メタルガスケット用の肉厚領域を含む金属層の製造方法
【課題】 単層ガスケット又は、多層ガスケットの１つの層にストッパ又は止め具を直接形成する方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、少なくとも１つの肉厚領域を含む金属層（10）の製造方法であって、少なくとも１つの薄片（22）を得るために金属層（10）に少なくとも１つの切り込み（20）を形成し、薄片が切り込みと重なるように、少なくとも１つの薄片（22）を折って伸ばして変形し、適切な高さｈの肉厚領域（24）が得られるように、切り込みと重なる少なくとも１つの薄片（22）の突出高さを平坦化して補正することを特徴とする。
【解決手段】 本発明は、少なくとも１つの肉厚領域を含む金属層（10）の製造方法であって、少なくとも１つの薄片（22）を得るために金属層（10）に少なくとも１つの切り込み（20）を形成し、薄片が切り込みと重なるように、少なくとも１つの薄片（22）を折って伸ばして変形し、適切な高さｈの肉厚領域（24）が得られるように、切り込みと重なる少なくとも１つの薄片（22）の突出高さを平坦化して補正することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、シリンダヘッドガスケット等の締めつけられるメタルガスケット用の、少なくとも１つの組み込み肉厚領域を含む金属層の製造方法に関する。
【０００２】
また本発明は、本発明による製造方法によって得られ、ガスケットを形成可能な、少なくとも１つの肉厚領域を備えている少なくとも１つの金属層を含むガスケットに関する。
【背景技術】
【０００３】
シリンダヘッドガスケット等の締めつけられるメタルガスケットにおいて、特に単層ガスケットの層又は多層ガスケットの作動層の１つでは、締めつけ点の周囲に応力領域が存在する。
【０００４】
したがって、これらの領域は比較的集中し、及ぼされる圧力の分布に不均衡が生じ、そのため幾つかの領域の気密性、シール性に不均衡の生じる可能性がある。
【０００５】
締めつけ圧を増すことによる解決方法は、圧力の不均衡が残るので一般に適切でない。しかも、締めつけ圧を増すと、部品の寸法決定をしなおすことが必要になり、少なくとも軽量化の観点から、自動車産業が一般に追求する目的に反する。
【０００６】
したがって、上記のような圧力の分布の均衡を再設定するために、ストッパ又は止め具を形成することが知られている。このようなストッパを適切に配置することにより、締めつけ点の幾つかの異なる領域で応力を確実に受容することができ、シール圧の配分を均質化することが可能となる。
【０００７】
このようなストッパを製造するための多くの解決方法が提案されているが、それらの解決方法は、特にコストの観点から、十分に満足できるものというわけではない。実際、これらのストッパを備えているガスケットは、締めつけ力の分布を確実に均衡させる結果をもたらし、その上、製造を迅速、容易に行うことができ、安価であり、申し分のない再生産性が得られるものでなければならない。
【０００８】
自動車産業では、補完的な製造ステップのための製品の引き受けが、管理の観点から非常に不利益をもたらすことが知られており、特にこのような引き受けは、重大な追加費用を発生する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００９】
本発明の課題の１つは、同様の連続製造ラインで、単層ガスケット又は、多層ガスケットの１つの層にストッパ又は止め具を直接形成することにある。
【００１０】
別の課題、別の制約は、単に分布点だけでなく一定の圧力分布を実現するために、同一層又は同一鋼板において、領域に応じて様々な厚みにストッパを形成することにある。この場合、これはむしろ表面ストッパ又は表面に形成された止め具に関わることが確認されており、以下の説明では肉厚領域という表現を用いる。
【００１１】
本発明の別の課題は、締めつけ後、所望の圧力分布が得られるようにし、したがってこの所望の圧力分布を達成するために、適切に分布、配置された肉厚領域が設けられるようにすることにある。
【００１２】
このような分布を達成するためには、肉厚領域の増加が必要であり、したがって本発明によって検討されるような簡易製造の長所が求められる。
【００１３】
圧力分布をさらに向上できることから、ガスケットを両側から締めつける部品の変形がこれまでよりも少なくなる。また、この結果、これらの部品の小型化が可能になり、又はこのような変形に対応するのに必要とされる部品の複雑性を緩和することができる。
【課題を解決するための手段】
【００１４】
上記課題は、少なくとも１つの肉厚領域を含む金属層の製造方法であって、少なくとも１つの薄片を得るために金属層に少なくとも１つの切り込みを形成し、薄片が切り込みと重なるように、少なくとも１つの薄片を折って伸ばして変形し、適切な高さｈの肉厚領域が得られるように、切り込みと重なる少なくとも１つの薄片の突出高さを平坦化して補正することを特徴とする方法によって解決される。
【００１５】
薄片のそれぞれの伸張部分が、薄片の自由端に形成されていることが好ましい。
【００１６】
好ましくは、薄片に少なくとも１つのリブが形成されている。
【００１７】
薄片を複数形成し、様々な高さの肉厚領域が配置されるように異なる平坦化及び補正を行うことができる。
【００１８】
重なる部分に面する境界面が斜めになるように平坦化及び補正を行うことが好ましい。
【００１９】
上記課題は、上記の方法により製造される少なくとも１つの肉厚領域を備えている金属層を含み、少なくとも１つの肉厚領域が、金属層を切り込むことによって形成される少なくとも１つの薄片を含み、少なくとも１つの薄片が、伸張により変形されて、適切な高さｈの肉厚領域が形成されるように、平坦化及び補正されていることを特徴とする単層又は多層ガスケットにより解決される。
【００２０】
少なくとも１つの薄片が、長いもしくは短い、又は細長い、又は矩形、又は三角形、又は円形の形状の中から選択された輪郭を有する切り込みにより画定される形状を有することが好ましい。
【００２１】
同じ形状で様々な高さの複数の肉厚領域を含むことも、あるいは様々な形状で同じ高さの複数の肉厚領域を含むこともできる。
【００２２】
少なくとも１つの薄片が、少なくとも１つのリブを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【００２３】
本発明は、少なくとも１つの肉厚領域を含む金属層（10）の製造方法に関し、少なくとも１つの薄片（22）を得るために前記金属層（10）に少なくとも１つの切り込み（20）を形成し、当該薄片が前記切り込みと重なるように、前記少なくとも１つの薄片（22）を折って伸ばして変形し、適切な高さｈの肉厚領域（24）が得られるように、前記切り込みと重なる前記少なくとも１つの薄片（22）の突出高さを平坦化して補正することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２４】
さらに、限定することを目的としない特定の実施形態又は、変形実施形態を介して、本発明について詳しく説明する。
【００２５】
以下の説明は、添付図面一式に関してなされたものである。
【００２６】
図１は、単層ガスケットの層10又は、多層ガスケットの場合の作動層の１つを示した。以下の説明では、単層ガスケットの金属層又は、多層ガスケットの場合は１つの層、一般により可鍛性のある軟鋼からなる特に中間層を無差別に示すために、「層」という語を用いる。
【００２７】
シリンダヘッドガスケットに適用する場合、この層、単層ガスケットの層又は多層ガスケットの作動層の１つの厚みは、たとえば0.10〜1.0ミリメートルの範囲である。
【００２８】
同様に、以下の説明では、シリンダヘッドガスケットを例として挙げるが、排気系統のガスケット、マニホルドのガスケット、あるいはもっと一般的には周辺ガスケットに用途を広げることができる。
【００２９】
層10は、一般に、シリンダに対応する中央の開口部12と、それぞれ水とオイルの通路に対応する穴14、16を含む。
【００３０】
また２個の部品には、この場合にはシリンダヘッドガスケット用であるので、エンジンブロックとシリンダヘッドとを締めつけるための締めつけねじが通過する通路18が設けられている。
【００３１】
本発明による方法は、薄片22を得るために層10に少なくとも１つの切り込み20を形成することからなり、この切り込みは部分的なものであって、得られた薄片は、切り込みのない方の線に沿って折り曲げることができるように形成されている。切り込みを入れて折った薄片22を図２Ａに示す。薄片は長さＬを有する。薄片の輪郭は、切り込みの輪郭と結合可能な、すなわち相補的な形状を有する。
【００３２】
本発明による肉厚領域を形成する第二のステップは、たとえば型打ち工程により、薄片22を伸ばすことからなる（図２Ｂ）。この工程による伸張長さΔＬは有限であり、好適には薄片の自由端で行われる。
【００３３】
第三のステップは、適切な高さの肉厚領域24を形成するために、薄片22の突出高さを平坦化し、同時に補正することからなる（図２Ｃ）。このような補正は、折り曲げられた切り込みから離れている薄片が、切り込みの元の場所に戻るように、薄片が元の層に戻るように、薄片を押し付けることによって行われる。
【００３４】
このとき、薄片の長さが、伸張長さΔＬだけ伸びているために、切り込み内に薄片を再び組み込むことはできない。その結果、切り込みの縁部に薄片22の端部が重なってまたがり、高さｈの肉厚部分が生じ、これが、組立時に、所望の肉厚領域を構成する。平坦化する力と補正する力とにより、所望の高さに調節することが可能である。
【００３５】
補正する力は、ガスケット部材として使用するために後で層を締めつける力よりも小さくなければならない。このようにして、形成された肉厚領域は、圧縮されることなく、これらの応力に耐える。
【００３６】
図３は、このような肉厚領域を詳しく示す断面図である。補正する力のもとで、切り込みの縁部と薄片の端部とが広がって変形し、ほぼ斜めの境界面26が形成される。
【００３７】
この図に示す場合の、おおよその寸法を示すとすれば、切り込みと、この切り込みからはみ出る薄片との寸法は、これらの寸法が最大であるとき、約0.5〜５ミリメートルである。
【００３８】
補正工具及び平坦化工具は、異なる補正を行って肉厚領域を様々な高さｈとすることができるように、平面でない輪郭を有することができる。このような高さの変化によって、もはや点ではなく面を配置することができ、面の周囲に圧力領域を配置することができる。
【００３９】
圧力分布は非常に段階的であり、全面でほぼ連続しており、応力点を生じない。
【００４０】
肉厚領域の密度、寸法、高さ、及び表面において位置を特定することによって、圧力分布を非常にきめ細かく調整することができる。
【００４１】
図４から確認できるように、切り込みの形、すなわち切り込みからはみ出る薄片の形状を、長い曲線（図４Ａ）、短い曲線（図４Ｂ）、細長い曲線（図４Ｃ）、略矩形の曲線（図４Ｄ）、略三角形の曲線（図４Ｅ）、円形の曲線（図４Ｆ）とすることができる。
【００４２】
これらの輪郭、形状は、肉厚領域と、肉厚領域で利用可能な空間とに応じて考慮される。
【００４３】
同一の層で輪郭を異なるものにすることも可能である。
【００４４】
各金属層は、同一ラインで連続して、本方法の様々なステップを経て形成される。このようにして形成されたガスケットを利用して、本発明の方法により得られる少なくとも１つの肉厚領域を有する少なくとも１個の層を備えたガスケットは、いったん適切な工具を製造、準備すると、簡単でありながら完全に再現可能な再生産が可能であり続ける。何故ならば、各種パラメータを変化させうる他の外部介入が全くないからである。
【００４５】
このような方法は、単層のメタルシリンダヘッドガスケットの場合と、多層ガスケットの中間層に対して、特に適用可能である。
【００４６】
本発明の変形実施形態によれば、型打ちによる伸ばし又は伸張と同時に、たとえば薄片の端に少なくとも１つのリブを形成することができる。
【００４７】
このような実施形態によって、また、一定の肉厚領域を形成することができ、実施形態を増やすことができ、特に層の材料が、単層ガスケットを構成するステンレス鋼のように可鍛性に乏しい場合、もっと複雑性が高いことなど様々な問題に対処することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【００４８】
【図１】メタルシールガスケットの１つの層を示す図である。
【図２】図２Ａ、２Ｂ及び２Ｃは、本発明による肉厚領域の製造ステップを示す概略図であり、図１に示すようなシールガスケットに対して適用可能である。
【図３】形成された肉厚領域の細部を示す断面の拡大図である。
【図４】図４Ａ〜４Ｆは、本発明による肉厚領域を形成するための切り込みの様々な輪郭を示す図である。
【符号の説明】
【００４９】
１０ 層
１２ 開口部
１４ 穴
１６ 穴
１８ 通路
２０ 切り込み
２２ 薄片
【技術分野】
【０００１】
本発明は、シリンダヘッドガスケット等の締めつけられるメタルガスケット用の、少なくとも１つの組み込み肉厚領域を含む金属層の製造方法に関する。
【０００２】
また本発明は、本発明による製造方法によって得られ、ガスケットを形成可能な、少なくとも１つの肉厚領域を備えている少なくとも１つの金属層を含むガスケットに関する。
【背景技術】
【０００３】
シリンダヘッドガスケット等の締めつけられるメタルガスケットにおいて、特に単層ガスケットの層又は多層ガスケットの作動層の１つでは、締めつけ点の周囲に応力領域が存在する。
【０００４】
したがって、これらの領域は比較的集中し、及ぼされる圧力の分布に不均衡が生じ、そのため幾つかの領域の気密性、シール性に不均衡の生じる可能性がある。
【０００５】
締めつけ圧を増すことによる解決方法は、圧力の不均衡が残るので一般に適切でない。しかも、締めつけ圧を増すと、部品の寸法決定をしなおすことが必要になり、少なくとも軽量化の観点から、自動車産業が一般に追求する目的に反する。
【０００６】
したがって、上記のような圧力の分布の均衡を再設定するために、ストッパ又は止め具を形成することが知られている。このようなストッパを適切に配置することにより、締めつけ点の幾つかの異なる領域で応力を確実に受容することができ、シール圧の配分を均質化することが可能となる。
【０００７】
このようなストッパを製造するための多くの解決方法が提案されているが、それらの解決方法は、特にコストの観点から、十分に満足できるものというわけではない。実際、これらのストッパを備えているガスケットは、締めつけ力の分布を確実に均衡させる結果をもたらし、その上、製造を迅速、容易に行うことができ、安価であり、申し分のない再生産性が得られるものでなければならない。
【０００８】
自動車産業では、補完的な製造ステップのための製品の引き受けが、管理の観点から非常に不利益をもたらすことが知られており、特にこのような引き受けは、重大な追加費用を発生する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００９】
本発明の課題の１つは、同様の連続製造ラインで、単層ガスケット又は、多層ガスケットの１つの層にストッパ又は止め具を直接形成することにある。
【００１０】
別の課題、別の制約は、単に分布点だけでなく一定の圧力分布を実現するために、同一層又は同一鋼板において、領域に応じて様々な厚みにストッパを形成することにある。この場合、これはむしろ表面ストッパ又は表面に形成された止め具に関わることが確認されており、以下の説明では肉厚領域という表現を用いる。
【００１１】
本発明の別の課題は、締めつけ後、所望の圧力分布が得られるようにし、したがってこの所望の圧力分布を達成するために、適切に分布、配置された肉厚領域が設けられるようにすることにある。
【００１２】
このような分布を達成するためには、肉厚領域の増加が必要であり、したがって本発明によって検討されるような簡易製造の長所が求められる。
【００１３】
圧力分布をさらに向上できることから、ガスケットを両側から締めつける部品の変形がこれまでよりも少なくなる。また、この結果、これらの部品の小型化が可能になり、又はこのような変形に対応するのに必要とされる部品の複雑性を緩和することができる。
【課題を解決するための手段】
【００１４】
上記課題は、少なくとも１つの肉厚領域を含む金属層の製造方法であって、少なくとも１つの薄片を得るために金属層に少なくとも１つの切り込みを形成し、薄片が切り込みと重なるように、少なくとも１つの薄片を折って伸ばして変形し、適切な高さｈの肉厚領域が得られるように、切り込みと重なる少なくとも１つの薄片の突出高さを平坦化して補正することを特徴とする方法によって解決される。
【００１５】
薄片のそれぞれの伸張部分が、薄片の自由端に形成されていることが好ましい。
【００１６】
好ましくは、薄片に少なくとも１つのリブが形成されている。
【００１７】
薄片を複数形成し、様々な高さの肉厚領域が配置されるように異なる平坦化及び補正を行うことができる。
【００１８】
重なる部分に面する境界面が斜めになるように平坦化及び補正を行うことが好ましい。
【００１９】
上記課題は、上記の方法により製造される少なくとも１つの肉厚領域を備えている金属層を含み、少なくとも１つの肉厚領域が、金属層を切り込むことによって形成される少なくとも１つの薄片を含み、少なくとも１つの薄片が、伸張により変形されて、適切な高さｈの肉厚領域が形成されるように、平坦化及び補正されていることを特徴とする単層又は多層ガスケットにより解決される。
【００２０】
少なくとも１つの薄片が、長いもしくは短い、又は細長い、又は矩形、又は三角形、又は円形の形状の中から選択された輪郭を有する切り込みにより画定される形状を有することが好ましい。
【００２１】
同じ形状で様々な高さの複数の肉厚領域を含むことも、あるいは様々な形状で同じ高さの複数の肉厚領域を含むこともできる。
【００２２】
少なくとも１つの薄片が、少なくとも１つのリブを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【００２３】
本発明は、少なくとも１つの肉厚領域を含む金属層（10）の製造方法に関し、少なくとも１つの薄片（22）を得るために前記金属層（10）に少なくとも１つの切り込み（20）を形成し、当該薄片が前記切り込みと重なるように、前記少なくとも１つの薄片（22）を折って伸ばして変形し、適切な高さｈの肉厚領域（24）が得られるように、前記切り込みと重なる前記少なくとも１つの薄片（22）の突出高さを平坦化して補正することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２４】
さらに、限定することを目的としない特定の実施形態又は、変形実施形態を介して、本発明について詳しく説明する。
【００２５】
以下の説明は、添付図面一式に関してなされたものである。
【００２６】
図１は、単層ガスケットの層10又は、多層ガスケットの場合の作動層の１つを示した。以下の説明では、単層ガスケットの金属層又は、多層ガスケットの場合は１つの層、一般により可鍛性のある軟鋼からなる特に中間層を無差別に示すために、「層」という語を用いる。
【００２７】
シリンダヘッドガスケットに適用する場合、この層、単層ガスケットの層又は多層ガスケットの作動層の１つの厚みは、たとえば0.10〜1.0ミリメートルの範囲である。
【００２８】
同様に、以下の説明では、シリンダヘッドガスケットを例として挙げるが、排気系統のガスケット、マニホルドのガスケット、あるいはもっと一般的には周辺ガスケットに用途を広げることができる。
【００２９】
層10は、一般に、シリンダに対応する中央の開口部12と、それぞれ水とオイルの通路に対応する穴14、16を含む。
【００３０】
また２個の部品には、この場合にはシリンダヘッドガスケット用であるので、エンジンブロックとシリンダヘッドとを締めつけるための締めつけねじが通過する通路18が設けられている。
【００３１】
本発明による方法は、薄片22を得るために層10に少なくとも１つの切り込み20を形成することからなり、この切り込みは部分的なものであって、得られた薄片は、切り込みのない方の線に沿って折り曲げることができるように形成されている。切り込みを入れて折った薄片22を図２Ａに示す。薄片は長さＬを有する。薄片の輪郭は、切り込みの輪郭と結合可能な、すなわち相補的な形状を有する。
【００３２】
本発明による肉厚領域を形成する第二のステップは、たとえば型打ち工程により、薄片22を伸ばすことからなる（図２Ｂ）。この工程による伸張長さΔＬは有限であり、好適には薄片の自由端で行われる。
【００３３】
第三のステップは、適切な高さの肉厚領域24を形成するために、薄片22の突出高さを平坦化し、同時に補正することからなる（図２Ｃ）。このような補正は、折り曲げられた切り込みから離れている薄片が、切り込みの元の場所に戻るように、薄片が元の層に戻るように、薄片を押し付けることによって行われる。
【００３４】
このとき、薄片の長さが、伸張長さΔＬだけ伸びているために、切り込み内に薄片を再び組み込むことはできない。その結果、切り込みの縁部に薄片22の端部が重なってまたがり、高さｈの肉厚部分が生じ、これが、組立時に、所望の肉厚領域を構成する。平坦化する力と補正する力とにより、所望の高さに調節することが可能である。
【００３５】
補正する力は、ガスケット部材として使用するために後で層を締めつける力よりも小さくなければならない。このようにして、形成された肉厚領域は、圧縮されることなく、これらの応力に耐える。
【００３６】
図３は、このような肉厚領域を詳しく示す断面図である。補正する力のもとで、切り込みの縁部と薄片の端部とが広がって変形し、ほぼ斜めの境界面26が形成される。
【００３７】
この図に示す場合の、おおよその寸法を示すとすれば、切り込みと、この切り込みからはみ出る薄片との寸法は、これらの寸法が最大であるとき、約0.5〜５ミリメートルである。
【００３８】
補正工具及び平坦化工具は、異なる補正を行って肉厚領域を様々な高さｈとすることができるように、平面でない輪郭を有することができる。このような高さの変化によって、もはや点ではなく面を配置することができ、面の周囲に圧力領域を配置することができる。
【００３９】
圧力分布は非常に段階的であり、全面でほぼ連続しており、応力点を生じない。
【００４０】
肉厚領域の密度、寸法、高さ、及び表面において位置を特定することによって、圧力分布を非常にきめ細かく調整することができる。
【００４１】
図４から確認できるように、切り込みの形、すなわち切り込みからはみ出る薄片の形状を、長い曲線（図４Ａ）、短い曲線（図４Ｂ）、細長い曲線（図４Ｃ）、略矩形の曲線（図４Ｄ）、略三角形の曲線（図４Ｅ）、円形の曲線（図４Ｆ）とすることができる。
【００４２】
これらの輪郭、形状は、肉厚領域と、肉厚領域で利用可能な空間とに応じて考慮される。
【００４３】
同一の層で輪郭を異なるものにすることも可能である。
【００４４】
各金属層は、同一ラインで連続して、本方法の様々なステップを経て形成される。このようにして形成されたガスケットを利用して、本発明の方法により得られる少なくとも１つの肉厚領域を有する少なくとも１個の層を備えたガスケットは、いったん適切な工具を製造、準備すると、簡単でありながら完全に再現可能な再生産が可能であり続ける。何故ならば、各種パラメータを変化させうる他の外部介入が全くないからである。
【００４５】
このような方法は、単層のメタルシリンダヘッドガスケットの場合と、多層ガスケットの中間層に対して、特に適用可能である。
【００４６】
本発明の変形実施形態によれば、型打ちによる伸ばし又は伸張と同時に、たとえば薄片の端に少なくとも１つのリブを形成することができる。
【００４７】
このような実施形態によって、また、一定の肉厚領域を形成することができ、実施形態を増やすことができ、特に層の材料が、単層ガスケットを構成するステンレス鋼のように可鍛性に乏しい場合、もっと複雑性が高いことなど様々な問題に対処することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【００４８】
【図１】メタルシールガスケットの１つの層を示す図である。
【図２】図２Ａ、２Ｂ及び２Ｃは、本発明による肉厚領域の製造ステップを示す概略図であり、図１に示すようなシールガスケットに対して適用可能である。
【図３】形成された肉厚領域の細部を示す断面の拡大図である。
【図４】図４Ａ〜４Ｆは、本発明による肉厚領域を形成するための切り込みの様々な輪郭を示す図である。
【符号の説明】
【００４９】
１０ 層
１２ 開口部
１４ 穴
１６ 穴
１８ 通路
２０ 切り込み
２２ 薄片
【特許請求の範囲】
【請求項１】
少なくとも１つの肉厚領域を含む金属層（10）の製造方法であって、
少なくとも１つの薄片（22）を得るために前記金属層（10）に少なくとも１つの切り込み（20）を形成し、
当該薄片が前記切り込みと重なるように、前記少なくとも１つの薄片（22）を折って伸ばして変形し、
所定の高さｈの肉厚領域（24）が得られるように、前記切り込みと重なる前記少なくとも１つの薄片（22）の突出高さを平坦化して補正することを特徴とする方法。
【請求項２】
前記薄片（22）のそれぞれの伸張部分が、当該薄片の自由端に形成されていることを特徴とする請求項１に記載の方法。
【請求項３】
前記薄片（22）に少なくとも１つのリブを形成することを含むことを特徴とする請求項１又は２に記載の方法。
【請求項４】
前記薄片（22）を複数形成し、様々な高さの肉厚領域（24）が配置されるように異なる平坦化及び補正を行うことを特徴とする請求項１〜３のいずれか１項に記載の方法。
【請求項５】
前記重なる部分に面する境界面が斜めになるように平坦化及び補正を行うことを特徴とする請求項１〜４のいずれか１項に記載の方法。
【請求項６】
請求項１〜５のいずれか１項に記載の方法により製造される少なくとも１つの肉厚領域を備えている金属層を含み、
前記少なくとも１つの肉厚領域が、前記金属層（10）を切り込むことによって形成される少なくとも１つの薄片（22）を含み、
前記少なくとも１つの薄片（22）が、伸張により変形されて、適切な高さｈの肉厚領域が形成されるように、平坦化及び補正されていることを特徴とする単層又は多層ガスケット。
【請求項７】
前記少なくとも１つの薄片が、長いもしくは短い、又は細長い、又は矩形、又は三角形、又は円形の形状の中から選択された輪郭を有する切り込みにより画定される形状を有することを特徴とする請求項６に記載のガスケット。
【請求項８】
同じ形状で様々な高さの複数の肉厚領域を含むことを特徴とする請求項６又は７に記載のガスケット。
【請求項９】
様々な形状で同じ高さの複数の肉厚領域を含むことを特徴とする請求項６又は７に記載のガスケット。
【請求項１０】
前記少なくとも１つの薄片（22）が、少なくとも１つのリブを含むことを特徴とする請求項６〜９のいずれか１項に記載のガスケット。
【請求項１】
少なくとも１つの肉厚領域を含む金属層（10）の製造方法であって、
少なくとも１つの薄片（22）を得るために前記金属層（10）に少なくとも１つの切り込み（20）を形成し、
当該薄片が前記切り込みと重なるように、前記少なくとも１つの薄片（22）を折って伸ばして変形し、
所定の高さｈの肉厚領域（24）が得られるように、前記切り込みと重なる前記少なくとも１つの薄片（22）の突出高さを平坦化して補正することを特徴とする方法。
【請求項２】
前記薄片（22）のそれぞれの伸張部分が、当該薄片の自由端に形成されていることを特徴とする請求項１に記載の方法。
【請求項３】
前記薄片（22）に少なくとも１つのリブを形成することを含むことを特徴とする請求項１又は２に記載の方法。
【請求項４】
前記薄片（22）を複数形成し、様々な高さの肉厚領域（24）が配置されるように異なる平坦化及び補正を行うことを特徴とする請求項１〜３のいずれか１項に記載の方法。
【請求項５】
前記重なる部分に面する境界面が斜めになるように平坦化及び補正を行うことを特徴とする請求項１〜４のいずれか１項に記載の方法。
【請求項６】
請求項１〜５のいずれか１項に記載の方法により製造される少なくとも１つの肉厚領域を備えている金属層を含み、
前記少なくとも１つの肉厚領域が、前記金属層（10）を切り込むことによって形成される少なくとも１つの薄片（22）を含み、
前記少なくとも１つの薄片（22）が、伸張により変形されて、適切な高さｈの肉厚領域が形成されるように、平坦化及び補正されていることを特徴とする単層又は多層ガスケット。
【請求項７】
前記少なくとも１つの薄片が、長いもしくは短い、又は細長い、又は矩形、又は三角形、又は円形の形状の中から選択された輪郭を有する切り込みにより画定される形状を有することを特徴とする請求項６に記載のガスケット。
【請求項８】
同じ形状で様々な高さの複数の肉厚領域を含むことを特徴とする請求項６又は７に記載のガスケット。
【請求項９】
様々な形状で同じ高さの複数の肉厚領域を含むことを特徴とする請求項６又は７に記載のガスケット。
【請求項１０】
前記少なくとも１つの薄片（22）が、少なくとも１つのリブを含むことを特徴とする請求項６〜９のいずれか１項に記載のガスケット。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２００６−９０５４７（Ｐ２００６−９０５４７Ａ）
【公開日】平成１８年４月６日（２００６．４．６）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−２７４３９９（Ｐ２００５−２７４３９９）
【出願日】平成１７年９月２１日（２００５．９．２１）
【出願人】（５０１４７９８６８）カール・フロイデンベルク・カーゲー (73)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１８年４月６日（２００６．４．６）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年９月２１日（２００５．９．２１）
【出願人】（５０１４７９８６８）カール・フロイデンベルク・カーゲー (73)
【Ｆターム（参考）】
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