説明

メタルハライドランプ

【課題】300nm〜330nmの波長の光を照射できるメタルハライドランプを提供する。
【解決手段】メタルハライドランプ10と、希ガス1と、気密容器2と、電極3、4と、リード線5と、を備える。少なくとも水銀とヨウ化タリウムが封入されているメタルハライドランプにおいて、放電管の内径DがD≦30mm程度で、かつ単位長さ当たりの入力(W/cm)が60W/cm以上、また、安定点灯時の電位傾度D(V/cm)が、9<D<30で点灯するとき、インジウム、マンガン、ビスマスのそれぞれの封入量M(mg/cc)がM≧0.01mg/ccとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射装置に適用するメタルハライドランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術によるメタルハライドランプにおいて、ビスマスの封入量をタリウムに対して特定の範囲内にすることにより、鉄のスペクトルを引き出し、ランプの軸方向において均一で安定した紫外線出力を得ることが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−275234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来のメタルハライドランプにおいては、照射可能な光の波長は340nm〜400nm付近であり、他の波長で照射することはできなかった。
【0004】
本発明の目的は、上記に鑑みてなされたものであり、300nm〜330nmの波長の光を照射できるメタルハライドランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るメタルハライドランプは、紫外線透過特性を有する管状の気密容器内に封入した希ガス内に放電して300〜330nmの波長で発光するメタルハライドランプにおいて、すくなくとも水銀、ヨウ化水銀、インジウム、マンガン、ビスマス、コバルト、亜鉛、のうちのいずれかが前記気密容器内に封入され、前記水銀と前記ヨウ化水銀を除く前記金属の前記封入量MがM≧0.01mg/ccである。
【0006】
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1において、前記気密容器は、内径DがD≦30mmであって単位長さ当たりの入力が60W/cm以上であり安定点灯時の電位傾度Dが9V/cm<D<30V/cmである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、300nm〜330nmの波長の光を照射できるメタルハライドランプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1には、本発明のメタルハライドランプの実施の形態に係る構成図を示す。この図1には、メタルハライドランプ10と、希ガス1と、気密容器2と、電極3、4と、リード線5と、が示されている。
【0009】
紫外線透過性の石英からなる一重管の気密容器2にタングステンからなる一対の電極3、4を用いており、その気密容器2の内部空間に希ガス1としてたとえばアルゴンガスが封入されている。
【0010】
こうした構成のメタルハライドランプ10において、少なくとも水銀とヨウ化タリウムが封入されているメタルハライドランプにおいて、放電管の内径DがD≦30mm程度で、かつ単位長さ当たりの入力(W/cm)が60W/cm以上、また、安定点灯時の電位傾度D(V/cm)が、9<D<30で点灯するとき、インジウム、マンガン、ビスマスのそれぞれの封入量M(mg/cc)がM≧0.01mg/ccであることを特徴とする。
【0011】
具体的には、メタルハライドランプ10を、たとえば外管径φ27.5mm、肉厚1.5mm、発光長1000mmとして構成して、このメタルハライドランプ10のランプ電圧を1275Vとし、ランプ電流値を13.5Aとし、インジウム、マンガン、ビスマスのそれぞれの封入量を0.02mg/cc封入する。これにより波長が300nm〜330nmの発光を実現でき、かつメタルハライドランプ10の長手軸方向に分光や照度の偏差(分離発光)が発生しないメタルハライドランプを実現することができる。
【0012】
また、メタルハライドランプ10の気密容器2の内部空間に封入する物質について、それぞれの物質の発光時における波長について図2〜図6を参照して説明する。これらの図2〜図6において、縦軸には輝度(Intensity)を%で表示し、横軸には光の波長(nm)を示している。
【0013】
まず、図2にはコバルト(Co)をメタルハライドランプ10の内部空間に封入した場合において、その発光時における波長分布を示している。コバルトの場合は約300nm〜330nm付近において波長のピークが存在し、この波長での発光が確認できる。
【0014】
次に、図3にはインジウム(In)をメタルハライドランプ10の内部空間に封入した場合において、その発光時における波長分布を示している。インジウムの場合にもコバルトと同様に約300nm〜330nmの範囲の波長にピークが出現している。
【0015】
次に、図4に、ビスマス(Bi)をメタルハライドランプ10の内部空間に封入した場合において、その発光時における波長分布を示している。ビスマスの場合にもコバルトやイリジウムと同様に約300nm〜330nmの範囲の波長にピークを有している。
【0016】
次に、図5に、メタルハライドランプ10の内部空間に封入した場合において、その発光時における波長分布を示している。亜鉛の場合も約300nm〜330nmの範囲の波長にピークを有している。
【0017】
そして、図6にはをメタルハライドランプ10の内部空間に封入した場合において、その発光時における波長分布を示している。マンガンの場合には約270nm〜330nmの波長範囲でピークを有している。
【0018】
なお、コバルト(Co)、インジウム(In)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)のそれぞれの発光時における波長特性を示したが、他にチタン(Ti)、アンチモン(Sb)、シリコン(Si)の発光時においても、300nm〜330nmの波長にピークを有する可能性がある。
【0019】
次に、従来の鉄メタルハライドランプと本発明のメタルハライドランプを、それぞれの発光時における波長分布で比較したグラフを図7〜図9に示す。
【0020】
まず、図7には従来の鉄(Fe)を封入したメタルハライドランプによる発光時の波長分布特性と、すでに図2と図3にてそれぞれ示したコバルト(Co)とインジウム(In)の波長の分布特性を重ね合わせて示している。図中の太幅実線が鉄(Fe)であり、中幅実線がコバルト(Co)を示し、細幅実線がインジウム(In)を示している。
【0021】
この図7にて鉄による波長のピークは約360nm〜370nmの範囲に存在している。これに対し、コバルトとインジウムは共に300nm〜330nmの範囲の波長で発光していることがわかる。同様に図8においては、鉄に比べてビスマスと亜鉛は共に300nm〜330nmの範囲で発光の波長にピークを示している。そして、図9においては、鉄に比してマンガンが300nm〜330nmの範囲内で発光の波長のピークを示している。
【0022】
このように、本発明のメタルハライドランプにおいてインジウム、マンガン、ビスマス、亜鉛、コバルトのいずれかを組み合わせて選択し封入した場合において、それぞれの場合の各物質の封入量を0.01mg/cc以上とすることで、長手方向に発生しやすい分離発光を抑制できるとともに300〜330nmの発光を効率よく放射することができる。
【0023】
そして、好ましくは水銀量との比率によるが、これら物質の封入量の総計は0.1mg/cc以下が所望である。なお、メタルハライドランプにインジウム、マンガン、ビスマスをそれぞれ0.3mg/cc以上封入した場合は、水銀とインジウム、マンガン、ビスマスのそれぞれの拡散効率低下により、発光分離が発生する。これにより長手方向で発光分離を起こし、ランプ性能を満足することができないが、0.1mg/cc以下の封入量を総計として封入することで、メタルハライドランプの発光特性が安定して300nm〜330nmの波長の発光を得られるので、たとえば従来の波長では適さなかった機能性フィルムの製造工程におけるランプ照射に適用することができる。
【0024】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、300nm〜330nmの波長の光を照射できるメタルハライドランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のメタルハライドランプの実施の形態に係る構成図を示す。
【図2】本発明のメタルハライドランプの実施の形態に係るコバルトの発光波長分布を説明するためのグラフを示す。
【図3】本発明のメタルハライドランプの実施の形態に係るインジウムの発光波長分布を説明するためのグラフを示す。
【図4】本発明のメタルハライドランプの実施の形態に係るビスマスの発光波長分布を説明するためのグラフを示す。
【図5】本発明のメタルハライドランプの実施の形態に係る亜鉛の発光波長分布を説明するためのグラフを示す。
【図6】本発明のメタルハライドランプの実施の形態に係るマンガンの発光波長分布を説明するためのグラフを示す。
【図7】本発明のメタルハライドランプの実施の形態に係る鉄、コバルト、インジウムの発光波長分布を比較するためのグラフを示す。
【図8】本発明のメタルハライドランプの実施の形態に係る鉄、マンガンの発光波長分布を比較するためのグラフを示す。
【図9】本発明のメタルハライドランプの実施の形態に係る鉄、マンガンの発光波長分布を比較するためのグラフを示す。
【符号の説明】
【0026】
1…希ガス
2…気密容器
3、4…電極
5…リード線
10…メタルハライドランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線透過特性を有する管状の気密容器内に封入した希ガス内に放電して300〜330nmの波長で発光するメタルハライドランプにおいて、
すくなくとも水銀、ヨウ化水銀、インジウム、マンガン、ビスマス、コバルト、亜鉛、のうちのいずれかが前記気密容器内に封入され、
前記水銀と前記ヨウ化水銀を除く前記金属の前記封入量MがM≧0.01mg/ccである
ことを特徴とするメタルハライドランプ。
【請求項2】
前記気密容器は、
内径DがD≦30mmであって単位長さ当たりの入力が60W/cm以上であり安定点灯時の電位傾度Dが9V/cm<D<30V/cmであること
を特徴とする請求項1に記載のメタルハライドランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−64725(P2009−64725A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−233034(P2007−233034)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】