説明

ミネラル強化用組成物

【課題】 近年、ミネラル摂取量の不足が指摘され、その原因により引き起こされるとされる成人病の予防や健康維持等に関して、いろいろな種類のミネラルの役割が重要視され始めている。本発明は飲食品中に有機酸が存在していても、金属塩由来の不快な味の鉄味の発生が抑制されるミネラル強化用組成物及びそれを含有するミネラル強化飲食品を提供することを目的とする。
【解決手段】 有機酸を含有する飲食品に用いることを特徴とする、水不溶性多価金属塩と乳化剤を混合することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、有機酸を含有する飲食品に添加することを特徴とする、ミネラル強化用組成物及び、その組成物によりミネラルが強化された有機酸含有飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミネラル摂取量の不足が指摘され、その原因により引き起こされるとされる成人病の予防や健康維持等に関して、いろいろな種類のミネラルの役割が重要視され始めている。
【0003】
例えば、鉄は血中の蛋白質であるヘモグロビンに結合した状態で存在する事が知られており、鉄不足の状態になると組織中の貯蔵鉄から補われる。貯蔵鉄が不足した状態は潜在性貧血症と呼ばれ、日本人の約60%以上が患っていると言われている。この傾向は、女子高生や若い成人女性において特に顕著であり、その結果鉄欠乏性貧血を起こす女性が多数見られる。
【0004】
鉄だけでなくカルシウム、マグネシウム、亜鉛、銅等は健康維持に関して重要な役割を果たすミネラルであり、日頃の食生活の中で摂取することが望ましいが、現代人の食生活では十分に摂取できないのが現状である。このような現状を改善するためにあらゆる形態の飲食品又は飼料にミネラルを配合したミネラル強化飲食品又は飼料がこれまでも研究されてきた。
【0005】
しかし、果汁飲料やスポーツ飲料のような飲食品には、果汁由来のものや、又は酸味料として有機酸を含有するものがある。そして、これらの有機酸を含有する飲食品に水不溶性金属塩を配合しても有機酸により金属塩が溶解してイオン化を起こし、金属特有の不快な風味が発生する。そのことからこれまで有機酸を含有する飲食品にミネラル塩を添加できる量に制限があった。この金属特有の風味を改善する技術として、鉄(II)−糖(スクレート、フルクテート)−カルボキシレート複合体を形成させる方法(例えば、特許文献1参照。)が挙げられるが、金属由来の風味をマスキングするには充分ではなかった。
【0006】
【特許文献1】特開平2−72843号公報(第1−6頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、飲食品中に有機酸が存在していても、金属塩特有の不快な味の発生が抑制されるミネラル強化用組成物及びそれを含有するミネラル強化飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、有機酸が存在する飲食品に、ミネラル強化の目的として、乳化剤を含有する水不溶性多価金属塩を配合することにより、有機酸が存在していても、有機酸の影響により発生する不快な金属味を抑制されることを見出し、本願発明を完成させた。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、飲食品中に有機酸が存在していても、金属塩由来の不快な味の鉄味の発生が抑制されるミネラル強化用組成物及びそれを含有するミネラル強化飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に使用されるミネラル強化用組成物は、水不溶性多価金属塩と乳化剤の混合物を含有することを1つの大きな特徴とする。また本発明のミネラル強化用組成物においては、水不溶性多価金属塩は乳化剤によって被覆されており、そのため飲食品中に有機酸が存在していても、有機酸により発生する不快な金属味が抑制することができる。
【0011】
本願発明に用いられる水不溶性多価金属塩とは、特に限定されるものではなく、例えば、バリウム塩、アルミニウム塩、鉄塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、銅塩等が挙げられる。これらの中でも、生体における必要性等の観点から、好ましくは鉄塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩、亜鉛塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくは鉄塩及び亜鉛塩である。
【0012】
本願発明に用いられる水不溶性多価金属塩の不溶性とは、特に限定されるものではないが、味、消化管粘膜刺激性等の観点から、日本の第七版食品添加物公定書通則29の試験法において「極めて溶けにくい」(溶質1gを溶かすに要する水の量が1,000ml以上10,000ml未満)又は、「ほとんど溶けない」(溶質1gを溶かすに要する水の量が10,000ml以上)に該当するものをいい、好ましくは、「ほとんど溶けない」に該当するものである。
【0013】
水不溶性多価金属塩の具体例としては、例えば、塩化銀、ピロリン酸銀、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、炭酸バリウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化第一鉄、リン酸第一鉄、リン酸第二鉄、ピロリン酸第一鉄、ピロリン酸第二鉄、炭酸第一鉄、ピロリン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、塩化第一銅、水酸化マンガン、硫酸マンガン、水酸化ニッケル、リン酸ニッケル、硫酸鉛、酸化亜鉛、リン酸鉛、水酸化亜鉛、ピロリン酸亜鉛等が挙げられる。それらのミネラル塩類のなかでは、例えば、ピロリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄、リン酸マグネシウム、酸化亜鉛が好ましく、ピロリン酸第二鉄、リン酸カルシウム、酸化亜鉛、リン酸マグネシウムがより好ましく、ピロリン酸第二鉄、酸化亜鉛がさらに好ましい。
【0014】
本願発明における乳化剤は、水不溶性多価金属塩の表面を強く被覆することができるものであれば特に限定するものではなく、一般的な食品用乳化剤、例えばポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、有機酸脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン等が挙げられる。それらの中でも、リゾレシチン、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0015】
本願発明におけるリゾレシチンとは、レシチンをホスホリパーゼによって加水分解することで得られるものであれば、特に限定されるものではない。その原料となる、レシチンについては、大豆等の植物由来レシチン又は卵黄等の動物由来レシチンのいずれでも使用できる。ホスホリパーゼについては、豚膵臓等の動物起源、キャベツ等の植物起源、カビ類等の微生物起源等の由来を問わず、ホスホリパーゼA及び/又はD活性を有するものであればいずれでも使用でき、好ましくは、ジアシルグリセロリン脂質の1位又は2位の脂肪酸エステル結合を加水分解する酵素であるホスホリパーゼAが良く、更に好ましくは、ジアシルグリセロリン脂質の2位を加水分解するホスホリパーゼAが良い。
【0016】
本願発明で用いられる、ポリグリセリン脂肪酸エステルとは、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステルをいい、これを構成するポリグリセリンの平均重合度や脂肪酸の種類、エステル化率については、特に限定されるものではないが、水不溶性多価金属塩により強く被覆させるためには、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度は、3以上が好ましく、3〜11が更に好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数は、6〜22が好ましく、8〜18が更に好ましく、12〜14が最も好ましい。
【0017】
本願発明で用いられる、ショ糖脂肪酸エステルとは、ショ糖と脂肪酸とのエステルをいい、これを構成する脂肪酸の種類ついては、特に限定されるものではないが、水不溶性多価金属塩により強く被覆させるためには、炭素数が8〜20であることが好ましく、10〜16がより好ましく、12〜14が最も好ましい。
【0018】
本願発明で用いられる乳化剤のHLBは、特に限定されるものではないが、乳化剤を水不溶性多価金属塩により強く被覆させるためには、好ましくはHLB6〜20であり、より好ましくは8〜18であり、更に好ましくは10〜16である。HLBの値は、例えば本発明において使用する各種乳化剤の使用量の比を調節することにより調整することができる。
【0019】
本願発明のミネラル強化用組成物は例えば、水不溶性多価金属塩と乳化剤を混合、攪拌することにより得ることができる。混合の方法としては、水不溶性多価金属塩分散液に乳化剤を溶解する方法、乳化剤の水溶液に水不溶性多価金属塩を分散させる方法等が用いられる。また、水に水不溶性多価金属塩分散液及び乳化剤を同時に添加し、混合してもよい。攪拌は例えばホモミキサー等を使用して行うことができる。強い攪拌を行うことにより、より強く乳化被覆された水不溶性多価金属塩を得ることができる。
【0020】
上記のように、水不溶性多価金属塩と乳化剤の混合、攪拌は水溶液中で行うことができる。乳化剤に水不溶性多価金属塩の被覆を安定して行うという観点から、水不溶性多価金属塩と乳化剤との混合、攪拌時に使用する水の量としては、水不溶性多価金属塩100重量部に対して水100重量部以上であることが好ましく、300重量部以上であることがより好ましい。使用する水の量の上限としては特に限定はされず、例えば混合、攪拌に使用される容器の大きさ等に応じて、使用可能な水の量を使用すればよい。また、ここで使用される水の種類としては特に限定されるものではないが、例えばイオン交換水などを使用することができる。
【0021】
水不溶性多価金属塩と乳化剤を混合する際の混合比率としては、乳化剤に水不溶性多価金属塩の被覆を安定して行うという観点から、水不溶性多価金属塩100質量部あたり1重量部以上であることが好ましく、5重量部以上であることがより好ましい。また上限としては、水不溶性多価金属塩100質量部に対して2000重量部以下であることが好ましく、1000重量部以下であることがより好ましい。かかる範囲内であれば、本ミネラル強化用組成物を含有させた食品も、乳化剤由来の独特の味により該食品本来の風味が損なわれることがないため、好ましい。
【0022】
また、水不溶性多価金属塩と乳化剤を攪拌する際の攪拌時間は特に限定されるものではなく、攪拌に使用するミキサーの種類等に応じて、水不溶性多価金属塩が乳化剤により被覆された状態となるように適宜設定されればよい。なお、水不溶性多価金属塩が乳化剤に被覆されたかどうかの確認は、例えば以下のようにして行うことができる。混合、攪拌後の水不溶性多価金属塩と乳化剤を含有する水溶液を、例えばCellulose Acetate(0.1μm;ADVANTEC製)等のフィルターを使用してフィルター濾過することに水不溶性多価金属塩を取り除く。残りの水溶液中に存在する乳化剤の量を測定し、用いた乳化剤の全量と比較する。以上により、水不溶性多価金属塩の被覆に使用された乳化剤の量を確認でき、水不溶性多価金属塩が乳化剤に被覆されたかどうかを間接的に確認することができる。また、電子顕微鏡等を使用して、水不溶性多価金属塩が乳化剤に被覆されているかどうかを直接的に確認してもよい。
【0023】
本願発明に用いられる有機酸としては特に制限はないが、例えば炭素数6以下のモノカルボン酸、ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、カルボン酸無水物が使用できる。有機酸は1種類のみを使用することもでき、複数の種類を組み合わせて使用することもできる。具体例としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸及びグルタル酸等が挙げられ、本願発明においてより金属塩由来の不快な味が軽減されるものとして、好ましくはクエン酸、リンゴ酸、乳酸、酢酸、より好ましくはクエン酸、乳酸である。
【0024】
本願発明におけるミネラル強化飲食品は、有機酸を多く含有していても、有機酸の影響による金属特有の不快な味の発生が抑制されることを特徴とする。従って、本願発明におけるミネラル強化飲食品中における有機酸の含有量は特に限定されるものではないが、特に、有機酸が高含有されている飲食品において本発明の効果が顕著である。ここで高含有とは、水不溶性多価金属塩100重量部に対して、有機酸100重量部以上であり、より好ましくは300重量部以上であり、さらに好ましくは500重量以上含有している状態をいう。
【0025】
また、本願発明における、ミネラルが強化された有機酸を含有する飲食品の形態としては、特に限定するものではなく、例えば、飲料類、乳製品、調味料、畜肉加工食品、水産加工食品、タブレット形状食品、経口経腸栄養食等が挙げられる。
【0026】
本願発明の有機酸を含有する飲食品への乳化剤被膜した不溶性多価金属塩の配合量については、特に制限はなく、金属塩の種類、添加する飲食品の形態、ならびにヒト性別及び年齢等に応じて適宜決定すればよい。
【実施例】
【0027】
実施例1
ピロリン酸第二鉄90g、リゾレシチン(サンソフトA−1:太陽化学(株)製 リゾレシチン含量33%、HLB18.0)13.5gをイオン交換水796.5gに混合し、ホモミキサーにて充分に攪拌、分散し、10%ピロリン酸第二鉄組成物懸濁液(生成物I)900gを得た。
【0028】
実施例2
ピロリン酸第二鉄90g、ポリグリセリン脂肪酸エステル(サンソフトA−14E:太陽化学(株)製、HLB13.0)27g、リゾレシチン(サンソフトA−1:太陽化学(株)製 リゾレシチン含量33%、HLB18.0)13.5gをイオン交換水769.5gに混合し、ホモミキサーにて充分に攪拌、分散し、10%ピロリン酸第二鉄組成物懸濁液(生成物II)900gを得た。
【0029】
実施例3
ピロリン酸第二鉄90g、ショ糖脂肪酸エステル(サンソフトSE−16:太陽化学(株)製、HLB16.0)54g、リゾレシチン(サンソフトA−1:太陽化学(株)製 リゾレシチン含量33%、HLB18.0)13.5gをイオン交換水742.5gに混合し、ホモミキサーにて充分に攪拌、分散し、10%ピロリン酸第二鉄組成物懸濁液(生成物III)900gを得た。
【0030】
比較例1
ピロリン酸第二鉄90gをイオン交換水810gに混合し、ホモミキサーにて充分に攪拌、分散し、10%ピロリン酸第二鉄組成物懸濁液(対照品IV)900gを得た。
【0031】
比較例2
塩化第二鉄90gをイオン交換水810gに混合し、ホモミキサーにて充分に攪拌、溶解し、10%塩化第二鉄組成物懸濁液(対照品V)900gを得た。
【0032】
比較例3
硫酸第一鉄90gをイオン交換水810gに混合し、ホモミキサーにて充分に攪拌、溶解し、10%硫酸第一鉄組成物懸濁液(対照品VI)900gを得た。
【0033】
試験例1
実施例1〜3で得られた生成物I〜IIIをそれぞれ最終の鉄含量を2mg/100gになるように添加して、さらに有機酸として最終0.06%になるように添加して鉄強化飲料I〜IIIを調製した。同様に比較例1〜3で得られた対照品IV〜VIをそれぞれ最終の鉄含量を2mg/100gになるように添加して、さらに有機酸として最終0.06%になるように添加して鉄強化飲料IV〜VIを調製した。10人のパネラーにより官能試験を実施した。評価方法は以下の通りである。
【0034】
鉄味がしない。 0
鉄味がほとんどしない。 1
鉄味がややする。 2
鉄味がする。 3
鉄味が強くする。 4
【0035】
評価点の平均値を下記の表1に記す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1に示すように、有機酸を含有する飲料に、水不溶性鉄塩と乳化剤を混合してなる鉄強化用組成物を添加することにより、鉄特有の不快な味の発生が抑制することができることが確認された。これに対して、予め乳化剤と混合させていない鉄塩を添加すると不快な味を生じる結果となった。
【0038】
次に、水可溶性多価金属塩と乳化剤を混合したミネラル組成物を調製した。
【0039】
比較例4
塩化第二鉄90g、リゾレシチン(サンソフトA−1:太陽化学(株)製 リゾレシチン含量33%、HLB18.0)13.5gをイオン交換水796.5gに混合し、ホモミキサーにて充分に攪拌、分散し、10%塩化第二鉄強化用組成物懸濁液(対照品VII)900gを得た。
【0040】
比較例5
硫酸第一鉄90g、リゾレシチン(サンソフトA−1:太陽化学(株)製 リゾレシチン含量33%、HLB18.0)13.5gをイオン交換水796.5gに混合し、ホモミキサーにて充分に攪拌、分散し、10%硫酸第一鉄強化用組成物懸濁液(対照品VIII)900gを得た。
【0041】
試験例2
比較例4,5で得られた対照品VII、VIIIをそれぞれ最終の鉄含量を2mg/100gになるように添加して、さらに有機酸としてクエン酸を最終0.06%になるように添加して鉄強化飲料VII、VIIIを調製し、官能検査を行った。結果を表2に記す
【0042】
【表2】

【0043】
結果を表2に示すように、水可溶性鉄塩に乳化剤を添加しても、鉄特有の風味を抑制することはできなかった。
【0044】
実施例4
酸化亜鉛90g、リゾレシチン(サンソフトA−1:太陽化学(株)製 リゾレシチン含量33%)0.6g、ポリグリセリン脂肪酸エステル(サンソフトA−14E:太陽化学(株)製)0.6gをイオン交換水798.8gに混合し、ホモミキサーにて充分に攪拌、分散し、10%酸化亜鉛組成物懸濁液(生成物IX)900gを得た。
【0045】
比較例6
酸化亜鉛90gをイオン交換水810gに混合し、ホモミキサーにて充分に攪拌、分散し、10%酸化亜鉛組成物懸濁液(対照品X)900gを得た。
【0046】
比較例7
硫酸亜鉛90gを、ポリグリセリン脂肪酸エステル(サンソフトA−14E:太陽化学(株)製、HLB13.0)27g、リゾレシチン(サンソフトA−1:太陽化学(株)製 リゾレシチン含量33%、HLB18.0)13.5gをイオン交換水769.5gに混合し、ホモミキサーにて充分に攪拌し、10%硫酸亜鉛組成物懸濁液(対照品XI)900gを得た。
【0047】
試験例3
実施例4で得られた生成物IX、比較例6,7で得られた対照品X、XIをそれぞれ最終の鉄含量を2mg/100gになるように添加して、さらに有機酸としてクエン酸を最終0.06%になるように添加して鉄強化飲料IX、X、XIを調製し、官能検査を行った。結果を表3に記す
【0048】
亜鉛味がしない。 0
亜鉛味がほとんどしない。 1
亜鉛味がややする。 2
亜鉛味がする。 3
亜鉛味が強くする。 4
【0049】
【表3】

【0050】
表3に示すように、鉄と同様に有機酸を含有する飲料に、水不溶性亜鉛塩と乳化剤を混合してなる亜鉛強化用組成物を添加することにより、亜鉛特有の不快な味の発生が抑制することができることが確認された。
【0051】
実施例5
実施例2で得られた10%ピロリン酸第二鉄組成物懸濁液(生成物II)を、スプレードライヤーで粉末化を行い、70%ピロリン酸第二鉄組成物粉末(生成物XII)を得た。
【0052】
実施例6
実施例4で得られた10%酸化亜鉛組成物懸濁液(生成物IX)を、スプレードライヤーで粉末化を行い、70%酸化亜鉛組成物粉末(生成物XIII)を得た。
【0053】
実施例7
果汁飲料(有機酸量0.1重量%含有) 1Lに実施例1で得られた乳化剤被覆された水不溶性鉄組成物を含む懸濁液(鉄として約3.0重量%含有)1.0gを添加し、加熱殺菌し、鉄強化果汁飲料を得た(鉄量3.0mg/100ml、有機酸量100mg/100ml)。
【0054】
実施例8
果汁飲料(有機酸量0.1重量%含有) 1Lに実施例4で得られた乳化剤被覆された水不溶性亜鉛組成物を含む懸濁液(亜鉛として約8.0重量%含有)0.5gを添加し、加熱殺菌し、亜鉛強化果汁飲料を得た(亜鉛量4.0mg/100ml、有機酸量200mg/100ml)。
【0055】
実施例9
清涼飲料(有機酸量0.05重量%含有) 1Lに実施例1で得られた乳化剤被覆された水不溶性鉄組成物を含む懸濁液(鉄として約3.0重量%含有)1.0gを添加し、加熱殺菌し、鉄強化清涼飲料を得た(鉄量3.0mg/100ml、有機酸量50mg/100ml)。
【0056】
実施例10
清涼飲料(有機酸量0.05重量%含有)1Lに実施例4で得られた乳化剤被覆された水不溶性亜鉛組成物を含む懸濁液(亜鉛として約8.0重量%含有)0.5gを添加し、加熱殺菌し、亜鉛強化清涼飲料を得た(亜鉛量4.0mg/100ml、有機酸量50mg/100ml)。
【0057】
実施例11
果汁ゼリードリンク(有機酸量0.1重量%含有)1Lに実施例1で得られた乳化剤被覆された水不溶性鉄組成物を含む懸濁液(鉄として約3.0重量%含有)1.0gを添加して鉄強化果汁ゼリードリンクを得た(鉄量3.0mg/100ml、有機酸量100mg/100ml)。
【0058】
実施例12
果汁ゼリードリンク(有機酸量0.1重量%含有)1Lに実施例4で得られた乳化剤被覆された水不溶性亜鉛組成物を含む懸濁液(亜鉛として約8.0重量%含有)0.5gを添加して亜鉛強化果汁ゼリードリンクを得た(亜鉛量4.0mg/100ml、有機酸量100mg/100ml)。
【0059】
実施例13
タブレット(有機酸量2重量%含有)10gに実施例5で得られた乳化剤被覆された水不溶性鉄組成物を含む粉末(鉄として約21.0重量%含有)0.14gを添加して鉄強化タブレットを得た(鉄量3.0mg/1g、有機酸量20mg/1g)。
【0060】
実施例14
タブレット(有機酸量2重量%含有)10gに実施例6で得られた乳化剤被覆された水不溶性亜鉛組成物を含む粉末(亜鉛として約54.0重量%含有)0.07gを添加して亜鉛強化タブレットを得た(亜鉛量4.0mg/1g、有機酸量20mg/1g)。
【産業上の利用可能性】
【0061】
これまで有機酸を含有した飲食品に水不溶性多価金属塩を添加しても、有機酸の影響により金属特有の風味が発生する問題があったが、ミネラル強化用組成物として、本願発明で得られた乳化剤被膜した水不溶性多価金属塩を配合することにより、有機酸が存在していても金属塩特有の風味の発生が抑制されるので、飲食品に対するミネラル強化用組成物として有用であり、その産業上の利用価値は大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸を含有する飲食品に用いることを特徴とする、水不溶性多価金属塩と乳化剤を混合してなるミネラル強化用組成物
【請求項2】
水不溶性多価金属塩が乳化剤により被覆されていることを特徴とする、請求項1記載のミネラル強化用組成物
【請求項3】
乳化剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、およびリゾレシチンからなる群より選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1および2いずれかに記載のミネラル強化用組成物
【請求項4】
水不溶性多価金属塩が、鉄塩及び亜鉛塩から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のミネラル強化用組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載のミネラル強化用組成物を含有し、金属味の発生が抑制されていることを特徴とする、有機酸を含有する飲食品。

【公開番号】特開2006−340612(P2006−340612A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−166661(P2005−166661)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】