説明

ムチン糖タンパク質(MUC−1)ワクチンによって患者を処置する方法

【課題】非小細胞肺癌または前立腺癌のような癌に罹っている個体を、その個体にMUC-Iベースのリポソームワクチン製剤を投与することによって処置するための方法、およびムチン糖タンパク質(MUC-1)ベースの製剤による処置に適した癌を有する個体を特定するための方法の提供。
【解決手段】以下を含むBLP25リポソームワクチンを投与する段階を含む、被験体の生活の質を改善するかまたは維持する方法:(a)SEQ ID NO:1または2の配列を含むMUC-1ペプチド;(b)1つまたは複数のアジュバント;および(c)1つまたは複数のさらなるリポソーム脂質。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ムチン糖タンパク質(MUC-1)ベースの製剤による処置に適した癌を有する個体を特定するための方法に関する。そのような癌の例は、非小細胞肺癌および前立腺癌である。いくつかの例では、MUC-1ベースの製剤はBLP25ワクチンである。
【0002】
関連出願の相互参照
本国際出願は、2005年6月28日に出願された米国特許仮出願第60/694,233号に対する優先権を主張し、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
肺癌は、北米では男女両方にとって主要な癌関連死亡原因である。2004年には、米国内で約174,000人(男性54%、女性46%)が新たに肺癌と診断された。さらに、2004年には、米国のみで、約160,000人がこの疾患により死亡した。
【0004】
残念なことに、診断の時点では、手術により治癒する可能性のある肺癌患者は25%に過ぎない。さらにまた、この癌に罹った個体では、化学療法は生存機会をわずかに改善するに過ぎない。
【0005】
非小細胞性肺癌(NSCLC)は、すべての原発性肺癌の約75〜80%を占めていることから、肺癌の中で最も一般的である。NSCLCは、扁平上皮癌、腺癌、および大細胞癌に分類される。このような癌においては、ムチン糖タンパク質MUC-1が、健康な個体の上皮細胞での正常発現レベルを超えて高く発現していることが観察されている。MUC-1タンパク質に加えられる多くの炭水化物部分は、正常細胞のMUC-1タンパク質に結合しているこれら部分よりも短いことが観察されている。したがって、癌細胞におけるMUC-1ポリペプチドの主鎖は、正常細胞におけるポリペプチドの主鎖よりも多く露出している。
【0006】
肺癌に次いで、前立腺癌は、米国内において男性では二番目に多く診断される癌である。米国では、おおよそ190,000人の男性が前立腺癌と診断されており、30,000人近くの男性が毎年この疾患で死亡している。
【0007】
前立腺癌処置を目的とした前立腺切除術(PR)後の生化学的不良は、臨床的不良の前兆であることが多く、患者の余命を短くしている可能性がある。またさらなる非侵襲性の前立腺癌処置法が求められているが、前立腺切除術後の生化学的不良を有する男性の処置法が特に求められている。
【0008】
当技術分野において、新規癌療法に適した患者を特定する必要性、およびそのような新規癌療法の開発の必要性がある。本発明は、ムチン糖タンパク質(MUC-1)ベースの製剤による処置に適した癌を有する個体を特定するための方法を提供する。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、MUC-1ベースの製剤による処置に適した癌を有する個体の特定および処置に関する。そのような癌の例は、NSCLCおよび前立腺癌である。本発明はまた、記載するMUC-1ベースの製剤を用いた、NSCLCおよび前立腺癌以外の他の癌の処置も包含する。
【0010】
本発明の一つの態様において、MUC-1ベースの製剤はMUC-1ベースのリポソームワクチンである。例えば、リポソームワクチンは、MUC-1ペプチドをその脂質二重層の中に含んでいてもよく、またはその小胞構造の中に封入して含んでいてもよい。MUC-1ペプチドはまた、リポソーム脂質二重層または膜との会合を容易にするために脂質付加されてもよい。MUC-1ペプチドは、SEQ ID NO:1に記載のアミノ酸配列またはその免疫学的活性断片もしくは変異体(「機能的変異体」と総称する)、あるいはSEQ ID NO:2に記載のアミノ酸配列またはその免疫学的活性断片もしくは変異体を含んでもよい。MUC-1コアリピート変異体の具体的特徴を以下に記載する。
【0011】
本発明の別の局面において、方法(「方法1」)は、NSCLCまたは前立腺癌の被験体を処置するために提供される。方法は、(A)処置のためにNSCLCまたは前立腺癌を有する被験体を選択する段階と(B)ある期間、その被験体にMUC-1ベースの製剤を投与する段階とを含む。方法1の一つの態様において、MUC-1ベースの製剤は、SEQ ID NO:1に記載のアミノ酸配列またはその免疫学的活性断片もしくは変異体、あるいはSEQ ID NO:2に記載のアミノ酸配列またはその免疫学的活性断片もしくは変異体を有する少なくとも一つのポリペプチドを含むリポソームを含む。
【0012】
特定の態様において、方法1は、処置した被験体を評価する段階を含む(C)の段階をさらに含んでもよい。個々の態様において、処置した被験体を評価することは、処置した被験体の免疫反応を測定することで達成できる。ある態様において、処置した被験体の免疫反応を測定することは、T細胞の増殖を測定することを含んでもよい。さらに別の態様において、処置した被験体を評価することは、(a)腫瘍サイズ、(b)腫瘍の位置、(c)結節ステージ、(d)NSCLCまたは前立腺癌の成長速度、(e)被験体の生存率、(f)被験体の肺癌または前立腺癌の症状の変化、(g)被験体のPSA濃度の変化、(h)被験体のPSA濃度倍加速度の変化、(i)被験体の生活の質の変化、または(j)それらの組み合わせの少なくとも1つまたは複数を決定することを含んでもよい。
【0013】
これらの態様において、被験体の評価は、投与する期間の前、その間、またはその後に実施してもよい。被験体の評価は、投与する期間の前と後に実施してもよい。
【0014】
さらなる態様において、製剤はBLP25リポソームワクチンである。「BLP25」は、以下に示す特異的な脂質付加MUC-1コアリピートである。BLP25ワクチンは、SEQ ID NO:1および2に記載されるようなMUC-1コアリピートを含む、予め形成されたリポソームを含んでもよい。MUC-1コアリピートを含む予め形成されたリポソームは、凍結乾燥してもよい。
【0015】
この方法の一つの態様において、BLP25リポソームワクチンはキット中にあってもよく、キットにはワクチンの調製および使用に関する指示書が入っている。したがって、キットは、凍結乾燥材料を元に戻すのに使用できる塩化ナトリウム溶液(0.9%、USP)のような別の液体を含んでもよい。または、BLP25リポソームワクチンは液体として供給してもよい。キットはまた、アジュバントまたはアジュバントの組み合わせを含んでもよい。アジュバントの例には、リピドA、ムラミルジペプチド、ミョウバン、またはサイトカインが含まれるがこれらに限定されない。したがってキットは、人が投与のためにBLP25ワクチンを調製できるようにする複数のバイアルまたは容器を含んでよい。
【0016】
被験体に製剤を投与する段階は、任意の適切な方法および任意の薬学的に許容される剤形を用いることによってもよい。投与方法の例には、筋肉内注射、皮下注射、静脈内、結節内、腫瘍内、腹腔内、または皮内注射が含まれるがこれらに限定されない。または、ワクチンまたはリポソーム結合MUC-1コアリピートペプチドは、エアゾール、経鼻、経口、膣内、直腸内、眼内、局部(粉末、軟膏または滴剤)、頬側、嚢内、腹腔内、または局所投与などによって投与してもよい。ワクチンまたはリポソーム結合MUC-1コアリピートペプチドはまた、例えば経皮パッチを用いるような、経皮送達に適した製剤を用いることによって投与してもよい。
【0017】
本発明のさらに別の局面において、NSCLCまたは前立腺癌などの癌を有する個体の生活の質を改善または維持するための方法(「方法2」)が記載されている。この方法は、NSCLCまたは前立腺癌などMUC-1ベースの製剤による処置が可能な癌であると診断された被験体に、ある期間BLP25リポソームワクチンを定期的に投与する段階を含んでもよい。方法2のさらなる局面において、投与する期間の前、期間の間、および期間の後に、個体の身体的健康度、機能的健康度、および癌症状についての組み合わせスコアを計算してよい。
【0018】
一つの態様において、BLP25リポソームワクチンの用量は、一回または複数回投与で、BLP25 MUC-1リポペプチドを約1,000μg提供するが、以下に示す他の用量も投与できる。例えば、下記、BLP25投与量の項に記載の用量を参照されたい。
【0019】
本発明の別の局面は、BLP25ワクチンなどのMUC-1ベースの組成物による処置に適した被験体を特定する方法である。方法の一つの態様は、被験体の血流、または血液、血奬、尿、血清、もしくは他の適した生体試料における循環するMUC-1ペプチドのレベルが正常か異常かを判定することを伴う。循環するMUC-1のレベルが正常である場合、次いで被験体はMUC-1組成物によるその後の処置に適している。すなわち循環するMUC-1の正常なレベルを有する被験体は、BLP25などのMUC-1ワクチンの投与を受けることができる。一つの態様において、循環するMUC-1の正常なレベルの上限は、約37.7 U/mlである。したがって、37.7 U/ml以下の循環するMUC-1レベルを有する被験体は、BLP25ワクチンなどのMUC-1組成物による処置に適している。しかしながら、当業者の権限内で、個体のそれぞれの群において循環するMUC-1ペプチドの閾値レベルを決定してもよい。すなわち、値「37.7 U/ml」は、アッセイ可能なすべての集団について必ずしも決定的な閾値ではない。「正常」量の循環する抗原は、所望の亜集団から決定することができ、正常または異常のいずれかとしてMUC-1量を分類するための指標として用いることができる。
【0020】
別の態様において、本方法は、被験体の血流、または血液、血奬、尿、血清、もしくは他の適した生体試料におけるHLA A2タンパク質またはコードする核酸またはHLA A2 RNA転写産物の存在を検出することを伴う。生体試料におけるHLA A2タンパク質またはコードする核酸またはHLA A2 RNA転写産物の存在の検出は、被験体がBLP25ワクチンなどのMUC-1ベースの組成物による処置に適していることを示す。
【0021】
一つの態様において、MUC-1組成物による処置に対する適正について選別された被験体は、ステージIIIBまたはステージIVの非小細胞肺癌を有する。
【0022】
本発明の一つの局面は、癌を有する被験体を処置する方法である。本方法は、処置のためにMUC-1を発現する癌細胞を有する被験体を選択する段階(a)、およびある期間にわたってMUC-1ベースの製剤をその被験体に投与する段階(b)を含み、ここで製剤はリポソーム(i)、ならびにSEQ ID NO:1のアミノ酸配列、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列の免疫学的に活性な変異体、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列、およびSEQ ID NO:2のアミノ酸配列の免疫学的に活性な変異体からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも一つのポリペプチド(ii)を含み、かつ被験体は被験体の血清において循環する高レベルのMUC-1を有していない。一つの態様において、癌は、卵巣癌、肝臓癌、結腸癌、乳癌、膵臓癌、腎臓癌、頭頸部癌、および多発性骨髄腫からなる群より選択される。
【0023】
前述の一般的な記載および後述の図面の簡単な説明は、共に例示と説明のためのものであり、特許請求する本発明のさらなる説明を提供することを意図するものである。その他の目的、利点、および新規な特徴は、当業者には以下の本発明の詳細な説明から容易に明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本明細書に詳述する研究の結果を示すグラフであり、BLP25リポソームワクチン処置を受けた患者と、最善の支持療法(BSC)のみを受けた患者との間の、試験群別の全体生存率を示している。実施例1を参照されたい。
【図2】ステージIIIBN局所領域性SCLC患者を対象とした生存分析を実証するグラフである。患者の2群(処置およびBSC)に関する生存分析は、BLP25リポソームワクチン処置を受けた患者と、最善の支持療法のみで処置を受けた患者とを比較する生存分布相関を包含する。実施例1を参照されたい。
【図3】BLP25リポソームワクチンの投与を受けた様々な患者の前立腺特異抗原(「PSA」)倍加時間のパーセンテージ変化を示すグラフである。実施例3を参照されたい。
【図4】回診、治療群(BLP25または対照)、および正常/異常レベルによる、患者のCA27.29値の度数分布を列挙した表である。
【図5】異常レベルを有した患者と比較して、ベースラインでの抗原の正常レベルを有する患者に対する生存曲線を示す。
【図6】CA27.29の正常レベルを有するこれらの患者の生存期間中央値は24.2ヶ月であり、一方異常レベルを有する患者の生存期間中央値は9.8ヶ月であったことを示す(Cox p=0.0006)。
【図7】異常CA27.29レベルを有する患者に対する11.3ヶ月と比較して、CA27.29の正常レベルを有する患者の生存期間中央値は15.1ヶ月である、対照群からのデータを示す(Cox p=0.0042)。
【図8】15.1ヶ月の生存期間中央値を有した対照群におけるこれらの患者と比較して、24.2ヶ月の生存期間中央値を有したBLP25群においてCA27.29の既存の正常レベルを有する患者のデータを示す(Cox p=0.0605)。
【図9】BLP25群においてCA27.29の既存の異常レベルを有する患者は、9.8ヶ月の生存期間中央値を有し、対照群におけるこれらの患者は11.3ヶ月の生存期間中央値を有したことを示す(Cox p=0.5234)。
【図10】T細胞増殖による生存期間のカプランマイヤー曲線を示す。
【図11】処置群間で選択したHLAタイプについて実施した生存率分析を図示する。
【図12】研究群の各々におけるHLA A02を有する患者の生存を示す。
【図13】DQB 1-05アレルを有する患者における2つの治療群間の生存の差を示す。
【図14】DRB 1-04ハプロタイプを有する両群における患者の生存を示す。
【図15】DQB 1-02アレルを有する両群における患者に対する別の生存曲線を示す。
【図16】図11に列挙した同じハプロタイプに対する処置群内のさらなる生存分析を図示する。
【図17】CW07アレルを有さない患者(n=43)に対してCW07アレルを有するのみのBLP25群における患者(n=45)についてのカプランマイヤー生存曲線を示す。
【図18】研究開始時にステージIIIB癌性胸水またはステージIV疾患を有する患者の処置群による生存を示す。
【図19】ベースラインCA27.29の正常対異常の観点における生存を示す(対照群)。
【図20】全体的な生存ベースラインCA27.29の正常対異常を示す。
【図21】処置群による全体的な生存を示す。
【図22】研究開始時にステージIIIB局所領域疾患を有する患者の処置群による生存を示す。
【図23】ベースラインCA27.29の正常対異常の観点における生存を示す(BLP群)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本発明は、MUC-1ベースの製剤、およびMUC-1製剤による処置が可能な癌に罹患している個体を処置するための方法を提供する。そのような癌の例は、NSCLCおよび前立腺癌である。本発明はまた、記載するMUC-1ベースの製剤による、NSCLCおよび前立腺癌に加えてその他の癌の処置も包含する。
【0026】
本発明によれば、製剤は、MUC-1コアリピートを含んでもよい。MUC-1コアリピートは、MUC-1タンパク質内に繰り返し存在するアミノ酸の配列であってもよい。好ましくは、本発明のMUC-1コアリピートペプチドは、MUC-1タンパク質主鎖に結合している炭水化物成分がより短い、癌細胞で発現しているMUC-1タンパク質の持つ露出特性を模倣している。
【0027】
一つの態様において、本発明のMUC-1コアリピートは、アミノ酸配列

を有する。
【0028】
MUC-1コアリピートはまた、以下のいずれかに示すアミノ酸配列を有していてもよい。

【0029】
ある態様において、このコアリピートは脂質付加されていてもよい。一つのこのようなMUC-1コアリピートリポタンパク質は、本明細書ではBLP25と呼ばれる。製剤は、リポソームと関連していてもよい。この関連には、リポソーム内へのペプチドの組み込み、またはリポソームによるペプチドの封入が包まれるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
BLP25リポペプチドを含有するリポソームワクチンは、本明細書では「L-BLP25」と呼ばれる。
【0031】
本発明の製剤は、リピドAもしくはインターロイキン2(IL-2)のようなアジュバントまたはアジュバントの組み合わせをさらに含むことができる。その他の本発明に有用な例示的アジュバントを以下に記載する。MUC-1ベースの製剤は、ワクチンとして調剤してもよく、ワクチンはリポソーム関連MUC-1コアリピートワクチンであってよい。いくつかの態様において、ワクチン製剤は、リポソーム関連MUC-1コアリピートおよびアジュバントを含む。MUC-1コアリピートは脂質付加され得る。
【0032】
本発明のワクチンは、以下を含んでもよい:(a)SEQ ID NO:1の配列および外因性脂質を含むMUC-1コアリピート;または(b)SEQ ID NO:1の配列およびリポソームを含むMUC-1コアリピート;または(c)SEQ ID NO:1の配列およびリポソームおよびアジュバントを含むMUC-1コアリピート;または(d)SEQ ID NO:1の配列およびリポソームおよびアジュバントを含むMUC-1コアリピート、ここでアジュバントはリピドAである。
【0033】
ある別の態様において、本発明のワクチンは、以下を含んでもよい:(a)SEQ ID NO:2の配列および外因性脂質を含むMUC-1コアリピート;または(b)SEQ ID NO:2の配列およびリポソームを含むMUC-1コアリピート;または(c)SEQ ID NO:2の配列およびリポソームおよびアジュバントを含むMUC-1コアリピート;または(d)SEQ ID NO:2の配列およびリポソームおよびアジュバントを含むMUC-1コアリピート、ここで、アジュバントはリピドAである。
【0034】
NSCLCまたは前立腺癌などのMUC-1ベースの製剤による処置が可能な癌を有する個体を処置する概念、ならびにMUC-1ベースのワクチン処方の構成要素は、以下により詳しく記載する。
【0035】
I. BLP25リポソームワクチン
一つの態様において、MUC-1ベースの製剤は、一定量のMUC-1リポペプチドBLP25および一定量のアジュバントを含む。このような製剤は、本明細書ではBLPリポソームワクチン(「L-BLP25」)と呼び、これは液剤であっても凍結乾燥製剤であってもよい。例えば、製剤またはワクチンは、単一投与量に約1000μgのMUC-1リポペプチドBLP25と約500μgのリピドAとを含有できる。
【0036】
しかしながら他のマイクログラム量のMUC-1リポペプチドおよびリピドAも、本発明で想定されている。例えば、BLP25リポペプチドの量は、ワクチンの複数回用量に対応するのに十分な量でよい。したがって、MUC-1コアリピート製剤は、例えば約50μg、約100μg、約200μg、約300μg、約400μg、約500μg、約600μg、約700μg、約800μg、約900μg、約1,000μg、約1,010μg、約1,020μg、約1,030μg、約1,040μg、約1,050μg、約1,060μg、約1,070μg、約1,080μg、約1,090μg、約1,100μg、約1,200μg、約1,300μg、約1,400μg、約1,500μg、約1,600μg、約1,700μg、約1,800μg、約1,900μg、約2,000μg、約3000μg、約4000μg、約5000μg、約6000μg、約7000μg、約8000μg、約9000μg、約10000μg、約15000μg、約25000μg、またはそれ以上のMUC-1コアリピートを含んでいてもよい。MUC-1コアリピートの一つの具体的な投与量は、約500μg〜約1500μg、約500μg〜約1500μgの範囲内、および約1000μgである。
【0037】
同様に、リピドAの量も、ワクチンに製剤化されるMUC-1ペプチドの量に合わせて変えることができる。したがって、リピドAの量は、50μg、約100μg、約200μg、約300μg、約400μg、約500μg、約600μg、約700μg、約800μg、約900μg、約1,000μg、約1,010μg、約1,020μg、約1,030μg、約1,040μg、約1,050μg、約1,060μg、約1,070μg、約1,080μg、約1,090μg、約1,100μg、約1,200μg、約1,300μg、約1,400μg、約1,500μg、約1,600μg、約1,700μg、約1,800μg、約1,900μg、または約2,000μg、またはそれ以上であってもよい。特に、約500μgのリピドAが存在し得る。
【0038】
BLP25リポペプチドおよびリピドAは、乾燥粉末を再水和して作ったリポソームの脂質二重層に関連していてもよい。
【0039】
本製剤は、5mlのタイプIホウケイ酸ガラス製バイアルのような、バイアルの中に保持してもよい。MUC-1製剤の入ったバイアルには、他のワクチン成分を入れてもよい。例えばバイアルは、ジパルミトイルホスファチジルコリン、コレステロール、およびジミリストイルホスファチジルグリセロールのような追加のリポソーム脂質を含んでもよい。これら特定の脂質の各量は変えてもよい。それゆえに、バイアルの中のジパルミトイルホスファチジルコリン、コレステロール、およびジミリストイルホスファチジルグリセロールのいずれか一つの量は、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、または約100mg、または約100mgより多くてもよい。リポソーム脂質は、そのバイアルとは別のバイアルに含まれてもよく、一方MUC-1製剤は第一のバイアルに含まれてもよい。
【0040】
もちろん本発明の目的については、別の態様も存在する。すなわち、上記のL-BLP25中のMUC-1リポペプチドBLP25、アジュバントおよびリポソーム脂質の量は、例として示したものである。MUC-1リポペプチドの量を含めた各成分の適した量は容易に決定できる。いくつかの態様において、MUC-1リポペプチドの量は、約300μgより多いか、または少ないであろう。ワクチンは、5mlのタイプIホウケイ酸ガラス製バイアルに入れて供給する必要はなく、当技術分野で公知の様式で供給してもよい。
【0041】
一つの態様において、BLP25リポペプチドは、脂質付加アミノ酸誘導体をそのC末端近くに含有する、直線状の27残基ペプチドである。具体的には、BLP25は、パルミトイル脂質をポリペプチドの位置26にあるリジン残基に含んでいる。BLP25リポペプチドの配列を下記SEQ ID NO:2に示す。

【0042】
MUC-1コア配列を有する別の態様において、ペプチドの天然配列内に存在し得るスレオニン、セリン、リジン、アルギニン、またはシステインのようなアミノ酸は、脂質を連結することができる好都合な部位であろう。さらに脂質は、合成アミノ酸またはMUC-1コア配列中に自然には存在しないアミノ酸に連結することができる。さらに、脂質の連結を容易にするために、1つもしくは複数の天然または合成アミノ酸を、MUC-1コア配列のいずれかの端部またはその配列中に加えることがある。
【0043】
ペプチドが本発明の方法において機能する限り、どのような数のアミノ酸も加えることができることから、MUC-1コア配列に加えることができるアミノ酸の数は、制限されるものではない。上記のように、BLP25ポリペプチドには2つの追加アミノ酸が加えられている。すなわち、MUC-1コア配列のC末端はプロリンで終わっており、したがって25残基長である。しかしながらBLP25ポリペプチドの例では、リジンおよびグリシンがC末端のプロリンに加えられ、パルミトイルの結合を促進している。したがってBLP25ポリペプチドの長さは27アミノ酸長である。通常のペプチド合成法を用いて、ペプチド配列にこのような追加のアミノ酸を1つまたは複数加えることができる。または、MUC-1コア配列ペプチドまたはBLP25は、組換え技術により作ることができる。
【0044】
一つの具体的態様において、BLP25リポソームワクチン(「L-BLP25」)は、BLP25リポペプチド、リピドA、コレステロール、DMPG、およびDPPCを含んでもよい。BLP25リポペプチドは、SEQ ID NO:2の配列、その免疫学的活性断片または免疫学的に活性な変異体を含んでもよい。このようなBLP25リポソームワクチンの用量は、BLP25リポペプチド約1000μg、リピドA約500μg、コレステロール約17.3mg、DMPG約3.6mg、およびDPPC約29.1mgを含んでもよい。
【0045】
この具体的なワクチン組成物および投与量は、「バイアル当たり」の量でも記載できる。すなわち、バイアルにはBLP25リポペプチド約300μg、リピドA約150μg、コレステロール約5.2mg、DMPG約1.1mg、およびDPPC約8.7mgを入れてもよい。
【0046】
このワクチンを凍結乾燥し、次いで塩化ナトリウム溶液などで投与前に再構成してもよい。BLP25リポソームワクチンの上記の量は、例えば約0.6mlの液体に再構成することができるが、所望する投与量に応じて、約0.1ml、0.2ml、0.3ml、0.4ml、0.5ml、0.6ml、0.7 ml、0.8ml、0.9ml、10ml、11ml、12ml、13ml、14ml、15ml、16ml、17ml、18ml、19ml、または20ml、または20mlより多いような容積の液体も用いることができる。凍結乾燥したMUC-1ワクチンが再構成される液体の容積は、個体に投与される容積である必要はない。
【0047】
A. MUC-1コアリピート変異体
SEQ ID NO:1および2に示すMUC-1コアリピート配列に替わるものとして、本発明の製剤はこれらMUC-1コアリピートの免疫学的に活性な相同体または変異体を組み入れてもよい。したがって本発明は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2のいずれかに示すアミノ酸配列に類似するが同一ではない配列を有するMUC-1コアリピートの使用を包含する。したがって、本発明は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2の配列と比較して、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、または80%の配列同一性を有し、免疫学的に活性であるMUC-1コアリピートの使用を意図する。
【0048】
本発明のMUC-1コアリピートタンパク質は、保存的変化を含むように改変してもよく、あるいは重要でない残基または重要でない領域内にある残基に変わるように改変してもよい。重要でないアミノ酸は、部位特異的突然変異誘発、結晶化、核磁気共鳴、光親和性ラベリング、またはアラニンスキャニング突然変異誘発のような、当技術分野で公知の方法によって同定できる(Cunningham et al., Science, 244:1081-1085 (1989); Smith et al., J. Mol. Biol., 224:899-904 (1992); de Vos et al., Science, 255:306-312 (1992))。改変されたタンパク質は、基質へのプロテアーゼ結合、切断、インビトロ活性、またはインビボ活性のような方法によって、免疫反応を誘導する活性または能力について容易に試験できる。
【0049】
具体的には、MUC-1コアリピート変異体は、MUC-1コアリピートの安定性を向上させる1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を組み入れてもよく、またはMUC-1コアリピートの安定性を酸化に対して向上させる別の疎水性アミノ酸、もしくはMUC-1コアリピートの安定性をプロテアーゼに対して向上させる別のアミノ酸を組み入れてもよい。したがって本発明の「変異体」MUC-1コアリピートポリペプチドは、1つまたは複数の置換、欠失、挿入、転位、切断、またはそれらの組み合わせによって、SEQ ID NO:1または2に示す配列とはアミノ酸配列において異なっている。そのような変異体は、所与のアミノ酸が類似の性質を持つ別のアミノ酸で置換されるアミノ酸置換を含有するように作ることができる。保存的置換としては、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン間の脂肪族アミノ酸相互交換;ヒドロキシル残基のセリンとスレオニンの相互交換、酸性残基のアスパラギン酸とグルタミン酸の交換、アミド残基のアスパラギンとグルタミン間の置換、塩基性残基のリジンとアルギニンの交換、ならびに芳香族残基のフェニルアラニンとチロシン間の置き換えが挙げられる。Bowieら、Science, 247:1306-1310 (1990)を参照されたい。
【0050】
B. MUC-1コアリピート融合タンパク質
SEQ ID NO:1または2の完全長配列、あるいはその変異体を有するMUC-1コアリピートペプチドは、通常は結合していない別のポリペプチドに結合することもできる。そうすることでMUC-1コアリピートペプチドは、そのN末端またはC末端にて、MUC-1コアリピートと実質的に相同でないアミノ酸配列を有する非相同的ポリペプチドと動作可能に結合できる。「動作可能に結合」とは、MUC-1コアリピートペプチドと非相同的ポリペプチドの両方がインフレームであることを示している。
【0051】
融合タンパク質は、MUC-1コアリピートまたはその機能的変異体が宿主系の免疫反応を誘導する能力に対し、影響を及ぼすことも及ぼさないこともある。例えば融合タンパク質は、MUC-1コアリピートがグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)配列またはインフルエンザHAマーカーのC末端に融合しているGST融合タンパク質でよい。その他タイプの融合タンパク質としては、酵素融合タンパク質、例えばβガラクトシダーゼ融合、酵母2ハイブリッドGAL融合、ポリHis融合、およびIg融合が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような融合タンパク質、特にポリHis融合は、本発明での使用のための、組換え技術によって産生されたMUC-1コアリピートの精製を容易にする。ある宿主細胞では、タンパク質の発現および/または分泌は、MUC-1コアリピートペプチドを細胞外マトリックスに運ぶか、あるいはMUC-1コアリピートタンパク質を細胞膜内に局在化させる、プロテアーゼと融合した非相同的シグナル配列を用いることによって高めることができる。
【0052】
他の融合タンパク質は、MUC-1コアリピートの免疫反応誘導能力に影響を及ぼすことがある。例えば、MUC-1コアリピートの小領域を、例えばMUC-1タンパク質の別領域の対応ドメインまたは小領域と置き換えることができる。このようにしてキメラMUC-1コアリピートを産生することができる。同様に基質に対する親和性も変えることができ、あるいは基質のタンパク質分解を防止することさえできる。したがって、例えばSEQ ID NO:1または2の配列を有するタンパク質、あるいはその変異体を、別のMUC-1コアリピートペプチドの競合的阻害剤として使用することもできる。
【0053】
C. MUC-1コアリピートの改変
MUC-1コアリピート変異体にはまた、誘導体または類似物が含まれ、その場合、(i)あるアミノ酸が、遺伝コードによってコードされないアミノ酸のアミノ酸残基で置換されている、(ii)成熟ポリペプチドがポリエチレングリコールのような別の化合物に融合している、あるいは(iii)リーダーもしくは分泌配列またはポリペプチド精製のための配列といった追加のアミノ酸がMUC-1ポリペプチドに融合している。
【0054】
典型的な改変としては、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム成分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋結合、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋の形成、システイン形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、γカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化(selenoylation)、硫酸化、アルギニン化(arginylation)のようなトランスファーRNA介在のタンパク質へのアミノ酸付加、およびユビキチン化が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
MUC-1コアピートに施すことができる特に一般的なペプチドの改変としては、グリコシル化、脂質結合、硫酸化、グルタミン酸残基のγカルボキシル化、ヒドロキシル化、およびADPリボシル化が挙げられる。T. E. Creighton, Proteins--Structure and Molecular Properties、第2版 (W. H. Freeman and Company, New York (1993)); Wold, F., Posttranslational Covalent Modification of Proteins, B. C. Johnson, Ed. (Academic Press, New York 1-12 (1983)); Seifterら、Meth. Enzymol., 182: 626-646 (1990); およびRattanら、Ann. N. Y. Acad. Sci., 663:48-62 (1992)を参照されたい。
【0056】
改変は、ペプチドの主鎖、アミノ酸側鎖、およびアミノ末端もしくはカルボキシル末端を含む、MUC-1コアリピートポリペプチド内のどの場所にでも行うことができる。共有結合修飾によるポリペプチド内のアミノ基もしくはカルボキシル基、または両方の遮蔽は、天然および合成ポリペプチドによく見られる。
【0057】
II. BLP25投与量
MUC-1コアペプチド、BLP25ポリペプチド、またはBLP25リポソームワクチンを含むMUC-1ベースの製剤を被験体に与える場合、当業者は、投与量が被験体の体重、腫瘍の大きさ、または腫瘍の進行度を含むが、これらに限定されるものではない複数の要因に依存することを了解している。一般的に、本明細書で用いる場合、MUC-1ベースの製剤を投与される被験体は単一の生物である。ある態様において、被験体は哺乳動物であろう。特に、被験体は男または女を含むヒトであってよい。多くの態様において、被験体は患者、あるいは診療および処置を待っているか、または受けている個体であろう。
【0058】
被験体には、BLP25リポソームワクチン中に含まれるBLP25 MUC-1ポリペプチドを、約50μg、約100μg、約200μg、約300μg、約400μg、約500μg、約600μg、約700μg、約800μg、約900μg、約1,000μg、約1,010μg、約1,020μg、約1,030μg、約1,040μg、約1,050μg、約1,060μg、約1,070μg、約1,080μg、約1,090μg、約1,100μg、約1,200μg、約1,300μg、約1,400μg、約1,500μg、約1,600μg、約1,700μg、約1,800μg、約1,900μg、または約2,000μgの用量で、単回または累積的に与えることができる。特定の態様において、被験体に投与される用量は、週当たりMUC-1ベースの製剤約1,000μgである。
【0059】
被験体は、MUC-1ベースの製剤の用量を、例えば一日複数回、毎日、一日おき、週一回、またはその他の適した投与計画に従って受けることができる。一つの態様では、定期投与は、週に1回、ある用量のBLP25リポソームワクチンを、ある期間投与することを包含する。当然、投与計画は別の回数のMUC-1ペプチド送達を含んでもよい。すなわち、ワクチンを週に1回、2回、3回、4回、5回、6回、またはそれより多い回数投与してもよい。いくつかの態様において、ある期間にわたって、被験体は少なくとも5回の投与を受けるだろう。別の態様において、被験体は5回より多いかまたは少ない投与を受けるだろう。したがって被験体は、用量約1,000μgのMUC-1脂質付加ポリペプチドを毎週受けるであろう。または、被験体は500μgの用量を週2回、または一日100μgの用量を5日間にわたって受けてもよい。
【0060】
これらの投与量の例は、限定されるものではなく、約1,000μgのMUC-1脂質付加ポリペプチドを投与するための具体的な投与計画を例示するのみに使用される。例えば、所与の状態について適当な用量が週当たり1,000μgであるとすると、この用量を任意の回数に分けることができる。このことは、特定の状態のための適当な用量が1,000μgより多くとも、または少なくとも当てはまる。
【0061】
MUC-1ベースの製剤を被験体に投与する期間は、任意の適した期間でよい。このような適した期間の例としては、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、少なくとも約12ヶ月、少なくとも約13ヶ月、少なくとも約14ヶ月、少なくとも約15ヶ月、少なくとも約16ヶ月、少なくとも約17ヶ月、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約19ヶ月、少なくとも約20ヶ月、少なくとも約21ヶ月、少なくとも約22ヶ月、少なくとも約23ヶ月、もしくは少なくとも約24ヶ月、またはそれ以上が含まれるが、それらに限定されない。処置期間はまた、24ヶ月以上続いてもよく、所望であれば、例えば30ヶ月、31ヶ月、32ヶ月、33ヶ月、34ヶ月、35ヶ月、36ヶ月、または36ヶ月より長く続いてもよい。
【0062】
本発明の別の態様において、本明細書に記載の任意の方法についての投与期間は、少なくとも約2週間、少なくとも約4週間、少なくとも約8週間、少なくとも約16週間、少なくとも約17週間、少なくとも約18週間、少なくとも約19週間、少なくとも約20週間、少なくとも約24週間、少なくとも約28週間、少なくとも約32週間、少なくとも約36週間、少なくとも約40週間、少なくとも約44週間、少なくとも約48週間、少なくとも約52週間、少なくとも約60週間、少なくとも約68週間、少なくとも約72週間、少なくとも約80週間、少なくとも約88週間、少なくとも約96週間、または少なくとも約104週間である。
【0063】
MUC-1ベースの製剤は、様々な処置期で投与してもよい。例えば、MUC-1ベースの製剤は、処置期および維持期の両方に投与してもよい。いくつかの態様において、処置期は毎週のMUC-1ベースの製剤投与を含むが、これに対し維持期は約6週間おき、約7週間おき、約8週間おき、約9週間おき、約10週間おき、約11週間おき、約12週間おき、またはそれを超えるような、より長い時間周期での投与となり得る。いくつかの例では、処置期で与えられる投与量は、維持期で与えられる投与量より多いであろう。しかしながら、処置期および維持期は、特定の個体に合わせてデザインされるため、処置期と維持期とでは時間および投与量が上記の例から大きく変更されることもある。一般的に、維持期は適当と判断した時点から始めてよい。例えば、いくつかの態様において、処置期は8週間であり、そして維持期はその個体の生涯を通して続く。別の態様において、処置期だけまたは維持期だけが行われるだろう。
【0064】
さらに別の態様において、MUC-1ベースの製剤は、予防的に与えられるだろう。これらの態様において、MUC-1ベースの製剤の投与は、NSCLCまたは前立腺癌のような癌の発生から個体を保護し得る。MUC-1ベースの製剤を予防的に用いる場合、投与量および投与計画は容易に決定できる。
【0065】
医師は、被験体がMUC-1ベースの製剤を続けなければならない期間を決定できる。いくつかの例では、個体の余生を通してMUC-1ベースの製剤を投与することが有益であることもある。
【0066】
III. リポソーム
多くの態様において、MUC-1ベースの製剤はリポソームと共に用いられるであろう。リポソームは、水性区画を取り囲む、1つまたは複数の脂質二重層からなる顕微鏡レベルの小胞である。例えば、Bakker-Woudenbergら、Eur. J. Clin. Microbiol. Infect. Dis. 12 (Suppl. 1): S61 (1993)、およびKim, Drugs, 46: 618 (1993)を参照されたい。リポソームは天然の細胞膜にも存在する巨大脂質分子から作ることができるため、リポソームは一般的に安全に投与でき、また生分解性である。ゆえに、リポソームは薬物送達に多く用いられている。
【0067】
調製方法によって、リポソームは単層もしくは多層となり、また大きさは約0.02μm〜約10μmを超える範囲の直径まで様々であってよい。各種作用物質はリポソームに封入また挿入できる。疎水性作用物質は二重層内に分配され、親水性作用物質は内側の水性空間内に分配される。例えば、Machyら、LIPOSOMES IN CELL BIOLOGY AND PHARMACOLOGY (John Libbey, 1987)および Ostroら、American J. Hosp. Pharm. 46: 1576 (1989) を参照されたい。
【0068】
リポソームは、事実上いかなるタイプの細胞にも吸収され、その後、組み入れられた作用物質を放出し得る。いくつかの例では、リポソームは標的細胞と融合することができ、それによってその後リポソームの含有物を標的細胞内に移すことができる。または、リポソームは食細胞性である細胞によってエンドサイトーシスを受けることもある。エンドサイトーシスに続いて、リポソームの脂質はリソゾーム内分解を受け、封入されている作用物質の放出が起こる。Scherphofら、Ann. N.Y. Acad. Sci., 446: 368 (1985)。
【0069】
さらに、リポソームを用いてポリペプチドのような活性物質をその表面に提示することができ、それによって前の段落で記載したような標的細胞または表面との融合なしに、シグナル伝達カスケードのような各種事象を誘発または生化学的経路を始動することができる。したがって、例えばポリペプチドを、例えばリポソームの脂質二重層内に、ポリペプチドに結合させた脂質を介して組み入れることができる。
【0070】
リポソームは送達小胞として、本発明のMUC-1ベースの製剤と共に用いられる。本発明の方法で使用できる例示的な好適リポソームとしては、多層小胞(MLV)、オリゴラメラ小胞(OLV)、単層小胞(UV)、小型単層小胞(SUV)、中型単層小胞(MUV)、大型単層小胞(LUV)、巨大単層小胞(GUV)、多胞性小胞(MVV)、逆相蒸発法で作製した単層またはオリゴラメラ小胞(REV)、逆相蒸発法で作製した多層小胞(MLV-REV)、安定多重層小胞(SPLV)、凍結融解MLV(FATMLV)、押出し法で調製した小胞(VET)、フレンチプレスで調製した小胞(FPV)、融合により調製した小胞(FUV)、脱水-再水和小胞(DRV)、および泡小胞(BSV)が挙げられる。しかしながら、当業者が了解するように、これらリポソームのタイプは限定を意味するものではなく、本発明の方法に適合する任意の方法で作られた任意のリポソームを包含し得る。リポソームを調製するための技術は当技術分野で周知である。COLLOIDAL DRUG DELIVERY SYSTEMS 第66巻(J. Kreuter, ed., Marcel Dekker, Inc., (1994))を参照されたい。
【0071】
IV. 脂質
多くの態様においてMUC-1ベースの製剤は、SEQ ID NO:2のように脂質付加されていてもよい。本明細書では、「脂質」とは官能性の酸素、窒素、またはイオウ基を有するアミノ酸に結合できるミリスチル、パルミトイル、またはラウリル分子でよい。このようなアミノ酸としては、スレオニン、セリン、リジン、アルギニン、およびシステインが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
「モノリポペプチド」は、一つの脂質鎖だけが結合しているペプチドである。同様に「ジリポペプチド」は、二つの脂質鎖が一つ、または二つのアミノ酸に結合しているペプチドである。二つの脂質鎖が二つのアミノ酸残基に結合している場合、この二つの残基は、任意の数のアミノ酸によって間隔があけられてもよい。一つより多い脂質が結合している場合には、脂質は同一の脂質でも、別の脂質でもよい。同様に、二つより多い脂質が結合している場合には、二つもしくはそれ以上の脂質が同一であってもよく、またはすべての脂質が異なっていてもよい。
【0073】
BLP25のようなリポペプチドは、そのペプチドの脂質部分が自発的にリポソームの脂質二重層内に組み込まれるために、リポソームの中に組み入れることができると考えられている。したがってこの例では、リポペプチドをリポソームの「表面」に提示することができる。または、ペプチドをリポソーム内に封入することができる。ペプチドのような分子を伴うリポソームを調製および調合するための技術は周知である。
【0074】
V. 例示的アジュバント
本MUC-1ベースの製剤は、1つまたは複数のアジュバントを含んでもよい。または、1つもしくは複数のアジュバントを、本発明のMUC-1ベースの製剤を投与する前、同時、または後に投与してもよい。
【0075】
よく知られているように、アジュバントは特定の抗原性刺激と共に働いて、抗原に対する特異的反応を高める物質である。例えばモノホスホリルリピドA(MPLA)は効果的なアジュバントであり、特定のTリンパ細胞に対するリポソーム抗原提示を高める。Alving, C.R., Immunobiol., 187:430-446 (1993)。MPLAはToll様レセプターと結合でき、それは様々な免疫反応遺伝子の発現を制御する防御シグナル伝達経路を活性化に導くことができる。
【0076】
リピドAおよびその誘導体のような脂質ベースのアジュバントは、MUC-1ベースの製剤と共に使用するのに適している。リポソーム内に組み入れられる場合、ムラミルジペプチド(MDP)は、アジュバント活性を高めることも示されている(Gupta RK et al., Adjuvants-A balance between toxicity and adjuvancity," Vaccine, 11, 293-306 (1993))。
【0077】
本発明と共に使用できるアジュバントの別のクラスとしては、インターロイキン2(IL-2)のような刺激性サイトカインが挙げられる。したがって本リポソームワクチンは、IL-2を用いて調合してもよく、または最適な抗原反応を得るためにIL-2を別途投与してもよい。多くの態様において、IL-2はリポソームと有利に製剤化できる。
【0078】
アジュバントの合成模倣物もまたMUC-1ベースの製剤の使用に合わせて同時に製剤化してもよい。例えば、リピドA模倣物はリポソームワクチンと併せて用いることができる。リピドA模倣物の一つの具体的なタイプは、リピドA二糖体の糖単位の一方または両方が、少なくともペンタエリスリトールの炭素骨格で置き換えられているものである。例えば、参照として本明細書に組み入れられる、WO 03/094850を参照されたい。
【0079】
VI. 例示的ワクチン製剤
MUC-1ベースの製剤がワクチンである場合、ワクチンは1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と共に製剤化してもよい。このような賦形剤の特性は当技術分野では周知であるが、典型的には生理学上許容でき、かつ不活性である賦形剤、または本発明の組成物のワクチン特性を高める賦形剤が含まれる。薬学的に許容される賦形剤の非限定例としては、無菌生理食塩水のような液体媒質が挙げられる。賦形剤はリポソームワクチン配合時のいかなる時点で加えてもよく、または完成したワクチン組成物に混合してもよい。賦形剤を加える時点および本発明のワクチンとの使用に適した賦形剤は共に容易に決定できる。
【0080】
具体的なワクチン製剤の一つは、SEQ ID NO:2のMUC-1リポペプチドBLP25を約300μg、リピドAを約150μg、ならびにジパルミトイルホスファチジルコリン、コレステロール(DPMC)、およびジミリストイルホスファチジルグリセロール(DPMG)のような追加のリポソーム脂質の1つまたは複数を約15mg含んでもよい。
【0081】
VII. シクロホスファミド
MUC-1ベースの製剤による処置の前に、被験体をシクロホスファミドで「前処置」してもよい。多くの態様において、シクロホスファミドの投与量は、約300mg/m2、約400mg/m2、約500mg/m2、または約600mg/m2であろう。約300mg/m2の範囲のシクロホスファミド投与量は、低投与量と考える。ある態様において、シクロホスファミドは単回投与で与えられるであろう。別の態様において、シクロホスファミドは、ある期間にわたって複数回の投与で与えられるであろう。
【0082】
300mg/m2などの用量のシクロホスファミドを使用すると、一部の癌患者に見られる免疫抑制を部分的に克服できる。様々な動物モデルにおいて、シクロホスファミドはある被験体において遅延型過敏反応を高め、抗体産生を増し、耐性を排除し、そして抗腫瘍免疫を増強することが示されている。シクロホスファミドと同様の様式で免疫系に影響を及ぼす他の薬剤も、本発明の製剤による前処置計画に用いることができる。
【0083】
VIII. L-BLP25ワクチン投与の経路と標的化
本発明のMUC-1ベースの製剤は、ワクチンを含め複数の投与経路に合わせて製剤化してもよい。具体的な経路には、静脈内、筋肉内、皮下、もしくは皮内注射、エアゾール、経皮、肺内、経鼻、経口、膣内、直腸内、眼内、局部(粉末、軟膏、もしくは滴剤)、頬側、嚢内、腹腔内、または局所投与などを介して、またはこれら経路の組み合わせによってなどの任意の薬学的に適した投与方法が含まれ、一回もしくは複数回の単位投与量で投与する。ワクチンまたはリポソーム結合MUC-1コアリピートペプチドはまた、例えば経皮パッチを介するような、経皮送達に適した製剤を介して投与してもよい。
【0084】
ワクチンの投与は周知であり、また最終的には特定の製剤および担当の医師の判断に拠る。L-BLP25のようなMUC-1ベースの製剤は、懸濁液として維持できるが、凍結乾燥し、後で水和して使用可能な製剤にしてもよい。
【0085】
いくつかの態様において、実施例1の態様のように、MUC-1ベースの製剤の一回の用量を、複数の異なる部位に注射してもよい。例えば実施例1の態様において、MUC-1ベースのポリペプチド1,000μgを、4分割投与のそれぞれ約250μgにより与えることができる。注射の場合は、本発明の組成物が適当な量または分割投与量で与えられるのであれば、注射する量は関係がない。例えば一回の注射が1cc(ml)のこともあるが、全く同じ投与が別の注射では5cc(ml)になることもある。さらにまた、この分割投与の量は非限定的な例示に過ぎず、分割投与量が全投与量の1/4よりも多い、または少ないこともある。
【0086】
分割投与量または投与量は、両上腕の三角筋または三頭筋の領域、および腹部の左右前外側に投与することができる。しかしながらこれら注射部位は例示に過ぎない。いくつかの態様において、二分割投与量のみが与えられ、これら分割投与量は上記領域のいずれに与えてもよい。さらに別の態様において、全く別の領域に分割投与量または全投与量が与えられる。MUC-1ベースの製剤を注射する場合、適切な注射位置は容易に決定することができる。
【0087】
より高い特異性を提供し、それにより理論的にインビボ投与時の毒性またはその他不要な影響のリスクを減らすために、いくつかの態様において、本発明の組成物を、それを通して作用するようにデザインされた細胞、すなわち抗原提示細胞について標的化している。これは、免疫原性ペプチド含有リポソームを体内の特定部位に方向付けする通常の標的化技術を用いることで都合よく達成できる。抗原提示細胞を標的化するために、例えば、抗体のマンノースおよびFc部位を抗原ペプチドに化学的に結合させることができ、または標的ペプチドを遺伝子組換え技術によって免疫原性リポペプチドに融合することができる。その他の類似の方策も、実施者には馴染み深いだろう。しかしながら、いくつかの態様において、本発明の組成物は特定の細胞タイプまたは器官に標的化されない。
【0088】
IX. 処置のための個体
NSCLCおよび前立腺癌などMUC-1ベースの製剤による処置が可能な癌であると診断されたいかなる被験体も、本明細書に記載のMUC-1ベースの製剤による処置を受けることができる。または、任意のステージのNSCLCまたは任意のステージの前立腺癌の症状など、MUC-1ベースの製剤による処置が可能な癌の任意のステージの症状を示すが、正式にはその癌を有すると診断されていない個体もMUC-1ベースの製剤による処置を受けることができる。さらにまた、上記したように、被験体をNSCLCまたは前立腺癌などMUC-1ベースの製剤による処置が可能な癌に罹らないようにするために、MUC-1ベースの製剤を予防的に与えることができる。
【0089】
MUC-1ベースの製剤による処置のためにNSCLCおよび/または前立腺癌を有する被験体など、MUC-1ベースの製剤による処置が可能な癌を有する被験体を選択する場合、処置前または処置中のいずれでもその被験体の血清MUC-1レベルを測定することは有益であろう。ある癌患者において高い血清MUC-1レベルと不良な予後とが関連づけられている。例えば、Pihlら、Pathology, 12: 439-447 (1980)を参照されたい。血中MUC-1の異常量は、外因性のMUC-1ベースの製剤の有効性、相互作用を妨げ、または減じることから、内因性のMUC-1の量を知ることは、被験体に投与する適切なMUC-1ベースの製剤の量を決める上で役立つことがある。
【0090】
A. 腫瘍マーカーCA27.29(MUCl)
CA27.29は、MUC-1タンパク質を同定するために、特に被験体の血流、または血液、尿、もしくは血清試料などの適した生体試料内を循環するMUC-1タンパク質断片を同定するために、特に有用な標的である抗原の名称である。CA27.29抗原は、MUCl産物のタンパク質コアに特異的なモノクローナル抗体によって検出することができる。重複する合成ペプチドと共にマッピングされる最小エピトープは、適したモノクローナル抗体を同定するために用いることができる。そのような抗体の1つはB27.29である。
【0091】
MUC-1タンデムリピートの数およびMUC-1エピトープの転写後グリコシル化などいくつかの変数が、MUCl関連マーカーのインビボでの検出および定量に影響する可能性がある。MUC-1およびその断片のインビボ検出は、変化したムチンの生化学に対する宿主応答の結果として癌患者に時折見られる循環する抗ムチン自己抗体の存在によってさらに複雑になり得る。抗体は、アッセイ形式に応じて、MUCl検出に影響し得るムチン抗体ムチン免疫複合体を形成することができる。参照により本明細書に組み入れられるGion et al., Clinical Chemistry, 45: 630-637 (1999)を参照されたい。
【0092】
酵素結合免疫吸着アッセイなど任意の方法を用いて、被験体の血液試料におけるCA27.29抗原の量について検出またはアッセイすることができる。別のアッセイ法は、ACS:180 BRアッセイ(Bayer Diagnostics)であり、これは完全に自動化された競合的化学発光免疫測定法である。MUC-1バックボーンのタンデム領域内のペプチドエピトープに対して産生され、アクリジニウムエステルで標識されたマウスモノクローナル抗体を、患者試料および常磁性粒子と共有結合している精製したCA27.29(固相)の両方と共に7.5分間インキュベートする。試料中の抗原および固相のCA27.29の両方は、標識した抗体への結合について競合する。したがって、逆相関は試料中の抗原の量とシステムによって検出された相対発光量との間で見い出される。アッセイは製造業者の説明書に従って実施することができる。
【0093】
別のアッセイ法は、TRUQUANT BRラジオイムノアッセイであり、これは上記のモノクローナル抗体B27.29を用いて血清中のCA27.29ムチン抗原を定量する。MacLean et al., J. Immunother., 20(l):70-8 (1997)を参照されたい。
【0094】
典型的に、実施例4に例示した本件の場合、血清または循環血液中のCA27.29抗原の正常レベルは約37.7 U/mlである。約37.7 U/mlを上回る血清MUC-1レベルは異常を示す。
【0095】
当業者の権限内で、個体のそれぞれの群において、CA27.29抗原などの循環するMUC-1ペプチドの閾値レベルを決定してもよい。すなわち、値「37.7 U/ml」は、アッセイ可能なすべての集団について必ずしも決定的な閾値ではない。「正常」量の循環するCA27.29は例えば、所望の亜集団から決定することができ、正常または異常のいずれかとしてC27.29量を分類するための指標として用いることができる。
【0096】
本件の場合、C27.29レベルによって測定した循環するMUC-1の正常レベルに対する上限は、37.7 U/mlであった。したがって本発明によると、約37.7 U/mlまたは約37.7 U/mlより低いMUC-1レベルを有する個体は、BLP25または本明細書に記載の他のMUC-1製剤の一つなど、MUC-1ベースのワクチンによる処置に適した候補である。
【0097】
同様に本発明によると、循環するMUC-1の異なる「閾値」の正常レベルかまたはそれ未満のMUC-1レベルを有する被験体はまた、BLP25または本明細書に記載の他のMUC-1製剤の一つなど、MUC-1ベースのワクチンによる処置に適した候補である。
【0098】
B. HLA A2タイピング
用語HLAは、ヒト白血球抗原系を意味し、これは第六染色体の短腕上の遺伝子によって制御される。HLA遺伝子座は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)として公知の遺伝領域の一部である。MHCは免疫応答の正常機能に不可欠な遺伝子(HLAを含む)を有する。HLA抗原の重要な役割は、自己認識の制御およびしたがって微生物に対する防御にある。いくつかのHLA抗原は、血液細胞だけでなく身体の組織のすべてで認識される。
【0099】
ヒト白血球抗原(HLA)A2は、HLA A遺伝子座で最も不均一なアレルであり、約56の異なるサブタイプを有する。A02分布における実質的な不均一性は、世界的な集団において確認されてきた。HLA B40は、A2ハプロタイプに関連する最も一般的なアレルである。HLA A2はまた、アルツハイマー、乾癬性関節炎、白斑、および肺結核を含む多くの疾患に関係している。
【0100】
個体の血液もしくは組織試料中のHLA A2タンパク質、またはDNAもしくはRNAのいずれかの存在を検出することが可能である。したがって、後者の種類のアッセイ法において、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いてHLA A2 DNA、RNA、またはcDNAを検出することができる。例えば、PCRに基づくリバースブロット配列特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション技術である。または、HLA A2特異的プローブを用いたサザンブロットまたはノーザンブロットを使用してもよい。他方で、抗体を用いてHLA A2タンパク質を検出することができる。
【0101】
HLA核酸またはHLA A2タンパク質の有無は、BLP25などのMUC-1ベースのワクチンによる処置のために被験体を準備する際に考慮されるべき要因である。
【0102】
X. NSCLCを有する個体
NSCLCを有する被験体が本発明のMUC-1ベースの製剤による処置を受ける場合は、ステージIIIB局所領域性(LR)、癌性胸水を伴うステージIIIB、またはステージIVのNSCLCであると診断された被験体が特に処置され得る。しかしながら、本発明はまた、ステージIII局所領域性、ステージIII胸水、およびステージIVの疾患以外の個体の処置も包含する。したがって本発明は、ステージIA、ステージIB、ステージIIA、ステージIIB、ステージIIIA、ステージIIIB、ステージIIIB局所領域性、ステージIIIB胸水、およびステージIVのNSCLCと診断された患者の処置を意図している。参照として本明細書に組み入れられる、Mountain C. F., Chest.; 111(6):1710-7 (1997)を参照されたい。
【0103】
A. 肺癌のステージ分類
一般的に、MUC-1ベースの製剤をNSCLCを有する被験体に用いる場合には、個体のNSCLCのステージを処置の前、後、または最中に決定できる。肺癌のステージ分類の概要を以下に記載する。
【0104】
通常、肺癌では「ステージ」番号が大きくなるほど予後は不良である。特定ステージの個体を診断するには、原発腫瘍のサイズと位置(「T」値)ならびに結節の関与程度および転移の増大可能性(「N」値)を考慮する。また個体を転移なし(「M0」)または転移有り(「M1」)と診断することもある。
【0105】
1. T分類
T分類は小分類T1〜T4からできており、これにより数字が1から4に増加するに従い原発性腫瘍のサイズおよび局所浸潤は大きくなる。T1およびT2は主にサイズで区別され、例えばT1は3cm未満であるのに対し、T2は3cmより大きい。T3腫瘍は、一般的に胸壁を含み、上部肺溝、横隔膜、縦隔胸膜、心膜、または近位気管支幹を含むが、これらに限定されるものではなく、また切除可能である。T4腫瘍は、縦隔膜を侵しているために外科的切除はできず、また心臓、大血管、気管、竜骨または食道を含むこともあり、また癌性胸水がある場合には、胸膜も関係することがある。
【0106】
2. N分類
結節ステージは、N1、N2およびN3に分けられる。N1結節は一般的に気管支周辺または同側性の肺門結節を含む。これら結節は胸膜内に位置する。N2結節は、一般的に同側性の縦隔または竜骨下結節を含む。N3結節は、一般的には対側性の肺門、または縦隔、斜角筋結節、または鎖骨上結節を含む。
【0107】
3. NSCLCステージ
したがってNSCLCの「ステージ」は、T、NおよびM値の様々な順列に基づいた明瞭なNSCLCの分類である。認められているNSCLCのステージは次の通りである。
【0108】
潜伏癌
このカテゴリーでは、患者はTX N0 MOと分類され、患者は気管支肺分泌物には悪性細胞が検出されるが、気管支強または放射線撮影法による腫瘍の証拠はないことを意味する。
【0109】
ステージIAおよびステージIB
ステージIAは、ステージIBの疾患患者(T2 N0 M0)よりも5年生存率が有意に良好であることに基づき、T1 N0 M0と分類される。これらの患者には手術が好ましい処置である。1997年に、ステージIAに外科的に分類された患者の5年生存率は67%であり、またステージIBの同生存率は57%であった。
【0110】
ステージIIAおよびステージIIB
ステージIIAの疾患は、T1 N1 M0と定義され、外科的分類ベースの5年生存率は55%である。ステージIIBの疾患は、T2 N1 M0およびT3 N0 M0から構成されている。T3 N0 M0の判定は、リンパ節が関与しない腫瘍の肺外への拡張を表している。T3 N0 M0の分類にはT2 N1 M0も加えられているが、それはその外科的に分類された疾患の5年生存率がそれぞれ38%対39%であり、有意な差がないからである。これらの個体にとっても、手術が第一の処置法である。
【0111】
ステージIIIA
ステージIIIA患者は、切除可能と考えられるが、一方ステージIIIB患者は切除できない。ステージIIIA患者は、肺外への拡張(T3)を伴い、かつリンパ節の関与は限定的な(N1またはN2)病変により定義される。結節の関与は、同側性縦隔および/または竜骨下リンパ節にまで広がることがある。これらの患者はT3 N1 M0またはT1-3 N2 M0のいずれかに分類される。1997年時点のステージIIIA疾患の5年生存率は23%であった。
【0112】
ステージIIIB
ステージIIIB分類は、対側性縦隔または肺門リンパ節;同側性または対側性の鎖骨上または斜角筋結節;遠位部転移を示さない広範囲の縦隔結節;または細胞学的に陽性である癌性胸水を含むが、これらに限定されない肺外関与を示す患者を指す。これらの患者はT1-3 N3 M0またはT4 N0-3 M0のいずれかに分類できる。1997年では、臨床的に分類された疾患の5年生存率は、多様な処置を受けた状態で5%である。
【0113】
ステージIV
ステージIVは任意の転移の関与により定義される。これらの患者はいずれかのTおよびいずれかのNを持つM1によって分類される。1997年の時点では、NSCLC患者の4分の1を超える患者が臨床上ステージIVであった。
【0114】
XI. 前立腺癌を有する個体
多様な処置を受ける進行ステージの肺癌を患う生存率の低い個体と同様に、前立腺切除術後に生化学的障害を経験している前立腺癌を有する男性には殆ど処置選択肢がない。彼らの一つの処置選択は、アンドロゲン剥奪処置(ADT)である。残念なことにこの処置法は、特に長期間用いた場合には、顕著な病的状態をもたらす。
【0115】
前立腺癌を有する個体では、例えば前立腺が肥大した場合に、前立腺特異的抗原(「PSA」)の血中レベルが上がる傾向にある。したがってPSAは前立腺癌の良好な生物学的または腫瘍マーカーである。より進行した疾患を有する個体においては、処置によるPSAの低下と生存率の改善との間に相関性がある(Scher, et al., J. Natl. Cancer Inst.; 91(3):244-51 (1999))。
【0116】
XII. NSCLCまたは前立腺癌を有する個体の処置
本発明は、本発明のMUC-1ベースの製剤を用いた、NSCLC全ステージのNSCLC個体の処置、およびPSA障害を有する、根治的前立腺切除術後の前立腺癌個体を含む、前立腺癌を有する個体の処置を包含する。「処置する」という語句は、製剤またはワクチンが、病的状態、疾患の進行、疾患病原因子、またはその他異常な状態の悪影響を予防、治癒、逆転、緩和、変更、最小化、抑制、または阻止するために有用であることを意味するのに用いる。
【0117】
いくつかの態様において、NSCLCまたは前立腺癌のいずれかを有する個体は、本発明の組成物を用いる処置の前に、すでに放射線もしくは手術による処置を受けていてよい。個体はまた、本発明のMUC-1ベースの製剤による処置を受ける前、受けている間または後に、化学療法、放射線、また手術を受けてもよい。これらの個体例では、MUC-1ベースの製剤による処置の前、処置の間、または処置の後に許容される癌処置を行うことができる。
【0118】
本発明の製剤およびワクチンを用いて処置する個体を選ぶ場合は、試験対象基準および試験除外基準を用いてよい。例えば、一つの態様において、NSCLC個体をMUC-1ベースの製剤によって処置する場合、処置対象個体は、その疾患が安定している、または第一選択(first-line)の標準的化学療法完了後に処置に反応した、18歳を超える年齢の男性または女性でよい。上記以外の個体をMUC-1ベースの製剤で処置することもできる。実際、本発明の組成物で処置を受けた一部の個体は、MUC-1ベースの製剤による処置の前に化学療法による処置を受けていないだろう。
【0119】
XIII. NSCLCを有する個体について考えられる試験対象基準および試験除外基準
別の態様において、処置対象に選ばれたNSCLL個体は、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンス ステータス2、好中球数1.5×109/L;血小板数100×109/L;WBC2.5×109/Lおよびヘモグロビン90g/Lである。ECOGの数値を処置に関する個人の評価に用いてもよいが、処置前、処置中、または処置後に特定のECOG数は必須ではない。
【0120】
別の試験対象基準としては、4ヶ月の予想生存率が挙げられるが、この場合個人がこれを理解し同意書に署名をする。当然これらは試験対象基準に確定されるのではなく、生存の見込みが低い個人の処置も想定している。さらにまた、MUC-1ベースの製剤が癌処置の主流になった場合には、個体に本発明の組成物が処方されることも考えられるが、この場合同意書への署名は必要ないだろう。
【0121】
処置から除外される可能性のあるNSCLC個体について、試験除外基準は単に指針を意味しているに過ぎない。多くの例では、1つまたは複数の試験除外基準に該当する個体が、すべての試験除外基準が該当する場合も含めて、それでもMUC-1ベースの製剤による処置を受けることがあるだろう。NSCLC個体の試験除外基準の例としては下記が挙げられる:(a)処置前4週間以内の手術または免疫療法、(b)処置前3週間以内の全身性コルチコステロイドを含む免疫抑制薬投与、(c)肺癌以外の癌の病歴または既往歴、(d)自己免疫疾患または認知されている免疫不全疾患、(e)臨床上顕著な肝臓または腎臓の機能不全、(f)顕著な心臓疾患または活動性の感染症、または(g)脾臓摘出手術を受けた。
【0122】
XIV. 前立腺癌を有する個体について考えられる試験対象基準および試験除外基準
NSCLCを有する個体と同様に、前立腺癌を有する個体もまた試験対象基準および試験除外基準にかけることができる。この場合も、これら基準は単なる指針であり、試験対象基準のいずれかを満たさないか、または試験除外基準のいずれか、またはすべてを満たす前立腺癌罹患個体を、それでも本発明の方法で処置してもよい。前立腺癌を患う個体では、試験対象基準としては次の事項を挙げることができる:(a)根治的前立腺切除術が処置の少なくとも6ヶ月前である、(b)前立腺切除術後の最低値から少なくとも50%の増加を伴い、根治的前立腺切除術後に血清PSA値が3回連続して上昇している、(c)骨盤CTおよび骨スキャンの陰性結果により証明されるように、処置前評価時に悪性疾患の証拠が見られない、(d)ECOGパフォーマンス ステータスが0、1である、(e)血液学検査、肝臓および腎臓機能検査が正常である、(f)書面による同意書を理解し署名している;および(g)前立腺癌のためにホルモン治療(すなわちRP前ネオアジュバント療法)を受けたことがある個体については、血清テストステロンが正常範囲内になければならない。上記したように、これらの基準は単なる指針であり、別の基準を示す多くの個体が本発明の方法を用いて処置を受けることができる。例えば、根治的前立腺切除術を受けたことがない前立腺癌を罹患している個体を処置してもよい。さらにまた、増加した血清PSAを示していないか、またはその個体の血清PSAが連続しては増加しないかもしくは前立腺切除術後の最低値に比べて50%を超える増加を示さなかった個体を処置してもよい。
【0123】
必須ではないが、前立腺癌を有する個体に用いることができる試験除外基準としては次のものが挙げられる:(a)処置前6ヶ月以内のホルモン治療、(b)処置前4週間以内の免疫治療、(c)処置前1年以内の前立腺床に対する放射線治療、(d)シクロスポリンもしくは副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)のような免疫抑制薬を用いた処置またはコルチコステロイドによる所要の慢性処置、(e)公知自己免疫または免疫抑制疾患、あるいは(f)臨床上有意な心臓疾患または活動性感染症。この場合も、これら試験除外基準は単なる例である。例えば、前立腺癌および臨床上有意な心臓疾患の両方を患う個体を、個別例として本発明の方法で処置してよい。
【0124】
XV. 処置効果
本明細書に記載するMUC-1ベースの製剤を用いた処置は、様々な効果をもたらすことができる。NSCLCと診断された個体、特にステージIIIBのNSCLCと診断された個体を、MUC-1ベースの製剤を用いて処置することの一つの効果は、生存期間の延長である。同様に、記載のMUC-1ベースの製剤を個体に投与することは、その個体の「生活の質」または「健康に関係する生活の質」に影響を与え得る。生存期間の延長、ならびに生活の質への影響は、処置を受けた前立腺癌を有する個体についても見ることができる。さらに、前立腺癌を有するある個体では、MUC-1ベースの製剤による処置は、PSAの低下、PSAの安定化、またはPSA倍加速度の減少をもたらすだろう。
【0125】
MUC-1ベースの製剤を用いた処置効果の比較は、処置を受けた個体と、全く処置を受けていない個体かまたは最善の支持療法(BSC)を受けている個体のいずれかとの間で行うことができる。BSCは、MUC-1ベースの製剤による処置を含まない、多くの別タイプの療法を含んでいる。例えば、BSCは、通常状況に任意に応じているが、心理学的サポート、鎮痛および栄養学的サポートを含んでもよい。いくつかの態様において、処置効果の比較は、様々な量のMUC-1ベースの製剤を投与された個体の間で行うことができる。さらに別の態様において、個体はMUC-1ベースの製剤を用いた処置と共にBSCが行われる。
【0126】
本発明のMUC-1ベースの製剤を用いて個体を処置する前に、個体を処置前評価にかけてもよい。処置前評価の非限定例としては、病歴調査および身体検査が挙げられる。身体検査としては、CTスキャンまたはX線検査等が含まれる。個体はまた、処置途中において処置評価を受けてもよい。処置評価としては、個体の生命兆候のモニタリング、注射部位の検査、および血液試料の分析が挙げられるだろう。
【0127】
処置を受けた個体は、次の事項を決定することによって評価することもできる:(a)腫瘍のサイズ、(b)腫瘍の位置、(c)結節ステージ、(d)NSCLCまたは前立腺癌の成長速度、(e)個体の生存率、(f)個体の肺癌または前立腺癌症状の変化、(g)個体のPSA濃度の変化、(h)個体のPSA濃度倍加速度の変化、または(i)個体の生活の質の変化。
【0128】
XVI. MUC-1ベースの製剤またはBLP25リポソームワクチンを投与することによる、NSCLC個体の生存時間の延長
本発明のMUC-1ベースの製剤を用いてNSCLCまたは前立腺癌を有する個体を処置することの利点の一つは、個体が、本発明の組成物を用いた処置を受けていない個体に比べ生存時間が長くなり得ることである。生存率は、生存者数とMUC-1ベースの製剤による処置を開始した時の個体数とを比較することによって決定できる。別の態様において、生存率は特定のタイプの癌について公表されている生存率と比較してもよい。一般に、生存率は処置開始後の任意の時点で測定してよい。
【0129】
例えば、生存率は処置開始後6ヶ月未満、6ヶ月より長いが1年未満、1年以上2年未満、2年以上5年未満、または5年以上で測定できる。いくつかの態様において、生存率の増加は本発明のMUC-1ベースの製剤が特定の個人に効果を及ぼしている証拠となるだろう。
【0130】
XVII. MUC-1ベースの製剤投与による生活の質および肺癌症状の維持
上記したように、NSCLCまたは前立腺癌を患う個体を、本発明のMUC-1ベースの製剤を用いて処置する別の利点は、個体の生活の質の維持または向上である。医師および監督機関は、個体の「生活の質」(「QoL」)が癌の臨床試験の重要なエンドポイントであることを認識している。例えば、参照として本明細書に組み入れられる、Plunkettら、Clin. Lung Cancer, 5(1):28-32 (2003)、およびCellaら、J. Clin. Epidemiol., 55(3):285-95 (2002)を参照されたい。
【0131】
4つの、最も重要な生活の質の指標は、身体および職業的機能、心理学的状態、社会的相互作用、および体性感覚である。この局面において、NSCLCを患った個体では、二種類の肺癌アンケート調査、the European Organization for Research and Treatment of Cancer(「EORTC」)およびthe Functional Assessment of Cancer Therapy(「FACT-L」)を用いて、個体の、特に個体の健康に関係する生活の質を、本明細書に記載のMUC-1ベースの製剤を用いた処置の前、処置の間、および処置の後について評価できる。
【0132】
本発明の方法は、個人の身体的健康度(PWB)、社会/家族健康度(SWB)、情緒健康度(EWB)、機能的健康度(FWB)および肺癌症状サブスケール(LCS)をモニタリングする様々なサブスケールを用いた評価と組み合わせて用いてよいことが予想される。肺癌症状サブスケールは、明らかに肺癌を患った個体に合わせて作られたものであるが、別のタイプの癌には別のサブスケールを用いることもできる。このようにして前立腺癌を患った個体には、別のサブスケールを用いてよい。「健康度」のスコアの組み合わせによって、「FACT-Lスコア」(全サブスケールの合計)または「試験結果スコア(TOI)」(PWB、FWBおよびLCSサブスケールの合計)を得ることができる。TOIは生活の質の重要な変化の信頼できる指標である。上記Cellaらを参照されたい。
【0133】
個体は、本発明のMUC-1ベースの製剤による処置の前、処置の間、および処置の後にそのFACT-LおよびTOIスコアについて評価を受けることができる。例えば、TOIスコアは、ベースライン時、すなわち処置前、およびその後処置開始から様々な間隔、すなわち4週目、8週目、19週目、31週目、または43週目、あるいはそれ以降で取ってよい。これら様々な間隔は例示であって、生活の質の指標は任意な適当な時間で取ることができる。例えば、最初のTOIスコアは、ベースライン時に代わって最初の処置の後に取ってよい。その後、様々な時点間のスコアの変化を計算し、生活の質の改善、悪化または維持に関する傾向を判定してもよい。
【0134】
LCSがベースラインから3点以上低下することは、肺癌症状の臨床上有意な悪化であり、3点以上の上昇は肺癌症状の臨床上有意な改善と計算されている。同様に、TOIスコアについても7点以上の減少は生活の質の悪化を示し、7点以上の上昇は生活の質の向上を示す。
【0135】
いくつかの態様において、肺癌症状または生活の質の臨床的改善は、MUC-1ベースの製剤が特定の個体に効果を及ぼしていることを証明するだろう。
【0136】
したがって、本発明のMUC-1ベースの製剤の投与は、NSCLCまたは前立腺癌を有する、処置を受けた個体の生活の質の改善または維持に役立つだろう。生活の質への効果の測定では、効果の大きさはベースラインからまたは任意の処置ポイントから決定できる。いくつかの態様において、0.2から<0.49の間の効果サイズは小さな効果を示し、0.5から0.79は中程度の効果を示し、0.8以上が大きな効果を示す。これらの数値は例示に過ぎず、効果サイズは特定の個体の処置と共に変化するだろう。
【0137】
MUC-1ベースの製剤の投与はまた、多くの癌患者で経時的に見られる生活の質の悪化防止にも役立つだろう。例えば、いくつかの態様において、BLP25リポソームワクチンのようなMUC-1ベースの製剤の投与は、生活の質指数を本質的に無変化に保つか、または生活の質を悪化のレベルにも、もしくは改善のレベルにも達しないようにするだろう。
【0138】
一つの態様において、本発明は、本明細書に記載のBLP25 MUC-1ベースの製剤を用いた処置の前、処置の間、および処置の後の個体のTOIまたはLCSスコアを決定することによって、NSCLCと診断された個体の生活の質を改善もしくは維持すること、あるいは肺癌症状を改善もしくは安定化することを包含する。
【0139】
XVIII. PSA倍加時間の短縮
いくつかの態様において、本発明のMUC-1ベースの製剤による前立腺癌を有する個体の処置は、PSA濃度の低下、PSA濃度の安定化、またはPSA倍加時間の短縮をもたらすだろう。一般的に、PSA濃度またはPSA倍加時間へのMUC-1ベースの製剤の作用は、任意の時点で測定してよい。例えば、処置後のPSA濃度はベースライン値と比較することができるが、PSA濃度は処置ポイント間、または特定の処置ポイントと処置終了時との間で比較してもよい。ある態様において、PSAの反応は処置中に確認されるだろう。
【0140】
XIX. 免疫機能を用いた処置の評価
いくつかの態様において、MUC-1ベースの製剤に対する個体の反応は、T細胞増殖反応アッセイのような免疫機能試験を用いて測定されるであろう。いくつかの態様において、T細胞増殖反応アッセイの結果を用いて、MUC-1ベースの製剤処置が個体に有効であるか判定するであろう。これらアッセイの結果はまた、処置経過中の様々な時点での製剤に対する個体の反応を判定するのに用いてもよい。
【0141】
増殖性のT細胞を測定するアッセイは特に限定されず、当技術分野公知のいずれかの方法によって成し遂げることができる。T細胞の増殖反応の比較を行って、処置前と処置後の反応を比較するだけでなく、処置中の免疫反応を比較してもよい。
【0142】
XX. その他の癌
本発明は、本明細書に記載のMUC-1ベースの製剤によるNSCLCおよび前立腺癌に加えて、別の癌の処置も包含する。
【0143】
MUC-1を発現する癌を有するいかなる患者も、MUC-1ベースの製剤による処置の対象となり得る。例えば、MUC-1タンパク質を発現している粘液性型の癌または腺癌を有する個体は、BLP25リポソームワクチンによる処置の対象となり得る。腺癌の例としては、卵巣癌、肝臓癌、例えば肝臓の侵襲性の胆管癌、結腸癌、乳癌、膵臓癌、例えば膵臓の侵襲性腺管癌、および腎臓癌、ならびに多発性骨髄腫が挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の癌には、子宮頸癌、子宮癌、および白血病が含まれる。MUC-1を発現する別の癌は、頭頸部癌である。
【0144】
以下の実施例は、本発明を例示することを目的としており、本発明を制限するものではない。これらは本発明の方法の典型的な使用法であるが、本発明の精神に従うその他の方法も予想され、また用いることができるだろう。本明細書全体にわたって、米国特許を含む公に利用可能な文書はすべて、参照として具体的に組み入れられる。
【実施例】
【0145】
実施例1
NSCLC処置に関するリポソームMUC1ワクチンの第II相試験
本実施例は、ステージIIIB局所領域性またはステージIV NSCLCを有する被験体の処置に及ぼすL-BLP25ワクチンの効果を証明する。
【0146】
L-BLP25ワクチンで処置を受けた患者は、生存率の上昇を示した。さらにまた最善の支持療法単独の場合に比べて、最善の支持療法にBLP25リポソームワクチンを追加することの明瞭な優位性が、FACT-L総スコアおよび試験結果指数により測定した場合、処置期間および処置維持期間を通して身体的健康度が安定して維持されること、および個体の生活の質が維持されることから証明された。
【0147】
方法
対照オープンラベル第IIb相試験には171名の患者を登録した。171名の登録患者のうち65名がIIIBの局所領域性疾患を患っていた。そのうち35名を処置群に、30名を最善な標準的療法に無作為に割り振った。グループは、年齢および人種に関してよくバランスが取られていた。最善の標準療法(BSC)群に比べて、より多くの女性患者およびECOG 0の患者が処置群に割り振られ(51.4%および36.7%、ならびに40.0%および26.7%)、また処置群には、試験登録前の癌処置として化学療法に加えて放射線処置を受けている患者の割合が高かった(91.4対76.7%)。
【0148】
この具体的な実験で使用したL-BLP25は、下記からなる凍結乾燥調製物である:(1)1000μgのBLP25リポペプチド、例えばSEQ ID NO:2を含むMUC-1ペプチド、(2)500μgの免疫アジュバントのモノホスホリルリピドA、ならびに(3)リポソーム生成物を形成する(i)〜(iii)の3種類の脂質:(i)17.3mgのコレステロール、(ii)3.6mgのジミリストイルホスファチジルグリセロール、および(iii)29.1mgのジパルミトイルホスファチジルコリン。
【0149】
L-BLP25群の患者全員に少なくとも5回のワクチン接種が行われ、これら患者の96.6%が第一相(primary phase)を終了し、69.3%が処置計画の維持相を続けた。試験中の第二選択(second-line)治療は、殆どの場合化学療法(第二選択または第三選択)、放射線処置、および手術であった。試験の第一次処置(primary treatment)期間中、L-BLP25群の患者5名およびBSC群の患者10名が第二選択治療を受けた。試験の維持期間を継続した患者のうち、L-BLP25群の43名の患者およびBSC群の45名の患者が第二選択治療を受けた。
【0150】
より多くの流入領域リンパ節を抗原刺激するために、ワクチンを4ヶ所の解剖学部位に投与した。1000μgのL-BLP25を4回に分けて0.5mLずつ皮下注射し、各注射が全用量の四分の一を含んだ。両上腕部の三角筋または三頭筋領域、ならびに腹部の左右前外側部に分割投与を行った。
【0151】
一般的に、本実施例で用いたように、生存時間は無作為化した日から死亡日までの時間として定義される。生存している患者または分析途中で追跡できなくなった患者については、無作為化日から患者の生存が確認できた最後の日までの区間を計算し、分析では打切り観察(censored observation)として用いた。本実施例では、生存は患者登録終了後12ヶ月間、3ヶ月の間隔でモニタリングした。
【0152】
決められた時点で、FACT-L QoLアンケート調査を患者全員に実施した。QoL分析では、ベースラインから第4週および第8週までのFACT-Lの個体変化の平均スコア、QoLスコアの経時変化グラフ、全スコアおよびサブスケールスコアに関する分析曲線下面積を評価した。処置群の間での生活の質の変化の効果サイズは、ベースラインから判定した。効果サイズ0.2から<0.49は小さな効果を示し、0.5から0.79は中程度の効果を示し、0.8以上は大きな効果を示す。
【0153】
結果
図2に示すように、ステージIIIB局所領域性患者に観察された2年生存率は、ワクチン群で60%であったのに対し、対照群では36.7%であり、平均余命が23.3%の有意義な延長をすることが証明された。患者集団全体では、2年生存率はワクチン群の43.2%に対し対照群の28.9%であり、平均余命が14.3%延長したことを証明している。図1を参照されたい。最善の標準療法のみを受けたステージIIIB局所領域性患者の生存期間中央値は、最善の標準療法を受けた全グループの全生存期間中央値、13.3ヶ月に近かった。これに対し、L-BLP25による処置を受けたステージIIIB局所領域性患者の全生存期間平均値は、最低平均期間24ヶ月で、まだ最終結論はでていないが、平均余命を少なくとも10.7ヶ月延長することが証明された。このことは、本発明のMUC-1組成物が導入される前は、このカテゴリーの患者にこのような結果をもたらすことができる実行可能な治療選択肢がなかったことから、驚くべきことであると同時に予想外である。
【0154】
生活の質に関しては、BSC群に比べL-BLP25群について明瞭な優位性が証明された。臨床上有意な改善を示すかまたは変化しなかった患者の数は、BSC群に比べL-BLP25群で多かった。BSC単独群では、より多くの患者が、臨床上有意な試験結果指数(TOI)の悪化を示した。
【0155】
方法
処置患者とBSC単独処置患者の間の、ステージIIIB局所領域性(LR)疾患および癌性胸水(PE)を伴うステージIIIB/IVサブグループの比較分析を、FACT-L全スコア、各種サブスケール、およびTOIについてT検定を用いて行った。全/TOI変化スコアがマイナスであることは、QoLの悪化を示し、一方、全/TOI変化スコアがプラスであることは改善を示す。サブグループ分析は、L-BLP25で処置したステージIIIBのLR患者についてより良いQoLを示した。このことは、BLP25で処置したステージIIIBのLR患者で生存率が臨床上有意に改善することを証明した先のデータと一致する(p=0.0692)。
【0156】
生活の質の比較結果を下表1に示す。
【0157】
(表1)NSCLC試験でのFACT-L生活の質の比較

【0158】
試験計画
2週間前:FACT-L QoLアンケート調査の配布。
2週間前:患者を、L-BLP25に最善の標準的療法を加えたものか、最善の標準的療法単独のいずれかに無作為に割り振った(最善の標準的療法としては、対症放射線処置および/または現在の標準的臨床基準に従った第二選択化学療法が挙げられ、また心理学的支援、鎮痛剤および栄養補給もこれに含めてよい)。
2週間前:処置前評価(病歴調査、身体検査、および臨床検査)。臨床的に正当な根拠がある場合には、その他潜在的疾患部位の評価も実施し、他の領域への疾患の進行を除外した。妊娠の可能性のある女性は、処置前に妊娠検査(HCG)が陰性であることを要求した。
3日前:処置群の患者にシクロホスファミドを300mg/m2単回静脈投与した。
第0〜7週:L-BLP25ワクチン接種#1〜#8(第一処置期間)。L-BLP25群の患者について生命兆候を評価し、さらに各L-BLP25処置の前に前回の注射部位を検査した。各L-BLP25処置の1時間後に生命兆候もモニタリングした。患者には、各ワクチン接種後にダイアリーカードを渡して有害事象を記録してもらい、次回来訪時毎に前回の注射部位を評価した。毒性はCALGB拡大基準(CALGB Expanded Criteria)にしたがって等級付けした。
第4週:処置群患者に対する処置および安全性の評価、ならびに免疫血液学検査。患者全員にFACT-L QoLアンケート調査。
第8週:処置評価(身体検査、ECOGステータス、生命兆候、L-BLP25群を対象とした処置部位検査、および有害事象評価)。血液試料を採取して標準的な安全性(血液学および化学)ならびに免疫反応についても分析した。患者全員にFACT-L QoLアンケート調査。
第19週+:維持ワクチン接種(6週間隔)および処置評価(12週間隔)。L-BLP25群の患者については、維持ワクチン接種毎に処置の評価および安全性血液検査を実施したのに加え、初回維持ワクチン接種後1週目に免疫学プロフィール試験を実施した。患者全員にFACT-L QoLアンケート調査。
【0159】
患者集団
試験対象基準
1. 年齢が18歳を超える、NSCLCを有する男女で、第一選択(first line)標準化学療法終了後にその疾患が安定しているか、または処置に反応した男女。
2. Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンス ステータス2、好中球数1.5×109/L;血小板数100×109/L;WBC2.5×109/Lおよびヘモグロビン90g/L。
3. 予想生存期間4ヶ月。
4. 同意書の内容を理解し、署名している。
【0160】
試験除外基準
1. 試験登録前4週間以内の手術または免疫療法。
2. 試験登録前3週間以内の、全身性コルチコステロイドを含む免疫抑制薬投与。
3. 肺癌以外の癌の過去および現在の病歴。
4. 自己免疫疾患または認定されている免疫不全性疾患。
6. 臨床上有意な肝臓または腎臓の機能不全。
7. 顕著な心臓疾患または活動性感染症、または脾臓摘出手術を受けた患者。
【0161】
(表2)NSCLC試験の患者特性

【0162】
実施例2
T細胞増殖反応アッセイ
本実施例は、本発明のMUC-1製剤が実施例1に示した中央生存値の増加に直接関与することを立証するものである。
【0163】
リンパ細胞増殖アッセイは、実施例1の試験に登録した患者を用いて、ワクチン接種前後にMUC1抗原特異的TH反応(ヘルパーT細胞の増殖)をモニタリングし、患者の抗MUC1細胞性免疫反応の動態を測定して実施した。T細胞増殖アッセイは、L-BLP25群の患者を対象に、免疫処置前と免疫処置後の複数時点について行った。
【0164】
L-BLP25群の患者のうち78名についてT細胞増殖反応を評価した。16名の患者がL-BLP25ワクチンによって誘導された陽性のMUC1特異的T細胞増殖反応を有すると判定された(前記反応は免疫処置前には存在していない)。免疫反応を生じた16名の患者のうち、2名がステージIIIB局所領域性疾患であり、残りの患者はステージIVの疾患であった。陽性の増殖反応を示したL-BLP群患者の生存期間中央値は27.6ヶ月であったのに対し、増殖反応が陰性であった患者のそれは16.7ヶ月であった。これらの結果は、本発明のMUC-1製剤が、生存中央値を平均余命10.9ヶ月延長することに直接関わったことを示している。
【0165】
実施例3
根治的前立腺切除術(RP)後のPSA障害例を対象とするリポソームMUC1ワクチンの第II相試験
本実施例は、根治的前立腺切除術後にPSAの増加を示した男性での、PSAレベルに対するL-BLP25ワクチンの免疫療法効果を示すものである。
【0166】
第一次処置期間終了時(第8週)、16名中8名の患者が安定したPSAを得た。1名の患者は試験期間終了時(第49週)まで安定したPSAを維持した。1名を除くすべての登録患者についてPSA倍加時間(「PSADT」)の延長が認められた。倍加時間は、個体のPSAレベルが2倍になるのに要する時間の長さであり、前立腺癌を有する個体の、手術後の生存を予測する因子である。本データは、患者16名中6名において、倍加時間が50%を超えることを示している。
【0167】
方法
前立腺切除術後にPSAが3回上昇したことで生化学的障害が証明された男性を登録した。これには16名の患者が含まれ、その年齢中央値は60歳であり、ECOGスコアは0または1、そしてグリーソンスコアの中央値は7であった。一次エンドポイントはMUC1リポソームワクチン(L-BLP25)の効力(PSA反応で測定した)および安全性とした。PSA倍加時間(PSADT)の変化も評価した。患者には、300mg/m2のシクロホスファミド(CTX)を単回、静脈投与し、その後8週間、毎週1回、1,000μgの抗原を含むL-BLP25を皮下ワクチン接種した(処置)。その後、ワクチン接種は6週間隔で49週目まで行った(維持)。処置および維持期間中PSA濃度を測定し、これら期間についてPSADTを計算して登録前のPSADTと比較した。
【0168】
16名の患者は全員CTXの投与を受け、16名中15名が処置期間を終了した。10名の患者が維持期間を終了した。最も一般的な処置後有害事象は悪心(31%)および疲労感(25%)であった;しかしながらこれら有害事象のうち等級1を超えるものはなかった。
【0169】
結果
導入後、評価可能な15名中8名が、PSAの安定化または減少を示した(PSA作業グループの定義による)。試験時の最終PSA測定では、一人の患者は安定したPSAを維持した。15名中6名の患者は試験前のPSADTに比べ、PSADTが>50%延長した。
【0170】
この個体集団でのL-BLP25ワクチンの使用によるPSA安定化または減少の一次エンドポイント(primary endpoint)評価は次の通りであった:
−16名中8名の個体が第一次処置期間後にPSAの安定を得た;
−16名中1名の個体が、維持期間終了までPSAの安定を維持した;および
−PSADTは、15名中の14名の被験者においてワクチン使用により延長した;16名中の6名の個体が>50%のPSADT延長を得た。
【0171】
試験計画
2週間前:処置前評価(身体検査、PSA濃度測定、骨盤CT、および骨スキャン)。
3日前:シクロホスファミド前処置。
第0〜7週:L-BLP25ワクチン接種#1〜#8(第一次処置期間)。
第8週:PSA反応を含む第一次処置期間の評価。
第13週:PSA反応の確認。
第13、19、25、31、37、43、および49週:L-BLP25ワクチン接種#9〜#15(維持期間)。
第43週:PSA反応の評価。
第49週:PSA反応の確認。
第50週:維持処置の評価。
【0172】
個体集団
試験対象基準
1. 根治的前立腺切除術が試験登録より少なくとも6ヶ月前である。
2. 根治的前立腺切除術後の最低値から少なくとも50%の増加を伴い根治的前立腺切除術後に血清PSA値が3回連続して上昇している。
3. 骨盤CTおよび骨スキャンの陰性結果により証明されるように、処置前評価時に悪性疾患の証拠が見られない。
4. ECOGパフォーマンス ステータスが0、1である。
5. 血液学、肝臓および腎臓機能検査が正常である。
6. 書面による同意書を理解し、署名している。
7. 前立腺癌のためにホルモン治療(すなわちRP前ネオアジュバント療法)を受けたことのある全患者については、血清テストステロンが正常範囲内である。
【0173】
試験除外基準
1. 試験登録前6ヶ月以内のホルモン治療。
2. 試験登録前4週間以内の免疫治療。
3. 試験登録前1年以内の前立腺床への放射線治療。
4. シクロスポリンまたは副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)のような免疫抑制薬を用いた処置またはコルチコステロイドによる所要の慢性処置。
5. 公知自己免疫疾患または免疫不全性疾患。
6. 臨床上有意な心臓疾患または活動性感染症。
【0174】
(表3)前立腺癌試験の患者特性

初期診断から試験登録まで(年):
平均値±S.D. 3.8±2.5
中央値 3.2
範囲 1.0〜9.5
前立腺切除術後最低値から試験登録まで(年):
平均値±S.D. 3.1±2.3
中央値 2.8
範囲 0.6〜9.1
ベースラインPSAμg/L:
平均値 3.8
中央値 0.4
25%/75% 0.1/0.8
【0175】
受けた処置

【0176】
(表4)PSA値
ベースラインから第8週まで(第一次処置期間)の患者毎のPSAの変化

【0177】
有害事象

【0178】
16名の患者のうち6名は、いずれのタイプの注射部位反応も報告しなかった。9名の患者は浮腫を報告した。潰瘍の発生はなかった。重症またはその後のワクチン接種を妨げるような事象は起きなかった。
【0179】
(表5)PSA倍加時間

区間A=試験前(試験登録前に、試験前PSAが初めて3回連続して増加してからベースラインまで)
区間B=維持(第8週から試験終了まで)
【0180】
実施例4
腫瘍マーカーCA27.29
図1は、回診、治療群(BLP25または対照)、および正常/異常レベルによる、患者のCA27.29値の度数分布を列挙する。MUCl(CA27.29)の血清レベルを、166名の患者のベースライン試料(BLP25群の患者4名(3−試料が得られなかった;1−不適切な標識)および対照群の患者1名(1−入力のためのデータが得られなかった)に対してデータが生成されなかった)、および153名患者の免疫処置後8の試料に対して決定した。CA27.29レベルによる治療群間の有意差は見られない。
【0181】
図5〜9は、CA27.29(MUCl)による生存期間のカプランマイヤー曲線を示す。図5は、異常レベルを有した患者と比較して、ベースラインでの抗原の正常レベルを有する患者に対する生存曲線を示す。本アッセイ法において決定されるように(Truquant(登録商標)BRラジオイムノアッセイ、1004名の健康な女性ドナー由来の血清に基づく)、MUClの血清レベルに対する正常の上限は、37.7 U/mlである。37.7 U/mlを上回った血清MUC1レベルは異常であると考えられた。ベースラインでCA27.29の正常レベルを有する124名の患者(BLP25群に63名および対照群に61名)および異常レベルを有する42名(BLP25群に21名および対照群に21名)がいた。ベースラインでCA27.29の正常レベルを有するこれらの患者の生存期間中央値は19.5ヶ月であり、一方異常レベルを有する患者の生存期間中央値は10.5ヶ月であった(Cox p<0.000l)。
【0182】
図6および7は、ベースラインでCA27.29の正常レベルを有するか異常レベルを有するかに基づいて、各治療群における患者の生存を図示する。BLP25群において(図6)、CA27.29の正常レベルを有するこれらの患者の生存期間中央値は24.2ヶ月であり、一方異常レベルを有する患者の生存期間中央値は9.8ヶ月であった(Cox p=0.0006)。対照群において(図7)、異常CA27.29レベルを有する患者に対する11.3ヶ月と比較して、CA27.29の正常レベルを有する患者の生存期間中央値は15.1ヶ月であった(Cox p=0.0042)。
【0183】
図8および9は、免疫処置前のCA27.29血清の正常レベルを有するか異常レベルを有するかに基づく、治療群B(対照)に対する治療群A(BLP25)の患者の生存の差を示す。図8に図示するように、15.1ヶ月の生存期間中央値を有した対照群におけるこれらの患者と比較して、BLP25群においてCA27.29の既存の正常レベルを有する患者は、24.2ヶ月の生存期間中央値を有した(Cox p=0.0605)。図9において、BLP25群においてCA27.29の既存の異常レベルを有する患者は、9.8ヶ月の生存期間中央値を有し、対照群におけるこれらの患者は11.3ヶ月の生存期間中央値を有した(Cox p=0.5234)。
【0184】
図10は、T細胞増殖による生存期間のカプランマイヤー曲線を示す。T細胞増殖アッセイは、治療群A(BLP25)の患者に対して、免疫処置前と免疫処置後のいくつかの時点との両方で行った。それらの時点の1つまたは複数が免疫処置前の時点での反応とは異なった反応を示した場合、これらの患者は次いで、陽性または陰性反応を有するとしてリストアップされた。BLP25群の患者のうち78名を、T細胞増殖反応について評価した。16名の患者がL-BLP25ワクチンによって誘導された陽性のMUC1特異的T細胞増殖反応を有すると判定された。カプランマイヤー生存曲線(図10)は、以下の3つの患者集団を示す:対照群、BLP25群における陽性増殖、およびBLP25群における陰性増殖。陽性の増殖反応を示したBLP25群のこれらの患者の生存期間中央値は27.6ヶ月であったのに対し、陰性の増殖反応を示したこれらの患者は16.7ヶ月の生存期間中央値を有し;かつ対照群の患者は13ヶ月の生存期間中央値を有した(Cox p=0.2148)。
【0185】
実施例5
HLAタイピング
HLAタイピングは、治療群A(BLP25)および治療群B(対照)におけるすべての患者に対して実施された。本タイピングは、患者が発現するHLAクラスIおよびIIアレルがワクチンの効果に対して重要であり得る可能性を考察するために行われた。HLAタイピングは、血清学ではなくDNA分析によって実施し、用いた命名法はDNAに対してのものである。各治療群について、所与のアレルに対する%頻度およびnを決定した。生存率分析のために、いずれの治療群においてもn19を有するHLAアレルを選択した。さらに、このハプロタイプに対して公知のMUCI CTLエピトープがあることから、分析はHLA 11に対して実施した。
【0186】
図11は、処置群間で選択したHLAタイプについて実施した生存率分析を図示する。表は、ハプロタイプ/アレル、そのハプロタイプを有する患者の総数(各患者は複数のハプロタイプを有する)、BLP25群および対照群におけるそのタイプを有する患者の数、BLP25群および対照群におけるこれらのハプロタイプを有する患者についての生存期間中央値、ならびに処置を比較する場合ログランク検定およびCox H.R.分析による統計的有意性を列挙する。
【0187】
図12〜16は、HLAアレルのいくつかについてのカプランマイヤー生存率分析の結果を図示する。これらの分析は、Cox H.R.分析における研究開始時の反応層別化および段階分けに対して補正した。図12は、研究群の各々におけるHLA A02を有する患者の生存を示す。BLP25群においてこのタイプを有する患者は44名、対照群においては36名の患者がいた。対照群のHLA A02患者に対する11.9ヶ月の生存期間中央値と比較して、BLP25群のHLA A02患者は22ヶ月の生存期間中央値を有した(Cox p=0.0063)。図13は、DQB 1-05アレルを有する患者における2つの治療群間の生存の差を示す。BLP25群(n=25)においてこのアレルを有する患者の生存期間中央値は、まだ得られていないが、対照群(n=27)におけるこれらのDQB 1-05患者の生存期間中央値は12.9ヶ月である(Cox p=0.0213)。図14は、DRB 1-04ハプロタイプを有する両群における患者の生存を示す。BLP25群においてこのハプロタイプを有する患者は22名、対照群においては23名の患者がいた。BLP25群におけるこれらの患者に対して生存期間中央値は22ヶ月であり、対照群におけるこれらの患者に対しては11.8ヶ月であった(Cox p=0.0043)。
【0188】
図15は、DQB 1-02アレルを有する両群における患者に対する別の生存曲線を示す。BLP25群(n=31)においてこのアレルを有する患者は、わずか9.8ヶ月の生存期間中央値を有し、一方対照群におけるこれらの患者は16ヶ月の生存期間中央値を有した(Cox p=0.0424)。
【0189】
図16は、図17に列挙した同じハプロタイプに対する処置群内のさらなる生存率分析を図示する。表の最初の半分は、ハプロタイプ、そのハプロタイプについて陽性および陰性であるBLP25群における患者の数、ログランクおよびCox H.R. p値、ならびにそのハプロタイプについて陽性および陰性であるBLP25群における患者の生存期間中央値を列挙する。表の残りの半分は、対照群におけるそれらの患者に対する同じ情報を提供する。
【0190】
最後のカプランマイヤー生存曲線(図18)は、CW07アレルを有さない患者(n=43)に対してCW07アレルを有するのみのBLP25群における患者(n=45)を示す。BLP25群においてCW07アレルを有した患者はわずか12.6ヶ月の生存期間中央値を有する一方、そのアレルを有さない群の患者は24.2ヶ月の生存期間中央値を有した(Cox p=0.0171)。CW07アレルを有する対照群および有さない対照群における患者の生存における実際の差はなかった(グラフは示さず)。さらに、CW07アレルを有したBLP25群における患者の生存およびアレルを有した対照群における生存に実際の差はなかった(データ示さず)。
【0191】
了解されるように、本明細書に開示したすべての範囲は、可能なありとあらゆる小範囲およびその小範囲の組み合わせを包含する。したがって記載した範囲は、その範囲は少なくとも1/2、1/3、1/4、1/5、1/10等に等分することができるように十分記載されており、またそれが可能であることが容易に理解できるだろう。非限定的な例を挙げると、本明細書で論じる各範囲は、上1/3、中1/3、下1/3のように容易に分割できる。同様に了解されるように、「まで」「少なくとも」「より大きい」「未満」「より多い」等の言葉は、すべて引用された数字を含み、またさらに上記同様にそれに続いて小範囲に分割できる範囲を指す。同様に、本明細書に開示するすべての比もまた広い比の中に入る下位の比をすべて包含する。
【0192】
また、数字がマーカッシュグループのような一般的な様式でグループ化されている場合、本発明は全体として記載された完全なグループだけでなく、グループの各メンバーそれぞれ、および主要グループについて可能なすべての小グループも包含する。したがって、すべての目的について、本発明は主要グループだけでなく、主要グループではない一つまたはそれ以上のグループのメンバーも包含する。本発明はまた、請求する本発明に含まれる、いずれかのグループメンバーの1つまたは複数を明示的に除外することも想定する。
【0193】
本明細書に開示されているすべての参考文献、特許、および刊行物は、それを参照することによって、具体的に組み入れられる。特に明記しない限り、「一つの(aまたはan)」は「1つまたは複数」を意味する。
【0194】
本発明の方法および組成物には、本発明の精神または範囲から逸脱することなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。それゆえに、本発明は、それらが添付の特許請求の範囲およびその同等の範囲内にある場合には本発明の変更および変形を包含するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、非小細胞肺癌を有する被験体を処置する方法:
(a)処置のために、非小細胞肺癌を有する被験体を選択する段階:ならびに
(b)ある期間にわたって、以下を含むMUC-1ベースの製剤を被験体に投与する段階:
(i)リポソーム;および
(ii)SEQ ID NO:1のアミノ酸配列、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列の免疫学的に活性な変異体、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列、およびSEQ ID NO:2のアミノ酸配列の免疫学的に活性な変異体からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも一つのポリペプチド。
【請求項2】
以下の段階を含む、前立腺癌を有する被験体を処置するための方法:
(a)処置のために、前立腺癌を有する被験体を選択する段階;ならびに
(b)ある期間にわたって、以下を含むMUC-1ベースの製剤を被験体に投与する段階:
(i)リポソーム;および
(ii)SEQ ID NO:1のアミノ酸配列、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列の免疫学的に活性な変異体、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列、およびSEQ ID NO:2のアミノ酸配列の免疫学的に活性な変異体からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも一つのポリペプチド。
【請求項3】
製剤が少なくとも一つのアジュバントをさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
アジュバントが、リピドA、ムラミルジペプチド、ミョウバン、サイトカイン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
リピドAが、モノホスホリルリピドAまたは合成リピドAである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
サイトカインがインターロイキン2である、請求項4記載の方法。
【請求項7】
処置した被験体を評価する段階(c)をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
処置した被験体を評価する段階が、(i)段階(b)の期間の前;(ii)段階(b)の期間の間;(iii)段階(b)の期間の後;または(iv)それらの組み合わせにおいて実施される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
処置した被験体を評価する段階が、処置した被験体の免疫反応を測定する段階を含む、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
処置した被験体における免疫反応を測定する段階が、T細胞増殖を測定する段階を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
処置した被験体を評価する段階が、以下の少なくとも一つを決定する段階を含む、請求項7〜10のいずれか一項記載の方法:(a)腫瘍のサイズ、(b)腫瘍の位置、(c)結節ステージ、(d)非小細胞肺癌または前立腺癌の成長速度、(e)被験体の生存率、(f)被験体の肺癌または前立腺癌の症状の変化、(g)被験体のPSA濃度の変化、(h)被験体のPSA濃度倍加速度の変化、または(i)被験体の生活の質の変化。
【請求項12】
被験体が、ステージIIIB局所領域性、ステージIIIB癌性胸水、またはステージIV非小細胞肺癌を有すると診断される、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
製剤が以下を含むBLP25リポソームワクチンである、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法:
(a)SEQ ID NO:1または2の配列を含むMUC-1ペプチド;
(b)1つまたは複数のアジュバント;および
(c)1つまたは複数のさらなるリポソーム脂質。
【請求項14】
BLP25リポソームワクチンがキットにて提供される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
投与する段階が、注射、エアゾール、経鼻、膣内、直腸内、頬側、眼内、局部、局所、嚢内、腹腔内、または経口送達によって行われ、該注射は、筋肉内、静脈内、皮下、結節内、腫瘍内、腹腔内、または皮内注射である、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
期間が、少なくとも約2週間、少なくとも約4週間、少なくとも約8週間、少なくとも約16週間、少なくとも約17週間、少なくとも約18週間、少なくとも約19週間、少なくとも約20週間、少なくとも約24週間、少なくとも約28週間、少なくとも約32週間、少なくとも約36週間、少なくとも約40週間、少なくとも約44週間、少なくとも約48週間、少なくとも約52週間、少なくとも約60週間、少なくとも約68週間、少なくとも約72週間、少なくとも約80週間、少なくとも約88週間、少なくとも約96週間、および少なくとも約104週間からなる群より選択される、請求項1〜15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
個体が、(b)の前にシクロホスファミドで処置される、請求項1〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
非小細胞肺癌であると診断された被験体に、ある期間にわたって、以下を含むBLP25リポソームワクチンを投与する段階を含む、非小細胞肺癌であると診断された被験体の生活の質を改善するかまたは維持する方法:
(a)SEQ ID NO:1または2の配列を含むMUC-1ペプチド;
(b)1つまたは複数のアジュバント;および
(c)1つまたは複数のさらなるリポソーム脂質。
【請求項19】
前立腺癌であると診断された被験体に、ある期間にわたって、以下を含むBLP25リポソームワクチンを投与する段階を含む、前立腺癌であると診断された被験体の生活の質を改善するかまたは維持する方法:
(a)SEQ ID NO:1または2の配列を含むMUC-1ペプチド;
(b)1つまたは複数のアジュバント;および
(c)1つまたは複数のさらなるリポソーム脂質。
【請求項20】
被験体が非小細胞肺癌または前立腺癌と診断されており、前記期間の前、期間の間、および期間の後に、被験体の身体的健康度、機能的健康度、および肺癌症状もしくは前立腺癌症状の組み合わせスコアを計算する段階をさらに含む、請求項18または19記載の方法。
【請求項21】
期間が、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約12ヶ月、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約24ヶ月であるか、または24ヶ月よりも長い、請求項18〜20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
MUC-1ペプチドの量が約300μgである、請求項13、18、または19のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
アジュバントがリピドAである、請求項13、18、または19のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
リピドAの量が約150μgである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
追加のリポソーム脂質の量が約15mgである、請求項13、18、または19のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
MUC-1ペプチドがSEQ ID NO:1に記載された配列を含む、請求項13、18、または19のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
MUC-1ペプチドがSEQ ID NO:2に記載された配列を含む、請求項13、18、または19のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
MUC-1ペプチドが脂質付加されている、請求項26記載の方法。
【請求項29】
以下の段階を含む、癌を有する被験体を処置するための方法:
(a)処置のために、MUC-1を発現する癌細胞を有する被験体を選択する段階:ならびに
(b)ある期間にわたって、MUC-1ベースの製剤を被験体に投与する段階であって、該製剤が
(i)リポソーム;および
(ii)SEQ ID NO:1のアミノ酸配列、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列の免疫学的に活性な変異体、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列、およびSEQ ID NO:2のアミノ酸配列の免疫学的に活性な変異体からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも一つのポリペプチド
を含み、かつ被験体が被験体の血清において循環する高レベルのMUC-1を有していない、段階。
【請求項30】
癌が、卵巣癌、肝臓癌、結腸癌、乳癌、膵臓癌、腎臓癌、頭頸部癌、子宮頸癌、子宮癌、白血病、および多発性骨髄腫からなる群より選択される、請求項29記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−47234(P2013−47234A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−215405(P2012−215405)
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【分割の表示】特願2008−519017(P2008−519017)の分割
【原出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(510018650)オンコセリオン インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】