説明

メタクリル系樹脂フィルム

【課題】加熱収縮性に優れたアクリル系樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子およびメタクリル酸エステル系重合体からなるメタクリル系樹脂組成物において、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子中の多官能性単量体の共重合量、メタクリル系樹脂組成物のメチルエチルケトン可溶分の重量平均分子量、さらには、該架橋弾性体粒子の含有量を特定し、且つ押出成形時のダイスリップ開口度とダイス温度を特定することにより、加熱収縮率、優れ、成形性および加工性においても優れるフィルムを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱収縮性に優れたメタクリル系樹脂を成形してなるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子を含むメタクリル系樹脂フィルムは、透明性、耐侯性、硬度および耐衝撃性に優れるため、プラスチック、木材、金属などの種々材料に積層(ラミネート)して基材の劣化防止、美観の維持などのために広く用いられている(例えば、特許文献1〜2)。
【0003】
メタクリル系樹脂フィルムの透明性、耐候性、硬度、耐衝撃性等を改善するために、例えば、架橋弾性体粒子の層構造および粒子径を制御し、かつ、特定の化学構造を有する紫外線吸収剤を共重合するメタクリル系樹脂組成物からなるフィルムが開示されている(特許文献3)。しかしながら、例えば、熱可塑性樹脂シートに熱ラミネーション法により積層する際の加熱収縮性、塩化ビニルシートに積層した際の、塩化ビニルシートに配合される可塑剤に対する耐薬品性、また成形性に関して、さらに改善が望まれていた。
【0004】
また、メタクリル系樹脂フィルムの特性を改良するメタクリル系樹脂組成物が開示されているが(特許文献4)、特に加熱収縮率に関して、近年の高付加価値化の流れから更に改善すべき必要が出てきている。
【0005】
アクリル系樹脂フィルムは、塩ビやABS、ポリカーボネートなどの耐候性が悪い樹脂の表面にアクリル系樹脂フィルムをオーバーレイすることで、積層シートの耐候性を向上させる効果があるが、加熱収縮率が大きいとシートがカールする、ラミ後の長さが短くなり収率が低下する、トータルの膜厚が大きくなるなどの課題があり、より加熱収縮が小さいことが求められている。
【0006】
これに対してフィルムの加熱収縮率が改良できる特定のメタクリル系樹脂組成物が開示されている(特許文献5)が、加熱収縮率の押出条件面での改善は成されていなかった。また市場からはラミ加工時の温度条件に近い150℃での加熱収縮率が21%以下のフィルムが望まれていたが、ゴム成分を含有したアクリル系樹脂フィルムでは達成できていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−60876号公報
【特許文献2】特開平6−73199号公報
【特許文献3】国際公開公報WO2005/095478
【特許文献4】特開2003−25412号公報
【特許文献5】特開2009−24112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
加熱収縮性に優れたメタクリル系樹脂フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子およびメタクリル酸エステル系重合体を含むメタクリル系樹脂組成物において、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子中の多官能性単量体の共重合量、メタクリル系樹脂のメチルエチルケトン可溶分の重量平均分子量、さらには、該架橋弾性体粒子の含有量を特定し、且つ押出成形時のダイスリップ開口度とダイス温度を特定することにより、加熱収縮率に優れ、成形性および加工性においても優れるフィルムを得ることができることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下の通りである。
アクリル酸アルキルエステル50〜100重量%およびメタクリル酸アルキルエステル0〜50重量%を含む単量体混合物(合計100重量%)(b−1)に1分子あたり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体(b−2)を共重合することにより得られるアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の存在下、メタクリル酸アルキルエステル50〜100重量%およびアクリル酸アルキルエステル0〜50重量%を含む単量体混合物(合計100重量%)を重合することにより得られ、下記(1)〜(6)の特徴を有するメタクリル系樹脂(C)を含む樹脂組成物からなる、フィムルの膜厚が40〜75μmであり、150℃で加熱した後のフィルムの流れ方向の加熱収縮率が21%以下であるメタクリル樹脂フィルム。
(1)メタクリル系樹脂(C)が、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)、次いで、メタクリル酸エステル系重合体(A)である2層構造重合体であり、
(2)アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)において、前記多官能性単量体(b−2)が単量体混合物(b−1)100重量%に対して、0.1〜5重量%共重合され、
(3)メタクリル系樹脂(C)のメチルエチルケトン可溶分の重量平均分子量(Mw)が5万〜12万(ポリスチレン換算)であり、
(4)アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の平均粒子径が0.04μm〜0.3μmであり、
(5)アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の含有量が18〜40重量%であって、
(6)アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)中の多官能性単量体(b−2)の上記共重合量bmと上記重量平均分子量Mwが下記式(i)を満たす。
3≦(Mw/10000)/bm≦8 (i)
【0011】
また、溶融押出Tダイ法において、Tダイのダイス開口度が0.2〜0.5mmであり、ダイス温度が210〜270℃の条件で成形された前記メタクリル系樹脂フィルム。
【0012】
また、前記メタクリル系樹脂フィルムまたは前記記載の成形方法により成形されたメタクリル系樹脂フィルムを、熱可塑性樹脂シートに積層したメタクリル系樹脂積層シート。
【発明の効果】
【0013】
本発明により得られるメタクリル系樹脂フィルムは、加熱収縮性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明におけるメタクリル酸エステル系重合体(A)は、メタクリル酸アルキルエステル50〜100重量%およびアクリル酸アルキルエステル0〜50重量%を含む単量体混合物(単量体混合物の合計100重量%)を、少なくとも1段以上で重合させてなるものである。メタクリル酸エステル系重合体(A)の単量体組成は、より好ましくは、メタクリル酸アルキルエステル60〜100重量%およびアクリル酸アルキルエステル0〜40重量%を含むものである。アクリル酸アルキルエステルが50重量%を超えると、得られるメタクリル系樹脂組成物から形成しうるフィルムの耐熱性および硬度が低下する傾向がある。
【0015】
本発明におけるメタクリル酸エステル系重合体(A)を構成するメタクリル酸アルキルエステルは、重合反応性やコストの点からアルキル基の炭素数が1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル等があげられ、これらの単量体は1種で使用してもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0016】
本発明におけるメタクリル酸エステル系重合体(A)を構成するアクリル酸アルキルエステルは、重合反応性やコストの点からアルキル基の炭素数が1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル等があげられ、これらの単量体は1種で使用してもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0017】
本発明のメタクリル酸エステル系重合体(A)においては、必要に応じて、メタクリル酸アルキルエステルおよびアクリル酸アルキルエステルに対して共重合可能なエチレン系不飽和単量体を共重合してもかまわない。これらの共重合可能なエチレン系不飽和単量体としては、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル誘導体、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カルシウム等のアクリル酸およびその塩、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸グリシジル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のアクリル酸アルキルエステル誘導体、メタク
リル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カルシウム等のメタクリル酸およびその塩、メタクリルアミド、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸アルキルエステル誘導体等があげられ、これらの単量体は1種で使用してもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0018】
本発明において用いられるアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)は、アクリル酸アルキルエステル50〜100重量%およびメタクリル酸アルキルエステル0〜50重量%を含む単量体混合物(b−1)および、1分子あたり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体(b−2)からなる混合物を、少なくとも1段以上で共重合させてなるものである。単量体混合物(b−1)は、より好ましくは、アクリル酸アルキルエステル60〜100重量%およびメタクリル酸アルキルエステル0〜40重量%である。メタクリル酸アルキルエステルが50重量%を超えると、得られるメタクリル系樹脂組成物から形成しうるフィルムの硬度、耐衝撃性が低下する傾向がある。
【0019】
本発明のアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)においては、必要に応じて、メタクリル酸アルキルエステルおよびアクリル酸アルキルエステルと共重合可能なエチレン系不飽和単量体を共重合してもかまわない。
【0020】
本発明のアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)で用いられるアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルおよび、これらと共重合可能なエチレン系不飽和単量体の具体例は、前記メタクリル酸エステル系重合体(A)に使用したものがあげられる。
【0021】
本発明において用いられる多官能性単量体(b−2)としては、アリルメタクリレ−ト、アリルアクリレ−ト、トリアリルシアヌレ−ト、トリアリルイソシアヌレ−ト、ジアリルフタレ−ト、ジアリルマレ−ト、ジビニルアジペ−ト、ジビニルベンゼンエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、ジビニルベンゼンエチレングリコ−ルジアクリレ−ト、ジエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、ジエチレングリコ−ルジアクリレ−ト、トリエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、トリエチレングリコ−ルジアクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリアクリレ−ト、テトラメチロ−ルメタンテトラメタクリレ−ト、テトラメチロ−ルメタンテトラアクリレ−ト、ジプロピレングリコ−ルジメタクリレ−トおよびジプロピレングリコ−ルジアクリレ−ト等があげられ、これらは1種で使用してもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0022】
本発明のアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)における多官能性単量体(b−2)の共重合量bmは、前記単量体混合物(b−1)100重量%に対して、0.1〜5重量%が好ましく、0.5〜4重量%がより好ましく、0.8〜3重量%が更に好ましい。多官能性単量体の共重合量bmが0.1重量%未満では、メタクリル系樹脂組成物から形成しうるフィルムの耐衝撃性、耐薬品性が低下する傾向があり、5重量%を超えると、耐衝撃性、フィルムの成形性が低下する傾向がある。
【0023】
本発明において用いられるメタクリル系樹脂(C)は、メタクリル酸エステル系重合体(A)をアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の存在下において重合することにより得られる2層構造重合体である。アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)は、1分子あたり2個以上の非共役な反応性二重結合を有する多官能性単量体(b−2)が共重合されているため、得られる重合体が架橋弾性を示す。また、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の重合時に反応せずに残った一方の反応性官能基(二重結合)がグラフト交叉点となって、一定割合のメタクリル酸エステル系共重合体(A)が、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)にグラフト化される。このことにより、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)が、メタクリル酸エステル系共重合体(A)中に不連続かつ均一に分散した樹脂組成物が得られる。これに対し、例えば、メタクリル酸エステル系重合体(A)、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)さらに、メタクリル酸エステル系重合体(A)と順次段階的に重合するような3層構造重合体では、得られるメタクリル系樹脂組成物から形成しうるフィルムの耐衝撃性が低下する。
【0024】
本発明のメタクリル系樹脂(C)においては、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)中の多官能性単量体(b−2)の共重合量bmと、後述するメタクリル系樹脂(C)のメチルエチルケトン可溶分の重量平均分子量(Mw)との間に、下記式(i)を満たすことが好ましい。
3≦(Mw/10000)/bm≦8 (i)
(Mw/10000)/bmの値が3未満の場合、メタクリル系樹脂組成物から形成しうるフィルムの成形性が低下する傾向があり、8を超えた場合、フィルムの耐薬品性が低下する傾向がある。
【0025】
本発明におけるアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の含有量は、メタクリル系樹脂(C)全体を100重量%とした場合に、18〜40重量%が好ましく、18〜38重量%がより好ましく、18〜35重量%がさらに好ましい。アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の含有量が18重量%未満では、得られるメタクリル系樹脂組成物から形成しうるフィルムの耐衝撃性、成形性が低下する傾向にあり、特にフィルムの幅を調整するためスリットを入れると割れが生じる傾向にあり、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の含有量が40重量%を超えると、フィルムの硬度、成形性(フィルムの成形自体がし難い)および加工性(加熱収縮性)が低下する傾向にある。
【0026】
本発明におけるメタクリル系樹脂(C)の製造方法は特に限定されず、公知の乳化重合法、乳化−懸濁重合法、懸濁重合法、塊状重合法または溶液重合法が適用可能であるが、乳化重合法が特に好ましい。
【0027】
本発明のアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の重合における開始剤としては、公知の有機系過酸化物、無機系過酸化物、アゾ化合物などの開始剤を使用することができる。具体的には、例えば、t−ブチルハイドロパ−オキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパ−オキサイド、スクシン酸パ−オキサイド、パ−オキシマレイン酸t−ブチルエステル、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物や、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、さらにアゾビスイソブチロニトリル等の油溶性開始剤も使用される。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらの開始剤は、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレート、アスコルビン酸、ヒドロキシアセトン酸、硫酸第一鉄、硫酸第一鉄とエチレンジアミン四酢酸2ナトリウムの錯体なとの還元剤と組み合わせた通常のレドックス型開始剤として使用してもよい。
【0028】
前記有機系過酸化物は、重合系にそのまま添加する方法、単量体に混合して添加する方法、乳化剤水溶液に分散させて添加する方法など、公知の添加法で添加することができるが、透明性の点から、単量体に混合して添加する方法あるいは乳化剤水溶液に分散させて添加する方法が好ましい。
【0029】
前記有機系過酸化物は、重合安定性、粒子径制御の点から、2価の鉄塩等の無機系還元剤および/またはホルムアルデヒドスルホキシル酸ソ−ダ、還元糖、アスコルビン酸等の有機系還元剤と組み合わせたレドックス系開始剤として使用するのが好ましい。前記乳化重合に使用される界面活性剤にも特に限定はなく、通常の乳化重合用の界面活性剤であれば使用することができる。具体的には、例えばアルキルスルフォン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム等の陰イオン性界面活性剤や、アルキルフェノ−ル類、脂肪族アルコ−ル類とプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとの反応生成物等の非イオン性界面活性剤等が示される。これらの界面活性剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。更に要すれば、アルキルアミン塩等の陽イオン性界面活性剤を使用してもよい。
【0030】
本発明における得られたアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)ラテックスの平均粒子径は、0.04μm〜0.3μmが好ましく、0.04μm〜0.25μmがより好ましく、0.04μm〜0.2μmがさらに好ましい。アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)ラテックスの平均粒子径が0.04μm未満では、得られるメタクリル系樹脂組成物から形成しうるフィルムの耐衝撃性が低下する傾向にあり、0.3μmを超えると、フィルムの透明性が低下する傾向にある。
【0031】
本発明における得られたメタクリル系樹脂(C)のメチルエチルケトン可溶分の重量平均分子量(Mw)が5万〜12万(ポリスチレン換算)が好ましく、6万〜11万がより好ましく、7万〜10万がさらに好ましい。メタクリル系樹脂(C)のメチルエチルケトン可溶分の重量平均分子量(Mw)が5万未満では、得られるメタクリル系樹脂組成物から形成しうるフィルムの耐薬品性が低下する傾向にあり、12万を超えると、フィルムの成形性、加熱収縮率が低下する傾向にある。
【0032】
ここで、メタクリル系樹脂(C)のメチルエチルケトン可溶分の重量平均分子量(Mw)とは、以下の操作により得られた粉末サンプルを、ゲルパーミエーションクロマトグラフを用いて測定した値である。すなわち、メタクリル系樹脂(C)粉末をメチルエチルケトン40mlに添加し、12時間室温で放置後、マグネチックスターラーを用い30分間攪拌を行った。これを遠心分離機(日立工機(株)製、分級用遠心分離機CP60E)を用い30000rpmで1時間遠心分離し、デカンテーションにより、メチルエチルケトン不溶分と可溶分(溶液)とに分離した。メチルエチルケトン不溶分に、さらにメチルエチルケトン20mlを加え、同様に遠心分離およびデカンテーションを2回繰り返すことによりメチルエチルケトン不溶分と可溶分とに分離した。メチルエチルケトン可溶分は、該溶液に対してメタノールを用いて析出させ、真空乾燥機を用いて60℃にて10時間乾燥させて、粉末の可溶分サンプルとして得られる。
【0033】
本発明における得られたメタクリル系樹脂(C)のメチルエチルケトン可溶分の重量平均分子量(Mw)は、メタクリル酸エステル系重合体(A)を重合時、連鎖移動剤を用い制御することができる。
【0034】
前記連鎖移動剤の使用量は、メタクリル酸エステル系重合体(A)の単量体混合物100重量%に対して0.3〜2重量%が好ましく、0.3〜1.5重量%がより好ましく、0.3〜1重量%がさらに好ましい。連鎖移動剤の使用量が0.1重量%未満の場合は、成形性が低下する傾向にあり、5重量%を超えると耐薬品性が低下する傾向にある。
【0035】
前記連鎖移動剤としては、通常ラジカル重合に用いられるものの中から選択して用いるのが好ましく、具体例としては、炭素数2〜20のアルキルメルカプタン、メルカプト酸類、チオフェノール、四塩化炭素などが挙げられる。これらは、単独または2種以上組合せて用いられる。
【0036】
得られたメタクリル系樹脂(C)ラテックスは、通常の凝固、洗浄および乾燥の操作により、または、スプレ−乾燥、凍結乾燥などによる処理により、樹脂(C)が分離、回収される。
【0037】
本発明のメタクリル系樹脂(C)を含む樹脂組成物には、必要に応じて、ポリグルタルイミド、無水グルタル酸ポリマー、ラクトン環化メタクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等を配合することも可能である。ブレンドの方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0038】
本発明のメタクリル系樹脂(C)を含む樹脂組成物には、着色のために無機系顔料または有機系染料を、熱や光に対する安定性を更に向上させるために抗酸化剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤などを、あるいは、抗菌、脱臭剤、滑剤等を、単独または2種以上組み合わせて添加してもよい。抗酸化剤としてはフェノール系、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン系、イオウ系の酸化防止剤や熱安定剤、ラジカル補足剤が好ましく使用される。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチレート系、トリアジン系が好ましく使用され、ベンゾトリアゾール系やトリアジン系が特に好ましい。ベンゾトリアゾール系は長波長の吸収が大きく、トリアジン系は短波長の吸収が大きいことから2種以上を組み合わせることで相乗効果を期待できる。
【0039】
本発明のメタクリル系樹脂(C)を含む樹脂組成物は、Tダイ押出法により良好に加工される。
【0040】
本発明においては、必要に応じて、フィルムを成形する際、フィルム両面をロールまたは金属ベルトに同時に接触させることにより、特にガラス転移温度以上の温度に加熱したロールまたは金属ベルトに同時に接触させることにより、表面性のより優れたフィルムを得ることも可能である。また、目的に応じて、フィルムの積層成形や、二軸延伸によるフィルムの改質も可能である。
【0041】
本発明の樹脂組成物より得られたフィルムは、必要に応じて、公知の方法によりフィルム表面の光沢を低減させることができる。例えば、樹脂組成物に無機充填剤または架橋性高分子粒子を混練する方法等で実施することが可能である。また、得られるフィルムをエンボス加工により、フィルム表面の光沢を低減させることも可能である。
【0042】
本発明の樹脂組成物から得られるフィルムの厚みは、40〜75μmが好ましく、45〜65μmがより好ましく、50〜60μmがさらに好ましい。フィルムの厚みが40μm未満ではフィルムの成形性が低下し、長期耐候性が低下する傾向があり、75μmを超えると、得られるフィルムのコストが上がり、生産性が低下し、透明性が低下する傾向がある。
【0043】
本発明の樹脂組成物から得られるフィルムは、150℃の雰囲気で10分間加熱処理した際の収縮率が21%以下である。20%以下であることがより好ましく、19%以下であることがさらに好ましい。収縮率が21%を超えると、樹脂組成物から得られるフィルムを熱可塑性樹脂シートに熱ラミネーション法で積層した場合、フィルム側にシートがカールしたり、フィルムが加熱により収縮してシートより短くなり生産性が低下する傾向がある。
【0044】
なお、本発明の樹脂組成物においては、前述したように、メタクリル系樹脂組成物(C)中のメチルエチルケトン可溶分の重量分子量Mwを特定の範囲とすることで、フィルムの加熱収縮率を制御することができる。
【0045】
本発明の樹脂組成物から得られるフィルムは、23℃の雰囲気で7日間DOP(ジ−2−エチルヘキシルフタレート)に浸漬した際の重量変化が0.5%以下であることが好ましく、0.4%以下であることがより好ましく、0.3%以下であることがさらに好ましい。DOP浸漬前後の重量変化が0.5%を超えると、樹脂組成物から得られるフィルムを塩化ビニルシートに積層した場合、塩化ビニルシートに配合される可塑剤(DOP)によってメタクリル系樹脂フィルムが曇る、すなわち、フィルムの耐薬品性が低下する傾向がある。
【0046】
なお、本発明の樹脂組成物においては、前述したように、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)中の多官能性単量体(b−2)の共重合量bmを制御することにより、フィルムの耐薬品性を改善することができる。
【0047】
本発明の樹脂組成物は単軸、または二軸押出機によりペレット化される。作成したペレットはTダイによる溶融押出法によりフィルム状に成形される。Tダイのリップ開口度(リップクリアランス)は0.2〜0.5mmであることが好ましく、より好ましくは0.3から0.5mmである。0.2mm以下であると、ダイスの先端部が接触して傷が入る可能性があり好ましくなく、0.5mm以上になると加熱収縮率が大きくなることから好ましくない。
【0048】
Tダイの金型温度は210から270℃であることが好ましい。210℃以上であれば、フィルムの流れ方向の膜厚が安定し、加熱収縮率が小さくなることから好ましく、270℃以下であれば、樹脂の分解による目やにの発生や樹脂の発泡による穴あきやダイラインが抑制出来ることから好ましい。
【0049】
本発明で特定された樹脂組成物を溶融押出法により特定厚みのフィルム状に成形する際、Tダイのリップ開口度と金型温度を上記の特定の範囲とすることにより、加熱収縮性に優れたフィルムを得ることができる。
【0050】
Tダイ溶融押出法でフィルム成形する際の吐出量は1時間あたり100〜400kgが好ましく、特に400kgが好ましい。400kg以下であれば樹脂のせん断発熱による分解を抑制出来ることから好ましい。
【0051】
得られたフィルムは、金属、プラスチックなどに積層して用いることができる。フィルムの積層方法としては、多層押出などの積層成形や、加熱ロールを使用したラミ成形、鋼板などの金属板に接着剤を塗布した後、金属板にフィルムを載せて乾燥させ貼り合わせるウエットラミネ−トや、ドライラミネ−ト、押出ラミネ−ト、ホットメルトラミネ−トなどがあげられる。
【0052】
プラスチック部品にフィルムを積層する方法としては、フィルムを金型内に配置しておき、射出成形にて樹脂を充填するインサート成形またはラミネートインジェクションプレス成形や、フィルムを予備成形した後に金型内に配置し、射出成形にて樹脂を充填するインモールド成形などがあげられる。
【0053】
本発明のメタクリル系樹脂組成物から得られるフィルム積層品は、自動車内装材,自動
車外装材などの塗装代替用途、金属メッキ代替フィルム、太陽電池バックシート用フィルム、太陽電池表面保護フィルム、携帯、パソコン筐体表面、窓枠、浴室設備、壁紙、床材などの建材用部材、日用雑貨品、家具や電気機器のハウジング、ファクシミリなどのOA機器のハウジング、電気または電子装置の部品などに使用することができる。また、成形品としては、照明用レンズ、自動車ヘッドライト、光学レンズ、光ファイバ、光ディスク、液晶用導光板、液晶用フィルム、滅菌処理の必要な医療用品、電子レンジ調理容器、家電製品のハウジング、玩具またはレクリエーション品目などに使用することができる。
【0054】
本発明のメタクリル系樹脂組成物より得られたフィルムには、グラビヤ印刷法、フレキソグラフ印刷法、シルクスクリーン印刷法などの公知の印刷法で印刷層を形成することができ、木目などの任意の絵柄を形成することができる。さらに、該フィルムには、アルミニウム、クロム、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、亜鉛、真鍮、ステンレスなどの金属を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法、湿式メッキ法等により、金属層を形成することができる。あるいは、金属箔状のものを、接着剤層を介して、あるいは熱融着などによりフィルムに積層することにより、金属調を形成することができる。
【実施例】
【0055】
次に、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の
みに限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例で測定した物性の各測定方法は、次のとおりである。
【0056】
(重合転化率の評価)
得られたメタクリル系樹脂(C)ラテックスを、熱風乾燥機内にて120℃で1時間乾燥して固形成分量を求め、100×固形成分量/仕込み単量体(%)により重合転化率(%)を算出した。
【0057】
(ラテックスの平均粒子径の評価)
得られたメタクリル系樹脂(C)ラテックスをLEED&NORTHRUP INSTRUMENTS社のMICROTRAC UPAを用い、光散乱法により体積平均粒子径(μm)を測定した。
【0058】
(重量平均分子量の評価)
得られたメタクリル系樹脂(C)粉末をメチルエチルケトン40mlに添加し12時間室温で放置後、マグネチックスターラーを用い30分間攪拌を行った。これを遠心分離機(日立工機(株)製、分級用遠心分離機CP60E)を用い30000rpmで1時間遠心分離し、デカンテーションにより、メチルエチルケトン不溶分と可溶分とに分離した。メチルエチルケトン不溶分にさらにメチルエチルケトン20mlを加え、同様に遠心分離およびデカンテーションを2回繰り返すことによりメチルエチルケトン不溶分と可溶分とに分離した。
メチルエチルケトン可溶分をメタノールで析出させ、真空乾燥機を用い60℃で10時間乾燥させ、可溶分のサンプルを得た。得られた可溶分サンプル5mgを2mlのクロロホルムに溶解させた後、その溶液をディスポシリンジの先端にフィルター(アドバンテック東洋株式会社製、DISMIC13JP050AN)を付けもので濾過した。この溶液を、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(島津製作所(株)製LC−6AD、カラム:Shodex製K−806Mを2本+ガードカラム)を用いてポリスチレン換算の重量平均分子量を測定した。
【0059】
(透明性の評価)
得られたフィルムの透明性は、JIS K6714に準じて、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の条件下にて、ヘイズを測定した。
【0060】
(鉛筆硬度の評価)
得られたフィルムの鉛筆硬度を、JIS S−1005に準じて測定した。
【0061】
(耐薬品性の評価)
得られたフィルムを積層し、200℃×50kgf/cm2で5分間プレスを行い、厚み0.3mmのシートを得た。得られたシートを20×20mmの試験片に切出した。得られた試験片をDOP(ジ2−エチルヘキシルフタレート)に浸漬し、23℃雰囲気で7日間放置後、重量変化を測定した。
重量変化率(%)=(浸漬後の重量−浸漬前の重量)/浸漬前の重量×100
【0062】
(成形性の評価)
厚み55μmでのフィルム成形を3時間連続して行い、その運転状況を観察し、以下の基準により評価をした。
○:フィルムの厚みが均一で、切れずに成形できる。フィルム成形時、スリットを入れて
も割れが生じない。
△:フィルムの厚みが均一で、切れずに成形できるが、スリットを入れると、短時間割れ
が生じた。
×:フィルムの厚みが不均一またはフィルム切れ、スリットを入れると割れが生じた。
【0063】
(フィルムの収縮率の評価)
得られたフィルムを直径100mmの円盤状に切出し、150℃で10分間加熱後のフィルムの流れ方向(MD方向)の寸法を測定し、収縮率を求めた。
加熱収縮率(%)=(加熱前のMD方向の寸法(mm)−加熱後のMD方向の寸法(mm))/加熱前の寸法×100
例えば、加熱後のMD方向の寸法が70mmになった場合の加熱収縮率は、(100mm−70mm)÷100×100=30%と計算される。
【0064】
また、製造例、実施例および比較例中の「部」は重量部、「%」は重量%を表す。また、略号はそれぞれ下記の物質を表す。
BA:アクリル酸ブチル
MMA:メタクリル酸メチル
CHP:クメンハイドロパーオキサイド
tDM:ターシャリドデシルメルカプタン
AlMA:メタクリル酸アリル
(製造例1)メタクリル系樹脂組成物の製造
攪拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
脱イオン水 200部
ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム 0.35部
ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト 0.15部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.004部
硫酸第一鉄 0.001部
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を60℃にし、表1中(1)に示した単量体混合物(B)[すなわち、BA90重量%およびMMA10重量%からなる単量体混合物100重量%に対し、AlMA2.0重量%およびCHP0.2重量%からなる単量体混合物30部]を10部/時間の割合で連続的に添加し、添加終了後、さらに0.5時間重合を継続し、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)を得た。重合転化率は99.5%であった。その後、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム0.3部を仕込んだ後、内温を60℃にし、表1中(1)に示した単量体混合物(A)[すなわち、BA10重量%およびMMA90重量%からなる単量体混合物100重量%に対し、tDM0.6重量%およびCHP0.5重量%からなる単量体混合物70部]を10部/時間の割合で連続的に添加し、さらに1時間重合を継続し、メタクリル系樹脂(C)を得た。重合転化率は98.5%であった。得られたラテックスを塩化カルシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥してメタクリル酸樹脂(C)の樹脂粉末(1)を得た。
【0065】
樹脂粉末(1)100部に対し、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤LA31(ADEKA製)1.5部とトリアジン系紫外線吸収剤チヌビン1577(チバスペシャリティケミカルズ製)0.5部及び酸化防止剤としてトミノックスTT((株)エーピーアイ コーポレーション製)0.2部を混合し、ベント付き58mmφ二軸単軸押出機TEM58SS(東芝機械製)を用いて、シリンダ温度は投入口の温度を120℃に設定した以外は全て220℃に設定して溶融混練を行い、押出して樹脂組成物ペレット1を得た。
【0066】
(製造例2〜14)
単量体組成を表1のように変更した以外は、製造例1と同様に重合を行い、凝固、水洗、乾燥して樹脂粉末(2)〜(14)を得、さらに溶融混練を行い、ペレット2〜14を得た。メタクリル酸樹脂(C)の特性を表1に示した。
【0067】
【表1】

【0068】
(実施例1〜40、比較例1〜62)
製造例で得られたペレットを、Tダイ付き40mmφ押出機を用いて、シリンダー温度と連結管の温度は全て220℃に設定し、スクリーンメッシュは押出機側から100メッシュ、400メッシュ、100メッシュ、40メッシュの順に取り付けた。表2〜10の条件にリップ開口度、ダイス温度、吐出量を設定し、冷却ロール温度80℃の条件にてフィルムに成形し、厚み55μmのフィルムを得た。
【0069】
用いたペレットおよび得られたフィルムを用いた種々の特性の評価結果を表2〜10に示した。
【0070】
【表2】

【0071】
【表3】

【0072】
【表4】

【0073】
【表5】

【0074】
【表6】

【0075】
【表7】

【0076】
【表8】

【0077】
【表9】

【0078】
【表10】

【0079】
メタクリル系樹脂組成物(C)の単量体組成比、層構造、重量平均分子量、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の平均粒子径、含有量、および(B)中の多官能性単量体の共重合量、成形時のリップ開口度、ダイス温度が、本発明の範囲を外れると、成形性及び加熱収縮性に優れたフィルムを得ることができなかった。(比較例22〜62)
また、成形時のリップ開口度、ダイス温度が、本発明の範囲を外れると、加熱収縮性に優れたフィルムを得ることができなかった。(比較例1〜21)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸アルキルエステル50〜100重量%およびメタクリル酸アルキルエステル0〜50重量%を含む単量体混合物(合計100重量%)(b−1)に1分子あたり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体(b−2)を共重合することにより得られるアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の存在下、メタクリル酸アルキルエステル50〜100重量%およびアクリル酸アルキルエステル0〜50重量%を含む単量体混合物(合計100重量%)を重合することにより得られ、下記(1)〜(6)の特徴を有するメタクリル系樹脂(C)を含む樹脂組成物からなる、フィムルの膜厚が40〜75μmであり、150℃で加熱した後のフィルムの流れ方向の加熱収縮率が21%以下であるメタクリル樹脂フィルム。
(1)メタクリル系樹脂(C)が、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)、次いで、メタクリル酸エステル系重合体(A)である2層構造重合体であり、
(2)アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)において、前記多官能性単量体(b−2)が単量体混合物(b−1)100重量%に対して、0.1〜5重量%共重合され、
(3)メタクリル系樹脂(C)のメチルエチルケトン可溶分の重量平均分子量(Mw)が5万〜12万(ポリスチレン換算)であり、
(4)アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の平均粒子径が0.04μm〜0.3μmであり、
(5)アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)の含有量が18〜40重量%であって、
(6)アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(B)中の多官能性単量体(b−2)の上記共重合量bmと上記重量平均分子量Mwが下記式(i)を満たす。
3≦(Mw/10000)/bm≦8 (i)
【請求項2】
溶融押出Tダイ法において、Tダイのダイス開口度が0.2〜0.5mmであり、ダイス温度が210〜270℃の条件で成形された請求項1記載のメタクリル系樹脂フィルム。
【請求項3】
請求項1記載のメタクリル系樹脂フィルムまたは請求項2記載の成形方法により成形されたメタクリル系樹脂フィルムを、熱可塑性樹脂シートに積層したメタクリル系樹脂積層シート。


【公開番号】特開2012−162675(P2012−162675A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25190(P2011−25190)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】