説明

メソポーラスシリカ材料の製造方法

【課題】細孔径が略均一であって、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料を、自己組織化法を用いて製造する製造方法を提供する。
【解決手段】シリカ前駆体を含む水溶液Aを調製する工程と、アルカリ金属水酸化物とアルカリ土類金属水酸化物とのいずれをも含まず、ポリ(アルキレンオキシド)トリブロック共重合体と、pKaが3〜9の範囲である酸と、必要に応じて、pKaが3〜9の範囲である酸のアルカリ塩とを含む水溶液Bを調製する工程と、前記水溶液Aおよび水溶液Bの液体流が直接衝突するように、供給し、これにより、得られる混合物のpHを、2を超えて8未満とし、前記細長い形状の混合容器内で、10℃〜100℃の範囲の温度で反応生成物を生成させ、該反応生成物を、濾過分離し、乾燥し、界面活性剤を除去して、細孔径が略均一であって、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料を製造する工程とを含み、熟成工程を含まない製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弱酸性または中性のpH条件下にある反応混合物中で、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料と、2D−ヘキサゴナル(二次元ヘキサゴナル)構造を有するメソポーラスシリカ材料とを製造する、改善された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
〔発明の背景〕
強酸性(pH<2)または強アルカリ性(pH>9)の反応条件を使った、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料の合成が、報告されている。
【0003】
規則的な構造を有する、最初のメソポーラス固体MCM、つまりケイ酸塩は、1992年にモービル社によって報告された(ただし、類似の実験的手順に関する特許は1969年に出願されていた)。このMCMは、強アルカリ性の条件下で合成された。Kresge et al.(Nature 1992, 359, 710-712)は、孔径が2nm〜10nmの範囲内で調節可能な、管状のメソ細孔からなる六角形状の構造を示す、MCM−41と呼ばれる材料の合成について報告した。このMCM−41の合成は、カチオン性の界面活性剤を使って、アルカリ性条件のもとで行われた。
【0004】
1998年には、Zhao et al.(Science, 1998, 279,548-552)が、非イオン性トリブロック共重合体界面活性剤を構造導入剤として使用して、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ構造SBAを製作するために、協調的な自己組織化の手法を導入した。これらの材料は、シリカの等電点未満のpHを有する、酸性媒質中で合成された。4.6nm〜10nmの均一な細孔を有するSBA−15の合成が、報告された。界面活性剤および両親媒性の重合体を、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料の構造導入剤として使用することは、当該技術分野において公知である。該合成手順において使用される四級アンモニウムカチオンは、構造導入剤として作用し、テンプレートを除去した後に、狭い細孔径分布を示す、規則的な構造を有するポーラス材料が回収される。標準的な合成方法では、強酸性である界面活性剤の塩酸塩水溶液中で、Si金属アルコキシドを加水分解する。Zhao et al.によれば、この手法で規則的な構造を有するメソポーラス材料を形成するためには、合成温度は低くても35℃であり、また、80℃を超えてはいけない。通常、SBA−15の合成は、二つの工程で実施される。その内の一つの工程は35℃〜40℃で実施され、別の熟成(エイジング)工程は温度を上げて実施される。Zhao et al. によれば、標準的な合成は、Siの添加から濾過工程までに少なくとも24時間かかる。シリカ前駆体の添加の後に、まず20時間の工程が35℃で実施され、その後、熟成(エイジング)工程が温度を上げて実施される。Brodie-Linder et al.は、シリカ重合の最初の10分間に使用する温度が、表面のシラノール基と、最終物質の微小多孔構造の体積とに対して影響を与えることを見いだした。SBA−15においてマイクロ波照射を使用すれば、合成時間は120分間に短縮される。
【0005】
S. Su Kim et al.は、2001年に、Journal of Physical Chemistry B、第105巻, 7663〜7670頁において、ケイ酸ナトリウムをシリカの供給源(SiOが27%、NaOHが14%)として使用し、また、プルロニック(登録商標)P123を非イオン性構造導入性トリブロック共重合体界面活性剤として使用した、1つの工程からなる組織化プロセスまたは2つの工程からなる組織化プロセスのいずれかを使った、MSU−Hシリカの組織化を報告した。該1つの工程からなるプロセスでは、メソ構造が、308°K、318°K、または333°Kの、固定された組織化温度において形成された。そして、界面活性剤と、前記ケイ酸ナトリウム溶液の水酸化物含有量に等量の酢酸とが、周囲温度で混合され、そして、前記ケイ酸ナトリウム溶液に添加されて、構造導入性界面活性剤の存在下で反応性シリカが形成された。これにより、シリカ前駆体および界面活性剤の両方が、主に非イオン性の分子種であるpH条件(pH=約6.5)のもとで、六角形状の骨組みを組織化することが可能になった。かかるpH条件は、酢酸ナトリウムと酢酸との混合物が緩衝作用を起こすpHの範囲外にある(下記の規定を参照)。高度に規則的な構造を有するメソポーラス材料を得るためには、308Kでの合成混合物の加熱が必要であった。表面積も、細孔容積も、合成温度の上昇にともなって増加した。このことは、最低温度で合成された材料は構造をうまく形成できず、多孔率が相対的に低い領域を含んでいることを示している。
【0006】
国際公開公開第WO2009/133100A号明細書には、COK−10と称される規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料の新しいファミリーが開示されている。COK−10は、両親媒性のブロック共重合体と、必要に応じて加えるテトラアルキルアンモニウム化合物との組み合わせを使って、弱酸性または中性のpH条件のもとで合成される。メソ細孔の細孔径は略均一で、4nm〜30nmの範囲であり、また、合成条件を合わせることによって微調整可能である。COK−12と称される、2D−ヘキサゴナル(二次元ヘキサゴナル)構造を有するメソポーラスシリカ材料の新しいファミリーも、両親媒性のブロック共重合体と、2を超えて8未満のpHを有する緩衝液との組み合わせを使って、弱酸性または中性のpH条件のもとで合成される。メソ細孔の細孔径は略均一で、4nm〜12nmの範囲であり、また、合成条件を合わせることによって微調整可能である。これらの規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料は、難溶性の薬物分子を処方するためのキャリア材料として、また、即時放出用途の経口薬を処方するためのキャリア材料として、有用である。
【0007】
先行技術の合成手順を使用した、規則的な構造を有するメソポーラスシリカの製造は、比較的低速であり、製造に必要な時間は24時間に達する。このようなメソポーラスシリカを商業的に魅力あるものにするためには、ずっと高速で、また、さらに好ましくは、連続的な製造プロセスが必要である。本発明において開示される製造方法は、高速プロセスを提供し、この高速プロセスは、上述のようなメソポーラスシリカ、またはメソ構造を有するその前駆体材料の、連続的な製造を可能にする。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、国際公開公開第WO2009/133100A号明細書に開示されている、4nmを超える略均一な大きさのメソ細孔を有する、規則的な構造を有するメソポーラスシリカと、2D−ヘキサゴナル(二次元ヘキサゴナル)構造を有するメソポーラスシリカ材料とを、連続的な製造方法において、シリカ前駆体の水溶液を界面活性剤の水溶液と1つの工程で反応させて製造する製造方法に関する。さらに、該連続的な製造方法では、国際公開公開第WO2009/133100A号明細書で開示されている24時間かかる製造方法とは対照的に、自己組織化したメソ構造を有する前駆体材料が、熟成工程を経ずに(特に等温性の高い温度条件の、例えば90℃の熟成工程を経ずに)直ちに(10秒未満で)製造される。その一方で、該連続的な製造方法によれば、反応混合物において極度に強い酸性状態(pH<2)も、極度に強いアルカリ性状態(pH>9)も使わずに、この合成が実現される。
【0009】
前記製造方法は、特に、上述のような規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料および2D−ヘキサゴナル(二次元ヘキサゴナル)構造を有するメソポーラスシリカ材料、またはメソ構造を有するその前駆体材料を、弱酸性または中性のpH条件下で製造する製造方法に関する。この製造方法では、細長い形状の混合容器(溝(conduit))が、第1の貯蔵部材から前記界面活性剤の第1の水溶液を受け、第2の貯蔵部材から前記シリカ前駆体の第2の水溶液を受ける。さらに、第1の水溶液と第2の水溶液とがともに、前記細長い形状の混合容器(溝、チューブ)に供給または送達される。そして、たとえ滞留時間が10秒未満であっても、上述の自己組織化した規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料が、前記細長い形状の混合容器から排出される。なお、この滞留時間は、第1の貯蔵部材からの前記界面活性剤の水溶液の線速度と、シリカ前駆体の前記第2の水溶液の線速度とが、1000〜3000m/hの範囲にあることによって実現される。
【0010】
pHを4.8、5.0および6.0とした合成実験では、室温で下記の表1に記載の特性で、規則的な構造を有するポーラス材料が生産された。驚くべきことに、緩衝化された界面活性剤にケイ酸ナトリウム溶液を添加することによって、略即時にシリカの重合が起きることが示された。図10Aおよび図10Bに図示するように、TEM顕微鏡写真は、1分後に回収された材料が、規則的な構造を有していたことを示している。
【0011】
【表1】

【0012】
また、この結果は、反応混合物において、芳香族炭化水素、例えば、1,2,4−トリメチルベンゼンの非存在下で達成された。
【0013】
驚くべきことは、ケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス)の噴流を、界面活性剤であるブロック共重合体P123の、緩衝化された水溶液の噴流と、チューブ内で、室温で混合することによって、2nmを超える(例えば、4nmから30nmの範囲)略均一な大きさのメソ細孔を有する、非常に規則的な構造を有するメソポーラスなCOK−12シリカが、連続的な合成プロセスにおいて、2と8との間、好ましくは5〜6のpHで合成され得ることである。噴流が互いに接触すると、シリカが凝縮して粒子が形成されることが容易に視認できる。このシリカ粒子は、ただちに回収および分離され、メソスケールの六角形の規則性を示し、また、均一な大きさのメソ細孔を示す。このように、非常に規則的な構造を有するメソポーラスなCOK−12シリカが1分間という短い時間で製造され、5分未満で完全な凝縮が起きる。これとは対照的に、従来のテンプレート法による製造では24時間かかる。
【0014】
本発明の一態様は、細孔径が略均一であって、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料を、自己組織化法を用いて製造する製造方法によって実現され、該製造方法は、
シリカ前駆体を含む水溶液Aを調製する工程と、
アルカリ金属水酸化物とアルカリ土類金属水酸化物とのいずれをも含まず、ポリ(アルキレンオキシド)トリブロック共重合体と、pKaが3〜9の範囲である酸とを含む水溶液Bを調製する工程と、
前記水溶液Aおよび水溶液Bを、液体流として、第1の開口部および第2の開口部を備えた細長い形状の混合容器に、
前記水溶液Aおよび水溶液Bの液体流がそれぞれ独立して前記細長い形状の混合容器の第1の開口部へ放出されて、
前記水溶液Aおよび水溶液Bの液体流が直接衝突するように、供給し、
これにより、得られる混合物のpHを、2を超えて8未満とし、前記細長い形状の混合容器内で、10℃〜100℃の範囲の温度で反応生成物を生成させ、
該反応生成物が前記細長い形状の混合容器の第2の開口部から排出された後、該反応生成物を、濾過分離し、乾燥し、界面活性剤を除去して、細孔径が略均一であって、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料を製造する工程と、を含み、
前記製造方法は熟成工程を含まず、また、前記水溶液Aおよび水溶液Bの液体流が、それぞれ独立して、前記細長い形状の混合容器の第1の開口部へ、それぞれ独立して必要に応じて5m/hを超える線速度で放出される。
【0015】
本発明の一態様は、細孔径が略均一であって、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料を、自己組織化法を用いて製造する下記製造方法によって実現されてもよく、該製造方法は、
シリカ前駆体、例えば、アルカリケイ酸塩;ケイ酸;またはテトラエチルオルトケイ酸塩(tetraethyl orthosilicate;TEOS)、テトラメチルオルトケイ酸塩(tetramethyl orthosilicate;TMOS)、テトラプロピルオルトケイ酸塩(tetrapropyl orthosilicate;TPOS)のようなテトラアルキルオルトケイ酸塩を含む水溶液Aを調製する工程と、
アルカリ金属水酸化物とアルカリ土類金属水酸化物とのいずれをも含まず、ポリ(アルキレンオキシド)トリブロック共重合体と、pKaが3〜9の範囲である酸と、必要に応じて、pKaが3〜9の範囲である酸のアルカリ塩とを含む水溶液Bを調製する工程と、
前記水溶液Aおよび水溶液Bを、液体流として、第1の開口部および第2の開口部を備えた細長い形状の混合容器に、
前記水溶液Aおよび水溶液Bの液体流がそれぞれ独立して前記細長い形状の混合容器の第1の開口部へ、それぞれ独立して5m/hを超える線速度で放出されて、
前記水溶液Aおよび水溶液Bの液体流が直接衝突するように、供給し、
これにより、得られる混合物のpHを、2を超えて8未満とし、前記細長い形状の混合容器内で、10℃〜100℃の範囲の温度で反応生成物を生成させ、
該反応生成物が前記細長い形状の混合容器の第2の開口部から排出された後、該反応生成物を、濾過分離し、乾燥し、界面活性剤を除去して、細孔径が略均一であって、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料を製造する工程と、を含み、
前記製造方法は、必要に応じて熟成工程を省略する。
【0016】
本発明の一態様は、細孔径が略均一であって、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料を、自己組織化法を用いて製造する製造方法によって実現され、該製造方法は、
シリカ前駆体を含む水溶液Aを調製する工程と、
アルカリ金属水酸化物とアルカリ土類金属水酸化物とのいずれをも含まず、ポリ(アルキレンオキシド)トリブロック共重合体と、pKaが3〜9の範囲である酸とを含む水溶液Bを調製する工程と、
前記水溶液Aおよび水溶液Bを、液体流として、第1の開口部および第2の開口部を備えた細長い形状の混合容器に、
前記水溶液Aおよび水溶液Bの液体流がそれぞれ独立して前記細長い形状の混合容器の第1の開口部へ放出されて、
前記水溶液Aおよび水溶液Bの液体流が直接衝突するように、供給し、
これにより、得られる混合物のpHを、2を超えて8未満とし、前記細長い形状の混合容器内で、10℃〜100℃の範囲の温度で反応生成物を生成させ、
該反応生成物が前記細長い形状の混合容器の第2の開口部から排出された後、該反応生成物を、濾過分離し、乾燥し、界面活性剤を除去して、細孔径が略均一であって、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料を製造する工程と、を含み、
前記製造方法は、必要に応じて熟成工程を省略し、前記水溶液Aおよび水溶液Bの液体流が、それぞれ独立して、前記細長い形状の混合容器の第1の開口部へ、それぞれ独立して排出され、それぞれ独立して必要に応じて5m/hを超える線速度で放出される。
【0017】
前記したもの以外に、本発明の範囲については、以下に述べる詳細な説明によって明らかになる。ただし、本発明の精神と範囲内における各種変更および修正は、当業者にとって、詳細な説明から明らかであるから、詳細な説明および具体的な例は、本発明の好適な実施形態を示している一方で、説明のために与えられているにすぎないことを理解すべきである。前記の一般的な説明も、下記の詳細な説明も、どちらも代表的な例として説明を目的とするものにすぎず、請求項に記載の本発明を限定するものではないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明は、以下に述べる詳細な説明および添付の図面によって、より完全に理解されよう。なお、該説明も図面も、説明として与えられているにすぎず、したがって、本発明を限定するものではない。
【図1】実験のための設備構成の図である。図中において、Aは水溶液A、ATは水溶液Aを搬送するチューブ、Bは水溶液B、BTは水溶液Bを搬送するチューブ、Mは混合用チューブ、Cは回収器、Sは分離器、Dは乾燥器/焼炉である。
【図2A】実施例1(正方形)のCOK−12(焼成済みメソポーラスシリカ材料)の窒素吸着等温線と、該焼成材料の脱離等温線(黒塗り菱形)を示す。
【図2B】吸着枝から算出したBJHの細孔径分布を示す。
【図3A】実施例1のCOK−12(焼成済みメソポーラスシリカ材料)のSEM顕微鏡写真である。サンプルは金で被覆した。画像は、フィリップス社の(FEI) SEM XL30 FEGを使用することにより得た。
【図3B】実施例1のCOK−12(焼成済みメソポーラスシリカ材料)のSEM顕微鏡写真である。サンプルは金で被覆した。画像は、フィリップス社の(FEI) SEM XL30 FEGを使用することにより得た。
【図3C】実施例1のCOK−12(焼成済みメソポーラスシリカ材料)のSEM顕微鏡写真である。サンプルは金で被覆した。画像は、フィリップス社の(FEI) SEM XL30 FEGを使用することにより得た。
【図4A】実施例2(正方形)のCOK−12(焼成済みメソポーラスシリカ材料)の窒素吸着等温線と、該焼成材料の脱離等温線(黒塗り菱形)を示す。
【図4B】吸着枝から算出したBJHの細孔径分布を示す。
【図5A】実施例3(黒塗り菱形)のCOK−12(焼成済みメソポーラスシリカ材料)の窒素吸着等温線と、該焼成材料の脱離等温線(正方形)を示す。
【図5B】吸着枝から算出したBJHの細孔径分布を示す。
【図6A】実施例3のCOK−12(焼成済みメソポーラスシリカ材料)のSEM顕微鏡写真である。サンプルは金で被覆した。画像は、フィリップス社の(FEI) SEM XL30 FEGを使用することにより得た。
【図6B】実施例3のCOK−12(焼成済みメソポーラスシリカ材料)のSEM顕微鏡写真である。サンプルは金で被覆した。画像は、フィリップス社の(FEI) SEM XL30 FEGを使用することにより得た。
【図7A】実施例4(黒塗り菱形)のCOK−12(焼成済みメソポーラスシリカ材料)の窒素吸着等温線と、該焼成材料の脱離等温線(正方形)を示す。
【図7B】吸着枝から算出したBJHの細孔径分布を示す。
【図8A】実施例4のCOK−12(焼成済みメソポーラスシリカ材料)のTEM顕微鏡写真である。画像は、フィリップス社の(FEI) SEM XL30 FEGを使用することにより得た。
【図8B】実施例4のCOK−12(焼成済みメソポーラスシリカ材料)のTEM顕微鏡写真である。画像は、フィリップス社の(FEI) SEM XL30 FEGを使用することにより得た。
【図8C】実施例4のCOK−12(焼成済みメソポーラスシリカ材料)のTEM顕微鏡写真である。画像は、フィリップス社の(FEI) SEM XL30 FEGを使用することにより得た。
【図9】実施例5(菱形)のCOK−12(焼成済みメソポーラスシリカ材料)の窒素吸収等温線と、該焼成材料の脱離等温線(黒塗り正方形)を示す。
【図10A】実施例5のCOK−12(焼成済みシリカ材料)のTEM顕微鏡写真である。
【図10B】実施例5のCOK−12(焼成済みシリカ材料)のTEM顕微鏡写真である。
【発明の詳細な説明】
【0019】
以下に記載する本発明の詳細な説明は、添付の図面を参照する。図面が異なっていても、参照番号が同じであれば、同じまたは類似の構成要素を示している。また、以下の詳細な説明は、本発明を限定するものではない。本発明の範囲は、付属の請求項および該請求項に等価のものによって規定される。
【0020】
この明細書の本文において、いくつかの文献を引用する。該文献(すべての製造業者の仕様書、使用上の注意などを含む)は、それぞれ参照によって引用される。ただし、どの引用文献も、本発明の先行技術を実際に構成すると、出願人が自認しているわけではない。
【0021】
特定の実施形態に関して、図面を参照して本発明を説明する。ただし、本発明は、この特定の実施形態に限定されるわけではなく、請求項によってのみ限定されるものである。記載の図面は、説明的なものであって、限定的なものではない。図面中で、構成要素の大きさは誇張されていることがあり、正しい縮尺で描かれていないものもあるが、これは説明を目的とするものである。寸法および相対的な寸法は、本発明の実際の実施に対応するものではない。
【0022】
さらに、明細書の記載および請求項における、第1、第2、第3などの用語の使用は、類似の構成要素を区別するためであって、必ずしも、順位や時間的な前後を説明するためではない。このように使用された用語は、適切な状況下で入れ替え可能であり、また、ここに記載する本発明の実施形態は、ここに記載または図示する順番とは別の順番でも動作可能であると理解すべきである。
【0023】
また、明細書の記載および請求項における、上、底、覆って、下、などの用語の使用は、説明を目的とし、必ずしも、相対的な位置を記載するためではない。このように使用された用語は、適切な状況下で入れ替え可能であり、また、ここに記載する本発明の実施形態は、ここに記載または図示する方向とは別の方向にも動作可能であると理解すべきである。
【0024】
さらに、請求項中で使用される「含む」という用語は、その用語につづいて列挙される手段に制限して解釈すべきではない。該用語は、他の構成要素または工程を排除するものではない。したがって、該用語は、言及されている特徴、完全体、工程、または成分/部品の存在を示していると解釈すべきであって、1つ以上のその他の特徴、完全体、工程、もしくは成分/部品、またはこれらの組み合わせの、存在もしくは追加の可能性を否定するものではない。よって、「手段Aと手段Bとを含むデバイス」という表現が指す範囲は、部品Aと部品Bとだけからなるデバイス(つまり、本発明について、デバイスの関連部品は部品Aおよび部品Bだけ)に限定すべきではない。
【0025】
本明細書全体を通じて、「一実施形態」または「実施形態」という記載は、その実施形態と関連して記述される具体的な特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも一つの実施形態に備えられていることを意味している。したがって、「一実施形態において」または「実施形態において」という表現が本明細書全体を通じてあちらこちらで使用されているが、これらの表現すべてが必ずしも同じ実施形態を指しているわけではないが、同じ実施形態を指していることもあり得る。さらに、当業者にとって本開示から明らかなように、1つ以上の実施形態において、上述の具体的な特徴、構造、または特性は、任意の好適な様態において組み合わせてもよい。
【0026】
同様に、本発明の代表的な例としての実施形態の記載において、各種の進歩性を有する形態のうちの1つ以上の形態の開示を簡素化し、該形態の理解を助けることを目的として、本発明の各種特徴が、単一の実施形態、図、またはその実施形態や図の記載にまとめられることがあることを理解すべきである。ただし、この開示方法は、請求項に記載の発明には、各請求項に明記されてはいない特徴が必要である、という考えを反映していると解釈すべきではない。実際には、下記の請求項に反映されているように、進歩性を有する態様が、先に開示された単一の実施形態のすべての特徴に存在するわけではない。よって、詳細な説明につづく請求項を、ここで明確にこの詳細な説明に引用し、請求項は、本発明の別々の実施形態としてそれぞれ独立しているものとする。
【0027】
さらに、ここに記載する一部の実施形態は、その他の実施形態に含まれている別の特徴を備えており、また、さらに別の特徴は備えていない。一方で、当業者であれば理解できるように、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、本発明の権利範囲内であり、別の実施形態となる。例えば、下記請求項では、請求項に記載の実施形態のうちの任意の実施形態を、任意の組み合わせで使用することができる。
【0028】
ここでの記載において、多数の具体的な詳細事項を説明するが、本発明の実施形態は、これらの具体的な詳細事項を用いなくても実施可能であることを理解すべきである。場合によっては、本明細書の説明の理解を妨げないように、周知の方法、構造、および手法については詳細を示していないこともある。
【0029】
以下に記載する用語は、本発明の理解を助けるためにのみ規定されるものである。
【0030】
〔定義〕
本明細書で使用される、メソスケール、メソ細孔、メソポーラスなどの用語は、2nmから50nmの範囲の特徴的な大きさを有する構造を指す。ここで使用するメソスケールという用語によって、なんらの特定の空間的組織または製造方法を示唆するものではない。IUPACの命名法(J. Rouquerol et al., Pure&Appl. Chem,66(1994)1739-1758)によれば、マイクロポーラス材料は2nmの未満の細孔径を有し、メソポーラス材料は2nmと50nmとの間の細孔径を有し、マクロポーラス材料は50nmを超える細孔径を有する。ナノポーラス材料は、0.3nmから100nmの範囲の細孔径を有する。
【0031】
本願の開示において使用される、細孔径分布が狭いという表現および細孔径が略均一であるとは、細孔容積を細孔径で微分した値(dV)を細孔径の関数として示す細孔径分布曲線を描くと、該曲線の極大の半分の高さの曲線上の点において、曲線の幅(つまり、高さが半分のところでの最大細孔径と最小細孔径との差)と、(上述の)曲線の高さが最大になる細孔径との比が、0.75を超えないことを意味する。本発明によって調製された材料の細孔径分布は、窒素吸着および窒素脱離、ならびに取得されたデータから、細孔容積を細孔径で微分した値のグラフを細孔径の関数としてプロットすることによって決定される。前記窒素吸着および窒素脱離のデータは、当該技術分野において利用可能であって細孔容積を細孔径で微分した値のグラフを細孔径の関数としてプロットできる機器(例えば、マイクロメトリックスASAP 2010)を使用することによって得ればよい。マイクロ細孔の範囲であれば、このようなグラフを、G. Horvath、K. Kawazoe、J. Chem. Eng. Japan,16〔6〕,〔1983〕470に記載のHorvath−Kawazoeモデルのスリット孔形状を用いてプロットすればよい。メソ細孔の範囲であれば、前記グラフを、E. P. Barrett,L. S. Joyner,P. P. Halenda,J. Am. Chem. Soc.,73 (1951),373-380に記載された方法によってプロットすればよい。
【0032】
本発明の開示において使用される、「水性」という用語は、水に関連していること、または水を用いて作られていることを意味している。
【0033】
本発明の開示において使用される、「細長い形状の混合容器」という用語は、2つの開口部を有する例えばチューブ、パイプ、溝など任意の形状の容器を意味している。
【0034】
本発明の開示において使用される、「シリカ前駆体」という用語は、本発明の製造方法において、シリカが合成され得る任意の化合物を意味している。「シリカ前駆体」には、アルカリケイ酸塩、ケイ酸、およびテトラアルキルオルトケイ酸塩(例えばテトラエチルオルトケイ酸塩(tetraethyl orthosilicate; TEOS)、テトラメチルオルトケイ酸塩(tetramethyl orthosilicate; TMOS)、およびテトラプロピルオルトケイ酸塩(tetrapropyl orthosilicate; TPOS))などが含まれる。
【0035】
本発明の開示において使用される、「界面活性剤の除去」という用語は、界面活性剤が除去されるプロセス工程を意味している。このプロセスには、例えば200℃で実施される焼成法や、例えば超冷却された二酸化炭素またはエタノールを用いて実施される抽出法などが含まれる。
【0036】
本発明の開示において使用される、「熟成工程」という用語は、例えば、等温条件のもとである期間保持することによって、溶液Aと溶液Bとの反応生成物をさらに処理し、細孔径が略均一であって、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料を製造する製造方法を完了させる、任意の工程を意味している。
【0037】
ここで使用される「実質的に不溶性」という用語は、本質的に水に全く不溶性の、または少なくとも水に難溶性の薬物に対して用いられる。さらに具体的には、該用語は、投与量(mg)の水溶解度(mg/ml)に対する比が100mlを超える、任意の薬物に対して用いられる。なお、薬物の溶解度とは、緩衝化されていない水における中性(例えば、遊離塩基または遊離酸)型の溶解度である。この意味には、水溶解度が本質的にゼロ(1.0mg/ml未満)である薬物を含むが、該薬物に限られるわけではない。
【0038】
BCSに基づいて、「水に難溶性」という用語を、37℃でpH1.2〜7.5の250ml以下の水性媒質に対して、最大投与量が溶解しない化合物を指すものと定義する。Cynthia K. Brown, et al., 「Acceptable Analytical Practices for Dissolution Testing of Poorly Soluble Compounds」, Pharmaceutical Technology (Dec. 2004)を参照。
【0039】
マニュアル(薬剤学(M.E. Aulton))によれば、任意の溶媒に対して、溶解度は、1gの化合物を溶解させるために必要な溶媒の量(g)として定義される。この定義にしたがって、以下の溶解能が規定される。すなわち、10g〜30g(溶けやすい)、30g〜100g(「やや溶けにくい」)、100g〜1000g(「溶けにくい」)、1000g〜10000g(「非常に溶けにくい」または「難溶性」)、および10000g超(実質的に不溶性)である。
【0040】
「薬物」および「生理活性化合物」という用語は、広く理解されており、例えばヒトに投与されると、有益な予防性特質および/または治療性特質を有する化合物を示している。さらに、「薬物そのもの」という用語は、本明細書全体を通じて、比較をするために使用され、なんらの賦形剤も添加されていない水溶液/懸濁液中の薬物を意味している。
【0041】
「抗体」という用語は、関連する要因のエピトープ決定基、または該要因のドメインのエピトープ決定基に結合できる、そのままの分子およびその断片を指す。「Fv」断片とは、最小の抗体の断片であって、完全な抗原認識部位と結合部位とを有する。この領域は二量体(VH−VL二量体)であって、非共有結合によって重鎖および軽鎖それぞれの可変領域が強力に結合されている。各可変領域の3つのCDRは、相互作用をして、前記VH−VL二量体の表面上に、抗原に結合する部位を形成する。換言すれば、抗原に結合する抗体部位として、前記重鎖および軽鎖からの合計6つのCDRがともに機能する。ただし、可変領域(または、抗原に特異的なCDRを3つだけ有する、Fvの半分)が単独で、その親和性が結合部位全体の親和性より低いにもかかわらず、抗原を認識し、結合できることが知られている。したがって、本発明の好ましい抗体の断片の一つはFv断片であるが、これに限定されるものではない。このような抗体の断片は、保存されて、抗原を認識して結合する、重鎖または軽鎖のCDRの抗体断片を含むポリペプチドであってもよい。Fab断片(F(ab)とも称する)は、軽鎖の定常部および重鎖の定常部(CH1)をも有している。例えば、抗体をパパインで消化すると、2種類の断片が生成される。一つは、抗原に結合する単一のドメインとして作用する重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域とを有し、Fab断片と呼ばれる、抗原に結合する断片であり、もう一つは、容易に結晶化するので「Fc」と呼ばれる、残りの部分である。Fab’断片は、重鎖のCH1領域のカルボキシル末端に由来する複数の残基をさらに有する点で、Fab断片とは異なる。なお、該CH1領域は、抗体のヒンジ領域からの1つ以上のシステイン残基を有している。ただし、Fab’もFabも、抗原に結合する単一のドメインとして作用する重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域とを有する、抗原に結合する断片であるという点において、Fab’断片は、Fabと構造的に等価である。ここで、抗原に結合する単一のドメインとして作用する重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域とを有し、パパインによる消化によって得られる断片と等価である、抗原に結合する断片は、たとえ、プロテアーゼによる消化によって生成される抗体の断片と同一ではなくても、「Fab状抗体」と称される。Fab’−SHとは、遊離チオール基を定常部に有する1つ以上のシステイン残基を有するFab’である。
【0042】
本発明の開示において使用される、「生理活性種」という用語は、薬物および抗体を意味している。
【0043】
「固体分散体」という用語は、少なくとも2つの成分を含み、そのうちの一つの成分が、残りの成分中でほぼ一様に分散している固体(液体または気体と対比する意味)の系を定義している。この成分の分散状態が、系全体が化学的および物理的に均一または均質である状態の場合、または系が熱力学で定義される1つの相からなる状態の場合、このような固体分散体を、以後「固溶体」と称する。固溶体は、好ましい物理系である。なぜならば、その成分は通常、該成分を投与された生物体にとって、容易に生物的に利用可能であるからである。この長所は、前記固溶体が、液体媒質、例えば胃液に接触すると、簡単に液体溶液を形成することによって説明できると思われる。このように溶解が簡単に起こることは、少なくとも部分的には、固溶体から成分が溶解するのに必要なエネルギーが、結晶からなる固相またはマイクロ結晶からなる固相から成分が溶解するのに必要なエネルギーより小さいという事実が原因であると言える。
【0044】
「固体分散体」という用語は、全体の均質性が、固溶体より小さい分散状態をさらに包含する。このような分散状態は、全体が化学的および物理的に均一ではないか、または2つ以上の相を含む。例えば、「固体分散体」という用語は、非晶質、微結晶、もしくは結晶(a)、または、非晶質、微結晶、もしくは結晶(b)、またはその両方が、(b)または(a)を含む別の相、あるいは(a)および(b)を含む固溶体を含む別の相で、ほぼ一様に分散している、ドメインまたは小さな領域を有する粒子とも関連する。前記ドメインは、何らかの物理的特徴によってはっきりと識別できる、粒子内の領域であって、大きさは粒子全体の大きさに比較すると小さく、また、粒子内で一様にかつランダムに分布している。
【0045】
本出願において使用される、「室温」という用語は、12℃〜30℃の間、より好ましくは18℃と28℃との間、さらに好ましくは19℃と27℃との間、最も好ましくはほぼ20℃と26℃との間の温度を意味している。
【0046】
本出願において使用される、「低温」という用語は、15℃と40℃との間、より好ましくは18℃と23℃との間、さらに好ましくは20℃と30℃との間、最も好ましくはほぼ22℃と28℃との間の温度を意味している。
【0047】
本発明の開示において使用される、緩衝液のバッファーゾーンという用語は、緩衝液の酸成分のpKaに数値的に等しいpHより、pHの単位で約1.5低いpHから、約1.5高いpHまでの範囲にある、pH領域を意味している。
【0048】
〔細孔径が略均一であって、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料を製造する製造方法〕
水溶液Aにおいてアルカリケイ酸塩を使用する場合、水溶液BにおいてpKaが3〜9の範囲である酸は、水溶液Aと水溶液Bとを混合したときに、2を超えて8未満のpHを得るには充分であり、pKaが3〜9の範囲の酸のアルカリ塩は不必要である。しかし、代わりにシリカ前駆体を水溶液Aにおいて使用する場合は、pKaが3〜9の範囲の酸のアルカリ塩を添加しない場合は、水溶液BにおいてpKaが3〜9の範囲である酸では、水溶液Aと水溶液Bとを混合したときに、2を超えて8未満のpHを得るには不充分なことがある。pKaが3〜9の範囲である前記の酸は、水溶液Aと水溶液Bとを混合したときに、pHが3〜8の範囲である緩衝液中に存在していてもよい。あるいは、溶液Bそれ自体が緩衝液を含んでいてもよい。
【0049】
本発明の超高速(1秒〜100秒)反応の具体的な一実施形態は、細孔径が略均一であって、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料を、自己組織化法を用いて製造する製造方法であって、該製造方法は、
シリカ前駆体を含む水溶液Aを調製する工程と、
アルカリ金属水酸化物とアルカリ土類金属水酸化物とのいずれをも含まず、ポリ(アルキレンオキシド)トリブロック共重合体と、pKaが3〜9の範囲である酸と、必要に応じて、pKaが3〜9の範囲である酸のアルカリ塩とを含む水溶液Bを調製する工程と、
前記水溶液Aおよび水溶液Bを、液体流として、第1の開口部および第2の開口部を備えた細長い形状の混合容器(溝、チューブ)に、
前記水溶液Aおよび水溶液Bの液体流がそれぞれ独立して前記細長い形状の混合容器の第1の開口部へ、それぞれ独立して10m/hから1000m/hの範囲である線速度(この線速度は、30m/hを超えることがより好ましく、100m/hを超えることがさらに好ましく、500m/hを超えることが特に好ましい)で放出されて、前記水溶液Aおよび水溶液Bの液体流が直接衝突するように、供給し、
これにより、得られる混合物のpHを、2を超えて8未満とし、前記細長い形状の混合容器内で、10℃〜100℃の範囲の温度で反応生成物を生成させ、
該反応生成物が前記細長い形状の混合容器の第2の開口部から排出された後、該反応生成物を、濾過分離し、乾燥し、界面活性剤を除去して、細孔径が略均一であって、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料を製造する工程と、を含み、前記細長い形状の混合容器内の好ましい滞留時間が1秒〜100秒であり、前記製造方法は、必要に応じて熟成工程を省略する。
【0050】
本発明の非常に短い(1秒〜10秒)反応の具体的な一実施形態は、細孔径が略均一であって、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料を、自己組織化法を用いて製造する製造方法であって、該製造方法は、
シリカ前駆体を含む水溶液Aを調製する工程と、
アルカリ金属水酸化物とアルカリ土類金属水酸化物とのいずれをも含まず、ポリ(アルキレンオキシド)トリブロック共重合体と、pKaが3〜9の範囲である酸と、必要に応じて、pKaが3〜9の範囲である酸のアルカリ塩とを含む水溶液Bを調製する工程と、
前記水溶液Aおよび水溶液Bを、液体流として、第1の開口部および第2の開口部を備えた細長い形状の混合容器(溝、チューブ)に、
前記水溶液Aおよび水溶液Bの液体流がそれぞれ独立して前記細長い形状の混合容器の第1の開口部へ、それぞれ独立して1000m/hから3000m/hの範囲である線速度で放出されて、前記水溶液Aおよび水溶液Bの液体流が直接衝突するように、供給し、
これにより、得られる混合物のpHを、2を超えて8未満とし、前記細長い形状の混合容器内で、10℃〜100℃の範囲の温度で反応生成物を生成させ、
該反応生成物が前記細長い形状の混合容器の第2の開口部から排出された後、該反応生成物を、濾過分離し、乾燥し、界面活性剤を除去して、細孔径が略均一であって、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料を製造する工程と、を含み、前記細長い形状の混合容器内の好ましい滞留時間が1秒〜10秒であり、前記製造方法は、必要に応じて熟成工程を省略する。
【0051】
本発明の規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料を製造する製造方法の好適な実施形態によれば、pKaが3〜9の範囲である前記酸が、pHが3〜8の範囲である緩衝液中に存在する。
【0052】
本発明の細孔径が略均一であって、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料を製造する製造方法の好適な実施形態によれば、前記水溶液2は、テトラアルキルアンモニウム系界面活性剤(好ましくは、テトラプロピルアンモニウムカチオンを生成するテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、またはテトラメチルアンモニウムカチオンを生成するテトラメチルアンモニウムヒドロキシド)をさらに含んでいる。テトラアルキルアンモニウム系界面活性剤の存在によって、製造される、規則的な構造を有するメソポーラスシリカにおいて変化が生じる。
【0053】
本発明の他の好適な実施形態によれば、前記水溶液Aおよび水溶液Bの液体流が、それぞれ独立して、前記細長い形状の混合容器へ、10m/hを超える線速度、より好ましくは30m/hを超える線速度、さらに好ましくは100m/hを超える線速度、特に好ましくは1000m/hを超える線速度で排出される。
【0054】
本発明の他の好適な実施形態によれば、前記水溶液Aおよび水溶液Bの液体流は、それぞれ独立して、前記細長い形状の混合容器へ、10,000m/h未満、より好ましくは5,000m/h未満、特に好ましくは2500m/h未満の線速度で放出される。
【0055】
酸は、濾過プロセスに関連する洗浄プロセスの間に、そのほとんどが除去され、残った酸はすべて焼成プロセスで除去される。
【0056】
反応混合物のpHのばらつきは、本発明の範囲内であれば、反応時間または反応温度とともに、規則的な構造を有する、最終的なメソポーラスシリカ材料の細孔径を微調整する条件として使用可能である。細孔径は、pHが上昇するとわずかに増加する。細孔径は、反応温度に対してより大きく増加するが、全細孔容積はほとんど影響を受けない。反応を実施するpHは、より好ましくは2.2〜7.8の範囲であり、さらに好ましくは2.4〜7.6の範囲であり、特に好ましくは2.6〜7.4の範囲である。
【0057】
他の一実施形態では、反応を実施するpHは、より好ましくは2.8〜7.2の範囲であり、さらに好ましくは3〜7.2の範囲であり、特に好ましくは4〜7の範囲であり、より特に好ましくは5〜6.5の範囲である。
【0058】
実施例1〜3は、室温で5nm〜6nmの細孔径を実現する例である。より大きな細孔は、高い温度で、ブロック共重合体ミセルが膨張する結果、実現される。細孔径は、ナトリウムの含有量によっても変化する。ナトリウムの含有量が多いと、わずかに大きな細孔ができる。
【0059】
本発明の製造方法の好適な実施形態によれば、前記容器には、必要に応じてインラインの混合装置、例えばスタティックミキサーを設けてもよい。
【0060】
本発明の細孔径が略均一であって、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料を製造する製造方法において、前記水溶液Aおよび水溶液Bの液体流が衝突することから生じる混合物は、100rpm〜700rpmの範囲の攪拌速度で攪拌してもよい。
【0061】
また、COK−10材料は、pHが2を超えて8未満の反応混合物中で、室温条件または低温条件のもとで製造可能であることが示されている。
【0062】
前記製造条件を微調整してもよく、これにより、4nm〜30nmの範囲、より好ましくは7nm〜30nmの範囲、さらに好ましくは10nm〜30nmの範囲、特に好ましくは10nm〜30nmの範囲、さらに特に好ましくは4nm〜12nmの範囲から選択される細孔径を有する、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料を実現することができる。
【0063】
水溶液1は、好ましくは、少なくとも10重量%の水酸化ナトリウムと、少なくとも27重量%のシリカとを含む、ケイ酸ナトリウム水溶液である。
【0064】
本発明の製造方法において、試薬または中間体(例えば両親媒性重合体、中でもプルロニック(登録商標)P123、または例えばテトラアルキルアンモニウムカチオン、特に前記テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド)の量について、本発明の範囲または精神から逸脱せずに、各種変更および修正が可能であることは当業者にとって明らかである。さらに、本発明の製造方法における温度、混合速度、または反応時間の条件、およびシステムおよび方法の構成についても、本発明の権利範囲または精神から逸脱せずに、各種変更および修正が可能であることは当業者にとって明らかである。これらの変更内容は微調整可能であり、これにより、本発明の細孔径分布が狭いメソポーラス材料を、所望の最大細孔径が7〜30nmの範囲で製造できる。
【0065】
本発明の製造方法の好適な実施形態によれば、細長い形状の混合容器(溝、チューブ)内の滞留時間は、1分〜100分の範囲である。滞留時間は1秒〜100秒であることが好ましく、1秒〜10秒であることが特に好ましい。
【0066】
本発明の製造方法の好適な実施形態によれば、上述の、細孔径が略均一であって、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料自体は、照射の非存在下で製造される。ただし、該規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料に、生理活性種を装填するときに照射を使用してもかまわない。
【0067】
本発明の製造方法の好適な実施形態によれば、上述の、細孔径が略均一であって、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料自体は、マイクロ波照射の非存在下で製造される。ただし、該規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料に、生理活性種を装填するときにマイクロ波照射を使用してもかまわない。
【0068】
本発明の製造方法の好適な実施形態によれば、前記製造方法は、前記規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料に、生理活性種を装填することをさらに含んでいる。
【0069】
本発明の製造方法の好適な実施形態によれば、前記製造方法は、前記規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料中に、実質的に不溶性の薬物を固体として分散させることをさらに含んでいる。
【0070】
本発明の製造方法の他の好適な実施形態によれば、前記製造方法は、連続的な製造方法である。
【0071】
〔ポリ(アルキレンオキシド)トリブロック共重合体〕
前記ポリ(アルキレンオキシド)(A)(B)(A)のトリブロック共重合体は、好ましくは、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(アルキレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)トリブロック共重合体(例えばプルロニック(登録商標)界面活性剤(下記の表を参照))、またはポリ(アルキレンオキシド)−ポリエチレンオキシド)−ポリアルキレンオキシドトリブロック共重合体(例えばリバースプルロニック(登録商標)界面活性剤(下記の表を参照))である。なお、前記アルキレンオキシド成分は、炭素数が少なくとも3であり、例えばプロピレンオキシド成分またはブチレンオキシド成分である。前記トリブロック共重合体では、さらに好ましくは、各ブロックにおけるエチレンオキシド成分の個数が少なくとも5個、および/またはアルキレンオキシド成分の個数は少なくとも15個であり、中央のブロックにおいて特に好ましくは少なくとも30個である。
【0072】
ポリ(アルキレンオキシド)トリブロック共重合体である、プルロニック(登録商標)P123とプルロニック(登録商標)17R4とが特に好ましい。プルロニック(登録商標)P123は、EO20PO70EO20(EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシドを示す)で表わされる組成を有し、式HO(CHCHO)20(CHCH(CH)O)70(CHCHO)20Hで表わされ、分子量が約5800である。プルロニック(登録商標)17R4は、(PO)14(EO)24(PO)14で表わされる組成を有し、式HO(CHCH(CH)O)14(CHCHO)24(CHCH(CH)O)14Hで表わされ、分子量が約2700であり、端末第二級ヒドロキシル基を有する。
【0073】
【表2】

【0074】

【0075】
通常、SiOのプルロニック(登録商標)P123に対する比を65にして使用する。
【0076】
〔シリカ〕
規則的な構造を有するメソポーラス材料を合成するためのシリカの供給源は、単量体供給源、例えばシリコンアルコキシドでもよい。TEOSおよびTMOSが、シリコンアルコキシドの代表的な例である。あるいは、アルカリケイ酸溶液、例えば水ガラスをシリコン供給源として使用してもよい。Kosuge et al. は、水溶性のケイ酸ナトリウムが、SBA−15タイプの材料の合成に使用できることを示した(Kosuge et al., Chemistry of Materials, (2004),16,899-905)。ゼオタイル(Zeotile)と呼ばれる材料においてシリカは事前組織化して、ゼオライトに類似のナノスケールの平板を形成し、この平板がメソスケールで三次元モザイク構造に組織化する(Kremer et al., Adv. Mater., 20,(2003),1705)。
【0077】
〔2を超えて8未満のpHの緩衝液〕
上記2を超えて8未満のpHは、好ましくは、緩衝液の酸性成分のpHの範囲、すなわち、緩衝液の酸性成分のpKaに数値的に等しいpHより、pHの単位で1.5低いpHから、1.5高いpHまでの範囲にある。また、特に好ましくは、前記酸性成分のpKaに数値的に等しいpHより、pHの単位で1.2低いpHから、1.2高いpHまでの範囲にあり、さらに特に好ましくは、前記酸性成分のpKaに数値的に等しいpHより、pHの単位で1.0低いpHから、1.0高いpHまでの範囲にある。
【0078】
pKaが約3から約9の範囲にある、好適な酸としては、以下の表3に列挙したものがあげられる。
【0079】
【表3】

【0080】
緩衝液とは、弱酸とその弱酸の塩との混合物、または弱酸の塩同士の混合物である。好ましい緩衝液は、2〜8の範囲の複数のpKaを有する、ポリ酸/塩またはポリ酸の複数の塩に基づいた緩衝液である。該緩衝液としては、例えば、各pKa付近にバッファーゾーンを有し、当該バッファーゾーンが重なって、2.0と7.9との間:3.14±1.5、4.77±1.5、および6.39±1.5のそれぞれの範囲全体をカバーする、クエン酸/クエン酸塩の緩衝液、および各pKa付近にバッファーゾーンを有し、そのバッファーゾーンが重なって、2.66と7.1との間:4.16±1.5、5.61±1.5のそれぞれの範囲全体をカバーする、コハク酸/コハク酸塩の緩衝液などがある。
【0081】
2を超えて8未満のpHを有する好ましい緩衝液としては、pHの範囲が2.5〜7.9のクエン酸ナトリウム/クエン酸の緩衝液、pHの範囲が3.2〜6.2の酢酸ナトリウム/酢酸の緩衝液、pHの範囲が3.0〜8.0のNaHPO/クエン酸の緩衝液、pHの範囲が1〜5のHCl/クエン酸ナトリウムの緩衝液、およびpHの範囲が6〜9のNaHPO/NaHPOの緩衝液などがある。
【0082】
ナトリウム/クエン酸の緩衝液は、好ましくは、クエン酸ナトリウムとクエン酸との重量比が0.1:1〜3.3:1の範囲である。
【0083】
〔薬物〕
生物薬剤学分類体系(Biopharmaceutical Classification System; BCS)は、水溶解度と腸における浸透性とに基づいた、製剤原料分類のためのフレームワークである(Amidon、G. L.,Lennernaes H.,Shah V.P.,andCrison J.R., 「A Theoretical Basis For a Biopharmaceutics Drug Classification: The Correlation of In Vitro Drug Product Dissolution and In Vivo Bioavailability」,Pharmaceutical Research、12: 413-420 〔1995〕、及び、Adkin、D.A.,Davis, S.S.,Sparrow, R.A.,Huckle, P.D、and Wilding, I.R.,1995、The effect of mannitol on the oral bioavailability of cimetidine. J. Pharm. Sci. 84、pp. 1405-1409)。
【0084】
前記の生物薬剤学分類体系(BCS)は、G. Amidonによって最初に開発され、該システムによると、経口投与用医薬品は、水溶解度と腸の細胞層の浸透性に応じて、4つのクラスに分離される。BCSによれば、製剤原料は、以下のように分類される。
クラスI:浸透性高、溶解度高
クラスII:浸透性高、溶解度低
クラスIII:浸透性低、溶解度高
クラスIV:浸透性低、溶解度低
この分類体系に対する関心は、大部分が、初期の薬物開発、そして有効期間を通じた製品の変化の管理におけろ応用面から生じている。薬物開発の初期段階では、特定の薬物のクラスの知識が、開発の継続または中止の決定に対して影響を与える重要な要因である。本送達形態および本発明の好適な方法は、BCSのクラスIIに属する薬物の生物学的利用能を改善することによって、この決定を変え得る。
【0085】
溶解度のクラスの境界は、即時放出(immediate release、「IR」)処方の最大投与量強度と、pHが1〜7.5の範囲の水性媒質内における、試験薬物のpH−溶解度プロファイルとに基づいている。溶解度は、フラスコ振盪(shake−flask)法または滴定法、あるいは検証安定性指示アッセイ(validated stability−indicating assay)分析によって測定できる。製剤原料は、最大投与量強度が、1〜7.5のpH範囲で、250ml以下の水性媒質に溶解する場合に、溶解性が高いとみなされる。250mlという体積評価は、空腹時のヒトのボランティアに対して、コップ一杯(約8オンス)の水とともに薬物製品の投与を処方する、典型的な生物学的同等性(bioequivalence; BE)試験プロトコルから得られる。浸透性のクラスの境界は、ヒトの腸の膜を通過する物質輸送速度の測定値に直接基づき、間接的には、ヒトにおける製剤原料の吸収の度合い(吸収された投与量の割合であって、全身的生物学的利用能のことではない)に基づいている。ヒトにおける吸収の度合いは、質量バランスの薬物動態試験、絶対的生物学的利用能試験、腸浸透性法(intestinal permeability method)、インビボによるヒトの腸灌流試験(intestinal perfusion studies in humans)、およびインビボまたはインサイツによる動物の腸灌流試験(intestinal perfusion studies in animals)を使って測定される。インビトロの浸透実験は、切除したヒトまたは動物の腸の組織を使って実施可能であり、インビトロの浸透実験は、上皮細胞の単層を使って実施可能である。あるいは、ヒトにおける薬物の吸収の度合いを予測できる非ヒト系も、使用可能である(例えば、インビトロの上皮細胞の培養法)。消化管における不安定性を示す証拠が存在しない状態で、質量決定に基づいて、または参照静注投与量に対する比較に基づいて求められる、投与量の90%以上が溶解する場合に、薬物は、溶解性が非常に高いとみなされる。FDAの指導ではpH7.5、ICH/EUの指導ではpH6.8とされている。即時放出薬物製品は、体積が900ml以下の下に列挙する各媒質中で、USP Apparatus Iを使って100rpmで(またはUSP Apparatus IIを使って50rpmで)測定した、製剤原料の表示量の最低85%以上が30分以内に溶解する場合に、迅速に溶解するとみなされる。該媒質とは、すなわち、(1)0.1N HCl、または酵素を含まない擬似胃流体USP、(2)pH4.5の緩衝液、および(3)pH6.8の緩衝液、または酵素を含まない擬似腸流体USPである。前記BCSに基づくと、低溶解度化合物とは、最大投与量が、1.2〜7.5のpHの範囲で、37℃で、250ml以下の水性媒質に溶解しない化合物である。Cynthia K. Brown, et al.、「Acceptable Analytical: Practices for Dissolution Testing of Poorly Soluble Compounds」,Pharmaceutical Technology (Dec. 2004)を参照。即時放出(IR)薬物製品は、体積が900ml以下の下に列挙する各媒質中で、米国薬局方の(USP)Apparatus Iを使って100rpmで(またはUSP Apparatus IIを使って50rpmで)測定した、製剤原料の表示量の最低85%以上が30分以内に溶解する場合に、迅速に溶解するとみなされる。該媒質とは、すなわち、(1)0.1N HCl、または酵素を含まない擬似胃流体USP、(2)pH4.5の緩衝液、および(3)pH6.8の緩衝液、または酵素を含まない擬似腸流体USPである。
【0086】
製剤原料は、ヒトにおける吸収の度合いが、質量バランスに基づいて、または参照静注投与量に対する比較に基づいて、投与量の90%より高いと判定された場合に、浸透性が非常に高いとみなされる。浸透性のクラスの境界は、ヒトの腸の膜を通過する物質輸送速度の測定値に直接基づき、間接的には、ヒトにおける製剤原料の吸収の度合い(吸収された投与量の割合であって、全身的生物学的利用能のことではない)に基づいている。ヒトにおける吸収の度合いは、質量バランスの薬物動態試験、絶対的生物学的利用能試験、腸浸透性法、インビボによるヒトの腸灌流試験、およびインビボまたはインサイツによる動物の腸灌流試験を使って測定される。インビトロの浸透実験は、切除したヒトまたは動物の腸の組織を使って実施可能であり、インビトロの浸透実験は、上皮細胞の単層を使って実施可能である。あるいは、ヒトにおける薬物Iの吸収の度合いを予測できる非ヒト系も、使用可能である(例えば、インビトロの上皮細胞の培養法)。製剤原料は、ヒトにおける吸収の度合いが、質量バランスに基づいて、または参照静注投与量に対する比較に基づいて、投与量の90%より高いと判定された場合に、浸透性が非常に高いとみなされる。製剤原料は、ヒトにおける吸収の度合いが、質量バランスに基づいて、または参照静注投与量に対する比較に基づいて、投与量の90%未満であると判定された場合に、浸透性が低いとみなされる。IR薬物製品は、体積が900ml以下の下に列挙する各媒質中で、米国薬局方の(USP)Apparatus Iを使って100rpmで(またはApparatus IIを使って50rpmで)測定した、製剤原料の表示量の最低85%以上が30分以内に溶解する場合に、迅速に溶解するとみなされる。該媒質とは、すなわち、(1)0.1N HCl、または酵素を含まない擬似胃流体USP、(2)pH4.5の緩衝液、および(3)pH6.8の緩衝液、または酵素を含まない擬似腸流体USPである。
【0087】
BCSのクラスIIに属する薬物は、特に溶解性が低い、または溶解が遅いが、胃および/または腸の内層によって溶液から容易に吸収される薬物である。よって、吸収させるためには、消化管の内層に対して長い時間にわたって曝露することが必要である。このような薬物は、多数の治療クラスにおいて見られる。クラスIIの薬物は、特に溶解性が低い、または溶解が遅いが、胃および/または腸の内層によって溶液から容易に吸収される。吸収させるためには、消化管の内層に対して長い時間にわたって曝露することが必要である。このような薬物は、多数の治療クラスにおいて見られる。特に関心を引かれるクラスは、抗真菌薬、例えばイトラコナゾールである。既知のクラスIIの薬物の多くは、疎水性であり、長らく投与が困難であった。また、疎水性であることが原因となって、薬物を摂取するときに患者が食事を取っているか、または空腹時であるかによって、吸収に大きなばらつきが生じる傾向がある。このことが、血清濃度のピークレベルに対して影響を及ぼし、投与量の算出および投与計画を複雑にする。これらの薬物の多くは比較的安価でもあるので、単純な製剤法が求められ、収率がいくらか非効率でもかまわない。
【0088】
本発明の好適な実施形態において、前記薬物は、イントラコナゾール(intraconazole)またはこれに関連した薬物であり、例えばフルオコナゾール(fluoconazole)、テルコナゾール、ケトコナゾール、およびサペルコナゾールなどである。
【0089】
イトラコナゾールは、真菌感染を治療するために使用される、クラスIIの医薬であって、皮膚糸状菌(白癬感染)、カンジダ、マラセチア、およびクロモブラストマイコーシスなどを含む、広範囲の菌類に対して効果的である。イトラコナゾールは、細胞壁、イースト菌およびその他の真菌感染性病原菌の重要な酵素を破壊することによって機能する。イトラコナゾールは、テストステロンのレベルを下げることもでき、この特性によって、イトラコナゾールは前立腺癌の治療に有用であり、過剰な副腎コルティコステロイドホルモンの生成を減少させ、クッシング症候群の治療に有用である。イトラコナゾールは、カプセルおよび経口I溶液の形態で入手可能である。真菌感染の場合、経口カプセルの推薦される投与量は、200mg〜400mg、1日1回である。
【0090】
イトラコナゾールは、カプセルの形態では1992年以来、経口I溶液の形態では1997年以来、さらに、静脈注射処方薬の形態では1999年以来、入手可能である。イトラコナゾールは、非常に親油性の高い化合物であるので、脂肪組織および化膿性滲出液において、高い濃度を実現する。しかし、イトラコナゾールの水性流体内への溶け込みは、非常に限定的にしか起こらない。胃の酸性度と食べ物とが、経口処方薬の吸収に対して多大な影響を及ぼす(Bailey, et al.、Pharmacotherapy、10: 146〜153 (1990))。55%の生物学的利用能を有するにもかかわらず、イトラコナゾールの経口カプセルの吸収にはばらつきがあり、予測不可能である。
【0091】
その他の好適な薬物としては、例えばグリセオフルビン、および例えばグリセオベルジンなどの、関連する化合物;複数種類の抗マラリア薬(例えばアトバコン);免疫系修飾薬(例えばシクロスポリン);心血管の薬物(例えばジゴキシンおよびスピロノラクトン);およびイブプロフェンなどのクラスIIの抗感染性薬物があげられる。さらに、ステロールまたはステロイドを使用してもよい。薬物、例えば、ダナゾール、カルバマゾピン(carbamazopine)、およびアシクロビルなどを、本発明のメソポーラス材料に装填してもよく、さらに、加工して薬学的組成物を形成してもよい。
【0092】
ダナゾールは、エチステロンに由来する合成ステロイドである。ダナゾールは、17a−プレグナ−2,4−ジエン−20−イノ[2,3−d]−イソキサゾール−17−オル(17a−Pregna−2,4−dien−20−yno[2,3−d]−isoxazol−17−ol)と表記され、式C2227NOで表わされ、分子量は337.46である。ダナゾールは、身体中に見られる天然ホルモン(アンドロゲン)のグループに類似の、合成ステロイドホルモンである。ダナゾールは、子宮内膜症の治療に使用され、線維嚢胞性乳腺疾患および遺伝性血管浮腫の治療にも有用である。ダナゾールには、脳下垂体によるゴナドトロピンと呼ばれるホルモンの産生を抑制することによって、エストロゲンのレベルを低減する機能がある。ゴナドトロピンは、通常、身体のプロセス、例えば、月経および排卵の原因となる性ホルモン、例えばエストロゲンおよびプロゲストーゲンなどの生成を活性化する。ダナゾールは経口投与され、投与量には直接関連していない生物学的利用能を有し、半減期は4時間〜5時間である。ダナゾールの投与量の増加は、血漿中濃度の増加に比例しない。投与量を2倍にしても、I血漿中濃度がわずか30%〜40%しか増加しないことが示されている。ダナゾールのピーク濃度は2時間以内に発生するが、治療効果は通常、毎日の投与量を摂取してからおよそ6週間〜8週間は発生しない。
【0093】
アシクロビルは、抗ウイルス性薬剤として作用する、合成ヌクレオシド類似体である。アシクロビルは、カプセル、錠剤、および懸濁液の形態で、経口投与用に入手可能である。アシクロビルは、白色の結晶状の粉末で、2−アミノ−1,9−ジヒドロ−9−[(2−ヒドロキシエトキシ)メチル]−6H−プリン−6−オンと表記され、実験式C11で表わされ、分子量は225である。アシクロビルを、本発明のメソポーラス材料に装填してもよく、さらに、加工して薬学的組成物を形成してもよい。
【0094】
アシクロビルは、一回の投与量が200mg、4時間ごとの投与の場合、絶対的生物学的利用能が20%であり、半減期は2.5時間〜3.3時間である。また、その生物学的利用能は、投与量が増加すると減少する。生物学的利用能は低いが、アシクロビルは、(ウイルスによってコードされた)チミジンキナーゼ(TK)に対する高い親和性を有するので、ウイルスの抑制活性において非常に特異的である。TKは、アシクロビルを、ウイルス性DNAの複製を防止するヌクレオチド類似体に変換する。この複製の防止は、ウイルス性DNAポリメラーゼを抑制および/または不活性化することによって、また、成長するウイルス性DNA鎖を終止させることによって実現される。
【0095】
カルバマゼピンは、精神運動癲癇の治療において使用され、また、部分癲癇の治療において補助剤として使用される。カルバマゼピンは、三叉神経痛に関連した痛みを軽減または低減することもできる。カルバマゼピンは、単剤療法として、またはリチウムと組み合わせて、または神経遮断薬と組み合わせて与えられると、急性躁病の治療、および双極性障害の予防においても、有用であることが分かっている。カルバマゼピンを、本発明のメソポーラス材料に装填してもよく、さらに、加工して薬学的組成物を形成してもよい。
【0096】
カルバマゼピンは、白色ないし黄色がかった白色の粉末で、5H ジベンゾ[b,フラゼピン−5−カルボキシアミド](5H dibenz[b,flazepine−5−carboxamide])と表記され、分子量は236.77である。カルバマゼピンは、水には実質的に不溶性で、アルコールおよびアセトンには溶解性である。カルバマゼピンの吸収は、錠剤形態の場合には生物学的利用能が89%であるにもかかわらず、比較的遅い。一回で経口摂取されると、カルバマゼピンの錠剤および咀嚼錠は、4時間〜24時間以内は、変化していないカルバマゼピンのピーク血漿中濃度を示す。安定状態におけるカルバマゼピンの血漿中濃度の、治療用範囲は、一般的に4mcg/mlと10mcg/mlとの間である。
【0097】
クラスIIに属するその他の代表的な化合物としては、ピロリ菌を殺す抗生物質、および治療用薬剤などがあげられる。前記ピロリ菌を殺す抗生物質としては、アモキシシリン、テトラアシリン、およびメトロニダゾールなどがあげられる。また、前記治療用薬剤としては、酸抑制薬(シメチジン、ラニチジン、ファモチジン、およびニザチジンなどのH2ブロッカー;オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール、エソメプラゾール、およびパントプラゾールなどのプロトンポンプ阻害薬)、粘膜防御強化薬(ビスマス塩;次サリチル酸ビスマス)、および/または粘液溶解薬(メガルドレート(megaldrate))などがあげられる。これらの種を、本発明のメソポーラス材料に装填してもよく、さらに、加工して薬学的組成物を形成してもよい。
【0098】
前記の既知のクラスIIの薬物の多くは、疎水性であり、長らく投与が困難であった。また、疎水性であることが原因となって、薬物を摂取するときに患者が食事を取っているか、または空腹時であるかによって、吸収に大きなばらつきが生じる傾向がある。このことが、血清濃度のピークレベルに対して影響を及ぼし、投与量の算出および投与計画を複雑にする。これらの薬物の多くは比較的安価でもあるので、単純な製剤法が求められ、収率がいくらか非効率でもかまわない。
【0099】
本発明の好適な実施形態において、前記薬物は、イントラコナゾール(intraconazole)およびそれに関連したフルオコナゾール(fluoconazole)、テルコナゾール、ケトコナゾール、およびサペルコナゾールである。これらの種を、本発明のメソポーラス材料に装填してもよく、さらに、加工して薬学的組成物を形成してもよい。
【0100】
イトラコナゾールは、真菌感染を治療するために使用される、クラスIIの医薬であって、皮膚糸状菌(白癬感染)、カンジダ、マラセチア、および黒色分芽菌症などを含む、広い範囲の菌類に対して効果的である。イトラコナゾールは、細胞壁、イースト菌の重要な酵素、およびその他の真菌感染性薬剤を破壊することによって機能する。イトラコナゾールは、テストステロンのレベルを下げることもでき、この特性によって、イトラコナゾールは前立腺癌を治療するときに有用であり、過度の副腎コルティコステロイドホルモンの生成を減少させ、クッシング症候群の治療に有用である。イトラコナゾールは、カプセルおよび経口溶液の形態で入手可能である。真菌感染の場合、経口カプセルの推薦される投与量は、200mg〜400mg、1日1回である。イトラコナゾールは、カプセルの形態では1992年以来、経口溶液の形態では1997年以来、さらに、静脈注射処方薬の形態では1999年以来、入手可能である。イトラコナゾールは、非常に親油性の高い化合物であるので、脂肪組織において、および化膿性を有する滲出液において、高い濃度を実現する。ただし、イトラコナゾールの水性流体内への貫入は、非常に限定的にしか起こらない。胃の酸性度と食べ物とが、経口処方薬の吸収に対して多大な影響を及ぼす(Bailey, et al.、Pharmacotherapy、10: 146〜153 (1990))。55%の生物学的利用能を有するにもかかわらず、イトラコナゾールの経口カプセルの吸収にはばらつきがあり、予測不可能である。
【0101】
その他のクラスIIの薬物としては、例えばスルファサラジン、グリセオフルビン、および例えばグリセオベルジンなどの、関連する化合物;複数種類の抗マラリア薬(例えばアトバコン);免疫系修飾薬(例えばシクロスポリン);心血管の薬物(例えばジゴキシンおよびスピロノラクトン);およびイブプロフェン(鎮痛薬);リトナビル、ネビラピン、ロピナビル(抗ウイルス性);クロファジニン(clofazinine)(ハンセン病治療薬);ジロキサニドフランカルボン酸(抗アメーバ薬);グリベンクラミド(抗糖尿病薬);ニフェジピン(抗アンギナール薬);スピロノラクトン(利尿薬);例えばダナゾールなどの、ステロイド系薬;カルバマゼピン、および例えばアシクロビルなどの、抗ウイルス薬などのような抗感染性薬物があげられる。これらの種を、本発明のメソポーラス材料に装填してもよく、さらに、加工して薬学的組成物を形成してもよい。
【0102】
ダナゾールは、エチステロンに由来する合成ステロイドである。ダナゾールは、17a−プレグナ−2,4−ジエン−20−イノ[2,3−d]−イソキサゾール−17−オル(17a−Pregna−2,4−dien−20−yno[2,3−d]−isoxazol−17−ol)と表記され、式C2227NOで表わされ、分子量は337.46である。ダナゾールは、子宮内膜症、線維嚢胞性乳腺疾患、および遺伝性血管浮腫の治療に使用される。ダナゾールは、経口投与され、投与量には直接関連していない生物学的利用能を有し、半減期は4時間〜5時間である。ダナゾールの投与量の増加は、血漿中濃度の増加に比例しない。投与量を2倍にしても、血漿中濃度がわずか30%〜40%しか増加しないことが示されている。ダナゾールのピーク濃度は、2時間以内に発生するが、治療効果は通常、毎日の投与量を摂取してからおよそ6週間〜8週間は発生しない。
【0103】
アシクロビルは、抗ウイルス性薬剤として作用する、合成ヌクレオシド類似体である。アシクロビルは、カプセル、錠剤、および懸濁液の形態で、経口投与用に入手可能である。アシクロビルは、白色の結晶状の粉末で、2−アミノ−1,9−ジヒドロ−9−[(2−ヒドロキシエトキシ)メチル]−6H−プリン−6−オンと表記され、実験式C11で表わされ、分子量は225である。アシクロビルは、一回の投与量が200mg、4時間ごとの投与の場合、絶対的生物学的利用能が20%であり、半減期は、2.5時間〜3.3時間である。また、その生物学的利用能は、投与量が増加すると減少する。生物学的利用能は低いが、アシクロビルは、(ウイルスによってコードされた)チミジンキナーゼ(TK)に対する高い親和性を有するので、ウイルスの抑制活性において非常に特異的である。TKは、アシクロビルを、ウイルス性DNAの複製を防止するヌクレオチド類似体に変換する。この複製の防止は、ウイルス性DNAポリメラーゼを抑制および/または不活性化することによって、また、成長するウイルス性DNA鎖を終止させることによって実現される。アシクロビルを、本発明のメソポーラス材料に装填してもよく、さらに、加工して薬学的組成物を形成してもよい。
【0104】
カルバマゼピンは、精神運動癲癇の治療において使用され、また、部分癲癇の治療において補助剤として使用される。カルバマゼピンは、三叉神経痛に関連した痛みを軽減または低減することもできる。カルバマゼピンは、単剤療法として、またはリチウムと組み合わせて、または神経遮断薬と組み合わせて与えられると、急性躁病の治療、および双極性障害の予防においても、有用であることが分かっている。カルバマゼピンは、白色ないし黄色がかった白色の粉末で、5H−ジベンゾ[b,f]アゼピン−5−カルボキシアミドと表記され、分子量は236.77である。カルバマゼピンは、水には実質的に不溶性で、アルコールおよびアセトンには溶解性である。カルバマゼピンの吸収は、錠剤形態の場合には生物学的利用能が89%であるにもかかわらず、比較的遅い。一回で経口摂取されると、カルバマゼピンの錠剤および咀嚼錠は、4時間〜24時間以内は、変化していないカルバマゼピンのピーク血漿中濃度を示す。安定状態におけるカルバマゼピンの血漿中濃度の、治療用範囲は、一般的に4mcg/mlと10mcg/mlとの間である。カルバマゼピンを、本発明のメソポーラス材料に装填してもよく、さらに、加工して薬学的組成物を形成してもよい。
【0105】
BCSのクラスIVに属する薬物(浸透性低、溶解度低)は、水には特に溶解性が低いか、または溶解が遅く、さらにGI浸透性が非常に低い薬物である。
【0106】
クラスIV薬物は大多数が親油性薬物であり、その結果、GI浸透性が非常に低い。例としては、アセタゾラミド、フロセミド、トブラマイシン、セフロキスミン(cefuroxmine)、アロプリノール、ダプソン、ドキシサイクリン、パラセタモール、ナリジクス酸、クロロチアジド(clorothiazide)、トブラマイシン、シクロスポリン、タクロリムス、およびパクリタキセルなどがあげられる。タクロリムスは、ストレプトマイセスツクバエンシス(Streptomyces tsukubaensis)によって産生される、マクロライド免疫抑制薬である。タクロリムスは、肝臓、腎臓、心臓、骨髄、小腸および膵臓、肺および気管、皮膚、角膜、ならびに肢の、動物移植モデルにおける、宿主および移植された移植片の生存を引き伸ばす。タクロリムスは、T−リンパ球の活性化を抑制することによって(抑制のメカニズムは未知である)、免疫抑制薬として作用する。タクロリムスは、実験式C4469NO12・HOで表わされ、式量は822.05である。タクロリムスの外観は、白色結晶、または結晶性粉末である。タクロリムスは、水には実質的に不溶性で、エタノールには溶けやすく、メタノールおよびクロロホルムには極めて溶けやすい。タクロリムスは、カプセル、または注入用無菌溶液として、経口投与用に入手可能である。経口投与後の、消化管からのタクロリムスの吸収は、不十分で、ばらつきがある。一回の投与量が5mg、1日2回の摂取の場合、タクロリムスの絶対的生物学的利用能は、およそ17%である。パクリタキセルは、細胞傷害性活性と抗腫瘍活性とを示す、化学療法剤である。パクリタキセルは、Taxus baccataから、半合成プロセスにより得られる自然生産物である。パクリタキセルは、治療に応用できる大きな潜在的特性があることは定評がある一方で、治療用薬剤としては、患者に関連した短所がいくつかある。これらの短所は、部分的には、パクリタキセルの、水に対する極めて低い溶解度から生じる。低い溶解度のために、好適な投与形態で提供することが難しくなるのである。パクリタキセルの水への難溶性のために、現在(米国FDAによって)認可されている臨床的処方薬は、ポリオキシエチル化ヒマシ油(CREMOPHOR EL(登録商標))50%と無水アルコール50%とに、パクリタキセルを溶解させた6mg/mlパクリタキセル溶液からなる。Am. J. Hosp. Pharm., 48:1520〜1524〔1991〕。場合によっては、低い水溶解度を補償するためにパクリタキセルとともに投与されたCREMOPHOR(登録商標)との組み合わせによって、極度に強い反応(過敏症を含む)が起こる。市販のパクリタキセル処方薬に対して過敏症反応が起こったこと、および血液中でパクリタキセルが沈殿する可能性があることから、処方薬は、数時間かかけて注入しなければならない。さらに、患者は、注入に先立って、ステロイドおよび抗ヒスタアミン剤を用いた治療を、前もって受けなければならない。パクリタキセルは、白色ないし黄色がかった白色の結晶性粉末で、注入用の非水系溶液の形態で入手可能である。パクリタキセルは、非常に親油性が高く、水には不溶解性である。このような親油性を有する薬物は、本発明のメソポーラス材料に装填してもよく、さらに、加工して薬学的組成物を形成してもよい。
【0107】
水に難溶性の化合物の例としては、以下に列挙する群から選択される難溶性の薬物などがあげられる。すなわち、プロスタグランジン類(例えば、プロスタグランジンE2、プロスタグランジンF2、およびプロスタグランジンE1)、プロテイナーゼ抑制剤(例えば、インジナビル、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビル)、細胞傷害性剤(例えば、パクリタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ゾルビシン、ミトキサントロン、アムサクリン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ダクチオマイシン(dactiomycine)、ブレオマイシン)、メタロセン(例えば、二塩化チタンメタロセン)、および脂質と薬物との複合体(例えば、ジミナゼンステアレート、およびジミナゼンオレアート)、および一般に難溶性の抗感染薬(例えば、グリセオフルビン、ケトコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、クリンダマイシン)、特に抗寄生虫薬(例えば、クロロキン、メフロキン、プリマキン、バンコマイシン、ベクロニウム、ペンタミジン、メトロニダゾール、ニモラゾール、チニダゾール、アトバコン、プパルバコン(buparvaquone)、ニフルチモックス)、および抗炎症薬(例えば、シクロスポリン、メトトレキサート、アザチオプリン)などがあげられる。これらの生理活性化合物を、本発明のメソポーラス材料に装填してもよく、さらに、加工して薬学的組成物を形成してもよい。
【0108】
〔薬学的組成物〕
ホストとして生理活性種(例えば水に難溶性の薬物、または水に実質的に不溶性の薬物、または抗体の断片、またはヌクレオチドの断片)を保持する、本発明の規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料は、薬学的組成物として処方可能であり、哺乳類の宿主(例えば、ヒトの患者、または家畜)に対して選択された投与経路(つまり、経口経路、経口的経路、局所的経路、経口経路、非経口経路、直腸経路、またはその他の送達経路)に合わせたさまざまな形態で投与可能である。
【0109】
本発明の規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料は、例えば特定の分子、例えばアプタマー(DNAアプタマー、RNAアプタマー、またはペプチドアプタマー)を結合するために、小さなオリゴ核酸またはペプチド分子に対してホストとなってもよい。小さなオリゴ核酸に対して宿主となる、または宿主となることを意図された、本発明のメソポーラス材料を使用して、このようなオリゴ核酸のハイブリッドを形成してもかまわない。
【0110】
本発明の規則的な構造を有するメソポーラス材料は、水に難溶性の薬物、BCSクラスIIの薬物、BCSクラスIVの薬物、または水に実質的に不溶性の化合物に対してホストとなり、該薬物を水性環境中で即時放出させることに、特に適している。例えば、イトラコナゾールを、本発明の規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料に装填してもよい。
【0111】
本発明に係る前記薬学的組成物(製剤)は、例えば、「Guide Book of Japanese Pharmacopoeia」、Ed. Of Editorial Committee of Japanese Pharmacopoeia, Version No. 13,1996年7月10日, Hirokawa publishing companyから、必要に応じて選択される方法によって製造されてもよい。本発明の新規なメソポーラス材料を、抗体の小さな断片に対するホストとして使用してもよい。抗体の小さな断片の例としては、Fv」断片、単鎖のFv(scFv)抗体、抗体のFab断片、抗体のFab’断片、重鎖CDRまたは軽鎖CDRの抗体断片、またはアノボディ(anobodies)などがあげられる。
【0112】
洗浄され、乾燥され、焼成され、そして水に難溶性の生理活性種が、細孔に装填されたCOK−10材料では、水に難溶性の生理活性種の、水媒質中への放出速度が改善される。
【0113】
本発明によれば、本発明の製造方法が実施され得るマイルドな条件を考慮すれば、該製造方法を使用して、水溶液B中に存在する薬物を、合成プロセス中にカプセルにすることができる。
【0114】
〔規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料への装填〕
溶媒50/50 V/V ジクロロメタン/エタノール中の溶液を、例えば、以下に列挙する1)〜7)の生理活性種に対して調製することができる。すなわち、1)イトラコナゾール。2)イトラコナゾール誘導体。3)極性を有する表面積(PSA)が、60Åから200Åの範囲、より好ましくは70Åから160Åの範囲、さらに好ましくは80Åから140Åの範囲、なお好ましくは90Åから120Åの範囲、およびもっとも好ましくは95Åから110Åの範囲である、トリアゾール化合物。4)分配係数(XlogP)が、4〜9の範囲、さらに好ましくは5〜8の範囲、およびもっとも好ましくは6〜7の範囲である、トリアゾール化合物。5)自由に回転する結合を11個以上有する、トリアゾール化合物。6)極性を有する表面積(PSA)が80から200の範囲であり、分配係数が3から8の範囲であり、自由に回転する結合を8個〜16個有するトリアゾール化合物。または、7)極性を有する表面積が80Åを超える、トリアゾール化合物である。超音波処理を使用して、イトラコナゾールの溶解プロセスをスピードアップしてもよい。生理活性種を容易に溶媒混合物1mlあたり50mg溶解させる溶液は、生理活性種をメソポーラス材料の細孔に装填して、該メソポーラス材料内で分子として分散せるために、本発明のメソポーラス材料に含浸させるのに適している。
【0115】
水に実質的に不溶性の化合物、または水に難溶性の化合物を溶解させるのに一般的に適した、もう一つの溶媒は、ジクロロメタン(CHCl)である。本発明のメソポーラス材料に含浸させ、その細孔に生理活性種を装填させるために、1mlに生理活性種を50mg溶解させた溶液を使用してもよい。しかし、ジクロロメタンは、他の有機(炭素を含有した)溶媒、例えば、反応に対して不活性な溶媒、つまり、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−プロパノール、N−メチル−ピロリジノン、クロロホルム、ヘキサフルオロイソプロパノールなどによって代替可能である。代替に特に適しているものとしては、1,4−ジオキサン(/−CH−CH−O−CH−CH−O−\)、テトラヒドロフラン(/−CH−CH−O−CH−CH−\)、アセトン(CH−C(=O)−CH)、アセトニトリル(CH−C≡N)、ジメチルホルムアミド(H−C(=O)N(CH)、またはジメチルスルホキシド(CH−S(=O)−CH)からなる群から選択される、極性を有する非プロトン性の溶媒、または例えば、ヘキサン(CH−CH−CH−CH−CH−CH)、ベンゼン(C)、トルエン(C−CH)、ジエチルエーテル(CHCH−O−CH−CH)、クロロホルム(CHCl)、酢酸エチル(CH−C(=O)−O−CH−CH)などの、極性を有しない溶媒からなる群から選択される溶媒があげられる。また、この発明の意味にふさわしい有機(炭素を含有した)溶媒としては、水に難溶性の生理活性種または薬物が溶解する溶媒、または水に難溶性の薬物が高い溶解性を示す有機溶媒などの溶媒があげられる。例えば、フッ化アルコール(例えばヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP−(CFCHOH))などの、強い水素結合性を示す有機化合物は、水素結合受容体として作用する、水に難溶性の物質(例えばアミドおよびエーテル)を溶解させるために、使用可能である。生理活性種、またはアミドクラスの薬物化合物は、電気陰性の酸素原子および窒素原子と、電気中性の炭素原子との間の共有結合から生じる、カルボニル(C=O)およびエーテル(N−C)双極子を含んでいる。また一方で、一級アミドおよび二級アミドも、N−H双極子を、それぞれ2つおよび1つ含有している。C=O双極子の存在、および(C=O双極子よりは度合いは低いものの)N−C双極子の存在によって、アミドが水素結合受容体として作用できるようになり、それゆえHFIPはふさわしい溶媒となる。例えば、有機溶媒のもう一つの群は、極性を有しない溶媒であり、例えばハロゲン化炭化水素(例えばジクロロメタン、クロロホルム、クロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素など)があげられる。これらのうちで、もっとも好ましいのは、ジクロロメタン(DCM)または塩化メチレンであり、これらは、生理活性種または薬物、例えば、ジアゼパム、α−メチル−p型チロシン、フェンシクリジン、キノリン酸、シンバスタチン、ロバスタチン;パクリタキセル、アルカロイド、およびカンナビノイドなどに対して、好適な溶媒である。一般的な溶媒および薬物化合物については、ファイルおよびデータベース(例えば、Cosmologic Gmbh & Co、GK社のCOSMOfiles(商標))が、利用可能であり、当業者が、難溶性の既知の生物活性種を、規則的な構造を有するメソポーラスな酸化物に装填するのにふさわしい溶媒を選択できる。新しい構造については、任意の溶媒における薬物の溶解度を、基本的な物性と相平衡状態関係と含む熱力学的基準を使って、例えば計算機化学のエキスパートシステムおよび流体力学のエキスパートシステム(T. Bieker,K.H. Simmrock,Comput. Chem. Eng. 18〔Suppl. 1〕〔1993〕S25-S29;K.G.Joback,G. Stephanopoulos,Adv. Chem. Eng. 21〔1995〕257〜311;L. Constantinou,K. Bagherpour,R. Gani,J.A. Klein,D.T. Wu,Comput. Chem. Eng. 20〔1996〕685-702.;J. Gmehling、C. Moellmann,Ind. Eng. Chem. Res. 37〔1998〕3112-3123;およびM. Hostrup,P.M. Harper,R. Gani,Comput. Chem. Eng. 23〔1999〕1395〜1414 and R. Zhao,H. Cabezas,S.R. Nishtala,Green Chemical Syntheses and Processes,ACS Symposium Series 767,American Chemical Society,Washington,DC,2000、pp.230〜243)によって、算出することができる。該エキスパートシステムとしては、例えば、特徴が解明されている複数の分子のデータベースと相互作用する、Cosmologic Gmbh & Co、GK社のCOSMOfrag/COSMOtherm(商標)があげられる。あるいは、例えばBiomek(登録商標)FX of Milliporeのような自動薬物溶解度テスターを、当業者は使用して、選択された化合物の水溶解度を、簡単に試験することができる。
【0116】
〔実施例〕
以下の実施例は、COK−12の合成を開示し、狭いメソ細孔径分布を得るための、もっとも好ましい合成条件を説明する。
【0117】
〔水溶液1〜10の調製〕
10gのP123(BASF社、ベルギー)と、9.2gのクエン酸一水和物(Riedel−de Haen社、ドイツ)と、6.35のgのトリクエン酸ナトリウム(UCB社、ベルギー)とを、脱イオン水(268.75g)に溶解させることによって、pH4.0の水溶液(界面活性剤P123)1を調製した。
【0118】
4.83gのケイ酸ナトリウム溶液(extra pure、NaO:7.5wt%、SiO:26.5〜28.5wt%、Merck社製、ドイツ)を、脱イオン水(13.95g)を使って希釈することによって、pH11.0の水溶液(ケイ酸塩の前駆体)2を調製した。
【0119】
28.6gのP123(BASF社、ベルギー)と、25.8gのクエン酸一水和物(Riedel−de Haen社、ドイツ)と、17.8gのトリクエン酸ナトリウム(UCB社、ベルギー)とを、脱イオン水(753.8g)に溶解させることによって、pH4.0の水溶液(界面活性剤P123)3を調製した。
【0120】
7.27gのケイ酸ナトリウム溶液(extra pure、NaO:7.5wt%、SiO:26.5〜28.5wt%、Merck社製、ドイツ)を、脱イオン水(20.98g)を使って希釈することによって、pH11.0の水溶液(ケイ酸塩の前駆体)4を調製した。
【0121】
10.10gのP123(BASF社、ベルギー)と、7.33gのクエン酸一水和物(Riedel−de Haen社、ドイツ)と、17.8gのトリクエン酸ナトリウム(UCB社、ベルギー)とを、脱イオン水(263.41g)に溶解させることによって、pH4.7の水溶液(界面活性剤P123)5を調製した。
【0122】
11.68gのケイ酸ナトリウム溶液(extra pure、NaO:7.5wt%、SiO:26.5〜28.5wt%、Merck社製、ドイツ)を、脱イオン水(33.74g)を使って希釈することによって、pH11.0の水溶液(ケイ酸塩の前駆体)6を調製した。
【0123】
111.28gのP123(BASF社、ベルギー)と、100.22gのクエン酸一水和物(Riedel−de Haen社、ドイツ)と、69.22gのトリクエン酸ナトリウム(UCB社、ベルギー)とを、脱イオン水(2928g)に溶解させることによって、pH5.0の水溶液(界面活性剤P123)7を調製した。
【0124】
145.28gのケイ酸ナトリウム溶液(extra pure、NaO:7.5wt%、SiO:26.5〜28.5wt%、Merck社製、ドイツ)を、脱イオン水(419.65g)を使って希釈することによって、pH11.0の水溶液(ケイ酸塩の前駆体)8を調製した。
【0125】
水性緩衝液に、4gのP123(BASF社、ベルギー)を、一晩かけて溶解させることによって、水溶液(界面活性剤P123)9を調製した。なお、この水性緩衝液は、脱イオン水(107.5g)に、3.7gのクエン酸一水和物(Riedel−de Haen社、ドイツ)と、2.54gのトリクエン酸ナトリウム(UCB社、ベルギー)とを溶解してなる、pH4.9の水溶液である。
【0126】
10.4gのケイ酸ナトリウム溶液(NaOH:10重量%、SiO:27重量%、Merck社製、ドイツ)を、脱イオン水(30.0g)を使って希釈することによって、pH11.0の水溶液(ケイ酸塩の前駆体)10を調製した。
【0127】
〔実施例1〕
使用した実験設備構成を、図1に概略的に図示する。図中において、Aは、シリカ前駆体を含む水溶液A;ATは水溶液Aを搬送するチューブ;Bは、ポリ(アルキレンオキシド)トリブロック共重合体と、pKaが3〜9の範囲である酸を含む水溶液B;BTは水溶液Bを搬送するチューブ;Mは混合用チューブ;Cは回収器;Sは分離器;およびDは乾燥器/焼炉である。灌流ポンプの2つのシリンジは、それぞれ長さが20cm、内径が1.6mmであった。また、円筒部の端部は、90°の角度をなすSwagelok社のT型結合用具によって、長さが160cm、内径が1.6mmの混合用チューブに連結した。上述の2つのシリンジの一方には水溶液1を充填し、他方には水溶液2を充填した。また、水溶液1および水溶液2は、それぞれ99.0ml/h(49.2m/h)および37.2ml/h(18.5m/h)の流量で噴射され、互いにぶつかりあい、長さが160cmの混合用チューブに入った。こうすることによって、得られた混合物においてpH5.0を達成した。前記混合用パイプを通過する線速度は、67.77m/hであった。また、混合用チューブ中における、水溶液1と水溶液2との混合物の滞留時間は、85秒であった。
【0128】
複数台のポンプを同時に始動させた。接触したときに、シリカの凝縮が容易に視認できた。粒子は、チュービングを通って流出し、バイアルに回収された。遠心分離およびデカンテーションを用いて回収した粒子を、脱イオン水で3回洗浄した。その結果得られた材料は、まず100℃で2時間乾燥させ、つぎにオーブンで、1℃/mの速度で300℃の温度まで加熱し、そして温度を300℃で8時間保持することによって、焼成した。
【0129】
得られた材料の特性を、Micromeritics社のTristar装置を使用して窒素吸着を実施することによって求めた。測定に先立って、サンプルを、200℃で10時間(温度上昇速度:5℃/m)前処理した。等温線および細孔径分布を、それぞれ図2Aおよび図2Bに示した。また、図3A、図3B、および図3Cに示した、得られた焼成済みメソポーラスシリカのTEM顕微鏡写真には、メソ相のP6mの六角形状の規則的な構造が、明確に現れている。
【0130】
〔実施例2〕
混合用チューブの長さを30cm短くし、内径を大きくしたこと以外は、実施例1と同じ実験設備構成を使用した。灌流ポンプの2つのシリンジ(それぞれ長さが20cm、内径が1.6mm)の一方には水溶液3を充填し、他方には水溶液4を充填した。また、水溶液3および水溶液4は、それぞれ198ml/h(98.5m/h)および74.4ml/h(37.0m/h)の流量で噴射され、互いにぶつかりあい、長さが30cm、内径が3.2mmの混合用チューブに入った。こうすることによって、得られた混合物においてpH5.6を達成した。前記混合用パイプを通過する線速度は、33.89m/hであった。また、混合用チューブ中における、水溶液3と水溶液4との混合物の滞留時間は、31.9秒であった。
【0131】
複数台のポンプを同時に始動させた。接触したときに、シリカの凝縮が容易に視認できた。粒子は、チュービングを通って流出し、バイアルに回収された。真空濾過を用いて回収した粒子を、300mlの脱イオン水で洗浄した。その結果得られた材料は、まず100℃で2時間乾燥させ、つぎにオーブンで、1℃/mの速度で550℃の温度まで加熱し、そして温度を550℃で8時間保持することによって、焼成した。
【0132】
得られた材料の特性を、Micromeritics社のTristar装置を使用して窒素吸着を実施することによって求めた。測定に先立って、サンプルを、300℃で10時間(温度上昇速度:5℃/m)前処理した。等温線および細孔径分布を、それぞれ図4Aおよび図4Bに示した。
【0133】
〔実施例3〕
実施例2と同じ実験設備構成を使用した。灌流ポンプの2つのシリンジ(それぞれ長さが20cm、内径が1.6mm)の一方には水溶液5を充填し、他方には水溶液6を充填した。また、水溶液5および水溶液6は、それぞれ198.0ml/h(98.5m/h)および74.4ml/h(37.0m/h)の流量で噴射され、互いにぶつかりあい、長さが30cm、内径が3.2mmの混合用チューブに入った。こうすることによって、得られた混合物においてpH5.6を達成した。前記混合用パイプを通過する線速度は、33.89m/hであった。また、混合用チューブ中における、水溶液5と水溶液6との混合物の滞留時間は、31.9秒であった。
【0134】
複数台のポンプを同時に始動させた。接触したときに、シリカの凝縮が容易に視認できた。粒子は、チュービングを通って流出し、バイアルに回収された。真空濾過を用いて回収した粒子を、脱イオン水で洗浄した。その結果得られた材料は、まず100℃で2時間乾燥させ、つぎにオーブンで、1℃/mの速度で300℃の温度まで加熱し、そして温度を300℃で8時間保持し、さらに1℃/mの速度で550℃の温度まで8時間加熱することによって、焼成した。
【0135】
得られた材料の特性を、Micromeritics社のTristar装置を使用して窒素吸着を実施することによって求めた。測定に先立って、サンプルを、300℃で10時間(温度上昇速度:5℃/m)前処理した。等温線および細孔径分布を、それぞれ図5Aおよび図5Bに示した。また、図6Aおよび図6Bに示した、得られた焼成済みメソポーラスシリカのTEM顕微鏡写真には、メソ相のP6mの六角形状の規則的な構造が、明確に現れている。
【0136】
〔実施例4〕
使用した実験設備構成を、図2に概略的に図示する。図中において、Aは水溶液A;ATは水溶液Aを搬送するチューブ;Bは水溶液B;BTは水溶液Bを搬送するチューブ;Mは混合用チューブ;Cは回収器;Sは分離器;およびDは乾燥器/焼炉である。円筒部の端部を有する灌流ポンプの2つのシリンジは、内径が6.4mmの、Tygon Chemical社のMasterflex(登録商標)I/P 26チュービング、および内径が4.8mmの、Tygon Chemical社のMasterflex(登録商標)I/P 15チュービングに連結して、それぞれ、水溶液Aおよび水溶液Bが流れ込むようにした。また、前記2つのシリンジは、120°の角度をなすガラス製Y型結合用具によって、水溶液Aには4mmの内径、水溶液Bには3mmの内径、および長さ180cmの混合用チューブ(内径が6.4mmの、Tygon Chemical社のMasterflex(登録商標)I/P 26)には4mmの内径を通じて、連結した。シリンジAには水溶液7、シリンジBには水溶液8を充填した。また、水溶液7および水溶液8は、それぞれ1130ml/m(2107.5m/h)および420ml/m(1392.6m/h)の流量で噴射され、互いにぶつかりあい、長さが180cmの混合用チューブに入った。こうすることによって、得られた混合物においてpH5.0を達成した。前記混合用パイプを通過する線速度は、2890m/hであった。また、混合用チューブ中における、水溶液1と水溶液2との混合物の滞留時間は、2.24秒であった。
【0137】
使用したポンプは、Cole Palmer Masterflex(登録商標)「I/P」 Precision Brushless Drive(33rpm〜650rpm、I/P 「Easy−Load」ポンプヘッドを併用、溶液7にはPSF筐体/SSローターを使用)、およびCole Palmer Masterflex(登録商標)「L/S」 Precision Brushless Drive(6rpm〜600rpm、溶液8にはL/S 「High−Performance」ポンプヘッドを使用)である。なお、この2台のポンプを同時に始動させた。接触したときに、シリカの凝縮が容易に視認できた。180cmのチューブ内の滞留時間は、約3秒であった。最初の10秒に生成した生成物は、廃棄した。粒子は、チュービングを通って流出し、白い懸濁液としてビーカーに回収された。回収から10分後に、回収した粒子を、脱イオン水で3回洗浄した。その結果得られた材料は、まず60℃で一晩かけて乾燥させ、つぎにオーブンで、1℃/mの速度で350℃の温度まで加熱し、そして温度を350℃で8時間保持することによって、焼成した。
【0138】
得られた材料の特性を、Micromeritics社のTristar装置を使用して窒素吸着を実施することによって求めた。測定に先立って、サンプルを、200℃で10時間(温度上昇速度:5℃/m)前処理した。等温線および細孔径分布を、それぞれ図7Aおよび図7Bに示した。細孔径は、5.8nmであった。
【0139】
図8A、図8B、および図8Cに示した焼成済みメソポーラスシリカのTEM顕微鏡写真には、メソ相のP6mの六角形状の規則的な構造が、明確に示されている。
【0140】
〔実施例5〕
溶液10を溶液9に添加して、メカニカル・ミキサーを使って150rpmで攪拌した。攪拌は、1分後に停止した。これ以外には、熟成工程を実施しなかった。生成物を真空濾過で回収し、300mlの脱イオン水で洗浄し、60℃で乾燥させた。その後、オーブンで、1℃/mの速度で550℃の温度まで加熱し、そして温度を550℃で8時間保持することによって、焼成した。
【0141】
得られた材料の特性を、Micromeritics社のTristar装置を使用して窒素吸着を実施することによって求めた。測定に先立って、サンプルを、200℃で10時間(温度上昇速度:5℃/m)前処理した。等温線は図9に示した。
【0142】
図10Aおよび図10Bに示した焼成済みメソポーラスシリカのTEM顕微鏡写真には、メソ相のP6mの六角形状の規則的な構造が、明確に現れている。
【0143】
本発明のその他の実施形態は、明細書およびここに開示した本発明の実施を考慮すれば、当業者にとって明らかである。明細書および実施例は、代表的な例にすぎないと考えるべきであって、本発明の真の範囲と精神は、以下の請求項によって示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔径が略均一であって、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料を、自己組織化法を用いて製造する製造方法であって、該製造方法は、
シリカ前駆体を含む水溶液Aを調製する工程と、
アルカリ金属水酸化物とアルカリ土類金属水酸化物とのいずれをも含まず、ポリ(アルキレンオキシド)トリブロック共重合体と、pKaが3〜9の範囲である酸とを含む水溶液Bを調製する工程と、
前記水溶液Aおよび水溶液Bを、液体流として、第1の開口部および第2の開口部を備えた細長い形状の混合容器に、
前記水溶液Aおよび水溶液Bの液体流がそれぞれ独立して前記細長い形状の混合容器の第1の開口部へ放出されて、
前記水溶液Aおよび水溶液Bの液体流が直接衝突するように、供給し、
これにより、得られる混合物のpHを、2を超えて8未満とし、前記細長い形状の混合容器内で、10℃〜100℃の範囲の温度で反応生成物を生成させ、
該反応生成物が前記細長い形状の混合容器の第2の開口部から排出された後、該反応生成物を、濾過分離し、乾燥し、界面活性剤を除去して、細孔径が略均一であって、規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料を製造する工程と、
を含み、熟成工程を含まない製造方法。
【請求項2】
前記シリカ前駆体が、アルカリケイ酸塩である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記水溶液Bは、pKaが3〜9の範囲である酸のアルカリ塩をさらに含んでいる、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
pKaが3〜9の範囲である前記酸が、pHが3〜8の範囲である緩衝液中に存在する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記水溶液Bが、テトラアルキルアンモニウム系界面活性剤をさらに含んでいる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記テトラアルキルアンモニウム系界面活性剤は、炭素数が1〜4のアルキル基を有している、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記テトラアルキルアンモニウム系界面活性剤が、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)またはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAOH)である、請求項5または6に記載の製造方法、
【請求項8】
前記ポリ(アルキレンオキシド)トリブロック共重合体が、プルロニック(登録商標)P123である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記アルカリケイ酸塩が、ケイ酸ナトリウム水溶液として存在し、該ケイ酸ナトリウム水溶液は、少なくとも10重量%の水酸化ナトリウムと、少なくとも27重量%のシリカとを含む、請求項2〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記水溶液BのpHは、2〜8の範囲である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記メソポーラスシリカ材料の細孔径が、略均一であって、4nm〜30nmの範囲である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記細長い形状の混合容器内の滞留時間が、1秒〜100秒の範囲である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記水溶液Aおよび水溶液Bの液体流が、それぞれ独立して、前記細長い形状の混合容器の第1の開口部へ、それぞれ独立して5m/hを超える線速度で放出される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項14】
前記水溶液Aおよび水溶液Bの液体流が、それぞれ独立して、前記細長い形状の混合容器へ、10m/hを超える線速度で放出される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記水溶液Aおよび水溶液Bの液体流が、それぞれ独立して、前記細長い形状の混合容器へ、30m/hを超える線速度で放出される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記水溶液Aおよび水溶液Bの液体流が、それぞれ独立して、前記細長い形状の混合容器へ、10,000m/h未満超えの線速度で放出される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記水溶液Aおよび水溶液Bの液体流が、それぞれ独立して、前記細長い形状の混合容器へ、1000m/hを超える線速度で放出される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料に、生理活性種を装填する工程をさらに含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項19】
前記規則的な構造を有するメソポーラスシリカ材料中で、実質的に不溶性の薬物を固体として分散させる工程をさらに含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の製造方法。

【図2A】
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【図2B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図9】
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【図1】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図10A】
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【図10B】
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【公開番号】特開2011−225380(P2011−225380A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−94036(P2010−94036)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(510106692)フォーマック ファーマシューティカルズ ナムローゼ フェンノートシャップ (3)
【氏名又は名称原語表記】FORMAC Pharmaceuticals N.V.
【住所又は居所原語表記】Belgium,B−3001 Leuven,Gaston Geenslaan 1
【Fターム(参考)】