説明

メタリック顔料およびこれを含む塗料

【課題】 塗膜に優れた高輝度感と優れた耐食性とを同時に与えるメタリック顔料、およびこれを含む塗料を提供する。
【解決手段】 アルミニウム粒子を基体粒子とし、該アルミニウム粒子の表面を被覆する単層または複層の被覆層を形成したメタリック顔料であって、該被覆層の最外層は、塩基性基および少なくとも1個の重合性二重結合を有するモノマーを重合反応させて得られるポリマーを含むメタリック顔料に関する。該モノマーは好ましくは窒素を含有する。また、該メタリック顔料には表面改質剤層が形成されることが好ましい。本発明はまた、該メタリック顔料を含む塗料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高輝度感と、耐食性とを両立させたメタリック顔料、および該メタリック顔料を含む塗料に関する。さらに詳しくは、本発明は、特に塗膜の輝度向上のためにメタリック顔料に表面改質剤層を形成した場合においても耐食性を良好に維持することが可能なメタリック顔料および該メタリック顔料を含む粉体塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粉体塗料組成物は、有機溶剤を使用しない低公害型塗料としての特徴が注目を集め、自動車部品、家庭電化製品、家具、工作機械、事務機器、建材、玩具などの多くの産業分野において需要が増加しつつある。
【0003】
粉体塗料組成物は一般に有機溶剤を使用しないため、有機溶剤に起因する環境問題や災害発生の原因とならないことから、地球環境および人間に優しい塗料組成物であるといえる。また、粉体塗料組成物においては、溶剤型塗料組成物のように塗装の際の飛散粘着による作業環境汚染もなく、比較的簡単に回収、清掃が可能である。さらに、水溶性塗料組成物の場合に発生する廃水処理問題も発生することがない。
【0004】
そして、粉体塗料組成物による塗装では1回の塗装で形成される塗膜が厚く、従来の溶剤型塗料組成物のように何度も重ね塗りをする必要がないため、塗装時間を短縮することができる。さらに、粉体塗料組成物は塗料組成物中に溶剤を含有しないため、塗膜中にピンホールを発生させることが少ないという利点も有している。
【0005】
さらに、粉体塗料組成物の塗装作業においては、オーバースプレーされた塗料組成物を回収して再使用することが可能であるため、塗料組成物の損失が著しく低減でき、塗装工程にかかるコストの削減につなげることができる。
【0006】
そして、従来は、粉体塗料組成物は、金属粉末などのメタリック顔料を含有しない粉体塗料組成物が大半であった。また、このような金属粉末を含有しない粉体塗料組成物においては、粉体塗料組成物の塗装性および塗膜特性は一般に良好であり、通常の溶剤型塗料組成物に対して大きく劣るということはなかった。
【0007】
ここで、近年、生活水準の向上に伴う消費者の美的意識の洗練から、自動車産業をはじめとする多くの産業分野において、美観に優れたメタリック調の塗膜の需要が高まりつつある。そして、このような消費者の要望に対応するために、意匠性の高いメタリック調塗膜を与える粉体塗料組成物、すなわちメタリック顔料を含有する粉体塗料である粉体メタリック塗料組成物が開発されており、いくつかの産業分野において積極的に導入が進められている。
【0008】
しかし、メタリック顔料を含有する粉体塗料組成物の場合には、メタリック顔料を塗膜の基材に対して平行に配列させることができないと、塗膜の色調が暗くなり、十分なメタリック感が得られないという欠点がある。そのため、このような粉体メタリック顔料組成物の有する欠点を克服するため、各方面で多くの研究開発努力がなされてきた。
【0009】
従来開発された粉体メタリック塗料組成物の製造方法としては、金属フレーク状顔料を溶融法によりあらかじめ樹脂や着色顔料と十分混練した後、粉砕などにより粉末化するメルトブレンド法、樹脂粉末とフレーク状顔料とを混合して塗装するドライブレンド法、表面に金属フレーク状顔料を付着させた樹脂粉末を使用するボンデッド法などがある(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4等)。
【0010】
しかし、メルトブレンド法においては、混練工程やその後の粉砕などによる樹脂粉末の粒度調整工程でメタリック顔料の変形が生じやすい。そのため、この方法で製造された粉体メタリック塗料組成物を塗装して得られた塗膜の外観は十分に良好なものであるとはいえない。さらに、この製造方法においては、メタリック顔料としてアルミニウム粒子を用いた場合、粉砕工程においてアルミニウムの活性な表面が露出し、発火、粉塵爆発などの危険性が高くなるという問題がある。
【0011】
また、ドライブレンド法では、メタリック顔料の変形は比較的生じがたいという利点がある。しかし、粉体塗料組成物を静電塗装により塗装する場合には、塗装時にメタリック顔料が帯電している必要があるため、アルミニウム粒子などの金属顔料をメタリック顔料として用いる場合には、あらかじめメタリック顔料の表面に樹脂をコーティングしておかねばならない。また、メタリック顔料と樹脂粉末との帯電率が異なるため、塗装時に樹脂粉末とメタリック顔料の分離現象が生じやすい。そのため、塗膜の意匠性が低下するとともに、塗布前後で粉体塗料組成物のメタリック顔料の含有率が変化するため、塗料を回収して使用すると色調が変化してしまい、塗料のリサイクルが事実上不可能であるという問題点がある。
【0012】
さらに、ボンデッド法としては、ブラシポリッシャーによりメタリック顔料を樹脂粉末表面に付着させる方法や、メタリック顔料で被覆されたアルミナボールなどの分散メディアに樹脂粉末を接触せしめて、樹脂粉末にメタリック顔料を転写し結合させる方法などがある。この方法では、塗膜中へのメタリック顔料の導入率が安定しており、基材に付着せずに回収された粉体塗料組成物を再使用できるというメリットがある。
【0013】
しかし、これらのボンデッド法では物理的なストレスによりメタリック顔料と樹脂粉末を圧着結合させているため、メタリック顔料の変形が生じやすく、優れたメタリック感がえられがたい。さらに、結合の強さが弱いため、樹脂粉末同士の結合(ブロッキング)が生じがたいという利点がある反面、実際には粒度分布に幅があるメタリック顔料のすべてを樹脂粉末に結合させるのは困難であるため、樹脂粉末と結合しない遊離のメタリック顔料の粒子も多く残存する。
【0014】
そして、遊離のメタリック顔料が多くなれば、付着効率の差から、塗料を回収して使用する場合に樹脂粉末とメタリック顔料の配合比が変わり、ドライブレンド法と同じく塗料回収後の再使用ができなくなる。さらに、メタリック顔料としてアルミニウム粒子などの金属顔料を用いる場合には、遊離のメタリック顔料が多く存在するため、発火、粉塵爆発などの危険も高くなる。
【0015】
樹脂粉末とメタリック顔料の結合力が弱くなるのは、特にメタリック顔料の粒径が大きい場合に顕著であり、このような粒径の大きいメタリック顔料の使用によりはじめて達成される優れた光輝感や高い輝度は、これらの方法で得られたボンデッドアルミでは得られにくいという問題が生じる。
【0016】
これらの問題を解決するために、本発明者らは、特定の結合剤を介してアルミニウムフレークを表面に結合させた熱硬化性樹脂粉末を含む粉体塗料組成物を開発した(特許文献5)。この発明では、リサイクルが可能で色ムラのない均一な塗膜が得られ、粒径が大きい顔料が使用できるため、従来のボンデットでは得られなかった輝度感が得られる。しかし該輝度感はドライブレンド法と比較して大幅に改善されることはない。
【0017】
この問題を解決するために本発明者は、フッ化アルキル基を有するフッ素系重合性モノマー由来の結合ユニットとリン酸基を有する重合性モノマー由来の結合ユニットとを備えるコポリマーを含有する樹脂組成物からなる表面改質剤を既に発明した。この方法を用いれば、高輝感に優れる塗膜を得ることができる。この表面改質剤によるメタリック顔料の適当な被覆量は、数ミリグラム/m2と非常に微量であるにも関わらず、この微量被覆で静電塗装が可能になる。前述のごとく、粉体塗料組成物をドライブレンド法で静電塗装により塗装する場合、メタリック顔料は帯電する必要があるため、アルミニウム粒子などの金属顔料をメタリック顔料として用いる場合には、あらかじめメタリック顔料の表面に樹脂をコーティングしておかねばならない。しかし、上記表面改質剤を用いた場合、あらかじめメタリック顔料の表面に樹脂をコーティングしておかなくても、表面改質剤の微量被膜が静電塗装を可能にする。
【0018】
一方、粉体塗料組成物の実際の利用に際しては、上記高輝感に加えて高い耐食性という要求が存在する。前述のごとく、粉体塗料組成物による塗装では1回の塗装で形成される塗膜が厚く、従来の溶剤型塗料組成物のように何度も重ね塗りをする必要がないため、1コート1ベークと呼ばれる1回塗装の1回焼付けが主流をなす。これにより塗装コストの低減が可能となり、粉体塗料組成物の大きなメリットのひとつになっている。しかし、この塗装方法では、塗膜最外層にオーバーコート層が存在しないため、メタリック顔料は、降雨(特に酸性雨)、アルカリ性洗剤洗浄、紫外線暴露、高温高湿などの外的刺激に直接さらされる。そのため顔料の腐食、それに伴う塗膜の変色がオーバーコートを施すのが一般的な、油性、水性含めた塗装用顔料以上に起き易く、その耐食性がより要求される。
【0019】
顔料の耐食性を向上させる方法としては、たとえば特許文献6に、少なくとも1個の重合性二重結合を有するオリゴマーおよびポリマーよりなる群から選ばれた少なくとも2種を反応させて得られる共重合体によって均一に顔料を被覆する方法が提案されている。しかしこの方法単独では、輝度感に優れた塗膜を得ることは困難である。ここで、特許文献6の方法で得られるメタリック顔料を上述の表面改質剤で処理し、静電塗装すると、塗膜に一定の輝度向上が認められるが、この場合の輝度向上効果は、表面改質剤の効果を十分発揮させるには至らず、要求される高輝度感の塗膜は得られない。言い換えれば、耐食性を向上させる樹脂コーティング被膜が、表面改質剤の輝度向上効果を阻害する結果になり、期待できるレベルの輝度は発現できない。また、表面改質剤の微量被膜自体は耐食性の向上効果を有しない。
【0020】
上記のように、粉体メタリック塗料の製造方法には種々の方法があるが、いずれの方法をもってしても色調的に十分満足のいくメタリック感および光輝感と、耐食性とを同時に両立させる塗膜は得られていない。
【特許文献1】特開昭51−137725号公報
【特許文献2】特公昭57−35214号公報
【特許文献3】特開平9−71734号公報
【特許文献4】米国特許第4,138,511号公報
【特許文献5】国際公開第02/094950号パンフレット
【特許文献6】特開昭64−40566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、塗膜に優れたメタリック感および高輝度感を与え、かつ良好な耐食性をも同時に与えるメタリック顔料、および該メタリック顔料を含む塗料、特に好ましくは粉体塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、アルミニウム粒子の表面を被覆する単層または複層の被覆層を形成したメタリック顔料であって、該被覆層の最外層が、塩基性基および少なくとも1個の重合性二重結合を有するモノマーを重合反応させて得られるポリマーを含むメタリック顔料、および該メタリック顔料を含む塗料に関する。
【0023】
ここで、被覆層が単層の場合は、該被覆層が、少なくとも1個の重合性二重結合を有するオリゴマーおよびモノマーよりなる群から選ばれた少なくとも2種と、塩基性基および少なくとも1個の重合性二重結合を有するモノマーとを重合反応させて得られるコポリマーからなることが好ましい。
【0024】
また、被覆層が複層の場合は、該被覆層のうち最外層以外の少なくとも1層が、少なくとも1個の重合性二重結合を有するオリゴマーおよびモノマーよりなる群から選ばれた少なくとも2種を重合反応させて得られるコポリマーからなることが好ましい。
【0025】
塩基性基および少なくとも1個の重合性二重結合を有する該モノマーは、窒素を含有する化合物であることが好ましい。
【0026】
本発明のメタリック顔料においては、被覆層が、アルミニウム粒子100質量部に対し5〜100質量部の範囲となるように形成されることが好ましい。
【0027】
また本発明においては、被覆層の外側に表面改質剤層が形成されることが好ましい。この場合、該表面改質剤層は、フッ化アルキル基を有するフッ素系重合性モノマー由来の結合ユニットと、リン酸基を有する重合性モノマー由来の結合ユニットとを備えるコポリマーを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明のメタリック顔料は、塩基性基および少なくとも1個の重合性二重結合を有するモノマーを重合反応させて得られるポリマーを含む被覆層をアルミニウム粒子表面に形成することによって、特に表面改質剤を用いる場合に該表面改質剤と該被覆層との密着性を高め、メタリック顔料の輝度と耐食性とを同時に向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、実施の形態を示して本発明をより詳細に説明する。
【0030】
<アルミニウム粒子>
本発明のメタリック顔料は、アルミニウム粒子を基体粒子とする。アルミニウムは金属光沢に優れ、安価な上に比重が小さいため扱いやすいという優れた特質を有するからである。本発明における基体アルミニウム粒子の材質は、主成分、すなわち全体の50質量%以上を占める成分がアルミニウムであれば良いが、アルミニウムの純度が99.3質量%以上であることがより好ましく、純アルミニウムは特に好ましい。アルミニウムの純度が99.3質量%であればメタリック顔料の金属光沢が特に良好となるからである。アルミニウム粒子がアルミニウム以外の成分を含有する場合には、アルミニウムと他の金属との合金が好ましく用いられる。アルミニウムと合金化される金属としては、亜鉛、銅、ブロンズ(青銅)、ニッケル、チタン、ステンレス等の金属よりなる群から選ばれる1種以上の金属が好ましく挙げられる。これらの金属とアルミニウムとの合金は比較的良好な金属光沢を有するため、本発明の基体粒子として好ましく使用され得る。
【0031】
本発明における基体アルミニウム粒子の形状は、特に限定されず、たとえば、粒状、板状、塊状、フレーク状(鱗片状)、などの種々の形状がありうるが、塗膜に優れた輝度感を与えるためには、フレーク状であることが好ましい。
【0032】
基体アルミニウム粒子の平均粒径は、特に限定されるものではないが、1μm以上であることが好ましく、特に3μm以上であることがより好ましい。また、該基体アルミニウム粒子の平均粒径は、100μm以下であることが好ましく、特に50μm以下であることがより好ましい。基体アルミニウム粒子の平均粒径が1μm未満の場合には、製造工程での取り扱いが難しく、基体アルミニウム粒子は凝集しやすくなる傾向があり、該平均粒径が100μmを超えると、塗料として使用したときに塗膜表面が荒れて、好ましい意匠を実現できない場合がある。
【0033】
基体アルミニウム粒子の平均厚みは、特に限定されるものではないが、0.01μm以上であることが好ましく、特に0.02μm以上であることがより好ましい。また、該基体アルミニウム粒子の平均厚みは、5μm以下であることが好ましく、特に2μm以下であることがより好ましい。該基体アルミニウム粒子の平均厚みが0.01μm未満の場合には、製造工程での取り扱いが難しく、該基体アルミニウム粒子が凝集しやすくなる傾向があり、該基体アルミニウム粒子の平均厚みが5μmを超えると、塗膜の粒子感が目だったり、隠蔽力が不足して、好ましい意匠を実現できない場合がある。
【0034】
基体アルミニウム粒子の平均粒径は、レーザー回折法、マイクロメッシュシーブ法、コールターカウンター法などの公知の粒度分布測定法により測定された粒度分布より体積平均を算出して求められる。平均厚みについては、基体アルミニウム粒子の隠蔽力と密度より算出される。
【0035】
基体アルミニウム粒子の表面には、磨砕時に添加する磨砕助剤が吸着していてもよい。磨砕助剤としては、たとえば、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、リシノール酸、エライジン酸、ゾーマリン酸、ガドレイン酸、エルカ酸などの脂肪酸や、脂肪族アミン、脂肪酸アミド、脂肪族アルコール、エステル化合物などが挙げられる。
【0036】
磨砕助剤は基体アルミニウム粒子表面の不必要な酸化を抑制し、光沢を改善する効果を有する。磨砕助剤の吸着量は用途などにより異なり、特に限定されるものではないが、基体アルミニウム粒子100質量部に対して2質量部未満であることが好ましい。2質量部以上の場合は、表面光沢が低下するおそれがある。
【0037】
さらに、基体アルミニウム粒子の表面に着色顔料層もしくは干渉膜などの着色処理層が形成されてもよい。このように着色顔料層もしくは干渉膜などを設けることにより、基体アルミニウム粒子を着色処理することができ、独特の意匠性を有する塗膜を形成することが可能になる。
【0038】
ここで、着色顔料層を設けるために使用され得る着色顔料は、特に限定されるものではないが、たとえば、キナクリドン、ジケトピロロピロール、イソインドリノン、インダンスロン、ペリレン、ペリノン、アントラキノン、ジオキサジン、ベンゾイミダゾロン、トリフェニルメタンキノフタロン、アントラピリミジン、黄鉛、パールマイカ、透明パールマイカ、着色マイカ、干渉マイカ、フタロシアニン、ハロゲン化フタロシアニン、アゾ顔料(アゾメチン金属錯体、縮合アゾなど)酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄、銅フタロシアニン、縮合多環類顔料、などが挙げられる。
【0039】
また、干渉膜を設ける方法としては、特に限定するものではないが、たとえば、基体アルミニウム粒子の表面に、異種金属からなる薄膜をスパッタリングする方法などが挙げられる。そして、その際に用いられる異種金属としては、特に限定するものではないが、たとえば、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、チタン、アルミニウム、の他に、真鍮などの銅合金、ステンレス鋼などの鉄合金、ハステロイなどのニッケル合金などが挙げられる。
【0040】
基体アルミニウム粒子の製造方法は、特に限定されず、公知の方法で製造可能である。具体例としては、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法、回転円盤法、メルトスピニング法などによりアルミニウム粉末、好ましくはアルミニウム球状粉を作製する工程と、公知のボールミル法でアルミニウム粉末を磨砕処理する工程とからなるアルミニウム粒子の製造方法が挙げられる。
【0041】
<最外層を形成するための原料モノマー>
本発明のメタリック顔料における被覆層の最外層を形成するポリマーは、塩基性基および少なくとも1個の重合性二重結合を有するモノマーの重合反応により得られ、分子中に塩基性点を有するポリマー(以下、塩基性ポリマーと称する)として生成する。なお本発明において塩基性点とは電子対供与性を有する部位を指す。該ポリマーにはホモポリマーおよびコポリマーのいずれも含まれる。
【0042】
本発明において、被覆層の最外層を形成するための原料として塩基性基を有する重合性モノマーを使用した場合、塗膜の輝度および耐食性が良好に両立される理由については以下のように推測できる。リン酸基を有するフッ素系ポリマーからなる表面改質剤層をアルミニウム粒子の表面に形成したメタリック顔料においては、フッ素系ポリマーの寄与により塗料中の他の成分とメタリック顔料表面の親和性が低下して塗膜表面にメタリック顔料が配向して塗膜の輝度が向上し、かつ、リン酸基の寄与によりアルミニウム粒子に対する表面改質剤層の吸着性が向上して該表面改質剤層が均一に形成される。
【0043】
該表面改質剤層を形成したメタリック顔料にさらに耐食性を付与する目的で、基体アルミニウム粒子と該表面改質剤との間に被覆層を形成する場合、表面改質剤層と該被覆層との間の相互作用が弱いと、該表面改質剤層と該被覆層との吸着性が悪くなり、表面改質剤層が均一に形成されない他、吸着できないリン酸基の極性がフッ素系ポリマーの撥水能力を減衰させて塗膜の輝度が低下する場合がある。この場合、基体アルミニウム粒子と表面改質剤層との間に被覆層を介在させる意義が十分発揮されない。本発明においては、塩基性基を有するモノマーを重合させることにより得られるポリマーを含む被覆層を形成することにより、該被覆層表面に、表面改質剤層のリン酸基に対する吸着サイトとなる塩基性点を形成することができる。したがって、酸・塩基相互作用により該表面改質剤層と該被覆層との強固な吸着が可能となる。この酸・塩基相互作用により、表面改質剤層のリン酸基は被覆層との界面側に配向するため、フッ素系ポリマーの撥水能力が充分に発揮され、塗膜を形成した場合、リーフィング効果により高い輝度が実現されるものと考えられる。
【0044】
よって、本発明で使用される塩基性基を有するモノマーは、被覆層表面に塩基性点を確保することが目的であるため、塩基性であって被覆樹脂の構成成分になることができるという条件を満足できれば良い。ただし工業生産を考えた場合、コスト面や重合性から、塩基性基を有する少なくとも1個の重合性二重結合を有するモノマーは、窒素を含む化合物であることが好ましい。具体的には3級アミンの(メタ)アクリル酸エステル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、などが好ましく、さらにジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどがより好ましい。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
最外層を形成するための原料となるモノマーは、塩基性基および少なくとも1個の重合性二重結合を有する重合性モノマーのみを含有していても良いが、他のモノマーやオリゴマーが含有されても良い。被覆層が単層である場合には、塩基性基および少なくとも1個の重合性二重結合を有する重合性モノマーの他に、少なくとも1個の重合性二重結合を有するオリゴマーおよびモノマーからなる群から選ばれた少なくとも2種が含まれていることが好ましい。この場合、メタリック顔料の耐食性をより向上させることができる。
【0046】
ここで、塩基性基および少なくとも1個の重合性二重結合を有する重合性モノマーの含有量は、最外層を形成するポリマーの原料となるモノマーおよび/またはオリゴマー全体の5質量%以上であることが好ましく、特に10質量%以上であることが好ましい。該含有量が5質量%未満の場合には、十分な輝度が発現しない傾向がある。また、該含有量は、90質量%以下であることが好ましく、特に70質量%以下であることが好ましい。該含有量が90質量%以上の場合、メタリック塗料の耐食性が十分得られない場合がある。
【0047】
<内層を形成するモノマーおよび/またはオリゴマー>
本発明のメタリック顔料においては、塩基性基および少なくとも1個の重合性二重結合を有する重合性モノマーの重合によって得られるポリマーを用いて単層の被覆層のみを形成した場合でも、メタリック顔料に良好な耐食性が付与される。しかし、より強力な耐食性を得るために、塩基性基および少なくとも1個の重合性二重結合を有する重合性モノマーの重合により得られるポリマーの層を最外層とする複層の被覆層を形成し、該最外層と基体アルミニウム粒子との間に、少なくとも1個の重合性二重結合を有するモノマーおよびオリゴマーよりなる群から選ばれた少なくとも2種を用いたポリマーからなる内層を形成することが好ましい。より具体的に該モノマーおよび該オリゴマーについて以下に言及する。
【0048】
少なくとも1個の重合性二重結合を有するモノマーとしては、不飽和カルボン酸(例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸または無水マレイン酸)、そのニトリル(例えばアクリロニトリルまたはメタクリロニトリル)またはそのエステル(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸シクロヘキシル、1,6−へキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシル、トリメチロールプロパントリメタクリレートまたはテトラメチロールメタントリメタクリレート)が好ましく例示される。さらに、環式不飽和化合物(例えばシクロヘキセン)や非環式不飽和化合物(例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、シクロヘキセンビニルモノオキシド、ジビニルベンゼンモノオキシド、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルまたはジアリルベンゼン)等も好ましい。
【0049】
少なくとも1個の重合性二重結合を有するオリゴマーとしては、エポキシ化1,2−ポリブタジエン、アクリル変性ポリエステル、アクリル変性ポリエーテル、アクリル変性ウレタン、アクリル変性エポキシ、アクリル変性スピラン(いずれも重合度2〜20程度)等を例示することができる。中でも重合度3〜10のエポキシ化1,2−ポリブタジエン、アクリル変性ポリエステルが好ましい。オリゴマーの使用は、重合反応が徐々に進行し、反応効率が非常に高くなるという点で好ましい。
【0050】
被覆層のうち最外層以外の層に対して、重合性二重結合を少なくとも2個有するモノマーおよび/またはオリゴマーを使用した場合、架橋作用により耐食性がより一層向上するため特に好ましい。
【0051】
<最外層を形成するポリマー>
内層および最外層を含む本発明の被覆層全体(総被覆層)の量は、基材アルミニウム粒子100質量部に対して5質量部以上であることが好ましく、特に10質量部以上であることがより好ましい。また、該総被覆層の量は、100質量部以下であることが好ましく、特に80質量部以下であることが好ましい。該総被覆層の量が5質量部未満の場合には、充分な耐食性が得られず、該総被覆層の量が100質量部を超える場合には、被覆層が厚すぎるためメタリック顔料からの反射光が散乱され塗膜の輝度が低下するおそれがある。
【0052】
本発明のメタリック顔料においては、塩基性ポリマーを含む層、または塩基性ポリマーのみからなる層による単層の被覆層によって基体アルミニウム粒子の表面が被覆されても良く、また最外層と他のポリマーからなる内層との複層からなる被覆層によって基体アルミニウム粒子の表面が被覆されていてもよいが、いずれの場合も、被覆層の最外層は塩基性基を有するモノマーの重合反応により得られる塩基性ポリマーを含む層とされる。
【0053】
なお、本発明においては、塩基性ポリマーを含む層が最外層を含む複数の層として形成されても良く、内層が複数の層として形成されても良いが、製造効率の点で、単層の被覆層、または内層および最外層からなる2層構造の被覆層が好ましく採用される。
【0054】
本発明において、基体アルミニウム粒子の表面に単層または複層の被覆層を形成する方法は、金属粒子の表面に均一な樹脂組成物の被膜を形成させることができる方法であれば特に限定されず、公知の方法を使用することができる。具体的には、たとえば、未処理のアルミニウム粒子を分散させた有機溶剤中に重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーを溶解させ、重合開始剤の共存下で加熱することにより、基体アルミニウム粒子の表面に目的のポリマーからなる被覆層を形成する方法等が採用され得る。
【0055】
本発明における被覆層としては単層または複層のいずれも採用され得る。複層からなる被覆層を形成する場合には、上述の方法で1層の被覆層を設けたメタリック顔料を形成し、その後、濾過洗浄してメタリック顔料を単離するという操作を繰り返すことにより1層ずつ積み重ねて複層を形成する方法がある。その他に、モノマーおよび/またはオリゴマーの重合反応途中で別種のモノマーおよび/またはオリゴマーを追加添加し、連続的に複層を形成させる方法もある。本発明においては、いずれの方法を採用しても所望の耐食性および輝度を有するメタリック顔料を得ることができ、被覆層の形成方法は限定されるものではない。
【0056】
未処理のアルミニウム粒子を分散させるための上記の有機溶剤は、特に限定するものではないが、生成する塩基性ポリマーを溶解しない溶剤が好ましく使用される。具体的には、たとえば、イソパラフィン系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、メタノール、エタノール、ブタノール、グリセリン、ポリプロピレングリコールなどのアルコール系溶剤などが挙げられる。また、これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0057】
該有機溶剤の使用量は、基体アルミニウム粒子100質量部に対し、300質量部以上であることが好ましく、特に400質量部以上であることがより好ましい。また、該有機溶剤の使用量は1200質量部以下であることが好ましく、特に800質量部以下であることがより好ましい。有機溶剤の使用量が300質量部未満では、反応液の粘度が高くなりすぎ、反応成分が均一に拡散することが難しくなる傾向があり、有機溶剤の使用量が1200質量部を超えると、モノマー濃度が低いために反応時間を長くしても未反応モノマーを多量に残存させてしまう傾向がある。
【0058】
上記の重合開始剤は、特に限定されず、一般にラジカル発生剤として知られているものを用いることができる。具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、などのパーオキサイド類、およびアゾビスイソブチロニトリル(「AIBN」とも略記する)のようなアゾ化合物などが挙げられる。
【0059】
ここで、重合開始剤の配合量は、被覆層100質量部に対して0.1質量部以上であることが好ましく、特に0.5質量部以上であることがより好ましい。また、重合開始剤の配合量は、10質量部以下であることが好ましく、特に8質量部以下であることがより好ましい。重合開始剤の配合量が0.1質量部未満の場合には、重合反応が進まず予定する量の被覆層が形成されないという問題が生じることがあり、配合量が10質量部を超えると、重合が急激に進み、生成ポリマーの基体アルミニウム粒子への吸着が追いつかないために遊離のポリマー粒子が生成して系全体の粘性が急激に上昇し、場合によっては反応成分の凝固が生じるという傾向がある。
【0060】
モノマーおよび/またはオリゴマーの重合温度は使用する重合開始剤の種類によって適宜設定される。重合開始剤の半減期は温度によって一義的に決まり、重合開始剤の半減期が5分以上になるような温度が好ましく、特に15分以上になる温度がより好ましい。また、重合開始剤の半減期が20時間以下になるような温度が好ましく、特に10時間以下になるような温度がより好ましい。たとえばAIBNを重合開始剤として用いる場合、半減期は60℃、70℃、80℃、90℃でそれぞれ22時間、5時間、1.2時間、0.3時間であるため、70〜90℃がより好ましい重合温度の範囲となる。重合開始剤の半減期が20時間より長くなるような重合温度と重合時間との組合せが採用される場合には、重合反応がなかなか進行しないという問題が生じる場合があり、重合開始剤の半減期が5分より短くなるような重合温度と重合時間との組合せが採用される場合には、重合反応が急激に進み、生成ポリマーの基体アルミニウム粒子への吸着が追いつかないために遊離のポリマー粒子が生成し、系全体の粘性が急激に上昇し、場合によっては反応成分が凝固してしまう傾向がある。なお、重合効率を高めるためには、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で重合反応を行うのが有利である。
【0061】
重合反応が終了したメタリック顔料を含むスラリーは、濾過または遠心分離により過剰の溶媒や未反応モノマーを除去し、メタリック顔料と溶媒とを含むペーストとする。得られたペーストは必要に応じて溶媒洗浄されても良い。その後、乾燥工程を経て溶媒を完全に除去して粉体にしても良いが、通常は操作性の面からペーストの状態でメタリック顔料を完成させる。
【0062】
<表面改質剤>
本発明のメタリック顔料の表面には、さらに表面改質剤層を形成することが好ましい。該表面改質剤層は、メタリック顔料と他の塗料成分との親和性を低下させることによって、メタリック顔料を含む塗料の塗装時に、該メタリック顔料を塗膜表面に配向させる作用を有するものであることが好ましい。この場合、塗膜により良好な輝度を付与することができる。表面改質剤層を形成する好ましいポリマーとしては、フッ化アルキル基を有するフッ素系重合性モノマー由来の結合ユニットと、リン酸基を有する重合性モノマー由来の結合ユニットとを備えるコポリマーを少なくとも含むもの等が挙げられる。さらに好ましくは、フッ化アルキル基を有する前記フッ素系重合性モノマー由来の結合ユニットおよび前記リン酸基を有する重合性モノマー由来の結合ユニットと、他の1種以上の重合性モノマー由来の結合ユニットと、を備えるコポリマーが採用される。
【0063】
さらに好ましくは、フッ化アルキル基を有するフッ素系重合性モノマーがパーフルオロオクチルエチルアクリレートであり、リン酸基を有する重合性モノマーが2−メタクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェートもしくは、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェートであり、フッ化アルキル基を有するフッ素系重合性モノマー由来の結合ユニットおよびリン酸基を有する重合性モノマー由来の結合ユニット以外の1種以上の重合性モノマー由来の結合ユニットが、スチレンもしくはメチルメタクリレートであるコポリマーが挙げられる。
【0064】
表面改質剤層を形成するポリマーにおいては、フッ化アルキル基を有するフッ素系重合性モノマー由来の結合ユニットの含有率が1〜40mol%の範囲であり、リン酸基を有する重合性モノマー由来の結合ユニットの含有率が1〜30mol%の範囲であり、数平均分子量が1000〜500000の範囲とされることが好ましいが、特に限定はされない。該ポリマーは、溶媒に可溶なコポリマーであることが好ましい。なお、フッ素系重合性ポリマー中の結合ユニットの含有率は、たとえば、フラスコ燃焼法−イオンクロマトグラフィー等により測定でき、リン酸基を有する重合性モノマー由来の結合ユニットの含有率は、たとえば酸による湿式分解−ICP(Inductively Coupled Plasma)分析法等により評価できる。また数平均分子量は、たとえば、ゲルパーミエーションクロマトグラフフィー(GPC)等により評価できる。
【0065】
<表面処理方法>
まず共重合によって得られた表面改質剤を溶媒に溶解させ、本発明のメタリック顔料に添加し混練する。表面改質剤は、共重合反応終了時の未精製液をそのまま添加しても良いし、希釈溶剤で希釈してから添加しても良い。その際、メタリック顔料は無溶媒の粉体であっても溶媒を含んだペーストであってもかまわない。表面改質剤の添加量はメタリック顔料の不揮発成分、すなわちメタリック顔料から溶媒を除いたものの質量に対し、0.1質量%〜5質量%とされることが好ましい。0.1質量%未満では表面改質剤層を設けることによる塗膜の輝度の向上効果が十分に発現せず、5質量%を超えると後の粉体化工程で凝集が生起し易く、実用性のある粉体メタリック顔料が得られ難い。しかし表面改質剤の添加量はこれに限定はされない。なお、表面改質剤を溶解するための溶媒は、表面改質剤を溶解し得るものであってメタリック顔料の性状に悪影響を与えないものであれば、特に限定はない。
【0066】
溶媒の使用量は、メタリック顔料の不揮発成分に対し10質量%〜400質量%とされることが好ましい。10質量%未満では均一な混練が困難で、400質量%を越えると後述する分散工程で貧溶媒を大量に使用せざるを得なくなるため、製造効率が良好でなくなる傾向がある。ここで、メタリック顔料を、溶媒を含んだペーストとして使用する場合は、表面改質剤とともに添加する溶媒の量の計算に注意を要する。表面改質剤溶液とペーストを混練するのであるから、混合系において溶媒は混合溶媒となる。該混合溶媒が表面改質剤を溶解する組成になっていないと、混練中に表面改質剤が析出してメタリック顔料に対する表面改質剤の均一吸着が阻害される。よって溶媒の使用量は、混合系において表面改質剤が十分溶解される組成となるよう適宜設定されることが好ましい。
【0067】
リン酸基を有する表面改質剤が使用される場合、メタリック顔料と表面改質剤との混練中に、表面改質剤分子中のリン酸基部分がメタリック顔料に吸着するものと考えられる。混練終了後にペーストをエージングする方法、加温混練や加温エージングを行なう方法等を用いる場合、該吸着をより確実なものにすることができるが、特別の操作を行なわなくても表面改質剤の効果は十分発現するので、特に限定はされない。
【0068】
上記の方法により、本発明のメタリック顔料の表面にさらに表面改質剤層が形成された表面改質剤含有ペーストを得ることができる。該ペーストを粉体化するにあたっては、表面改質剤に対する貧溶媒中へ該ペーストを分散させたものを濾過して乾燥させる手法が奨励される。該ペーストをそのまま乾燥させるとメタリック顔料同士が互着して凝集してしまう場合がある。この場合でも、再粉砕により十分利用可能な粉体を得ることはできるが、粉砕の際にメタリック顔料が一部変形するなどの弊害も生起し得る。また、該ペーストを良溶媒で洗浄して乾燥させれば、前述の凝集の問題は回避できるが、吸着させた表面改質剤も徐々に洗い流されて行き、表面改質剤層を設けることによる効果が十分に得られない傾向がある。
【0069】
表面改質剤含有ペーストを強攪拌下の大量の貧溶媒に徐々に投入してスラリーとし、濾過、乾燥させれば、メタリック顔料の変形または凝集、表面改質剤の溶出という問題は回避できる。すなわち、メタリック顔料は分散溶媒中で分散されることによって互いが接触していない状態となる。同時に、貧溶媒が良溶媒を抽出することによって表面改質剤は固体としてメタリック顔料表面に析出するため、表面改質剤層が付与されたメタリック顔料の粒子同士が再接触しても互着が生じない。表面改質剤に対する貧溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、メルベイユ等のアルカンが好ましい。
【0070】
<粉体塗料作製方法>
本発明のメタリック顔料は、たとえば熱硬化性樹脂粉体等の樹脂粉体中に配合されることにより粉体塗料とされることができる。樹脂粉体の種類は特に制限されず、加熱により溶融し、その後速やかに硬化する樹脂を含む樹脂組成物の粉体であり、かつ本発明のメタリック顔料に影響を及ぼさない熱硬化性樹脂粉体を好ましく用いることができる。
【0071】
熱硬化性樹脂粉体としては、粉体塗装用の公知の熱硬化性樹脂粉体を特に好適に用いることができる。具体例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などを含む樹脂組成物の粉体が挙げられる。また、本発明の粉体塗料に用いる熱硬化性樹脂粉体には、必要に応じて硬化剤、分散剤などを添加してもよい。
【0072】
ここで、熱硬化性樹脂粉体に添加し得る硬化剤は、特に限定されず、公知の硬化剤を使用することができる。具体例としては、アミン、ポリアミド、ジシアンジアミド類、イミダゾール類、カルボン酸ジヒドラジド、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化ホウ素、アミノ樹脂、トリグリシジルイソシアネート、プリミド、エポキシ樹脂、その他の二塩基酸類、イミダゾリン類、ヒドラジド類、イソシアネート化合物などが挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。さらに、これらの硬化剤は、必要に応じて硬化促進剤と併用することもできる。
【0073】
熱硬化性樹脂粉体に添加し得る分散剤は、特に限定されず、公知の分散剤を使用することができる。具体例としては、リン酸エステル類、アミン類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類などの界面活性剤が挙げられる。また、これらの分散剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0074】
熱硬化性樹脂粉体には、必要に応じて、上記以外にも、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルクなどの各種充填材、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウムなどの各種流動性調整剤、酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄、銅フタロシアニン、アゾ顔料、縮合多環類顔料などの各種着色剤、アクリルオリゴマー、シリコーンなどの各種流展剤、ベンゾインなどの各種発泡防止剤、さらに、ワックス類、カップリング剤類、酸化防止剤、磁性粉などをはじめとする各種添加剤および各種機能性材料が添加されていてもよい。
【0075】
ここで、本発明の粉体塗料に用いる熱硬化性樹脂粉体の平均粒径は、特に限定するものではないが、5μm以上であることが好ましく、特に15μm以上であることがより好ましい。また、この平均粒径は100μm以下であることが好ましく、特に60μm以下であることがより好ましい。熱硬化性樹脂粉体の平均粒径が5μm未満の場合には、粉体塗装を行なう際に均一な粉塵化が困難になり、樹脂の塊が塗板に付着し平滑性が失われる場合がある。また、該熱硬化性樹脂粉体の平均粒径が100μmを超える場合は、粉体塗装塗膜の表面の平滑性が阻害され、良好な外観が得られないおそれがある。
【0076】
本発明の粉体塗料においては、本発明に用いる熱硬化性樹脂粉体100質量部に対して、本発明のメタリック顔料の含有量は1質量部以上であることが好ましく、特に2質量部以上であることがより好ましい。また、該メタリック顔料の含有量は40質量部以下であることが好ましく、特に20質量部以下であることがより好ましい。該含有量が1質量部未満の場合には、十分なメタリック感および輝度感が得られないおそれがあり、基材を隠蔽するために塗膜厚を大きくしなければならない傾向がある。また、該含有量が40質量部を超える場合は、コストアップになるとともに、塗膜の平滑性が失われ、外観が悪くなる傾向がある。
【0077】
なお、本発明における粉体塗料の製造方法は特に限定されず、メタリック顔料を粉体塗装用熱硬化性樹脂粉体と単にドライブレンドして粉体塗料とする方法等が好ましく採用され得る。
【0078】
<粉体塗装方法>
本発明の粉体塗料を塗装する方法としては、塗装されるべき基材表面をあらかじめブラスト処理した後、化成処理などの公知の処理を施した上で粉体塗料を付着させ、その後粉体塗料を加熱硬化させることが好ましい。粉体塗料を基材表面に付着させる方法としては、流動浸漬法、静電粉体塗装法等が適用できるが、静電粉体塗装法が塗着効率に優れ、より好ましい。静電粉体塗装の方式としては、コロナ放電方式、摩擦帯電方式などの公知の方式を用いることができる。
【0079】
粉体塗料を加熱硬化させる際の加熱温度は、用いる熱硬化性樹脂粉末の種類に応じて適宜設定できるが、通常は120℃以上、好ましくは150〜230℃とすればよい。加熱時間は加熱温度に応じて適宜選択することができるが、一般的には1分間以上、好ましくは5〜30分間とすればよい。加熱により形成された塗膜の厚みは、限定的ではないが、通常20〜100μm程度である。
【0080】
<塗膜の輝度評価方法>
本発明においては、塗膜の輝度感を評価パラメータβ/αを用いて評価することができる。この評価パラメータ、すなわちβ/αは次の式(1)から導かれるものである。
式(1):L=[β/(θ2+α)]+γ
ここで、Lは分光光度計(商品名「X−Rite MA68」X−Rite社製)を用いて観測角θで測色した明度指数(L*a*b*測色系(CIEが1976年に定めた均等色空間にもとづく表色系))、θは観測角、α、βおよびγは定数である。
【0081】
式(1)の第1項目は、観測角θに依存するメタリック特有の指向性散乱に対応し、第2項目は、観測角θに依存しない等方性散乱に対応するものである。視覚輝度は指向性散乱の正反射位置(θ=0)でのL値、すなわちβ/αに良く相関するため、β/αを輝度感の評価パラメータとして使用している。
【0082】
β/αの算出に関しては、まずα、βおよびγを決定する必要がある。本発明では、まず観測角θが15度、25度、45度、75度、および110度における実測L値を測定し、それらθおよびL値の関係が式(1)に従うものと仮定して、最小二乗法でα、βおよびγを決定することができる。
【0083】
<耐食性評価>
本発明における耐食性とは、耐薬品性(耐アルカリ性、耐酸性)、および耐候性を指すが、アルミニウムは特にアルカリに侵され易く、アルミニウムを基体とする本発明のメタリック顔料自体の評価としては、耐薬品性、特に耐アルカリ性の評価が適している。
【0084】
本発明のメタリック顔料は、優れた耐食性と高輝度とを同時に提供できるため、本発明のメタリック顔料を用いた塗料組成物は多くの産業分野における塗装に適用可能であり、たとえば、自動車などの車体、事務用品、家庭用品、スポーツ用品、農薬材料、電気製品などの塗装に好適に利用される。
【0085】
[実施例]
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0086】
<実施例1>
まず、アルミニウムフレークのペーストであるメタリック顔料ペースト(商品名7640NS、東洋アルミニウム(株)製)をミネラルスピリットで洗浄、濾過をした。洗浄、濾過を行ったペーストの不揮発成分は70.0質量%であった。
【0087】
1リットルのセパラブルフラスコにおいて、このペースト171.4gにミネラルスピリット599.5gを添加し、攪拌してスラリーとした。攪拌を継続しつつ、系内に窒素ガスをパージして窒素雰囲気下とした後、80℃まで昇温した。以下の操作は、特にことわりの無い限り本条件を維持したまま行っている。
【0088】
アクリル酸0.85g、ミネラルスピリットで50質量%に希釈したエポキシ化1,2−ポリブタジエン8.3g、トリメチロールプロパントリアクリレート9.5g、ジビニルベンゼン3.8g、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.67gを添加した。モノマーおよびAIBN添加後4時間反応させ、その後、ジメチルアミノエチルメタクリレート1.3g、トリメチロールプロパントリアクリレート0.6g、ミネラルスピリット5.81g、AIBN0.05gを添加し、さらに2時間反応させた。冷却し反応を終了させた後、濾過し、少量のミネラルスピリットで洗浄し、メタリック顔料ペーストを得た。不揮発成分は52.8質量%、被覆樹脂量、すなわち本発明の被覆層の量はアルミニウムフレーク100gあたり12.0gであった。得られたペーストの一部をヘキサンで洗浄濾過し、自然乾燥で粉体化した後、目開き100μmのスクリーンに通し、粉体塗装用のメタリック顔料とした。以後、本メタリック顔料を顔料Aと呼称する。
【0089】
<比較例1>
まず、アルミニウムフレークのペーストであるメタリック顔料ペースト(商品名7640NS、東洋アルミニウム(株)製)をミネラルスピリットで洗浄、濾過をした。洗浄、濾過を行ったペーストの不揮発成分は65.2質量%であった。
【0090】
1リットルのセパラブルフラスコに、このペースト184.1gにミネラルスピリット589.4gを添加し、攪拌してスラリーとした。攪拌を継続しつつ、系内に窒素ガスをパージして窒素雰囲気下とした後、80℃まで昇温した。以下の操作は、特にことわりの無い限り本条件を維持したまま行っている。
【0091】
アクリル酸0.92g、ミネラルスピリットで50質量%に希釈したエポキシ化1,2−ポリブタジエン9.0g、トリメチロールプロパントリアクリレート10.4g、ジビニルベンゼン4.2g、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.68gを添加した。モノマーおよびAIBN添加後6時間反応させた。冷却し反応を終了させた後、濾過し、少量のミネラルスピリットで洗浄し、メタリック顔料ペーストを得た。不揮発成分は55.7質量%で、被覆樹脂量はアルミニウムフレーク100gあたり14.5gであった。得られたペーストの一部をヘキサンで洗浄濾過し、自然乾燥で粉体化した後、目開き100μmのスクリーンに通し、粉体塗装用のメタリック顔料とした。以後、本メタリック顔料を顔料Bと呼称する。
【0092】
<表面改質剤>
5リットルのセパラブルフラスコにパーフルオロオクチルエチルアクリレート(共栄社化学株式会社製、ライトアクリレートFA−108)476g、2−メタクリロイルオキシエチルアッシドフォスフェート(共栄社化学株式会社製、ライトエステルP−1M)66g、メチルメタクリレート492g、シクロヘキサノン4140gを入れ、良く攪拌して均一溶液とした。重合開始剤としてAIBN10gを添加し、攪拌溶解させた後、系内を窒素で十分に置換した。攪拌しながら60℃で20hr反応させることにより、粘稠な均一透明ポリマー溶液を得た。以後この溶液を表面改質剤溶液とする。該表面改質剤溶液20.3gを激しく攪拌したメタノール1700mlに滴下し、ポリマーを析出させた。この分散液を遠心分離することにより、ガム状のポリマーと透明溶液を分離した。得られたガム状ポリマーをアセトン25gで再溶解し、激しく攪拌したヘキサン1500mlに滴下し、ポリマーを析出させた。これを濾過で回収後、真空乾燥を行い、ポリマー3.1gを得た。この結果から、上述の表面改質剤溶液中のポリマー濃度は、15.4質量%と算出された。
【0093】
<実施例2>
前述の表面改質剤溶液3.6gをシクロヘキサノン66.0gで希釈し、実施例1で得られたペースト70.0gに添加、室温で20分間混練してスラリーを得た。激しく攪拌したヘプタン1リットルに、得られたスラリーを少しずつ投入し、分散させた。分散液を濾過し、ヘプタンにて洗浄濾過後、得られたケーキをバットに広げ、1晩自然乾燥させた。乾燥したメタリック顔料粉は、目開き100μmのスクリーンにかけて粉体塗装用のメタリック顔料とした。以後、本メタリック顔料を顔料Cと呼称する。顔料Cにおける、メタリック顔料に対する表面改質剤の量(質量%)を表1に示す。
【0094】
<比較例2>
前述の表面改質剤溶液21.7gをシクロヘキサノン252.8gで希釈し、比較例1で得られたペースト400.0gに添加、室温で20分間混練してスラリーを得た。激しく攪拌したヘプタン2.3リットルに、得られたスラリーを少しずつ投入し、分散させた。分散液を濾過し、ヘプタンにて洗浄濾過後、得られたケーキをバットに広げ、1晩自然乾燥させた。乾燥したメタリック顔料粉は、目開き100μmのスクリーンにかけて粉体塗装用のメタリック顔料とした。以後、本メタリック顔料を顔料Dと呼称する。顔料Dにおける、メタリック顔料に対する表面改質剤の量(質量%)を表1に示す。
【0095】
<比較例3>
アルミニウムフレークのペーストであるメタリック顔料ペースト(商品名7640NS、東洋アルミニウム(株)製)をミネラルスピリットで洗浄、濾過をした。洗浄、濾過を行ったペーストの不揮発成分は70.2質量%であった。
【0096】
前述の表面改質剤溶液27.3gをシクロヘキサノン360.1gで希釈し、比較例1で得られたペースト400.0gに添加、室温で20分間混練してスラリーを得た。激しく攪拌したヘプタン2.3リットルに、得られたスラリーを少しずつ投入し、分散させた。分散液を濾過し、ヘプタンにて洗浄濾過後、得られたケーキをバットに広げ、1晩自然乾燥させた。乾燥したメタリック顔料粉は、目開き100μmのスクリーンにかけて粉体塗装用のメタリック顔料とした。以後、本メタリック顔料を顔料Eと呼称する。顔料Eにおける、メタリック顔料に対する表面改質剤の量(質量%)を表1に示す。
【0097】
<粉体メタリック塗料の調製と粉体塗装>
これらのメタリック顔料(A)〜(E)をポリエステル系熱硬化性樹脂粉体(商品名Teodur PE 785−900、久保孝ペイント株式会社製)とブレンドして粉体メタリック塗料を調製した。ブレンド比、すなわち、熱硬化性樹脂粉末100gに対するメタリック顔料の添加量(g)は、塗装塗板がメタリック顔料により完全に隠蔽され、かつ表面が平滑である条件を満たすようにしたものである。該ブレンド比を表1に示す。
【0098】
得られた粉体メタリック塗料を、コロナ放電式静電紛体塗装機(MXR−100VT−mini、松尾産業(株)製)を用いて、印加電圧80kVの条件で、素材:ブリキ板、サイズ:100×200mmである基板に塗装し、190℃で20分間焼き付けることにより、塗板を作製した。
【0099】
<塗膜の輝度感の評価>
変角測色計(X−Rite社製「X−Rite MA−68」)による観測角θが15度、25度、45度、75度および110度における、塗板に形成された塗膜の実測L値を測定した。次いで、この測定値から次の式(1)に基づいてβ/αの値を計算して、塗膜の輝度感を評価した。なお、β/αが大きい方が輝度感が良好である。
L=[β/(θ2+α)]+γ・・・式(1)
得られたβ/αの値を表1に示す。
【0100】
なお、式(1)において、Lは分光光度計(商品名「X−Rite MA68」X−Rite社製)を用いて観測角θで測色した明度指数(CIEが1976年に定めた均等色空間にもとづく測色系であるL*a*b*測色系)、θは観測角、α、βおよびγは定数である。
【0101】
ここで、β/αの算出に関しては、まずα、βおよびγを決定する必要がある。したがって、まず観測角θが15度、25度、45度、75度および110度における実測L値を測定し、それらθおよびL値の関係が式(1)に従うものと仮定して、最小二乗法でα、βおよびγを決定した。
【0102】
<耐食性評価>
上記で作製した塗板の耐食性を、耐アルカリ性によって評価した。上記の塗装方法で得られた塗板を0.1NのNaOH水溶液に55℃で4時間浸漬した。その後、塗板を水洗、乾燥し、上記の方法で測色した。アルカリ液浸漬前後のβ/αの値から、式(2)に従い、輝度保持率として耐アルカリ性を評価した。
輝度保持率(%)= (アルカリ液浸漬後のβ/α)/(アルカリ液浸漬前のβ/α)×100・・・式(2)
結果を表1に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
表1に示す結果から、本発明に係る被覆層を設けた実施例1においては、塩基性基を有しないモノマーを重合させて形成した被覆層を設けた比較例1と比べて、塗膜の輝度、耐食性を低下させることがなく、耐食性については比較例1と比べて良好である。本発明に係る被覆層を設けた後、さらに表面改質剤層を設けた実施例2においては、塩基性基を有しないモノマーを重合させて形成した被覆層を設けた後に表面改質剤層を設けた比較例2と比べて塗膜の輝度および耐食性が顕著に良好であり、被覆層を設けずに表面改質剤層を設けた比較例3と比べても耐食性が顕著に良好である。
【0105】
よって本発明のメタリック顔料は、輝度感向上のために表面改質剤層を設けた場合でも良好な耐食性を発現し、高輝度感と耐食性とを両立させた塗膜を得ることができるメタリック顔料であることが分かる。
【0106】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明のメタリック顔料は、塗料、特に粉体塗料に対して好適に適用でき、表面改質剤層を形成した場合のメタリック感および高輝度感を損なうことなく、優れた耐食性をも同時に付与することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム粒子を基体粒子とし、前記アルミニウム粒子の表面を被覆する単層または複層の被覆層を形成したメタリック顔料であって、前記被覆層の最外層が、塩基性基および少なくとも1個の重合性二重結合を有するモノマーを重合反応させて得られるポリマーを含む、メタリック顔料。
【請求項2】
前記被覆層が単層であり、前記被覆層が、少なくとも1個の重合性二重結合を有するオリゴマーおよびモノマーよりなる群から選ばれた少なくとも2種と、塩基性基および少なくとも1個の重合性二重結合を有するモノマーとを重合反応させて得られるコポリマーからなる、請求項1に記載のメタリック顔料。
【請求項3】
前記被覆層が複層であり、前記被覆層の最外層以外の少なくとも1層が、少なくとも1個の重合性二重結合を有するオリゴマーおよびモノマーよりなる群から選ばれた少なくとも2種を重合反応させて得られるコポリマーからなる、請求項1に記載のメタリック顔料。
【請求項4】
塩基性基および少なくとも1個の重合性二重結合を有する前記モノマーが窒素を含有する化合物である、請求項1〜3に記載のメタリック顔料。
【請求項5】
前記被覆層が、アルミニウム粒子100質量部に対し5〜100質量部の範囲となるように形成されてなる、請求項1〜4に記載のメタリック顔料。
【請求項6】
前記被覆層の外側に表面改質剤層が形成される、請求項1〜5に記載のメタリック顔料。
【請求項7】
前記表面改質剤層が、フッ化アルキル基を有するフッ素系重合性モノマー由来の結合ユニットと、リン酸基を有する重合性モノマー由来の結合ユニットとを備えるコポリマーを含む、請求項6に記載のメタリック顔料。
【請求項8】
請求項1〜7のメタリック顔料を含む塗料。

【公開番号】特開2006−169393(P2006−169393A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−364409(P2004−364409)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(399054321)東洋アルミニウム株式会社 (179)
【Fターム(参考)】