説明

メサラジン制御放出経口医薬組成物

【課題】5-アミノサリチル酸を含む制御放出経口医薬組成物を提供する。
【解決手段】a)活性成分が少なくとも部分的に含有されている、90℃未満の融点を有する物質から成る内部親油性マトリックス;b)該親油性マトリックスが分散されている外部親水性マトリックス;c)任意に他の賦形剤を含む、活性成分として5-アミノ-サリチル酸を含む制御放出経口医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分として、メサラジンとも呼ばれる5-アミノサリチル酸を含む制御放出経口医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
メサラジンは、腸粘膜におけるその抗炎症活性のために、クローン病および潰瘍性大腸炎の治療に用いられている。メサラジンの制御放出製剤が、WO95/16451、EP0453001、EP0377477に開示されている。
【0003】
徐放放出、制御放出、遅延放出またはとにかく変更された放出製剤の調製は、様々な公知技術により行うことができる。
1.不活性マトリックス、ここで、該マトリックス構造の主成分は水性の液体への親和力が乏しいために溶媒の浸透に対して幾分抵抗性を示す(このような特性は親油性として知られる)、の使用。
2.親水性マトリックス、ここで該マトリックス構造の主成分は、主に分岐した鎖における強い親水基の存在により水和層内部の粘性が著しく増すために溶媒の浸透に高い抵抗性を示す、の使用
3.ある生物成分から成る酵素により分解されることができる生物分解可能なマトリックスの使用。
【0004】
前記の方法はいずれもしかしながら、不利益と欠点を持つ。
不活性マトリックスは、例えば一般に、非線形性である、指数関数的な活性成分の放出を必然的に伴う。
【0005】
親水性マトリックスは、活性成分の所定のフラクションが放出されるまでは線形性の性質を有するが、その後、線形性の放出から顕著に外れる。
【0006】
生物分解可能マトリックスは、いわゆる「部位放出」を行うのに理想的であるが、分解に適した酵素または反応を見出さなければならないという問題を含む。さらにそれらはしばしば、毒物学的に完全に不活性ではない代謝物をインサイチュで放出する。
【0007】
不活性親油性マトリックスに基づく多くの製剤が開示されている。Drug Dev. Ind. Pharm. 13(6), 1001-1022,(1987)は、活性成分を組み込んでいる親油性不活性マトリックスのためのポリ化要素(porization element)として、種々の量のコロイド状シリカを使用する方法を開示する。
【0008】
不活性マトリックスのキャナライゼーションに関する同じ概念がUS4608248に開示されており、ここでは、少量の親水性ポリマーが、異なるマトリックス物質の非連続性共浸透に関して不活性なマトリックスを形成している物質と混合される。
【0009】
EP375063は、ポリマーまたは不活性マトリックスを形成するのに適した物質を活性成分と一緒に溶解することおよび、次いで該仕掛けのコアとして作用する不活性キャリアに該溶液を沈着させることを含む、活性成分の制御放出のための複合粒子顆粒の調製のための方法を開示する。あるいは、不活性キャリアを不活性ポリマーと活性成分を含む溶液と捏和し、次いでその溶解のために用いられた有機溶媒を蒸発して固体残存物を得る。得られる構造は「リザーバー(reservoir)」であり、即ち、最終形態の全対称軸に沿って肉眼的に同質ではない。
【0010】
同じ「リザーバー」構造がChem. Pharm. Bull. 46(3), 531-533,(1998)にも開示されており、ここでは、ペレットの表面に沈積される不活性ポリマー層のアニーリング法により適用性が改善されている。
【0011】
「リザーバー」構造には、
-有機溶媒中で活性成分を胃抵抗性親水性ポリマーと共に溶解させること、
-該懸濁液を乾燥させること、
-次いで、親水性または親油性マトリックス中で、この2タイプの適用間で効果を区別することなくペレットを捏和および形成すること、
を含む、親水性マトリックス中でのペレットの調製法を開示するWO93/00889に開示される方法により得られる生成物も属する。
【0012】
EP0453001は、親水性マトリックスに挿入された、「リザーバー」構造を有する複合粒子を開示する。基本的な複合粒子では、活性成分の放出速度を減じるための2つのコーティング膜、胃保護のためのpH依存性膜および、水性の液体の浸透を遅延させるためのpH-非依存性メタクリル膜が用いられている。
【0013】
WO95/16451は、胃抵抗性フィルムでコートされた親水性マトリックスによってのみ形成される、メサラジンの溶解速度を制御するための組成物を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
胃腸管で局所的に活性な薬剤から成る、徐放放出、制御放出性投与製剤を調製する場合、投与後の第一相、即ち不活性マトリックスが対数期中最大の放出速度、つまり線形放出よりも高い偏差を有する時に、確実に放出を制御することが重要である。
【0015】
該目的は、活性成分中の高い含有量により特徴付けられる組成物を調製することをも許容する本発明により達成された。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明により、
a)90℃未満の融点を有する物質から成る、活性成分が少なくとも部分的に含有されている内部親油性マトリックス;
b)該親油性マトリックスが分散されている外部親水性マトリックス;
c)任意に他の賦形剤;
を含む、5-アミノ-サリチル酸を活性成分として含む制御放出経口医薬組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の組成物は、以下のステップを含む方法を用いて得ることができる。:
a)まず活性成分を、低融点賦形剤または賦形剤混合物中に、賦形剤自体を軟質化および/または溶解するよう加熱しつつ取り込ませ、これにより活性成分が単なる分散により組み込まれる。
室温で冷却して不活性マトリックスが形成される。これは、サイズを減じて、活性成分粒子を含むマトリックス顆粒が得られ得る。
b)不活性マトリックス顆粒が次いで、1またはそれ以上の、水で膨張させることができる親水性賦形剤と混合される。
【0018】
この方法では、錠剤が生物体液と接触すると、溶媒分子と結合し、そして新規構造内部に、水性の液体そのものの浸透に対するバリアとして作用する高粘度の膨張層が形成される。該バリアは、親水性マトリックス内部にある不活性マトリックス内部に含有されている薬剤の溶解により引き起こされるスターティング「バースト効果」を拮抗する。
【0019】
親油性マトリックスは、40〜90℃の範囲内に融点を有する不飽和および/または水素化脂肪酸、その塩、エステルまたはアミド、脂肪酸モノ-、ジ-またはトリグリセリド、ワックス、セラミド、コレステロール誘導体またはそれらの混合物から選択される物質から成る。
【0020】
所望により、脂肪酸カルシウム塩を、アルギン酸を用いて調製される親水性マトリックスに次いで分散される親油性マトリックス中に組み込んでよく、こうして、内部に分散された親油性マトリックス顆粒と接触する手前まで溶媒が侵入することにより、親水性マトリックスの粘度が顕著に増す。
【0021】
親油性マトリックス中の活性成分の含有重量は、5〜95%である。
不活性親油性マトリックスは、押し出し成形および/または顆粒化法または、出発混合物の均質な分散および、マトリックス構造を確保するあらゆる他の公知方法により顆粒化される。
【0022】
親水性マトリックスは、ヒドロゲルとして知られる賦形剤、即ち、乾燥状態から水和状態になり、いわゆる「分子緩和」、すなわち賦形剤そのものの重合鎖に存在する極性基による多数の水分子の配位による容積および重量の顕著な増加、を被る物質から成る。
【0023】
本発明で用いることができるヒドロゲルの例は、アクリル酸またはメタクリル酸のポリマーまたはコポリマー、アルキルビニルポリマー、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ポリサッカライド、デキストリン、ペクチン、スターチおよび誘導体、天然または合成ゴム、アルギン酸から選択される化合物である。
【0024】
活性成分を含む親油性マトリックス顆粒は、前記の親水性化合物と、典型的に100:0.5〜100:20(親油性マトリックス:親水性マトリックス)の範囲の重量で混合される。任意にメサラジンの一部を親水性物質と混合して、活性成分が親油性および親水性マトリックスの両方に分散された組成物を提供することができ、該組成物は好ましくは錠剤、カプセルおよび/または小型錠剤の形態である。
【0025】
親油性マトリックス、ヒドロゲル形成化合物および、任意に親油性マトリックス中に含有されていない活性成分の混合物の圧縮により、その全容積において肉眼上均質な構造、すなわち、親水性マトリックス中に親油性顆粒が分散されている構造が得られる。
【0026】
本発明により得られる錠剤、カプセルおよび/または小型錠剤は、例えばメタクリル酸のポリマー(Eudfagit(R))またはセルロース誘導体、例えばセルロースアセトフタレートから成る胃抵抗性フィルムを用いて公知のコーティング法に任意に供することができる。
【0027】
本発明の組成物は、全組成物重量と比較して95%までの高い割合の活性成分を含むことができ、これはむしろ高単位投与量を要するメサラジンの場合に有利な特性である。
【0028】
溶解特性に関して、本発明の組成物により、従来のシステムよりももっと均質な活性成分の放出特性が提供される。実際、親水性マトリックスの表層内部への水の迅速な浸透およびそれに続くヒドロゲルの重合鎖の拡大による膨張により高粘度水和表面が得られ、さらなる水の浸透により親水層の崩壊およびそれがゆえの内容物の放出が生じるまで、約半分の濃度であり得る十分に決定されたポイントまで溶解が直線状に遅延され、また、放出された内容物は親油性顆粒から成り、これらの構造に典型的な拡散メカニズムを誘発し、それゆえ活性成分の溶解性はさらに遅延される。
【実施例1】
【0029】
以下の実施例により本発明をより詳細に説明する。
770gの5-アミノサリチル酸を、20gのカルナウバワックスと50gのステアリン酸と共に、均質に分散するまで加熱しながら添加し、次いで小型の顆粒に冷却しながら押し出し成形する。
【0030】
不活性マトリックス顆粒を、30gのカルボポール971P(R)と65gのヒドロキシプロピルメチルセルロースを連続添加したミキサーに入れる。
【0031】
粉末を均質に分散させるための第一混合ステップ後、60gのミクロクリスタリンセルロースと5gのステアリン酸マグネシウムを添加する。混合後、最終混合物を649mg/錠剤または510mg/錠剤の単位重量に錠剤化し、500おおび400mg投与量をそれぞれ得た。
【0032】
生じた錠剤をセルロースアセトフタレートまたはポリメトアクリレートおよび可塑剤と共にフィルムコートし、胃抵抗性を得、胃での製剤の初期の放出を防ぐ。
【0033】
これらの錠剤の溶解特性は、擬似腸液に移行する1時間以内に30%未満の量の、4時間で60%未満の量の、および8時間で90%未満の量の活性成分の放出を示し、つまり、二重のマトリックスにより効果的に溶解がコントロールされる。
【実施例2】
【0034】
1000gの5-アミノサリチル酸を10gのカルナウバワックスと20gのステアリン酸と共に、均質に分散するまで加熱しながらニーダーに添加し、冷却しながら小型顆粒に押し出し成形し、または高速ミキサー中で直接顆粒化する。
【0035】
生じた顆粒を80gのヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび12gのナトリウムスターチグリコレートを連続添加したミキサー中に入れる。第一混合ステップ後、11gのコロイド状シリカおよび11gのステアリン酸マグネシウムを添加する。最終混合物を均質化し、次いで、1144mg/錠剤の単位重量まで錠剤化する。
【0036】
生じた錠剤を次いでポリメタクリル酸またはセルロースアセトフタレートおよび可塑剤と共にフィルムコートし、胃抵抗性を得る。
【0037】
胃および部分的に腸に移行する経過時間後のこれらの錠剤の溶解特性は、1時間以内に30%未満、2時間以内に55%未満、4時間以内に70%未満、8時間以内に90%未満の放出を示す。
【実施例3】
【0038】
850gの5-アミノサリチル酸を、9gのミツロウおよび22gのパルミチン酸と共に、均質に分散するまで加熱しながら造粒機/ニーダーに添加し、次いで高剪断顆粒化装置中で顆粒に加工する。生じた顆粒を、45.5gのヒドロキシプロピルメチルセルロース、45.5gのミクロクリスタリンセルロース、20gのナトリウムスターチグリコレート、22gのコロイド状シリカおよび22gのステアリン酸マグネシウムを連続添加したミキサーに入れる。均質化した後、最終混合物を975mg/錠剤の単位重量に錠剤化する。
【0039】
生じた錠剤を次いでポリメタクリル酸またはセルロースのアセトフタレートおよび可塑剤と共にフィルムコートし、胃抵抗性を得る。
【0040】
胃または部分的に腸に移行する経過期間後のこれらの錠剤の溶解特性は、1時間以内に30%未満、2時間以内に50%未満、4時間以内に70%未満、8時間以内に90%未満の放出を示す。
【実施例4】
【0041】
1100gの5-アミノサリチル酸を10gのカルナウバワックスおよび20gのステアリン酸と共に造粒機/ニーダーに添加する。
【0042】
10gのポリアクリルアミド、39.5gのミクロクリスタリンセルロースおよび22gのコロイド状シリカを別々に均質機/造粒機に入れ、均質固体混合物を得、これを活性成分を顆粒化し、均質化してあるミキサーに入れる。49.5gのヒドロキシプロピルメチルセルロースと12gのアルギン酸ナトリウムを完全に混合し、次いで5gのカルボン酸カルシウム、34.5gのミクロクリスタリンセルロースおよび11gのステアリン酸マグネシウムと共に添加する。混合物を均質化し、次いで1194mg/錠剤の最終単位重量に錠剤化する。生じた錠剤を次いでポリメタクリル酸またはセルロースアセトフタレートおよび可塑剤と共にフィルムコートし、胃抵抗性を得る。
【0043】
胃および部分的に腸に移行する経過時間後のこれらの錠剤の溶解特性は、1時間以内に35%未満、2時間以内に50%未満、4時間以内に70%未満、8時間以内に90%未満の放出を示す。
【実施例5】
【0044】
1200gの5-アミノサリチル酸を、10gのカルナウバワックスおよび20gのステアリン酸と共に、均質に分散するまで加熱しながらミキサーに添加し、次いで小さな顆粒に冷却成形し、または高速ミキサー中で直接顆粒化する。
【0045】
生じた顆粒をミキサーに入れ、次いで70gのヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび20gのナトリウムスターチグリコレートを連続添加する。
【0046】
第一混合ステップ後、80gのカルボン酸ナトリウムと5gのステアリン酸ナトリウムを添加する。最終混合物を均質化し、次いで1375mg/錠剤の単位重量まで錠剤化する。
【0047】
生じた錠剤をついでポリメタクリレートまたはセルロースアセトフタレートおよび可塑剤と共にフィルムコートし、胃抵抗性を得る。
【0048】
胃および部分的に腸に移行する経過時間後のこれらの錠剤の溶解特性により、1時間以内に30%未満の、2時間以内に50%未満の、4時間以内に70%未満の、8時間以内に90%未満の放出が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)90℃未満の融点を有する物質から成る、活性成分が少なくとも部分的に含有されている内部親油性マトリックス;
b)該親油性マトリックスが分散されている外部親水性マトリックス;
c)任意に他の賦形剤
を含む、活性成分として5-アミノ-サリチル酸を含む制御放出経口医薬組成物。
【請求項2】
親油性マトリックスが、不飽和および/または水素化脂肪酸、それらの塩、エステルまたはアミド、脂肪酸モノ-、ジ-またはトリグリセリド、ワックス、セラミド、コレステロール誘導体から選択される化合物から成る請求項1記載の組成物。
【請求項3】
5-アミノサリチル酸が、捏和、押し出し成形および/または顆粒化により溶融親油性マトリックス中に含有される請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
親水性マトリックスがヒドロゲル形成化合物から成る前記請求項いずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
親水性マトリックスが、アクリル酸またはメタクリル酸のポリマーまたはコポリマー、アルキルビニルポリマー、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ポリサッカライド、デキストリン、ペクチン、スターチおよび誘導体、アルギン酸、天然または合成ゴムから選択される化合物から成る請求項4記載の組成物。
【請求項6】
胃抵抗性外部コーティングを含む前記請求項いずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
胃抵抗性コーティングが、メタクリル酸ポリマーまたはセルロース誘導体から成る請求項6記載の組成物。
【請求項8】
活性成分の全体が親油性マトリックスの内部に含まれている、錠剤、カプセル、小型錠剤の形態の前記請求項いずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
活性成分が親水性マトリックスおよび親油性マトリックスの両方に分散されている、錠剤、カプセル、小型錠剤の形態の請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
全組成物重量中の活性成分の割合が80〜95%である前記請求項いずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
a)活性成分の少なくとも一部を、90℃未満の融点を有する親油性賦形剤と溶融顆粒化すること;
b)ステップa)からの顆粒を親水性賦形剤と混合し、および次いで錠剤化または圧縮すること;
を含む、請求項1-10の組成物の調製のための方法。

【公開番号】特開2010−24241(P2010−24241A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250047(P2009−250047)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【分割の表示】特願2001−502815(P2001−502815)の分割
【原出願日】平成12年6月8日(2000.6.8)
【出願人】(306007299)コスモ・テクノロジーズ・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】