説明

メタンからの芳香族化合物の製造

メタンを高級炭化水素(芳香族炭化水素を含む)に変換するための触媒が支持体及び支持体上に分散されたモリブデン又はその化合物を含む。該支持体がシリカ、チタニア、ジルコニア及びこれらの混合物から選ばれたバインダーで結合されたアルミノシリケートゼオライトを含む。該触媒がアルミノシリケートゼオライトのフレームワークの外部にアルミニウムを実質的に含まない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
この出願は2008年1月28日に出願された、米国仮特許出願第61/023,976号(その全部が参考として含まれる)の利益を主張する。
本発明はメタン、特に天然ガスからの芳香族炭化水素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族炭化水素、特にベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレンは、石油化学工業における重要な商品化学薬品である。現在、芳香族化合物は接触リフォーミング及び接触クラッキングを含む、種々の方法により石油をベースとする供給原料から最も頻繁に製造される。しかしながら、石油供給原料の世界的供給が低下しているので、芳香族炭化水素の代替源を見つけるようにとの要望が増大しつつある。
芳香族炭化水素の一つの可能な代替源はメタンであり、これは天然ガス及びバイオガスの主要成分である。天然ガスの世界的予備が絶えずアップグレードされつつあり、油より多い天然ガスが現在発見されつつある。大容積の天然ガスの輸送と関連する問題のために、特に離れた場所における、油とともに製造される天然ガスの殆どが、燃やされ、廃棄される。それ故、高級炭化水素、例えば、芳香族化合物への天然ガス中に含まれるアルカンの直接の変換が、天然ガスをアップグレードし、付随する技術的困難が解消し得ることを提供する魅力的な方法である。
メタンを液体炭化水素に変換するのに現在提案されている方法の大半がメタンから合成ガス、即ち、H2とCOのブレンドへの初期の変換を伴なう。しかしながら、合成ガスの製造は投資及びエネルギーが強大であり、それ故、合成ガス生成を必要としない経路が好ましい。
幾つかの別法がメタンを高級炭化水素に直接に変換するのに提案されていた。一つのこのような方法はメタンからオレフィンへの接触酸化カップリング、続いてオレフィンから液体炭化水素(芳香族炭化水素を含む)への接触変換を伴なう。例えば、米国特許第5,336,825号はメタンから芳香族炭化水素を含むガソリン階級の炭化水素への酸化的変換のための2工程方法を開示している。最初の工程において、メタンが遊離酸素の存在下で500℃〜1000℃の温度で稀土類金属促進アルカリ土類金属酸化物触媒を使用してエチレン並びに少量のC3オレフィン及びC4オレフィンに変換される。次いで最初の工程で生成されたエチレン及び高級オレフィンが高シリカペンタシルゼオライトを含む酸性固体触媒によりガソリン階級の液体炭化水素に変換される。
【0003】
しかしながら、酸化カップリング方法はそれらが高度に発熱性かつ潜在的に危険なメタン燃焼反応を伴ない、かつそれらが多量の環境上影響されやすい炭素酸化物を生成するという問題をかかえている。
メタンを高級炭化水素、特にエチレン、ベンゼン及びナフタレンに直接にアップグレードするのに潜在的に魅力的な経路は、脱水素芳香族化又は還元カップリングである。この方法は典型的にはメタンを高温、例えば、600℃〜1000℃でゼオライト、例えば、ZSM-5で担持された、金属、例えば、レニウム、タングステン又はモリブデンを含む触媒と接触させることを伴なう。
例えば、米国特許第4,727,206号はメタンを600℃〜800℃の温度で酸素の不在下で少なくとも5:1のシリカ対アルミナのモル比を有するアルミノシリケートを含む触媒組成物と接触させることによる芳香族炭化水素に富む液体の製造方法を開示しており、前記アルミノシリケートは(i)ガリウム又はその化合物及び(ii)周期律表のVIIB族からの金属又はその化合物を添加されている。
加えて、米国特許第5,026,937号は供給原料流(これは0.5モル%以上の水素及び50モル%のメタンを含む)を550℃〜750℃の温度、10気圧(1000kpaa)(絶対圧)未満の圧力及び400〜7,500hr-1の毎時のガス空間速度を含む変換条件でZSM-5、ガリウム及びリン含有アルミナを含む固体触媒の少なくとも一つの床を有する反応ゾーンに通す工程を含むメタンの芳香族化方法を開示している。
【0004】
更に、米国特許第6,239,057号及び同第6,426,442号は低炭素数の炭化水素、例えば、メタンを多孔性支持体、例えば、シリカ、アルミナ、ゼオライトZSM-5、FSM-16及びこれらの混合物(これはその上にレニウム及び促進剤金属、例えば、鉄、コバルト、バナジウム、マンガン、モリブデン、タングステン又はこれらの混合物を分散させていた)を含む触媒と接触させることによる前記炭化水素からの高炭素数の炭化水素、例えば、ベンゼンの製造方法を開示している。レニウム及び促進剤金属による支持体の含浸後に、該触媒が約100℃から約800℃までの温度で約0.5時間から約100時間までの時間にわたって水素及び/又はメタンによる処理により活性化される。メタン供給原料へのCO又はCO2の添加がベンゼンの収率及び触媒の安定性を増大すると言われている。
更に、2006年6月29日に公開された、本発明者らの国際特許公開WO 2006/068814において、本発明者らはメタンを高級炭化水素(芳香族炭化水素を含む)に変換する方法を記載しており、該方法はメタンを含む供給原料を前記メタンを芳香族炭化水素に変換し、かつ芳香族炭化水素及び水素を含む第一流出物流(前記第一流出物流は前記供給原料よりも少なくとも5質量%多い芳香族環を含む)を生成するのに有効な条件下で脱水素環化触媒、都合良くはモリブデン、タングステン及び/又はレニウム或いはこれらの化合物/ZSM-5又はアルミニウム酸化物と接触させ、前記第一流出物流からの水素の少なくとも一部を酸素含有種と反応させて前記第一流出物流と較べて減少された水素含量を有する第二流出物流を生成することを含む。
しかしながら、芳香族化合物を商用規模で製造するための還元カップリングの成功裏の適用は幾つかの重大な技術的挑戦の解決を必要とする。例えば、還元カップリング方法は吸熱的かつ熱力学的の両方で制限される。こうして、その反応により生じた冷却効果はかなりの補給熱がその方法に与えられない場合には反応温度を充分に低下して反応速度及び全熱力学的転化率を大きく低下する。
加えて、その方法はカーボン及びその他の不揮発性物質(集約して“コーク”と称される)を生成する傾向があり、これらは触媒に蓄積して低下された活性及び潜在的に望ましくない選択性シフトだけでなく、有益な供給原料の損失をもたらす。コークは酸化的又は還元的再生により触媒から除去し得るが、これは失われた製造時間だけでなく、潜在的な触媒の損傷をもたらす。それ故、所望の芳香族生成物への選択率の損失なしに減少されたコーク選択率を示す脱水素環化触媒を開発するのに関心がある。
【0005】
メタンの脱水素芳香族化のための一つの特に活性な触媒はモリブデン/アルミノシリケートゼオライト、例えば、ZSM-5であり、特にその場合、モリブデンが高度に分散され、かつゼオライトの細孔中のブレンステッド酸部位で固定されている。このような触媒はまた通常触媒粒子に脱水素芳香族化方法における使用に必要なサイズ、密度及び硬度を与えるために耐火性バインダー、典型的にはアルミナを含む。しかしながら、アルミアバインダーは触媒製造及び使用中にモリブデンと相互作用して触媒の性能に有害な影響を有し得る正味の(即ち、ゼオライトブレンステッド酸部位に固定されていない)モリブデン酸アルミニウムを生成し得ることが今わかった。こうして、正味のモリブデン酸アルミニウムはコークへの実質的に100%の転化率でもってメタン変換に高度に活性であることがわかる。それ故、本発明はアルミナバインダーがその触媒性能を損なわず、かつ反応性の非フレームワークアルミニウムを与えずに触媒に所望の物理的性質を与えるその他の耐火性物質により置換されている、触媒及びメタンから芳香族化合物への変換方法を提供しようと探究する。
1998年11月19日に公開された、国際特許公開WO 1998/051409は、低率のコーク生成でもってC2-C16炭化水素をオレフィン及び芳香族化合物に変換するための触媒を開示しており、該触媒は亜鉛と元素の周期律表の4B族、6B族、3A族、4A族及び5A族からなる群から選ばれた少なくとも一種のその他の金属で含浸された、酸処理されたゼオライト、例えば、ZSM-5を含む。該触媒はアルミナ、シリカ、アルミナ-シリカ、リン酸アルミニウム、クレー及びこれらの混合物から選ばれたバインダーを含み得る。
2004年12月30日に公開された、米国公開特許出願第2004/266608号は、モレキュラーシーブ、耐火性無機酸化物、クレー及び金属成分を含む、炭化水素をクラッキングするためのモレキュラーシーブ含有触媒を開示しており、前記モレキュラーシーブの量は触媒の合計量を基準として1〜90質量%であり、耐火性無機酸化物は2〜80質量%であり、クレーは2〜80質量%であり、かつ金属成分はその最大原子価状態を有する前記金属の酸化物として計算して0.1〜30質量%であり、前記金属成分は実質的に還元状態で存在し、III A族の金属(アルミニウム以外)、IVA族、VA族、IB族、IIB族、VB族、VIB族及びVIIB族の金属並びに周期律表のVIII族の非貴金属からなる群から選ばれた一種以上の金属である。その金属成分は都合良くはガリウム、スズ、銅、銀、亜鉛、バナジウム、モリブデン、マンガン、鉄、及び/又はコバルトから選ばれ、また耐火性無機酸化物は都合良くはアルミナ、シリカ、無定形シリカ-アルミナ、ジルコニア、チタン酸化物、ホウ素酸化物、及びアルカリ土類金属の酸化物から選ばれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一局面において、本発明はメタンから芳香族炭化水素を含む高級炭化水素への変換のための触媒にあり、該触媒は支持体及び前記支持体上に分散されたモリブデン又はその化合物を含み、該支持体はシリカ、チタニア、ジルコニア及びこれらの混合物から選ばれたバインダーで結合されたアルミノシリケートゼオライトを含み、かつ該触媒は前記アルミノシリケートゼオライトのフレームワークの外部に反応性アルミニウムを実質的に含まない。
都合良くは、アルミノシリケートゼオライトが約14〜約500、例えば、約20〜約300、例えば、約22〜約280のシリカ対アルミナモル比を有する。一実施態様において、アルミノシリケートゼオライトが約1〜約12の制約インデックス(Constraint Index)を有し、典型的にはZSM-5である。
都合良くは、触媒中のモリブデン又はその前記化合物の量が元素モリブデンを基準として触媒の約0.1質量%〜約20質量%である。
都合良くは、支持体が支持体の約1質量%から約90質量%までの前記バインダーを含む。
都合良くは、支持体が更に充填剤、例えば、炭化ケイ素を含む。典型的には、その充填剤が支持体の約0.1質量%から約60質量%までの量で存在する。
【0007】
更なる局面において、本発明はメタンを芳香族炭化水素を含む高級炭化水素に変換するための方法にあり、その方法はメタンを含む供給原料を反応ゾーン中で前記メタンを芳香族炭化水素に変換するのに有効な条件下で脱水素環化触媒と接触させることを含み、前記脱水素環化触媒は支持体及び前記支持体上に分散されたモリブデン又はその化合物を含み、該支持体はバインダーで結合されたアルミノシリケートゼオライトを含み、かつ該バインダーは反応性アルミニウムを実質的に含まない。
更に別の局面において、本発明はメタンを芳香族炭化水素を含む高級炭化水素に変換するための方法にあり、その方法はメタンを含む供給原料を反応ゾーン中で前記メタンを芳香族炭化水素に変換するのに有効な条件下で脱水素環化触媒と接触させることを含み、前記脱水素環化触媒は支持体及び前記支持体上に分散されたモリブデン又はその化合物を含み、該支持体はシリカ、チタニア、ジルコニア及びこれらの混合物から選ばれたバインダーで結合されたアルミノシリケートゼオライトを含む。
都合良くは、触媒が前記アルミノシリケートゼオライトのフレームワークの外部に反応性アルミニウムを実質的に含まない。
更に別の局面において、本発明はメタンを芳香族炭化水素を含む高級炭化水素に変換するための方法にあり、その方法はメタンを含む供給原料を反応ゾーン中で前記メタンを芳香族炭化水素に変換するのに有効な条件下で脱水素環化触媒と接触させることを含み、前記脱水素環化触媒は約50μm〜約5000μmの平均サイズ、及び約100lb/ft3〜約200lb/ft3(約1.60g/cm3〜約3.20g/cm3)の密度を有する粒子で担持されたモリブデンを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例15の方法によるメタンの脱水素環化に使用される場合に実施例1の未結合Mo/ZSM-5触媒及び実施例2、4、6及び8の結合Mo/ZSM-5触媒(触媒中35質量%のバインダー)についての時間に対するベンゼン収率を比較するグラフである。
【図2】実施例15の方法によるメタンの脱水素環化に使用される場合に実施例1の未結合Mo/ZSM-5触媒及び実施例2、4、6及び8の結合Mo/ZSM-5触媒(触媒中35質量%のバインダー)についての時間に対するメタン転化率を比較するグラフである。
【図3】実施例15の方法によるメタンの脱水素環化に使用される場合に実施例1の未結合Mo/ZSM-5触媒、実施例2、4、6及び8の結合Mo/ZSM-5触媒(触媒中35質量%のバインダー)並びに実施例3、5、7及び9の結合Mo/ZSM-5触媒(触媒中20質量%のバインダー)についての時間に対するベンゼン収率を比較するグラフである。
【図4】実施例15の方法によるメタンの脱水素環化に使用される場合に実施例1の未結合Mo/ZSM-5触媒(25のシリカ対アルミナモル比)及び実施例12、13及び14の未結合及びシリカ結合Mo/ZSM-5触媒(80のシリカ対アルミナモル比)についての時間に対するベンゼン収率を比較するグラフである。
【図5】実施例15の方法によるメタンの脱水素環化に使用される場合に実施例1の未結合Mo/ZSM-5触媒、実施例3及び7のチタニア及びシリカ結合Mo/ZSM-5触媒並びに実施例10及び11のチタニア及びシリカ結合Mo/SiC/ZSM-5触媒についての時間に対するベンゼン収率を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に使用される“一種以上の高級炭化水素”という用語は分子当り1個より多い炭素原子を有する一種以上の炭化水素、例えば、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、及び/又はメチルナフタレンを意味する。
本明細書に使用される“一種以上の芳香族炭化水素”という用語は1個以上の芳香族環を含む分子を意味する。芳香族炭化水素の例はベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、及びメチルナフタレンである。
“コーク”及び“炭素質物質”という用語は炭素含有物質を意味するために本明細書に互換可能に使用され、これらは反応条件で実質的に不揮発性の固体であり、炭素含量に対して低い水素含量を有する(例えば、0.8未満、殆どおそらく0.5未満のH/Cモル比)。これらとして、結晶性グラファイト、グラファイトシート、グラファイトフラグメント、無定性炭素、又は反応条件で実質的に不揮発性の固体であるその他の炭素含有構造が挙げられるかもしれない。
本発明はメタンから芳香族炭化水素を含む高級炭化水素への変換のための触媒及び方法を提供する。該触媒は支持体上に分散されたモリブデン又はその化合物を含み、それ故、本明細書に使用される“触媒”という用語は(a) モリブデン又はその化合物と(b) 支持体の組み合わせを意味する。本触媒中に使用される支持体は典型的にはシリカ、チタニア、ジルコニア及びこれらの混合物から選ばれたバインダーで結合されたアルミノシリケートゼオライトを含む。或る実施態様において、触媒はまたゼオライト及びバインダーとは別の充填剤又は高密度化剤を含み得る。こうして、本明細書に使用される“支持体”という用語は(a) アルミノシリケートゼオライト、(b) バインダー及び、必要により、(c) 充填剤の組み合わせを意味する。
アルミノシリケートゼオライトのフレームワークに外部の反応性アルミニウム、例えば、アルミナバインダー中に含まれるアルミニウムを実質的に含まない触媒を使用することにより、触媒の製造及び使用中の望ましくないモリブデン酸アルミニウムの生成が軽減でき、それにより触媒のコーク選択性を低下し得ることがわかる。
メタンから芳香族化合物への変換は副生物として水素を生成し、それ故、本方法はまた水素副生物の少なくとも一部が一層高価な生成物に変換される一つ以上の水素排除工程を含む。
【0010】
供給原料
あらゆるメタン含有供給原料が本方法で使用し得るが、一般にその方法は天然ガス供給原料と一緒の使用に意図されている。その他の好適なメタン含有供給原料として、石炭床、埋立て、農業もしくは都市の廃棄物発酵、及び/又は製油所ガス流の如き源から得られたものが挙げられる。
天然ガスの如き、メタン含有供給原料は、典型的にはメタンに加えて二酸化炭素及びエタンを含む。供給原料中に存在し得るエタン及びその他の脂肪族炭化水素は脱水素環化工程で芳香族生成物に直接変換し得る。加えて、以下に説明されるように、二酸化炭素が脱水素環化工程で直接に、又は水素排除工程におけるメタン及び/又はエタンへの変換により間接に有益な芳香族生成物に変換し得る。
窒素不純物及び/又は硫黄不純物がまた典型的にはメタン含有流中に存在し、望ましくは本発明の方法中のその流れの使用前に、除去され、又は低レベルに減少される。或る実施態様において、脱水素環化工程への供給原料が100ppm未満、例えば、10ppm未満、例えば、1ppm未満の窒素化合物及び硫黄化合物の夫々を含む。
加えて、脱水素環化工程への供給原料はコーク減少を助けるために水素、水、酸素、一酸化炭素及び二酸化炭素の少なくとも一種を含んでもよい。これらの添加剤は別の補助供給原料として導入でき、又は、例えば、メタン流が二酸化炭素を含む天然ガスに由来する場合に、メタン流中に存在し得る。二酸化炭素のその他の源として、煙道ガス、LNGプラント、水素プラント、アンモニアプラント、グリコールプラント及び無水フタル酸プラントが挙げられるかもしれない。
一実施態様において、脱水素環化工程への供給原料が二酸化炭素を含み、約90モル%〜約99.9モル%、例えば、約97モル%〜約99モル%のメタン及び約0.1モル%〜約10モル%、例えば、約1モル%〜約3モル%のCO2を含む。別の実施態様において、脱水素環化工程への供給原料が一酸化炭素を含み、約80モル%〜約99.9モル%、例えば、約94モル%〜約99モル%のメタン及び約0.1モル%〜約20モル%、例えば、約1モル%〜約6モル%のCOを含む。更なる実施態様において、脱水素環化工程への供給原料がスチームを含み、約90モル%〜約99.9モル%、例えば、約97モル%〜約99モル%のメタン及び約0.1モル%〜約10モル%、例えば、約1モル%〜約3モル%のスチームを含む。更に別の実施態様において、脱水素環化工程への供給原料が水素を含み、約80モル%〜約99.9モル%、例えば、約95モル%〜約99モル%のメタン及び約0.1モル%〜約20モル%、例えば、約1モル%〜約5モル%の水素を含む。
【0011】
脱水素環化工程への供給原料はまたメタン以外の高級炭化水素(芳香族炭化水素を含む)を含み得る。このような高級炭化水素は水素排除工程から循環でき、別の補助供給原料として添加でき、又は、例えば、エタンが天然ガス供給原料中に存在する場合に、メタン流中に存在し得る。水素排除工程から循環される高級炭化水素として、典型的には単環芳香族化合物及び/又は主として6個以下、例えば、5個以下、例えば、4個以下、典型的には3個以下の炭素原子を有するパラフィン及びオレフィンが挙げられる。一般に、脱水素環化工程への供給原料は5質量%未満、例えば、3質量%未満のC3+炭化水素を含む。
脱水素環化触媒
本発明に使用される脱水素環化触媒はアルミノシリケートゼオライト及び実質的にアルミニウムを含まないバインダーを含む支持体上に分散された、モリブデン又はその化合物、例えば、モリブデン酸化物又は炭化物を含む。都合良くは、モリブデン又はその化合物が全触媒の元素Moを基準として約0.1質量%〜約20質量%、例えば、約0.5質量%〜約10質量%、例えば、1質量%〜8質量%の量で存在する。更に、モリブデンに加えて、触媒が一種以上のその他の脱水素化金属、例えば、タングステン、亜鉛、及び/又はレニウム、或いはこれらの化合物を含み得る。
脱水素環化触媒の支持体中の使用に適したアルミノシリケートゼオライトとして、フレームワーク型MFI(例えば、ZSM-5及びシリカライト)、MEL(例えば、ZSM-11)、MTW(例えば、ZSM-12)、TON(例えば、ZSM-22)、MTT(例えば、ZSM-23)、FER(例えば、ZSM-35)、MFS(例えば、ZSM-57)、MWW(例えば、MCM-22、PSH-3、SSZ-25、ERB-1、ITQ-1、ITQ-2、MCM-36、MCM-49及びMCM-56)、IWR(例えば、ITQ-24)、KFI(例えば、ZK-5)、BEA(例えば、ゼオライトベータ)、ITH(例えば、ITQ-13)、MOR(例えば、モルデナイト)、FAU(例えば、ゼオライトX、Y、超安定化Y及び脱アルミニウム化Y)、LTL(例えば、ゼオライトL)、IWW(例えば、ITQ-22)、及びVFI(例えば、VPI-5)を有する物質だけでなく、MCM-68、EMM-1、EMM-2、ITQ-23、ITQ-24、ITQ-25、ITQ-26、ETS-2、ETS-10、SAPO-17、SAPO-34及びSAPO-35の如き物質が挙げられる。好適な中間多孔性物質として、MCM-41、MCM-48、MCM-50、FSM-16及びSBA-15が挙げられる。
【0012】
一般に、本発明に使用されるアルミノシリケートゼオライトは約1〜約12の制約インデックス(米国特許第4,016,218号(これが参考として本明細書に含まれる)に定義される)を有し、典型的にはZSM-5である。都合良くは、アルミノシリケートゼオライトが約14〜約500、例えば、約20〜約300、例えば、約22〜約280のシリカ対アルミナモル比を有する。
ゼオライトは既知の方法、例えば、スチーム処理、酸洗浄、アルカリ洗浄及び/又はケイ素含有化合物、リン含有化合物、及び/又は元素の周期律表の1族、2族、3族及び13族の元素又は化合物による処理により変性し得る。このような変性はゼオライトの表面活性を変化し、ゼオライトの内部細孔構造への接近を阻害又は増進するのに使用し得る。
アルミノシリケートゼオライトに加えて、触媒支持体はバインダー、及び必要により、触媒粒子に脱水素芳香族化方法における使用に必要なサイズ、密度及び硬度を与えるための、充填剤を含む。バインダーは一般に耐火性無機酸化物であるが、実質的にアルミニウムを含まないべきであり、それ故、好適なバインダーとして、シリカ、ジルコニア、チタニア及びこれらの混合物が挙げられる。一般に、バインダーは支持体(バインダー+ゼオライト)の約1質量%〜約90質量%、例えば、約10質量%〜約90質量%、例えば、約35質量%〜約85質量%の量で存在する。
バインダー物質は無定形であってもよく、又はそれは部分的又は全体に結晶性又は更には多孔性結晶性の物質、例えば、ゼオライト物質であってもよい。こうして、例えば、無定形のシリカ物質は、ゼオライトのバインダーとして存在する場合に、バインダーをゼオライト形態(これはコアーゼオライトと同じ又は異なる結晶構造を有してもよい)に少なくとも部分的に変換するために結晶化し得ることが米国特許第5,460,796号及び同第5,665,325号(これらの全内容が参考として本明細書に含まれる)から知られている。こうして、一実施態様において、アルミノシリケートゼオライトがZSM-5であり、またバインダーがシリカライトである。
【0013】
モリブデン成分は当業界で公知のあらゆる手段、例えば、共沈、初期湿潤、蒸発、含浸、噴霧乾燥、ゾル-ゲル、イオン交換、化学蒸着、拡散及び物理的混合により支持体上で分散し得る。一般に、モリブデン化合物をアルミノシリケートゼオライトのブレンステッド酸部位に用意することが望ましく、それ故、モリブデン化合物がゼオライト上で分散でき、その後にゼオライトがバインダーと合わされる。また、ゼオライトがバインダーと合わせることができ、その後にモリブデン化合物が支持体上で分散される。
モリブデン成分が支持体に適用される方法にかかわらず、700℃を超える温度における酸素含有ガスへのモリブデン含有触媒の暴露を回避し、好ましくは600℃を超える温度における酸素含有ガスへの暴露を回避することが一般に重要である。こうして、高温酸化環境中で、モリブデンがゼオライト中に存在するアルミニウムと反応して正味の(即ち、ゼオライトブレンステッド酸部位に固定されていない)モリブデン酸アルミニウムを生成し得ることがわかった。更に、この正味のモリブデン酸アルミニウムが触媒のコーク選択性を増大することにより触媒の性能に有害な影響を有し得ることがわかった。例えば、モリブデン成分がモリブデン化合物の溶液、例えば、ヘプタモリブデン酸アンモニウム溶液による支持体の含浸によりゼオライト支持体に付着される場合、触媒がモリブデン化合物を所望の元素形態又は炭化物形態に変換するために焼成工程に通常かけられる。それ故、焼成が空気又はその他の酸素含有ガス中で行なわれる場合、焼成温度が700℃以下、例えば、540℃以下であることが望ましい。
【0014】
或る実施態様において、支持体の熱伝導性及び熱容量を高めるだけでなく、その密度を増大するように支持体中に稠密な充填剤物質(これは脱水素環化反応で経験される条件に実質的に不活性である)を入れることが望ましいかもしれない。充填剤物質はまた反応性アルミニウムを実質的に含まないべきである。好適な充填剤物質として、炭化ケイ素及びコランダムが挙げられる。都合良くは、充填剤物質が支持体の約0.1質量%から約60質量%まで、例えば、約20質量%から約40質量%までの量で存在する。
典型的には、全触媒は約50μm〜約5000μm、例えば、約100μm〜約500μm、一般に約300μmの平均粒子サイズ、約100lb/ft3〜約200lb/ft3(約1.60g/cm3〜約3.20g/cm3)、例えば、約130lb/ft3〜約170lb/ft3(約2.08g/cm3〜約2.72g/cm3)、一般に約150lb/ft3(約2.40g/cm3)の粒子密度、高い摩擦抵抗、即ち、反応器/再生器系中の通過当りに摩損される1質量%未満、好ましくは0.01質量%未満の物質及び高い熱容量、即ち、0.7キロジュール/kg/°Kより大、例えば、0.9キロジュール/kg/°Kより大、例えば、1.1キロジュール/kg/°Kより大を有する粒子の形態で存在する。熱容量は単位質量当りケルビン度当りに吸収されるエネルギーの量と定義される。
【0015】
脱水素環化方法
本方法の脱水素環化工程において、メタン含有供給原料がメタンを高級炭化水素(ベンゼン及びナフタレンを含む)に変換するのに有効な条件、通常非酸化条件及び典型的には還元条件下で粒状脱水素環化触媒と接触させられる。関係する主たる正味の反応は以下のとおりである。
2CH4 ←→ C2H4+2H2 (反応1)
6CH4 ←→ C6H6+9H2 (反応2)
10CH4 ←→ C10H8+16H2 (反応3)
供給原料中に存在し得る二酸化炭素が下記の如き反応を促進することにより触媒活性及び安定性を改良する。
CO2+コーク → 2CO (反応4)
しかし、下記の如き競合する正味の反応を許すことにより平衡に悪影響する。
CO2+CH4 ←→ 2CO+2H2 (反応5)
脱水素環化工程はメタン含有供給原料を一つ以上の固定床、移動床又は流動床反応ゾーン中で粒状脱水素環化触媒と接触させることにより行なわれる。一般に、供給原料が反応ゾーン又は夫々の反応ゾーン中で脱水素環化触媒の移動床と接触され、供給原料が脱水素環化触媒の移動の方向に対し逆流する。一実施態様において、反応ゾーン又は夫々の反応ゾーンが沈降床反応器を含み、これは垂直に配置された反応器(その中で、粒状触媒が反応器の上部付近に入り、重力下で流れて触媒床を形成し、一方、供給原料が反応器の下部付近に入り、触媒床中を上向きに流れる)を意味する。別の実施態様において、脱水素環化反応が複数の直列に連結された流動床反応器(その中で、粒状触媒が一つの反応器から直列の次の隣接反応器へと一方向に流れ落ち、一方、供給原料が反対方向に反応器中及び反応器間に通される)中で行なわれる。
【0016】
或る実施態様において、非触媒粒状物質が触媒粒状物質に加えて一つ以上の脱水素環化反応ゾーンに供給されてもよい。非触媒粒状物質はエネルギー(熱)をその系に輸送し、かつ/又は必要とされるように空間を充填して必要とされる流体力学的環境を与えるための物質として使用し得る。非触媒粒状物質はバインダーなしに粒状物を形成してもよく、又は無機バインダー、例えば、クレー、シリカ、アルミナ、ジルコニア、又は粒子の物理的保全性を維持することを助けるのに使用されるその他の金属酸化物で結合されてもよい。粒子は実質的に球形であることが好ましい。好適な非触媒粒状物質の例は低表面積シリカ、アルミナ、セラミックス、及び炭化ケイ素である。
典型的には、脱水素環化反応ゾーン又は夫々の脱水素環化反応ゾーン中の触媒粒状物質+非触媒粒状物質の流量対炭化水素供給原料の流量の質量比は約1:1から約100:1まで、例えば、約1:1から約40:1まで、例えば、約5:1から20:1までである。
脱水素環化反応は吸熱性であり、それ故、夫々の脱水素環化反応ゾーン中の温度は反応が進行するにつれて最高温度から最低温度に低下する傾向があるであろう。脱水素環化工程に適した条件として、約700℃〜約1200℃、例えば、約800℃〜約950℃の最高温度及び約400℃〜約800℃、例えば、約500℃〜約700℃の最低温度が挙げられる。しかしながら、以下に説明されるように、熱が脱水素環化反応に供給されて反応中の温度低下を減少し、それ故、或る配置では、最高温度と最低温度の差が実質的にゼロに減少し得る。また、加熱された触媒を脱水素環化反応に供給することにより、逆の温度プロフィールを生じることが可能であり、即ち、プロセスガス出口反応温度がプロセスガス入口反応温度よりも高い。
一実施態様において、供給原料と粒状脱水素環化触媒の逆流が脱水素環化反応系を横切って逆の温度プロフィールを生じるために配置され、その結果、脱水素環化反応の吸熱性にかかわらず、脱水素環化反応系からの出口におけるガス流出物の反応温度と脱水素環化反応系への入口におけるメタン含有供給原料の反応温度の差が少なくとも+10℃、例えば、少なくとも+50℃、例えば、少なくとも+100℃、更には少なくとも+150℃である。
いずれにしても、脱水素環化反応が吸熱性であるので、触媒粒状物質が第一の高温、典型的には約800℃〜約1200℃、例えば、約900℃〜約1100℃で脱水素環化反応系に入り、第二の低温、典型的には約500℃〜約800℃、例えば、約600℃〜約700℃で反応系を出る。反応ゾーンを横切る触媒粒状物質の全温度差は少なくとも100℃である。
脱水素環化反応に使用されるその他の条件として、一般に約1kPa〜約1000kPa、例えば、約10kPa〜約500kPa、例えば、約50kPa〜約200kPaの圧力及び約0.01hr-1〜約1000hr-1、例えば、約0.1hr-1〜約500hr-1、例えば、約1hr-1〜約20hr-1の毎時の質量空間速度が挙げられる。都合良くは、脱水素環化工程がO2の不在下で行なわれる。
脱水素環化工程からの流出物の主要成分は水素、ベンゼン、ナフタレン、一酸化炭素、エチレン、及び未反応のメタンである。典型的には、流出物が少なくとも5質量%、例えば、少なくとも10質量%、例えば、少なくとも20質量%、都合良くは少なくとも30質量%の、供給原料よりも芳香族の環を含む。
ベンゼン及びナフタレンが、例えば、溶媒抽出、続いて分別により脱水素環化流出物から分離され、生成物流として回収し得る。しかしながら、以下に説明されるように、これらの芳香族成分の少なくとも一部が、生成物回収の前又は後に、アルキル化工程にかけられて、一層高価な物質、例えば、キシレンを生成し得る。更に、以下に説明されるように、本方法は脱水素環化反応の副生物として生成される水素を利用し、特に水素の少なくとも一部を一層高価な生成物に変換する。
【0017】
触媒再生
アルミニウムを含まないバインダーを使用しても、脱水素環化反応はコークを触媒に付着する傾向があり、それ故、触媒の活性を維持するために、触媒の少なくとも一部が連続的又は間欠的に再生される。これは典型的には触媒の一部を反応ゾーン又は夫々の反応ゾーンから、間欠基準、又は連続基準で取り出し、次いでその触媒部分を別の再生ゾーンに移すことにより達成される。再生ゾーン中で、コーク付着された脱水素環化触媒が触媒の炭素質物質の少なくとも一部を除去するのに有効な条件下で再生ガスと接触させられる。再生ゾーンは流動床、沸騰床、沈降床として操作される反応器、上昇反応器又はこれらの組み合わせであってもよい。実際に、夫々の再生ゾーンは複数の反応器、例えば、平行に連結された複数の上昇反応器又は直列に連結された複数の反応器、例えば、上昇反応器続いて沈降床を含んでもよい。再生後に、触媒が反応ゾーンに戻される。
一実施態様において、再生が酸素含有ガスの存在下で行なわれる。一般に、酸素含有ガスは空気よりも少ないO2、例えば、10質量%未満、更に好ましくは5質量%未満のO2を含み、H2Oを実質的に含まないことが好ましい。再生ガスはまたコークの一部を触媒からガス化するためのCO2を含んでもよい。再生ガスの好都合な源は空気分離ユニットからのO2減少され、N2濃縮された流れ及び工業又は天然ガス加工からの高CO2の廃棄流(これに空気又はO2が目標O2濃度を達成するために添加されていた)である。酸素含有ガスによる再生に適した条件として、約400℃から約700℃まで、例えば、約550℃から約650℃までの温度、10psia〜100psia(69kPa〜690kPa)、例えば、15psia〜60psia(103kPa〜414kPa)の圧力、及び0.1分〜100分、例えば、1分〜20分の触媒滞留時間が挙げられる。
【0018】
しかしながら、酸化環境中の再生が正味のモリブデン酸アルミニウムを生成でき、それ故、再生触媒のコーク選択性を増大することが以上の説明から認められるであろう。それ故、一般に、再生を水素含有ガスの存在下で行なうことが好ましく、それにより触媒のコークがメタンに変換される。一般に、水素含有ガスはかなりの量のメタン又はその他の炭化水素を含まず、典型的には炭化水素含量が20モル%未満、例えば、10モル%未満、例えば、2モル%未満である。一実施態様において、再生に必要とされる水素が脱水素環化反応からの水素含有流出物から少なくとも一部得られる。都合良くは、水素再生条件が約700℃から約1200℃まで、例えば、約800℃から約1000℃まで、例えば、約850℃から約950℃までの温度及び少なくとも100kPaa、例えば、約150kPaa〜約5000kPaaの圧力を含む。
一般に、反応ゾーン又は夫々の反応ゾーンから除去されたコーク付着された脱水素環化触媒は水素再生に最適よりも低い温度であり、それ故、除去された触媒は初期に燃料の補給源の燃焼により生じた燃焼ガスとの直接及び/又は間接の接触により所望の再生温度に加熱される。その加熱は加熱ゾーン(これは再生ゾーンと同じ容器中であってもよく、又は再生ゾーンとは別の容器中であってもよい)中で行なわれる。“燃料の補給源”はその源燃料が触媒とは物理的に別であり、それ故、例えば、脱水素環化反応の副生物として触媒上に生成されたコークではないことを意味する。典型的には、燃料の補給源はメタンの如き炭化水素を含み、特に好適な燃料源はその方法への供給原料として使用される天然ガスである。都合良くは、酸素の少ない雰囲気が加熱ゾーン中で維持され、その結果、炭化水素燃料を燃焼して最初の触媒部分を加熱することが合成ガスを生じ、次いでこれが追加の炭化水素生成物及び/又は燃料を生成するのに使用し得る。加えて、脱水素環化触媒への直接の伝熱の場合、酸素の少ない雰囲気の使用がモリブデン酸アルミニウムの生成を最小にするだけでなく、触媒中に存在する金属炭化物の酸化を抑制し、平均スチーム部分圧ひいては水熱触媒エージングを減少する。
また、好適な補給燃料源は水素、特に芳香族化反応の副生物として生成された水素の一部である。
【0019】
触媒再加熱
脱水素環化反応は吸熱性であるので、熱を反応に供給することが必要である。本方法において、これは触媒の一部を反応ゾーンから間欠基準又は連続基準で取り出し、それを別の加熱ゾーン(そこで触媒が燃料の補給源を燃焼することにより生成された熱い燃焼ガスとの直接又は間接の接触により加熱される)に移すことにより都合良く達成される。次いで加熱された触媒が反応ゾーンに戻される。
触媒再生が水素の存在下で行なわれる場合、触媒を最適再生温度にするのに通常必要とされるコーク付着された触媒の予熱が熱を脱水素環化反応に供給するための一つの可能な経路を与え得る。同様に、酸化再生は高度に発熱性であり、また供給するのに使用し得る。しかしながら、再生を反応への熱の唯一の源として使用して熱バランスを維持するために、その方法は所望の芳香族生成物ではなくコークへの高い選択性を必要とする。こうして、更に、酸化再生でも、触媒再生工程に加えて別の触媒予熱工程を使用することが一般に望ましいであろう。メタンからの芳香族化合物の製造において別の触媒再加熱及び再生を提供するための方法及び装置の詳細が米国公開特許出願第2007/0249740号(その全内容が参考として本明細書に含まれる)に見られる。
【0020】
触媒再浸炭
特に触媒加熱が熱い燃焼ガスとの直接の接触を伴なう場合、再生の目的及び/又は伝熱のための脱水素環化触媒の加熱は触媒を酸化条件に暴露してもよいことが認められるであろう。結果として、脱水素環化触媒中に存在する金属、例えば、レニウム、タングステン又はモリブデンが加熱工程中にそれらの触媒活性元素又は炭化物形態から酸化物種に変換されるかもしれない。こうして、反応ゾーンに戻される前に、再生され、かつ/又は再加熱された触媒が再生ゾーン、加熱ゾーン及び反応ゾーンとは別の触媒処理ゾーンに移されてもよく、そこで触媒がメタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブテン、ヘキサン、ベンゼン及びナフタレンから選ばれた少なくとも一種の炭化水素を含む浸炭ガスと接触させられる。或る場合には、浸炭ガスがまたCO2、CO、H2、H2O及び不活性希釈剤の少なくとも一種を含んでもよい。また、浸炭ガスは水素とCO及びCO2の少なくとも一種の混合物であってもよい。更に、触媒を多種の浸炭ガスと逐次接触させることが望ましいかもしれず、夫々がメタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブテン、ヘキサン、ベンゼン及びナフタレンから選ばれた炭化水素又は水素とCO及びCO2の少なくとも一種の混合物を含む。
触媒の損傷を回避するために、浸炭方法は触媒処理ゾーン中の最高温度が脱水素環化反応ゾーン中の最高温度より低いように制御されるが、典型的には最高浸炭温度は再生ゾーンで到達される最高温度よりも高い。一般に、触媒処理ゾーン中の最高温度は約400℃から約1100℃まで、例えば、約500℃から約900℃までであり、最低温度は300℃〜500℃である。典型的には、触媒処理ゾーンは10psia〜100psia(69kPa〜690kPa)、例えば、15psia〜60psia(103kPa〜414kPa)の圧力で操作される。一般に、触媒処理ゾーン中の触媒粒子の平均滞留時間は0.1分〜100分、例えば、1分〜20分であろう。これらの条件下で、浸炭ガスが触媒の金属酸化物種と反応してその金属をその触媒活性元素又は炭化物形態に戻す。加えて、浸炭ガスが触媒支持体の活性表面部位と反応して脱水素芳香族化反応ゾーン中でコークを生成するそれらの傾向を減少し得る。
【0021】
再生触媒の浸炭に必要とされる温度を維持するために、熱が浸炭工程の前又はその間に触媒及び/又は浸炭ガスに供給し得る。例えば、熱が間接加熱、反応ゾーンもしくは加熱ゾーンからの熱い煙道ガスとの接触、浸炭方法からの熱いガス流出物との接触、又は加熱ゾーンからの加熱された触媒との混合により触媒に供給し得る。熱が外部の炉もしくは熱交換機又は加熱ゾーンからの加熱された触媒により浸炭ガスに都合良く供給される。
或る場合には、加熱された未再生触媒が初期にH2に富む流れと接触させられて浸炭工程の前に触媒の金属成分を部分的又は完全に還元することが望ましいかもしれない。また、浸炭された触媒をH2及び/又はCO2による後処理にかけて浸炭工程により触媒に付着されたかもしれない過剰の炭素をストリッピングして除くことが望ましいかもしれない。
実際に、脱水素環化反応が進行するにつれて、新しい脱水素環化触媒がその方法に加えられて機械摩擦又は失活により失われた触媒を補給し、また触媒の損傷を回避するための新しい触媒の追加の多くの手段があるが、新しい触媒を夫々の脱水素環化反応ゾーン中で最高温度より下の温度で操作しているその方法の領域に加えることが一般に望ましい。一実施態様において、新しい脱水素環化触媒が触媒処理ゾーンへの導入によりその方法に加えられ、それにより新しい触媒がメタン含有供給原料との接触のために反応ゾーンに移される前に浸炭ガスと接触させられる。別の実施態様において、触媒が逆温度プロフィールでもって反応器系の低温領域に加えられてもよい。
【0022】
水素管理
水素が脱水素環化流出物の主要成分であるので、芳香族生成物の回収後に、流出物が水素排除工程にかけられて流出物の水素含量を減少し、その後に未反応のメタンが脱水素環化工程に循環され、供給原料利用を最大にする。典型的には、水素排除工程は脱水素環化流出物中の水素の少なくとも一部を酸素含有種、例えば、CO及び/又はCO2と反応させて、水及び第一の(脱水素環化)流出物流と較べて減少された水素含量を有する第二の流出物流を生じる。好適な水素排除方法が以下に記載され、また2005年12月2日に出願された本件出願人の共同未決PCT出願第PCT/US2005/044042号(代理人書類番号2004B154)に記載されている。
都合良くは、水素排除工程が(i) メタン化及び/又はエタン化、(ii)フィッシャー-トロプッシュ方法、(iii) C1-C3アルコール、特にメタノール、及びその他の酸素化物の合成、(iv)メタノール又はジメチルエーテル中間体による軽質オレフィン、パラフィン及び/又は芳香族化合物の合成及び/又は(v) 選択的水素燃焼を含む。これらの工程は最大の利益を得るために逐次使用されてもよく、例えば、フィッシャー-トロプッシュが最初に使用されてC2+濃縮流を生じ、続いてメタン化が使用されてH2の高転化率を得てもよい。
典型的には、以下に記載されるように、水素排除工程が炭化水素を生成し、その場合に、同時生成された水の分離後に、炭化水素の少なくとも一部が脱水素環化工程に都合良く循環される。例えば、水素排除工程で生成された炭化水素がパラフィン及びオレフィンを含む場合、脱水素環化工程に循環される部分が6個以下の炭素原子、例えば、5個以下の炭素原子、例えば、4個以下の炭素原子又は3個以下の炭素原子を有するパラフィン又はオレフィンを都合良く含む。水素排除工程で生成された炭化水素が芳香族化合物を含む場合、脱水素環化工程に循環される部分が単環芳香族種を都合良く含む。
【0023】
メタン化/エタン化
一実施態様において、水素排除工程は下記の正味の反応に従ってメタン及び/又はエタンを生成するための脱水素環化流出物中の水素の少なくとも一部と二酸化炭素の反応を含む。
CO2+4H2 ←→ CH4+2H2O (反応6)
2CO2+7H2 ←→ C2H6+4H2O (反応7)
使用される二酸化炭素は都合良くは天然ガス流、典型的には脱水素環化工程への供給原料として使用されたのと同じ天然ガス流の一部である。二酸化炭素がメタン含有流の一部である場合、その流れのCO2:CH4が都合良くは約1:1〜約0.1:1に維持される。二酸化炭素含有流及び脱水素環化流出物の混合は都合良くはガス供給原料をジェット放出器の入口に供給することにより達成される。
メタン又はエタンを生成するための水素排除工程は所望の反応6又は反応7に必要とされる化学量論量の比率に近いH2:CO2モル比を使用するが、CO2含有又はH2含有第二流出物流を生成することが所望される場合には、小さい変化が化学量論比になし得る。メタン又はエタンを生成するための水素排除工程は無機支持体上に金属成分、特に遷移金属又はその化合物を含む2機能性触媒の存在下で都合良く行なわれる。好適な金属成分は銅、鉄、バナジウム、クロム、亜鉛、ガリウム、ニッケル、コバルト、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、タングステン、イリジウム、白金、金、ガリウム並びにこれらの組み合わせ及び化合物を含む。無機支持体は無定形物質、例えば、シリカ、アルミナもしくはシリカ-アルミナ、又は脱水素芳香族化触媒についてリストされたもの等であってもよい。加えて、無機支持体は結晶性物質、例えば、微孔性又は中間孔性の結晶性物質であってもよい。好適な多孔性結晶性物質として、脱水素環化触媒について先にリストされたアルミノシリケート、アルミノホスフェート及びシリコアルミノホスフェートが挙げられる。
メタン及び/又はエタンを生成するための水素排除工程は約100℃〜約900℃、例えば、約150℃〜約500℃、例えば、約200℃〜約400℃の温度、約200kPa〜約20,000kPa、例えば、約500kPa〜約5000kPaの圧力及び約0.1hr-1〜約10,000hr-1、例えば、約1hr-1〜約1,000hr-1の毎時の質量空間速度を含む広範囲の条件で行ない得る。CO2転化率レベルは典型的には20〜100%であり、都合良くは90%より大きく、例えば、99%より大きい。この発熱反応は床間に熱除去を備えた多くの触媒床中で行なわれてもよい。加えて、一つ以上のリード床は反応速度を最大にするために高温で操作されてもよく、また一つ以上のテール床は熱力学的変換を最大にするために低温で操作されてもよい。
その反応の主生成物は水であり、そしてH2:CO2モル比に応じて、若干の不飽和C2及び高級炭化水素と一緒に、メタン、エタン及び高級アルカンである。加えて、一酸化炭素への二酸化炭素の若干の部分水素化が好ましい。水の除去後に、メタン、一酸化炭素、未反応の二酸化炭素及び高級炭化水素が追加の芳香族生成物を生成するために脱水素環化工程に直接供給し得る。
【0024】
フィッシャー-トロプッシュ方法
別の実施態様において、水素排除工程がC2-C5パラフィン及びオレフィンを生成するためにフィッシャー-トロプッシュ方法による脱水素環化流出物中の水素の少なくとも一部と一酸化炭素の反応を含む。
フィッシャー-トロプッシュ方法は当業界で公知であり、例えば、米国特許第5,348,982号及び同第5,545,674号(参考として本明細書に含まれる)を参照のこと。その方法は典型的には促進剤、例えば、ルテニウム、レニウム、ハフニウム、ジルコニウム、チタンを用いて、又は用いないでフィッシャー-トロプッシュ触媒、一般に担持され、又は担持されていないVIII族、非貴金属、例えば、Fe、Ni、Ru、Coの存在下の約0.5:1〜約4:1、例えば、約1.5:1〜約2.5:1のモル比、約175℃〜約400℃、例えば、約180℃〜約240℃の温度及び約1バール〜約100バール(100kPa〜10,000kPa)、例えば、約10バール〜約40バール(1,000kPa〜4,000kPa)の圧力における水素と一酸化炭素の反応を伴なう。支持体は、使用される場合には、耐火性金属酸化物、例えば、IVB族、即ち、チタニア、ジルコニア、もしくはシリカ、アルミナ、又はシリカ-アルミナであってもよい。一実施態様において、触媒が促進剤としてのレニウム又はジルコニウムとともに非シフティング触媒、例えば、コバルト又はルテニウム、特にコバルト、特にシリカ又はチタニア、一般にチタニアで担持されたコバルト及びレニウムを含む。
【0025】
別の実施態様において、炭化水素合成触媒がZSM-5上に金属、例えば、Cu、Cu/Zn又はCr/Znを含み、その方法がかなりの量の単環芳香族炭化水素を生成するように操作される。このような方法の例がJose Erena著“液体炭化水素への合成ガスの変換のためのCr2O3 - ZnO及びZSM-5触媒の物理的混合物の研究”; Ind. Eng. Chem Res. 1998, 37, 1211-1219(参考として本明細書に含まれる)に記載されている。
フィッシャー-トロプッシュ液体、即ち、C5+が回収され、軽質ガス、例えば、未反応の水素及びCO、C1-C3又はC4並びに水が重質炭化水素から分離される。次いで重質炭化水素が生成物として回収され、又は追加の芳香族生成物を生成するために脱水素環化工程に供給し得る。
フィッシャー-トロプッシュ反応に必要とされる一酸化炭素はメタン含有供給原料中に存在し、もしくはそれで同時供給され、また脱水素環化工程で副生物として生成される一酸化炭素により全部又は部分的に提供し得る。必要とされる場合、追加の一酸化炭素が、例えば、天然ガス中に含まれる二酸化炭素をシフト触媒(それにより、一酸化炭素が逆水ガスシフト反応:
CO2+H2 ←→ CO+H2O (反応8)
により、そして下記の反応:
CH4+H2O ←→ CO+3H2
により生成される)に供給することにより生成し得る。
【0026】
アルコール合成
更なる実施態様において、水素排除工程がC1-C3アルコール、特にメタノールを生成するための脱水素環化流出物中の水素の少なくとも一部と一酸化炭素の反応を含む。合成ガスからのメタノール及びその他の酸素化物の製造はまた公知であり、例えば、米国特許第6,114,279号、同第6,054,497号、同第5,767,039号、同第5,045,520号、同第5,254,520号、同第5,610,202号、同第4,666,945号、同第4,455,394号、同第4,565,803号、同第5,385,949号(これらの記載が参考として本明細書に含まれる)に記載されている。典型的には、使用される合成ガスが約0.5:1から約20:1までの範囲、例えば、約2:1から約10:1までの範囲の水素(H2)対炭素酸化物(CO+CO2)のモル比を有し、二酸化炭素が必要により合成ガスの全質量を基準として、50質量%以下の量で存在してもよい。
メタノール合成方法に使用される触媒として、一般に銅、銀、亜鉛、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、バナジウム、クロム、マンガン、ガリウム、パラジウム、オスミウム及びジルコニウムからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素の酸化物が挙げられる。都合良くは、触媒が銅をベースとする触媒、例えば、必要により銀、亜鉛、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、バナジウム、クロム、マンガン、ガリウム、パラジウム、オスミウム及びジルコニウムから選ばれた少なくとも一種の元素の酸化物の存在下の、銅酸化物の形態の触媒である。都合良くは、触媒が銅酸化物並びに亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、クロム、及びジルコニウムから選ばれた少なくとも一種の元素の酸化物を含む。一実施態様において、メタノール合成触媒が銅酸化物、亜鉛酸化物及びアルミニウム酸化物からなる群から選ばれる。触媒が銅及び亜鉛の酸化物を含むことが更に好ましい。
メタノール合成方法は広範囲の温度及び圧力で行ない得る。好適な温度は約150℃から約450℃まで、例えば、約175℃から約350℃まで、例えば、約200℃から約300℃までの範囲である。好適な圧力は約1,500kPaから約12,500kPaまで、例えば、約2,000kPaから約10,000kPaまで、例えば、2,500kPaから約7,500kPaまでの範囲である。毎時のガス空間速度は使用される方法の型に応じて変化するが、一般に触媒床中のガスの流れの毎時のガス空間速度は約50hr-1から約50,000hr-1まで、例えば、約250hr-1から約25,000hr-1まで、例えば、約500hr-1から約10,000hr-1までの範囲である。この発熱反応は固定床又は流動床(床間に熱除去を備えた多くの触媒床を含む)中で行なわれてもよい。加えて、一つ以上のリード床が反応速度を最大にするために高温で操作されてもよく、一つ以上のテール床が熱力学的転化率を最大にするために低温で操作されてもよい。
得られるメタノール及び/又はその他の酸素化物は別の製品として販売でき、脱水素環化工程で生成された芳香族化合物を一層高価な生成物、例えば、キシレンにアルキル化するのに使用でき、又は低級オレフィン、特にエチレン及びプロピレンの製造のための供給原料として使用し得る。メタノールからオレフィンへの変換は公知の方法であり、例えば、米国特許第4,499,327号(参考として本明細書に含まれる)に記載されている。
【0027】
選択的水素燃焼
更に別の実施態様において、水素排除工程が選択的水素燃焼を含み、これは実質的に流れ中の炭化水素を酸素と反応させて一酸化炭素、二酸化炭素、及び/又は酸素化炭化水素を生成することなしに、混合された流れ中の水素が酸素と反応させられて水又はスチームを生成する方法である。一般に、選択的水素燃焼は酸素含有固体物質、例えば、混合金属酸化物の存在下で行なわれて、水素に結合された酸素の一部を放出するであろう。
一つの好適な選択的水素燃焼方法が米国特許第5,430,210号(参考として本明細書に含まれる)に記載されており、反応性条件で炭化水素及び水素を含む第一の流れと酸素を含む第二の流れを酸素を含まないガスに対し不透過性の膜(前記膜は水素燃焼に選択的な金属酸化物を含む)の別の表面と接触させ、選択的水素燃焼生成物を回収することを含む。金属酸化物は典型的にはビスマス、インジウム、アンチモン、タリウム及び/又は亜鉛の混合金属酸化物である。
米国特許第5,527,979号(参考として本明細書に含まれる)は、アルケンを生成するためのアルカンの正味の接触酸化的脱水素化方法を記載している。その方法はアルケンへのアルカンの同時の平衡脱水素化及びその平衡脱水素化反応を更に生成物アルケンに誘導するための生成された水素の選択的燃焼を伴なう。特に、アルカン供給原料が第一の反応器中で平衡脱水素化触媒で脱水素化され、次いで第一の反応器からの流出物が、酸素とともに、金属酸化物触媒(これは水素の燃焼を選択的に触媒作用するのに利用できる)を含む第二の反応器に通される。その平衡脱水素化触媒は白金を含んでもよく、また選択的金属酸化物燃焼触媒はビスマス、アンチモン、インジウム、亜鉛、タリウム、鉛及びテルリウム又はこれらの混合物を含んでもよい。
2004年8月5日に公開され、参考として本明細書に含まれる米国特許出願公開第2004/0152586号は、クラッキング反応器からの流出物の水素含量の減少方法を記載している。その方法は(1) 少なくとも一種の固体酸クラッキング成分並びに(2) 実質的に(a) i)3族からの少なくとも一種の金属及び元素の周期律表の4-15族からの少なくとも一種の金属、ii) 元素の周期律表の5-15族からの少なくとも一種の金属、及び元素の周期律表の1族、2族及び4族の少なくとも一つからの少なくとも一種の金属、iii)1-2族からの少なくとも一種の金属、3族からの少なくとも一種の金属、及び元素の周期律表の4-15族からの少なくとも一種の金属、並びにiv) 元素の周期律表の4-15族からの2種以上の金属からなる群から選ばれた金属燃焼成分と、(b) 酸素及び硫黄の少なくとも一種(その酸素及び硫黄の少なくとも一種は金属の内部及び間の両方で化学的に結合されている)からなる少なくとも一種の金属をベースとする選択的水素燃焼成分を含む触媒系を使用する。
本発明の選択的水素燃焼反応は一般に約300℃から約850℃までの範囲の温度及び約1気圧から約20気圧まで(100〜2000kPa)の範囲の圧力で行なわれる。
【0028】
芳香族生成物回収/処理
水素に加えて、脱水素環化工程のその他の主要な生成物はベンゼン及びナフタレンである。これらの生成物は、典型的には溶媒抽出、続いて分別により、脱水素環化流出物から分離でき、次いで商品化学薬品として直接販売し得る。また、ベンゼン及び/又はナフタレンの一部又は全部がアルキル化されて、例えば、トルエン、キシレン及びアルキルナフタレンを生成することができ、かつ/又は水素化にかけられて、例えば、シクロヘキサン、シクロヘキセン、ジヒドロナフタレン(ベンジルシクロヘキセン)、テトラヒドロナフタレン(テトラリン)、ヘキサヒドロナフタレン(ジシクロヘキセン)、オクタヒドロナフタレン及び/又はデカヒドロナフタレン(デカリン)を生成し得る。好適なアルキル化方法及び水素化方法が以下に記載され、また2005年12月2日に出願された、本件出願人の共同未決PCT出願PCT/US2005/043523(代理人書類番号2004B156)及び2005年12月2日に出願された、PCT/US2005/044038(代理人書類番号2004B155)に更に詳しく記載されている。
【0029】
芳香族化合物アルキル化
芳香族化合物、例えば、ベンゼン及びナフタレンのアルキル化は当業界で公知であり、典型的には気相又は液相中の酸触媒の存在下のオレフィン、アルコール又はアルキルハライドと芳香族種の反応を伴なう。好適な酸触媒として、フレームワーク型MFI(例えば、ZSM-5及びシリカライト)、MEL(例えば、ZSM-11)、MTW(例えば、ZSM-12)、TON(例えば、ZSM-22)、MTT(例えば、ZSM-23)、MFS(例えば、ZSM-57)及びFER(例えば、ZSM-35)並びにZSM-48を有する物質を含む、中間孔のゼオライト(即ち、米国特許第4,016,218号に定義されたような2-12の制約インデックスを有するもの)だけでなく、大孔のゼオライト(即ち、2未満の制約インデックスを有するもの)、例えば、フレームワーク型BEA(例えば、ゼオライトベータ)、FAU(例えば、ZSM-3、ZSM-20、ゼオライトX、Y、超安定化Y及び脱アルミニウム化Y)、MOR(例えば、モルデナイト)、MAZ(例えば、ZSM-4)、MEI(例えば、ZSM-18)及びMWW(例えば、MCM-22、PSH-3、SSZ-25、ERB-1、ITQ-1、ITQ-2、MCM-36、MCM-49及びMCM-56)を有する物質が挙げられる。
【0030】
本方法の一実施態様において、ベンゼンが脱水素環化流出物から回収され、次いでオレフィン、例えば、エタン化/メタン化を使用する水素排除工程の副生物として生成されたエチレンでアルキル化される。エチレンによるベンゼンの気相アルキル化を行なうのに典型的な条件として、約650°Fから900°Fまで(343〜482℃)の温度、ほぼ大気圧〜約3000psig(100〜20,800kPa)の圧力、約0.5hr-1から約2.0hr-1までのエチレンをベースとするWHSV及び1:1から30:1までのベンゼン対エチレンのモル比が挙げられる。エチレンによるベンゼンの液相アルキル化は300°F〜650°F(150〜340℃)の温度、約3000psig(20,800kPa)までの圧力、約0.1 hr-1から約20hr-1までのエチレンをベースとするWHSV及び1:1から30:1までのベンゼン対エチレンのモル比で行なわれてもよい。
都合良くは、ベンゼンエチル化はゼオライトベータ、ゼオライトY、MCM-22、PSH-3、SSZ-25、ERB-1、ITQ-1、ITQ-2、ITQ-13、ZSM-5、MCM-36、MCM-49及びMCM-56の少なくとも一種を含む触媒を使用して少なくとも部分液相条件下で行なわれる。
ベンゼンエチル化は脱水素環化/水素排除方法の場所で行なうことができ、又はベンゼンがエチルベンゼンへの変換のための別の場所に輸送し得る。次いで得られるエチルベンゼンが販売でき、例えば、スチレンの製造における前駆体として使用でき、又は当業界で公知の方法により混合キシレンに異性化し得る。
本方法の別の実施態様において、アルキル化剤がメタノール又はジメチルエーテル(DME)であり、脱水素環化流出物から回収されたベンゼン及び/又はナフタレンをアルキル化するのに使用されてトルエン、キシレン、メチルナフタレン及び/又はジメチルナフタレンを生成する。メタノール又はDMEがベンゼンをアルキル化するのに使用される場合、これは都合良くはゼオライト、例えば、ZSM-5、ゼオライトベータ、ITQ-13、MCM-22、MCM-49、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、及びZSM-48を含む触媒(これは120℃の温度及び60トル(8kPa)のジメチルブタン圧力で測定された場合に約0.1-15秒-1の2,2-ジメチルブタンに関する拡散パラメーターを有するようにスチーム処理により変性されていた)の存在下で行なわれる。このような方法はパラ-キシレンの生成に選択的であり、例えば、米国特許第6,504,272号(参考として本明細書に含まれる)に記載されている。メタノールがナフタレンをアルキル化するのに使用される場合、これは都合良くはZSM-5、MCM-22、PSH-3、SSZ-25、ERB-1、ITQ-1、ITQ-2、ITQ-13、MCM-36、MCM-49又はMCM-56を含む触媒の存在下で行なわれる。このような方法は2,6-ジメチルナフタレンを選択的に生成するのに使用でき、例えば、米国特許第4,795,847号及び同第5,001,295号(参考として本明細書に含まれる)に記載されている。
【0031】
メタノール又はDMEが本発明の方法でアルキル化剤として使用される場合、それはその方法への別の供給原料として提供でき、又は二酸化炭素含有供給原料ガス、例えば、天然ガス流を脱水素環化工程からの流出物の一部又は全部に添加することによりその場で少なくとも部分的に生成し得る。特に、脱水素環化流出物は、芳香族成分の分離の前に、逆シフト反応器に供給され、上記反応5及び8の如き反応により流出物の一酸化炭素含量を増大する条件下で二酸化炭素含有供給原料と反応させられる。
加えて、メタン及びCO2及び/又はスチームが逆シフト反応器に供給されて合成ガスを生成してもよく、次いでこれがアルキル化工程に必要とされるようなH2/CO/CO2比を調節するために脱水素環化流出物の一部と混合し得る。
典型的には、逆シフト反応器は支持体上の遷移金属、例えば、アルミナ、シリカ又はチタニア上のFe、Ni、Cr、Znを含む触媒を含み、約500℃〜約1200℃、例えば、約600℃〜約1000℃、例えば、約700℃〜約950℃の温度及び約1kPa〜約10,000kPa、例えば、約2,000kPa〜約10,000kPa、例えば、約3000kPa〜約5,000kPaの圧力を含む条件下で操作される。毎時のガス空間速度は使用される方法の型に応じて変化してもよいが、一般に触媒床中のガスの流れの毎時のガス空間速度は約50hr-1〜約50,000hr-1、例えば、約250hr-1〜約25,000hr-1、更に例えば、約500hr-1〜約10,000hr-1の範囲である。
次いで逆シフト反応器からの流出物が下記の如き反応を起こさせる条件下で操作するアルキル化反応器に供給し得る。
CO+2H2 ←→ CH3OH (反応9)
CH3OH+C6H6 → トルエン+H2O (反応10)
2CH3OH+C6H6 → キシレン+2H2O (反応11)
【0032】
このようなアルキル化反応器に適した条件は約100℃〜約700℃の温度、約1気圧〜約300気圧(100〜30,000kPa)の圧力及び約0.01hr-1〜約100hr-1の芳香族炭化水素に関するWHSVを含むであろう。好適な触媒は典型的には一種以上の金属又は金属酸化物、例えば、銅、クロム及び/又は亜鉛酸化物と一緒に、1〜12の制約インデックスを有するモレキュラーシーブ、例えば、ZSM-5を含むであろう。
都合良くは、アルキル化触媒がモレキュラーシーブを含む場合、後者は反応11により生成される主たるキシレン異性体がパラキシレンであるようにその拡散特性を変えるために変性される。拡散変性の好適な手段として、スチーム処理並びにモレキュラーシーブの表面上又はその孔の口中のケイ素化合物、コーク、金属酸化物、例えば、MgO、及び/又はPのex-situ又はin-situ付着が挙げられる。また、活性金属が一層高度に反応性の種、例えば、オレフィン(これらは副生物として生成されるかもしれず、またそれ以外に触媒失活を生じ得る)を飽和するようにモレキュラーシーブに混入されることが好ましい。
次いでアルキル化反応器からの流出物が分離部分に供給でき、その中で芳香族生成物が初期に、都合良くは溶媒抽出により、水素及びその他の低分子量物質から分離されるであろう。次いで芳香族生成物がベンゼン留分、トルエン留分、C8留分並びにナフタレン及びアルキル化ナフタレンを含む重質留分に分別し得る。次いでC8芳香族留分が製品として販売され、又は一層多くのp-キシレンを生成するための異性化ループに供給される有益なp-キシレン成分及び残りの混合キシレンを分離するために結晶化又は吸収プロセスに供給し得る。トルエン留分は販売可能な製品として除去でき、アルキル化反応器に循環でき、又は追加のp-キシレンの調製のためのトルエン不均化ユニット、例えば、選択的トルエン不均化ユニットに供給し得る。
【0033】
芳香族化合物水素化
アルキル化工程に加えて、又はそれに代えて、脱水素環化流出物中の芳香族成分の少なくとも一部が有益な生成物、例えば、シクロヘキサン、シクロヘキセン、ジヒドロナフタレン(ベンジルシクロヘキセン)、テトラヒドロナフタレン(テトラリン)、ヘキサヒドロナフタレン(ジシクロヘキセン)、オクタヒドロナフタレン及び/又はデカヒドロナフタレン(デカリン)を生成するために水素化し得る。これらの生成物は燃料及び化学中間体として使用でき、テトラリン及びデカリンの場合には、芳香族成分を脱水素環化流出物から抽出するための溶媒として使用し得る。
水素化は都合良くは、しかし必ずではなく、脱水素環化流出物からの芳香族成分の分離後に行なわれ、都合良くは脱水素環化反応により生成された水素の一部を使用する。好適な芳香族水素化方法は当業界で公知であり、典型的にはアルミナ又はシリカ支持体で担持されたNi、Pd、Pt、Ni/Mo又は硫化Ni/Moを含む触媒を使用する。水素化方法に適した操作条件として、約300°F〜約1000°F(150〜540℃)、例えば、約500°F〜約700°F(260〜370℃)の温度、約50psig〜約2,000psig(445〜13890kPa)、例えば、約100psig〜約500psig(790〜3550kPa)の圧力及び約0.5hr-1〜約50hr-1、例えば、約2hr-1〜約10hr-1のWHSVが挙げられる。
生成物中に1個以上のオレフィン性炭素-炭素結合を残すための部分水素化がまた重合又はその他の下流の化学変換に適した物質を生成するのに望ましいかもしれない。好適な部分水素化方法は当業界で公知であり、典型的には貴金属を含む触媒を使用し、金属酸化物、例えば、La2O3-ZnOで担持されたルテニウムが好ましい。均一貴金属触媒系がまた使用し得る。部分水素化方法の例が米国特許第4,678,861号、同第4,734,536号、同第5,457,251号、同第5,656,761号、同第5,969,202号、及び同第5,973,218号(これらの全内容が参考として本明細書に含まれる)に開示されている。
別の水素化方法は無定形アルミノシリケート又はゼオライト、例えば、ゼオライトX、ゼオライトY又はゼオライトベータで担持された触媒、例えば、硫化Ni/W又は硫化Niによるアルキルベンゼンを生成するためのナフタレン成分の低圧ハイドロクラッキングを伴なう。低圧ハイドロクラッキングに適した操作条件として、約300°F〜約1000°F(150〜540℃)、例えば、約500°F〜約700°F(260〜370℃)の温度、約50psig〜約2,000psig(445〜13890kPa)、例えば、約100psig〜約500psig(790〜3550kPa)の圧力及び約0.5hr-1〜約50hr-1、例えば、約2hr-1〜約10hr-1のWHSVが挙げられる。
今、本発明が下記の非限定実施例を参照して更に特別に記載される。
【実施例1】
【0034】
Mo/ZSM-5物質を結合された触媒粒子を調製する際の使用のために調製した。25:1のシリカ対アルミナモル比及び約0.5ミクロンの結晶サイズを有する商用で製造されたZSM-5 1000gを2時間にわたって二つのバッチでMoO3(アルドリッチ、99.5%)113.28gとブレンドした。これらのバッチを合わせ、5時間にわたって500℃で1℃/分の加熱傾斜速度で流れている空気を用いてマッフル炉中で焼成した。得られるMoレベルはXRF分析により6.7質量%であることを測定した。
【実施例2】
【0035】
実施例1の物質を使用して65質量%のMoZSM-5/35質量%のチタニア触媒粒子を調製した。Mo/ZSM-5 68.4gを10分間にわたってチタニア(デグッサP-25)35.9gとともに混錬した。水を添加して65.7%の固形分の混合物を生成した。その物質を1/10"シリンダー押出物に押し出した。押出物を乾燥させ、マッフル炉中で6時間にわたって1000°F(540℃)で流れている空気中で5°F(3℃)/分の加熱速度で焼成した。得られるMoレベルはXRF分析により4.5質量%であることを測定した。
【実施例3】
【0036】
実施例1の物質を使用して80質量%のMoZSM-5/20質量%のチタニア触媒粒子を調製した。Mo/ZSM-5 84.2gを10分間にわたってチタニア(デグッサP-25)20.5gとともに混錬した。水を添加して約65%の固形分の混合物を生成した。その物質を1/10"シリンダー押出物に押し出した。押出物を乾燥させ、マッフル炉中で6時間にわたって1000°F(540℃)で流れている空気中で5°F(3℃)/分の加熱速度で焼成した。得られるMoレベルはXRF分析により5.0質量%であることを測定した。
【実施例4】
【0037】
実施例1の物質を使用して65質量%のMoZSM-5/35質量%のアルミナ触媒粒子を調製した。Mo/ZSM-5 68.4gを10分間にわたってアルミナ(UOPバーサル300)38.6gとともに混錬した。水を添加して53.8%の固形分の混合物を生成した。その物質を1/10"シリンダー押出物に押し出した。押出物を乾燥させ、マッフル炉中で6時間にわたって1000°F(540℃)で流れている空気中で5°F(3℃)/分の加熱速度で焼成した。得られるMoレベルはXRF分析により4.0質量%であることを測定した。
【実施例5】
【0038】
実施例1の物質を使用して80質量%のMoZSM-5/20質量%のアルミナ触媒粒子を調製した。Mo/ZSM-5 84.2gを10分間にわたってアルミナ(UOPバーサル300)27.8gとともに混錬した。水を添加して50.8%の固形分の混合物を生成した。その物質を1/10"シリンダー押出物に押し出した。押出物を乾燥させ、マッフル炉中で6時間にわたって1000°F(540℃)で流れている空気中で5°F(3℃)/分の加熱速度で焼成した。得られるMoレベルはXRF分析により5.1質量%であることを測定した。
【実施例6】
【0039】
実施例1の物質を使用して65質量%のMoZSM-5/35質量%のシリカ触媒粒子を調製した。Mo/ZSM-5 64.8gを10分間の間隔でシリカ(グレース・ダビソン・ルドックスHS-40)43.8g、シリカ(デグッサ、ウルトラシルVN3-SP)19.2g及び苛性ソーダ溶液1.96gとともに混錬した。水を添加して75.2%の固形分の混合物を生成した。その物質を1/10"シリンダー押出物に押し出した。押出物を乾燥させ、マッフル炉中で6時間にわたって1000°F(540℃)で流れている空気中で5°F(3℃)/分の加熱速度で焼成した。得られるMoレベルはXRF分析により4.6質量%であることを測定した。
【実施例7】
【0040】
実施例1の物質を使用して80質量%のMoZSM-5/20質量%のシリカ触媒粒子を調製した。Mo/ZSM-5 85gを10分間の間隔でシリカ(グレース・ダビソン・ルドックスHS-40)25g、シリカ(デグッサ、ウルトラシルVN3-SP)11g及び苛性ソーダ溶液1.96gとともに混錬した。水を添加して68.9%の固形分の混合物を生成した。その物質を1/10"シリンダー押出物に押し出した。押出物を乾燥させ、マッフル炉中で6時間にわたって1000°F(540℃)で流れている空気中で5°F(3℃)/分の加熱速度で焼成した。得られるMoレベルはXRF分析により5.5質量%であることを測定した。
【実施例8】
【0041】
実施例1の物質を使用して65質量%のMoZSM-5/35質量%のジルコニア触媒粒子を調製した。Mo/ZSM-5 68.4gを10分間にわたって酸化ジルコニウム(IV)(アルドリッチ、99%)35gとともに混錬した。水を添加して68.6%の固形分の混合物を生成した。その物質を1/10"シリンダー押出物に押し出した。押出物を乾燥させ、マッフル炉中で6時間にわたって1000°F(540℃)で流れている空気中で5°F(3℃)/分の加熱速度で焼成した。得られるMoレベルはXRF分析により4.0質量%であることを測定した。
【実施例9】
【0042】
実施例1の物質を使用して80質量%のMoZSM-5/20質量%のジルコニア触媒粒子を調製した。Mo/ZSM-5 84.2gを10分間にわたって酸化ジルコニウム(IV)(アルドリッチ、99%)20gとともに混錬した。水を添加して63.8%の固形分の混合物を生成した。その物質を1/10"シリンダー押出物に押し出した。押出物を乾燥させ、マッフル炉中で6時間にわたって1000°F(540℃)で流れている空気中で5°F(3℃)/分の加熱速度で焼成した。得られるMoレベルはXRF分析により5.2質量%であることを測定した。
【実施例10】
【0043】
実施例1の物質を使用して65質量%のMoZSM-5/15%の炭化ケイ素/20質量%のシリカ触媒粒子を調製した。Mo/ZSM-5 69.3gを10分間隔でシリカ(グレース・ダビソン・ルドックスHS-40)25g、シリカ(デグッサ、ウルトラシルVN3-SP)11g及び炭化ケイ素(アルドリッチ)15gとともに混錬した。水を添加して65%の固形分の混合物を生成した。その物質を1/10"シリンダー押出物に押し出した。押出物を乾燥させ、マッフル炉中で6時間にわたって1000°F(540℃)で流れている空気中で5°F(3℃)/分の加熱速度で焼成した。得られるMoレベルはXRF分析により4.7質量%であることを測定した。
【実施例11】
【0044】
実施例1の物質を使用して65質量%のMoZSM-5/15%の炭化ケイ素/20質量%のチタニア触媒粒子を調製した。Mo/ZSM-5 44.68gを10分間隔でチタニア(デグッサ、P-25)13.44g及び炭化ケイ素(アルドリッチ)9.9gとともに混錬した。水を添加して65.7%の固形分の混合物を生成した。その物質を1/10"シリンダー押出物に押し出した。押出物を乾燥させ、マッフル炉中で6時間にわたって1000°F(540℃)で流れている空気中で5°F(3℃)/分の加熱速度で焼成した。得られるMoレベルはXRF分析により4.8質量%であることを測定した。
【実施例12】
【0045】
80:1のシリカ対アルミナモル比を有する商用製造されたZSM-5 250.8gをナルコAGコロイドシリカ247.8g、エアロゾルシリカ23.6g及びメトセルメチルセルロース1.74gとともに混錬した。水を添加し、得られる混合物を直径2mmの円筒形押出物に押し出した。得られる押出物を120℃で15時間乾燥させ、次いで550℃で24時間焼成した。
得られるシリカ結合されたZSM-5 30gを窒素中で5°F(3℃)/分の傾斜速度で950°F(510℃)に加熱し、3時間保持した。その物質を1時間にわたって結晶1g当り5mlの1N NH4NO3溶液で2回交換し、次いで乾燥させ、空気中で6時間にわたって5°F(3℃)/分の傾斜速度で1000°F(510℃)で焼成した。2.3ミクロンのコアー結晶サイズを有する、加工された物質をモリブデン酸アンモニウム4水和物4.14gで含浸した。その物質をマッフル中で流れている空気中で5℃の傾斜速度で70℃で2時間、次いで120℃で2時間、次いで500℃で5時間焼成した。得られるMoレベルはXRF分析により6.0質量%であることを測定した。
【実施例13】
【0046】
実施例12で出発物質として使用された未結合の商用製造されたZSM-5結晶(80:1のシリカ対アルミナモル比)30gを窒素中で5°F(3℃)/分の傾斜速度で950°F(510℃)に加熱し、3時間保持した。その結晶を1時間にわたって結晶1g当り5mlの1N NH4NO3溶液で2回交換した。結晶を乾燥させ、空気中で6時間にわたって5°F(3℃)/分の傾斜速度で1000°F(540℃)で焼成した。80のSi/Al2及び2.3ミクロンの結晶サイズを有する、得られる結晶をモリブデン酸アンモニウム4水和物4.14gで含浸した。その物質をマッフル中で流れている空気中で全て5℃の傾斜速度で70℃で2時間、次いで120℃で2時間、次いで500℃で5時間焼成した。得られるMoレベルはXRF分析により6.0質量%であることを測定した。
【実施例14】
【0047】
実施例12で生成されたシリカ結合されたZSM-5押出物(乾燥され、焼成された状態の)121gを水酸化ナトリウム2.3g、テトラプロピルアンモニウムブロミド16g及び水131.4gと一緒にオートクレーブに入れた。オートクレーブを閉じ、150℃に2時間加熱し、次いで80時間にわたってこの温度に維持した。得られるゼオライト結合されたZSM-5をオートクレーブから除去し、洗浄液の導電率が100マイクロS/cm未満になるまで脱イオン水で洗浄した。
洗浄されたゼオライト結合されたZSM-5 31.25gを窒素中で5°F(3℃)/分の傾斜速度で950°F(510℃)に加熱し、3時間保持した。その生成物を1時間にわたって生成物1g当り5mlの1N NH4NO3溶液で2回交換し、次いで、乾燥後、空気中で6時間にわたって5°F(3℃)/分の傾斜速度で1000°F(540℃)で焼成した。2.3ミクロンのコアー結晶サイズ及び0.5ミクロン未満の結合結晶サイズを有する、得られる触媒をモリブデン酸アンモニウム4水和物4.14gで含浸した。その物質をマッフル中で流れている空気中で全て5℃の傾斜速度で70℃で2時間、次いで120℃で2時間、次いで500℃で5時間焼成した。得られるMoレベルはXRF分析により6.0質量%であることを測定した。
【実施例15】
【0048】
上記された物質の夫々を20/40メッシュにサイジングし、25〜35容積%の石英で希釈し、6cmの長さ及び0.6cmの直径を有する触媒床(10の長さ対直径比)に成形した。次いで夫々の触媒をメタンの脱水素環化における最初のサイクル性能について評価した。夫々の場合に、触媒を最初に15%のCH4-H2、5℃/分で120℃から800℃までの傾斜の条件下で活性化し、0.5時間(15000mLのCH4-H2/g触媒/時間)にわたって保持してMo2Cを生成した。触媒の評価の条件はCH4に関するWHSV=4で800℃、2%のCO2、10%のH2、4.5%のAr、残りのCH4であった。物質を全て触媒中の活性Mo/ZSM-5質量を基準として一貫して4 WHSVで比較した。結果を図1〜5に示す。
図1中、実施例2、4、6、及び8の65質量%のMoZSM-5/35質量%のバインダー物質のベンゼン選択率を実施例1のニートの未結合Mo/ZSM-5のそれと比較する。関係する領域では、流れについての低時間(<50分)で、ジルコニア結合物質及びチタニア結合物質は単一サイクル中にニートのMo/ZSM-5のそれと匹敵するが、更に安定なベンゼン選択率を有することがわかったが、チタニア結合サンプルは多くの再生サイクルで性能が低下する(示されていない)。アルミナ結合触媒は不十分な性能を示し、モリブデン酸アルミニウム(これは活性コーク生成物質である)の生成が活性化工程で炭化モリブデンを生成するのに利用できるモリブデンを減少することが意図されている。シリカは中間の性能を有することが見られる。
【0049】
図2中、実施例2、4、6、及び8の4種の65質量%のMoZSM-5/35質量%のバインダー物質をCH4転化率について実施例1のニートのMo/ZSM-5と比較する。ベンゼン収率データについて見られる結果と同様に、ジルコニア結合物質及びチタニア結合物質は単一サイクル中にニートのMo/ZSM-5に匹敵する転化率を有するが、更に安定である。アルミナ結合物質は不十分な性能を示す。シリカ結合物質はジルコニア結合物質及びチタニア結合物質とアルミナ結合物質の中間の転化率を示した。
図3中、実施例2、4、6、及び8の65質量%のMoZSM-5/35質量%のバインダー物質のベンゼン選択率を実施例3、5、7、及び9の80質量%のMoZSM-5/20質量%のバインダー物質のベンゼン選択率及び実施例1のニートのMo/ZSM-5のそれと比較する。80質量%のMo/ZSM-5物質に関する結果は65質量%の物質の結果を反映し、ジルコニア及びチタニアの両方で得られた顕著な性能を確かめる。少ないアルミナ又は少ないシリカの使用が触媒の性能を改良する。
図4中、実施例1のMo/25:1のシリカ対アルミナモル比のZSM-5の触媒性能を実施例12のMo/80:1のシリカ対アルミナモル比のZSM-5、実施例13のMo/無定形シリカ結合80:1のシリカ対アルミナモル比のZSM-5、及び実施例14のMo/ゼオライト結合80:1のシリカ対アルミナモル比のZSM-5の性能と比較する。関係する時間、<50分で、シリカバインダー物質を含む2種の物質、実施例13及び14の触媒は、実施例1の未結合Mo/ZSM-5のベンゼン収率と同様のベンゼン収率を示す。実施例13及び14の触媒のコアーZSM-5結晶が実施例1で使用されたZSM-5結晶よりも極めて大きいことを考えると、これは非常に励みになる結果である。
図5中、実施例3及び7のチタニア結合物質及びシリカ結合物質の触媒性能を実施例10及び11の15質量%の炭化ケイ素を含む均等物質の性能、並びに実施例1のニートのMo/ZSM-5のそれと比較する。関係する時間スケール、<50分で、触媒粒子中の炭化ケイ素の存在が性能に重大に影響しない。炭化ケイ素が触媒粒子の密度、熱伝導率、及び熱容量に利点を与え得る。
【0050】
別の実施態様
1. 支持体及び支持体上に分散されたモリブデン又はその化合物を含む触媒(該支持体がシリカ、チタニア、ジルコニア及びこれらの混合物から選ばれたバインダーで結合されたアルミノシリケートゼオライトを含み、かつ該触媒がアルミノシリケートゼオライトのフレームワークの外部にアルミニウムを実質的に含まない)。
2. アルミノシリケートゼオライトが約14〜約500のシリカ対アルミナモル比を有する、パラグラフ1の触媒。
3. アルミノシリケートゼオライトが約1〜約12の制約インデックスを有する、パラグラフ1又はパラグラフ2の触媒。
4. アルミノシリケートゼオライトがZSM-5を含む、先のパラグラフの触媒。
5. 全触媒の、元素モリブデンとして計算して、約0.1質量%から約20質量%のモリブデン又はその化合物を含む、先のパラグラフの触媒。
6. 支持体の約1質量%から約90質量%までのバインダーを含む、先のパラグラフの触媒。
7. バインダーが多孔性結晶性物質である、先のパラグラフの触媒。
8. 支持体が更にバインダー及びアルミノシリケートゼオライトとは別の充填剤を含む、先のパラグラフの触媒。
9. 充填剤が支持体の約0.1質量%から約60質量%までの量で存在する、パラグラフ8の触媒。
10. メタンを高級炭化水素(芳香族炭化水素を含む)に変換する方法(その方法がメタンを含む供給原料を反応ゾーン中でメタンを芳香族炭化水素に変換するのに有効な条件下で脱水素環化触媒と接触させることを含み、該脱水素環化触媒が支持体及び支持体上に分散されたモリブデン又はその化合物を含み、該支持体がバインダーで結合されたアルミノシリケートゼオライトを含み、かつバインダーがアルミニウムを実質的に含まない)。
【0051】
11. メタンを高級炭化水素(芳香族炭化水素を含む)に変換する方法(その方法がメタンを含む供給原料を反応ゾーン中でメタンを芳香族炭化水素に変換するのに有効な条件下で脱水素環化触媒と接触させることを含み、該脱水素環化触媒が支持体及び支持体上に分散されたモリブデン又はその化合物を含み、該支持体がシリカ、チアニア、ジルコニア及びこれらの混合物から選ばれたバインダーで結合されたアルミノシリケートゼオライトを含む)。
12. 触媒がアルミノシリケートゼオライトの外部にアルミニウムを実質的に含まない、パラグラフ10又はパラグラフ11の方法。
13. アルミノシリケートゼオライトが約14〜約500のシリカ対アルミナモル比を有する、パラグラフ10〜12のいずれか一つの方法。
14. アルミノシリケートゼオライトが約1〜約12の制約インデックスを有する、パラグラフ10〜13のいずれか一つの方法。
15. アルミノシリケートゼオライトがZSM-5を含む、パラグラフ10〜14のいずれか一つの方法。
16. 触媒が全触媒の、元素モリブデンとして計算して、約0.1質量%から約20質量%のモリブデン又はその化合物を含む、パラグラフ10〜15のいずれか一つの方法。
17. 支持体が支持体の約1質量%から約90質量%までのバインダーを含む、パラグラフ10〜16のいずれか一つの方法。
18. 支持体が更にバインダー及びアルミノシリケートゼオライトとは別の充填剤を含む、パラグラフ10〜17のいずれか一つの方法。
19. 充填剤が支持体の約0.1質量%から約60質量%までの量で存在する、パラグラフ18の方法。
【0052】
20. メタンを高級炭化水素(芳香族炭化水素を含む)に変換する方法(その方法がメタンを含む供給原料を反応ゾーン中でメタンを芳香族炭化水素に変換するのに有効な条件下で脱水素環化触媒と接触させることを含み、その脱水素環化触媒が約50μm〜約5000μmの平均サイズ、及び約100lb/ft3〜約1000lb/ft3(約1.6g/cm3〜約16g/cm3)の密度を有する粒子で担持されたモリブデンを含む)。
21. 粒子が約100μm〜約500μmの平均サイズを有する、パラグラフ20の方法。
22. 粒子が約130lb/ft3〜約170lb/ft3(約2.1g/cm3〜約2.7g/cm3)の密度を有する、パラグラフ20又はパラグラフ21の方法。
23. 粒子が0.7キロジュール/kg/°Kの熱容量を有する、パラグラフ20〜22のいずれか一つの方法。
24. 支持体がバインダーで結合されたアルミノシリケートゼオライトを含む、パラグラフ20〜22のいずれか一つの方法。
25. バインダーがアルミニウムを実質的に含まない、パラグラフ24の方法。
26. バインダーがシリカ、チタニア、ジルコニア及びこれらの混合物から選ばれる、パラグラフ24又はパラグラフ25の方法。
27. 支持体がバインダー及びアルミノシリケートゼオライトとは別の充填剤を更に含む、パラグラフ24〜26のいずれか一つの方法。
本発明が特別な実施態様を参照して記載され、説明されたが、当業者は本発明が本明細書に必ずしも説明されていない変化に適合することを認めるであろう。この理由のために、その時に、本発明の真の範囲を決める目的のために特許請求の範囲のみが参考にされるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体及び支持体上に分散されたモリブデン又はその化合物を含む触媒であって、該支持体がシリカ、チタニア、ジルコニア及びこれらの混合物から選ばれたバインダーで結合されたアルミノシリケートゼオライトを含み、かつ該触媒がアルミノシリケートゼオライトのフレームワークの外部にアルミニウムを実質的に含まないことを特徴とする前記触媒。
【請求項2】
アルミノシリケートゼオライトが約14〜約500のシリカ対アルミナモル比を有する、請求項1記載の触媒。
【請求項3】
アルミノシリケートゼオライトが約1〜約12の制約インデックスを有する、請求項1記載の触媒。
【請求項4】
アルミノシリケートゼオライトがZSM-5を含む、請求項1記載の触媒。
【請求項5】
全触媒の、元素モリブデンとして計算して、約0.1質量%から約20質量%のモリブデン又はその化合物を含む、請求項1記載の触媒。
【請求項6】
支持体の約1質量%から約90質量%までのバインダーを含む、請求項1記載の触媒。
【請求項7】
バインダーが多孔性結晶性物質である、請求項1記載の触媒。
【請求項8】
メタンを、芳香族炭化水素を含む高級炭化水素に変換する方法であって、メタンを含む供給原料を反応ゾーン中でメタンを芳香族炭化水素に変換するのに有効な条件下で脱水素環化触媒と接触させることを含み、該脱水素環化触媒が支持体及び支持体上に分散されたモリブデン又はその化合物を含み、該支持体がバインダーで結合されたアルミノシリケートゼオライトを含み、かつバインダーがアルミニウムを実質的に含まないことを特徴とする前記方法。
【請求項9】
触媒がアルミノシリケートゼオライトの外部にアルミニウムを実質的に含まない、請求項8記載の方法。
【請求項10】
アルミノシリケートゼオライトが約14〜約500のシリカ対アルミナモル比を有する、請求項8記載の方法。
【請求項11】
アルミノシリケートゼオライトが約1〜約12の制約インデックスを有する、請求項8記載の方法。
【請求項12】
アルミノシリケートゼオライトがZSM-5を含む、請求項8記載の方法。
【請求項13】
触媒が全触媒の、元素モリブデンとして計算して、約0.1質量%から約20質量%のモリブデン又はその化合物を含む、請求項8記載の方法。
【請求項14】
メタンを高級炭化水素(芳香族炭化水素を含む)に変換する方法であって、メタンを含む供給原料を反応ゾーン中でメタンを芳香族炭化水素に変換するのに有効な条件下で脱水素環化触媒と接触させることを含み、該脱水素環化触媒が約50μm〜約5000μmの平均サイズ、及び約100lb/ft3〜約200lb/ft3(約1.6g/cm3〜約3.2g/cm3)の密度を有する粒子で担持されたモリブデンを含むことを特徴とする前記方法。
【請求項15】
支持体がアルミニウムを実質的に含まないバインダーで結合されたアルミノシリケートゼオライトを含む、請求項14記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−509827(P2011−509827A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544300(P2010−544300)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/087980
【国際公開番号】WO2009/097067
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】