説明

メタン発酵処理方法および装置

【課題】濃縮装置や担体を用いずメタン発酵槽内の菌体濃度を上げて処理速度を上げることができるメタン発酵処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のメタン発酵処理方法は、第一発酵槽1内の有機性廃棄物4と酸生成菌及び、第二発酵槽2内の低級脂肪酸とメタン発酵菌を混合撹拌する際に撹拌装置8および撹拌装置12を停止して固液分離するための沈殿時間を設けるとしたものであり、この手段により第一発酵槽1および第二発酵槽槽2内の菌体濃度を上げることができ、処理能力を上昇させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃棄物の処理装置に係り、特に固形分の多い厨芥類を中心としたメタン発酵処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、廃水処理として主流である好気性処理はその過程で生成される余剰汚泥が多量なことに加え、有害な揮発性有機汚染物質などの難分解性物質を分解することができないなどの問題を抱えている。
【0003】
一方、嫌気性処理は産業廃水中の一般的な有機汚泥物質は言うに及ばず、毒性物質も分解する能力が備わっていることから産業廃水を再生する手段として使用価値が高まっている。さらに発酵により発生したメタンガスを電気、熱として利用する一方で、メタン発酵をさせた後の消化汚泥は廃棄される過程でコンポスト化して肥料としたり、あるいは固形燃料、乾燥汚泥などとして再利用可能であり、経済的である。
【0004】
メタン発酵は、大きく分けると加水分解菌、酸生成菌による可溶化過程と、メタン発酵菌によるメタン発酵過程の二段階の生化学反応から成っている。タンパク質、炭水化物、脂肪等の高分子有機化合物は、まず加水分解菌などによって低分子化されて高級脂肪酸、アミノ酸、糖類となる。次に酸生成菌等によってH2、CO2、低級脂肪酸(酢酸、酪酸、プロピオン酸、ピルビン酸、ギ酸、乳酸、コハク酸等)に分解され、最後にメタン発酵過程でメタン発酵菌によってメタンが生成する。
【0005】
このように可溶化過程とメタン発酵過程では、活躍する微生物の種類が全く異なり、最適pH値も可溶化過程は5.5〜6.5、メタン生成過程は7〜8と異なることから、最近は可溶化槽とメタン発酵槽を分離して発酵効率を高める二相式と呼ばれる方法が採用される場合が多い(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この特許文献1では、メタン発酵菌の活性低下を防ぐため、pHに着目し、処理水の返送工程を設けている。すなわち、菌数ではなく、菌の質(活性)を改善し、可溶化を十分に行うアイデアである。
【0007】
このように、可溶化を十分に行わないまま第一発酵槽内発酵液を第二発酵槽へ移送すると、メタン発酵菌では分解できない物質が第二発酵槽へ蓄積し、メタン発酵装置が破綻する恐れがある。
【0008】
なお、本明細書において「可溶化」とは、微生物の働きによる有機物の低分子化、低級脂肪酸への変換のみでなく、各種の物理化学的方法により、固形物粒子を細かくすることをも含んでいる。
【0009】
他に、メタン発酵における処理効率を向上させる各種の方法が検討されている。
【0010】
図3は発酵効率を高めるため、メタン発酵菌を含む汚泥を濃縮する例である。
【0011】
厨芥類を中心とした有機性廃棄物102は破砕機101で破砕された後、ポンプ105、流入管103により第一発酵槽104に投入され、主に廃棄物中に存在する不特定の微生物の働きと撹拌程度の比較的穏やかな条件により可溶化され、メタン発酵の原料となる低級脂肪酸や低分子有機物を生成する。
【0012】
スラリ状となった可溶化物はポンプ110、流出入管109により第二発酵槽111へ送られ、メタン発酵菌の働きにより、メタン50〜65%、二酸化炭素約35〜50%のバイオガスが生成される。
【0013】
第二発酵槽111には、メタン発酵菌以外にも可溶化作用を行う菌が各種共存しているため、低級脂肪酸以外の有機物も分解されて低級脂肪酸に変換され、メタン発酵の原料となる。
【0014】
生成したバイオガスはガス流出管112を経由してガスホルダー113に貯留された後、主に燃料として利用される。第二発酵槽111では、低級脂肪酸を多く含んだ可溶化液の流入量に応じてポンプ116、流出管114により汚泥を抜き出し、槽内液レベルを一定に保っている。
【0015】
抜き出された汚泥は汚泥濃縮装置117に送られ、通常は凝集剤118を添加して濃縮汚泥(主に菌体)と脱離水に分けられる。脱離水は脱離水管119から排水処理装置115へ送られ、好気活性汚泥法などにより最終処理された後放流される。
【0016】
一方、濃縮汚泥はポンプ120、切替弁121を介して、一部は濃縮汚泥返送管123を経由して第二発酵槽111へ返送し、槽内の菌体濃度を高めるのに使用する。残りの濃縮汚泥は汚泥排出管124から余剰汚泥として排出される。余剰汚泥は、第一発酵槽104へ返送して再発酵したり、コンポスト化あるいは焼却処理される場合が多い。
【0017】
図4は発酵効率を高めるため、メタン発酵槽として担体を使用した例である。
【0018】
固定床型メタン発酵槽130は、内部に菌を保持する担体充填層131が設置されており、これに可溶化液を流通させて分解し、バイオガスを発生させる。すなわち、固定床型メタン発酵槽130では、濃縮汚泥の返送を行わなくても菌濃度維持が可能であるため、凝集剤や濃縮装置が不要で、運転も容易である。
【0019】
通常、ポンプ133によって液を循環させており、固定床型メタン発酵槽130内で上向流を形成しており、処理水134がオーバーフローとして処理水管135から流出する。処理水134は、担体充填層131のフィルタ作用により固形分濃度が低くなっているため、濃縮分離せずに排水処理装置115で処理することが可能である。
【0020】
逆に担体充填層131よりも下の固定床底部136には濃厚な汚泥(菌体と未分解の微粒有機物)が蓄積しており、これは必要に応じて弁137、汚泥排出管138により余剰汚泥として排出する。
【0021】
このように固定床型メタン発酵槽130は、担体により菌体を高濃度に保持することができるため、処理速度が速く、発酵槽をコンパクト化できる。
【0022】
しかし、汚泥や廃水と比較して固形分の比較的多い厨芥等の有機性廃棄物を対象とする場合、粗粒子による固定床の閉塞が問題となるため、可溶化を高度に行うか、可溶化後に固液分離を行って粗大な固形物粒子を除去しておくか、または閉塞を抑制する構成にする必要がある。可溶化促進の手段としては、酵素添加、アルカリ添加、機械的微破砕、オゾン、超音波処理、高温高圧処理などの手段が用いられる。
【0023】
また、メタン発酵槽内に、メタン発酵菌などの微生物の流出を防止するための分離膜を設けることも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−167587号公報
【特許文献2】特開2001−170631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
メタン発酵の処理効率を向上させる場合、特許文献1のようにメタン発酵菌の活性低下の防止と、図3、図4及び特許文献2のように菌数の確保という、大きく分けて2種類の方法がある。
【0025】
しかし、いずれの場合も、メタン発酵槽を大型化するか、返送や濃縮(膜も含む)のために新たな装置が必要である上、濃縮作業は非常に煩雑であるという問題があり、装置と作業を簡略化することが要求されている。
【0026】
また、図4に示したような従来のメタン発酵処理方法及び装置において、担体を用いて菌体濃度を上げる場合、発酵槽の閉塞防止のため高度な可溶化が必要となり、可溶化工程が複雑化するという課題があり、担体を用いず菌体濃度を上げることが要求されている。
【0027】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、新たな装置を設けず、各槽からの菌の流出を防ぎ、工程を複雑化せずに効率的にメタン発酵槽内の菌体濃度と、メタン発酵菌と低級脂肪酸の接触機会を上げ、発酵処理速度を上昇させることができるメタン発酵処理方法及び装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明のメタン発酵処理方法及び装置は上記目的を達成するために、メタン発酵槽内の低級脂肪酸とメタン発酵菌を混合撹拌する際に、撹拌装置を停止して固液分離する沈殿時間を設けることとしたものである。
【0029】
この手段により濃縮装置を使用せず、メタン発酵槽内の菌体濃度を上げて処理速度を上げることができるメタン発酵処理方法及び装置が得られる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば濃縮装置や担体を用いず、メタン発酵槽内の菌体濃度を上げて処理速度を上げることができるという効果のあるメタン発酵処理方法及び装置を提供できる。
【0031】
また、工程を複雑化せずにメタン発酵菌と低級脂肪酸の接触機会を維持することができるという効果のあるメタン発酵処理方法及び装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明は、有機性廃棄物を酸生成菌により低級脂肪酸に分解する第一発酵槽と低級脂肪酸をさらにメタン発酵菌によりメタンと炭酸ガスに分解する第二発酵槽と、第一発酵槽及び第二発酵槽に撹拌装置を設け、第一発酵槽内で有機性廃棄物と酸生成菌、及び第二発酵槽内で低級脂肪酸とメタン発酵菌を混合撹拌するメタン発酵処理方法において、撹拌装置を停止して固液分離した沈殿部内の菌体濃度を上げるための沈殿時間を設けるものであり、濃縮装置を用いず、メタン発酵槽内の菌体濃度を上げて処理速度を上げることができるという作用を有する。
【0033】
また、撹拌装置は撹拌翼を有し、固液分離した沈殿部内に撹拌翼を固定することにより、有機性廃棄物と酸生成菌、及び低級脂肪酸とメタン発酵菌を沈殿部内で混合撹拌するとしたものであり、有機性廃棄物と酸生成菌及び、低級脂肪酸とメタン発酵菌を沈殿部内で混合撹拌することができる。
【0034】
また、有機性廃棄物の流入管を有する第一発酵槽と、スカムや上澄み液を流出するための流出口を有する第二発酵槽と、第一発酵槽内で生成した低級脂肪酸を第二発酵槽へ移流する流出入管と、第一発酵槽及び第二発酵槽内を撹拌するための撹拌装置と、第一発酵槽及び第二発酵槽内で発生したバイオガスを捕集するためのガス流出管とガスホルダーを備え、第二発酵槽内の攪拌装置は、攪拌翼とこれを駆動させるモーターからなり、第二発酵槽内の撹拌翼は固液分離した沈殿部内に固定し、回転により下向流を発生させるとともに、流出入管の出口は、第二発酵槽の前記撹拌翼より下部に配するとしたものであり、低級脂肪酸とメタン発酵菌を沈殿部内で効率的に混合撹拌することができ、槽全体での攪拌に比べ短時間で沈殿させることができるという作用を有する。
【0035】
また、撹拌装置を停止して固液分離した沈殿部内の菌体濃度を上げるための沈殿時間を設けるものであり、濃縮装置を用いず、メタン発酵槽内の菌体濃度を上げて処理速度を上げることができるという作用を有する。
【0036】
また、第一発酵槽内の攪拌装置は、攪拌翼とこれを駆動させるモーターからなり、第一発酵槽内の撹拌翼は固液分離した沈殿部内に固定し、回転により下向流を発生させるとともに、流入管の出口は、第一発酵槽の前記撹拌翼より下部に配したものであり、有機性廃棄物と酸生成菌を沈殿部内で効率的に混合撹拌することができ、槽全体での攪拌に比べ短時間で沈殿させることができるという作用を有する。
【0037】
また、第二発酵槽の流出口を第二発酵槽の液位に配するとしたものであり、第二発酵槽内の発酵液位を一定に保つという作用を有する。
【0038】
また、第一発酵槽内の前記流出入管の流出口を第一発酵槽の液位に配するとしたものであり、第一発酵槽内の発酵液位を一定に保つという作用を有する。
【0039】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0040】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1実施形態に係るメタン発酵装置の構成図である。
【0041】
図1に示すように、本メタン発酵処理装置は第一発酵槽1と第二発酵槽2が同じ槽に設けられており、その間を仕切り板3で分割するといった構成になっている。
【0042】
第一発酵槽1は破砕機により破砕された有機性廃棄物4を流入するための流入管5と、第一発酵槽内発酵液を撹拌するための撹拌翼6とこれを駆動させるモーター7からなる撹拌装置8で構成される。
【0043】
第一発酵槽1に備えられた撹拌翼6は第一発酵槽内発酵液を固液分離した状態の沈殿部内に固定し、回転時に撹拌翼6から下向流を発生させる構造となっている。また、流入管5の出口は、第一発酵槽1の撹拌翼6より下部に固定する。
【0044】
第一発酵槽1は流出入管9により第二発酵槽2と接続されており、第一発酵槽1に配されている流出入管9の入口は保持したい第一発酵槽内発酵液の液位に固定する。
【0045】
第二発酵槽2は第二発酵槽内発酵液を撹拌するための撹拌翼10とこれを起動させるモーター11からなる撹拌装置12と、第二発酵槽の上澄み液である廃液13を流出するための流出管14で構成されている。
【0046】
第二発酵槽2に備えられた撹拌翼10は第二発酵槽内発酵液を固液分離した状態の沈殿部内に固定し、回転時に撹拌翼10から下向流を発生させる構造となっている。また、流出入管9の出口は、第二発酵槽2の撹拌翼10より下部に固定し、流出管の入口は保持したい第二発酵槽内発酵液の液位に固定する。
【0047】
また、第一発酵槽1及び第二発酵槽2には各槽内で発生したバイオガス15をガスホルダー(図示なし)へ移流するためのガス流出管16を備えている。
【0048】
上記の構成におけるメタン発酵の処理を詳細に説明する。
【0049】
厨芥を中心とした有機性廃棄物4を破砕機により20mm以下程度に破砕し、流入管5により、第一発酵槽1の沈殿部内の撹拌翼6より下の位置へ流入する。このとき、第一発酵槽1の上澄み液に有機性廃棄物4が混合して、酸生成菌による低級脂肪酸への分解が完了する前に第二発酵槽2へ流出することをできるだけ防ぐために、流入管5の出口は第一発酵槽1の底面により近い方が好ましい。
【0050】
粉砕された有機性廃棄物4が第一発酵槽1へ流入を完了したら、第一発酵槽1に設置している適正な撹拌翼6とモーター7からなる撹拌装置8を低回転で起動させ、第一発酵槽内発酵液の上澄み液を取り込まずに沈殿部のみを混合撹拌する。
【0051】
沈殿部内の撹拌翼6より下の位置へ流入された、粉砕された有機性廃棄物4は沈殿部内で滞留するため、上澄み液を含めた全体攪拌に比べ、酸生成菌を主とした不特定の微生物との接触機会は増大し、固液分離のための沈殿時間も短くなる。
【0052】
図2に適正な撹拌翼6の一例を示す。図2(a)は、撹拌翼6を上から見た構成図、(b)は撹拌翼6を横から見た構成図であり、撹拌翼6が4枚の羽根板17で構成された例である。
【0053】
発酵槽を円筒形とした場合、翼径Dが直径の40%、羽根板17の幅Wが発酵槽直径の10%および羽根板17の傾斜角度θが25°の撹拌翼であり、これを有する撹拌装置8を50rpmで沈殿部内において撹拌翼6から下向流を発生させるように回転させた場合、上澄み液を取り込まない効率的な沈殿部の撹拌を約5分維持することができたことを確認した。
【0054】
上記攪拌翼の数値は、組合せの一例であり、各数値の増減により、適正な攪拌強度となる組合せは多数ある。
【0055】
実際の攪拌においては、撹拌装置8の起動から約1分経過したら撹拌装置8を停止し、次の有機性廃棄物4が流入されるまで約5分間、発酵液を沈殿させて処理を行った。
【0056】
発酵液全体を撹拌した場合、固液分離に時間がかかるが、以上のような適正な撹拌翼6を有する撹拌装置8を低回転で運転した場合は沈殿部内のみの撹拌となるため、上澄み液を取り込まずに沈殿部と有機性廃棄物が効率的に短時間で撹拌することができ、さらに固液分離の効率を上げることができる。
【0057】
第一発酵槽1へ流入された有機性廃棄物4は主に廃棄物中に存在する不特定の微生物の働きと撹拌程度の比較的穏やかな条件により可溶化され、メタン発酵の原料となる低級脂肪酸や低分子有機物を生成する。
【0058】
第一発酵槽1へ流入した有機廃棄物4の量に比例した第一発酵槽内発酵液における液位の上昇により、第一発酵槽内発酵液は第二発酵槽2へ越流するが、上記のように沈殿部内のみの攪拌のため、沈殿時間が短くても第一発酵槽内発酵液の固液分離は促進され、越流するものは第一発酵槽内発酵液の上澄み液が主となる。
【0059】
第一発酵槽内発酵液の上澄み液には低級脂肪酸に分解されていない有機性廃棄物は少なく、また酸生成菌も少ないので、第二発酵槽2に与える負荷を抑制することができ、第一発酵槽の酸生成菌が第二発酵槽へ流出することを防ぎ、酸生成菌の菌体濃度を上げることができる。すなわち、酸生成が促進され、同一処理量に対しては、処理時間の短縮あるいは処理槽の小型化が実現できる。
【0060】
次に、低級脂肪酸を多く含む可溶化液を流出入管9により、第二発酵槽2の沈殿部内の撹拌翼10より下の位置へ流入する。このとき、第一発酵槽の場合と同様、第二発酵槽2の上澄み液に低級脂肪酸が混合して、メタン発酵菌によるバイオガス15への分解が完了する前に流出することをできるだけ防ぐために、流出入管9の出口は第二発酵槽2の底面により近い方が好ましい。
【0061】
低級脂肪酸を多く含む可溶化液の第二発酵槽2への流入を完了したら、第二発酵槽2に設置している適正な撹拌翼10とモーター11からなる撹拌装置12を低回転で起動させ、第二発酵槽内発酵液の上澄み液を取り込まずに沈殿部のみを混合撹拌し、低級脂肪酸を多く含む可溶化液とメタン発酵菌を主とした不特定の微生物の接触機会を増大させる。
【0062】
沈殿部内の撹拌翼10より下の位置へ流入された、低級脂肪酸を多く含む可溶化液は、攪拌により、沈殿部内の下部から上部へ移動する間に、沈殿部内のメタン発酵菌を主とした不特定の微生物と接触する。
【0063】
また、接触できないまま沈殿部内を上澄み液側まで上昇した場合でも、上澄み液より低級脂肪酸の方が比重が重いため、沈殿部と上澄み液の境界に滞留し、メタン発酵菌を主とした不特定の微生物との接触機会があり、全体攪拌に比べ、接触機会は増大する。
【0064】
さらに、第二発酵槽2へ流入した可溶化液の量に比例した第二発酵槽内発酵液における液位の上昇により、第二発酵槽内発酵液は流出管14より装置外へ越流するが、上記のように沈殿部内のみの攪拌のため、沈殿時間が短くても第二発酵槽内発酵液の固液分離は促進され、越流するものは第二発酵槽内発酵液の上澄み液が主となる。
【0065】
第二発酵槽内発酵液の上澄み液にはメタン発酵菌に分解されていない低級脂肪酸は少なく、またメタン発酵菌も少ないので、第二発酵槽のメタン発酵菌が装置外へ流出することを防ぎ、メタン発酵菌の菌体濃度を上げることができる。
【0066】
すなわち、菌体濃度を上げるとともに、メタン発酵菌と低級脂肪酸との接触機会が増大することにより、メタン発酵が促進され、同一処理量に対しては、処理時間の短縮あるいは処理槽の小型化が実現できる。
【0067】
撹拌装置12の起動から約1分経過したら撹拌装置12を停止し、次の可溶化液が流入されるまで約5分間、発酵液を沈殿させる。ここで、適正な撹拌翼10の条件は、前記第一発酵槽の撹拌翼6と同じである。
【0068】
第二発酵槽2へ流入した可溶化液はメタン発酵菌の働きにより、メタン50〜65%、二酸化炭素約35〜50%のバイオガス15に分解される。
【0069】
生成したバイオガス15はガス流出管16を経由してガスホルダー(図示なし)に貯留された後、主に燃料として利用される。
【0070】
流出管より越流した第二発酵槽2の上澄み液は廃液13として濃縮分離せずに排水処理装置で処理する。
【0071】
ここで、第二発酵槽2は内部に固定床などの構造体を持たない単なる容器上のものであるため、粗粒子による閉塞は問題とならない。
【0072】
このように本実施形態の装置構成と運転方法により、酸生成菌の菌体濃度をあげることにより可溶化を促進するので、担体を用いたメタン発酵方法のように、可溶化を促進させるためのアルカリなどの薬剤投入や超音波やオゾンなどの特別な装置の設置などが不必要で可溶化工程がシンプルとなり、装置と薬剤のコスト低減、運転の省力化が可能となる。
【0073】
また、酸生成菌およびメタン発酵菌の流出防止により可溶化促進とともにメタン発酵も促進され、特別な装置および汚泥濃縮返送の不要な高速処理システムとなり、従来のメタン発酵装置と比較した処理量が同じであれば、各発酵槽を小型化することができる。
【0074】
さらに、可溶化残渣及びメタン発酵汚泥の排出量を低減でき、コンポスト化、焼却処理するべき最終処理物の量が減り、その分、バイオガスの発生量を増加させることができる。
【0075】
なお、上記実施の形態では、仕切り板3による槽の分割を例としたが、別槽で水位差を利用できない場合は、ポンプを利用しても、同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によるメタン発酵処理方法及び処理装置は、固形分の多い厨芥類を中心とした有機性廃棄物の処理に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1実施形態に係るメタン発酵システムの構成図
【図2】本発明の第1実施形態に係る撹拌翼の構成図((a)同撹拌翼を上から見た構成図、(b)同攪拌翼を横から見た構成図)
【図3】従来のメタン発酵システムの系統図
【図4】従来のメタン発酵システムの系統図
【符号の説明】
【0078】
1 第一発酵槽
2 第二発酵槽
3 仕切り板
4 有機性廃棄物
5 流入管
6、10 撹拌翼
7、11 モーター
8、12 撹拌装置
9 流出入管
13 廃液
14 流出管
15 バイオガス
16 ガス流出管
17 羽根板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を酸生成菌により低級脂肪酸に分解する第一発酵槽と、前記低級脂肪酸をさらにメタン発酵菌によりメタンと炭酸ガスに分解する第二発酵槽と、前記第一発酵槽及び前記第二発酵槽に撹拌装置を設け、前記第一発酵槽内で前記有機性廃棄物と酸生成菌、及び前記第二発酵槽内で前記低級脂肪酸とメタン発酵菌を混合撹拌するメタン発酵処理方法において、前記撹拌装置を停止して固液分離した沈殿部内の菌体濃度を上げるための沈殿時間を設けることを特徴とするメタン発酵処理方法。
【請求項2】
前記撹拌装置は撹拌翼を有し、固液分離した沈殿部内に前記撹拌翼を固定することにより、前記有機性廃棄物と酸生成菌、及び前記低級脂肪酸とメタン発酵菌を沈殿部内で混合撹拌することを特徴とする請求項1記載のメタン発酵処理方法。
【請求項3】
有機性廃棄物の流入管を有する第一発酵槽と、スカムや上澄み液を流出するための流出口を有する第二発酵槽と、前記第一発酵槽内で生成した低級脂肪酸を前記第二発酵槽へ移流する流出入管と、前記第一発酵槽及び前記第二発酵槽内を撹拌するための撹拌装置と、前記第一発酵槽及び前記第二発酵槽内で発生したバイオガスを捕集するためのガス流出管とガスホルダーを備え、前記第二発酵槽内の攪拌装置は、攪拌翼とこれを駆動させるモーターからなり、前記第二発酵槽内の撹拌翼は固液分離した沈殿部内に固定し、回転により下向流を発生させるとともに、前記流出入管の出口は、前記第二発酵槽の前記撹拌翼より下部に配することを特徴とするメタン発酵処理装置。
【請求項4】
前記撹拌装置を停止して固液分離した沈殿部内の菌体濃度を上げるための沈殿時間を設けることを特徴とする請求項3記載のメタン発酵処理装置。
【請求項5】
前記第一発酵槽内の攪拌装置は、攪拌翼とこれを駆動させるモーターからなり、前記第一発酵槽内の撹拌翼は固液分離した沈殿部内に固定し、回転により下向流を発生させるとともに、前記流入管の出口は、前記第一発酵槽の前記撹拌翼より下部に配することを特徴とする請求項3または4記載のメタン発酵処理装置。
【請求項6】
前記第二発酵槽の流出口を前記第二発酵槽の液位に配することを特徴とする請求項3〜5いずれか1項に記載のメタン発酵処理装置。
【請求項7】
前記第一発酵槽内の前記流出入管の流出口を前記第一発酵槽の液位に配することを特徴とする請求項3〜6いずれか1項に記載のメタン発酵処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−238078(P2008−238078A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83746(P2007−83746)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】