説明

メカニカルアロイング処理による原料粉末膜被覆方法とその部品

【課題】対象物の上に均一な膜で表面粗さ(最大高さ)の小さい膜を形成する原料粉末膜被覆方法を提供する。
【解決手段】膜を被覆する対象物4、微小な直径を有するボール3と膜となる原料粉末2を容器1内に充填率8割以上に充填したのち、メカニカルアロイング処理を行うことにより、高エネルギの摩擦による膜被覆を対象物4の表面に均一な膜として形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受の長寿命化、工具の長寿命化、生体材料の血液との反応防止や耐摩耗性向上、ピストンの長寿命化、電気接点、装飾品、耐酸化防止用保護膜、プレス金型の長寿命化などの分野で必要とされる原料粉末膜被覆法とその部品に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで種々の分野で部品表面にいろいろな方法で膜を形成して特性の改善が図られていた。例えば、湿式めっき法、スパッタ法やイオンプレーティング法、CVD法、溶射法があった。
〈湿式めっき法の欠点〉
膜の被覆法としては古くからある湿式めっき法が知られている。この方法は安価ではあるが膜中に不純物が入り込み本来の特性が出ないことや公害の原因となる廃液処理の問題が発生する。
〈真空技術を利用した膜被覆法の欠点〉
これに対して、真空技術を利用した膜被覆法が発達してきた。
スパッタ法やイオンプレーティング法、CVD法が実用化されている例である。これらは真空技術を適用するので高度な技術が必要であり、製造コストが高価となるだけでなく、形成される膜の密度がバルク材に比べて低くなるために、十分な特性を発揮できなかった。また、複雑な形状の部品や大物には適用できなかった。
〈溶射法の欠点〉
これに近い方法として溶射法があるが、膜内部の欠陥が多いことや表面粗さ(最大高さ)が極めて大きいので再研磨の必要があった。
これらを改善する方法として、メカニカルアロイング法による膜の被覆法が提案された。
〈メカニカルアロイング法〉
メカニカルアロイング法は、ボールと粉末と対象物をポット内に入れて、このポットをボールミル架台上で回転させて対象物上に粉末をコーティングするメカニカルアロイング処理するもので、特許文献1〜3にて公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−345901号公報
【特許文献2】特開平6−179979号公報
【特許文献3】特開平6−88102号公報
【0004】
〈メカニカルアロイング法の長所〉
対象物に粉末を高エネルギーで「衝突させる」か、対象物に付着した粉末にボールを高エネルギーで「衝突させる」こと(特に、特許文献3参照)で対象物上に粉末をコーティングするものであり、粉末はバルク材なので、この粉末から直接膜が形成できれば極めて有利な方法となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
〈メカニカルアロイング法の欠点〉
しかしながら、特許文献3のようなメカニカルアロイング法では対象物の表面に均一な厚みの膜が形成され難いことが判明した。
そして、その原因を究明したところ、原因は充填率を20%−70%と低くして高エネルギーで対象物と粉末とボールを高エネルギーで「衝突させる」ことにあることが判った。すなわち、従来のメカニカルアロイング法では圧縮された微粉末が対象物の表面に高エネルギーで衝突して付着するだけで、擦り込み動作が伴わないので均一な厚みの膜にはなり難いのであった。卑近な例を挙げれば、壁に壁土を高エネルギで単に投げつけても強く付着するだけで、壁の正面に凹凸が出来て均一にならなかったのと同じ現象と本出願人は考えた。
また、例え均一な厚みの膜になったとしても単に微粒子が連結しているだけで表面粗さ(最大高さ)の大きな膜になってしまうという問題があった。
しかしながら膜を被覆した部品の用途に要求されるのは、均一な連続膜でしかも表面粗さの小さいことである。従来法ではこのような要求を満足できる膜を得ることができなかった。
したがって、バルク材と同じ特性を有する膜で、しかも均一かつ表面粗さ(最大高さ)の小さい膜を部品に均一に被覆する方法が要望されていた。
先の壁土の例で言えば、凹凸の壁土を均一かつ表面粗さを小さくするにはコテで壁土を擦り付ける作業が必要であるが、本発明は従来のメカニカルアロイング法にはこの「擦り付ける」動作が欠けていたことに気がついてなされたもので、本発明は「擦り付ける」動作を行わせるようにすることで、部品に均一にバルク材と同じ特性を有する膜でしかも均一で表面粗さの小さい膜を被覆する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するため、請求項1に記載の発明は、原料粉末膜被覆方法に係り、膜を被覆する対象物と、微小な直径を有するボールと、膜となる原料粉末と、を容器内に充填したのち、メカニカルアロイング処理を行って前記対象物の表面に前記原料粉末の膜を被覆する原料粉末膜被覆方法において、前記対象物と前記ボールと前記原料粉末とが容器内に流し込まれた領域の占める容器の容積に対する比率(以後、これを「充填率」という。)が8割以上〜10割以下になるよう前記容器内に充填し、高エネルギの摩擦による膜被覆を行わせたことを特徴とする。
なお、「充填率」とは一般には、容器の容積から容器内に存在する全ての空隙分を差し引いた値と容器の容積との比率を意味するので「対象物と粉末とボールとの間に存在する空隙」も考慮されるが、本願明細書で言う「充填率」は図2でも示すように「対象物と粉末とボールとの間に存在する空隙」は考慮しておらず、対象物と粉末とボールを容器に流し込んだ状態でスタートさせている(すなわち、「対象物と粉末とボールとの間に存在する空隙」を追い出すような加圧は一切行わない)ので、空隙としては容器内の上部空間だけを考慮している。実際に、膜形成後は容器内の上部空間は膜形成前(対象物と粉末とボールを容器に流し込んだ状態)よりも広くなっている。また、逆に、一般的な意味での「充填率」を求めることは、対象物と粉末とボールの径・形状に依存するので正確に求めるのは困難であり、実用的でない。
また、請求項2に記載の発明は、原料粉末膜被覆方法に係り、膜を被覆する対象物と、膜となる原料粉末が付着した微小な直径を有するボールと、を容器内に充填したのち、メカニカルアロイング処理を行って前記対象物の表面に前記原料粉末の膜を被覆する原料粉末膜被覆方法において、前記対象物と前記ボールとを充填率が8割以上〜10割以下になるよう前記容器内に充填し、高エネルギの摩擦による膜被覆を行わせたことを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の原料粉末膜被覆方法において、前記ボールの直径が2mm以下であることにより、被覆された膜の表面粗さが2μm以下となることを特徴とする。なお、ここで言う「表面粗さ」とは、JIS(日本工業規格)B0601に記載された表面性状パラメータの中の「粗さ曲線の最大高さ」を意味しており、粗さ曲線から山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定した値である。以降、単に「最大高さ」と呼ぶことにする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項記載の原料粉末膜被覆方法において、前記容器が膜を被覆する前記対象物を兼ねていることを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項記載の原料粉末膜被覆方法において、前記膜を被覆する対象物が前記容器に固定されていることを特徴とする。
さらに、請求項6に記載の発明は固体潤滑軸受、加工用工具、人工関節、リードリレー若しくは電気接点用の部品、金型部品、又は髭剃り用の歯に係り、前記膜を被覆する対象物を固体潤滑軸受、加工用工具、人工関節、リードリレー又は電気接点用の部品、金型部品、髭剃り用の歯のいずれかとして、請求項1〜5のいずれか1項記載の原料粉末膜被覆方法を用いることにより前記対象物の表面を前記膜により被覆したことを特徴とする。
そして、請求項7に記載の発明は、原料粉末の膜の被覆された対象物に係り、請求項1〜5のいずれか1項記載の原料粉末膜被覆方法により表面に原料粉末の膜を被覆された対象物において、前記対象物に被覆された前記膜の結晶格子定数が前記原料粉末の格子定数プラス4%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1および2に記載の発明によれば、容器内の充填率が8割以上に充填することでお互いが高いエネルギーで「衝突できなくし」、逆に、粉末が対象物の表面にボールによって強固に押し付けられてお互いが高いエネルギーで「摩擦する」ようになるため、対象物上に粉末(バルク材)と同じ特性を有する膜を均一かつ最大高さの小さい状態で強固に形成できるようになる。
請求項3に記載の発明によれば、高エネルギーで摩擦するボールの直径が小さいので、ボールと膜を被覆する対象物との接触面積が小さくなる。このため、ボールの直径が小さいほど膜の最大高さを小さくでき、ボールの直径が2mm以下の場合、膜の最大高さが2μm以下となる。
請求項4に記載の発明によれば、容器が対象物で内壁に膜を被覆する場合、粉末をボールで内壁に押し付けて高いエネルギーで摩擦するので、内壁に粉末(バルク材)と同じ特性を有する膜を均一かつ最大高さの小さい状態で強固に形成できる。
請求項5に記載の発明によれば、容器に固定されている対象物に粉末をボールで押し付けて高いエネルギーで摩擦するので、対象物に粉末(バルク材)と同じ特性を有する膜を均一かつ最大高さの小さい状態で強固に形成できる。
請求項6に記載の発明によれば、請求項1から5の方法で粉末(バルク材)と同じ特性の膜を表面に形成された部品なので、これらの部品を適用した製品の高性能化に寄与できる。
さらに、本発明に係る膜の形成方法と部品は、所定の部品に粉末(バルク材)と同じ特性を有する膜を形成できるので部品適用製品の高性能化が可能となる。
また、均一かつ最大高さの小さい膜を所定の部品に簡単に被覆できるので適用製品の低価格化につながる。
請求項7に記載の発明によれば、対象物に被覆された膜の結晶格子定数が原料粉末の格子定数プラス4%以下であるので欠陥がないことが判り、従来法と比べて格段の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】遊星型ボールミル装置内に取りつけられて自転と公転をする容器内部を上から見た概念図である。
【図2】遊星型ボールミル装置内に取りつけられた容器内部を横から見た図である。
【図3】被覆対象物を固定した容器内壁を横から見た図で、(a)は容器が空の状態、(b)は混合物が80%以上充填された状態を示した図である。
【図4】リードリレー用ヨークと膜形成部の模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本出願人は、上述したように、メカニカルアロイング法により部品にバルク材を直接に均一な膜厚で最大高さも小さく被覆する方法について検討を行い、その過程で混合する容器内への試料(対象物、粉末、ボール)の充填率が均一な膜を形成するために重要な要因であることを見出した。その結果、対象物と粉末とボールを高エネルギーで「衝突させる」のではなくて、高エネルギーで「お互いを摩擦する」ことで均一かつ最大高さの小さな膜の形成ができるようになることが判った。
以下、高エネルギーで「お互いを摩擦する」ようにした本発明の方法の具体的実施例について、図に基づいて説明する。
図1は本発明を適用した遊星型ボールミル装置にセットした容器内の粉末とボールと対象物であるローラ(φ4mm、長さ3.85mm)と容器の自転と公転の動きを上から見た図を模式的に示した概念図である。容器は図1に示すように、自転と公転を行いながら容器中に入れている粉末とボールと対象物をお互いに衝突させて対象物やボールの表面に粉を付着させる。
図2は遊星型ボールミル装置内に取りつけられた容器内部を横から見た図である。
〈ボールの材質〉
ボールの材質にはセラミックス、ガラス、金属などが挙げられるが、摩擦時に摩耗して膜内に入っても特性を悪くしなければどんな材質でも良い。また、粉末材も金属、プラスチック、無機物、DLCなど材質を問わずこの方法が適用できるが、ボールの材料より柔らかいことが望ましい。
なお、本実施形態に用いられるボールには、公知のメカニカルアロイング法に用いられる球体と同様のものが用いられている。本実施形態で言うボールとはメカニカルアロイング法に適用可能な球体を言い、これには工業的に使用可能な実質的な球体も含まれる。
【実施例1】
【0010】
軸受用部品であるローラと固体潤滑剤である二硫化モリブデン粉末と直径2mmのセラミックス製ボールをメノー製円筒容器に入れて、容器の公転速度を100/min(自転速度は約2倍)で30分〜2時間回転させた。
その結果を表1に示す。
【表1】

容器に挿入したローラと粉とボールの容積が円筒容器の高さの8割以上(すなわち、80%の高充填率)で均一な膜が形成された。容器内の内容物の高さが100%でも各内容物の間には隙間があるので膜は形成される。したがって、上限は100%となる。
なお、公転速度を1000/minまで増やしたが結果はほとんど変わらなかった。
【実施例2】
【0011】
二硫化モリブデン粉末と直径2mmのセラミックス製ボールをメノー製円筒容器に入れて、容器の公転速度を300/min(自転速度は約2倍)で2時間回転させた。セラミックスボールには二硫化モリブデンの粉末が微細に付着していた。
この粉末付着ボールと軸受用部品であるローラをメノー製円筒容器に入れて、容器の公転速度を100/min(自転速度は約2倍)で30分〜1時間回転させた。
その結果を表2に示す。
【表2】

容器に挿入したローラと粉とボールの容積が円筒容器の高さの8割以上で均一な膜が形成された。8割以上にすると均一な膜が形成されるのは、おそらく8割以上にするとそれ以下では衝突主体であったものが摩擦主体の混合に変わるためだと考えられる。
【実施例3】
【0012】
軸受用部品であるローラと固体潤滑剤である二硫化モリブデン粉末と直径0.1〜4mmのセラミックス製ボールをメノー製円筒容器に入れて、容器の公転速度を300/min(自転速度は約2倍)で30分間回転させた。
その結果を表3に示す。
【表3】

最大高さは膜被覆ローラの円筒部分と端部を接触式粗さ計で測定した。ボールの直径が小さくなるほど膜の最大高さが小さくなっている。膜被覆部品に一般的に要求される最大高さを2μm以下にするにはボールの直径を2mm以下にすれば良いことが分る。
【実施例4】
【0013】
図3は、実施例4に係るもので、被覆対象物を固定した容器内壁を横から見た図で、(a)は容器が空の状態、(b)は混合物が80%以上充填された状態を示した図である。図4はリードリレー用ヨークと膜形成部の模式斜視図である。
リードリレーの部品であるFe−Ni合金製ヨーク材(厚さ1.5mm、幅3mm、長さ12mm)を鉄製円筒容器の内壁の側面に図3(a)のように固定したのち、図3(b)のようにモリブデン粉末と直径0.3mmのボールを容器の高さの90%まで充填し、容器の公転速度を120/min(自転速度は約2倍)で4時間回転させた。
ヨーク材の粉末が接触する部分(図4)だけに膜厚2μm、最大高さが0.2μmの均一なモリブデン膜が得られた。この部分は接点として使用する部分である。なお、この実施例で使用した鉄製容器の内壁には均一なモリブデン膜が形成されていた。
以上の実施例1−4は、いずれも、公転・自転ともに正転・逆転を繰り返しながら実施した結果であるが、正転・逆転を繰り返さずに単に一方向だけの回転でも同様な膜が形成されることが判った。
また、以上の実施例1−4において、作成した膜の結晶構造をマイクロX線回折装置で調べた結果、いずれの実施例においても膜の結晶格子定数は、原料粉末の格子定数プラス4%以下であった。この数値が意味するところは、膜を構成している結晶格子の大きさを表す指標の値が粉末(バルク材)を構成している結晶格子の大きさを表す指標の値と大きく異なるということは格子結晶内に欠陥があるということであるから、「膜の結晶格子定数が格子定数プラス4%以下」ということはバルク材とほとんど同等の性能を示すということになる。
【0014】
〈他の部品への応用例〉
実施例1〜4では、軸受とリードリレーだけしか述べていないが、加工用工具、人工関節、電気接点用部品、金型部品、髭剃り用の歯などにも適用できることは明らかである。
また、使用した装置は遊星型ボールミルであるが高エネルギーで粉末と対象物が摩擦する構成であれば他の装置でも同じ効果が得られることも明らかである。
なお、膜被覆部品に熱処理を加えて密着力を向上させれば、より性能が向上するが、これは上述の特許文献1および2にも述べられているように公知である。
【0015】
〈高充填にすることは低充填の従来のメカニカルアロイング法では阻害要因〉
以上のように、本発明者らは、メカニカルアロイング法により部品にバルク材を直接に均一な膜厚で最大高さも小さく被覆する方法について検討を行い、その過程で混合する容器内への試料(対象物、粉末、ボール)の充填率が均一な膜を形成するために重要な要因であることを見出し、対象物と粉末とボールを高エネルギーで「衝突させる」のではなくて、高エネルギーで「お互いを摩擦する」ことで互いに前述の壁土の際のコテの役割を担わせて均一かつ最大高さの小さな膜の形成ができるようになることを見い出した。
そして、高エネルギーで「お互いを摩擦する」には、対象物とボールと原料粉末とを充填率が8割以上になるよう容器内に充填させればよいことが判った。
なお、充填率の上限は10割では隙間ができないので摩擦が行われなくなり好ましくないが、若干の隙間があれば摩擦が生じるので、10割に近い充填率でも実施可能である。容器の高さで言えば、容器内の内容物の高さが100%でも各内容物の間には隙間があるので膜は形成される。
このように、従来のメカニカルアロイング法では、特許文献3に明記されているように充填率を20%−70%と低くして高エネルギーで対象物と粉末とボールを高エネルギーで「衝突させる」ことにあったので、「充填率8割以上にすること」は技術の流れに完全に逆行するものであり阻害要因と考えられていた。
したがって、「均一かつ最大高さの小さな膜の形成」という命題に気がつき、かつ「均一かつ最大高さの小さな膜の形成」にするには混合物の充填率8割によって互いのボールの互いの摩擦が壁土のコテの役割をすることに気がつかなければ、わざわざ阻害要因となることを実施することはあり得ないことである。
【0016】
〈粉末とボールの充填の変形例〉
また、上記の例では粉末とボールとを別々に充填したが、粉末が付着したボールと対象物とを使用しても同様の効果が現れた。
〈ボールの大きさ〉
また、ボールの直径が小さいほど膜の最大高さが小さくなることも見出した。これはボールと膜の接触部の接触半径が小さくなるためであると考えられる。
【符号の説明】
【0017】
1 容器
2 粉末
3 ボール
4 ローラ
5 容器の上蓋
6 リードリレー用ヨーク
M 混合物(粉末+ボール+被覆対象ローラ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜を被覆する対象物と、微小な直径を有するボールと、膜となる原料粉末と、を容器内に充填したのち、メカニカルアロイング処理を行って前記対象物の表面に前記原料粉末の膜を被覆する原料粉末膜被覆方法において、
前記対象物と前記ボールと前記原料粉末とが容器内に流し込まれた領域の占める容器の容積に対する比率(以後、これを「充填率」という。)が8割以上〜10割以下になるよう前記容器内に充填し、高エネルギの摩擦による膜被覆を行わせたことを特徴とする原料粉末膜被覆方法。
【請求項2】
膜を被覆する対象物と、膜となる原料粉末が付着した微小な直径を有するボールと、を容器内に充填したのち、メカニカルアロイング処理を行って前記対象物の表面に前記原料粉末の膜を被覆する原料粉末膜被覆方法において、
前記対象物と前記ボールとを充填率が8割以上〜10割以下になるよう前記容器内に充填し、高エネルギの摩擦による膜被覆を行わせたことを特徴とする原料粉末膜被覆方法。
【請求項3】
前記ボールの直径が2mm以下であることにより、被覆された膜の表面粗さ(最大高さ)が2μm以下となることを特徴とする請求項1又は2記載の原料粉末膜被覆方法。
【請求項4】
前記容器が膜を被覆する前記対象物を兼ねていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の原料粉末膜被覆方法。
【請求項5】
前記膜を被覆する対象物が前記容器に固定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の原料粉末膜被覆方法。
【請求項6】
前記膜を被覆する対象物を固体潤滑軸受、加工用工具、人工関節、リードリレー若しくは電気接点用の部品、金型部品、又は髭剃り用の歯のいずれかとして、請求項1〜5のいずれか1項記載の原料粉末膜被覆方法を用いることにより前記対象物の表面を前記膜により被覆したことを特徴とする固体潤滑軸受、加工用工具、人工関節、リードリレー若しくは電気接点用の部品、金型部品、又は髭剃り用の歯。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項記載の原料粉末膜被覆方法により表面に原料粉末の膜を被覆された対象物において、前記対象物に被覆された前記膜の結晶格子定数が前記原料粉末の格子定数プラス4%以下であることを特徴とする原料粉末の膜の被覆された対象物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−168634(P2010−168634A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13523(P2009−13523)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】