した。反応混合物を室温で18時間攪拌した。反応混合物を2×100mLの水、2×100mLの飽和重炭酸ナトリウムで洗浄した後、100mLの水で洗浄した。有機層を分離し、乾燥し(無水Na2SO4)、濃縮した。酢酸エチル中10%メタノールを使用し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。472mg(0.88mmol、51%)の5’-(N-2-t-ブトキシカルボニルアミノエチル)アミノカルボニルメチル-ミコフェノール酸メチルエステル(6)を無色のゴム状物として得た。
【0029】
実施例6. 5’-(スクシンイミド-N-オキシ)カルボニルメチル-ミコフェノール酸メチルエステル(5)からの5’-(N-2-t-ブトキシカルボニルアミノエチル)アミノカルボニルメチル-ミコフェノール酸メチルエステル(6)の代替的な作製
5mLの新たに蒸留したジクロロメタン中125mg(0.25mmol)の5’-(スクシンイミド-N-オキシ)カルボニルメチル-ミコフェノール酸メチルエステル(5)の溶液を調製する。この反応混合物に、2mLのジクロロメタン中59□L(0.38mmol)のt-ブチル-N-(2-アミノエチル)-カルバメートの溶液を添加する。反応混合物を室温で攪拌し、73□L(5.2mmol)のトリエチルアミンを添加した。反応混合物を室温で18時間攪拌し、得られた反応混合物を水、飽和重炭酸ナトリウムで洗浄した後、水で洗浄する。有機層を乾燥し(Na2SO4)、濃縮する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、5’-(N-2-t-ブトキシカルボニルアミノエチル)アミノカルボニルメチル-ミコフェノール酸メチルエステル(6)を得る。
【0030】
実施例7. 5’-(N-2-アミノエチル)アミノカルボニルメチル-ミコフェノール酸メチルエステルトリフルオロ酢酸塩(7)
4mLの新たに蒸留したジクロロメタン中55mg(0.102mmol)の5’-(N-2-t-ブトキシカルボニルアミノエチル)カルボニルメチル-ミコフェノール酸メチルエステル(6)の溶液に、4mLのトリフルオロ酢酸を添加した。得られた混合物を室温で15分間攪拌し、減圧下で濃縮し、56mg(0.102 mmol)の5’-(N-2-アミノエチル)アミノカルボニルメチル-ミコフェノール酸メチルエステルトリフルオロ酢酸塩(8)を定量的収率で淡黄色ゴム状物として得た。
【0031】
実施例8. 5’-(N-2-アミノエチル)アミノカルボニルメチル-ミコフェノール酸(8)
1.63g(2.97mmol)の5’-(N-2-アミノエチル)アミノカルボニルメチル-ミコフェノール酸メチルエステルトリフルオロ酢酸塩(7)に、22mLのTHF、22mLのメタノールおよび48mLの水中3.5g(83mmol)の水酸化リチウム一水和物を添加する。反応混合物を室温で18時間攪拌し、濃縮してTHFおよびメタノールをできる限り多く除去する。得られた反応混合物に、リン酸を添加してpHを5に調整し、水性反応混合物を6×50mLのクロロホルムで抽出する。有機層を合わせ、乾燥し(Na2SO4)、濃縮し、5’-(N-2-アミノエチル)アミノカルボニルメチル-ミコフェノール酸(8)を得る。
【0032】
実施例9. テレフタル酸ビス-(2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イル)エステル(9)の作製
15g(73.8mmol)の塩化テレフタロイルに、300mLのジクロロメタンを添加した。混合物をアルゴン雰囲気下、0℃で10分間攪拌した。反応混合物に、30g(0.26mol)のN-ヒドロキシスクシンイミドを添加した後、30mL(0.22mol)のトリエチルアミンを0℃で滴下した。混合物を2日間室温で加温した。固体を濾過して除去し、残渣を200mLのジクロロメタンで洗浄した。残渣を300mLのジクロロメタンに再懸濁し、10分間攪拌した。固体を濾過し、乾燥し、24.1g(66mmol)の(9)を白色粉末として得た。
【0033】
実施例10. ミコフェノール酸5’置換芳香族NHSエステル、N-{2-[(E)-3-カルボキシ-7-(4-ヒドロキシ-6-メトキシ-7-メチル-3-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソベンゾフラン-5-イル)-5-メチル-ヘプト-5-エノイルアミノ]-エチル}-テレフタルアミン酸2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルエステル(10)
15mLの無水DMF中500mg(1.18mmol)のミコフェノール酸アミン(8)の溶液を室温で作製する。磁気攪拌されたこの溶液に、360□L(3.5mmol)のトリエチルアミンを添加する。この溶液を、10mLの新たに蒸留したTHF中428mg(1.18mmol)のテレフタル酸ジNHSエステルの溶液に滴下する。反応混合物をアルゴン雰囲気下、室温で18時間攪拌し、減圧下で濃縮する。粗製生成物を、0.1%TFAを含有するアセトニトリル-水からなる勾配ランを使用し、RP-分取用HPLCによって精製する。生成物を含有するすべての画分を凍結乾燥し、所望のNHSエステル(10)を得る。
【0034】
実施例11. ミコフェノール酸免疫原(11)の作製
7mlの50mMリン酸カリウム(pH7.5)中180mgのスカシガイヘモシアニン(KLH、Pierce chemical)を氷浴中で冷却する。この溶液に、10.5mLのジメチルスルホキシド(DMSO)を滴下し、反応温度を室温未満に維持する。このタンパク質溶液に、1.5mLのDMF中54mg(0.08mmol)の(10)の溶液を滴下する。混合物を室温で18時間攪拌する。得られたコンジュゲートを透析チューブ(10,000 MWカットオフ)に入れ、1Lの50mMリン酸カリウム中70%DMSO(pH7.5、3回交換、各々、少なくとも3時間)、1Lの50mMリン酸カリウム中50%DMSO(少なくとも3時間)、1Lの50mMリン酸カリウム中30%DMSO(少なくとも3時間)、1Lの50mMリン酸カリウム中10%DMSO(少なくとも3時間)中、室温で透析した後、4℃で、50mMリン酸カリウム(pH7.5)で6回交換して透析する(各々、1Lで各々少なくとも6時間)。BioRadクーマシーブルータンパク質アッセイ(Bradford,M.、Anal. Biochem. 72,248,1976)を用いてタンパク質濃度を測定する。利用可能なリジン修飾の程度をTNBS法(Habeeb AFSA、Anal. Biochem.14、328-34、1988)によって測定する。
【0035】
実施例12. ミコフェノール酸BSAコンジュゲート(12)の作製
8mLの50mMリン酸カリウム(pH7.5)中800mgのウシ血清アルブミン(BSA)の溶液を氷浴中で冷却する。この溶液に、12mLのDMSOを滴下し、反応混合物を室温未満に維持する。反応混合物に、1mLの無水DMF中20mg(0.030mmol)のミコフェノール酸誘導体(10)の溶液を滴下する。これを室温で48時間攪拌し、得られたコンジュゲートを透析チューブ(10,000 MWカットオフ)に入れ、1Lの50mMリン酸カリウム中70%DMSO(pH7.5、3回交換、各々、少なくとも3時間)、1Lの50mMリン酸カリウム中50%DMSO(少なくとも3時間)、1Lの50mMリン酸カリウム中30%DMSO(少なくとも3時間)、1Lの50mMリン酸カリウム中10%DMSO(少なくとも3時間)中、室温で透析した後、4℃で、50mMリン酸カリウム(pH7.5)で6回交換して透析する(各々1Lで少なくとも6時間)。BioRadクーマシーブルータンパク質アッセイ(Bradford,M.、Anal. Biochem. 72、248、1976)を用いてタンパク質濃度を測定する。
【0036】
実施例13. マレイミド結合ミコフェノール酸(E)-2-({2-[3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-ピロール-1-イル)-プロピオニルアミノ]-エチルカルバモイル}-メチル)-6-(4-ヒドロキシ-6-メトキシ-7-メチル-3-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソベンゾフラン-5-イル)-4-メチル-ヘキス-4-エン酸(14)の作製
8mLの無水DMF中200mg(0.47mmol)のミコフェノール酸アミン(8)の溶液を調製する。この溶液に、165□L(1.18mmol)のトリエチルアミンを添加する。この溶液を、8mLの新たに蒸留したTHF中139mg(0.52mmol)の3-マレイミド-プロピオン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルの溶液に滴下する。反応混合物をアルゴン雰囲気下、室温で18時間攪拌し、減圧下で濃縮する。粗製生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、所望のマレイミド結合ミコフェノール酸(14)を得る。
【0037】
実施例14. ミコフェノール酸-スクシンイミジル-スルファニルプロピオニル-BSAコンジュゲート(15)
ウシ血清アルブミン(0.5g)を、1mM EDTAを含有する50mLの50mMリン酸カリウムに溶解する。反応混合物に、DMSO中1.24mLのN-スクシンイミジルS-アセチルチオプロピオネート(SATP)(DMSO中15mg/mL)を添加する。反応混合物を室温で1時間静置する。得られた溶液を50mMリン酸カリウム(pH7.5)に対して3日間透析し[10,000 MWカットオフ]、BSA-SATPの溶液を得、これを後の使用のために-20℃で保存する。BioRadクーマシーブルータンパク質アッセイ(Bradford,M.、Anal. Biochem. 72:248、1976)を用いてタンパク質濃度を測定する。
【0038】
5mLのBSA-SATP(9mg/mL)に、850□Lの以下のバッファー; 50mMリン酸カリウム、25mM EDTA、0.5 M NH2OH、pH7.2を添加する。混合物をボルテックスし、室温で2時間静置し、S-アセチル部分を脱保護する。
【0039】
得られた溶液を、3 PD 10カラムを用いて脱塩し、対応する脱保護チオプロピオニル-BSAを含有するタンパク質溶液5.5mLを得る。この溶液を0℃まで冷却し、4mLのDMSO を滴下する。0.5mLのDMSO中10mg(0.017mmol)のミコフェノール酸-マレイミド誘導体(14)の溶液をこのタンパク質溶液に添加する。混合物を室温で24時間攪拌する。このタンパク質溶液に、DMSO中5mg/mLのエチルマレイミド400□Lを添加し、室温で24時間攪拌する。得られたコンジュゲートを透析チューブ(10,000 MWカットオフ)に入れ、1Lの50mMリン酸カリウム中30%DMSO(pH7.5、3回交換、各々、少なくとも3時間)、1Lの50mMリン酸カリウム中20%DMSO(少なくとも3時間)、1Lの50mMリン酸カリウム中10%DMSO(少なくとも3時間)中で透析した後、4℃で、50mMリン酸カリウム(pH7.5)で6回交換して透析する(各々1Lで、各々少なくとも6時間)。Bioradクーマシーブルータンパク質アッセイ(Bradford,M.、and Anal. Biochem. 72:248、1976)を用いてタンパク質濃度を測定する。
【0040】
実施例15. ミコフェノール酸スクシンイミジル-スルファニルブチルイミドイル-KLH (16)
スカシガイヘモシアニン(KLH、60mg、Pierce chemicals)を、pH7.2の100mMリン酸ナトリウムバッファー中で再構成する。2-イミノチオラン(2-IT、13.5mg)を固体としてタンパク質溶液に添加し、反応物をアルゴン雰囲気下、暗所で室温にて1時間攪拌する。チオール化されたKLHを、pH6.5の100mMリン酸ナトリウムバッファーで予め平衡化したSephadex PD-10カラム上で脱塩する。KLH分子あたりのチオール負荷を測定する(MW 5,000,000)。6mlのKLH-(SH)n[4.7mg/mL]に、1mLのDMF中21mg(036mmol)のミコフェノール酸-マレイミド(14)の溶液を滴下し、混合物を室温で18時間攪拌する。得られたコンジュゲートを透析チューブ(10,000 MWカットオフ)に入れ、20%DMFを含有する1LのPBSバッファー(180mM NaCl、10mMリン酸ナトリウム、pH7.2]中で透析する(3回、各々、少なくとも6時間)。この後、pH7.2の1LのPBS バッファー中、4℃で透析し、KLHコンジュゲート(16)の溶液を得る。BioRadクーマシーブルータンパク質アッセイ(Bradford,M.、Anal. Biochem. 72:248、1976)を用いてタンパク質濃度を測定する。
【0041】
実施例16. 4’-(N-2-アミノエチル)-アミノカルボニル-MPA(17)
4’-カルボキシメチル-MPA(US 6,811,998 B2、実施例43に記載のようにして合成)41mg(0.1084mmol)を、0.82mlのTHF、8.77□lのピリジンに溶解し、15.3□lのトリフルオロ酢酸無水物を添加する。混合物を3時間攪拌し、次いで、820□lのピリジン中0.1084mmolのエチレンジアミンを添加する。混合物を室温で16時間攪拌した後、0.1%水性TFA中アセトニトリルの勾配でRP-HPLCによって精製し、生成物をトリフルオロ酢酸塩として得る。
【0042】
実施例17. 4’-(2,5-ジオキソ-ピロリジニル-1-イル-オキソカルボニル-4”-フェニル-1”-カルボニルアミノ-エチル-2-アミノカルボニルメチル)-MPA (18)
15mLの無水DMF中630mg(1.18mmol)の4’-(N-2-アミノエチル)-アミノカルボニル-MPAトリフルオロ酢酸塩の溶液を室温で調製する。磁気攪拌されたこの溶液に、360□L(3.5mmol)のトリエチルアミンを添加する。この溶液を、10mLの新たに蒸留したTHF中428mg(1.18mmol)のテレフタル酸ジNHSエステルの溶液に滴下する。反応混合物をアルゴン雰囲気下、室温で18時間攪拌し、減圧下で濃縮する。粗製生成物を、0.1%TFAを含有するアセトニトリル-水からなる勾配ランを使用し、RP-分取用HPLCによって精製する。生成物を含有するすべての画分を直ちに凍結し、凍結乾燥し、所望のNHSエステルを得る。
【0043】
実施例18. MPA-4’-KLH免疫原(19)
上記の4’-活性化ハプテン(18)を5’-活性化ハプテン(10)に置き換え、5’-免疫原(11)の場合と同様にしてKLH免疫原を調製する。
【0044】
実施例19. MPA-4’-BSAコンジュゲート(20)
上記の4’-活性化ハプテン(18)を5’-活性化ハプテン(10)に置き換え、5’-コンジュゲート(12)の場合と同様にしてBSAコンジュゲートを調製する。
【0045】
本発明を詳細に、その具体的な態様に関して記載したが、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲から逸脱することなく修正および変形が可能ことは明白である。より詳しくは、本発明のいくつかの局面を本明細書において好ましいまたは特に有利であると特定しているが、本発明は必ずしもこれらの本発明の好ましい局面に限定されないことが企図される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】



(式中、Lは、直鎖または分枝鎖、飽和または不飽和で配置された1〜40個の炭素原子を含み、2個までの環構造および0〜20個のヘテロ原子を含むリンカーであるが、2個以下のヘテロ原子は連続して連結していてもよく、Xは、ポリペプチド、多糖類および合成ポリマーからなる群より選択される)
を有する化合物。
【請求項2】
請求項1記載の化合物に応答して生成される抗体。
【請求項3】



(式中、Lは、直鎖または分枝鎖、飽和または不飽和で配置された1〜40個の炭素原子を含み、2個までの環構造および0〜20個のヘテロ原子を含むリンカーであるが、2個以下のヘテロ原子は連続して連結していてもよく、Xは、ポリペプチド、多糖類および合成ポリマーからなる群より選択される)
を有する化合物。
【請求項4】
請求項3記載の化合物に応答して生成される抗体。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2011−503131(P2011−503131A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533492(P2010−533492)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009570
【国際公開番号】WO2009/062703
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】