説明

ミョウバン吸着ワクチンの安定粉末製剤

本発明は、ミョウバン吸着ワクチンの安定粉末製剤を調製するための方法を目的とする。本方法は、アルミニウムアジュバント上に吸着された免疫原を含む液体製剤を霧化して、霧化製剤を生成するステップと、霧化製剤を凍結して凍結粒子を生成するステップと、凍結粒子を乾燥させて乾燥粉末粒子を生成するステップとを含む。ミョウバン吸着ワクチンの安定粉末製剤を含む医薬組成物も、本明細書で開示される。本医薬組成物は高温で安定であり、薬学上許容される担体中で再調製して、粒子凝集をほとんど、または全く示さず、免疫原性を保持する再調製された液体ワクチンを生成することができる。特定の免疫原と関連している対象疾患を予防および治療するために、ミョウバン吸着ワクチン組成物を用いる方法が、さらに提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦後援の研究または開発
本発明は、米国の医療研究資材本部(Medical Research and Material Command)によって与えられた契約番号DAMD17−03−2−0037の下で、政府の支援を受けてなされたものである。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、ミョウバン吸着ワクチンの安定粉末製剤を調製する方法、乾燥したワクチン粒子の安定粉末製剤を含む医薬組成物、ならびに疾患の予防および治療にこれらの組成物を用いる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
B型肝炎は、感染血液および体液への曝露によって伝染する、重大なウイルス性肝臓感染症である。概算で1200万人のアメリカ人、および世界中で20億人の人々がB型肝炎に感染している。B型肝炎に感染するほとんどの健康成人は回復して防御抗体を形成するが、かなり多数の患者、特に幼児および小児は、生命にかかわる肝硬変、肝不全または肝癌をもたらすことのできる慢性B型肝炎感染症を起こす。毎年、世界中で約100万人が、B型肝炎感染症から死に至る。(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
B型肝炎ウイルスは、内部コアおよび外側のエンベロープを含むDNAウイルスである。ワクチンのエンベロープ外側は、「B型肝炎表面抗原」または「HBsAg」と呼ばれるタンパク質を含む。コア内部は、ウイルスDNAおよびウイルスの複製で用いられるDNAポリメラーゼ酵素を含む。コア内部の抗原性因子は、当技術分野でしばしば「HBcAg」と呼ばれる。Engerix−B(GlaxoSmithKline社)およびRecombivax HB(Merck & Co.社)を含むB型肝炎のための市販ワクチンが利用可能であるが、これらの液体製剤は冷凍条件下で最適に保存および輸送され、極限条件(例えば、高温、凍結融解サイクル、長期保存など)に耐えるように設計されていない。したがって、そのような極限条件下での保存および輸送に適する、安定粉末製剤としてのB型肝炎ワクチンの開発が有益であろう。
【0005】
B型肝炎などのより「伝統的な」疾患のための安定粉末ワクチン製剤の有利な特性の認識に加えて、最近の世界情勢では、バイオテロリスト剤としての生物合成物の使用と戦うために、予防的または治療的に使用できる類似したワクチン製剤の開発に対するかなり大きな関心を引き起こした。ボツリヌス神経毒(BoNT)は、ヒトに最も毒性の強いタンパク質の1つであり、したがって、テロリストによって使用される可能性のある生物兵器を代表する。ボツリヌス中毒は、BoNTが運動ニューロンのシナプシスに結合して、神経伝達物質アセチルコリンの放出を阻止する、潜在的に致命的な神経障害である。その結果、BoNTへの曝露は視朦、嚥下障害、一般の呼吸麻痺および筋骨格麻痺、ならびに、毒素への曝露から数日以内に呼吸不全または心不全に起因する死をもたらすことができる。細菌ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)の7つの異なる血清型が公知であり、各株は、BoNT/A、B、C、D、E、FおよびGと命名されたBoNTの異なる形態を形成する。最も広く研究されているBoNTであるBoNT/Aは、約150kDaの一本鎖タンパク質として、特定のボツリヌス菌(C.botulinum)株で合成される。この一本鎖タンパク質は、切断されて、ジスルフィド結合によって連結される100kDaの重鎖(HC)および50kDaの軽鎖(LC)を生成する。(例えば、非特許文献2および3を参照)。
【0006】
炭疽菌(Bacillus anthracis)は、肺型(すなわち、吸入性)、皮膚型および胃腸型の炭疽病原体である。エアゾール化炭疽胞子の作製の可能性は、炭疽菌(B.anthracis)を最適なバイオテロリスト剤にした。この細菌のエアゾール化または兵器化形態から生じる吸入性炭疽は、曝露直後および症状の出現前に処置されないならば、ほぼ100%の死亡率を有する。吸入性炭疽罹患患者は、初期には一般に高熱および胸痛を訴え、それは、速やかに全身出血病状および心停止もしくは呼吸停止に進行する。約90株の炭疽菌が公知であり、それらは、良性株から、生物兵器として用いることができそうな非常に強病原性の株まで様々である。病原性の強い炭疽菌株は、それ自身無毒性であるが疾患の侵襲性段階を媒介するポリ−D−グルタミル莢膜、および多成分毒素を含む。炭疽毒素は、それぞれ約80kDaの3つの異なる抗原成分を有し、浮腫因子(「EF」または「第I因子」)、防御抗原(「PA」または「第II因子」)および致死因子(「LF」または「第III因子」)と呼ばれている。防御抗原は炭疽毒素の結合ドメインを含んでいるが、そのように名づけられたのは、ある哺乳動物に投与されたときに、それは防御性の抗毒素抗体を誘導するからである。以前の研究では、炭疽毒素が示す致死作用を生成するのに、致死因子が必要であることが証明された。実験動物では、致死因子および防御抗原のみの組合せが致死性であることがわかっている。炭素菌および炭素の総論については、参考文献を参照(例えば、非特許文献4、5および6を参照)。炭疽菌によるバイオテロリスト攻撃の重大な脅威にもかかわらず、米国では現在ただ1つの炭疽ワクチンだけが用いられ、防御免疫を引き出すために複数の用量を数カ月にわたって投与しなければならない。
【0007】
ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)は、細菌黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)によって生成される約28kDaのエンテロトキシンであり、従来から、非冷凍の肉および乳製品から生じる食中毒と関連している。SEBに起因する食中毒の古典的な徴候は、一般に自己限定的で24時間以内に解消する胃腸症状の突然の開始である。現在の国際的な政治情勢の中で非常に懸念されているのは、SEBが潜在的なバイオテロリスト剤であるという事実である。SEBは安定で、容易にエアゾール化され、全身性の傷害、多臓器不全、敗血性ショック、および、非常に高いレベルで吸入された場合には死さえ引き起こすことができる。SEBの吸入の症状には、高熱、息切れ、激しい胸痛、および、重度の場合には、肺水腫および成人呼吸窮迫症候群(ARDS)が含まれるが、それらに限定されない。したがって、SEB、特にエアゾール化SEBは、重大なバイオテロリスト脅威となる。
【0008】
グラム陰性細菌ペスト菌(Yersinia pestis)は、ペストを引き起こす。ペスト菌(Y.pestis)は、細菌細胞に食作用阻止特性を与える分画1莢膜抗原(すなわち、「F1」)、および、宿主の生得的な免疫応答を抑制するV抗原を含む。F1−Vと呼ばれる前記2つの抗原を含む融合タンパク質が生成されている。(例えば、非特許文献7を参照)。
【0009】
ヒトでは、ペストの3つの臨床型、すなわち、腺ペスト、敗血症性ペストおよび肺ペストが存在する。肺ペストは、ペスト菌感染症の最も重大な形態であり、細菌が肺に感染して肺炎を引き起こすときに起こる。一次肺ペストは、ペスト菌細菌の直接吸入から、例えば感染した人から未感染個体への空気伝染により、またはエアゾール化細菌の意図的な放出(例えば、バイオテロリスト攻撃)により生じる。(例えば、非特許文献8を参照)。肺ペストは約1〜6日の潜伏期間を有し、例えば、激しい頭痛、悪寒、倦怠感の急激な開始、および呼吸数および心拍数の増加を特徴とする。(同書)。これらの症状は速やかに肺炎に進行し、未処置のまま放置すると、究極的に呼吸不全および死に至ることがある。(例えば、非特許文献9を参照)。適時に(すなわち、疾患の開始から約20時間以内に)投与される場合は、適当な抗生物質は死亡率を低下させるが、特に多数の個体を曝露させることができ、抗生物質の国家備蓄を速やかに消耗させることができるバイオテロリスト事件の場合には、肺ペストに起因する致死率は高いままである。
【0010】
CDCおよび国家安全保障省(Homeland Security)は、ペスト菌を潜在的バイオテロリスト兵器、すなわち、特に危険な脅威をもたらす兵器の当然の選択としての候補とみなしたが、それは次の理由による。1)あらゆる大陸でのその自然発生、2)野生動物および家畜化された動物の保有体、ならびに人工装置からのその伝播の容易さ、3)抗生物質の入手が容易なこの時代における医師の油断と合わさったのかもしれないが、その臨床所見についての現在の経験の不足、4)細菌を量産する能力、5)遺伝子改変された抗生物質耐性株を生成してエアゾール化することができることによる容易さ、ならびに6)一次肺ペストが汚染されたエアゾール液滴の吸入を通して人から人へ広がることができるという事実。(例えば、非特許文献10〜16を参照)。
【0011】
バイオテロリスト剤としてのBoNT、炭疽菌の毒性株、SEBまたはペスト菌(例えば、F1−V)の潜在的な使用は、BoNT、炭疽、SEBおよび/またはペスト菌に対する安定粉末ワクチンの開発を有利にし、そのようなワクチンが医療関係者または非医療関係者によって、最低限の侵襲性の方法を含む様々な技術によって投与され得る場合は特に有利である。安定化されたBoNT、炭疽、SEBおよびペスト菌ワクチン製剤は、バイオテロリスト攻撃の事件または脅威の発生時に、最初の対応者、軍人、および、おそらく一般大衆に対してさえも、予防的免疫感作を可能にするために容易に再調製すること(reconstituted)ができよう。複数のバイオテロリスト剤に対して防御免疫を提供する安定した多価ワクチンが、特に有利である。
【0012】
B型肝炎ワクチンおよび炭疽ワクチンなどのワクチンは、免疫原に対する対象の免疫応答を高めるために、一般に少なくとも1つのアジュバントを含有する。ワクチンの免疫原性を高めるために、アジュバントとしてアルミニウム塩が多用される。しかし、ミョウバン吸着ワクチンの保存のために液状の生物学的生成物を安定させるための従来の手法の適用は、問題を含んでいる。詳細には、従来の凍結乾燥、凍結およびフリーズ・ドライ工程を適用した場合、ミョウバン吸着ワクチンは一般に凝集、免疫原濃度の低下および免疫原性の喪失を示す。(例えば、その全てが参照により本明細書に組み込まれている、非特許文献17〜20を参照)。安定性および免疫原性を喪失させずに再調製することができる、ミョウバン吸着ワクチンの安定粉末製剤を生成するために従来の方法を使用することは、ほとんど不成功であった。したがって、凝集、免疫原性の喪失および免疫原濃度の低下の問題に対処するミョウバン吸着ワクチンの安定粉末剤形を含んでいる医薬組成物。生じた安定粉末ワクチンは、粒子凝集または免疫原性または免疫原濃度の減少をほとんどまたは全く示さない有効な液体ワクチンを生成するために、希釈剤中で容易に再調製可能でなければならない。そのような方法は、ミョウバン吸着ワクチンの長期保存を容易にし、これらのワクチンの保存寿命を延長させ、冷蔵保存および輸送が利用できない地域でのそれらの使用を可能にし、様々な技術(例えば、医療関係者を必要としない潜在的に最低限の侵襲性の投与方法)による対象へのワクチン投与を可能にし、かつ、特にバイオテロリスト剤に関しては、ワクチンの備蓄を容易にするであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0180755号明細書
【特許文献2】米国特許第4608764号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】B型肝炎財団のウェブサイトhepb. org/index.html.
【非特許文献2】Li and Singh (2000) Biochem. 39:6466-6474
【非特許文献3】Swaminathan and Eswaramoorthy (2000) Nature Structural Biol. 7:693-699
【非特許文献4】Bravata et al. (2006) Annals Intern. Med. 144(4):270-280
【非特許文献5】Todor's Online Textbook of Bacteriology: Bacillus anthracis and anthrax at textbookofbacteriology.net/Anthrax.html (University of Wisconsin-Madison Department of Microbiology)
【非特許文献6】Brock Biology of Microorganisms (M. Madigan and J. Martinko, eds.; Prentis Hall, 2005)
【非特許文献7】Santi et al. (2006) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103:861-866
【非特許文献8】Kool (2005) Healthcare Epidemiology 40:1166-1172
【非特許文献9】Josko (2004) Clin. Lab. Sci. 17:25-29
【非特許文献10】Finegold et al. (1968) Am. J. Path. 53:99-114
【非特許文献11】Walker (1968) Curr. Top. Micro. Immun. 41:23-42
【非特許文献12】Walker (1968) J. Infect. Dis. 118:188-96
【非特許文献13】Beebe and Pirsch (1958) Appl. Microbiol. 6:127-138
【非特許文献14】Williams et al. (1994) J. Wildlife Dis. 30:581-585
【非特許文献15】Watson et al. (2001) Veter. Path. 38:165-172
【非特許文献16】Green et al. (1999) Med. Micro. 23:107-113
【非特許文献17】Maa et al. (2003) J. Pharm. Sci. 92:319-332
【非特許文献18】Diminsky et al. (1999) Vaccine 18:3-17
【非特許文献19】Alving et al. (1993) Ann. NY Acad. Sci. 690:265-275
【非特許文献20】Warren et al. (1986) Ann. Rev. Immunol. 4:369-388
【非特許文献21】Jiang et al. (2006) J. Pharm. Sci. 95:80-96
【非特許文献22】Virology 3rd Edition (W. K. Joklik cd. 1988)
【非特許文献23】Fundamental Virology, 2nd Edition (B. N. Fields and D. M. Knipe, eds. 1991)
【非特許文献24】J. M. Stewart and J. D. Young, Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd Ed. [Pierce Chemical Co., Rockford, III., (1984)]
【非特許文献25】G. Barany and R. B. Merrifield, The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology, Vol. 2 [E. Gross and J. Meienhofer, eds., Academic Press, New York (1980)]
【非特許文献26】M. Bodansky, Principles of Peptide Synthesis, (Springer-Verlag Berlin (1984))
【非特許文献27】The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology, Vol. 1 E. Gross and J. Meienhofer, eds.
【非特許文献28】Hood et al., Immunology, Second Ed., 1984, Benjamin/Cummings: Menlo Park, California
【非特許文献29】Remington 's Pharmaceutical Sciences (18th ed.; Mack Publishing Company, Eaton, Pennsylvania, 1990)
【非特許文献30】Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (1989)
【非特許文献31】Current Protocols in Molecular Biology, Volumes I-III (Ausubel, R. M., ed. (1994))
【非特許文献32】Cell Biology: A Laboratory Handbook, Volumes I-III (J. E. Celis, ed. (1994))
【非特許文献33】Current Protocols in Immunology, Volumes I-III (Coligan, J. E., ed. (1994))
【非特許文献34】Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait ed. 1984)
【非特許文献35】Nucleic Acid Hybridization (B.D. Hames & S.J. Higgins eds. (1985))
【非特許文献36】Transcription And Translation (B.D. Hames & S.J. Higgins, eds. (1984))
【非特許文献37】Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed. (1986))
【非特許文献38】Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, (1986))
【非特許文献39】B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984)
【非特許文献40】Little et al. (1990) Infect. Immunol. 58(6):1606-1613
【非特許文献41】Hering et al. (2004) Biologicals 32(l):17-27
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、ミョウバン吸着ワクチンの安定粉末製剤を調製するための方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本方法は、アルミニウムアジュバント上に吸着された免疫原を含む液体製剤を霧化して霧化製剤を生成するステップと、霧化製剤を凍結させて凍結粒子を生成するステップと、凍結粒子を乾燥させて乾燥粉末粒子を生成するステップとを含む。凍結粒子の乾燥ステップは、特に振動、内部構造物(internals)および/または機械的攪拌の存在下では、およそ大気圧で実施することができる。
【0017】
本発明の医薬組成物には、最適ではない条件(例えば、高温、凍結融解など)に置かれた場合でも安定している、粒子状、粉末状のワクチンが含まれる。本明細書で開示される粉末ワクチン製剤を希釈剤で再調製して、粒子凝集をほとんどまたは全く示さず、免疫原濃度の重大な低下を示さず、免疫原性および/または抗原性のかなり高いレベルを保持し、対象とする疾患または障害に対する防御効能を維持することのできる、再調製液体ワクチンを生成することができる。さらに、本発明の粉末ワクチン製剤および再調製ワクチン製剤は、様々な方法、特に最低限の侵襲性の投与技術を用い、医療関係者または非医療関係者による、投与に適し得る。ミョウバン吸着ワクチンの安定粉末製剤を含んでいる医薬組成物(またはその再調製された液体形態)、ならびに、個々の疾患、障害およびその症状を予防および治療するためにこれらの組成物を用いる方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】様々な液体のおよび噴霧フリーズ・ドライ処理した(SFD)Shanvac−B B型肝炎ワクチン製剤で0日目に得られた沈降速度曲線を示す図である。以下の製剤のデータを示す。製剤1(液体Shanvac−Bワクチン);対照2(液体Shanvac−Bワクチン+デキストラン/トレハロース);製剤2(SFD Shanvac−Bワクチン+デキストラン/トレハロース);対照3(液体Shanvac−Bワクチン+マンニトール/トレハロース);および製剤3(SFD Shanvac−Bワクチン+マンニトール/トレハロース)。実験の詳細は、実施例2で提供する。
【図1B】4℃で28日間ワクチンを保存した後の沈降速度を示す図である。以下の製剤のデータを示す。製剤1(液体Shanvac−Bワクチン);製剤2(SFD Shanvac−Bワクチン+デキストラン/トレハロース);および製剤3(SFD Shanvac−Bワクチン+マンニトール/トレハロース)。実験の詳細は、実施例2で提供する。
【図2A】55℃で0、7、14および28日間保存した液体Shanvac−B B型肝炎ワクチンで得られた沈降速度曲線を示す図である。実験の詳細は、実施例2で提供する。
【図2B】55℃で0、7、14および28日間保存したSFD Shanvac−Bワクチン+マンニトール/トレハロースの沈降速度を示す。対照試料(すなわち、液体Shanvac−Bワクチン+マンニトール/トレハロース)で得られた沈降データも、比較目的のために図2Bに示されている。実験の詳細は、実施例2で提供する。
【図3A】凍結融解サイクルならびに55℃で0および14日間の保存の後の液体Shanvac−B B型肝炎ワクチンで得られた沈降速度曲線を示す図である。実験の詳細は、実施例2で提供する。
【図3B】凍結融解サイクルならびに55℃で0および14日間の保存の後のSFD Shanvac−Bワクチン+マンニトール/トレハロースの沈降速度を示す図である。実験の詳細は、実施例2で提供する。
【図4A】指定された液体またはSFDワクチン製剤で免疫感作されたマウスからの血清中の、免疫感作から28日目の平均抗HBsAg抗体濃度(μg/ml)を示す図である。マウスは、0日目および28日目に免疫感作した。以下の製剤のデータを示す。液体Shanvac−Bワクチン;液体Shanvac−Bワクチン+デキストラン/トレハロース;液体Shanvac−Bワクチン+マンニトール/トレハロース;SFD Shanvac−Bワクチン+デキストラン/トレハロース;SFD Shanvac−Bワクチン+マンニトール/トレハロース;およびEngerix−B(対照B型肝炎ワクチン;Merck & Co.社製)。実験の詳細は、実施例2で提供する。
【図4B】指定された液体またはSFDワクチン製剤で免疫感作されたマウスからの血清中の、免疫感作から42日目の平均抗HBsAg抗体濃度(μg/ml)を示す図である。マウスは、0日目および28日目に免疫感作した。以下の製剤のデータを示す。液体Shanvac−Bワクチン;液体Shanvac−Bワクチン+デキストラン/トレハロース;液体Shanvac−Bワクチン+マンニトール/トレハロース;SFD Shanvac−Bワクチン+デキストラン/トレハロース;SFD Shanvac−Bワクチン+マンニトール/トレハロース;およびEngerix−B(対照B型肝炎ワクチン;Merck & Co.社製)。実験の詳細は、実施例2で提供する。
【図5A】4℃で0および28日間保存した後の、液体のShanvac−B B型肝炎ワクチン製剤で得られた沈降速度曲線を示す図である。実験の詳細は、実施例3で提供する。
【図5B】4℃で0および28日間保存した後の、大気圧噴霧フリーズ・ドライ処理した(ASFD)Shanvac−B B型肝炎ワクチン製剤で得られた沈降速度曲線を示す図である。実験の詳細は、実施例3で提供する。
【図6A】55℃で0、7、14および28日間保存した後の、液体のShanvac−B B型肝炎ワクチン製剤で得られた沈降速度曲線を示す図である。実験の詳細は、実施例3で提供する。
【図6B】55℃で0、7、14および28日間保存した後の、ASFDのShanvac−B B型肝炎ワクチン製剤で得られた沈降速度曲線を示す図である。実験の詳細は、実施例3で提供する。
【図7】凍結融解サイクルおよび55℃で14日間の保存の後の、液体およびASFDのShanvac−Bワクチン製剤で得られた沈降速度曲線を示す図である。実験の詳細は、実施例3で提供する。
【図8】指定された液体またはASFDのワクチン製剤で免疫感作されたマウスからの血清中の、免疫感作から28日目および42日目の平均抗HBsAg抗体濃度(μg/ml)を示す図である。マウスは、0日目および28日目に免疫感作した。以下の製剤のデータを提示する。液体Shanvac−Bワクチン;液体Shanvac−Bワクチン+マンニトール/トレハロース;ASFDのShanvac−Bワクチン+マンニトール/トレハロース;およびSFDのShanvac−Bワクチン+マンニトール/トレハロース。実験の詳細は、実施例3で提供する。
【図9A−1】1.0μgまたは0.1μgの液体のまたは再調製されたSFDの粉末ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)ワクチンによる免疫感作の後の、平均血清抗体力価を示す図である。図に示すように、ワクチン製剤は、0および28日目に、筋肉内(IM)投与によって投与した。14日目について、平均血清抗体力価を示す。さらなる実験の詳細は、実施例4で示す。
【図9A−2】1.0μgまたは0.1μgの液体のまたは再調製されたSFDの粉末ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)ワクチンによる免疫感作の後の、平均血清抗体力価を示す図である。図に示すように、ワクチン製剤は、0および28日目に、皮内(ID)投与によって投与した。14日目について、平均血清抗体力価を示す。さらなる実験の詳細は、実施例4で示す。
【図9A−3】1.0μgまたは0.1μgの液体のまたは再調製されたSFDの粉末ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)ワクチンによる免疫感作の後の、平均血清抗体力価を示す図である。図に示すように、ワクチン製剤は、0および28日目に、鼻腔内(IN)投与によって投与した。14日目について、平均血清抗体力価を示す。さらなる実験の詳細は、実施例4で示す。
【図9B−1】1.0μgまたは0.1μgの液体のまたは再調製されたSFDの粉末ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)ワクチンによる免疫感作の後の、平均血清抗体力価を示す図である。図に示すように、ワクチン製剤は、0および28日目に、筋肉内(IM)投与によって投与した。28日目について、平均血清抗体力価を示す。さらなる実験の詳細は、実施例4で示す。
【図9B−2】1.0μgまたは0.1μgの液体のまたは再調製されたSFDの粉末ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)ワクチンによる免疫感作の後の、平均血清抗体力価を示す図である。図に示すように、ワクチン製剤は、0および28日目に、皮内(ID)投与によって投与した。28日目について、平均血清抗体力価を示す。さらなる実験の詳細は、実施例4で示す。
【図9B−3】1.0μgまたは0.1μgの液体のまたは再調製されたSFDの粉末ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)ワクチンによる免疫感作の後の、平均血清抗体力価を示す図である。図に示すように、ワクチン製剤は、0および28日目に、鼻腔内(IN)投与によって投与した。28日目について、平均血清抗体力価を示す。さらなる実験の詳細は、実施例4で示す。
【図9C−1】1.0μgまたは0.1μgの液体のまたは再調製されたSFDの粉末ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)ワクチンによる免疫感作の後の、平均血清抗体力価を示す図である。図に示すように、ワクチン製剤は、0および28日目に、筋肉内(IM)投与によって投与した。42日目について、平均血清抗体力価を示す。49日目のBoNT/Aによる致死性抗原投与の後、54日目に生存していた様々な試験群のマウス個体数も示す。破線は800の抗体力価を示し、そのレベルでは、対象はBoNT/Aによる致死性抗原投与から97%の生存率を示す。さらなる実験の詳細は、実施例4で示す。
【図9C−2】1.0μgまたは0.1μgの液体のまたは再調製されたSFDの粉末ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)ワクチンによる免疫感作の後の、平均血清抗体力価を示す図である。図に示すように、ワクチン製剤は、0および28日目に、皮内(ID)投与によって投与した。42日目について、平均血清抗体力価を示す。49日目のBoNT/Aによる致死性抗原投与の後、54日目に生存していた様々な試験群のマウス個体数も示す。破線は800の抗体力価を示し、そのレベルでは、対象はBoNT/Aによる致死性抗原投与から97%の生存率を示す。さらなる実験の詳細は、実施例4で示す。
【図9C−3】1.0μgまたは0.1μgの液体のまたは再調製されたSFDの粉末ボツリヌス神経毒A(BoNT/A)ワクチンによる免疫感作の後の、平均血清抗体力価を示す図である。図に示すように、ワクチン製剤は、0および28日目に、鼻腔内(IN)投与によって投与した。42日目について、平均血清抗体力価を示す。49日目のBoNT/Aによる致死性抗原投与の後、54日目に生存していた様々な試験群のマウス個体数も示す。破線は800の抗体力価を示し、そのレベルでは、対象はBoNT/Aによる致死性抗原投与から97%の生存率を示す。さらなる実験の詳細は、実施例4で示す。
【図10A】1.0μgまたは0.1μgの液体のまたは再調製されたSFDの粉末BoNTワクチンによる免疫感作の後の、平均血清抗体力価を示す図である。図に示すように、ワクチン製剤は、0および28日目に、筋肉内(IM)、皮内(ID)または鼻腔内(IN)投与によって投与した。14日目について、平均血清抗体力価を示す。さらなる実験の詳細は、実施例4で提供する。
【図10B】1.0μgまたは0.1μgの液体のまたは再調製されたSFDの粉末BoNTワクチンによる免疫感作の後の、平均血清抗体力価を示す図である。図に示すように、ワクチン製剤は、0および28日目に、筋肉内(IM)、皮内(ID)または鼻腔内(IN)投与によって投与した。28日目について、平均血清抗体力価を示す。さらなる実験の詳細は、実施例4で提供する。
【図10C】1.0μgまたは0.1μgの液体のまたは再調製されたSFDの粉末BoNTワクチンによる免疫感作の後の、平均血清抗体力価を示す図である。図に示すように、ワクチン製剤は、0および28日目に、筋肉内(IM)、皮内(ID)または鼻腔内(IN)投与によって投与した。42日目について、平均血清抗体力価を示す。49日目のBoNT/Aによる致死性抗原投与の後、54日目に生存していた様々な試験群のマウス個体数もに示す。破線は800の抗体力価を示し、そのレベルでは、対象はBoNTによる致死性抗原投与から97%の生存率を示す。さらなる実験の詳細は、実施例4で提供する。
【図11】様々な炭疽菌rPAワクチン製剤による免疫感作の後の、炭疽致死毒素中和アッセイによって測定された血清中の中和抗体力価を示す図である。各動物試験群で用いたワクチン製剤の具体的な詳細を、表20に示す。さらなる実験の詳細は、実施例5で提供する。
【図12】様々な炭疽菌rPAワクチン製剤による免疫感作の後の、炭疽致死毒素中和アッセイによって測定された血清中のエンドポイントの中和抗体力価を示す図である。各動物試験群で用いたワクチン製剤の具体的な詳細を、表21に示す。さらなる実験の詳細は、実施例5で提供する。
【図13A】10μgまたは3.3μgの液体のまたは再調製されたSFDの粉末F1−Vワクチンによる免疫感作の後の、平均血清抗体力価を示す図である。ワクチン製剤は、0および28日目に、試験マウスに筋内投与した。14日目について、平均血清抗体力価を示す。図中の円は、個々のマウスの血清抗体力価を表し、バーは全ての試験動物についての平均抗体力価を示す。さらなる実験の詳細は、実施例6で提供する。
【図13B】10μgまたは3.3μgの液体のまたは再調製されたSFDの粉末F1−Vワクチンによる免疫感作の後の、平均血清抗体力価を示す図である。ワクチン製剤は、0および28日目に、試験マウスに筋内投与した。28日目について、平均血清抗体力価を示す。図中の円は、個々のマウスの血清抗体力価を表し、バーは全ての試験動物についての平均抗体力価を示す。さらなる実験の詳細は、実施例6で提供する。
【図13C】10μgまたは3.3μgの液体のまたは再調製されたSFDの粉末F1−Vワクチンによる免疫感作の後の、平均血清抗体力価を示す図である。ワクチン製剤は、0および28日目に、試験マウスに筋内投与した。42日目について、平均血清抗体力価を示す。図中の円は、個々のマウスの血清抗体力価を表し、バーは全ての試験動物についての平均抗体力価を示す。さらなる実験の詳細は、実施例6で提供する。
【図14A】水酸化アルミニウムアジュバントに前吸着された多価の液体ワクチン(「液体Poly」)、水酸化アルミニウムに前吸着された再調製されたSFD粉末ワクチン(「前吸着されたSFD Poly」)、または一価の液体ワクチン対照(「液体Mono」)のいずれかで免疫感作されたマウスからの、幾何平均血清抗体力価を示す図である。血清試料を、多価ワクチンの構成抗原、すなわち炭疽菌からの組換え防御抗原(rPA)に対する抗体についてスクリーニングした。矢印によって示すように、マウスを0および28日目に免疫感作し、抗体分析のために血液を0、28および42日目に得た。さらなる実験の詳細は、実施例7で提供する。
【図14B】水酸化アルミニウムアジュバントに前吸着された多価の液体ワクチン(「液体Poly」)、水酸化アルミニウムに前吸着された再調製されたSFD粉末ワクチン(「前吸着されたSFD Poly」)、または一価の液体ワクチン対照(「液体Mono」)のいずれかで免疫感作されたマウスからの、幾何平均血清抗体力価を示す図である。血清試料を、黄色ブドウ球菌からのブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)に対する抗体についてスクリーニングした。矢印によって示すように、マウスを0および28日目に免疫感作し、抗体分析のために血液を0、28および42日目に得た。さらなる実験の詳細は、実施例7で提供する。
【図14C】水酸化アルミニウムアジュバントに前吸着された多価の液体ワクチン(「液体Poly」)、水酸化アルミニウムに前吸着された再調製されたSFD粉末ワクチン(「前吸着されたSFD Poly」)、または一価の液体ワクチン対照(「液体Mono」)のいずれかで免疫感作されたマウスからの、幾何平均血清抗体力価を示す図である。血清試料を、ボツリヌス菌からのボツリヌス神経毒(BoNT)に対する抗体についてスクリーニングした。矢印によって示すように、マウスを0および28日目に免疫感作し、抗体分析のために血液を0、28および42日目に得た。さらなる実験の詳細は、実施例7で提供する。
【図14D】水酸化アルミニウムアジュバントに前吸着された多価の液体ワクチン(「液体Poly」)、水酸化アルミニウムに前吸着された再調製されたSFD粉末ワクチン(「前吸着されたSFD Poly」)、または一価の液体ワクチン対照(「液体Mono」)のいずれかで免疫感作されたマウスからの、幾何平均血清抗体力価を示す図である。血清試料を、ペスト菌からのF1−V融合タンパク質(図14D)に対する抗体についてスクリーニングした。矢印によって示すように、マウスを0および28日目に免疫感作し、抗体分析のために血液を0、28および42日目に得た。さらなる実験の詳細は、実施例7で提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、ミョウバン吸着ワクチン、例えばB型肝炎、ボツリヌス神経毒(BoNT)、炭疽(すなわち、炭疽菌)、ペスト(すなわち、ペスト菌)またはブドウ球菌エンテロトキシン[すなわち、黄色ブドウ球菌からのブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)]ワクチンの、安定粉末製剤を調製するための方法を目的とする。本明細書で開示される安定したミョウバン吸着ワクチンの粉末製剤の製法は、一般に噴霧フリーズ・ドライ(SFD)または大気圧噴霧フリーズ・ドライ(ASFD)技術、例えば、その両方は参照によりその全体が組み込まれている、特許文献1および非特許文献21に記載のものを含む。医薬用ワクチンの粉末組成物およびこれらの組成物の使用方法も、本発明に包含される。
【0020】
本明細書で用いるように、用語「ミョウバン吸着ワクチン」は、免疫原およびアルミニウムアジュバントを含む免疫原性組成物、特に免疫原がアルミニウムアジュバントに吸着されているものを指す。アルミニウムアジュバントは当技術分野で公知であり、例には、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムおよび硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩が含まれる。用語「ミョウバン」は、任意のアルミニウムアジュバントを包含する。特定の実施形態では、アルミニウムアジュバントは水酸化アルミニウム[例えば、Alhydrogel(登録商標)]である。
【0021】
開示されるミョウバン吸着ワクチンの粉末製剤は、高温[すなわち、従来の冷蔵温度より上の温度]で保存されても、および/または凍結融解を受けても安定である。ミョウバン吸着ワクチンの粉末製剤は、希釈剤中で容易に再調製して、ほとんどまたは全く粒子凝集を示さず、免疫原濃度の実質的な低下を示さず、実質的なレベルの免疫原性および/または抗原性を保持し、対象とする病因病原体または毒素に対する実質的なレベルの防御(すなわち、「予防効果」または「防御免疫」)を示す、再調製液体ワクチンを生成することができる。再調製液体ミョウバン吸着ワクチンを調製するための方法も、開示される。特定の病因病原体または毒素への曝露と関連する特定の疾患、障害または症状の予防または治療において、ミョウバン吸着ワクチンの粉末組成物(またはその再調製液体製剤)を用いる方法が、さらに提供される。さらに、本明細書で開示される安定粉末ワクチン製剤の容易に再調製可能な性質は、様々な方法による再調製ワクチンの投与を可能にし得る。本発明のある態様では、再調製ワクチンは、医学的に訓練された人員の支援の有る無しに関係なく、最低限の侵襲性の技術によって投与することができる。例えば、本発明の再調製ワクチン、特にB型肝炎、炭疽、BoNTワクチン、特にBoNT/Aワクチン、ペストワクチン、特にF1−Vペストワクチン、またはブドウ球菌エンテロトキシンワクチン、特にSEBワクチンは、顕微針によって皮内に投与することができる。
【0022】
ミョウバン吸着ワクチンの安定粉末製剤を調製するための方法は、アルミニウムアジュバント上に吸着された免疫原を含む液体製剤を霧化して霧化製剤を生成するステップと、霧化製剤を凍結させて凍結粒子を生成するステップと、凍結粒子を乾燥させて乾燥粉末粒子を生成するステップとを含む。そのような方法は、本明細書で「噴霧フリーズ・ドライ(SFD)」と称することができる。例えば、その全ては参照により本明細書に組み込まれている、非特許文献21、同17、および特許文献1を参照のこと。本発明の特定の態様では、ミョウバン吸着ワクチンの安定粉末製剤を調製するための、特許請求に係る方法は、アルミニウムアジュバント上に吸着された免疫原を含む液体製剤を霧化して霧化製剤を生成するステップと、霧化製剤を凍結させて凍結粒子を生成するステップと、凍結粒子をおよそ大気圧の下で乾燥させて乾燥粉末粒子を生成するステップとを含む。乾燥ステップは、振動、内部構造物、機械的攪拌またはそれらの組合せの存在下で実施することができる。粉末製剤を生成するこの方法は、「大気圧噴霧フリーズ・ドライ(ASFD)」と称すことができる。(例えば、特許文献1を参照)。
【0023】
ミョウバン吸着ワクチンの従来の液体製剤は、長期保存を容易にするために用いられる従来の凍結乾燥(lyophilization)、凍結およびフリーズ・ドライ(freeze−drying)技術を適用すると、免疫原性を失い、凝集することが示された。例えば、その全ては参照により本明細書に組み込まれている、非特許文献17〜20を参照されたい。その結果、ミョウバン吸着ワクチンは、一般に冷蔵条件(例えば、約2℃から約8℃)の下で、液体製剤として保存および輸送されなければならない。しかし、本発明の方法は、B型肝炎、BoNT、炭疽、ペスト(例えば、F1−V)またはブドウ球菌エンテロトキシン(例えば、SEB)ワクチンなどの、ミョウバン吸着ワクチンの安定粉末製剤の生成を可能にし、該安定粉末製剤は非最適条件(例えば、非冷蔵条件)下で保存することができ、適する担体で再調製して、粒子凝集をほとんどまたは全く示さず、免疫原性/免疫原性を保持し、疾患、毒素またはそれらと関連する症状に対する防御効能を維持することができる。本明細書で用いる「非最適条件」または「非最適保存条件」は、一般にワクチン組成物を高温で保存すること、ワクチン製剤に1回または複数回の凍結融解サイクルを適用すること、およびワクチン組成物を長期間保存することなどの条件を指す。「高温」は、液体ワクチン製剤の保存のために従来推奨されている冷蔵条件を越える温度を意図し、例えば、10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、55℃またはそれ以上の温度を含めることができる。
【0024】
「粉末」または「粉末製剤」または「粉末製剤を含む医薬組成物」は、実質的に固体の、易流動性の粒子からなる組成物を意図する。本発明の「安定粉末製剤」または「ミョウバン吸着ワクチンの安定粉末製剤を含む医薬組成物」は、実質的な構造的完全性を維持し(例えば、凝集をほとんどまたは全く示さないこと、実質的な量の元の免疫原濃度を維持することなど)、元の液体製剤のそれと比較して、実質的なレベルの免疫原性、抗原性および/または防御効能を保持する。本発明の特定の態様では、ミョウバン吸着ワクチンの粉末製剤は、非最適条件(例えば、高温、凍結融解サイクル、長期保存など)下での保存に対してさえも安定している。例えば、本発明の安定粉末製剤は、非最適条件下で保存し、再調製により液体ワクチン製剤を生成することができ、その場合、再調製された液体ワクチンは粒子凝集をほとんどまたは全く示さず、元の免疫原濃度の実質的な量を維持し、さらに、実質的なレベルの免疫原性および/または抗原性を保持するが、これについては本明細書の以下でさらに記載する。ミョウバン吸着ワクチン組成物の安定性は、例えば、粒子凝集の程度に対応する沈降速度の測定、および再調製液体ワクチンに存在する免疫原の濃度測定によって評価することができる。詳細には、再調製液体ワクチンの沈降速度および免疫原の濃度は、元の液体製剤(すなわち、霧化の前にアルミニウムアジュバントに吸着された免疫原を含む液体製剤)のそれと比較することができる。沈降速度、免疫原の濃度、免疫原性および抗原性を測定するための標準のアッセイは当技術分野で公知であり、実施例2および3で記載される。防御効能は、例えば、対象とする特定の免疫原と関連する病因病原体または毒素による誘発の後に、免疫感作された対象およびされていない対象の生存率を評価することによって評価することができる。本発明の炭疽ワクチンに関して、防御免疫は、例えば、炭疽致死毒素中和アッセイを通して分析することができる。
【0025】
本発明の方法に従って霧化される液体製剤は、アルミニウムアジュバントに吸着される少なくとも1つの免疫原を含む。「免疫原」は、対象において免疫応答を誘導する任意の天然または合成の物質である。1つを超える免疫原を含む液体製剤は、本発明の実施で用いることができ、一般に「多価」(polyvalent)または「複数価」(multivalent)ミョウバン吸着ワクチンと呼ばれる。本明細書で用いるように、用語「免疫原性」は、対象に投与された場合に免疫応答(例えば、細胞の免疫原特異免疫応答または体液性抗体応答)を誘導する物質の能力を指す。本発明の免疫原は、対象とする任意の病原体と関連するかそれに由来することができ、例として、例えば、細胞全体、ウイルス粒子(例えば、部分的または完全に不活性化されたウイルス)、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、脂質、リポタンパク、糖タンパク質および多糖が含まれる。本発明の特定の態様では、免疫原はB型肝炎抗原、例えば表面(HBsAg)またはコアのB型肝炎抗原(HBcAg)を含む。他の実施形態では、免疫原はボツリヌス免疫原であり、例えば、BoNT/A、B、C、D、E、FまたはGのようなボツリヌス神経毒を含む。本発明のBoNT免疫原は、一般的にBoNT/A抗原、特にBoNT/A重鎖(HC)である。本発明の免疫原は、炭疽菌抗原、特に炭疽菌の毒素またはその成分、特に炭疽菌防御抗原(PA)も含む。ある実施形態では、免疫原は組換え炭疽菌防御抗原(rPA)である。本発明のペスト菌抗原には、例えば、F1抗原、V抗原および、特に、F1−V融合タンパク質抗原が含まれる。免疫原には、さらにブドウ球菌エンテロトキシンの抗原、例えばSEB、特に組換えSEB(rSEB)が含まれる。本発明の一部の態様では、多価または複数価のワクチンを生成するために、複数の免疫原を用いることができる。そのような多価ワクチンは、例えば、炭疽抗原(例えば、rPA)、ブドウ球菌エンテロトキシン抗原(例えば、rSEB)、BoNT抗原(例えば、BoNT/A)およびペスト菌抗原(例えば、rF1−V)を含むことができる。本明細書の下記で定義される、対象とする免疫原の組換えで生成された免疫原、および変異体もしくは断片を、本発明の実施で用いることができる。
【0026】
本明細書で定義される任意の適する免疫原を使用することができる。免疫原は、ウイルスの免疫原であることができる。したがって免疫原は、なかでも、ピコルナウイルス科(例えばポリオウイルスなど);カリチウイルス科;トガウイルス(例えば、風疹ウイルス、デング熱ウイルスなど);フラビウイルス科;コロナウイルス科;レオウイルス科;ビルナウイルス科;ラプドウイルス科(例えば狂犬病ウイルスなど);フィロウイルス科;パラミクソウイルス科(例えばおたふくかぜウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルスなど);オルソミクソウイルス科(例えばインフルエンザウイルスA型、B型およびC型など);ビニヤウイルス科;アレナウイルス科;レトロウイルス科(例えばHTLV−I;HTLV−II;HIV−1およびHIV−2);およびサル免疫不全ウイルス(SIV)のメンバーに由来することができる。
【0027】
あるいは、ウイルスの免疫原は、乳頭腫ウイルス(例えばHPV);ヘルペスウイルス;肝炎ウイルス、例えばA型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎(HCV)、デルタ肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)またはG型肝炎ウイルス(HGV);およびダニ媒介性脳炎ウイルスに由来してもよい。これらのウイルスの記載については、例えば、非特許文献22および23を参照のこと。
【0028】
本発明で用いるための細菌性免疫原は、炭疽、ボツリヌス中毒、ペスト、ジフテリア、コレラ、結核、破傷風、百日咳、髄膜炎および他の病原状態を引き起こす生物体、例えば、髄膜炎菌(Meningococcus)A、BおよびC、ヘモフィルス・インフルエンザB型(Haemophilus influenza)(HIB)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、大腸菌(Escherichia coli)、カンピロバクター(Campylobacter)、赤痢菌(Shigella)、サルモネラ(Salmonella)、ストレプトコッカス(Streptococcus)属の種、ブドウ球菌(Staphylococcus)属の種、ボツリヌス菌、炭疽菌およびペスト菌に由来してもよい。細菌性免疫原の組合せは、例えば、ジフテリア、百日咳および破傷風の免疫原を含む、単一の組成物で提供することができる。適する百日咳免疫原は、百日咳毒素および/または線維状の赤血球凝集素および/または、P69とも呼ばれるペルタクチン(pertactin)である。抗寄生虫性免疫原は、マラリアおよびライム病を引き起こす生物体に由来することができる。本発明のある態様では、細菌性免疫原は、組換えブドウ球菌エンテロトキシンB(rSEB)、炭疽菌組換え防御抗原(rPA)、組換えボツリヌス菌神経毒およびペスト菌F1−V融合タンパク質からなる群から選択される。特定の実施形態では、多価ワクチンを生成するために、上記の免疫原の組合せを本発明の実施で利用する。
【0029】
本発明で用いるための免疫原は、当分野の技術者に公知である様々な方法を用いて生成することができる。詳細には、免疫原は、標準の精製技術を用いて天然源から直接単離することができる。あるいは、全部死菌の、弱毒化または不活性化させた細菌、ウイルス、寄生虫または他の微生物の全体を使用することができる。さらに、免疫原は、既知の技術を用いて組換えで生成することができる。
【0030】
本明細書で用いる免疫原は、記載されているアミノ酸配列に基づいて、固相ペプチド合成などの化学重合体合成により合成することもできる。そのような方法は、当業技術者には公知である。固相ペプチド合成手法に関しては、例えば、非特許文献24および25を、古典的溶液合成に関しては、非特許文献26および27を参照されたい。
【0031】
本発明のある態様では、アルミニウムアジュバントに吸着された免疫原を含む液体製剤は、安定乾燥粉末として製剤化されるべき、市販のミョウバン吸着ワクチンであってよい。任意のミョウバン吸着ワクチンの液体製剤を、本発明に実施で用いることができる。そのようなワクチンには、それらに限定されないが、Infanrix(ジフテリア、破傷風および百日咳)、Havrix(小児のA型肝炎)、Vaqta(小児のA型肝炎)、Engerix B(B型肝炎)、PedVaxHib(ヘモフィルス・インフルエンザB型)、Twinrix(A型肝炎/B型肝炎)、Pediarix(ジフテリア、破傷風および百日咳−ポリオウイルス−B型肝炎)、Prevnar(肺炎球菌複合体)、Daptacel(ジフテリア、破傷風および百日咳)、Tripedia(ジフテリア、破傷風および百日咳)、Comvax(ヘモフィルス・インフルエンザB型−B型肝炎)、Recombivax HB(B型肝炎)、Tetrammune(ジフテリア、破傷風および百日咳−ヘモフィルス・インフルエンザB型)、Certiva(ジフテリア、破傷風および百日咳)ならびにShanvac−B(B型肝炎)が含まれる。特定の実施形態では、液体製剤は、B型肝炎のミョウバン吸着ワクチン、より具体的にはHBsAg抗原を含むワクチンを含む。さらに、リン酸アルミニウムに吸着され、BoNT/A、B、C、DおよびEに特異的である五価のボツリヌス・トキソイド・ワクチンが、治験薬として疾病管理センターのために生成された。このミョウバン吸着BoNTワクチンも、本発明の実施で用いることができる。炭疽菌の無毒性、非被包性の株由来の防御抗原を含む炭疽ワクチンは、米国では入手可能であるが、一般的に限定された集団(例えば、軍人、炭疽菌を研究している者など)だけに投与される。この液体炭疽ワクチンは、本方法および組成物で用いることができた。
【0032】
用語「ポリヌクレオチド」または「ポリヌクレオチド配列」の使用は、本発明を、DNAを含んでいるポリヌクレオチドに限定することを意図するものではない。当分野の技術者は、ポリヌクレオチド分子は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドおよびそれらの組合せを含むことができることを理解する。「DNA」は、その一本鎖形または二本鎖らせんのデオキシリボヌクレオチド(アデニン、グアニン、チミンまたはシトシン)重合形態を指す。この用語は分子の一次および二次の構造だけを指し、それを任意の特定の三次形態に限定しない。したがって、この用語は、とりわけ、線形DNA分子(例えば、制限断片)、ウイルス、プラスミドおよび染色体で見られる、二本鎖DNAを含む。特定の二本鎖DNA分子の構造の議論では、本明細書で配列は、DNAの非転写鎖(すなわち、mRNAに相同の配列を有する鎖)に沿って5’から3’方向の配列だけを与える通常の規則に従って記載することができる。用語「ポリヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書で互換的に用いることができる。
【0033】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は本明細書で互換的に用いられ、アミノ酸残基の重合体を指す。これらの用語は、天然のアミノ酸重合体と同様に、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然のアミノ酸の人工化学類似体であるアミノ酸重合体に適用される。
【0034】
本発明の実施で用いられるポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、天然のものであるか、または、通常の分子生物学技術に従って組換えで生成することができる。ポリペプチド(例えば、HBsAg、BoNT/A、炭疽菌rPA、rSEBもしくはrF1−V)またはポリヌクレオチドを含む免疫原の変異体および断片も、本発明に包含される。「変異体」は、実質的に類似した配列を指す。本発明のアミノ酸またはヌクレオチド配列の変異体は、一般に参照配列と少なくとも約65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有する。特定の実施形態では、本発明の免疫原性ポリペプチドの変異体は、完全長ポリペプチドの生物活性を保持し、したがって、免疫原性である。変異体配列を生成する方法は当技術分野で公知であり、同様に、BLASTなど、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列の同一割合を判定する方法も公知である。
【0035】
用語「断片」は、特定数の連続したアミノ酸またはヌクレオチド残基を含む、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの一部を指す。特定の実施形態では、本発明の免疫原性ポリペプチドの断片は、完全長ポリペプチドの生物活性を保持することができ、したがって、免疫原性であることができる。ポリヌクレオチドの断片は、そのタンパク質の生物活性を保持するタンパク質断片をコードすることができ、したがって、免疫原性であることができる。本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドの断片は、それらが所望の属性(例えば、免疫原性)を有する限り、任意の長さであり得る。ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの断片の生成方法は、当技術分野で公知である。
【0036】
本発明の液体製剤は、免疫原およびアルミニウムアジュバントを含む。アルミニウムアジュバントに加え、他のアジュバント剤も本発明の実施で用いることができる。用語「アジュバント」は、免疫原に対する免疫応答を高める化合物または混合物を指す。アジュバントは、免疫原を徐々に放出する組織貯蔵所(tissue depot)として、および免疫応答を非特異的に高めるリンパ系活性化剤としての役目も果たすことができる(例えば、非特許文献28を参照)。一般に、本発明の実施で用いられるアジュバントは、薬学上許容される。そのような薬学上許容されるアジュバントは、当技術分野においては公知である。
【0037】
例示的なアジュバントには、それらに限定されないが、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、サポニン(およびその誘導体)、水酸化アルミニウムなどの鉱物ゲル、界面活性物質、例えばリゾレシチン、プルロン酸ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油または炭化水素の乳濁液、キーホール・リンペット・ヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(カルメット・ゲラン菌)およびコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)などの潜在的に有用なヒト・アジュバントが含まれる。対象とする他のアジュバントには、CpG DNA、GM−CSF、IL−4、IL−7、IL−12、モノリン酸化リピドA(MPL)、3−Q−デスアシル−4’−モノリン酸化リピドA(3D−MLA)、IL−1β 163−171ペプチド(Sclavoペプチド)、25−ジヒドロキシビタミンD3、カルシトニン遺伝子調節ペプチド、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、N−アセチルグルコサミニル−(P1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−グルタミン(GMDP)、ジメチルジオクタデシラ(dioctadecyla)またはジステアリ(disteary)臭化アンモニウム(DDA)、亜鉛L−プロリン、ホルミル化−Met−Leu−Phe(fMLP)、N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(スレオニル−MDP)、N−アセチル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−(ヒドロキシ−ホスホリルオキシ)エチルアミド・モノナトリウム塩(MTP−PE)、Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH3、Nac−Mur−L−Thr−D−イソGln−sn−グリセロールジパルミトイル、Nac−Mur−D−Ala−D−イソGln−sn−グリセロールジパルミトイル、1−(2−メチプロピル)−IH−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン、4−アミノ−otec−ジメチル−2−エトキシメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノール、N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−イソGlu−L−Ala−グリセロールジパルミテート(DTP−GDP)、N−アセチルグルコサミニル−N−アセチリヌラミル−L−Ala−D−イソGlu−L−Ala−ジパルミトキシプロピルアミド(DTP−DPP)、7−アリル−8−オキソグアノシン、ポリアデニル酸−ポリ−ウリジル酸複合体、MIP−1a、MIP−3a、フタル酸ジブチル、フタル酸ジブチル類似体およびC5aが含まれる。
【0038】
本発明の実施で用いられるアルミニウムアジュバント上への吸着免疫原を含む液体製剤は、霧化に適する任意の形態、例えば、溶液、懸濁液、スラリーまたはコロイドでよい。液体製剤は、1つまたは複数の薬学上許容される賦形剤、保護剤、溶媒、塩、界面活性剤および緩衝剤をさらに含むことができる。そのような賦形剤は当技術分野で公知であり、本発明のミョウバン吸着ワクチンの安定化に資することができる。適する賦形剤は、免疫原およびアルミニウムアジュバントと適合し、例には、水、生理食塩水、炭水化物、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組合せが含まれる。特に興味がある炭水化物賦形剤には、トレハロース、マンニトール、デキストラン、シクロデキストリン、イヌリンUSPおよびそれらの組合せが含まれる。ある実施形態では、液体製剤は、免疫原、アルミニウムアジュバント、およびデキストラン/トレハロースまたはマンニトール/トレハロースを含む。さらに、所望により、液体製剤は、湿潤剤または乳化剤およびpH緩衝剤などの補助物質を含むことができる。
【0039】
適する賦形剤には、水との接触に増粘したり重合したりせず、個体に投与された場合に無害であり、その薬剤活性を変化させる方法で医薬用薬剤と著しく相互作用することのない、易流動性の粒子状固体を含めることができる。通常使用される賦形剤の例には、それらに限定されないが、ヒトおよびウシの血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質、グルコース、キシロース、ガラクトース、フルクトース、D−マンノースまたはソルボースなどの単糖、ラクトース、マルトース、サッカロース、トレハロースまたはショ糖などの二糖、マンニトール、トレハロース、ソルビトール、キシリトール、グリセロール、エリスリトールまたはアラビトールなどの糖アルコール、デキストラン、デンプン、セルロースまたは高分子ポリエチレングリコール(PEG)などの重合体、アミノ酸またはそれらの塩、例えばグリシン、アラニン、グルタミン、アルギニン、リジンもしくはヒスチジン、または、ナトリウム、カリウムもしくはマグネシウム塩などの、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属とのそれらの塩、あるいは、リン酸ナトリウムもしくはカルシウム、炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、酒石酸、プルロニック、界面活性剤およびそれらの組合せが含まれる。適する溶媒には、それらに限定されないが、塩化メチレン、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよび水が含まれる。薬学上許容される塩には、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの無機酸塩、および、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸塩が含まれる。特にワクチン粉末製剤が吸入による投与を目的とする場合、キトサン、デルマタン硫酸、コンドロイチン、ペクチンおよび他の粘膜付着剤(mucoadhesives)を本発明の実施で用いることもできる。適する界面活性剤には、トゥイーン80、プルロニックなどが含まれるが、これらに限定されない。薬学上許容される賦形剤および補助剤に関する詳細な解説は、参照により本明細書に組み込まれる非特許文献29で入手可能である。
【0040】
ミョウバン吸着ワクチンの安定粉末製剤を調製するための本発明の方法は、霧化、凍結および乾燥ステップを含む。本発明の方法に従って、霧化、凍結および乾燥ステップは、単一のチャンバーまたは装置内で実施することができ、それによって試料汚染および収量減の可能性が消失する。例えば、液体製剤は、チャンバー内へ霧化(すなわち、噴霧)することができ、その中では、霧化製剤の凍結および凍結粒子の乾燥も起こる。単一のチャンバー内で霧化、凍結および乾燥させるための例示的な装置は、特許文献1で提供されている。
【0041】
アルミニウムアジュバント上に吸着されている免疫原を含む液体製剤は、当技術分野で公知である様々な方法および装置を用いて霧化することができる。例えば、液体製剤は2流体ノズル、加圧ノズルもしくは遠心回転ディスクノズルを通して噴霧すること、または、超音波噴霧器、インクジェットプリンタ型ノズルもしくは振動オリフィスエアゾール発生器(VOAG)で霧化することができる。本発明の一部の態様では、液体製剤は、BD Accuspray(登録商標)ノズルなどの加圧ノズルで霧化される。霧化の気体流量および気体圧力、液体流速ならびにノズルの口径および種類を含む霧化条件は、特に霧化製剤中の液滴の径および生じた乾燥粉末製剤の粒径を最適化するために、変更させることができる。
【0042】
液体製剤の霧化の後、液滴を速やかに凍結させて固体の凍結粒子を生成する。特定の実施形態では、液滴は、霧化ステップの後、直ちに凍結させる。液滴は、霧化された製剤を、液体製剤の凝固点未満の温度を有する任意の冷媒に導入することによって凍結させることができる。本明細書で用いるように、「霧化された製剤を冷媒に導入する」ことは、霧化された製剤の液滴を冷媒と接触させるための任意の方法、例えば、それに限定されないが、液滴を冷液中に浸すこと、または液滴を冷たいガス中を通過させることを含む。用語「冷媒」は、液体製剤の凝固点未満の温度を有する任意の適する冷たい液体または気体を含むと、広義に定義される。例示的な冷たい液体は当技術分野で公知であり、例には、液体窒素、アルゴンおよびヒドロフルオロエーテルが含まれる。圧縮液体、例えば圧縮流体二酸化炭素、ヘリウム、プロパン、エタンまたは同等の不活性液体を、本発明の実施で用いることもできる。凍結ステップの間に用いられる冷たい液体の温度は、一般的に約−200℃から約−80℃の間、詳細には約−200℃から約−100℃の間、より詳細には約−200℃である。凍結ステップで用いられる代表的な気体には、それらに限定されないが、冷空気、窒素、ヘリウムおよびアルゴンが含まれ、一般に約−5℃から約−60℃の間、より詳細には−20℃から約−40℃の間の温度で用いられる。所望の温度の冷媒を得るための従来の手順は、当技術分野で公知である。一実施形態では、免疫原およびアルミニウムアジュバントを含む液体製剤は、液体窒素を含んでいる容器[例えば、金属製の受け皿(metal pan)]より上に位置する噴霧ノズルを通して霧化される。霧化された製剤中の液滴は、一般に冷たい液体との接触により直ちに凍結し、それらは収集、乾燥させられる。
【0043】
特許請求に係る方法の凍結ステップの間に生成される固体の凍結粒子を乾燥させて、ミョウバン吸着ワクチンの粉末粒子を生成する。本明細書で用語「乾燥」は、凍結粒子から液体を除去して、水分含有量が重量比で一般に20%、15%、10%、5%または1%未満である粉末粒子を生成することを指すために用いられる。
【0044】
上記の、および当技術分野で公知である噴霧フリーズ・ドライ(SFD)技術を含むものなどの一部の実施形態では、当技術分野で公知である方法および装置に従って、凍結粒子を凍結乾燥(真空下)によって乾燥させる。例えば、実施例1で記載されているように、凍結粒子を収集して凍結乾燥器へ移し、過剰な液体を蒸発させて乾燥粉末粒子を生成することができる。SFD法および装置は、例えば、非特許文献21および同17、ならびに特許文献1に記載されている。
【0045】
本発明の他の態様、特に上記の大気圧噴霧フリーズ・ドライ(ASFD)を含むものでは、凍結粒子は、大気圧前後の冷たい、乾燥気体(例えば、空気、窒素またはヘリウム)の気流中での昇華によって乾燥させる。本明細書で用いるように、「大気圧前後」は、約0.5から5気圧、詳細には1から3気圧、より詳細には約1気圧を意味するものとする。大気圧で粒子を乾燥させるための方法および装置は、特許文献1および2に記載されている。
【0046】
特定の実施形態では、凍結粒子は、粒子の流動化を促進する条件下で、大気圧前後の冷たい気体中で乾燥させる。乾燥工程での粒子流動化は、チャンネリング(channeling)および凝集を阻止し、より速く、より完全な粒子乾燥を可能にする。乾燥ステップでの粒子の流動化を高める任意の方法を、本発明の実施で用いることができる。例えば、乾燥ステップは、振動、内部構造物、機械的攪拌またはそれらの組合せの存在下で実施することができる。用語「内部構造物」は、工業プロセス化学の分野で通常用いられ、本明細書では、SFDまたはASFDのための装置またはチャンバー内に置かれる任意の物理的障壁(例えば、ブレード、プレート、パドルまたは他の障壁)を指すために用いられ、該物理的障壁は、乾燥工程で粒子の流動化を促進するために用いられる。(例えば、特許文献1を参照)。
【0047】
本発明のある態様では、凍結粒子を工程の組合せによって、例えば大気圧前後の冷たい乾燥気体の流れの中での昇華と、続く従来の凍結乾燥によって乾燥させる。例えば、凍結粒子を冷たい気体との接触によって部分的に乾燥させ、フィルターまたは他の収集装置で収集し、その後、凍結乾燥にかけて粒子をさらに乾燥させることができる。本発明の方法に従い、乾燥工程は、例えば、凍結粒子の沈着および収集の後にくることができ、あるいは、凍結および乾燥が事実上同時に起きてもよい。凍結し、乾燥または部分的に乾燥した粉末粒子の収集のための任意の方法および容器もしくは装置を、本発明で用いることができる。一実施形態では、乾燥させた粒子をフィルター上に収集し、さらなる用途のために、または凍結乾燥による乾燥の場合のように、受け皿内にそこから粒子を取り出すことができる。収集したならば、乾燥粉末粒子を、医療用組成物の保存に適する滅菌容器へ移すことができる。
【0048】
特許請求に係る医薬組成物の乾燥粉末粒子は、いくつかのパラメータ、例えば、それらに限定されないが、平均粒径(別称、平均幾何粒径または体積平均径)、粒径範囲、平均空気力学的径(別称、体積平均空気力学的径)、粒子表面積、ならびに粒子形態(例えば、粒子空気力学的形状および粒子表面特性)に基づいて特徴づけることができる。これらのパラメータを評価する方法は、当技術分野で公知である。例えば、粒径は、それらに限定されないが、走査電子顕微鏡およびレーザー回折を含む従来の技術によって評価することができる。粉末の平均粒径は、カスケード・インパクション(cascade impaction)などの従来の技術を用いて、質量平均空気力学的径(MMAD)として測定することもできる。本明細書の下記で、また当技術分野で定義されるように、空気力学的径は、実際の粒径と粒子絶対密度の平方根との積と定義される。所望により、平均粒径を確認するために、自動粒径カウンター(例えば、Aerosizerカウンター、Coulterカウンター、HIACカウンターまたはGelman自動粒子カウンター)を用いることができる。粒子形態を質的に評価するために、走査電子顕微鏡検査を利用することができる。
【0049】
同様に、本発明の粉末粒子は、密度または粒子密度の範囲に基づいて特徴づけることができる。実際の粒子密度または「絶対密度」は、ヘリウム・ピクノメトリー(helium pycnometry)などの既知の定量技術を用いて、容易に確認することができる。あるいは、本発明によって粉末の密度を調査するために、「タップ」(tap)密度測定を用いることができる。タップ密度は、指定された方法で詰め込む際に、指定体積まで容器を満たす物質の質量を、容器体積で割ったものとして定義される。タップ密度を測定するために適する装置が利用可能であり、例としては、Micromeritics Instrument社から入手可能であるGeoPyc(商標)モデル1360がある。粉末組成物の絶対密度とタップ密度との間の差は、その組成物の全空隙率および比孔隙量に関する情報を提供する。
【0050】
本方法に従って作製される粉末製剤の平均粒径は、一般に約35μmから約300μm、詳細には約80μmから約250μm、より詳細には約80μmから約100μmである。本発明の一部の実施形態では、平均粒径は少なくとも80μmである。本発明の粉末粒子の平均タップ密度は、一般的に約0.01から約0.7g/cm3、詳細には約0.01から約0.6g/cm3、より詳細には約0.02から約0.4g/cm3である。
【0051】
ミョウバン吸着ワクチン、特にミョウバン吸着B型肝炎、ボツリヌス中毒(例えば、BoNT/A)、炭疽(すなわち、炭疽菌)、rSEB(すなわち、ブドウ球菌エンテロトキシン)またはペスト(ペスト菌)のワクチンの安定粉末製剤を含んでいる医薬組成物も、本発明に包含される。ある実施形態では、医薬組成物は、アルミニウムアジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)に吸着されている、B型肝炎抗原(例えば、HBsAg)、BoNT免疫原(例えば、BoNT/A、特にBoNT/A HC)、炭疽菌抗原(例えば、炭疽菌PA、特に炭疽菌rPA)、ブドウ球菌エンテロトキシン抗原(例えば、SEB、特にrSEB)、またはペスト菌抗原(例えば、F1−V)の安定粉末製剤を含む。本発明を特定の製剤に限定するものではないが、ある実施形態では、乾燥粉末は(重量パーセントで)約0.0001%から約10%の免疫原、約0.2から約25%のミョウバンアジュバント(元素アルミニウム含有量に基づく)、および約70から約99%の炭水化物賦形剤(例えば、マンニトール、トレハロースまたはデキストラン)を含む。本発明の医薬組成物は、希釈剤で再調製して対象への投与のための液体ワクチンを形成した、安定したミョウバン吸着ワクチン粉末製剤をさらに含む。再調製液体ミョウバン吸着ワクチンを生成するための方法は、本発明にさらに包含される。ある実施形態では、本方法は、本発明のミョウバン吸着ワクチンの乾燥粉末製剤を、本明細書の下記で定義される薬学上許容される担体中で再調製することを含む。
【0052】
先に述べたように、ミョウバン吸着ワクチンの「安定」粉末製剤は、乾燥した粉末粒子を希釈剤中で再調製して、再調製された液体ワクチンを生成することができる製剤であリ、該ワクチンは、ほとんどもしくは全く粒子凝集を示さず、免疫原濃度の実質的な低下を示さず、免疫原性を保持し、抗原性を維持し、かつ/または防御効力を示し、このことは特にSFDおよびASFDがなされておらず、その後対象への投与前に再調製されたワクチンの液体製剤と比較した場合に妥当する。これらのパラメータは、当技術分野で公知であり、下記の実験の実施例に記載されている様々な技術(例えば、沈降アッセイ、AUSYMEアッセイ、血清抗体濃度の分析、BoNT/Aまたはペスト菌などの病因病原体または毒素による致死性抗原投与の後の生存率、および炭疽致死毒素中和アッセイ)を用いて評価することができる。再調製された液体ワクチンで得られる結果は、アルミニウムアジュバントに吸着されている免疫原を含む元の液体製剤(すなわち、噴霧前の元の液体製剤)を用いて得られる結果と比較することができる。
【0053】
一部の実施形態では、再調製された液体ミョウバン吸着ワクチンは、特に元の液体製剤のそれと比較して、ほとんどまたは全く粒子凝集を示さない。粒子凝集は、鏡検または沈降速度分析などの方法を用いて評価することができる。「液体製剤のそれと比較してほとんどまたは全くない粒子凝集」とは、例えば、元の液体製剤の沈降速度と比較して、再調製された液体ワクチンで沈降速度の実質的な増加が観察されないことを表す。さらに、本発明のある態様では、再調製された液体ワクチンは、霧化前の液体製剤の免疫原濃度と比較して、免疫原濃度の実質的な低下を示さない。「免疫原濃度の実質的な低下がない」とは、再調製された液体ワクチンが、元の免疫原濃度の少なくとも約50、60または70%、より好ましくは元の免疫原濃度の少なくとも約80、85または90%、最も好ましくは元の液体製剤中に存在する免疫原濃度の少なくとも約91、92、93、94、95、96、97、98、99%またはそれ以上を保持することを意味するものとする。免疫原濃度は、例えば、ELISAに基づく方法(例えば、AUSZYME)で測定することができる。
【0054】
本明細書で用いられ、および当技術分野で定義されているように、「抗原性」は、タンパク質(例えば、免疫原)を認識して結合する抗体の能力である。「免疫原性」は、in vivoで(例えば、ヒトまたはヒト以外の対象中で)免疫応答を引き起こす、タンパク質(すなわち、免疫原)の能力を指す。本発明の再調製された液体ミョウバン吸着ワクチンは、一般に、元の液体製剤のそれと比較して、実質的なレベルの抗原性および免疫原性を保持する。「実質的なレベルの抗原性」は、元の液体ワクチン製剤のそれと比較した場合に、液体再調製ワクチンに存在する免疫原が、少なくとも約50、60、70、80、85、90、95、99%またはそれ以上の抗原性を保持することを意味するものとする。抗原性は、例えば、AUSZYMEなどのELISAに基づくアッセイで測定することができる。本発明のある態様では、再調製液体ワクチンは相当高いレベルの免疫原性を保持し、したがって、対象において免疫応答を、特に霧化前の元の液体製剤で得られるものと実質的に同じである免疫応答を促進することができる。すなわち、再調製液体ワクチンによる対象の免疫感作によって達成される免疫応答は、液体製剤で得られる免疫応答レベルの少なくとも約50、60、70、80、85、90、95、99%以上、またはそれらと同等以上であることができる。対象における免疫応答は、それに限定されないが免疫感作後の血清抗体レベルの測定を含む、当技術分野で公知である様々な方法によって判定することができる。さらに、本発明のワクチン、特にBoNT/A、rPA、rSEB、F1−V、その任意の組合せを含んでいるワクチンで得られる「保護レベル」または「予防効果」は、対象とする免疫原(例えば、BoNT/AなどのBoNT)の致死用量への曝露後に生存する免疫化対象の割合によって評価することができる。本発明の炭疽ワクチン、特に炭疽菌rPAワクチンで得られる保護レベルは、例えば、当技術分野で公知である、実施例5に記載の方法に従って、血清試料の中和抗体力価を定量することによって判定することができる。
【0055】
本明細書の粉末組成物に適用される用語「安定」は、粉末を高温、長期保存または凍結融解サイクルにさらしても、なお、上記の凝集、免疫原濃度、免疫原性、抗原性および/または防御効力に関して所望の特性を保持することができることをさらに表す。
【0056】
上記のように、ミョウバン吸着ワクチンの安定粉末製剤は、対象への投与に適する液体ワクチン製剤を生成するために、薬学上許容される担体で再調製することができる。「薬学上許容される担体」は、有効成分の保存、投与または治療効果を促進するために当技術分野で従来用いられる担体を指す。医薬組成物およびワクチンを製剤化するための薬学上許容される担体および方法は、一般に当技術分野で公知である。薬学上許容される担体、安定剤およびイソモライト(isomolyte)の製剤化および選択に関する詳細な解説は、参照により本明細書に組み込まれる非特許文献29で見られる。ワクチン粉末製剤の再調製のための例示的な薬学上許容される担体には、生理的食塩水、緩衝液および塩などの様々な希釈剤が含まれる。本明細書で用語「再調製液体ワクチン」または「再調製ミョウバン吸着液体ワクチン」は、液体担体で再調製して再調製液体ワクチンを生成した、ミョウバン吸着ワクチンの安定粉末製剤を含んでいる医薬組成物を指すために、互換的に用いられる。本発明の方法は、安定し、かつ容易に再調製することができる乾燥粉末ワクチン製剤の調製を可能にする。特定の実施形態では、本発明の再調製液体ワクチンは、粒子凝集をほとんどまたは全く示さず、免疫原濃度の実質的な低下を示さず、実質的なレベルの免疫原性、抗原性および/または防御効能を保持する。
【0057】
本発明の医薬組成物は、特定の免疫原と関連する疾患、障害、状態または症状を予防または治療する方法で有用である。用語「疾患」、「障害」および「状態」は、本明細書で互換的に用いられる。具体的には、予防および治療の方法は、対象への医薬組成物の治療有効量の投与を含む。特定の実施形態では、B型肝炎を予防または治療する方法が提供される。本発明の他の態様では、ボツリヌス中毒、またはBoNTへの曝露と関連する症状の発生を阻止する方法がさらに提供される。炭疽を予防または治療する方法も、開示される。本明細書で用いるように、疾患または障害を「予防する」ことは、免疫原と関連する特定の疾患もしくは障害、またはその症状の発生から対象を防御するための、再調製液体ワクチンなどの本発明の医薬組成物の治療有効量の対象への投与を意味する。一部の実施形態では、本発明のワクチン組成物は、疾患またはその症状、特にB型肝炎、ボツリヌス中毒または炭疽を起こす危険があるヒトなどの対象に投与される。BoNTへの曝露と関連する症状(例えば、視朦、嚥下障害、呼吸麻痺、筋骨格麻痺、心停止または呼吸停止など)の発生を予防する方法も、開示される。炭疽または炭疽菌への曝露と関連する症状(例えば、高熱、胸痛、酸素枯渇、二次ショック、血管透過性の増加、全身出血病状、心停止または呼吸停止など)の発生を予防する方法も、本発明にさらに包含される。ブドウ球菌エンテロトキシンへの曝露、特に吸入性曝露と関連する症状の発生を予防する方法、および、この作用剤に曝露した対象を治療する方法も開示される。対象でペストまたはペスト菌への曝露と関連する症状の発生を予防する方法、ならびに、ペストを有するかペスト菌に曝露した対象を治療する方法も、さらに本発明で想定される。それらに限定されないがBoNT、炭疽菌、ペスト菌およびブドウ球菌エンテロトキシンを含む潜在的なバイオテロリスト剤を目的とする本発明のワクチンは、例えば、多価ワクチンとして調製することができ、あるいは、バイオテロリスト事象またはバイオテロリスト事象の脅威に応じて第一対応者および軍人に、もしくは一般集団にさえ予防的に投与することができる。
【0058】
「疾患または障害を治療する」とは、疾患に罹患したか、または、疾患を引き起こす病原体に曝露した対象に対する本発明の医薬組成物の治療有効量の投与を意味し、その目的は、その疾患の状態または症状を治療、治癒、軽減、緩和、変更、矯正、改善、向上させるかまたはそれに影響を及ぼすことである。
【0059】
「治療有効量」は、所与の状態に対する治療効果および投与計画を提供する量を指す。本発明の特定の態様では、「治療有効量」は、対象に投与された場合に、ある疾患に対する対象の予防または治療に関して正の治療応答をもたらす、本発明の医薬組成物の量を指す。疾患を予防することに関する正の治療応答には、例えば、免疫応答を引き出すこと(例えば、対象による、疾患の発生または進行から防御するのに十分な量の抗体の生産)が含まれる。同様に、疾患を治療することに関する正の治療応答には、疾患の症状の治療または改善が含まれる。
【0060】
治療有効量は、患者の特徴(年齢、体重、性別、状態、合併症、他の疾患など)に基づいて、通常技術の医療従事者が判定することができる。さらに、さらなる日々の研究が実施されるにつれて、様々な患者の様々な状態の治療に適当な投薬量レベルに関してより具体的な情報が現れ、通常技術の従事者は、レシピエントの治療状況、年齢および健康状態を考慮することにより、適切用量を確認することができる。治療有効量は、医薬組成物の投与経路によってさらに影響される。一般に、静脈内の注射または注入、特に皮内投与については、治療有効量は、腹腔内、筋肉内、鼻腔内または他の投与経路に必要とされる量よりも低くてよい。投薬スケジュールは、循環半減期および用いる製剤によって変更することができる。投与が必要な医薬組成物の正確な量は、診療医の判断によって決まり、各個人に特有である。
【0061】
本発明のワクチンは、投薬製剤と適合する方法で、および治療的に有効で免疫原性である量(すなわち、所望の抗体誘導量または防御的な量)で投与される。投与される量は、治療する対象、対象の免疫系の抗体を合成する能力、および所望の防御の程度に依存する。投与が必要な免疫原の正確な量は、診療医の判断によって決まり、各個人に特有である。タンパク質ワクチンでは、各ワクチン用量中のタンパク質の量は、一般的なワクチンのかなり大きな有害副作用を起こさずに免疫防御応答を誘導する量となるように選択される。そのような量は、どの特定の免疫原が使用されてそれがどのように提示されるかによって異なる。特定のワクチンのための成分の最適量は、対象における適当な免疫応答の観察を含む標準の研究によって確認することができる。最初のワクチン接種の後、対象は、適切な間隔をあけた1つまたはいくつかのブースター免疫感作を受けることができる。
【0062】
本発明の医薬組成物は、当技術分野で公知である様々な方法によって、対象に投与することができる。対象に組成物を投与するための任意の方法を、本発明の実施で用いることができる。可能な投与経路の例には、肺吸入、非経口投与(例えば、静脈内(IV)、筋肉内(IM)、皮内(ID)、腹腔内(IP)、皮下(SC)注射または注入)、経口、鼻腔内、経皮(局所)、経粘膜および直腸投与が含まれる。先に述べたように、ミョウバン吸着ワクチンを含む医薬組成物は、安定粉末として(例えば、肺吸入、鼻腔内送達もしくは経皮注射によって)、または、再調製された粉末ワクチン製剤として(例えば、皮内、筋肉内もしくは静脈内の注射によって)投与することができる。詳細には、ミョウバン吸着ワクチンの安定粉末製剤を含む医薬組成物は、例えば鼻腔内送達、肺吸入または経皮注射によって、粉末の形で対象に投与するのに適し得る。あるいは、再調製された液体ワクチンは、例えば、皮内、静脈内、筋内、皮下、腹腔内または鼻腔内に投与することができる。本発明のある実施形態では、ワクチンは最低限に侵襲性の方法、例えば顕微針を通しての皮内注射または鼻腔内吸入によって投与される。本明細書で用いるように、「顕微針」には、一般的に、30ゲージ以下の針、特に34ゲージの針が含まれる。そのような最低限に侵襲性のワクチン投与方法は、非医療関係者による一般集団への広範囲にわたるワクチン投与を可能にし、そのことは、BoNT、炭疽菌、ペスト菌またはブドウ球菌エンテロトキシン(例えば、rSEB)などの生物兵器によるバイオテロリスト攻撃の事件または脅威において特に有利となる。
【0063】
本発明の予防および治療の方法は、特定の対象に限定されるものではない。様々な対象、特に哺乳動物が企図される。対象とする対象には、それらに限定されないが、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ウシおよび齧歯動物が含まれる。特定の実施形態では、対象はヒトであり、より詳細には、特定の抗原と関連する疾患を起こす危険があるヒトの患者である。
【0064】
本発明に従って、当技術分野の範囲内の従来の分子生物学、微生物学および組換えDNA技術を使用することができる。そのような手法は、文献に詳しく説明されている。(例えば、非特許文献30〜39を参照)。
【0065】
本明細書で冠詞「a」および「an」は、1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)の冠詞の文法上の目的を指すために用いられる。例として、「要素」は、1つまたは複数の要素を意味する。
【0066】
明細書全体を通して、単語「含んでいる」または変形形態の「含む」もしくは「含んでいる」などは、明示された要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群が含まれることを意味するが、いかなる他の要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群の除外を意味するものではないと理解される。
【0067】
以下の実施例は例示のために提供され、限定するものではない。
実験
【実施例1】
【0068】
ミョウバン吸着B型肝炎ワクチンの粉末製剤の調製
噴霧フリーズ・ドライ法(SFD)
Shanvac−B B型肝炎ワクチン(Shanvac−B、Shantha Biotechnics、Hyderabad、India)の粉末製剤を、基本的に、炭素菌(rPA)炭疽ワクチンの組換え防御抗原について非特許文献21に記載されているように、SFDによって生成した。Shanvac−Bワクチンは、水酸化アルミニウムアジュバントに吸着されている組換えHBsAgを含む。簡潔には、Shanvac−Bワクチンおよびデキストラン/トレハロースもしくはマンニトール/トレハロースを含む液体製剤を調製して、5ml注射器に付けたBD Accuspray(登録商標)ノズルを用いて噴霧した。5mlの一定量を、液体窒素を含む金属製受け皿内に噴霧し、該受け皿を、−40℃に前冷却した棚凍結乾燥器に移した。液体窒素を完全に蒸発させ、次に、下の表1に記載のように粉末を乾燥させた。
【0069】
【表1】

【0070】
粉末ワクチン試料を凍結乾燥器から取り出し、乾燥グローブボックス[5%相対湿度(「RH」)]に入れ、次にガラス容器に移して密封した。
【0071】
大気圧噴霧フリーズ・ドライ(ASFD)
Shanvac−B B型肝炎ワクチン(Shanvac−B、Shantha Biotechnics、Hyderabad、India)の粉末製剤を、基本的に特許文献1に記載のように、ASFDによって生成した。具体的には、Shanvac−B B型肝炎ワクチンおよびマンニトール/トレハロースを含む液体製剤を調製した。注射器にこの製剤を充填し、超音波ノズル(Sono−Tekモデル8700−25;4.5ワットおよび6ml/分の液体流速で操作)を用いて液体窒素を詰めたASFDチャンバーに噴霧した。噴霧が完了したとき、チャンバーの底に乾燥窒素気体流を15L/分の速度で流し始めた。液体窒素の全てが蒸発するまで、乾燥窒素気体流を継続した。次に、乾燥前に粉末を−30℃でアニールする(anneal)ために、2.5時間の間注入気体流量を100L/分に増加した。次に、−14℃の所望の乾燥温度を達成するために、気体流量を38L/分に低下させた。測定したRHパーセントが1%未満に低下したとき、冷却機を切り、気体流量を38L/分に維持した。チャンバーが20℃まで徐々に温まるまで放置し、その時点で、気体流を遮断して粉末を収集した。粉末収率(重量測定による判定)は、87.7%であった。
【実施例2】
【0072】
SFD B型肝炎ワクチンの分析
安定性分析
実施例1で上記したように調製されたSFD Shanvac−B B型肝炎ワクチンおよび液体Shanvac−Bワクチンの元の液体製剤を、様々な条件下で粒子凝集について分析した。具体的には、各ワクチン製剤(液体または粉末)を4℃(液体Shanvac−Bワクチンの製造業者の推奨温度)で保存するか、55℃で保存するか、または、−20℃で凍結融解させた後に55℃で保存した。次に、B型肝炎ワクチンのSFD粉末製剤を水で再調製して、それをさらなる分析にかけた。詳細には、様々な保存条件の後のワクチン製剤の安定性を、下記のように、沈降アッセイおよびAUSYMEアッセイを用いて評価した。
【0073】
沈降アッセイ
約250μlの試料をガラス毛細管に吸い上げ、CRITOSEALで密封し、立てたまま室温(24℃)で放置した。濁った沈殿分画の高さおよび液体の全高を、毛細管を立ててからの以下の時点で測定、記録した:0分、10分、20分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間および5時間。実験の正確度および再現性を確保するために、試料条件につき計3回分を反復実施した。
沈降速度は、以下の通りに計算した:
沈降率={(液体全高−記録した沈殿高)/液体全高)}×100
【0074】
沈降アッセイで得られた結果を、図1〜3に示す。マンニトール/トレハロースまたはデキストラン/トレハロースによるSFD処理と4℃および55℃での1カ月の保存後、試料で沈降速度の有意な増加(すなわち、沈降曲線の左へのシフト)は観察されなかった(図1および2)。おそらく粘度の上昇のために、沈降速度はデキストランの添加によって低下した(図1)。さらに、マンニトール/トレハロースを有するSFD製剤は、凍結融解および55℃で14日間の保存の後、凝集の証拠を示さなかった(図3)。
【0075】
SFDワクチン製剤と対照的に、ワクチンの元の液体製剤は、凍結融解および55℃で14日間の保存の後により速い沈降速度を示し、そのことは粒子凝集と合致している(図3)。したがって、SFD処理は、アルミニウムアジュバントを含有するHBsAgワクチンを、粒子凝集から保護するようである。
【0076】
図1〜3で提示する沈降データの概要を、下の表2〜7で提供する。
【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
【表5】

【0081】
【表6】

【0082】
【表7】

【0083】
AUSZYMEアッセイ
各試料のHBsAg濃度([HBsAg])を、製造業者の説明書に従ってAUSZYMEアッセイ(Abbott Laboratories、Abbott Park、Illinois)によって定量した。簡潔には、各試料を、10ng/mlの[HBsAg]まで水で1/2000に希釈し、その後、提供されたマルチウェルプレートのウェルに2反復で加えた。標準曲線は、Shanvac−Bワクチンを20ng/mlから0.625ng/mlまでの2倍希釈で希釈することによって構築した。モノクローナル複合体(monoclonal conjugate)を各ウェルに加え、その後、抗HBsAgモノクローナル被覆ビーズ(monoclonal coated bead)を加えた。37℃で75分間のインキュベーションの後、ビーズを含む各ウェルを5mlの水で3回洗浄した。次にOPD基質(o−フェニレンジアミン・2HCl)を各ビーズに加えて、室温で30分間インキュベートした。反応を1N H2SO4で停止させ、プレート読取機により上清の吸光度をOD492で読み取った。SFD加工ワクチンおよび元の液体ワクチンの試料中の[HBsAg]は、標準曲線との比較によって判定した。
【0084】
AUSYMEアッセイの結果を、下の表8で要約する。
【0085】
【表8】

【0086】
AUSZYMEアッセイの結果は、液体Shanvac−Bワクチンは4℃で安定であるが、55℃で14日後に[HBsAg]の低下を示し、28日目には抗原濃度がさらに低下することを示した。対照的に、マンニトール/トレハロース賦形剤を含むSFD処理Shanvac−Bワクチンは、4℃および55℃で28日間保存した場合、ほぼ同じ[HBsAg]を保持した。SFDデキストラン/トレハロース製剤は、55℃で28日間の保存の後、[HBsAg]の低下を示した。しかし、この低下は、同じ保存条件下の液体ワクチンの低下よりも小さかった。凍結融解サイクルおよびその後の55℃で28日間の保存にさらした場合、液体および粉末の製剤は[HBsAg]を保持した。沈降アッセイによる測定で液体製剤がこの保存条件で凝集を起こしたこと、および、液体ワクチンの[HBsAg]が55℃で28日間の保存後著しく低下したことを考えると、この結果は驚くべきことである。
【0087】
免疫原性研究
SFD B型肝炎ワクチン製剤がそれらの免疫原性を保持したかどうかを評価するために、マウスを様々な製剤の液体または再調製されたSFD Shanvac−Bワクチンで免疫感作した。下記で詳述するように、免疫応答は、血清HBsAg特異抗体の応答を定量することによって測定した。具体的には、0日目および28日目に、以下のワクチン製剤の1つの0.4または2マイクログラム用量による筋肉内注射により雌のBalb/cマウス(1群10匹)を免疫感作した。
1.Shanvac−Bワクチン(液体)
2.Shanvac−Bワクチン+デキストラン/トレハロース(液体)
3.Shanvac−Bワクチン+マンニトール/トレハロース(液体)
4.SFD Shanvac−B+デキストラン/トレハロース(再調製)
5.SFD Shanvac−B+マンニトール/トレハロース(再調製)
6.Engerix−Bワクチン(液体)
【0088】
0、28および42日目に、マウスから血を取った。ELISAにより、HBsAgに対する抗体について血清を定量した。PBS/0.05%トゥイーン20/1%脱脂乾燥乳(pH 7.2)中で希釈した血清試料を、事前にリン酸コーティング緩衝液中の0.5μg/ml HBsAgでコーティングした96ウェルMaxisorpプレート(Nalgene NUNC、Rochester、NY)のウェルに加えた。モノクローナル抗HBsAg抗体の既知の濃度を用いて、標準曲線を作成した。室温で1時間のインキュベーションの後、PBS+0.05%トゥイーン20(PBST)でプレートを3回洗浄した。PBST中で1:8000に希釈した抗マウスIgG複合体(Southern Biotechnology Associates社、Birmingham、Alabama)を加え、室温で30分間プレートをインキュベートした。プレートをPBSTで再び3回洗浄した。TMB基質(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン基質)を加え、室温で10分間プレートをインキュベートした。1N H2SO4の添加により反応を停止させ、OD492でプレートを読み取った。
【0089】
免疫原性試験の結果は、図4および下の表9および10で要約する。試験した全ての群で、IgG応答は用量依存的であった。液体ワクチン製剤への賦形剤の添加は、IgG応答に著しく影響を及ぼさなかった。再調製されたワクチン粉末製剤によるマウスの免疫感作は、従来の液体ワクチンによる免疫感作の後に得られるものと類似したレベルの抗体を生成した(図4)。2回目の免疫感作の後、SFD製剤によって生成された抗体レベルは、液体製剤による免疫感作の後に得られたものと有意に異なることはなかった(p>0.05)。これらの結果は、SFD工程がShanvac−B B型肝炎ワクチンの免疫原性に影響を及ぼさないことを証明する。したがって、希釈剤での再調製の際に免疫原性を保持する安定したミョウバン吸着B型肝炎ワクチン粉末製剤を生成するために、SFDを用いることができる。
【0090】
【表9】

【0091】
【表10】

【実施例3】
【0092】
ASFD B型肝炎ワクチンの分析
安定性分析
実施例1で上記したように調製されたASFD Shanvac−B B型肝炎ワクチンおよび液体Shanvac−Bワクチンの元の液体製剤を、様々な条件下で粒子凝集について分析した。具体的には、各ワクチン製剤(液体または粉末)を4℃(液体Shanvac−Bワクチンの製造業者の推奨温度)で保存するか、55℃で保存するか、または、−20℃で凍結融解させた後に55℃で保存した。次に、B型肝炎ワクチンのASFD粉末製剤を水で再調製して、それをさらなる分析にかけた。詳細には、様々な保存条件の後のワクチン製剤の安定性を、上の実施例2に記載のように、沈降アッセイおよびAUSYMEアッセイを用いて評価した。
【0093】
沈降アッセイ
沈降アッセイは、液体Shanvac−Bワクチンおよび再調製したASFD Shanvac−Bワクチン製剤を用いて、実施例2に記載されているように実施した。沈降アッセイで得られた結果を、図5〜7に示す。4℃で1カ月間の保存後、沈降速度の変化は液体製剤でもASFD製剤でも観察されなかった(図5)。55℃での保存後、凝集から生じる沈降速度の増加(すなわち、沈降曲線の左へのシフト)は、液体製剤でもASFD製剤でも観察されなかった(図6)。実際、ASFD製剤で得られた沈降曲線は右へのシフトを示し、55℃での保存後のより遅い沈降速度が示唆された。凍結融解および55℃で14日間の保存の後、液体製剤はかなり速い沈降速度を示した(図7)。製剤中の凝集物は、明らかに目で確認することができた。しかし、沈降速度の変化がなかったことが示すように、同じ凍結融解および保存条件下のASFD処理ワクチンでは、凝集は観察されなかった。さらに、光学顕微鏡検査による粒子の視覚的分析は、ASFDワクチンが、小さな、非凝集水酸化アルミニウム粒子構造を保持することを示した。したがって、ASFD処理は、ミョウバン吸着HBsAgワクチンを、粒子凝集から保護するようである。
【0094】
図5および図6で提示する沈降データの概要を、下の表11〜15で提供する。
【0095】
【表11】

【0096】
【表12】

【0097】
【表13】

【0098】
【表14】

【0099】
【表15】

【0100】
AUSZYMEアッセイ
AUSZYMEアッセイは、液体Shanvac−Bワクチンおよび再調製したASFD Shanvac−Bワクチン製剤を用いて、実施例2に記載されているように実施した。AUSYMEアッセイでは、HBsAgの濃度をELISAに基づく方法で測定する。このアッセイは、HBsAgに対する抗体を、標準参照曲線との比較によるHBsAgの濃度の判定のために、抗原を捕捉する手段として用いる。このアッセイでHBsAgに結合することができる抗体の能力は、それを、免疫原濃度およびHBsAgの抗原性の測定に適するものにする。本明細書の上記で記載するように、「抗原性」は、タンパク質(すなわち、免疫原)を認識して結合する抗体の能力と定義される。他方、「免疫原性」は、in vivoで(例えば、ヒトまたはヒト以外の対象で)免疫応答を引き起こす、タンパク質(すなわち、免疫原)の能力を指す。AUSZYMEアッセイの結果を、下の表16に示す。
【0101】
【表16】

【0102】
AUSZYMEアッセイの結果は、4℃で28日間保存した場合、液体およびASFDのShanvac−Bワクチン製剤はそれらの元のHBsAg濃度([HBsAg])を保持していたことを証明する。しかし、液体Shanvacワクチンを55℃で保存した場合、[HBsAg]は7日後に低下し始め、その後、14および28日間の保存の後にかなり大きく低下した。対照的に、ASFD処理ワクチンで観察された[HBsAg]は、55℃で28日間保存した場合でも低下しなかった。したがって、ASFD処理は、高温での保存から生じる[HBsAg]の低下を阻止した。
【0103】
上のSFD処理ワクチン製剤の分析で記載したように、ASFDと液体のShanvac−B製剤の両方は、凍結融解した後に55℃で14日間保存した場合でも[HBsAg]の低下を示さなかった。沈降アッセイによる測定で液体製剤がこの保存条件で凝集を示したこと、および、液体ワクチンの[HBsAg]が55℃で28日間の保存後著しく低下したことを考えると、このことは驚くべきことである。凍結融解サイクルの間に液体製剤中で凝集物が形成され、それによってHBsAgを封入して、以降の55℃での保存の間の分解に対してそれを保護するのを助けると推測される。
【0104】
免疫原性試験
ASFD B型肝炎ワクチン製剤が免疫原性を保持したかどうかを評価するために、マウスを様々な製剤の液体または再調製されたASFDもしくはSFDのShanvac−Bワクチンで免疫感作した。上の実施例2で詳述するように、免疫応答は、血清HBsAg特異抗体の応答を定量することによって測定した。具体的には、0日目および28日目に、以下のワクチン製剤の1つの2マイクログラム用量による筋肉内注射により、雌のBalb/cマウス(1群10匹)を免疫感作した。
1.Shanvac−Bワクチン(液体)
2.Shanvac−Bワクチン+マンニトール/トレハロース(液体)
3.ASFD Shanvac−B+マンニトール/トレハロース(再調製)
4.SFD Shanvac−B+マンニトール/トレハロース(再調製)
【0105】
ASFDワクチンの免疫原性試験の結果は、図8および下の表17および18で要約する。再調製されたASFDワクチン粉末製剤によるマウスの免疫感作は、従来の液体ワクチンによる免疫感作の後に得られるものと類似したレベルの抗体生成をもたらした(図8)。2回目の免疫感作の後、ASFD製剤によって生成された抗体レベルは、液体製剤またはSFD製剤による免疫感作の後に得られたものと有意に異なることはなかった(p>0.05)。これらの結果は、ASFD工程がShanvac−Bワクチンの免疫原性に負の影響を及ぼさないことを証明する。
【0106】
【表17】

【0107】
【表18】

【実施例4】
【0108】
SFD BoNT/Aミョウバン吸着ワクチンの分析
SFD BoNT/Aミョウバン吸着ワクチンの調製
組換えBoNT/A HC免疫原(提供元United States Army Medical Research Institute of Infectious Disease;Fort Detrick、MD)を、筋肉内注射(IM)もしくは皮内(ID)注射のためにアルミニウムヒドロゲル上(すなわち、水酸化アルミニウム)に、または、鼻腔内(IN)送達のためにリポポリサッカライド(LPS)上に吸着させた。本明細書で記載される方法に従って、BoNT/Aワクチンを従来の液体ワクチンとして、または、SFDにより乾燥粉末ワクチン製剤として製剤化した。一般的には、実施例1を参照。SFD BoNT/Aワクチン粉末製剤は、対象に投与する直前に水で再調製した。
【0109】
BoNT/Aによる免疫感作および誘発
液体のおよび再調製された粉末BoNT/Aワクチン製剤の分析のために、6〜8週齢の雌CD−1/ICRマウス(Charles River社)を使用した。具体的には、0日目および28日目に試験群につき10匹のマウスに、液体のまたは再調製されたBoNT粉末ワクチン製剤を50μl(片側ずつ25μl)の量でIM注射または顕微針に基づくID注射として投与し、あるいは、30μlの製剤(鼻孔につき15μl)のIN投与によって投与した。陰性対照として、マウスの特定の群をワクチン未接種のままにするか、または、IMもしくはIN投与により、アジュバントだけを含む液体製剤を投与した。当技術分野で標準の技術に従って、血液を0、14、28および42日目に収集した。49日目に全てのマウスに致死用量のBoNT/A(マウスのBoNT/AのLD50値の100,000倍)を用いて誘発し、その後、さらなる5日間観察した。様々な試験群のマウスの生存率を54日目に評価し、それを下の表19に示す。
【0110】
【表19】

【0111】
再調製されたSFD BoNT/A粉末ワクチンによるIMおよびID免疫感作は、液体BoNT/Aワクチン製剤で観察されたものに類似した生存率(最高約100%)をもたらした。再調製されたSFDまたは液体のBoNT/AワクチンのIN送達は、同じBoNT/AワクチンによるIMまたはID免疫感作で観察されたものより低いが、類似した生存率(最高約50%)をもたらした。
【0112】
抗体血清力価分析および統計分析
様々な試験群の対象からの血液血清試料を、標準のELISA技術によってBoNT/A特異IgG力価について分析した。結果を図9および10に要約する。BoNT/Aによる致死性誘発で観察された血清抗体力価および生存率の統計分析を、ANOVAおよび受信者動作特性曲線「Receiver Operating Characteristic(ROC)曲線」解析によって実施した。BoNT/Aによる致死性誘発から対象が97%の生存率を有する抗体力価800は、図9Cおよび10Cにおいて点線で示す。
【0113】
再調製されたSFD BoNT/A粉末ワクチンによるIMおよびID免疫感作は強力な抗体応答を引き起こし、平均血清BoNT/A抗体レベルは、液体BoNT/Aワクチン製剤で観察されたものに類似していた。再調製されたSFDまたは液体のBoNT/AワクチンのIN送達は、同じBoNT/Aワクチン製剤によるIMまたはID免疫感作で観察されたものよりも低い抗体応答を起こした。
【実施例5】
【0114】
SFDおよびASFDの炭疽菌rPAミョウバン吸着ワクチンの分析
SFDおよびASFDの炭疽菌rPAミョウバン吸着ワクチンの調製
炭疽菌rPAワクチンの乾燥粉末製剤を、下記のように、SFDまたはASFD(液体または気体の窒素による処理)によって調製し、マウスの免疫感作の前に、薬学上許容される担体中で再調製した。次に、以下に詳細に概説するように、再調製されたSFDおよびASFDの炭疽菌rPAワクチンの効能を、免疫感作動物の血清中の炭疽致死毒素中和抗体力価を定量することによって評価した。
【0115】
噴霧フリーズ・ドライ(SFD)
炭疽菌rPAワクチンの粉末製剤は、基本的に、上の実施例1および非特許文献21に記載のようにSFDによって作製した。簡潔には、炭疽菌rPA、Alhydrogel(登録商標)、Tween(登録商標)80およびマンニトール/トレハロースを含む液体製剤を調製し、5ml注射器に付けたBD Accuspray(登録商標)ノズルを用いて噴霧した。5mlの一定量を、液体窒素を含む金属製受け皿内に噴霧し、該受け皿を、−40℃に前冷却した棚凍結乾燥器に移した。液体窒素を完全に蒸発させ、次に、上の表1に記載のように粉末を乾燥させた。
【0116】
粉末ワクチン試料を凍結乾燥器から取り出し、乾燥グローブボックス[5%相対湿度(「RH」)]に入れ、次にガラス容器に移して密封した。最終SFDワクチン粉末は、0.5%の炭疽菌rPAおよび1%のアルミニウムを含有した。
【0117】
大気圧噴霧フリーズ・ドライ(ASFD)−液体窒素(LN2)処理
炭疽菌rPAワクチンの粉末製剤を、基本的に特許文献1に記載のように、ASFDによって生成した。具体的には、炭疽菌rPA、Alhydrogel(登録商標)、Tween(登録商標)80およびマンニトール/トレハロースを含む液体製剤を調製した。注射器にこの製剤を注入し、5ml注射器に付けたBD Accuspray(登録商標)ノズルを用いて、液体窒素を充填したASFDチャンバー内に噴霧した。噴霧が完了したとき、チャンバーの底に乾燥窒素気体流を40L/分の速度で流し始めた。液体窒素の全てが蒸発するまで、乾燥窒素気体流を流し続けた。次に、−35℃の出口気体温度を得るために、注入口気流温度を上昇させ、乾燥前に1時間、粉末をアニールするために、気体流速を140L/分に設定した。次に、出口で−20℃の所望の一次乾燥温度を得るために、気体流量を60L/分に低下させて暖めた。24時間後、測定したRHパーセントが0.015%未満に低下したとき、0℃の出口温度を得て二次乾燥を始めるために気体温度を再び上げ、気体流量を60L/分に保った。7時間後、測定したRHパーセントが0.015%未満に低下したとき、23℃の出口温度を得るために注入口気体を暖め、その時点で気体流を遮断して粉末を収集した。最終ASFDワクチン粉末は、0.5%の炭疽菌rPAおよび1%のアルミニウムを含有した。
【0118】
大気圧噴霧フリーズ・ドライ(ASFD)−気体窒素(GN2)処理
炭疽菌rPAワクチンの粉末製剤を、基本的に特許文献1に記載のように、ASFDによって生成した。具体的には、炭疽菌rPA、Alhydrogel(登録商標)、Tween(登録商標)80およびマンニトール/トレハロースを含む液体製剤を調製した。注射器にこの製剤を注入し、Sono−Tek社モデル8700−25超音波ノズルを用いて、流速40L/分の気体窒素を用いて、−80℃に前冷却したASFDチャンバー内に噴霧した。噴霧の完了後、−35℃の出口気体温度を得るために注入口気体流温度を上昇させ、乾燥前に1時間、粉末をアニールするために、気体流速を140L/分に設定した。次に、出口で−20℃の所望の一次乾燥温度を得るために、気体流量を60L/分に低下させて暖めた。24時間後、測定したRHパーセントが0.015%未満に低下したとき、0℃の出口温度を得て二次乾燥を始めるために気体温度を再び上げ、気体流量を60L/分に保った。3時間後、測定したRHパーセントが0.015%未満に低下したとき、23℃の出口温度を得るために注入口気体を暖め、その時点で気体流を遮断して粉末を収集した。最終ASFDワクチン粉末は、0.5%の炭疽菌rPAおよび1%のアルミニウムを含有した。
【0119】
免疫感作
マウスを、様々な製剤の液体または再調製されたSFDもしくはASFDの炭疽菌rPAワクチンで免疫感作した。各試験群のマウスを、表20または表21に記載されているワクチン製剤の1つによる筋肉内注射によって、0日目および28日目に免疫感作した。マウスは、0日目(採血番号1または「前採血」)、14日目(採血番号2または「b2」)、28日目(採血番号3または「b3」)および42日目(採血番号4または「b4」)に血を採取した。次に、下記に記載される炭疽致死毒素中和アッセイを用いて、血清試料を分析した。
【0120】
【表20】

【0121】
【表21】

【0122】
炭疽致死毒素中和アッセイ
様々な試験群からのマウスの血清中の炭疽致死毒素中和抗体力価を、判定した。炭疽致死毒素中和アッセイは、当技術分野において公知である。例えば、非特許文献40および41を参照。本実施例では、血清試料の希釈溶液を、炭疽菌rPAおよび炭疽毒素致死因子と混合した。混合液をインキュベートして、細胞単層に加えた。次に、炭疽毒素と血清との混合液を細胞とともにインキュベートした。炭疽毒素と血清との混合液の存在下での細胞生存能力を、細胞の染色および光学濃度の測定によって評価した。中和抗体力価は、炭疽毒素が中和された、血清の最も高い希釈を表していた。
【0123】
結果
セット1および2の炭疽菌rPAワクチン製剤で得られた炭疽致死毒素中和アッセイからの結果(上の表20および21を参照)を、それぞれ図11および12に示す。図11に示すデータは、Accuspray(登録商標)ノズルで生成されたSFD粉末(セット1、群4)が、未処理の液体ワクチン(群1;セット1)で得られたレベルと同等のレベルの毒素中和抗体を誘導する能力を保持することを証明する。さらに図12に示すデータは、Accuspray(登録商標)ノズルで生成されたSFD粉末(セット2、群4)、およびGN2工程により生成されたASFD粉末(セット2、群5)の両方が、未処理の液体ワクチンで得られたレベルと同等のレベルの毒素中和抗体を誘導する能力を保持することを証明する。
【実施例6】
【0124】
SFDペスト菌ミョウバン吸着ワクチン製剤の分析
SFDペスト菌F1−Vミョウバン吸着ワクチン製剤の調製
F1−Vタンパク質は、National Institutes of Allergy and Infectious Diseasesによって提供され、それを、様々な賦形剤およびアジュバントで液体懸濁液(すなわち、SFD処理なしで)として、または、基本的に本明細書の上の実施例1に記載のように、SFD処理により乾燥粉末として製剤化した。20mMトリス、50mM MgCl2および2%Tween(登録商標)80を含有する緩衝液で、4.5mlのF1−V溶液を調製するために、圧ダイアフィルトレーションを用いた(pH7.4)。この緩衝液中のF1−Vの濃度は、0.609mg/mlであった。
【0125】
SFD工程の前にF1−V免疫原をAlhydrogel(登録商標)上に吸着させ、下記のように、ペスト菌ミョウバン吸着ワクチンの製剤を調製した。SFDワクチン粉末製剤を、マウスの免疫感作の前に注射用水で再調製した。
【0126】
群1:2mlバイアル内で、均一な懸濁液が形成されるまで、0.133mlのF1−Vタンパク質(1.5mg/mlの濃度)、0.1mlのAlhydrogel(登録商標)および0.767mlの緩衝液(すなわち、10mM NaCl、20mMアルギニンおよび1mMシスチン、pH9.9)を混合した。
【0127】
群2および3:10mlバイアル内で、均一な懸濁液が形成されるまで、114.2mgのマンニトール、12.6mgのトレハロース、0.466mlのF1−V、0.35mlのAlhydrogel(登録商標)および2.685mlの緩衝液(すなわち、10mM NaCl、20mMアルギニンおよび1mMシスチン、pH9.9)を混合した。1.0mlの一定量を取り出し、そのまま液体状態で用いた(すなわち、群2)。懸濁液の残りは、1mlの注射器に付けたAccuspray(登録商標)ノズルを用いて、液体窒素中に噴霧した。この凍結試料を、−45℃に前冷却した棚凍結乾燥器に入れ、真空下で乾燥させた(すなわち、群3)。
【0128】
群4:2mlバイアル内で、均一な懸濁液が形成されるまで、0.284mlの緩衝液交換F1−V(0.703mg/mlの濃度)、0.1mlのAlhydrogel(登録商標)および0.616mlの緩衝液(すなわち、10mM NaCl、20mMアルギニン、1mMシスチン、pH9.9)を混合した。
【0129】
群5および6:10mlバイアル内で、均一な懸濁液が形成されるまで、125.8mgのマンニトール、13.9mgのトレハロース、0.994mlのF1−V、0.35mlのAlhydrogel(登録商標)および2.156mlの緩衝液(10mM NaCl、20mMアルギニン、1mMシスチン、pH9.9)を混合した。1.0mlの一定量を取り出し、そのまま液体状態で用いた(すなわち、群5)。懸濁液の残りは、1mlの注射器に付けたAccuspray(登録商標)ノズルを用いて、液体窒素中に噴霧した。この凍結試料を、−45℃に前冷却した棚凍結乾燥器に入れ、真空下で乾燥させた(すなわち、群6)。
【0130】
【表22】

【0131】
免疫感作
6〜8週齢の雌のSwiss Websterマウスを収容し、ペスト菌の致死性誘引の前に上記のワクチン製剤で免疫感作した。各試験群につき、10匹のマウスを用いた。各マウスは、0および28日目に、F1−V用量3.3μgまたは10μgで、指定されたワクチン製剤の50μl(1部位につき25μl)の筋内注射により免疫感作した。抗体力価を調査するために、血液を0、14、28および42日目に収集した。
【0132】
結果
群1〜6のペスト菌F1−Vワクチン製剤で得られた結果を、図13に示す。この図に示すデータは、再調製されたSFD F1−V粉末ワクチンが、液体ワクチン懸濁液による免疫感作の後に得られたものと類似したレベルの抗体産生をもたらすことを証明する。
【実施例7】
【0133】
SFD多価ミョウバン吸着ワクチン製剤の分析
SFD多価ミョウバン吸着ワクチン製剤の調製
単一の製剤中に4つの抗原(すなわち、rPA、rSEB、BoNT/AおよびF1−V)を含む、多価ワクチンを調製した。詳細には、緩衝液/賦形剤を20mMトリス、50mM MgCl2および2%Tween(登録商標)80(pH7.4)に交換するために、F1−V溶液(pH9.0)を先ず圧ダイアフィルトレーションで処理した。対象とする他の3つの抗原(すなわち、rPA、BoNT/AおよびrSEB)の溶液をこの溶液に加えて、多価溶液を作製した。マンニトールおよびトレハロース賦形剤とともに、Alhydrogel(登録商標)をこの多価溶液に加えて、ミョウバン吸着液体懸濁液を生成し、次に、基本的に実施例1に記載のように、懸濁液を噴霧フリーズ・ドライさせて乾燥粉末を生成した。生じたSFD粉末は、使用時に注射用水で再調製した。
【0134】
各抗原の初期濃度および最終濃度を、下記に記載する:
【0135】
初期抗原濃度(ベンダーからの受領時):
rPA:2.5mg/mL rPA
rSEB:3.4mg/mL
BoNT/A:0.18mg/mL
F1−V:600μg/mL
【0136】
最終抗原濃度(投与された液体および再調製されたSFDワクチン粉末製剤中の):
rPA:200μg/mL
rSEB:400μg/mL
BoNT/A:20μg/mL
F1−V:200μg/mL
【0137】
免疫感作
雌のBALB/cマウスを、液体または再調製されたSFD多価ワクチン製剤で免疫感作した。液体一価ワクチン製剤(すなわち、rPA、rSEB、BoNT/AまたはF1−V抗原の1つだけを含む)を、対照として用いた。各試験群で10匹のマウスを用い、各マウスは、0および28日目に、指定されたワクチン製剤の50μl(1部位につき25μl)の筋内(IM)または皮内(ID)注射により免疫感作した。試験群の詳細を、下の表23に要約する。前採血試料を、未実験でワクチン未接種のマウスから収集した。全ての試験群から14、28および42日目に採血し、各抗原(すなわち、rPA、rSEB、BoNT−AおよびF1−V)の抗体力価を判定するために、血清試料を標準のELISA方法によって分析した。
【0138】
【表23】

【0139】
結果
14、28および42日目に群1〜9の様々なワクチン製剤で免疫感作されたマウスからプールされた血清試料で得られた抗体力価の結果を、それぞれ下の表24〜26に示す。rPA、BoNT/A、rSEBおよびF1−V抗原を含む液体または再調製されたSFD多価ワクチン製剤で免疫感作したマウス(すなわち、試験群1、2、8および9)は、4つの抗原全てに対して免疫応答を起こした。多価ワクチン製剤で免疫感作したマウスで各抗原について測定した抗体力価は、一価の対照ワクチン製剤で免疫感作したマウス(すなわち、試験群3〜6)で各抗原について測定した抗体力価に類似し、多価ワクチンでの4つの抗原の組合せは各抗原の免疫原性に悪影響を与えないことが示された。さらに、再調製されたSFD多価ワクチンで免疫感作したマウス(すなわち、試験群2)は、対応する液体多価ワクチンで免疫感作したマウス(すなわち、試験群1)で観察されたものと類似したプール血清力価の上昇を示し、SFD工程が様々な抗原の免疫原性を低減させないことが示された。個々の動物の抗体力価を分析した場合にも、類似した抗体力価結果が得られた。図14を参照。
【0140】
IM(すなわち、試験群9)または顕微針によるID投与(すなわち、試験群10)による液体多価ワクチン製剤の送達は類似した抗体力価を生み、本ワクチンが複数の投与方法に適合することが示された。Alhyrdogel(登録商標)の濃度の0.5%から0.25%への低下(すなわち、試験群8および9)も多価ワクチンの免疫原性に影響を及ぼさず、そのことは、多価ワクチンで用いられた水酸化アルミニウムの両濃度(すなわち、5%および0.25%)で得られた類似した抗体力価が証明する。
【0141】
測定した抗体力価が免疫抗原に特異的であることを確認するために、一価ワクチン対照で免疫感作したマウスを、一価ワクチンに存在していなかった抗原に対する抗体についてもスクリーニングした。例えば、BoNT/A一価ワクチンによる免疫感作の後に、rSEB、rPAおよびF1−Vを分析した。一価ワクチンによって生成した抗体力価は、各時点で抗原特異的であることが見出され、特定の一価ワクチンに含まれていなかった他の抗原については、有意な抗体レベルは観察されなかった。さらに、ワクチン未接種の未実験のマウス(群7)からのプールされた群血清は、4つの多価ワクチン抗原全てに対してスクリーニングしたとき、検出可能な抗体力価を生成することができず、本研究のマウスのいずれも既存の免疫を有していなかったことが示され、さらに、免疫感作された群で生成された力価が免疫抗原に特異的であったことが証明された。
【0142】
【表24】

【0143】
【表25】

【0144】
【表26】

【0145】
本明細書中に挙げた全ての刊行物および特許出願は、本発明が関連する技術分野の当業者のレベルを示すものである。全ての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が参照により組み込まれることが具体的におよび個々に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれている。
【0146】
上記発明は理解の明快さの目的のために例示および実施例としてある程度詳細に記載されているが、添付の特許請求の範囲内で、ある変更および修正を加えることができることは明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミョウバン吸着ワクチン粒子の安定粉末製剤を含む医薬組成物であって、ボツリヌス神経毒(BoNT)、炭疽菌抗原、ブドウ球菌エンテロトキシン、ペスト菌抗原およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの免疫原を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
前記BoNTはBoNT/Aであることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記炭疽菌抗原は炭疽菌rPAであることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記ブドウ球菌エンテロトキシン抗原はrSEBであることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ペスト菌免疫原はF1−Vであることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ワクチン粒子は少なくとも80μmから300μmの範囲の平均粒径を有することを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
少なくとも1つのB型肝炎免疫原を含むミョウバン吸着ワクチン粒子の安定粉末製剤を含む医薬組成物であって、前記ワクチン粒子は少なくとも80μmから300μmの範囲の平均粒径を有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項8】
前記平均粒径は80μmから100μmの範囲であることを特徴とする請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記B型肝炎抗原はHBsAgを含むことを特徴とする請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記乾燥粉末粒子は約0.01g/cm3から約0.7g/cm3の範囲の平均タップ密度を有することを特徴とする請求項1または請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記平均タップ密度は約0.01g/cm3から約0.6g/cm3の範囲であることを特徴とする請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記平均タップ密度は約0.02g/cm3から約0.4g/cm3の範囲であることを特徴とする請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
ボツリヌス神経毒(BoNT)、炭疽菌抗原、ブドウ球菌エンテロトキシン、ペスト菌抗原およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの免疫原をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記ミョウバン吸着乾燥ワクチン粉末粒子は、薬学上許容される担体中で再調製されることを特徴とする請求項1または請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記免疫原は、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムまたは硫酸アルミニウムからなる群から選択されるアルミニウムアジュバントに吸着されることを特徴とする請求項1または請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記液体製剤は少なくとも1つの賦形剤をさらに含み、前記少なくとも1つの賦形剤はマンニトール、トレハロース、デキストランまたはそれらの任意の組合せであることを特徴とする請求項1または請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項17】
少なくとも1つの追加のアジュバントをさらに含むことを特徴とする請求項1または請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記再調製された液体ミョウバン吸着ワクチンは、元の液体製剤の免疫原性と比較して実質的なレベルの免疫原性を保持することを特徴とする請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記再調製された液体ミョウバン吸着ワクチンは、液体製剤のそれと比較してほとんどまたは全く凝集を示さないことを特徴とする請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記再調製された液体ミョウバン吸着ワクチンは、液体製剤の免疫原濃度と比較して免疫原濃度の実質的な低下を示さないことを特徴とする請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記再調製された液体ミョウバン吸着ワクチンは、元の液体製剤の抗原性と比較して実質的なレベルの抗原性を保持することを特徴とする請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項22】
ミョウバン吸着ワクチンの安定粉末製剤を調製するための方法であって、
a)アルミニウムアジュバント上に吸着された少なくとも1つのB型肝炎免疫原を含む液体製剤を霧化して、霧化製剤を生成するステップと、
b)霧化製剤を凍結させて凍結粒子を生成するステップと、
c)凍結粒子をおよそ大気圧の下で乾燥させて乾燥粉末粒子を生成するステップであって、前記乾燥粉末粒子は少なくとも80μmから300μmの範囲の平均粒径を有するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
前記乾燥粉末粒子は少なくとも80μmから100μmの範囲の平均粒径を有することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記乾燥ステップは、振動、内部構造物、機械的攪拌またはそれらの組合せの存在下で実施することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記B型肝炎抗原はHBsAgを含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記液体製剤は、BoNT、炭疽菌抗原、ブドウ球菌エンテロトキシン抗原、ペスト菌抗原およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの追加の免疫原をさらに含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項27】
ミョウバン吸着ワクチンの安定粉末製剤を調製するための方法であって、
a)アルミニウムアジュバント上に吸着された少なくとも1つの免疫原を含む液体製剤を霧化して霧化製剤を生成するステップであって、霧化製剤を生成するために、前記免疫原は、BoNT、炭疽菌抗原、ブドウ球菌エンテロトキシン抗原、ペスト菌抗原およびそれらの組合せからなる群から選択されるステップと、
b)霧化製剤を凍結させて凍結粒子を生成するステップと、
c)凍結粒子を乾燥させて乾燥粉末粒子を生成するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
前記BoNTはBoNT/Aであることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記炭疽菌抗原は炭疽菌の組換え防御抗原(rPA)であることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記ブドウ球菌エンテロトキシンは組換えブドウ球菌エンテロトキシンB(rSEB)であることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記ペスト菌免疫原はF1−V融合タンパク質(F1−V)であることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記液体製剤は複数の免疫原を含み、前記複数の免疫原は炭疽菌rPA、BoNT/A、rSEBおよびF1−Vを含むことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記液体製剤はHBsAgをさらに含むことを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記乾燥粉末粒子は少なくとも80μmから300μmの範囲の平均粒径を有することを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記液体製剤は少なくとも1つの追加のアジュバントをさらに含むことを特徴とする請求項22または請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記免疫原は、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムまたは硫酸アルミニウムからなる群から選択されるアルミニウムアジュバントに吸着されることを特徴とする請求項22または請求項27に記載の方法。
【請求項37】
前記液体製剤は少なくとも1つの賦形剤をさらに含むことを特徴とする請求項22または請求項27に記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも1つの賦形剤は、マンニトール、トレハロース、デキストランまたはそれらの任意の組合せであることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記液体製剤はマンニトールおよびトレハロースを含むことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記液体製剤はデキストランおよびトレハロースを含むことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記霧化、凍結および乾燥ステップは単一のチャンバー内で実施されることを特徴とする請求項22または請求項27に記載の方法。
【請求項42】
前記凍結ステップは、霧化製剤を、液体製剤の凝固点未満の温度を有する冷媒に導入することによって実施されることを特徴とする請求項22または請求項27に記載の方法。
【請求項43】
前記冷媒は気体であることを特徴とする請求項22または請求項27に記載の方法。
【請求項44】
前記冷媒は液体であることを特徴とする請求項22または請求項27に記載の方法。
【請求項45】
前記乾燥ステップは凍結粒子を気体と接触させることによって実施されることを特徴とする請求項22または請求項27に記載の方法。
【請求項46】
前記乾燥ステップは冷たい乾燥気体中での昇華によって実施されることを特徴とする請求項22または請求項27に記載の方法。
【請求項47】
前記凍結粒子は凍結乾燥によってさらに乾燥されることを特徴とする請求項22または請求項27に記載の方法。
【請求項48】
前記乾燥粒子はフィルター上に収集されることを特徴とする請求項22または請求項27に記載の方法。
【請求項49】
前記凍結粒子は、乾燥ステップの間、流動状態であることを特徴とする請求項22または請求項27に記載の方法。
【請求項50】
請求項7に記載の少なくとも1つの医薬組成物の治療有効量を対象に投与し、それによって対象のB型肝炎を予防することを含むことを特徴とする、対象のB型肝炎を予防する方法。
【請求項51】
請求項7に記載の少なくとも1つの医薬組成物の治療有効量を対象に投与し、それによって対象を治療することを含むことを特徴とする、B型肝炎に感染したかまたは曝露した対象を治療する方法。
【請求項52】
請求項1に記載の少なくとも1つの医薬組成物の治療有効量を対象に投与し、それによって対象のBoNTに関連するボツリヌス中毒または症状の発生を予防することを含むことを特徴とする、対象のBoNT曝露に関連するボツリヌス中毒または症状の発生を予防する方法。
【請求項53】
請求項1に記載の少なくとも1つの医薬組成物の治療有効量を対象に投与し、それによって対象を治療することを含むことを特徴とする、BoNTに曝露した対象を治療する方法。
【請求項54】
請求項1に記載の少なくとも1つの医薬組成物の治療有効量を対象に投与し、それによって対象の炭疽菌曝露に関連する炭疽または症状の発生を予防することを含むことを特徴とする、対象の炭疽菌曝露に関連する炭疽または症状の発生を予防する方法。
【請求項55】
請求項1に記載の少なくとも1つの医薬組成物の治療有効量を対象に投与し、それによって対象を治療することを含むことを特徴とする、炭疽菌に曝露した対象を治療する方法。
【請求項56】
請求項1に記載の少なくとも1つの医薬組成物の治療有効量を対象に投与し、それによって対象のブドウ球菌エンテロトキシン曝露に関連する症状の発生を予防することを含むことを特徴とする、対象のブドウ球菌エンテロトキシン曝露に関連する症状の発生を予防する方法。
【請求項57】
請求項1に記載の少なくとも1つの医薬組成物の治療有効量を対象に投与し、それによって対象を治療することを含むことを特徴とする、ブドウ球菌エンテロトキシンに曝露した対象を治療する方法。
【請求項58】
請求項1に記載の少なくとも1つの医薬組成物の治療有効量を対象に投与し、それによって対象のペスト菌曝露に関連するペストまたは症状の発生を予防することを含むことを特徴とする、対象のペスト菌曝露に関連するペストまたは症状の発生を予防する方法。
【請求項59】
請求項1に記載の少なくとも1つの医薬組成物の治療有効量を対象に投与し、それによって対象を治療することを含むことを特徴とする、ペスト菌に曝露した対象を治療する方法。
【請求項60】
請求項1に記載の少なくとも1つの医薬組成物の治療有効量を対象に投与し、それによって対象の炭疽菌rPA、BoNT/A、F1−VまたはrSEBへの曝露に関連する疾患または症状の発生を予防することを含むことを特徴とする、対象の炭疽菌rPA、BoNT/A、F1−VまたはrSEBへの曝露に関連する疾患または症状の発生を予防する方法。
【請求項61】
請求項1に記載の少なくとも1つの医薬組成物の治療有効量を対象に投与し、それによって対象を治療することを含むことを特徴とする、炭疽菌rPA、BoNT/A、F1−VまたはrSEBに曝露した対象を治療する方法。
【請求項62】
対象はヒト患者であることを特徴とする請求項50から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
請求項1または請求項7に記載のミョウバン吸着ワクチン粒子の安定粉末製剤を、薬学上許容される担体中で再調製することを含むことを特徴とする、再調製された液体ミョウバン吸着ワクチンを生成するための方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9A−1】
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【図9A−2】
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【図9A−3】
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【図9B−1】
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【図9B−2】
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【図9B−3】
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【図9C−1】
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【図9C−2】
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【図9C−3】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【公表番号】特表2010−502747(P2010−502747A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527614(P2009−527614)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/078076
【国際公開番号】WO2008/079464
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】