説明

メタン発酵方法

【課題】有機性廃棄物の分解速度を速くすることにより効率的にメタン発酵速度を上昇させ、メタン発酵槽をコンパクト化することができ、小規模施設における使用に適したメタン発酵方法を提供すること。
【解決手段】 耐熱性放線菌と耐熱性細菌とを担持してなる多孔質担体を有機性廃棄物に添加してメタン発酵させるメタン発酵方法であって、前記多孔質担体が、木炭、活性炭、石炭、コークス、活性コークス、泥炭、バームキュライト、パーライト、ベントナイト、発泡性ウレタンのうちの一種以上であり、発酵温度を55〜80℃に維持しながら少なくとも5日間発酵させることによって前記耐熱放線菌と前記耐熱性細菌とを担持してなることを特徴とするメタン発酵方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性放線菌と耐熱性細菌とを担持してなる多孔質担体を添加することを特徴とするメタン発酵方法に関するものであって、特にエアレーションによって発酵温度を55〜80℃に維持しながら少なくとも5日間発酵させることによって耐熱性放線菌と耐熱性細菌とを担持させた多孔質担体を添加することを特徴とするメタン発酵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
観光を主体とする地域においては、豊かな自然環境を維持しながら、滞在する観光客に利便性を提供することが求められている。
しかし、観光客の利便性を提供するため下水設備等を敷設すると、豊かな自然環境の維持が困難となり、一方、自然環境維持のため下水設備等がない場合は、観光客から排出される生ごみ等の処理が問題となる。
そこで、このような施設においては、生ごみや糞尿などの有機性廃棄物を利用したエネルギー循環を目指し、利便性を向上させる試みがなされてきた。
【0003】
有機性廃棄物等を利用したエネルギー循環方法については、有機性廃棄物をメタン発酵させて発生したメタンガスを燃料として回収する方法などが知られている。このメタン発酵は、有機性廃棄物をメタンガスと水とに分解して大幅に減量することができるため自然環境を維持することができ、メタンガスをエネルギーとして回収できるため、メリットとしては大きい。
しかしながら、従来のメタン発酵方法では、有機物分解速度、メタン発酵速度が十分に高くないという問題点があり、ある程度大きなメタン発酵槽を用意する必要があった。分解速度が速くなれば、メタン発酵槽をコンパクト化することができ、経済性、エネルギー収支等の改善が実現でき、小規模施設、例えば山の家、小規模牧場及び簡易宿泊施設などに使用可能なメタン発酵方法とすることができる。
そこで、メタン発酵速度を速くするため、色々なメタン発酵方法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、多孔質セラミック顆粒に貫通孔を設け、貫通孔にひもを通して数珠状に固定し、メタン発酵槽内の微生物濃度を高く保持することができ、高い処理能力を安定して維持することができる微生物固定化担体、及び嫌気性処理装置について記載されている。
しかしながら当該方法は、装置が複雑で施工が難しく、槽内にある多孔質セラミック担体の容積が少ないため有機物分解効率がそれほど上昇せず、メタン発酵速度がそれほど上昇しないという問題がある。
【0005】
特許文献2には、微生物が自己凝集したグラニュールを用い、微生物濃度を高めることにより、有機性廃棄物を効率よく処理し、メタンガスを回収することについて記載されている。
しかしながら、この方法は固形分をあまり分解できないので、もっぱら懸濁固形分の少ない有機性廃水の処理に利用されており、固形分を有する有機性廃棄物や廃水のメタン発酵を効率的に行うことができない。
【0006】
上記のような有機性廃棄物のメタン発酵方法は、メタン発酵速度を十分に上げることができず、メタン発酵の効率を上昇させる方法ではなかった。即ち、小規模施設、例えば山の家、小規模牧場及び簡易宿泊施設などには、従来のメタン発酵効率では十分にエネルギーを利用することができる程度にメタンガスを得ることができなかった。
【0007】
【特許文献1】特開平9−38686号公報
【特許文献2】特開平11−319782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、有機性廃棄物の分解速度を速くすることにより効率的にメタン発酵速度を上昇させ、メタン発酵槽をコンパクト化することができ、小規模施設、例えば山の家、小規模牧場及び簡易宿泊施設などにも使用可能な効率の高いメタン発酵方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、有機性廃棄物をメタン発酵させるメタン発酵において、55℃〜80℃の温度域で生育する耐熱性放線菌と耐熱性細菌とが担持されてなる多孔質担体を添加することにより、メタン発酵の発酵効率が顕著に向上することを見出し、本発明に至った。
【0010】
請求項1に係る発明は、耐熱性放線菌と耐熱性細菌とを担持してなる多孔質担体をメタン菌が含有された有機性廃棄物に添加してメタン発酵させるメタン発酵方法であって、前記多孔質担体が、木炭、活性炭、石炭、コークス、活性コークス、泥炭、バームキュライト、パーライト、ベントナイト、発泡性ウレタンのうちの一種以上であり、発酵温度を55〜80℃に維持しながら少なくとも5日間発酵させることによって前記耐熱性放線菌と前記耐熱性細菌とを担持してなることを特徴とするメタン発酵方法に関する。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記有機性廃棄物が、単分子水によりスラリー化されていることを特徴とする請求項1に記載のメタン発酵方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、有機性廃棄物をメタン発酵させるメタン発酵において、耐熱性放線菌と耐熱性細菌とが担持されてなる多孔質担体を添加してメタン発酵を行うことから、従来のメタン発酵よりメタン発酵速度に優れ、メタン発酵槽をコンパクト化することができ、小規模施設等に使用可能なメタン発酵方法とすることができる。多孔質担体が、木炭、活性炭、石炭、コークス、活性コークス、泥炭、バームキュライト、パーライト、ベントナイト、発泡性ウレタンから選ばれるうちのいずれか一種以上であることから、より効率的に耐熱性放線菌と耐熱性細菌とを担持させることができるため、メタン発酵効率を上昇させることができる。発酵温度を55〜80℃に維持しながら少なくとも5日間発酵させることによって耐熱性放線菌と耐熱性細菌とを多孔質担体に担持したことから、効率的に耐熱性放線菌と耐熱性細菌とを多孔質担体に担持させることができるため、耐熱性放線菌と耐熱性細菌以外のその他の雑菌が担持される割合を低減させることができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、有機性廃棄物が単分子水によってスラリー化されていることから、水の活性が高まり、効率よくメタン発酵を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るメタン発酵方法は、家庭、飲食店、宿泊施設等の施設から廃棄される生ごみや糞尿等の有機性廃棄物を利用して効率的にメタン発酵を行い、メタンガスを回収してエネルギーとして利用する。従って、本発明に係るメタン発酵方法は、山の家、小規模な牧場、簡易宿泊施設などの有機性廃棄物が排出される小規模施設等に好適に使用される。
【0015】
本発明に係るメタン発酵方法においては、有機性廃棄物と、耐熱性放線菌及び耐熱性細菌と、多孔質担体とが用いられる。
【0016】
有機性廃棄物は、特に限定されず、例えば、家庭、飲食店、宿泊施設等の施設から通常廃棄される生ゴミや糞尿等が挙げられる。家畜の糞尿を使用する場合は、えさに薬剤、特に抗生物質が含まれていないことを要する。菌類が死滅するからである。
【0017】
耐熱性放線菌とは、放線菌であって、この発明においては特に高温55〜80℃で生育できる耐熱性放線菌でラセン状菌等をいい、例えば、サーモアクチノミセス(Thermoactinomyces)属、サーモモノスポラ(Thermomonospora)属、アクチノビフィダ(Actinobifida)属、サーモポリスポラ(Thermopolyspora)属等の耐熱性放線菌をいう。その中でも特にサーモアクチノミセス(Thermoactinomyces)属、サーモモノスポラ(Thermomonospora)属の一種以上を使用することが好ましい。
耐熱性細菌とは、55℃〜80℃の高温で生育できる細菌のことをいい、枯草菌(Bacillus subtilis)等である。
【0018】
本発明で用いられる耐熱性放線菌と耐熱性細菌は、55〜80℃の温度域で、好ましくは60〜75℃の温度域で生育する耐熱性放線菌と耐熱性細菌であることが好ましい。生育温度が55℃未満であると糸状菌等の雑菌が増殖するため、80℃を超えると耐熱性放線菌の活動が衰え、増殖が止まるため、いずれの場合も好ましくない。
本発明において、多孔質担体に担持させる菌類を耐熱性放線菌と耐熱性細菌とを選択した理由は、これらの菌類が有機性廃棄物の分解能力に特に優れ、メタン発酵速度が増し、メタン菌のみによるメタン発酵と比べてメタンガスがより発生するという実験的知得によるものである。
【0019】
多孔質担体は、無機質、有機質、合成樹脂等の発泡体であって、本発明において好ましく用いられる多孔質担体は、木炭、活性炭、石炭、コークス、活性コークス、泥炭、バームキュライト、パーライト、ベントナイト、発泡性ウレタンから選ばれるいずれか一種であり、さらに好ましくは木炭、ヤシガラ活性炭、石炭のいずれか一種であり、特に好ましいのは木炭である。この理由は、これらの多孔質担体は水と空気を保持することが可能であるので、好気的な耐熱性放線菌と耐熱性細菌の培養に優れるからである。
【0020】
本発明に用いられる多孔質担体の粒度は、特に限定はされないが、3〜30メッシュのものを使用するのが好ましく、特に4〜8メッシュのものを使用するのが好ましい。3メッシュ未満だと通気性が良すぎ発酵温度が上昇せず、30メッシュを超えると好気的でなくなるため、いずれの場合も好ましくない。
【0021】
本発明に用いられる多孔質担体のpHは、7.5〜9.5であることが好ましく、8.0〜9.0であることがより好ましい。耐熱性放線菌と耐熱性細菌の生育に適したpH域であり、耐熱性放線菌と耐熱性細菌以外の菌類の生育を防止でき、多孔質担体中の耐熱性放線菌と耐熱性細菌を一定量に維持することができるからである。
【0022】
次に、耐熱性放線菌と耐熱性細菌とを多孔質担体に担持させる方法について説明する。
多孔質担体60〜75重量部に対して有機性廃棄物を25〜40重量部用いて混練する。多孔質担体の量が60重量部未満の場合は、有機物の未分解率が多くなり好ましくなく、75重量部を超えて使用する場合には、好適な発酵温度を得ることができず、好ましくない。また、有機性廃棄物が25重量部未満の場合は、有機性廃棄物の量が少なすぎるため多孔質担体に耐熱性放線菌と耐熱性細菌を十分に担持させることができず、40重量部を超える場合は、耐熱性放線菌、及び耐熱性細菌と多孔質担体との配合バランスがくずれ、有機性廃棄物の未分解率が多くなり好ましくない。
【0023】
前記混練物の系内温度を15℃以上にし、外気温と遮断した後、好気的高温発酵によって、耐熱性放線菌と耐熱性細菌とを多孔質担体に担持させる。発酵物系の温度を55℃〜80℃、好ましくは菌類の選抜性に優れるため60〜70℃で5日間以上、通常はエアレーションにより10日間は維持させる。発酵時の温度が55℃未満であると耐熱性放線菌と耐熱性細菌以外のその他の雑菌が増殖するため、80℃を超えると耐熱性放線菌と耐熱性細菌の増殖が抑制されるため、耐熱性放線菌と耐熱性細菌を効率よく増殖させることができず、いずれの場合も好ましくない。
【0024】
多孔質担体に担持される菌量は、特に限定はされないが多孔質担体に対して5〜20重量%が好ましい。5重量%未満であると菌量が少ないため十分に発酵させることができず、20重量%を超えると多孔質担体に担持させにくいため、何れも好ましくない。
【0025】
次に、上述のようにして耐熱性放線菌と耐熱性細菌とを担持させた多孔質担体をメタン菌が含有された有機性廃棄物に加えることを特徴とするメタン発酵方法について説明する。
【0026】
メタン発酵をさせるために用いる有機性廃棄物は、粉砕機や攪拌機等を用いてスラリー化した後に、メタン発酵槽に投入されることが好ましい。スラリー化する際の水の添加量は特に限定されないが、添加後の有機性廃棄物の含水率が50〜60%になるように添加するのが好ましい。
【0027】
スラリー化に使用される水は、特に限定されないが、活性が高まりメタン発酵の効率に優れるから、クラスターの小さい水(以下、単分子水という)を使用することが好ましい。一般に自然界に存在するほとんどの水は、クラスターと呼ばれる集団を形成している。クラスターとは水分子同士が互いに水素結合をすることによって形成される集団のことをいう。自然界に存在する水は約13〜23個の水分子の「クラスター」を形成している。この水が磁場を垂直に流れるとプラスの電荷を持つ水素とマイナスの電荷を持つ酸素が互いに反対方向に引っ張られたり、クラスター同士の衝突などによりクラスターが細分化される。本発明において使用する単分子水は、約1〜10個の水分子の「クラスター」である。単分子水は、大きなクラスターが分解されて小さくなることにより活性が高まる。本発明においては、単分子水を使用することで、メタン発酵効率に優れる。
【0028】
スラリー化された有機性廃棄物をメタン発酵槽に投入した後、場合によっては水田の土や汚泥を加え、耐熱性放線菌と耐熱性細菌とが担持された多孔質担体をメタン発酵槽に添加する。
メタン発酵を行う温度は特に限定されないが、通常は菌類が最も活動しやすい37℃とするのが好ましい。メタン発酵は嫌気性発酵であるため、外気を遮断して発酵を行う。
【0029】
本発明に係る発酵槽に、前記有機性廃棄物と前記多孔質担体の他に、あらかじめ有機性廃棄物と水田の土や汚泥と混合するなどしてメタン発酵を進行させた廃棄物(以下、種廃棄物という)をさらに用いることが好ましい。種廃棄物を用いると、メタン発酵効率をさらに向上させることができる。
種廃棄物の作成方法については、特に限定はされないが、有機性廃棄物80gに対して水田の
土80gを混合し、20日間メタン発酵を進行させたものを用いることが好ましい。
種廃棄物の含有量については、特に限定されないが、前記有機性廃棄物に対して20〜60重量%添加することが好ましい。
【0030】
本発明にかかる方法において、メタン菌は有機性廃棄物に含有されているものを利用してもよく、また、上述した水田の土、汚泥等に含まれるものを使用してもよい。
【0031】
メタン発酵によって得られたメタンガスは、小規模施設、例えば山の家、小規模牧場及び簡易宿泊施設などに好適に利用される。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を示すことにより、本発明を明確に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されない。
【0033】
(耐熱性放線菌と耐熱性細菌の多孔質担体への担持)
多孔質担体として8メッシュの木炭を使用し、木炭65重量部、豚の糞尿35重量部をできるだけ均一になるように混練した。その後混練物をエアレーションしながら耐熱性放線菌と耐熱性細菌とを木炭に担持させ、発酵系内の温度を測定した。結果を図1に示す。
【0034】
図1の通り、測定開始後3日目には55℃を超えており、最高温度は5日目の74.6℃、14日目まで55℃以上であることから、発酵温度は、55℃〜80℃で10日間は持続されていることを示しており、その後15日目以降も50〜60℃の温度を維持している。
【0035】
(メタン発酵の比較実験1)
表1の組成に従って、
実施例1:糞尿30g、水道水450ml、多孔質担体3.0g、
実施例2:糞尿30g、単分子水450ml、多孔質担体3.0g、
比較例1:糞尿30g、水道水450ml、
比較例2:糞尿30g、単分子水450ml、
を容器に調製した。尚、糞尿としては豚の糞尿(糞と尿の比率は、糞:尿=1:1)を用いた。本試験に用いた菌類を担持してなる多孔質担体(以下、単に多孔質担体という場合がある)は、生育温度60〜75℃の耐熱性放線菌と耐熱性細菌とを8メッシュの木炭に担持したものを用いた。
各容器の糞尿液をマグネティックスターラによる攪拌後、各容器を水平にして37℃の恒温槽内で振とうし、メタン発酵を進行させた。メタン発酵中、発生ガス量、メタンガス濃度、硫化水素濃度を24日間、2〜3日に1回測定した。発生ガス積算量、メタンガス発生積算量については測定結果を表2に、硫化水素濃度については図2に示す。尚、発生ガス量は100mlの注射器、メタンガス濃度はTCD付ガスクロマトグラフで測定を行い、硫化水素濃度は検知管を用いてそれぞれ測定した。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
表2に示されている通り、比較例1、比較例2と比較しても、実施例1、実施例2の発生ガス積算量、メタンガス発生積算量共に大きく、有機性廃棄物に耐熱性放線菌、及び耐熱性細菌とが担持された多孔質担体を加えてメタン発酵を行うことが有効であることを示している。更に、実施例1よりも実施例2の方が発生ガス積算量、メタンガス発生積算量が多いことから、多孔質担体と単分子水の組み合わせが、メタン発酵に有効であることを示している。
【0039】
図2は、メタン発酵比較実験1における硫化水素濃度のグラフである。硫化水素の発生は、発生量としては多くはないが、悪臭の原因物質であり、また、毒性によりメタン発酵の阻害となるものである。実施例1、実施例2共に、比較例1、比較例2の1/2〜1/10と低い値となっている。硫化水素の発生は、多孔質担体の添加によって抑制されていることを示している。
【0040】
(メタン発酵の比較実験2)
表3の組成に従って、
実施例3:糞尿80g、種廃棄物20g、水道水600ml、多孔質担体3.0g、
比較例3:糞尿80g、種廃棄物20g、水道水600ml、
を容器に調整した。表3で使用される種廃棄物は、糞尿80gに水田の土80gを加えてメタン発酵を20日間進行させたものである。本試験で用いた菌類を担持してなる多孔質担体、糞尿については、上記メタン発酵の比較実験1と同様である。
各容器の糞尿液をマグネティックスターラによる攪拌後、各容器を水平にして37℃の恒温槽内で振とうし、メタン発酵を進行させた。メタン発酵中、発生ガス量、メタンガス濃度、硫化水素濃度を24日間、2〜3日に1回測定した。測定方法は上記比較実験1と同様である。発生ガス積算量、メタンガス発生積算量については測定結果を表4に、メタンガス濃度については図3に、硫化水素濃度については図4に示す。
また、種廃棄物の添加効果について比較するため、実施例1と実施例3の、糞尿1g当たりのメタンガス発生量の積算グラフについて図5に示す。
【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
表4に示されている通り、比較例3と比較しても、実施例3の発生ガス積算量、メタンガス発生量共に大きく、有機性廃棄物に耐熱性放線菌、及び耐熱性細菌とが担持された多孔質担体を加えてメタン発酵を行うことが有効であることを示している。
【0044】
図3は、メタン発酵の比較実験2におけるメタンガス濃度のグラフである。経過日数10日までは実施例3、比較例3共にメタンガス濃度に関してほとんど差はないが、10日目から20日目にかけて実施例3は比較例3よりも高い値となっている。実施例3は比較例3よりも5日早く70%に達している。従って、多孔質担体は、メタンガス濃度を上げる速度が速いことを示している。
【0045】
図4は、メタン発酵の比較実験2における硫化水素濃度のグラフである。図2と同様、実施例3は比較例3よりも低い値となっている。硫化水素の発生は、菌類を担持した多孔質担体の添加によって抑制されていることを示している。
【0046】
図5は、種廃棄物なしでの実施例1と、種廃棄物が含有された実施例3の、糞尿1g当たりのメタンガス発生量の積算グラフである。実施例1は、13日経過するまでメタンガスの発生は比較的緩やかであるが、種廃棄物が含有されている実施例3は、10日過ぎからメタンガスの発生量が増加している。また、測定開始後24日目のメタンガス発生積算量は、実施例3は実施例1の倍近くの発生量となっている。従って、種廃棄物の添加は、メタンガス発生量の増加速度を速め、メタンガス発生量をさらに増加させる効果を有することを示している。
【0047】
以上より、実施例1〜3の何れも比較例1〜3に比してメタンガス発生量が増加している。
即ち、55〜80℃の温度域で生育する耐熱性放線菌と耐熱性細菌とを担持してなる多孔質担体を用いてメタン発酵を行うことによりメタンガス発生量が増加するから、より効率の高いメタン発酵方法とすることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のメタン発酵方法は、家庭、飲食店、宿泊施設等の小規模施設から通常廃棄される生ゴミや糞尿等の有機性廃棄物のメタン発酵処理に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】耐熱性放線菌と耐熱性細菌とを多孔質担体へ担持する際の発酵温度を測定したグラフである。
【図2】メタン発酵比較実験1における硫化水素濃度のグラフである。
【図3】メタン発酵比較実験2におけるメタンガス濃度のグラフである。
【図4】メタン発酵比較実験2における硫化水素濃度のグラフである。
【図5】種廃棄物なしでの実施例1と、種廃棄物が含有された実施例3の、糞尿1g当たりのメタンガス発生量の積算グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性放線菌と耐熱性細菌とを担持してなる多孔質担体を有機性廃棄物に添加してメタン発酵させるメタン発酵方法であって、
前記多孔質担体が、木炭、活性炭、石炭、コークス、活性コークス、泥炭、バームキュライト、パーライト、ベントナイト、発泡性ウレタンのうちの一種以上であり、発酵温度を55〜80℃に維持しながら少なくとも5日間発酵させることによって前記耐熱放線菌と前記耐熱性細菌とを担持してなることを特徴とするメタン発酵方法。
【請求項2】
前記有機性廃棄物が、単分子水によりスラリー化されていることを特徴とする請求項1に記載のメタン発酵方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−45560(P2009−45560A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214163(P2007−214163)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(506221767)SIL株式会社 (2)
【出願人】(390016964)株式会社キングコール (1)
【Fターム(参考)】