ミスト吐出ヘッド及び画像形成装置
【課題】 放物面で反射される超音波に対する直接波の影響を排除して、エネルギー効率を向上させること。
【解決手段】 霧状の液体を吐出するノズル51と、ノズル51に連通する液室52と、液室52の側壁に配置され、超音波を発生して液室52内の液体に超音波を与える超音波発生素子58と、液室52の中央方向に向かう超音波発生素子58からの超音波を反射して液室52内のノズル51の近傍に位置する焦点Fに集束させる反射面80pを有するリフレクタ80を備えた。液室52は、焦点Fを通る軸線を有する円筒形状であり、リフレクタ80は、液室52の軸線と直交する中心軸を有する放物線を液室52の軸線を中心に回転させて成る反射面80aを有する凸形状とした。
【解決手段】 霧状の液体を吐出するノズル51と、ノズル51に連通する液室52と、液室52の側壁に配置され、超音波を発生して液室52内の液体に超音波を与える超音波発生素子58と、液室52の中央方向に向かう超音波発生素子58からの超音波を反射して液室52内のノズル51の近傍に位置する焦点Fに集束させる反射面80pを有するリフレクタ80を備えた。液室52は、焦点Fを通る軸線を有する円筒形状であり、リフレクタ80は、液室52の軸線と直交する中心軸を有する放物線を液室52の軸線を中心に回転させて成る反射面80aを有する凸形状とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はミスト吐出ヘッド及び画像形成装置に係り、特にミストを吐出するミスト吐出ヘッド及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
群(クラスタ)の微液滴、すなわちミストを吐出するミスト吐出ヘッドが知られている(例えば特許文献1、2、3、4を参照)。
【0003】
ミストの吐出は、簡単に言うと、超音波により液体の表面張力を減少させて液体を霧化することにより行う。具体的には、一般に、キャビテーション(空洞現象)によるキャビテーション霧化、あるいは、キャピラリ波(毛細表面波)によるキャピラリ霧化が用いられる。後者を用いた方が、粒径の揃ったミストを生成でき、かつエネルギー効率も良い。自由液面に向って平面波を印加することでキャピラリ波が発生するが、平面波がある一定以上の周波数及び振幅である場合、キャピラリ波は発振を起こす。この結果、成長したキャピラリ波の波頭からミストが分裂する。
【0004】
また、図11にも示すように、超音波発生素子958によって発生して液室952内の液体に導入された超音波を、リフレクタ980の放物面980pによって反射し、ノズル51の近傍に位置する焦点Fに集束させることにより、エネルギー効率を上げるようにしたものが知られている(特許文献3、4)。
【特許文献1】特開昭62−86948号公報
【特許文献2】特開昭62−111757号公報
【特許文献3】特開平10−278253号公報
【特許文献4】特開2002−166541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図11に示すような従来のミスト吐出ヘッド950においては、リフレクタ980の放物面980pで反射された超音波(反射波)に対して、放物面980pで反射されなかった超音波(直進波)が影響を及ぼし、エネルギー効率が下がるという問題がある。また、高密度化に伴ってリフレクタ980のサイズが小さくなるほど、直進波が反射波に及ぼす影響が無視できなくなり、ノズル51のメニスカス(液面)に印加される超音波のコヒーレント性が損なわれてしまい、粒径がばらつくなど、吐出性能が劣化するという問題もある。
【0006】
図11を用いて詳細に説明すると、超音波発生素子958から液室952内の液体に導入された超音波は、平面波として液室952内を進み、リフレクタ980の放物面980pで反射されると、反射された超音波(反射波)は、ノズル51の近傍に位置する焦点Fに集束する。一方で、リフレクタ980の放物面980pで反射されなかった超音波(直進波)は、直進して、ノズル51のメニスカスに到達する。これらの反射波及び直進波の同一位相である波面間には、ギャップg(空間ギャップと称する)が生じ、このような空間ギャップgは液室952内を超音波が進むにしたがって大きくなる。
【0007】
ところで、放物面980p上の任意の点Qは、焦点Fとの距離QFが準線Dとの距離QDと等しい。このような放物線の性質より、反射面980pで反射された反射波が焦点Fに到達した時には、反射波及び直進波の同一位相である波面間の距離は、焦点Fと準線Dとの間の距離に等しくなることがわかる。したがって、焦点F及び準線Dの間隔を超音波の波長の整数倍になるようなピンポイントの設計をしない限り、コヒーレント性を損なうとともに、エネルギー効率を下げてしまうことになる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、直接波の影響を排除して、エネルギー効率を向上させることができるミスト吐出ヘッド及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、霧状の液体を吐出するノズルと、前記ノズルに連通する液室と、前記液室の側壁に配置され、超音波を発生して前記液室内の液体に与える超音波発生素子と、前記液室の中央方向に向かう前記超音波発生素子からの超音波を反射して前記液室内の前記ノズルの近傍に位置する焦点に集束させる反射面を有するリフレクタを備えたことを特徴とするミスト吐出ヘッドを提供する。
【0010】
この発明によれば、液室内の液体に対してその液室の側壁に配置された超音波発生素子から超音波が与えられて、リフレクタの反射面によってノズルの近傍の焦点に超音波が集束されるので、焦点に達する超音波は概ね反射波となり、焦点に集束した反射波に対する直接波の影響は排除され、エネルギー効率が向上することになる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記リフレクタの前記反射面の断面形状は、前記焦点を共焦点とする2本の放物線からなることを特徴とするミスト吐出ヘッドを提供する。
【0012】
このように、リフレクタの反射面の断面形状が共焦点を有する2本の放物線によって構成された形状であれば、共焦点に反射波が効率よく集束されることになる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記液室は、前記焦点を通る軸線を有する円筒形状であり、前記リフレクタは、前記液室の軸線と直交する中心軸を有する放物線を前記液室の軸線を中心に回転させて成る前記反射面を有する凸形状であることを特徴とするミスト吐出ヘッドを提供する。
【0014】
このように、液室を円筒形状とし、リフレクタを液室の軸線を中心に回転させて成る回転体形状とし、かつ、液室の軸線と直交する中心軸を有する放物線を液室の軸線を中心に回転させて成る反射面を有する凸形状としたことにより、直接波を確実に排除し、かつ、反射波の集束効率が極めて高い構造のミスト吐出ヘッドを、容易に製造できることとなる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載のミスト吐出ヘッドを備え、前記ノズルから吐出した霧状の液体によって所定の記録媒体に画像を形成することを特徴とする画像形成装置を提供する。
【0016】
この発明によれば、高品質の画像がエネルギー効率良く形成されることになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、直接波の影響を排除して、エネルギー効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を用いて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0019】
[ミスト吐出ヘッドの基本構成]
図1は、本発明に係る一実施形態のミスト吐出ヘッドの基本構成を示す断面図である。
【0020】
図1において、ミスト吐出ヘッド50は、霧状のインクを吐出する開口部としてのノズル51と、ノズル51に連通する液室52と、液室52にインクが供給される開口部としてのインク供給口53と、インク供給口53を介して液室52に供給されるインクが流動する共通流路55と、液室52の側壁56に配置され、超音波を発生して、液室52内のインクに超音波を与える超音波発生素子58と、超音波発生素子58からの超音波を反射して、液室52内のノズル51の近傍に位置する焦点Fに集束させるリフレクタ80を含んで構成されている。
【0021】
超音波発生素子58は、ピエゾなどの圧電体58aと、駆動信号が与えられる電極58b、58cとによって構成されている。
【0022】
また、ミスト吐出ヘッド50は、リフレクタ80が形成されているリフレクタプレート530と、液室52及び超音波発生素子58が形成されている液室プレート520と、ノズル51が形成されているノズルプレート510とが積層された、積層構造になっている。
【0023】
液室52の側壁56に配置された超音波発生素子58によって発生された超音波は、液室52の側壁56を振動板として、この液室52の側壁56を介して液室52内の液体に導入され、液室52の中央方向に向かって平行に進む。すなわち、焦点Fを通る液室52の軸線に向っていくように、この液室52の軸線に対して直交する方向で面状に進んでいく。
【0024】
このようにして液室52の軸線に向って進んだ超音波は、リフレクタ80の放物面80pによって反射される。放物面80pの焦点Fは、液室52内のノズル51の近傍に位置しているので、リフレクタ80の放物面80aによって反射された超音波(反射波)は、液室52内を焦点Fに向かって進み、焦点Fに集束される。
【0025】
ノズル51から霧状の液体が吐出される方向(図1中に矢印で示す)は、概ね焦点Fを通る液室52の軸線方向である。
【0026】
リフレクタ80の反射面としての放物面80pの断面形状、具体的には焦点Fを通り吐出方向に平行な面で切断したときの一断面形状は、ひとつの焦点Fを共焦点とする2本の放物線からなる。
【0027】
このような構造により、焦点Fに反射波を効率よく集束させることができる。すなわち、超音波発生素子58によって発生されて、液室52の側壁56を介して液室52内の液体に導入され、液室52の軸線に対して向っていくようにして面状に進んだ超音波は、リフレクタ80の放物面80pに鈍角で反射することにより、エネルギー損失が少なく反射されて、しかも、焦点Fに効率よく集束することになる。
【0028】
また、リフレクタ80の頂点80t(すなわち放物面80pの最上端部)は、液室52の側壁56に配置されている超音波発生素子58の最上端部と同じ(又はそれ以上)の高さとしてある。
【0029】
このような構造により、超音波発生素子58によって発生されて、液室52の側壁56を介して液室52内の液体に導入され、液室52の軸線に対して向っていくように面状に進んだ超音波は、直接波となることはなく、焦点Fに到達する超音波は概ね反射波となるので、減衰や干渉などの悪影響が低減され、エネルギー効率が向上する。
【0030】
なお、好ましい構造について、すなわちエネルギー効率が最大になる構造について、理解を容易にするために、図1に示す基本構成のミスト吐出ヘッド50の平面透視図を図2に示し、要部を模式的に示す斜視透視図を図3に示す。なお、図2中の1−1線に沿った断面は図1に示されている通りである。
【0031】
図2及び図3において、液室52は、焦点Fを通る軸線を有する円筒形状である。また、リフレクタ80は、凸形状である。このような凸形状のリフレクタ80の放物面80pは、液室52の焦点Fを通る軸線と焦点Fにて直交する中心軸を有する放物線を、液室52の軸線を中心に回転させて成る。
【0032】
ノズル51が形成されているノズルプレート510と液室52が形成されている液室プレート520とは、水平断面を示す図2において、液室52の外側で支柱851を介して接合されており、液室52の内側には接合部がない。このような構造であるから、ノズルプレート510とリフレクタとの接合部の角に気泡がたまり易かった従来のミスト吐出ヘッドと比較して、ノズル51の周囲に気泡がたまり難く、気泡排除性が良いことになり、吐出の安定性が良い。
【0033】
なお、図1〜図3では、1つのノズル51に対応した1つの液室ユニット(1単位のミスト吐出素子)が示されているが、紙等の記録媒体に対して相対的に移動して記録媒体上に画像を形成させるためのミスト吐出ヘッドの場合、複数の液室ユニットが1次元(列状)又は2次元(面状)に配列された構造となる。このようなミスト吐出ヘッドにおいて、実際には、ノズルプレート510には複数のノズル51が形成されており、液室プレート520には複数の液室52が形成されており、これらの液室52に対応して超音波発生素子58及びリフレクタ80が設けられる。
[従来のミスト吐出ヘッドとの比較]
図12は、従来のミスト吐出ヘッド950における超音波の集束倍率の説明のため、その従来のミスト吐出ヘッド950を簡略化して示す説明図である。
【0034】
図12におけるh、f、l、g、s、wは、それぞれ数式1、2、3、4、5、6で表される。
【0035】
(数式1)
h=aD/2
(数式2)
f=D/8a
(数式3)
l=(a/2D)×(D2−d2)
(数式4)
g=h−(f+l)
(数式5)
s=h−f
(数式6)
w=(D−v)/2
なお、aは、放物線の曲率である。Dは、放物面980pの開口断面積が最大となる開口部の直径である。dは、放物面980pの開口断面積が最小となる部分の直径である。図12におけるvは、数式4で表されるgについて、g=0として解いて得られ、数式7で表される。
【0036】
(数式7)
v=D/2a
また、gを設けた場合(g>0)、超音波の集束に寄与する面積Sと超音波の集束倍率mは、数式8で表される。
【0037】
(数式8)
S=π(D2−d2)/4、m=(D2−d2)/λ2
ここで、λは超音波の波長である。
【0038】
g=0(すなわちd=v)である場合、超音波の集束に寄与する面積Sと超音波の集束倍率mは、数式7、8より、数式9で表される。
【0039】
(数式9)
S=π(D2−v2)/4=πD2(4a2−1)/16a2、m=(D2−v2)/λ2
以上、従来のミスト吐出ヘッド950における超音波の集束倍率について説明した。
【0040】
図4は、本発明に係る一実施形態のミスト吐出ヘッド50による超音波の集束倍率の説明のために、そのミスト吐出ヘッド50を簡略化して示す説明図である。
【0041】
図4のミスト吐出ヘッド50において、超音波の集束に寄与するリフレクタ80の面積S´は、数式10で表される。
【0042】
(数式10)
S´=πP´w´
ここで、P´およびw´は、図4に示されている距離である。すなわち、P´は、円筒形状の液室52の内部の直径である。w´は、図12のwに相当し、図4では放物面80pを液室52の側壁56に投影した幅、すなわち放物面80pの高さである。
【0043】
P´及びw´は、それぞれ数式11、12で表される。
【0044】
(数式11)
P´=2s´
ここで、s´は、図12のsに相当し、図4では液室52の側壁56から焦点Fまでの距離である。
【0045】
(数式12)
w´=(D´−v´)/2=(D´/2)×(1−1/2a´)
ここで、D´は、図12のDに相当し、図4では放物線が液室52の側壁56を含む垂線で切断されたその放物線の垂直方向の切断点間の距離である。v´は、図12のvに相当し、図4では放物線が焦点Fを通る垂線で切断されたその放物線の垂直方向の切断点間の距離である。a´は放物線の曲率である。
【0046】
これらの数式10、11、12より、本実施形態のミスト吐出ヘッド50において、リフレクタ80の集束に寄与する面積S´は、数式13で表される。
【0047】
(数式13)
S´=πD´2(1+2a´)(1―2a´)2/16a´2
従来のミスト吐出ヘッド950と本実施形態のミスト吐出ヘッド50とにおける、超音波の集束に寄与する面積の比S´/Sは、a=a´、D=D´とした場合、数式9および数式13より、数式14で表される。
【0048】
(数式14)
S´/S=2a−1
すなわち、超音波の集束倍率は、従来と比較して、(2a−1)倍となる。
【0049】
例えば、数式14において、a=1.5とした場合、S´/S=2となる。すなわち、超音波の集束倍率は、従来と比較して、2倍になる。
【0050】
また、例えば、P´=Dとした場合、数式15が成立する。
【0051】
(数式15)
P´=D=2s´
この数式15をD´について解くと、数式16が得られる。
【0052】
(数式16)
D´=4aD/(4a´2−1)
この数式16と数式12とにより、数式17が得られる。
【0053】
(数式17)
S´=πDw´=πD2/(2a´+1)
この数式17において、a´=aとすると、数式18が得られる。
【0054】
(数式18)
S´/S=16a2/(2a−1)(2a´+1)2
この数式18において、a=1.5とした場合、S´/S=1.125となる。すなわち、超音波の集束倍率は、従来と比較して、1.125倍になる。
【0055】
〔画像形成装置の全体構成〕
本実施形態のミスト吐出ヘッド50を適用した画像形成装置の例について説明する。
【0056】
図5は、本発明に係る一実施形態の画像形成装置の全体構成図である。図5に示す画像形成装置110は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のミスト吐出ヘッド(以下、「ヘッド」という)112K,112C,112M,112Yを有する印字部112と、各ヘッド112K,112C,112M,112Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部114と、記録媒体たる記録紙116を供給する給紙部118と、記録紙116のカールを除去するデカール処理部120と、印字部112のノズル面(インク噴射面)に対向して配置され、記録紙116の平面性を保持しながら記録紙116を搬送するベルト搬送部122と、印字部112による印字結果を読み取る印字検出部124と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部126とを備えている。
【0057】
インク貯蔵/装填部114は、各ヘッド112K,112C,112M,112Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各タンクは所要の管路を介してヘッド112K,112C,112M,112Yと連通されている。
【0058】
図5では、給紙部118の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
【0059】
給紙部118から送り出される記録紙116はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部120においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム130で記録紙116に熱を与える。
【0060】
ロール紙を使用する装置構成の場合、図5のように、裁断用のカッター(第1のカッター)128が設けられており、該カッター128によってロール紙は所望のサイズにカットされる。なお、カット紙を使用する場合には、カッター128は不要である。
【0061】
デカール処理後、カットされた記録紙116は、搬送用ローラ対131によってニップ搬送され、プラテン132上へと送られる。プラテン132の後段(印字部112の下流側)にも搬送用ローラ対133が配置されており、前段の搬送用ローラ対131と後段の搬送用ローラ対133とが連動して記録紙116を所定の速度で搬送する。
【0062】
プラテン132は記録紙116の平面性を保ちつつ記録紙116を保持(支持)する部材(記録媒体の保持手段)として機能するとともに、背面電極として機能する部材である。図5におけるプラテン132は記録紙116の幅よりも広い幅寸法を有し、少なくとも印字部112のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0063】
記録紙116の搬送経路において、印字部112の上流側には、加熱ファン140が設けられている。加熱ファン140は、印字前の記録紙116に加熱空気を吹き付け、記録紙116を加熱する。印字直前に記録紙116を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
【0064】
印字部112の各ヘッド112K,112C,112M,112Yは、当該画像形成装置110が対象とする記録紙116の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録紙の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク噴射用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図6参照)。
【0065】
ヘッド112K,112C,112M,112Yは、記録紙116の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド112K,112C,112M,112Yが記録紙116の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
【0066】
ベルト搬送部122により記録紙116を搬送しつつ各ヘッド112K,112C,112M,112Yからそれぞれ異色のインクを噴射することにより記録紙116上にカラー画像を形成し得る。
【0067】
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド112K,112C,112M,112Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録紙116と印字部112を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙116の全面に画像を記録することができる。これにより、記録ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
【0068】
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを噴射するヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0069】
図5に示した印字検出部124は、印字部112の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ又はエリアセンサ)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりや着弾位置ずれなどの噴射不良をチェックする手段として機能する。各色のヘッド112K,112C,112M,112Yにより印字されたテストパターン又は実技画像が印字検出部124により読み取られ、印字結果が検査される。
【0070】
印字検出部124の後段には後乾燥部142が設けられている。後乾燥部142は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。
【0071】
後乾燥部142の後段には、加熱・加圧部144が設けられている。加熱・加圧部144は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ145で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
【0072】
こうして生成されたプリント物は排紙部126から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。この画像形成装置110では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部126A、126Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)148によってテスト印字の部分を切り離す。また、図5には示さないが、本画像の排出部126Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
【0073】
〔ヘッドの全体構造〕
次に、ヘッドの全体構造について説明する。色別の各ヘッド112K,112C,112M,112Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号150によってヘッドを示すものとする。
【0074】
図7はヘッド150の平面透視図である。記録紙116上に形成されるドットのピッチを高密度化するためには、ヘッド150におけるノズルのピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド150は、図7に示すように、インクの噴射口であるノズル151と、各ノズル151に対応するインク室152等からなる複数のインク室ユニット(ミスト噴射素子)153を2次元マトリクス状に配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。なお、図7では、作図便宜上、一部のインク室ユニット153は省略して描いてある。
【0075】
各インク室152は個別供給路154を介して共通流路155に連通している。共通流路155は、接続口155A,155Bを介してインク供給源たるインクタンク(図7中不図示、図5で説明したインク貯蔵/装填部114と等価なもの)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは、図7の共通流路155を介して各チャンネルのインク室152に分配供給される。なお、図7中の符号155Cは共通流路155の本流、155Dは本流155Cから分岐された支流である。
【0076】
図7に示したヘッド150の構成と、図1乃至図3で説明した構成との対応関係を簡単に説明すると、図7におけるノズル151、インク室152及び個別供給路154が図1乃至図3で説明したノズル51、インク室52及びインク供給口53にそれぞれ相当している。また、図7において符号155Dで示した共通流路の支流が図1で説明した共通流路55に相当している。
【0077】
図7における各インク室ユニット153の詳細な構造については、図1乃至図3で説明したとおりである。
【0078】
図8は、図7に示したヘッド150の一部を拡大して示す拡大図である。図8に示されるように、多数のインク室ユニット153は、主走査方向と主走査方向に対して所定の角度θをなす斜め方向との2方向に沿って格子状に配列されている。すなわち多数のノズル151は2次元マトリクス状に配列されている。このような2次元マトリクス状の配列により、ノズル密度の実質的な高密度化が実現されている。
【0079】
具体的には、主走査方向に対して一定の角度θをなす斜め方向に沿ってインク室ユニット153が一定のピッチdで複数配列されていることにより、各ノズル151が主走査方向に沿った一直線上にピッチP(=d×cosθ)で配列されたものと等価的に取り扱うことができる。これにより、主走査方向に沿って1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル配列と実質的に同等の構成を実現することが可能になる。
【0080】
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図7及び図8に示した例に限定されない。記録紙116の送り方向と略直交する方向に記録紙116の全幅に対応する長さにわたるノズル列を備えるフルライン型ヘッドの形態として、図7に例示した構成に代えて、例えば、図9に示すように、複数のノズル151が2次元に配列された短尺のヘッドブロック150’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙116の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
【0081】
〔制御系の説明〕
図10は、画像形成装置110のシステム構成例を示すブロック図である。図10に示すように、画像形成装置110は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、画像メモリ174、ROM175、モータドライバ176、ヒータドライバ178、プリント制御部180、画像バッファメモリ182、ヘッドドライバ184等を備えている。
【0082】
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信する画像入力手段である。通信インターフェース170にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、無線ネットワークなどの有線又は無線のインターフェースを適用することができる。
【0083】
ホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース170を介して画像形成装置110に取り込まれ、一旦画像メモリ174に記憶される。
【0084】
システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従って画像形成装置110の全体を制御する。すなわち、システムコントローラ172は、通信インターフェース170、画像メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178等の各部を制御し、ホストコンピュータ186との間の通信制御、画像メモリ174及びROM175の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ188やヒータ189を制御する制御信号を生成する。搬送系のモータ188とは、例えば、図5で説明した搬送用ローラ対131、133の駆動ローラに動力を与えるモータである。また、ヒータ189とは、例えば、図5で説明した加熱ドラム130、加熱ファン140或いは後乾燥部142などに用いられる加熱手段である。
【0085】
ROM175には、システムコントローラ172のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。ROM175は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。画像メモリ174は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0086】
モータドライバ176は、システムコントローラ172からの指示に従って搬送系のモータ188を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ178は、システムコントローラ172からの指示に従ってヒータ189を駆動するドライバである。
【0087】
プリント制御部180は、入力画像に基づいて各色インクのドットデータを生成する信号処理手段として機能する。すなわち、プリント制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、画像メモリ174内の画像データからインク噴射制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行い、生成したデータ(ドットデータ)をヘッドドライバ184に供給する制御部である。
【0088】
プリント制御部180には画像バッファメモリ182が備えられており、プリント制御部180における画像処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ182に一時的に格納される。なお、図10において画像バッファメモリ182はプリント制御部180に付随する態様で示されているが、画像メモリ174と兼用することも可能である。また、プリント制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0089】
画像入力から画像形成までの処理の流れを概説すると、形成すべき画像のデータは、通信インターフェース170を介して外部から入力され、画像メモリ174に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの画像データが画像メモリ174に記憶される。
【0090】
画像形成装置110では、インク(色材) による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、画像メモリ174に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ172を介してプリント制御部180に送られ、該プリント制御部180においてディザ法や誤差拡散法などを用いたハーフトーン化処理によってインク色ごとのドットデータに変換される。
【0091】
すなわち、プリント制御部180は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部180で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ182に蓄えられる。
【0092】
ヘッドドライバ184は、プリント制御部180から与えられるドットデータ(すなわち、画像バッファメモリ182に記憶されたドットデータ)に基づき、ヘッド150の各ノズル151に対応する電磁石56を駆動するための駆動信号を出力する。つまり、ヘッドドライバ184が本発明における「駆動部」に相当する。なお、ヘッドドライバ184にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0093】
ヘッドドライバ184から出力された駆動信号がヘッド150に加えられることによって、該当するノズル151からインクミストが噴射される。記録紙116の搬送速度に同期してヘッド150からのインク噴射を制御することにより、記録紙116上に画像が形成される。
【0094】
また、リフレクタ80の形状は図示したものに限定されず、適宜、形状を改良してもよい。
【0095】
その他、本発明は、実施形態において説明した例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の設計変更や改良を行ってもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明に係る一実施形態のミスト吐出ヘッドの基本構成を示す断面図である。
【図2】図1のミスト吐出ヘッドの要部を示す平面透視図である。
【図3】図2のミスト吐出ヘッドの要部を示す斜視透視図である。
【図4】本発明のミスト吐出ヘッドにおけるエネルギー効率の向上の説明に用いる説明図である。
【図5】本発明に係るミスト吐出ヘッドを適用した画像形成装置の例を示す全体構成図である。
【図6】図5に示した画像形成装置の印字部周辺の要部平面図である。
【図7】ミスト吐出ヘッドの一例の全体構造を示す平面透視図である。
【図8】図7の一部を拡大して示す拡大図である。
【図9】ミスト吐出ヘッドの他の例の全体構造を示す平面透視図である。
【図10】画像形成装置のシステム構成例を示す要部ブロック図である。
【図11】従来のミスト吐出ヘッドの要部を示す断面図である。
【図12】従来のミスト吐出ヘッドの集束倍率における直接波の影響の説明に用いる説明図である。
【符号の説明】
【0097】
51…ノズル(噴射口)、52…液室、53…インク供給口、55…共通流路、56…液室の側壁、58…超音波発生素子、58a…圧電体、58b、58c…電極、80…リフレクタ、80a…リフレクタの放物面、184…ヘッドドライバ(駆動部)、510…ノズルプレート、F…焦点
【技術分野】
【0001】
本発明はミスト吐出ヘッド及び画像形成装置に係り、特にミストを吐出するミスト吐出ヘッド及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
群(クラスタ)の微液滴、すなわちミストを吐出するミスト吐出ヘッドが知られている(例えば特許文献1、2、3、4を参照)。
【0003】
ミストの吐出は、簡単に言うと、超音波により液体の表面張力を減少させて液体を霧化することにより行う。具体的には、一般に、キャビテーション(空洞現象)によるキャビテーション霧化、あるいは、キャピラリ波(毛細表面波)によるキャピラリ霧化が用いられる。後者を用いた方が、粒径の揃ったミストを生成でき、かつエネルギー効率も良い。自由液面に向って平面波を印加することでキャピラリ波が発生するが、平面波がある一定以上の周波数及び振幅である場合、キャピラリ波は発振を起こす。この結果、成長したキャピラリ波の波頭からミストが分裂する。
【0004】
また、図11にも示すように、超音波発生素子958によって発生して液室952内の液体に導入された超音波を、リフレクタ980の放物面980pによって反射し、ノズル51の近傍に位置する焦点Fに集束させることにより、エネルギー効率を上げるようにしたものが知られている(特許文献3、4)。
【特許文献1】特開昭62−86948号公報
【特許文献2】特開昭62−111757号公報
【特許文献3】特開平10−278253号公報
【特許文献4】特開2002−166541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図11に示すような従来のミスト吐出ヘッド950においては、リフレクタ980の放物面980pで反射された超音波(反射波)に対して、放物面980pで反射されなかった超音波(直進波)が影響を及ぼし、エネルギー効率が下がるという問題がある。また、高密度化に伴ってリフレクタ980のサイズが小さくなるほど、直進波が反射波に及ぼす影響が無視できなくなり、ノズル51のメニスカス(液面)に印加される超音波のコヒーレント性が損なわれてしまい、粒径がばらつくなど、吐出性能が劣化するという問題もある。
【0006】
図11を用いて詳細に説明すると、超音波発生素子958から液室952内の液体に導入された超音波は、平面波として液室952内を進み、リフレクタ980の放物面980pで反射されると、反射された超音波(反射波)は、ノズル51の近傍に位置する焦点Fに集束する。一方で、リフレクタ980の放物面980pで反射されなかった超音波(直進波)は、直進して、ノズル51のメニスカスに到達する。これらの反射波及び直進波の同一位相である波面間には、ギャップg(空間ギャップと称する)が生じ、このような空間ギャップgは液室952内を超音波が進むにしたがって大きくなる。
【0007】
ところで、放物面980p上の任意の点Qは、焦点Fとの距離QFが準線Dとの距離QDと等しい。このような放物線の性質より、反射面980pで反射された反射波が焦点Fに到達した時には、反射波及び直進波の同一位相である波面間の距離は、焦点Fと準線Dとの間の距離に等しくなることがわかる。したがって、焦点F及び準線Dの間隔を超音波の波長の整数倍になるようなピンポイントの設計をしない限り、コヒーレント性を損なうとともに、エネルギー効率を下げてしまうことになる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、直接波の影響を排除して、エネルギー効率を向上させることができるミスト吐出ヘッド及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、霧状の液体を吐出するノズルと、前記ノズルに連通する液室と、前記液室の側壁に配置され、超音波を発生して前記液室内の液体に与える超音波発生素子と、前記液室の中央方向に向かう前記超音波発生素子からの超音波を反射して前記液室内の前記ノズルの近傍に位置する焦点に集束させる反射面を有するリフレクタを備えたことを特徴とするミスト吐出ヘッドを提供する。
【0010】
この発明によれば、液室内の液体に対してその液室の側壁に配置された超音波発生素子から超音波が与えられて、リフレクタの反射面によってノズルの近傍の焦点に超音波が集束されるので、焦点に達する超音波は概ね反射波となり、焦点に集束した反射波に対する直接波の影響は排除され、エネルギー効率が向上することになる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記リフレクタの前記反射面の断面形状は、前記焦点を共焦点とする2本の放物線からなることを特徴とするミスト吐出ヘッドを提供する。
【0012】
このように、リフレクタの反射面の断面形状が共焦点を有する2本の放物線によって構成された形状であれば、共焦点に反射波が効率よく集束されることになる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記液室は、前記焦点を通る軸線を有する円筒形状であり、前記リフレクタは、前記液室の軸線と直交する中心軸を有する放物線を前記液室の軸線を中心に回転させて成る前記反射面を有する凸形状であることを特徴とするミスト吐出ヘッドを提供する。
【0014】
このように、液室を円筒形状とし、リフレクタを液室の軸線を中心に回転させて成る回転体形状とし、かつ、液室の軸線と直交する中心軸を有する放物線を液室の軸線を中心に回転させて成る反射面を有する凸形状としたことにより、直接波を確実に排除し、かつ、反射波の集束効率が極めて高い構造のミスト吐出ヘッドを、容易に製造できることとなる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載のミスト吐出ヘッドを備え、前記ノズルから吐出した霧状の液体によって所定の記録媒体に画像を形成することを特徴とする画像形成装置を提供する。
【0016】
この発明によれば、高品質の画像がエネルギー効率良く形成されることになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、直接波の影響を排除して、エネルギー効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を用いて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0019】
[ミスト吐出ヘッドの基本構成]
図1は、本発明に係る一実施形態のミスト吐出ヘッドの基本構成を示す断面図である。
【0020】
図1において、ミスト吐出ヘッド50は、霧状のインクを吐出する開口部としてのノズル51と、ノズル51に連通する液室52と、液室52にインクが供給される開口部としてのインク供給口53と、インク供給口53を介して液室52に供給されるインクが流動する共通流路55と、液室52の側壁56に配置され、超音波を発生して、液室52内のインクに超音波を与える超音波発生素子58と、超音波発生素子58からの超音波を反射して、液室52内のノズル51の近傍に位置する焦点Fに集束させるリフレクタ80を含んで構成されている。
【0021】
超音波発生素子58は、ピエゾなどの圧電体58aと、駆動信号が与えられる電極58b、58cとによって構成されている。
【0022】
また、ミスト吐出ヘッド50は、リフレクタ80が形成されているリフレクタプレート530と、液室52及び超音波発生素子58が形成されている液室プレート520と、ノズル51が形成されているノズルプレート510とが積層された、積層構造になっている。
【0023】
液室52の側壁56に配置された超音波発生素子58によって発生された超音波は、液室52の側壁56を振動板として、この液室52の側壁56を介して液室52内の液体に導入され、液室52の中央方向に向かって平行に進む。すなわち、焦点Fを通る液室52の軸線に向っていくように、この液室52の軸線に対して直交する方向で面状に進んでいく。
【0024】
このようにして液室52の軸線に向って進んだ超音波は、リフレクタ80の放物面80pによって反射される。放物面80pの焦点Fは、液室52内のノズル51の近傍に位置しているので、リフレクタ80の放物面80aによって反射された超音波(反射波)は、液室52内を焦点Fに向かって進み、焦点Fに集束される。
【0025】
ノズル51から霧状の液体が吐出される方向(図1中に矢印で示す)は、概ね焦点Fを通る液室52の軸線方向である。
【0026】
リフレクタ80の反射面としての放物面80pの断面形状、具体的には焦点Fを通り吐出方向に平行な面で切断したときの一断面形状は、ひとつの焦点Fを共焦点とする2本の放物線からなる。
【0027】
このような構造により、焦点Fに反射波を効率よく集束させることができる。すなわち、超音波発生素子58によって発生されて、液室52の側壁56を介して液室52内の液体に導入され、液室52の軸線に対して向っていくようにして面状に進んだ超音波は、リフレクタ80の放物面80pに鈍角で反射することにより、エネルギー損失が少なく反射されて、しかも、焦点Fに効率よく集束することになる。
【0028】
また、リフレクタ80の頂点80t(すなわち放物面80pの最上端部)は、液室52の側壁56に配置されている超音波発生素子58の最上端部と同じ(又はそれ以上)の高さとしてある。
【0029】
このような構造により、超音波発生素子58によって発生されて、液室52の側壁56を介して液室52内の液体に導入され、液室52の軸線に対して向っていくように面状に進んだ超音波は、直接波となることはなく、焦点Fに到達する超音波は概ね反射波となるので、減衰や干渉などの悪影響が低減され、エネルギー効率が向上する。
【0030】
なお、好ましい構造について、すなわちエネルギー効率が最大になる構造について、理解を容易にするために、図1に示す基本構成のミスト吐出ヘッド50の平面透視図を図2に示し、要部を模式的に示す斜視透視図を図3に示す。なお、図2中の1−1線に沿った断面は図1に示されている通りである。
【0031】
図2及び図3において、液室52は、焦点Fを通る軸線を有する円筒形状である。また、リフレクタ80は、凸形状である。このような凸形状のリフレクタ80の放物面80pは、液室52の焦点Fを通る軸線と焦点Fにて直交する中心軸を有する放物線を、液室52の軸線を中心に回転させて成る。
【0032】
ノズル51が形成されているノズルプレート510と液室52が形成されている液室プレート520とは、水平断面を示す図2において、液室52の外側で支柱851を介して接合されており、液室52の内側には接合部がない。このような構造であるから、ノズルプレート510とリフレクタとの接合部の角に気泡がたまり易かった従来のミスト吐出ヘッドと比較して、ノズル51の周囲に気泡がたまり難く、気泡排除性が良いことになり、吐出の安定性が良い。
【0033】
なお、図1〜図3では、1つのノズル51に対応した1つの液室ユニット(1単位のミスト吐出素子)が示されているが、紙等の記録媒体に対して相対的に移動して記録媒体上に画像を形成させるためのミスト吐出ヘッドの場合、複数の液室ユニットが1次元(列状)又は2次元(面状)に配列された構造となる。このようなミスト吐出ヘッドにおいて、実際には、ノズルプレート510には複数のノズル51が形成されており、液室プレート520には複数の液室52が形成されており、これらの液室52に対応して超音波発生素子58及びリフレクタ80が設けられる。
[従来のミスト吐出ヘッドとの比較]
図12は、従来のミスト吐出ヘッド950における超音波の集束倍率の説明のため、その従来のミスト吐出ヘッド950を簡略化して示す説明図である。
【0034】
図12におけるh、f、l、g、s、wは、それぞれ数式1、2、3、4、5、6で表される。
【0035】
(数式1)
h=aD/2
(数式2)
f=D/8a
(数式3)
l=(a/2D)×(D2−d2)
(数式4)
g=h−(f+l)
(数式5)
s=h−f
(数式6)
w=(D−v)/2
なお、aは、放物線の曲率である。Dは、放物面980pの開口断面積が最大となる開口部の直径である。dは、放物面980pの開口断面積が最小となる部分の直径である。図12におけるvは、数式4で表されるgについて、g=0として解いて得られ、数式7で表される。
【0036】
(数式7)
v=D/2a
また、gを設けた場合(g>0)、超音波の集束に寄与する面積Sと超音波の集束倍率mは、数式8で表される。
【0037】
(数式8)
S=π(D2−d2)/4、m=(D2−d2)/λ2
ここで、λは超音波の波長である。
【0038】
g=0(すなわちd=v)である場合、超音波の集束に寄与する面積Sと超音波の集束倍率mは、数式7、8より、数式9で表される。
【0039】
(数式9)
S=π(D2−v2)/4=πD2(4a2−1)/16a2、m=(D2−v2)/λ2
以上、従来のミスト吐出ヘッド950における超音波の集束倍率について説明した。
【0040】
図4は、本発明に係る一実施形態のミスト吐出ヘッド50による超音波の集束倍率の説明のために、そのミスト吐出ヘッド50を簡略化して示す説明図である。
【0041】
図4のミスト吐出ヘッド50において、超音波の集束に寄与するリフレクタ80の面積S´は、数式10で表される。
【0042】
(数式10)
S´=πP´w´
ここで、P´およびw´は、図4に示されている距離である。すなわち、P´は、円筒形状の液室52の内部の直径である。w´は、図12のwに相当し、図4では放物面80pを液室52の側壁56に投影した幅、すなわち放物面80pの高さである。
【0043】
P´及びw´は、それぞれ数式11、12で表される。
【0044】
(数式11)
P´=2s´
ここで、s´は、図12のsに相当し、図4では液室52の側壁56から焦点Fまでの距離である。
【0045】
(数式12)
w´=(D´−v´)/2=(D´/2)×(1−1/2a´)
ここで、D´は、図12のDに相当し、図4では放物線が液室52の側壁56を含む垂線で切断されたその放物線の垂直方向の切断点間の距離である。v´は、図12のvに相当し、図4では放物線が焦点Fを通る垂線で切断されたその放物線の垂直方向の切断点間の距離である。a´は放物線の曲率である。
【0046】
これらの数式10、11、12より、本実施形態のミスト吐出ヘッド50において、リフレクタ80の集束に寄与する面積S´は、数式13で表される。
【0047】
(数式13)
S´=πD´2(1+2a´)(1―2a´)2/16a´2
従来のミスト吐出ヘッド950と本実施形態のミスト吐出ヘッド50とにおける、超音波の集束に寄与する面積の比S´/Sは、a=a´、D=D´とした場合、数式9および数式13より、数式14で表される。
【0048】
(数式14)
S´/S=2a−1
すなわち、超音波の集束倍率は、従来と比較して、(2a−1)倍となる。
【0049】
例えば、数式14において、a=1.5とした場合、S´/S=2となる。すなわち、超音波の集束倍率は、従来と比較して、2倍になる。
【0050】
また、例えば、P´=Dとした場合、数式15が成立する。
【0051】
(数式15)
P´=D=2s´
この数式15をD´について解くと、数式16が得られる。
【0052】
(数式16)
D´=4aD/(4a´2−1)
この数式16と数式12とにより、数式17が得られる。
【0053】
(数式17)
S´=πDw´=πD2/(2a´+1)
この数式17において、a´=aとすると、数式18が得られる。
【0054】
(数式18)
S´/S=16a2/(2a−1)(2a´+1)2
この数式18において、a=1.5とした場合、S´/S=1.125となる。すなわち、超音波の集束倍率は、従来と比較して、1.125倍になる。
【0055】
〔画像形成装置の全体構成〕
本実施形態のミスト吐出ヘッド50を適用した画像形成装置の例について説明する。
【0056】
図5は、本発明に係る一実施形態の画像形成装置の全体構成図である。図5に示す画像形成装置110は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のミスト吐出ヘッド(以下、「ヘッド」という)112K,112C,112M,112Yを有する印字部112と、各ヘッド112K,112C,112M,112Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部114と、記録媒体たる記録紙116を供給する給紙部118と、記録紙116のカールを除去するデカール処理部120と、印字部112のノズル面(インク噴射面)に対向して配置され、記録紙116の平面性を保持しながら記録紙116を搬送するベルト搬送部122と、印字部112による印字結果を読み取る印字検出部124と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部126とを備えている。
【0057】
インク貯蔵/装填部114は、各ヘッド112K,112C,112M,112Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各タンクは所要の管路を介してヘッド112K,112C,112M,112Yと連通されている。
【0058】
図5では、給紙部118の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
【0059】
給紙部118から送り出される記録紙116はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部120においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム130で記録紙116に熱を与える。
【0060】
ロール紙を使用する装置構成の場合、図5のように、裁断用のカッター(第1のカッター)128が設けられており、該カッター128によってロール紙は所望のサイズにカットされる。なお、カット紙を使用する場合には、カッター128は不要である。
【0061】
デカール処理後、カットされた記録紙116は、搬送用ローラ対131によってニップ搬送され、プラテン132上へと送られる。プラテン132の後段(印字部112の下流側)にも搬送用ローラ対133が配置されており、前段の搬送用ローラ対131と後段の搬送用ローラ対133とが連動して記録紙116を所定の速度で搬送する。
【0062】
プラテン132は記録紙116の平面性を保ちつつ記録紙116を保持(支持)する部材(記録媒体の保持手段)として機能するとともに、背面電極として機能する部材である。図5におけるプラテン132は記録紙116の幅よりも広い幅寸法を有し、少なくとも印字部112のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0063】
記録紙116の搬送経路において、印字部112の上流側には、加熱ファン140が設けられている。加熱ファン140は、印字前の記録紙116に加熱空気を吹き付け、記録紙116を加熱する。印字直前に記録紙116を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
【0064】
印字部112の各ヘッド112K,112C,112M,112Yは、当該画像形成装置110が対象とする記録紙116の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録紙の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク噴射用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図6参照)。
【0065】
ヘッド112K,112C,112M,112Yは、記録紙116の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド112K,112C,112M,112Yが記録紙116の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
【0066】
ベルト搬送部122により記録紙116を搬送しつつ各ヘッド112K,112C,112M,112Yからそれぞれ異色のインクを噴射することにより記録紙116上にカラー画像を形成し得る。
【0067】
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド112K,112C,112M,112Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録紙116と印字部112を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙116の全面に画像を記録することができる。これにより、記録ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
【0068】
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを噴射するヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0069】
図5に示した印字検出部124は、印字部112の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ又はエリアセンサ)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりや着弾位置ずれなどの噴射不良をチェックする手段として機能する。各色のヘッド112K,112C,112M,112Yにより印字されたテストパターン又は実技画像が印字検出部124により読み取られ、印字結果が検査される。
【0070】
印字検出部124の後段には後乾燥部142が設けられている。後乾燥部142は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。
【0071】
後乾燥部142の後段には、加熱・加圧部144が設けられている。加熱・加圧部144は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ145で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
【0072】
こうして生成されたプリント物は排紙部126から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。この画像形成装置110では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部126A、126Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)148によってテスト印字の部分を切り離す。また、図5には示さないが、本画像の排出部126Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
【0073】
〔ヘッドの全体構造〕
次に、ヘッドの全体構造について説明する。色別の各ヘッド112K,112C,112M,112Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号150によってヘッドを示すものとする。
【0074】
図7はヘッド150の平面透視図である。記録紙116上に形成されるドットのピッチを高密度化するためには、ヘッド150におけるノズルのピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド150は、図7に示すように、インクの噴射口であるノズル151と、各ノズル151に対応するインク室152等からなる複数のインク室ユニット(ミスト噴射素子)153を2次元マトリクス状に配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。なお、図7では、作図便宜上、一部のインク室ユニット153は省略して描いてある。
【0075】
各インク室152は個別供給路154を介して共通流路155に連通している。共通流路155は、接続口155A,155Bを介してインク供給源たるインクタンク(図7中不図示、図5で説明したインク貯蔵/装填部114と等価なもの)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは、図7の共通流路155を介して各チャンネルのインク室152に分配供給される。なお、図7中の符号155Cは共通流路155の本流、155Dは本流155Cから分岐された支流である。
【0076】
図7に示したヘッド150の構成と、図1乃至図3で説明した構成との対応関係を簡単に説明すると、図7におけるノズル151、インク室152及び個別供給路154が図1乃至図3で説明したノズル51、インク室52及びインク供給口53にそれぞれ相当している。また、図7において符号155Dで示した共通流路の支流が図1で説明した共通流路55に相当している。
【0077】
図7における各インク室ユニット153の詳細な構造については、図1乃至図3で説明したとおりである。
【0078】
図8は、図7に示したヘッド150の一部を拡大して示す拡大図である。図8に示されるように、多数のインク室ユニット153は、主走査方向と主走査方向に対して所定の角度θをなす斜め方向との2方向に沿って格子状に配列されている。すなわち多数のノズル151は2次元マトリクス状に配列されている。このような2次元マトリクス状の配列により、ノズル密度の実質的な高密度化が実現されている。
【0079】
具体的には、主走査方向に対して一定の角度θをなす斜め方向に沿ってインク室ユニット153が一定のピッチdで複数配列されていることにより、各ノズル151が主走査方向に沿った一直線上にピッチP(=d×cosθ)で配列されたものと等価的に取り扱うことができる。これにより、主走査方向に沿って1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル配列と実質的に同等の構成を実現することが可能になる。
【0080】
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図7及び図8に示した例に限定されない。記録紙116の送り方向と略直交する方向に記録紙116の全幅に対応する長さにわたるノズル列を備えるフルライン型ヘッドの形態として、図7に例示した構成に代えて、例えば、図9に示すように、複数のノズル151が2次元に配列された短尺のヘッドブロック150’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙116の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
【0081】
〔制御系の説明〕
図10は、画像形成装置110のシステム構成例を示すブロック図である。図10に示すように、画像形成装置110は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、画像メモリ174、ROM175、モータドライバ176、ヒータドライバ178、プリント制御部180、画像バッファメモリ182、ヘッドドライバ184等を備えている。
【0082】
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信する画像入力手段である。通信インターフェース170にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、無線ネットワークなどの有線又は無線のインターフェースを適用することができる。
【0083】
ホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース170を介して画像形成装置110に取り込まれ、一旦画像メモリ174に記憶される。
【0084】
システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従って画像形成装置110の全体を制御する。すなわち、システムコントローラ172は、通信インターフェース170、画像メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178等の各部を制御し、ホストコンピュータ186との間の通信制御、画像メモリ174及びROM175の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ188やヒータ189を制御する制御信号を生成する。搬送系のモータ188とは、例えば、図5で説明した搬送用ローラ対131、133の駆動ローラに動力を与えるモータである。また、ヒータ189とは、例えば、図5で説明した加熱ドラム130、加熱ファン140或いは後乾燥部142などに用いられる加熱手段である。
【0085】
ROM175には、システムコントローラ172のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。ROM175は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。画像メモリ174は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0086】
モータドライバ176は、システムコントローラ172からの指示に従って搬送系のモータ188を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ178は、システムコントローラ172からの指示に従ってヒータ189を駆動するドライバである。
【0087】
プリント制御部180は、入力画像に基づいて各色インクのドットデータを生成する信号処理手段として機能する。すなわち、プリント制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、画像メモリ174内の画像データからインク噴射制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行い、生成したデータ(ドットデータ)をヘッドドライバ184に供給する制御部である。
【0088】
プリント制御部180には画像バッファメモリ182が備えられており、プリント制御部180における画像処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ182に一時的に格納される。なお、図10において画像バッファメモリ182はプリント制御部180に付随する態様で示されているが、画像メモリ174と兼用することも可能である。また、プリント制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0089】
画像入力から画像形成までの処理の流れを概説すると、形成すべき画像のデータは、通信インターフェース170を介して外部から入力され、画像メモリ174に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの画像データが画像メモリ174に記憶される。
【0090】
画像形成装置110では、インク(色材) による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、画像メモリ174に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ172を介してプリント制御部180に送られ、該プリント制御部180においてディザ法や誤差拡散法などを用いたハーフトーン化処理によってインク色ごとのドットデータに変換される。
【0091】
すなわち、プリント制御部180は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部180で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ182に蓄えられる。
【0092】
ヘッドドライバ184は、プリント制御部180から与えられるドットデータ(すなわち、画像バッファメモリ182に記憶されたドットデータ)に基づき、ヘッド150の各ノズル151に対応する電磁石56を駆動するための駆動信号を出力する。つまり、ヘッドドライバ184が本発明における「駆動部」に相当する。なお、ヘッドドライバ184にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0093】
ヘッドドライバ184から出力された駆動信号がヘッド150に加えられることによって、該当するノズル151からインクミストが噴射される。記録紙116の搬送速度に同期してヘッド150からのインク噴射を制御することにより、記録紙116上に画像が形成される。
【0094】
また、リフレクタ80の形状は図示したものに限定されず、適宜、形状を改良してもよい。
【0095】
その他、本発明は、実施形態において説明した例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の設計変更や改良を行ってもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明に係る一実施形態のミスト吐出ヘッドの基本構成を示す断面図である。
【図2】図1のミスト吐出ヘッドの要部を示す平面透視図である。
【図3】図2のミスト吐出ヘッドの要部を示す斜視透視図である。
【図4】本発明のミスト吐出ヘッドにおけるエネルギー効率の向上の説明に用いる説明図である。
【図5】本発明に係るミスト吐出ヘッドを適用した画像形成装置の例を示す全体構成図である。
【図6】図5に示した画像形成装置の印字部周辺の要部平面図である。
【図7】ミスト吐出ヘッドの一例の全体構造を示す平面透視図である。
【図8】図7の一部を拡大して示す拡大図である。
【図9】ミスト吐出ヘッドの他の例の全体構造を示す平面透視図である。
【図10】画像形成装置のシステム構成例を示す要部ブロック図である。
【図11】従来のミスト吐出ヘッドの要部を示す断面図である。
【図12】従来のミスト吐出ヘッドの集束倍率における直接波の影響の説明に用いる説明図である。
【符号の説明】
【0097】
51…ノズル(噴射口)、52…液室、53…インク供給口、55…共通流路、56…液室の側壁、58…超音波発生素子、58a…圧電体、58b、58c…電極、80…リフレクタ、80a…リフレクタの放物面、184…ヘッドドライバ(駆動部)、510…ノズルプレート、F…焦点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
霧状の液体を吐出するノズルと、
前記ノズルに連通する液室と、
前記液室の側壁に配置され、超音波を発生して前記液室内の液体に与える超音波発生素子と、
前記液室の中央方向に向かう前記超音波発生素子からの超音波を反射して前記液室内の前記ノズルの近傍に位置する焦点に集束させる反射面を有するリフレクタと、
を備えたことを特徴とするミスト吐出ヘッド。
【請求項2】
前記リフレクタの前記反射面の断面形状は、前記焦点を共焦点とする2本の放物線からなることを特徴とする請求項1に記載のミスト吐出ヘッド。
【請求項3】
前記液室は、前記焦点を通る軸線を有する円筒形状であり、
前記リフレクタは、前記液室の軸線と直交する中心軸を有する放物線を前記液室の軸線を中心に回転させて成る前記反射面を有する凸形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載のミスト吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のミスト吐出ヘッドを備え、前記ノズルから吐出した霧状の液体によって所定の記録媒体に画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
霧状の液体を吐出するノズルと、
前記ノズルに連通する液室と、
前記液室の側壁に配置され、超音波を発生して前記液室内の液体に与える超音波発生素子と、
前記液室の中央方向に向かう前記超音波発生素子からの超音波を反射して前記液室内の前記ノズルの近傍に位置する焦点に集束させる反射面を有するリフレクタと、
を備えたことを特徴とするミスト吐出ヘッド。
【請求項2】
前記リフレクタの前記反射面の断面形状は、前記焦点を共焦点とする2本の放物線からなることを特徴とする請求項1に記載のミスト吐出ヘッド。
【請求項3】
前記液室は、前記焦点を通る軸線を有する円筒形状であり、
前記リフレクタは、前記液室の軸線と直交する中心軸を有する放物線を前記液室の軸線を中心に回転させて成る前記反射面を有する凸形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載のミスト吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のミスト吐出ヘッドを備え、前記ノズルから吐出した霧状の液体によって所定の記録媒体に画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−50584(P2007−50584A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236555(P2005−236555)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
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