メタルマスク版及びメタルマスク版の製造方法
【課題】被印刷面との密着性が良好なメタルマスク版を提供する。
【解決手段】メタルマスク版230は、金属板232の印刷面側に乳剤層234を付加した構造を有している。金属板232の透過領域288,290には、それぞれ、粘性物質を透過する開口236,238が形成され、乳剤層234の透過領域288,290にも、それぞれ、粘性物質を透過する開口240,242が形成されている。開口240の位置や平面形状は、開口236と同一であり、開口242の位置や平面形状は、開口238と同一である。乳剤層234は、金属板232よりも柔らかい材質で構成されている。
【解決手段】メタルマスク版230は、金属板232の印刷面側に乳剤層234を付加した構造を有している。金属板232の透過領域288,290には、それぞれ、粘性物質を透過する開口236,238が形成され、乳剤層234の透過領域288,290にも、それぞれ、粘性物質を透過する開口240,242が形成されている。開口240の位置や平面形状は、開口236と同一であり、開口242の位置や平面形状は、開口238と同一である。乳剤層234は、金属板232よりも柔らかい材質で構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被印刷面との密着性が良好なメタルマスク版及び当該メタルマスク版の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図36は、従来のメタルマスク版902の模式図である。図36は、メタルマスク版902の断面図となっている。
【0003】
図36に示すように、メタルマスク版902は、粘性物質を透過する開口906を金属板904に形成した構造を有している。メタルマスク版902は、スキージ面側に供給された粘性物質を開口906から印刷面側に透過することにより、開口906と同一の平面形状を有する粘性物質のパターンを被印刷面に印刷する。
【0004】
なお、特許文献1には、本発明と関連する文献公知発明が記載されている。特許文献1の発明では、粘性物質を透過する開口をレーザ加工で板材に形成している。
【0005】
【特許文献1】特開2007−152613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のメタルマスク版では、硬い金属板が被印刷面と接触するので、メタルマスク版と被印刷面との密着性が良好でなく、粘性物質のパターンがにじみやすいという問題があった。
【0007】
本発明は、この問題を解決するためになされたもので、被印刷面との密着性が良好なメタルマスク版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、スキージ面側に供給された粘性物質を印刷面側に透過し被印刷面に粘性物質のパターンを印刷するメタルマスク版であって、粘性物質を透過する開口が形成された金属板と、前記金属板の印刷面側に付加され粘性物質を透過する開口が形成された、前記金属板より柔らかい層と、を備える。
【0009】
請求項2の発明は、スキージ面側に供給された粘性物質を印刷面側に透過し被印刷面に粘性物質のパターンを印刷するメタルマスク版の製造方法であって、(a) 粘性物質を透過する開口が形成された金属板の印刷面側に前記金属板より柔らかい膜を付加する工程と、(b) 前記工程(a)の後に、前記金属板のスキージ面側からレーザ光を照射し、前記膜のうち粘性物質を透過する透過領域に付加された部分を前記金属板を遮蔽物としてレーザ光で除去する工程と、を備える。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載のメタルマスク版の製造方法において、前記工程(b)は、前記金属板を除去せず前記膜を選択的に除去するレーザ光を照射する。
【0011】
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3に記載のメタルマスク版の製造方法において、前記工程(a)は、流動性を有さない前記膜を前記金属板の印刷面側に貼り付ける。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、金属板が被印刷面と接触せず、金属板より柔らかい層が被印刷面と接触するので、メタルマスク版と被印刷面とを密着させることができ、粘性物質のパターンのにじみを抑制することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、金属板に形成された開口の位置と膜に形成された開口の位置とのずれを防ぐことができるので、メタルマスク版の寸法精度を向上することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、金属板を損傷することを防止することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、開口が埋まってしまうことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<1 第1実施形態>
<1−1 圧電/電歪素子1の全体構造>
図1は、本発明の第1実施形態に係る圧電/電歪素子1の模式図である。図1は、圧電/電歪素子1の断面図となっている。圧電/電歪素子1は、インクジェットプリンタのヘッドに採用されるアクチュエータである。
【0017】
図1に示すように、圧電/電歪素子1は、基体102の薄肉部104の上に、電極膜110、圧電/電歪体膜112、電極膜114、圧電/電歪体膜116及び電極膜118をこの順序で積層した積層構造を有している。
【0018】
なお、図1は、基体102の上に形成された、電極膜110、圧電/電歪体膜112、電極膜114、圧電/電歪体膜116及び電極膜118を積層した積層体108が1層の電極膜114を内部に含む場合を示しているが、積層体108が2層以上の電極膜を内部に含む場合や積層体108が電極膜を内部に含まない場合にも本発明を適用することができる。また、図1は、基体102の上に積層体108を直接的に形成する場合を示しているが、不活性層を介して基体102の上に積層体108を間接的に形成してもよい。さらに、複数の圧電/電歪素子1を一定間隔をおいて規則的に配列して一体化することもできる。
【0019】
<1−2 屈曲振動領域182>
圧電/電歪素子1では、外部電極となる電極膜110,118と内部電極となる電極膜114との間に駆動信号を印加することにより、圧電/電歪体膜112,116に電界を印加し、薄肉部104及び積層体108を屈曲振動させる。以下では、この屈曲振動が励振される領域182を「屈曲振動領域」という。
【0020】
薄肉部104の平面形状、すなわち、屈曲振動領域182の平面形状は細長の矩形となっている。もちろん、屈曲振動領域182の平面形状は矩形に限られるわけではなく、楕円形、六角形その他の形状であってもよい。
【0021】
<1−3 基体102>
基体102は、積層体108を支持する。基体102は、セラミック粉末のシート状成形体を積層したものを焼成したセラミック焼成体である。
【0022】
基体102は、絶縁材料で構成される。絶縁材料としては、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化イッテルビウム(Yb2O3)、酸化セリウム(Ce2O3)その他の安定化剤を添加した酸化ジルコニウム(ZrO2)、すなわち、安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニアを採用することが望ましい。
【0023】
基体102は、中央の薄肉部104を周縁の厚肉部106で囲んで支持したキャビティ構造を有している。キャビティ構造を採用し、板厚が薄い薄肉部104を板厚が厚い厚肉部106で支持するようにすれば、基体102の機械的強度を保ちつつ、薄肉部104の板厚を薄くすることができるので、薄肉部104の剛性を低下させることができ、圧電/
電歪素子1の変位量を増加させることができる。薄肉部104の板厚は、1μm以上15μm以下であることが望ましい。この範囲を下回ると薄肉部104が損傷しやすくなるからである。また、この範囲を上回ると圧電/電歪素子1の変位量が減少する傾向にあるからである。
【0024】
<1−4 圧電/電歪体膜112,116>
圧電/電歪体膜112,116は、セラミック粉末の膜状成形体を焼成したセラミック焼成体である。
【0025】
圧電/電歪体膜112,116は、圧電/電歪材料で構成される。圧電/電歪材料としては、鉛(Pb)系ペロブスカイト酸化物を採用することが望ましい。中でも、ジルコン酸チタン酸鉛(Pb(ZrxTi1-x)O3 )又はジルコン酸チタン酸鉛とニッケルニオブ酸鉛(Pb(Ni1/3Nb2/3)O3)、マグネシウムニオブ酸鉛(Pb(Mg1/3Nb2/3)O3)その他の鉛系複合ペロブスカイト酸化物との固溶体を主成分とするものを採用することが望ましい。
【0026】
圧電/電歪体膜112,116の平面形状は、細長の矩形となっている。また、圧電/電歪体膜112,116は、中央部から電極膜110,114,118の端部に向かって膜厚が厚くなってゆき、電極膜110,114,118の端部から圧電/電歪体膜112,116の端部に向かって膜厚が薄くなってゆく膜厚分布を有している。このような膜厚分布を採用すれば、電極膜110,114,118の端部において圧電/電歪体膜112,116の膜厚が厚くなるので、絶縁破壊を防ぐことができるとともに、屈曲1次モードの腹において圧電/電歪体膜112,116の膜厚が薄くなり圧電/電歪体膜112,116の剛性が低下するので、圧電/電歪素子1の変位量を増加させることができる。
【0027】
<1−5 電極膜110,114,118>
電極膜110,114,118は、導電材料で構成される。電極膜110,114を構成する導電材料としては、白金(Pt)若しくはパラジウム(Pd)又はこれらを主成分とする合金を採用することが望ましい。ただし、圧電/電歪体膜112,116との共焼成が可能であれば、他の導電材料で電極膜110,114を構成してもよい。電極膜118を構成する導電材料としては、金(Au)又はこれを主成分とする合金を採用することが望ましい。
【0028】
電極膜110と電極膜114とは、圧電/電歪体膜112を挟んで対向し、電極膜114と電極膜118とは、圧電/電歪体膜116を挟んで対向している。また、電極膜110と電極膜118とは、電気的に接続されている。これにより、外部電極となる電極膜110,118と内部電極となる電極膜114との間に駆動信号を印加すると、圧電/電歪体膜112,116を伸縮させ、屈曲振動領域182を屈曲振動させることができる。
【0029】
<1−6 圧電/電歪素子1の製造方法>
図2は、圧電/電歪素子1の製造方法を説明するフローチャートである。
【0030】
図2に示すように、圧電/電歪素子1の製造にあたっては、まず、基体102を作製する(ステップS101)。
【0031】
続いて、基体102の薄肉部104の上に積層体108を形成する(ステップS102〜S109)。
【0032】
積層体108の形成にあたっては、まず、導電体ペーストを薄肉部104の上面にスクリーン印刷法で塗布し(ステップS102)、得られた塗布膜を基体102と一体的に焼成する(ステップS103)。これにより、基体102と一体化された電極膜110を形成することができる。
【0033】
続いて、圧電/電歪体ペースト、導電体ペースト及び圧電/電歪体ペーストを電極膜110の上面にスクリーン印刷法で順次塗布し(ステップS104〜S106)、得られた塗布膜を基体102及び電極膜110と一体的に焼成する(ステップS107)。これにより、基体102及び電極膜110と一体化された圧電/電歪体膜112、電極膜114及び圧電/電歪体膜116を形成することができる。
【0034】
その後、導電体ペーストを圧電/電歪体膜116の上面にスクリーン印刷法で塗布し(ステップS108)、得られた塗布膜を基体102、電極膜110、圧電/電歪体膜112、電極膜114及び圧電/電歪体膜116と一体的に焼成する(ステップS109)。これにより、基体102、電極膜110、圧電/電歪体膜112、電極膜114及び圧電/電歪体膜116と一体化された電極膜118を形成することができる。
【0035】
最後に、電極膜110,118と電極膜114との間に電圧を印加して分極処理を行うことにより(ステップS110)、圧電/電歪素子1を得ることができる。
【0036】
ここで、導電体ペーストは、導電材料の粉末、有機溶剤、分散剤及びバインダを混練して調製した流動性のある粘性物質である。また、圧電/電歪体ペーストは、圧電/電歪材料の粉末、有機溶剤、分散剤及びバインダを混練して調製した流動性のある粘性物質である。圧電/電歪材料の粉末は、圧電/電歪材料の構成元素の素原料の粉末の混合物を仮焼して粉砕することにより得た仮焼原料の粉末である。
【0037】
<1−7 圧電/電歪体膜112の形成方法>
図3〜図5は、圧電/電歪体膜112の形成方法を説明する模式図である。図3〜図5は、形成の途上の圧電/電歪体膜112の断面図となっている。なお、圧電/電歪体膜116は、圧電/電歪体膜112と同様の形成方法で形成することができる。
【0038】
圧電/電歪体膜112の形成にあたっては、まず、図3に示すように、電極膜110の上面に圧電/電歪体ペーストの塗布膜202を形成する。塗布膜202は、圧電/電歪体ペーストをスクリーン印刷することにより形成する。このとき、スクリーン印刷を1回だけ行ってもよいし、スクリーン印刷を2回以上繰り返してもよい。
【0039】
続いて、図4に示すように、塗布膜202の略平坦な上面にさらに圧電/電歪体ペーストの塗布膜204を形成する。塗布膜204は、塗布膜202の端部に沿って形成される。塗布膜204も、圧電/電歪体ペーストをスクリーン印刷することにより形成する。このとき、スクリーン印刷を1回だけ行ってもよいし、スクリーン印刷を2回以上繰り返してもよい。
【0040】
このようにして重ねて形成された塗布膜202,204を焼成すると、図5に示すように、塗布膜202と塗布膜204とが一体化し、先述の膜厚分布を有する圧電/電歪体膜112を形成することができる。
【0041】
<1−8 メタルマスク版210,230の構造>
図6〜図8は、塗布膜202の形成に使用するメタルマスク版210の模式図である。図6は、メタルマスク版210の平面図、図7は、図6のA−Aに沿うメタルマスク版210の断面図、図8は、図6のB−Bに沿うメタルマスク版210の断面図となっている。
【0042】
図6〜図8に示すように、メタルマスク版210は、金属板212の印刷面側に乳剤層214を付加した構造を有している。金属板212の透過領域282には、粘性物質を透過する開口216が形成され、乳剤層214の透過領域282にも、粘性物質を透過する開口218が形成されている。開口218の位置や平面形状は、開口216と同一である。したがって、メタルマスク版210のスキージ面に圧電/電歪体ペーストを供給しスキージ面に圧力を加えながらスキージを走行させると、スキージ面側に供給された圧電/電歪体ペーストを開口216,218から印刷面側に透過し開口216,218と同一の平面形状を有する圧電/電歪体ペーストのパターンを印刷面側にある被印刷面に印刷することができる。
【0043】
乳剤層214は、粘性物質を透過しない非透過領域284に付加されている。このため、メタルマスク版210を使用して塗布膜202をスクリーン印刷すると、金属板212は被印刷面と接触せず、金属板212より柔らかい乳剤層214が被印刷面と接触するので、メタルマスク版210と被印刷面とを密着させることができ、圧電/電歪体ペーストのパターンのにじみを抑制することができる。
【0044】
図9〜図11は、塗布膜204の形成に使用するメタルマスク版230の模式図である。図9は、メタルマスク版230の平面図、図10は、図9のC−Cに沿うメタルマスク版230の断面図、図11は、図9のD−Dに沿うメタルマスク版230の断面図となっている。
【0045】
図9〜図11に示すように、メタルマスク版230は、金属板232の印刷面側に乳剤層234を付加した構造を有している。金属板232の透過領域288,290には、それぞれ、粘性物質を透過する開口236,238が形成され、乳剤層234の透過領域288,290にも、それぞれ、粘性物質を透過する開口240,242が形成されている。開口240の位置や平面形状は、開口236と同一であり、開口242の位置や平面形状は、開口238と同一である。したがって、メタルマスク版230のスキージ面に圧電/電歪体ペーストを供給しスキージ面に圧力を加えながらスキージを走行させると、スキージ面側に供給された圧電/電歪体ペーストを開口236,240及び開口238,242から印刷面側に透過し開口236,240及び開口238,242と同一の平面形状を有する圧電/電歪体ペーストのパターンを印刷面側にある被印刷面に印刷することができる。
【0046】
乳剤層234は、粘性物質を透過しない非透過領域286に付加されている。このため、メタルマスク版230を使用して塗布膜204をスクリーン印刷すると、金属板232は被印刷面と接触せず、金属板232より柔らかい乳剤層234が被印刷面と接触するので、メタルマスク版230と被印刷面とを密着させることができ、圧電/電歪体ペーストのパターンのにじみを抑制することができる。
【0047】
金属板212,232は、ステンレスの板である。ただし、このことは、ステンレス以外の材質を採用することを妨げるものではない。例えば、ニッケルの板を採用することができる。
【0048】
また、乳剤層214,234は、乳剤(エマルジョン)の膜である。ただし、このことは、乳剤以外の材質を採用することを妨げるものでない。すなわち、乳剤層214,138が金属板212,136よりも柔らかい材質、例えば、樹脂で構成されていれば、被印刷面との密着性を向上するクッションの役割を果たすことができる。
【0049】
<1−9 メタルマスク版230の製造方法(製版方法)>
図12〜図16は、メタルマスク版230の製造方法を説明する模式図である。図12〜図16は、製造の途上のメタルマスク版230の断面図となっている。なお、メタルマスク版210は、メタルマスク版230と同様の製造方法により製造することができる。
【0050】
メタルマスク版230の製造にあたっては、まず、ステンレスの板材252にエキシマレーザ光254を照射して(図12)、板材252の透過領域288,290にスキージ面側と印刷面側とを貫通する開口236,238を形成し、金属板232を得る(図13)。このようにエキシマレーザ加工により開口236,238を形成することには、開口236,238の位置や平面形状の精度を向上することができるという利点があるが、このことは、エッチング加工により開口236,238を形成することを妨げるものではない。また、電鋳等のアディティブ法により開口236,238が形成された金属板232を作製してもよい。
【0051】
続いて、金属板232の印刷面側に膜厚が略均一で金属板232より柔らかい乳剤膜256を貼り付けることにより、金属板232の印刷面側に金属板232の印刷面側を覆う乳剤膜256を付加する(図14)。このように、流動性を有さない乳剤膜256を貼り付けることにより乳剤膜256を付加することには、開口236,238に流動性を有する乳剤が流れ込んで開口236,238が埋まってしまうことを防止することができるという利点がある。ただし、このことは、流動性を有する乳剤を塗布してから流動性を失わせることにより乳剤膜256を形成することを妨げるものではない。
【0052】
さらに続いて、金属板232のスキージ面側からエキシマレーザ光258を照射し(図15)、乳剤膜256のうち透過領域288,290に形成された部分を金属板232を遮蔽物としてエキシマレーザ光258で除去し、開口240,242を形成する(図16)。このエキシマレーザ加工においては、金属板232を除去せず乳剤膜256を選択的に除去することができる強度のエキシマレーザ光を照射する。すなわち、このエキシマレーザ加工では、金属板232よりも乳剤膜256の方がエキシマレーザ光258で除去されやすいという性質を利用して、金属板232を遮蔽物として用い、金属板232に形成されている開口236,238の平面形状を乳剤膜256に転写する。なお、レーザ光としてエキシマレーザ光258を使用することは必須でなはく、炭酸ガスレーザ光、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザ光その他のレーザ光を使用してもよい。
【0053】
このような工程を経ることにより、除去されずに残った乳剤膜260が乳剤層234となり、図9〜図11に示すメタルマスク版230を得ることができる。
【0054】
このようなメタルマスク版230の製造方法によれば、金属板232に形成された開口236,238の位置と乳剤層234に形成された開口240,242の位置とのずれを防ぐことができるので、メタルマスク版230の寸法精度を向上することができる。すなわち、金属板232及び乳剤層234をフォトリソグラフィ等を利用して別々にパターニングした場合は、金属板232及び乳剤層234のパターニングの位置のずれに起因してメタルマスク版230の寸法精度が低下するが、このような製造方法によれば、メタルマスク版230の寸法精度を向上することができる。
【0055】
<2 第2実施形態>
第2実施形態は、第1実施形態に係る圧電/電歪体膜112の形成方法に代わる圧電/電歪体膜112の形成方法及び圧電/電歪体膜112の形成に使用するメタルマスク版330に関する。
【0056】
<2−1 圧電/電歪体膜112の形成方法>
図17〜図19は、圧電/電歪体膜112の形成方法を説明する模式図である。図17〜図19は、形成の途上の圧電/電歪体膜112の断面図となっている。
【0057】
圧電/電歪体膜112の形成にあたっては、まず、図17に示すように、電極膜110の上面に圧電/電歪体ペーストの塗布膜302を形成する。塗布膜302は、圧電/電歪体ペーストをスクリーン印刷することにより形成する。このとき、スクリーン印刷を1回だけ行ってもよいし、スクリーン印刷を2回以上繰り返してもよい。
【0058】
続いて、図18に示すように、塗布膜302の上面にさらに圧電/電歪体ペーストの塗布膜304を形成する。塗布膜304は、塗布膜302の端部に沿って形成される。塗布膜304も、圧電/電歪体ペーストをスクリーン印刷することにより形成する。このとき、スクリーン印刷を1回だけ行ってもよいし、スクリーン印刷を2回以上繰り返してもよい。
【0059】
このようにして重ねて形成された塗布膜302,304を焼成すると、図19に示すように、塗布膜302の上面の隆起が陥没するとともに塗布膜302と塗布膜304とが一体化し、先述の膜厚分布を有する圧電/電歪体膜112を形成することができる。
【0060】
なお、塗布膜302の中央部の隆起は、スクリーン印刷の繰り返しの回数その他の理由によって生じうる。
【0061】
<2−2 メタルマスク版330の構造>
図20〜図22は、塗布膜304の形成に使用するメタルマスク版330の模式図である。図20は、メタルマスク版330の平面図、図21は、図20のG−Gに沿うメタルマスク版330の断面図、図22は、図20のH−Hに沿うメタルマスク版330の断面図となっている。なお、塗布膜302は、図6〜図8に示すメタルマスク版210を使用して形成することができる。
【0062】
図20〜図22に示すように、メタルマスク版330は、金属板332の印刷面側に乳剤層334を付加した構造を有している。金属板332の透過領域388,390には、それぞれ、粘性物質を透過する開口336,338が形成され、乳剤層334の透過領域388,390及び非透過領域386にも、粘性物質を透過する開口340が形成されている。したがって、メタルマスク版330のスキージ面に圧電/電歪体ペーストを供給しスキージ面に圧力を加えながらスキージを走行させると、スキージ面側に供給された圧電/電歪体ペーストを開口336,340及び開口338,340から印刷面側に透過し開口336及び開口338と同一の平面形状を有する圧電/電歪体ペーストのパターンを印刷面側にある被印刷面に印刷することができる。
【0063】
金属板332の板厚は、枠形の平面形状を有する金属板344と、矩形の平面形状を有する金属板346とで異なっており、被印刷面が隆起している中央部と対向する金属板346の板厚は、被印刷面が隆起していない非中央部に対向する金属板344よりも薄くなっている。このように被印刷面の凹凸に応じて層厚が変化する金属板332を備えるメタルマスク版330を使用することにより、メタルマスク版330と被印刷面との間の隙間に圧電/電歪体ペーストが流れ出すことを抑制することができるので、圧電/電歪体ペーストのパターンのにじみを抑制することができる。
【0064】
乳剤層334は、粘性物質を透過しない非透過領域386,387の一部を占める非透過領域387に形成されている。このため、メタルマスク版330を使用して塗布膜304をスクリーン印刷すると、金属板344は被印刷面と接触せず、金属板344より柔らかい乳剤層334が被印刷面と接触するので、メタルマスク版330と被印刷面とを密着させることができ、圧電/電歪体ペーストのパターンのにじみをさらに抑制することができる。
【0065】
金属板332は、ステンレスの板である。ただし、このことは、ステンレス以外の材質を採用することを妨げるものではない。例えば、ニッケルの板を採用することができる。
【0066】
また、乳剤層334は、乳剤の膜である。ただし、このことは、乳剤以外の材質を採用することを妨げるものでない。すなわち、乳剤層334が金属板332よりも柔らかい材質、例えば、樹脂で構成されていれば、被印刷面との密着性を向上するクッションの役割を果たすことができる。
【0067】
<2−3 メタルマスク版330の製造方法(製版方法)>
図23〜図35は、メタルマスク版330の製造方法を説明する模式図である。図23〜図35は、製造の途上のメタルマスク版330の断面図となっている。
【0068】
メタルマスク版330の製造にあたっては、まず、ステンレスの板材352の印刷面側に感光性のレジスト液を塗布することにより、板材352の印刷面側に板材352の印刷面側を覆うレジスト膜362を形成する(図23)。
【0069】
続いて、透過領域388,390及び非透過領域386を遮蔽するフォトマスク364をレジスト膜362の印刷面側に設置し、フォトマスク364越しにレジスト膜362に光366を照射することにより(図24)、非透過領域387に形成されたレジスト膜368を選択的に露光し、レジスト膜368を硬化させる(図25)。そして、透過領域388,390及び非透過領域386に形成されたレジスト膜370を現像により除去し、板材352の透過領域388,390及び非透過領域386を露出させる(図26)。
【0070】
さらに続いて、除去されなかったレジスト膜368をエッチングマスクとして、板材352の透過領域388,390及び非透過領域386をスキージ面側と印刷面側とが貫通しないようにエッチングし、板材352の板厚を薄くするとともに、マスクの役割を終えたレジスト膜368を除去する(図27)。
【0071】
そして、スキージ面側から板材352にエキシマレーザ光372を照射して(図28)、板材352の透過領域388,390にスキージ面側と印刷面側とを貫通する開口336,338を形成し、金属板332を得る(図29)。
【0072】
次に、金属板332の印刷面側に膜厚が略均一で金属板332より柔らかい感光性の乳剤膜356を貼り付けることにより、金属板332の印刷面側に金属板332の印刷面側を覆う乳剤膜356を付加する(図30)。
【0073】
続いて、非透過領域386を内包する領域392を遮蔽するフォトマスク374を乳剤膜356の印刷面側に設置し、フォトマスク374越しに乳剤膜356に光376を照射することにより(図31)、領域392以外の領域に付加された乳剤膜378を選択的に露光し、乳剤膜378を硬化させる(図32)。
【0074】
さらに続いて、領域392に付加された乳剤膜380を現像により除去する(図33)。このように乳剤膜380を除去するのは、非透過領域386に付加された乳剤膜は、金属板332によって遮蔽され、後述するエキシマレーザ光358で除去することができないため、あらかじめ除去しておく必要があるからである。ここで、フォトマスク374は、非透過領域386を遮蔽するだけでなく、非透過領域386に隣接する透過領域388,390を含む領域392を遮蔽することが望ましい。これにより、フォトマスク374の位置が若干ずれても非透過領域386に形成された乳剤膜を除去することができずに残ってしまうことを防止することができる。
【0075】
そして、金属板332のスキージ面側からエキシマレーザ光358を照射し(図34)、乳剤膜378のうち透過領域388,390に形成された部分を金属板332を遮蔽物としてエキシマレーザ光358で除去し、開口340を形成する(図35)。このエキシマレーザ加工においては、金属板332を除去せず乳剤膜378のみを選択的に除去することができる強度のエキシマレーザ光を照射する。
【0076】
このような工程を経ることにより、除去されずに残った乳剤膜380が乳剤層334となり、図20〜図22に示すメタルマスク版330を得ることができる。
【0077】
<3 その他>
先述の説明では、圧電/電歪体ペーストを塗布する場合に使用するメタルマスク版210,230,330について説明したが、圧電/電歪体ペースト以外の粘性物質、例えば、導電体ペースト等を塗布する場合に使用するメタルマスク版並びにその製造方法も本発明に含まれる。
【0078】
上記の説明は、全ての局面において例示であって、本発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、本発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。特に、第1実施形態及び第2実施形態において説明した技術を組み合わせることは当然に予定されている。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】圧電/電歪素子の断面図である。
【図2】圧電/電歪素子の製造方法を説明するフローチャートである。
【図3】圧電/電歪体膜の形成方法を説明する断面図である。
【図4】圧電/電歪体膜の形成方法を説明する断面図である。
【図5】圧電/電歪体膜の形成方法を説明する断面図である。
【図6】メタルマスク版の平面図である。
【図7】図6のA−Aに沿うメタルマスク版の断面図である。
【図8】図6のB−Bに沿うメタルマスク版の断面図である。
【図9】メタルマスク版の平面図である。
【図10】図9のC−Cに沿うメタルマスク版の断面図である。
【図11】図9のD−Dに沿うメタルマスク版の断面図である。
【図12】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図13】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図14】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図15】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図16】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図17】圧電/電歪体膜の形成方法を説明する断面図である。
【図18】圧電/電歪体膜の形成方法を説明する断面図である。
【図19】圧電/電歪体膜の形成方法を説明する断面図である。
【図20】メタルマスク版の平面図である。
【図21】図20のG−Gに沿うメタルマスク版の断面図である。
【図22】図20のH−Hに沿うメタルマスク版の断面図である。
【図23】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図24】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図25】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図26】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図27】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図28】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図29】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図30】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図31】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図32】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図33】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図34】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図35】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図36】従来のメタルマスク版の断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 圧電/電歪素子
102 基体
112,116 圧電/電歪体膜
110,114,118 電極膜
202,204,302,304 塗布膜
210,230,330 メタルマスク版
212,232,332 金属板
214,234,334 乳剤層
【技術分野】
【0001】
本発明は、被印刷面との密着性が良好なメタルマスク版及び当該メタルマスク版の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図36は、従来のメタルマスク版902の模式図である。図36は、メタルマスク版902の断面図となっている。
【0003】
図36に示すように、メタルマスク版902は、粘性物質を透過する開口906を金属板904に形成した構造を有している。メタルマスク版902は、スキージ面側に供給された粘性物質を開口906から印刷面側に透過することにより、開口906と同一の平面形状を有する粘性物質のパターンを被印刷面に印刷する。
【0004】
なお、特許文献1には、本発明と関連する文献公知発明が記載されている。特許文献1の発明では、粘性物質を透過する開口をレーザ加工で板材に形成している。
【0005】
【特許文献1】特開2007−152613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のメタルマスク版では、硬い金属板が被印刷面と接触するので、メタルマスク版と被印刷面との密着性が良好でなく、粘性物質のパターンがにじみやすいという問題があった。
【0007】
本発明は、この問題を解決するためになされたもので、被印刷面との密着性が良好なメタルマスク版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、スキージ面側に供給された粘性物質を印刷面側に透過し被印刷面に粘性物質のパターンを印刷するメタルマスク版であって、粘性物質を透過する開口が形成された金属板と、前記金属板の印刷面側に付加され粘性物質を透過する開口が形成された、前記金属板より柔らかい層と、を備える。
【0009】
請求項2の発明は、スキージ面側に供給された粘性物質を印刷面側に透過し被印刷面に粘性物質のパターンを印刷するメタルマスク版の製造方法であって、(a) 粘性物質を透過する開口が形成された金属板の印刷面側に前記金属板より柔らかい膜を付加する工程と、(b) 前記工程(a)の後に、前記金属板のスキージ面側からレーザ光を照射し、前記膜のうち粘性物質を透過する透過領域に付加された部分を前記金属板を遮蔽物としてレーザ光で除去する工程と、を備える。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載のメタルマスク版の製造方法において、前記工程(b)は、前記金属板を除去せず前記膜を選択的に除去するレーザ光を照射する。
【0011】
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3に記載のメタルマスク版の製造方法において、前記工程(a)は、流動性を有さない前記膜を前記金属板の印刷面側に貼り付ける。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、金属板が被印刷面と接触せず、金属板より柔らかい層が被印刷面と接触するので、メタルマスク版と被印刷面とを密着させることができ、粘性物質のパターンのにじみを抑制することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、金属板に形成された開口の位置と膜に形成された開口の位置とのずれを防ぐことができるので、メタルマスク版の寸法精度を向上することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、金属板を損傷することを防止することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、開口が埋まってしまうことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<1 第1実施形態>
<1−1 圧電/電歪素子1の全体構造>
図1は、本発明の第1実施形態に係る圧電/電歪素子1の模式図である。図1は、圧電/電歪素子1の断面図となっている。圧電/電歪素子1は、インクジェットプリンタのヘッドに採用されるアクチュエータである。
【0017】
図1に示すように、圧電/電歪素子1は、基体102の薄肉部104の上に、電極膜110、圧電/電歪体膜112、電極膜114、圧電/電歪体膜116及び電極膜118をこの順序で積層した積層構造を有している。
【0018】
なお、図1は、基体102の上に形成された、電極膜110、圧電/電歪体膜112、電極膜114、圧電/電歪体膜116及び電極膜118を積層した積層体108が1層の電極膜114を内部に含む場合を示しているが、積層体108が2層以上の電極膜を内部に含む場合や積層体108が電極膜を内部に含まない場合にも本発明を適用することができる。また、図1は、基体102の上に積層体108を直接的に形成する場合を示しているが、不活性層を介して基体102の上に積層体108を間接的に形成してもよい。さらに、複数の圧電/電歪素子1を一定間隔をおいて規則的に配列して一体化することもできる。
【0019】
<1−2 屈曲振動領域182>
圧電/電歪素子1では、外部電極となる電極膜110,118と内部電極となる電極膜114との間に駆動信号を印加することにより、圧電/電歪体膜112,116に電界を印加し、薄肉部104及び積層体108を屈曲振動させる。以下では、この屈曲振動が励振される領域182を「屈曲振動領域」という。
【0020】
薄肉部104の平面形状、すなわち、屈曲振動領域182の平面形状は細長の矩形となっている。もちろん、屈曲振動領域182の平面形状は矩形に限られるわけではなく、楕円形、六角形その他の形状であってもよい。
【0021】
<1−3 基体102>
基体102は、積層体108を支持する。基体102は、セラミック粉末のシート状成形体を積層したものを焼成したセラミック焼成体である。
【0022】
基体102は、絶縁材料で構成される。絶縁材料としては、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化イッテルビウム(Yb2O3)、酸化セリウム(Ce2O3)その他の安定化剤を添加した酸化ジルコニウム(ZrO2)、すなわち、安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニアを採用することが望ましい。
【0023】
基体102は、中央の薄肉部104を周縁の厚肉部106で囲んで支持したキャビティ構造を有している。キャビティ構造を採用し、板厚が薄い薄肉部104を板厚が厚い厚肉部106で支持するようにすれば、基体102の機械的強度を保ちつつ、薄肉部104の板厚を薄くすることができるので、薄肉部104の剛性を低下させることができ、圧電/
電歪素子1の変位量を増加させることができる。薄肉部104の板厚は、1μm以上15μm以下であることが望ましい。この範囲を下回ると薄肉部104が損傷しやすくなるからである。また、この範囲を上回ると圧電/電歪素子1の変位量が減少する傾向にあるからである。
【0024】
<1−4 圧電/電歪体膜112,116>
圧電/電歪体膜112,116は、セラミック粉末の膜状成形体を焼成したセラミック焼成体である。
【0025】
圧電/電歪体膜112,116は、圧電/電歪材料で構成される。圧電/電歪材料としては、鉛(Pb)系ペロブスカイト酸化物を採用することが望ましい。中でも、ジルコン酸チタン酸鉛(Pb(ZrxTi1-x)O3 )又はジルコン酸チタン酸鉛とニッケルニオブ酸鉛(Pb(Ni1/3Nb2/3)O3)、マグネシウムニオブ酸鉛(Pb(Mg1/3Nb2/3)O3)その他の鉛系複合ペロブスカイト酸化物との固溶体を主成分とするものを採用することが望ましい。
【0026】
圧電/電歪体膜112,116の平面形状は、細長の矩形となっている。また、圧電/電歪体膜112,116は、中央部から電極膜110,114,118の端部に向かって膜厚が厚くなってゆき、電極膜110,114,118の端部から圧電/電歪体膜112,116の端部に向かって膜厚が薄くなってゆく膜厚分布を有している。このような膜厚分布を採用すれば、電極膜110,114,118の端部において圧電/電歪体膜112,116の膜厚が厚くなるので、絶縁破壊を防ぐことができるとともに、屈曲1次モードの腹において圧電/電歪体膜112,116の膜厚が薄くなり圧電/電歪体膜112,116の剛性が低下するので、圧電/電歪素子1の変位量を増加させることができる。
【0027】
<1−5 電極膜110,114,118>
電極膜110,114,118は、導電材料で構成される。電極膜110,114を構成する導電材料としては、白金(Pt)若しくはパラジウム(Pd)又はこれらを主成分とする合金を採用することが望ましい。ただし、圧電/電歪体膜112,116との共焼成が可能であれば、他の導電材料で電極膜110,114を構成してもよい。電極膜118を構成する導電材料としては、金(Au)又はこれを主成分とする合金を採用することが望ましい。
【0028】
電極膜110と電極膜114とは、圧電/電歪体膜112を挟んで対向し、電極膜114と電極膜118とは、圧電/電歪体膜116を挟んで対向している。また、電極膜110と電極膜118とは、電気的に接続されている。これにより、外部電極となる電極膜110,118と内部電極となる電極膜114との間に駆動信号を印加すると、圧電/電歪体膜112,116を伸縮させ、屈曲振動領域182を屈曲振動させることができる。
【0029】
<1−6 圧電/電歪素子1の製造方法>
図2は、圧電/電歪素子1の製造方法を説明するフローチャートである。
【0030】
図2に示すように、圧電/電歪素子1の製造にあたっては、まず、基体102を作製する(ステップS101)。
【0031】
続いて、基体102の薄肉部104の上に積層体108を形成する(ステップS102〜S109)。
【0032】
積層体108の形成にあたっては、まず、導電体ペーストを薄肉部104の上面にスクリーン印刷法で塗布し(ステップS102)、得られた塗布膜を基体102と一体的に焼成する(ステップS103)。これにより、基体102と一体化された電極膜110を形成することができる。
【0033】
続いて、圧電/電歪体ペースト、導電体ペースト及び圧電/電歪体ペーストを電極膜110の上面にスクリーン印刷法で順次塗布し(ステップS104〜S106)、得られた塗布膜を基体102及び電極膜110と一体的に焼成する(ステップS107)。これにより、基体102及び電極膜110と一体化された圧電/電歪体膜112、電極膜114及び圧電/電歪体膜116を形成することができる。
【0034】
その後、導電体ペーストを圧電/電歪体膜116の上面にスクリーン印刷法で塗布し(ステップS108)、得られた塗布膜を基体102、電極膜110、圧電/電歪体膜112、電極膜114及び圧電/電歪体膜116と一体的に焼成する(ステップS109)。これにより、基体102、電極膜110、圧電/電歪体膜112、電極膜114及び圧電/電歪体膜116と一体化された電極膜118を形成することができる。
【0035】
最後に、電極膜110,118と電極膜114との間に電圧を印加して分極処理を行うことにより(ステップS110)、圧電/電歪素子1を得ることができる。
【0036】
ここで、導電体ペーストは、導電材料の粉末、有機溶剤、分散剤及びバインダを混練して調製した流動性のある粘性物質である。また、圧電/電歪体ペーストは、圧電/電歪材料の粉末、有機溶剤、分散剤及びバインダを混練して調製した流動性のある粘性物質である。圧電/電歪材料の粉末は、圧電/電歪材料の構成元素の素原料の粉末の混合物を仮焼して粉砕することにより得た仮焼原料の粉末である。
【0037】
<1−7 圧電/電歪体膜112の形成方法>
図3〜図5は、圧電/電歪体膜112の形成方法を説明する模式図である。図3〜図5は、形成の途上の圧電/電歪体膜112の断面図となっている。なお、圧電/電歪体膜116は、圧電/電歪体膜112と同様の形成方法で形成することができる。
【0038】
圧電/電歪体膜112の形成にあたっては、まず、図3に示すように、電極膜110の上面に圧電/電歪体ペーストの塗布膜202を形成する。塗布膜202は、圧電/電歪体ペーストをスクリーン印刷することにより形成する。このとき、スクリーン印刷を1回だけ行ってもよいし、スクリーン印刷を2回以上繰り返してもよい。
【0039】
続いて、図4に示すように、塗布膜202の略平坦な上面にさらに圧電/電歪体ペーストの塗布膜204を形成する。塗布膜204は、塗布膜202の端部に沿って形成される。塗布膜204も、圧電/電歪体ペーストをスクリーン印刷することにより形成する。このとき、スクリーン印刷を1回だけ行ってもよいし、スクリーン印刷を2回以上繰り返してもよい。
【0040】
このようにして重ねて形成された塗布膜202,204を焼成すると、図5に示すように、塗布膜202と塗布膜204とが一体化し、先述の膜厚分布を有する圧電/電歪体膜112を形成することができる。
【0041】
<1−8 メタルマスク版210,230の構造>
図6〜図8は、塗布膜202の形成に使用するメタルマスク版210の模式図である。図6は、メタルマスク版210の平面図、図7は、図6のA−Aに沿うメタルマスク版210の断面図、図8は、図6のB−Bに沿うメタルマスク版210の断面図となっている。
【0042】
図6〜図8に示すように、メタルマスク版210は、金属板212の印刷面側に乳剤層214を付加した構造を有している。金属板212の透過領域282には、粘性物質を透過する開口216が形成され、乳剤層214の透過領域282にも、粘性物質を透過する開口218が形成されている。開口218の位置や平面形状は、開口216と同一である。したがって、メタルマスク版210のスキージ面に圧電/電歪体ペーストを供給しスキージ面に圧力を加えながらスキージを走行させると、スキージ面側に供給された圧電/電歪体ペーストを開口216,218から印刷面側に透過し開口216,218と同一の平面形状を有する圧電/電歪体ペーストのパターンを印刷面側にある被印刷面に印刷することができる。
【0043】
乳剤層214は、粘性物質を透過しない非透過領域284に付加されている。このため、メタルマスク版210を使用して塗布膜202をスクリーン印刷すると、金属板212は被印刷面と接触せず、金属板212より柔らかい乳剤層214が被印刷面と接触するので、メタルマスク版210と被印刷面とを密着させることができ、圧電/電歪体ペーストのパターンのにじみを抑制することができる。
【0044】
図9〜図11は、塗布膜204の形成に使用するメタルマスク版230の模式図である。図9は、メタルマスク版230の平面図、図10は、図9のC−Cに沿うメタルマスク版230の断面図、図11は、図9のD−Dに沿うメタルマスク版230の断面図となっている。
【0045】
図9〜図11に示すように、メタルマスク版230は、金属板232の印刷面側に乳剤層234を付加した構造を有している。金属板232の透過領域288,290には、それぞれ、粘性物質を透過する開口236,238が形成され、乳剤層234の透過領域288,290にも、それぞれ、粘性物質を透過する開口240,242が形成されている。開口240の位置や平面形状は、開口236と同一であり、開口242の位置や平面形状は、開口238と同一である。したがって、メタルマスク版230のスキージ面に圧電/電歪体ペーストを供給しスキージ面に圧力を加えながらスキージを走行させると、スキージ面側に供給された圧電/電歪体ペーストを開口236,240及び開口238,242から印刷面側に透過し開口236,240及び開口238,242と同一の平面形状を有する圧電/電歪体ペーストのパターンを印刷面側にある被印刷面に印刷することができる。
【0046】
乳剤層234は、粘性物質を透過しない非透過領域286に付加されている。このため、メタルマスク版230を使用して塗布膜204をスクリーン印刷すると、金属板232は被印刷面と接触せず、金属板232より柔らかい乳剤層234が被印刷面と接触するので、メタルマスク版230と被印刷面とを密着させることができ、圧電/電歪体ペーストのパターンのにじみを抑制することができる。
【0047】
金属板212,232は、ステンレスの板である。ただし、このことは、ステンレス以外の材質を採用することを妨げるものではない。例えば、ニッケルの板を採用することができる。
【0048】
また、乳剤層214,234は、乳剤(エマルジョン)の膜である。ただし、このことは、乳剤以外の材質を採用することを妨げるものでない。すなわち、乳剤層214,138が金属板212,136よりも柔らかい材質、例えば、樹脂で構成されていれば、被印刷面との密着性を向上するクッションの役割を果たすことができる。
【0049】
<1−9 メタルマスク版230の製造方法(製版方法)>
図12〜図16は、メタルマスク版230の製造方法を説明する模式図である。図12〜図16は、製造の途上のメタルマスク版230の断面図となっている。なお、メタルマスク版210は、メタルマスク版230と同様の製造方法により製造することができる。
【0050】
メタルマスク版230の製造にあたっては、まず、ステンレスの板材252にエキシマレーザ光254を照射して(図12)、板材252の透過領域288,290にスキージ面側と印刷面側とを貫通する開口236,238を形成し、金属板232を得る(図13)。このようにエキシマレーザ加工により開口236,238を形成することには、開口236,238の位置や平面形状の精度を向上することができるという利点があるが、このことは、エッチング加工により開口236,238を形成することを妨げるものではない。また、電鋳等のアディティブ法により開口236,238が形成された金属板232を作製してもよい。
【0051】
続いて、金属板232の印刷面側に膜厚が略均一で金属板232より柔らかい乳剤膜256を貼り付けることにより、金属板232の印刷面側に金属板232の印刷面側を覆う乳剤膜256を付加する(図14)。このように、流動性を有さない乳剤膜256を貼り付けることにより乳剤膜256を付加することには、開口236,238に流動性を有する乳剤が流れ込んで開口236,238が埋まってしまうことを防止することができるという利点がある。ただし、このことは、流動性を有する乳剤を塗布してから流動性を失わせることにより乳剤膜256を形成することを妨げるものではない。
【0052】
さらに続いて、金属板232のスキージ面側からエキシマレーザ光258を照射し(図15)、乳剤膜256のうち透過領域288,290に形成された部分を金属板232を遮蔽物としてエキシマレーザ光258で除去し、開口240,242を形成する(図16)。このエキシマレーザ加工においては、金属板232を除去せず乳剤膜256を選択的に除去することができる強度のエキシマレーザ光を照射する。すなわち、このエキシマレーザ加工では、金属板232よりも乳剤膜256の方がエキシマレーザ光258で除去されやすいという性質を利用して、金属板232を遮蔽物として用い、金属板232に形成されている開口236,238の平面形状を乳剤膜256に転写する。なお、レーザ光としてエキシマレーザ光258を使用することは必須でなはく、炭酸ガスレーザ光、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザ光その他のレーザ光を使用してもよい。
【0053】
このような工程を経ることにより、除去されずに残った乳剤膜260が乳剤層234となり、図9〜図11に示すメタルマスク版230を得ることができる。
【0054】
このようなメタルマスク版230の製造方法によれば、金属板232に形成された開口236,238の位置と乳剤層234に形成された開口240,242の位置とのずれを防ぐことができるので、メタルマスク版230の寸法精度を向上することができる。すなわち、金属板232及び乳剤層234をフォトリソグラフィ等を利用して別々にパターニングした場合は、金属板232及び乳剤層234のパターニングの位置のずれに起因してメタルマスク版230の寸法精度が低下するが、このような製造方法によれば、メタルマスク版230の寸法精度を向上することができる。
【0055】
<2 第2実施形態>
第2実施形態は、第1実施形態に係る圧電/電歪体膜112の形成方法に代わる圧電/電歪体膜112の形成方法及び圧電/電歪体膜112の形成に使用するメタルマスク版330に関する。
【0056】
<2−1 圧電/電歪体膜112の形成方法>
図17〜図19は、圧電/電歪体膜112の形成方法を説明する模式図である。図17〜図19は、形成の途上の圧電/電歪体膜112の断面図となっている。
【0057】
圧電/電歪体膜112の形成にあたっては、まず、図17に示すように、電極膜110の上面に圧電/電歪体ペーストの塗布膜302を形成する。塗布膜302は、圧電/電歪体ペーストをスクリーン印刷することにより形成する。このとき、スクリーン印刷を1回だけ行ってもよいし、スクリーン印刷を2回以上繰り返してもよい。
【0058】
続いて、図18に示すように、塗布膜302の上面にさらに圧電/電歪体ペーストの塗布膜304を形成する。塗布膜304は、塗布膜302の端部に沿って形成される。塗布膜304も、圧電/電歪体ペーストをスクリーン印刷することにより形成する。このとき、スクリーン印刷を1回だけ行ってもよいし、スクリーン印刷を2回以上繰り返してもよい。
【0059】
このようにして重ねて形成された塗布膜302,304を焼成すると、図19に示すように、塗布膜302の上面の隆起が陥没するとともに塗布膜302と塗布膜304とが一体化し、先述の膜厚分布を有する圧電/電歪体膜112を形成することができる。
【0060】
なお、塗布膜302の中央部の隆起は、スクリーン印刷の繰り返しの回数その他の理由によって生じうる。
【0061】
<2−2 メタルマスク版330の構造>
図20〜図22は、塗布膜304の形成に使用するメタルマスク版330の模式図である。図20は、メタルマスク版330の平面図、図21は、図20のG−Gに沿うメタルマスク版330の断面図、図22は、図20のH−Hに沿うメタルマスク版330の断面図となっている。なお、塗布膜302は、図6〜図8に示すメタルマスク版210を使用して形成することができる。
【0062】
図20〜図22に示すように、メタルマスク版330は、金属板332の印刷面側に乳剤層334を付加した構造を有している。金属板332の透過領域388,390には、それぞれ、粘性物質を透過する開口336,338が形成され、乳剤層334の透過領域388,390及び非透過領域386にも、粘性物質を透過する開口340が形成されている。したがって、メタルマスク版330のスキージ面に圧電/電歪体ペーストを供給しスキージ面に圧力を加えながらスキージを走行させると、スキージ面側に供給された圧電/電歪体ペーストを開口336,340及び開口338,340から印刷面側に透過し開口336及び開口338と同一の平面形状を有する圧電/電歪体ペーストのパターンを印刷面側にある被印刷面に印刷することができる。
【0063】
金属板332の板厚は、枠形の平面形状を有する金属板344と、矩形の平面形状を有する金属板346とで異なっており、被印刷面が隆起している中央部と対向する金属板346の板厚は、被印刷面が隆起していない非中央部に対向する金属板344よりも薄くなっている。このように被印刷面の凹凸に応じて層厚が変化する金属板332を備えるメタルマスク版330を使用することにより、メタルマスク版330と被印刷面との間の隙間に圧電/電歪体ペーストが流れ出すことを抑制することができるので、圧電/電歪体ペーストのパターンのにじみを抑制することができる。
【0064】
乳剤層334は、粘性物質を透過しない非透過領域386,387の一部を占める非透過領域387に形成されている。このため、メタルマスク版330を使用して塗布膜304をスクリーン印刷すると、金属板344は被印刷面と接触せず、金属板344より柔らかい乳剤層334が被印刷面と接触するので、メタルマスク版330と被印刷面とを密着させることができ、圧電/電歪体ペーストのパターンのにじみをさらに抑制することができる。
【0065】
金属板332は、ステンレスの板である。ただし、このことは、ステンレス以外の材質を採用することを妨げるものではない。例えば、ニッケルの板を採用することができる。
【0066】
また、乳剤層334は、乳剤の膜である。ただし、このことは、乳剤以外の材質を採用することを妨げるものでない。すなわち、乳剤層334が金属板332よりも柔らかい材質、例えば、樹脂で構成されていれば、被印刷面との密着性を向上するクッションの役割を果たすことができる。
【0067】
<2−3 メタルマスク版330の製造方法(製版方法)>
図23〜図35は、メタルマスク版330の製造方法を説明する模式図である。図23〜図35は、製造の途上のメタルマスク版330の断面図となっている。
【0068】
メタルマスク版330の製造にあたっては、まず、ステンレスの板材352の印刷面側に感光性のレジスト液を塗布することにより、板材352の印刷面側に板材352の印刷面側を覆うレジスト膜362を形成する(図23)。
【0069】
続いて、透過領域388,390及び非透過領域386を遮蔽するフォトマスク364をレジスト膜362の印刷面側に設置し、フォトマスク364越しにレジスト膜362に光366を照射することにより(図24)、非透過領域387に形成されたレジスト膜368を選択的に露光し、レジスト膜368を硬化させる(図25)。そして、透過領域388,390及び非透過領域386に形成されたレジスト膜370を現像により除去し、板材352の透過領域388,390及び非透過領域386を露出させる(図26)。
【0070】
さらに続いて、除去されなかったレジスト膜368をエッチングマスクとして、板材352の透過領域388,390及び非透過領域386をスキージ面側と印刷面側とが貫通しないようにエッチングし、板材352の板厚を薄くするとともに、マスクの役割を終えたレジスト膜368を除去する(図27)。
【0071】
そして、スキージ面側から板材352にエキシマレーザ光372を照射して(図28)、板材352の透過領域388,390にスキージ面側と印刷面側とを貫通する開口336,338を形成し、金属板332を得る(図29)。
【0072】
次に、金属板332の印刷面側に膜厚が略均一で金属板332より柔らかい感光性の乳剤膜356を貼り付けることにより、金属板332の印刷面側に金属板332の印刷面側を覆う乳剤膜356を付加する(図30)。
【0073】
続いて、非透過領域386を内包する領域392を遮蔽するフォトマスク374を乳剤膜356の印刷面側に設置し、フォトマスク374越しに乳剤膜356に光376を照射することにより(図31)、領域392以外の領域に付加された乳剤膜378を選択的に露光し、乳剤膜378を硬化させる(図32)。
【0074】
さらに続いて、領域392に付加された乳剤膜380を現像により除去する(図33)。このように乳剤膜380を除去するのは、非透過領域386に付加された乳剤膜は、金属板332によって遮蔽され、後述するエキシマレーザ光358で除去することができないため、あらかじめ除去しておく必要があるからである。ここで、フォトマスク374は、非透過領域386を遮蔽するだけでなく、非透過領域386に隣接する透過領域388,390を含む領域392を遮蔽することが望ましい。これにより、フォトマスク374の位置が若干ずれても非透過領域386に形成された乳剤膜を除去することができずに残ってしまうことを防止することができる。
【0075】
そして、金属板332のスキージ面側からエキシマレーザ光358を照射し(図34)、乳剤膜378のうち透過領域388,390に形成された部分を金属板332を遮蔽物としてエキシマレーザ光358で除去し、開口340を形成する(図35)。このエキシマレーザ加工においては、金属板332を除去せず乳剤膜378のみを選択的に除去することができる強度のエキシマレーザ光を照射する。
【0076】
このような工程を経ることにより、除去されずに残った乳剤膜380が乳剤層334となり、図20〜図22に示すメタルマスク版330を得ることができる。
【0077】
<3 その他>
先述の説明では、圧電/電歪体ペーストを塗布する場合に使用するメタルマスク版210,230,330について説明したが、圧電/電歪体ペースト以外の粘性物質、例えば、導電体ペースト等を塗布する場合に使用するメタルマスク版並びにその製造方法も本発明に含まれる。
【0078】
上記の説明は、全ての局面において例示であって、本発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、本発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。特に、第1実施形態及び第2実施形態において説明した技術を組み合わせることは当然に予定されている。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】圧電/電歪素子の断面図である。
【図2】圧電/電歪素子の製造方法を説明するフローチャートである。
【図3】圧電/電歪体膜の形成方法を説明する断面図である。
【図4】圧電/電歪体膜の形成方法を説明する断面図である。
【図5】圧電/電歪体膜の形成方法を説明する断面図である。
【図6】メタルマスク版の平面図である。
【図7】図6のA−Aに沿うメタルマスク版の断面図である。
【図8】図6のB−Bに沿うメタルマスク版の断面図である。
【図9】メタルマスク版の平面図である。
【図10】図9のC−Cに沿うメタルマスク版の断面図である。
【図11】図9のD−Dに沿うメタルマスク版の断面図である。
【図12】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図13】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図14】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図15】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図16】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図17】圧電/電歪体膜の形成方法を説明する断面図である。
【図18】圧電/電歪体膜の形成方法を説明する断面図である。
【図19】圧電/電歪体膜の形成方法を説明する断面図である。
【図20】メタルマスク版の平面図である。
【図21】図20のG−Gに沿うメタルマスク版の断面図である。
【図22】図20のH−Hに沿うメタルマスク版の断面図である。
【図23】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図24】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図25】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図26】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図27】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図28】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図29】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図30】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図31】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図32】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図33】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図34】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図35】メタルマスク版の製造方法を説明する断面図である。
【図36】従来のメタルマスク版の断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 圧電/電歪素子
102 基体
112,116 圧電/電歪体膜
110,114,118 電極膜
202,204,302,304 塗布膜
210,230,330 メタルマスク版
212,232,332 金属板
214,234,334 乳剤層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキージ面側に供給された粘性物質を印刷面側に透過し被印刷面に粘性物質のパターンを印刷するメタルマスク版であって、
粘性物質を透過する開口が形成された金属板と、
前記金属板の印刷面側に付加され粘性物質を透過する開口が形成された、前記金属板より柔らかい層と、
を備えるメタルマスク版。
【請求項2】
スキージ面側に供給された粘性物質を印刷面側に透過し被印刷面に粘性物質のパターンを印刷するメタルマスク版の製造方法であって、
(a) 粘性物質を透過する開口が形成された金属板の印刷面側に前記金属板より柔らかい膜を付加する工程と、
(b) 前記工程(a)の後に、前記金属板のスキージ面側からレーザ光を照射し、前記膜のうち粘性物質を透過する透過領域に付加された部分を前記金属板を遮蔽物としてレーザ光で除去する工程と、
を備えるメタルマスク版の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のメタルマスク版の製造方法において、
前記工程(b)は、
前記金属板を除去せず前記膜を選択的に除去するレーザ光を照射するメタルマスク版の製造方法。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のメタルマスク版の製造方法において、
前記工程(a)は、
流動性を有さない前記膜を前記金属板の印刷面側に貼り付けるメタルマスク版の製造方法。
【請求項1】
スキージ面側に供給された粘性物質を印刷面側に透過し被印刷面に粘性物質のパターンを印刷するメタルマスク版であって、
粘性物質を透過する開口が形成された金属板と、
前記金属板の印刷面側に付加され粘性物質を透過する開口が形成された、前記金属板より柔らかい層と、
を備えるメタルマスク版。
【請求項2】
スキージ面側に供給された粘性物質を印刷面側に透過し被印刷面に粘性物質のパターンを印刷するメタルマスク版の製造方法であって、
(a) 粘性物質を透過する開口が形成された金属板の印刷面側に前記金属板より柔らかい膜を付加する工程と、
(b) 前記工程(a)の後に、前記金属板のスキージ面側からレーザ光を照射し、前記膜のうち粘性物質を透過する透過領域に付加された部分を前記金属板を遮蔽物としてレーザ光で除去する工程と、
を備えるメタルマスク版の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のメタルマスク版の製造方法において、
前記工程(b)は、
前記金属板を除去せず前記膜を選択的に除去するレーザ光を照射するメタルマスク版の製造方法。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のメタルマスク版の製造方法において、
前記工程(a)は、
流動性を有さない前記膜を前記金属板の印刷面側に貼り付けるメタルマスク版の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【公開番号】特開2009−166392(P2009−166392A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8214(P2008−8214)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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