説明

メタン精製方法

【課題】非吸着ガスとともに排ガスとして排出されるメタンガス量を減少させ(収率を向上させ)つつ、得られるメタンガス純度を高くする。
【解決手段】原ガスを、連絡路弁VR1を閉止した状態で第一吸着塔1内が第一圧力になるまで供給路L1から供給する第一工程を行い、原ガスの供給を止め、非吸着ガスを、第二吸着塔2内の圧力が第一吸着塔1内と圧力差を有する第二圧力になるまで、第二吸着塔2に供給する第二工程を行い、メタン吸着剤1aに吸着したガスを、製品回収圧力にて取出す第三工程、第一吸着塔1からの非吸着ガス供給を止め、第二吸着塔2で吸着しなかった排ガスを、第二吸着塔2内の圧力が製品回収圧力よりも高い第三圧力になるまで、取出す第四工程、第四工程を行った後に、メタン吸着剤2aに吸着したガスを、製品回収圧力にて取出す第五工程を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン精製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、種々のガスをPSA(圧力揺動吸着法)により分離精製する技術が用いられている(特許文献1等)。
【0003】
PSAによると、吸着塔に充填されたガス吸着材に原料ガス中の対象ガスを加圧条件下で吸着させ、不純物を非吸着ガスとして除去し、ガス吸着材に吸着された対象ガスを減圧条件下で脱着させることにより、原料ガス中の対象ガスを精製回収することができる。
【0004】
このような吸着塔の加圧減圧動作は、通常タイマ制御され、吸着塔の運転効率に基き、適宜設定されている。そこで、メタンガスを精製するにあたり、非吸着ガスとともに排ガスとして排出されるメタンガス量を減少させつつ、得られるメタンガス純度を高くするためには、吸着塔の大きさ、吸着材の種類を、原料ガスの性状に応じて選定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−167233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、このように吸着塔を選定すると、通常、原料ガスに比して大掛かりな吸着塔を用いなければ所望のガス純度が得られなくなる傾向があるとともに、収率が低くなり、大気中に放散される排ガスの量が多くなるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、大掛かりなメタン精製装置を用いることなく、メタンガスを精製するにあたり、非吸着ガスとともに排ガスとして排出されるメタンガス量を減少させ(収率を向上させ)つつ、得られるメタンガス純度を高くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[構成]
上記技術課題を解決するための本発明のメタンガス精製方法の特徴構成は、
メタン吸着材を充填した第一吸着塔および前記第一吸着塔よりも小容量の第二吸着塔を備えるとともに、第一、第二吸着塔を直列に接続する連絡路、第一吸着塔に原ガスを供給する供給路、第一吸着塔から吸着材を通過したガスを排出する第一抽気路、第二吸着塔から吸着材を通過したガスを排出する第二抽気路、前記第二吸着塔からの排気路を備えたメタン吸着部を有するメタン精製装置により、メタンを主成分とする原ガスを、メタン吸着剤にメタンを吸着させて、吸着しなかった不純物を分離するメタン精製方法であって、
原ガスを、連絡路を閉止した状態で前記第一吸着塔内が第一圧力になるまで前記供給路から供給する第一工程を行い、
前記供給路からの原ガスの供給を止め、前記第一吸着塔で吸着しなかった非吸着ガスを、前記第二吸着塔内の圧力が第一吸着塔内と圧力差を有する第二圧力になるまで、前記連絡路を介して第二吸着塔に供給する第二工程を行い、
前記第一吸着塔の吸着剤に吸着したガスを、製品回収圧力にて前記第一抽気路を介して取出す第三工程、
前記連絡路を介した前記第一吸着塔からの非吸着ガスの供給を止め、前記第二吸着塔で吸着しなかった排ガスを、前記第二吸着塔内の圧力が製品回収圧力よりも高い第三圧力になるまで、前記排気路を介して取出す第四工程、
前記第四工程を行った後に、前記第二吸着塔の吸着剤に吸着したガスを、製品回収圧力にて前記第二抽気路を介して取出す第五工程を行う点にある。
【0009】
また、上記構成において、第二圧力が、第一吸着塔の内容積からメタン吸着材の容積を差引いた容積と第一圧力の大気圧に対する倍率との積に相当する量のガスを、連絡路を介して第二吸着塔に供給した時点で到達する圧力であり、第三圧力が、第二吸着塔の内容積からメタン吸着材の容積を差引いた容積と第二圧力の大気圧に対する倍率との積に相当する量のガスを、排気路を介して取出した時点で到達する圧力であることが好ましい。
【0010】
[作用効果]
つまり、本発明のメタン精製方法を行うのに用いるメタン精製装置は、比較的簡単な2塔直列式の第一、第二吸着塔を備えたものが採用され、具体的には、メタン吸着材を充填した第一吸着塔および前記第一吸着塔よりも小容量の第二吸着塔を備えるとともに、第一、第二吸着塔を直列に接続する連絡路、第一吸着塔に原ガスを供給する供給路、(即ち原ガスは供給路のみから供給される)第一吸着塔から吸着材を通過したガスを排出する第一抽気路、第二吸着塔から吸着材を通過したガスを排出する第二抽気路(第一、第二抽気路により、第一、第二吸着塔が独立状態で動作可能)、前記第二吸着塔からの排気路を備えたメタン吸着部を有するから、前記供給路から供給された原ガスは、第一吸着塔でメタン吸着材に主成分とするメタンガスが吸着されて、メタン吸着部において不純物の濃縮されたガス(非吸着ガス)となる。この不純物の濃縮されたガスを効率よくメタン吸着部から除去することによって、前記メタン吸着材に吸着された純度の高いガスを得るとともに、前記非吸着ガスに含まれるメタンガス量を少なくすることができると考えられる。
【0011】
ここで、原ガスを前記第一吸着塔内が第一圧力になるまで前記供給路から供給する第一工程を行い、上記非吸着ガスを得ることができる。
【0012】
次に、前記供給路からの原ガスの供給を止め、前記第一吸着塔で吸着しなかった非吸着ガスを、第二吸着塔内が第一吸着塔内と圧力差を有する第二圧力になるまで、前記連絡路を介して第二吸着塔に供給する第二工程を行うと、前記第一吸着塔の非吸着ガスは、第二吸着塔に導入され、前記非吸着ガス中のメタンガスは、第二吸着塔内のメタン吸着材に吸着される。
【0013】
ここで、第二圧力は、第一吸着塔の内容積からメタン吸着材の容積を差引いた容積と第一圧力の大気圧に対する倍率との積に相当する量のガスを、連絡路を介して第二吸着塔に供給した時点で到達する圧力であること好ましい。
【0014】
ここで「第一吸着塔の内容積からメタン吸着材の容積を差引いた容積」は、以下のようにして決定される上限と下限の範囲にある容積である。
【0015】
上限=メタン吸着材(粒状またはペレット状)を充填した真空状態の第一吸着塔に水素ガスを大気圧になるまで充填した時の大気圧における水素の容積。
【0016】
水素ガスはメタン吸着材にほとんど吸着されないガスとして選定されており、このようにして求められる上限は実質的に、第一吸着塔の内容積から吸着材を構成する骨格部分の容積を除いた容積であり、前記第一吸着塔で吸着しなかった非吸着ガスが存在できる最大空間容積と考えられる。
【0017】
この上限の容積と第一圧力の大気圧に対する倍率との積に相当する量より多くのガスを第一吸着塔から第二吸着塔に供給することは、第一吸着塔のメタン吸着材からメタンを一部脱着させしまい、不要に該メタンも第二吸着塔に供給させてしまうことになる。このことは第二工程を終了した時点での第二吸着塔の排ガスのメタン濃度を高めてしまうので、後述の第四工程で排気路を介して取出す排ガス中のメタン量が多くなり、その結果精製したメタンの収率が小さくなってしまうという問題が起こるので好ましくない。
【0018】
下限=メタン吸着材(粒状またはペレット状)を充填した真空状態の第一吸着塔に水銀を大気圧になるまで充填した時の大気圧における水銀の容積。
【0019】
水銀はメタン吸着材の細孔にほとんど入っていかない液体として選定されており、このようにして求められる下限は実質的に、第一吸着塔の内容積からメタン吸着材(粒状またはペレット状)の外表面で囲まれる容積を除いた容積であり、前記第一吸着塔で吸着しなかった非吸着ガスが存在できるガス空間の下限と考えられる。この下限の容積と第一圧力の大気圧に対する倍率との積に相当する量より少ないガスを第一吸着塔から第二吸着塔に供給することは、第一吸着塔内の非吸着ガス中の不純物の残存量が増大してしまうことになるので、第三工程で第一抽気路を介して取出すガス中の不純物の濃度が大きくなってしまう(精製度合いが低下する)という問題が起こるので好ましくない。
【0020】
これらの上限、下限は、メタン吸着材を充填した第二吸着塔に対して、前記上限と下限の定義中の操作をすることにより実験的に求めた容積の値と、第一吸着塔と第二吸着塔の容積比との積として得ることができる。
【0021】
第二圧力の具体的な設定方法としては、前記連絡路の中間に流量計を敷設して連絡路を介して第二吸着塔に供給した流量を計量し、その計量値が第一吸着塔の内容積からメタン吸着材の容積を差引いた容積と第一圧力の大気圧に対する倍率との積に相当する量になった時点で到達した圧力を第二圧力として設定するという方法が挙げられる。
【0022】
前記第一吸着塔では、第二工程を終了したときに、第一吸着塔内の非吸着ガスがメタンを主成分とするものにできるとともに、第二吸着塔内の非吸着ガスに含まれるメタンガスが、前記第二吸着塔で十分吸着され、さらに吸着されなかった非吸着ガス中に含まれるメタンガス量が少なくなる。
【0023】
ここで、第二吸着塔の容量は第一吸着塔の容量より小容量とすることが好ましい。
こうすることにより、第一吸着塔の内容積からメタン吸着材の容積を差引いた容積と第一圧力の大気圧に対する倍率との積に相当する量のガスを、連絡路を介して第二吸着塔に供給した時点で到達する第二吸着塔の圧力はより高くなるので、第二吸着塔のメタン吸着材に吸着されるメタンの量が増大し、第二吸着塔内の非吸着ガスのメタンガスの濃度はより小さくなる。つまり不純物の濃度をより高めることができる。その結果、後述の第五工程で排気路から取出される排ガス中のメタンガス量が低減し、メタンの収率を増大させることができる。
【0024】
すると、第一吸着塔では、前記第一吸着塔の吸着剤に吸着したガスを、製品回収圧力にて、前記第一抽気路を介して取出す第三工程を行うことにより、純度の高められたメタンガスを、前記第一吸着塔より製品ガスとして取り出すことができる。(この第一吸着塔からの回収工程では、前記連絡路は閉止する。)
【0025】
一方、第二吸着塔では、前記連絡路を介した前記第一吸着塔からの非吸着ガス供給を止め、前記第二吸着塔で吸着しなかった排ガスを第三圧力になるまで、前記排気路を介して取出す第四工程を、行うことにより、不純物がさらに濃縮された非吸着ガスを排気することができる。ここで、第三圧力が製品回収圧力よりも高い値に設定するので、その非吸着ガスにメタンガスが混入しにくい状態で排出することができるとともに、前記第二吸着塔に吸着されたメタンガスも高純度で保持されることになる。
【0026】
ここで、第三圧力は、第二吸着塔の内容積からメタン吸着材の容積を差引いた容積と第二圧力の大気圧に対する倍率との積に相当する量のガスを、排気路を介して取出した時点で到達する圧力であることが好ましい。
【0027】
また「第二吸着塔の内容積からメタン吸着材の容積を差引いた容積」は、以下のようにして決定される上限と下限の範囲にある容積である。
【0028】
上限=メタン吸着材を充填した真空状態の第二吸着塔に水素ガスを大気圧になるまで充填した時の大気圧における水素の容積。
【0029】
このようにして求められる上限は実質的に、第二吸着塔の内容積から吸着材を構成する骨格部分の容積を除いた容積であり、前記第二吸着塔で吸着しなかった非吸着ガスが存在できる最大空間容積と考えられる。
【0030】
この上限の容積と第二圧力の大気圧に対する倍率との積に相当する量より多くのガスを第二吸着塔から排気路を介して取出すことは、第二吸着塔のメタン吸着材からメタンを一部脱着させてしまい、不要に該メタンも排気路を介して取出してしまうことになり、精製したメタンの収率が小さくなってしまうという問題が起こるので好ましくない。
【0031】
下限=メタン吸着材を充填した真空状態の第二吸着塔に水銀を大気圧になるまで充填した時の大気圧における水銀の容積。
【0032】
この下限の容積と第二圧力の大気圧に対する倍率との積に相当する量より少ないガスを第二吸着塔から排気路を介して取出すことは、第二吸着塔内の非吸着ガス中の不純物の残存量が増大してしまうことになるので、第五工程で第二抽気路を介して取出すガス中の不純物の濃度が大きくなってしまう(精製度合いが低下する)という問題が起こるので好ましくない。
【0033】
これらの上限、下限は、メタン吸着材を充填した第二吸着塔に対して、前記上限と下限の定義中の操作をすることにより実験的に求めた容積として得ることができる。
【0034】
第三圧力の具体的な設定方法としては、前記排気路の中間に流量計を敷設して連絡路を介して取出した流量を計量し、その計量値が第二吸着塔の内容積からメタン吸着材の容積を差引いた容積と第二圧力の大気圧に対する倍率との積に相当する量になった時点で到達した圧力を第三圧力として設定するという方法が挙げられる。
【0035】
すると、前記第四工程を行った後に、前記第二吸着塔の吸着剤に吸着したガスを、製品回収圧力にて、前記第二抽気路を介して取出す第五工程を行うことにより、前記第二吸着塔に吸着されたメタンガスも製品ガスとして取り出すことができるようになる。
【0036】
したがって、排気されるガス中のメタンガス濃度をきわめて低くすることができると同時に、製品ガスとして回収されるメタンガスの濃度を高く設定することができる。そのため、効率良くメタン精製装置を運転しながら、大気中へのメタンガス放散量を減少させることができるので、省資源化が図れ、かつ地球温暖化の抑制を図ることができた。
【0037】
上述の設定圧力で前記メタン精製装置を運転すると、たとえば容量6870mLの第一吸着塔および2400mLの第二吸着塔に椰子殻活性炭をメタン吸着材として用いた場合に、メタン純度98.5%の原ガスから収率97.5%で、99.4%の製品ガスを得ることができ、簡単な構成のメタン精製装置でありながら高い効率で高純度の製品メタンガスが得られたことになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】メタン精製装置を示す概略図であり、実施の形態1のメタン精製方法の各工程を示す図である。
【図2】メタン吸着材のメタン吸着性能を示すグラフである。
【図3】実施の形態2のメタン精製方法の第三〜第五工程を示す図である。
【図4】実施の形態2のメタン精製方法のタイムサイクルを示す図である。
【図5】別実施の形態におけるメタン精製装置の概略図
【図6】別実施の形態のメタン精製方法のタイムサイクルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1に本発明のメタン精製方法に用いられるメタン精製装置の一例を示すとともに、以下に、本発明のメタン精製方法を説明する。尚、以下に好適な実施の形態を記すが、これら実施の形態は、それぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
【0040】
図1に示すように、メタン精製装置は、活性炭等のメタン吸着材1aを充填した第一吸着塔1および前記第一吸着塔1よりも小容量の第二吸着塔2を備える。また、第二吸着塔2にも、メタン吸着材2aを充填してある。
【0041】
そして、第一吸着塔1に原ガスを供給する供給路L1、第一、第二吸着塔1,2を直列に接続する連絡路L2、前記第二吸着塔2からの排気路L3、第一吸着塔1から吸着材1aを通過したガスを排出する第一抽気路L4、第二吸着塔2から吸着材2aを通過したガスを排出する第二抽気路L5を備える。
【0042】
前記供給路L1には、供給弁Vsを備えるとともに、前記連絡路L2には連絡路弁VR1、前記排気路L3には、排気路弁VR2を設けてある。また、前記第一、第二抽気路L4,L5には、抽気弁(以下では順に第一、第二抽気弁と称する)V1,V2を設け、前記第一、第二抽気路L4,L5の合流部には、製品ガス回収弁VR3を設けてある。
【0043】
これらの構成により、たとえば、下記実施の形態では、有機性廃棄物を嫌気性メタン発酵することにより得られたバイオガスを高圧水精製法でさらに精製して二酸化炭素を除去したガスを原ガスとして(メタン純度98.5%)、前記メタン吸着材1a、2aとして椰子殻活性炭を用いた場合に、収率97.5%で、純度99.4%の製品ガスを得ることができた。
【0044】
尚、メタン吸着材1aとしての椰子殻活性炭は、平均細孔径が0.4nm〜1.5nm、より好ましくは0.6nm〜1.2nmであり、粒子径の分布が0.1mm〜6mm、より好ましくは0.2mm〜4mmの範囲に実質的に含まれるものが好適に用いられる。
【0045】
このメタン精製装置により、メタン精製を行う場合の具体例を以下に具体的に示す。
【0046】
<実施の形態1>
上記メタン精製装置の具体的な仕様を以下に示す。
【0047】
〔第一吸着塔〕
円筒形、ステンレス製
内径20cm、長さ22cm、内容積6870cc
メタン吸着材1aの充填量は第一吸着塔1の容積の90%とし、重量は3.58kg
尚、吸着材充填層の中心部分には、多孔質管1bを挿入し、メタン吸着材1aの充填層より下部および上部のガス空間のガスが多孔質管1bに自由に流入できるようにしてある。これにより多孔質管1bの表面よりガスが吸着材充填層内に拡散でき、メタン吸着材1aの充填層内におけるガス吸着速度を高めている。
第一吸着塔1には第一圧力計M1が敷設されており、第一工程で第一圧力計M1が第一圧力になった時点で供給弁Vsを閉止して原ガスの供給を停止する。
【0048】
〔第二吸着塔〕
内径15cm、長さ13.6cm、内容積2400cc
メタン吸着材2aの充填量は第二吸着塔2の容積の90%とし、重量は1.25kg
第二吸着塔2には第二圧力計M2が敷設されており、第二工程では第二圧力計M2が第二圧力になった時点で連絡路弁VR1を閉止して非吸着ガスの供給を停止する。また第四工程では第二圧力計M2が第三圧力になった時点で排気路弁VR2を閉止する。
【0049】
〔メタン吸着材〕
メタン吸着材1a、2aはいずれも下記のものを用いる。
椰子殻活性炭、嵩密度0.58g/ml、平均細孔径約0.9nm、粒径分布0.21mm〜3.3mm
【0050】
上記メタン吸着材1a、2aのメタン吸着性能は、図2のようになっている。ここで、第一、第二吸着塔1,2は、いずれも、内容積の90%に前記メタン吸着材1a、2aを充填してあり、25℃において、前記メタン吸着材1a、2aに吸着されるメタン量に加え、残余の空間に貯留されるメタンガス量も合わせた量をメタンガス吸着量として表している。
【0051】
〔原ガス〕
メタン98.5%、窒素1.5%(C1=98.5)
流量30.6L/分
原ガス圧力 0.9MPa(絶対圧力、以下同じ)
原ガスおよび吸着材の温度は25℃
【0052】
〔第一圧力〕
ゲージ圧力0.3MPa〜1.0MPa
【0053】
〔製品回収圧力〕
大気圧(ゲージ圧力0MPa)または大気圧より低い圧力
【0054】
第一圧力と製品回収圧力の差が大きいことは、少ないメタン吸着材1a量でより多くのメタンを吸着(すなわち脱着)できるので好ましく、第三工程および第五工程で、より多くのメタンを脱着できるので、相対的に不純物の割合が低下し、その結果精製ガスのメタン濃度をより高めることができるので好ましい。また第四工程で第二吸着塔2より排出させる排ガスのメタン濃度はより大きく低下しているので前記製品ガスとして利用できないメタンガス量をより低減できる。つまり原ガスに対するメタン収率をより高めることができる。
【0055】
〔第一工程〕(第一吸着塔:昇圧工程)
図1(a)に示すように、連絡路弁VR1、第一抽気弁V1を閉成するとともに、供給弁Vsを開成し、供給路L1から原ガスを供給する。
【0056】
このとき第一吸着塔1の内圧は、所要時間約6分で、製品回収圧力P0=0.1MPaから第一圧力P1=0.90MPaまで昇圧される。前記第一吸着塔1内の不純物濃度は7.35%まで濃縮されている。
【0057】
後述する第二工程の第二圧力の設定値は、前述のように、前記連絡路L2の中間に流量計(図示省略)を敷設して連絡路L2を介して第二吸着塔2に供給した流量を計量し、その計量値が、第一吸着塔1の内容積からメタン吸着材1aの容積を差引いた容積と第一圧力の大気圧に対する倍率との積に相当する量になった時点で到達した圧力として求める。
【0058】
本実施の形態では、第一吸着塔1の内容積からメタン吸着材1aの容積を差引いた容積は下記の上限と下限の間の2.93Lとした。この場合、第一吸着塔1の内容積からメタン吸着材1aの容積を差引いた容積と第一圧力の大気圧に対する倍率との積に相当する量は、2.93L×0.9MPa/0.1013MPa=26.0L(25℃)であり、前記連絡路L2の中間に流量計を敷設して連絡路L2を介して第二吸着塔2に供給した流量を計量し、その計量値が26.0L(25℃)になった時点で到達した圧力、すなわち第二圧力は0.41MPaである。
【0059】
また前記上限は、メタン吸着材1aを充填した真空状態の第一吸着塔1に水素ガスを大気圧になるまで充填した時の大気圧における水素の容積として求められ、本実施の形態の場合、5.08Lであり、前記下限は、メタン吸着材を充填した真空状態の第一吸着塔に水銀を大気圧になるまで充填した時の大気圧における水銀の容積として求められ、本実施の形態の場合、2,39Lである。
【0060】
また、製品回収圧力はP0=0.1MPaとし、製品ガスの目標純度を99.4%に設定する。
【0061】
〔第二工程〕(第一吸着塔:排気工程、第二吸着塔:給気工程)
図1(b)に示すように、供給弁Vs、排気路弁VR2、第一、第二抽気弁V2を閉成するとともに、連絡路弁VR1を開成し、連絡路L2を通じて前記第一吸着塔1内のガスを第二吸着塔2に送る。
【0062】
このとき前記第二吸着塔2の内圧が、所要時間約2分で、製品回収圧力P0=0.1MPaから第二圧力P2=0.41MPaまで昇圧される。同時に第一吸着塔1の内部圧力は第一圧力P1=0.90MPaからやや低いP4=約0.89MPaまで減圧される。ここで、第二吸着塔2内の不純物濃度は、29.3%まで濃縮されている。
【0063】
〔第三工程〕(第一吸着塔:回収工程)
図1(c)に示すように、供給弁Vs、連絡路弁VR1、第二抽気弁V2を閉成するとともに、第一抽気弁V1、製品ガス回収弁VR3を開成し、第一抽気路L4を介して前記第一吸着塔1内の吸着ガスを脱着させて製品ガスを回収する。
【0064】
このとき、前記製品ガス回収弁VR3の圧力設定は、製品回収圧力P0=0.1MPaに設定されて、前記第一吸着塔1の内圧が、所要時間約4分で、第一圧力よりやや低い圧力P4=約0.89MPaから製品回収圧力P0=0.1MPaにまで減圧される。
【0065】
〔第四工程〕(第二吸着塔:排気工程)
図1(d)に示すように、連絡路弁VR1、第二抽気弁V2を閉成した状態で、排気路弁VR2を開成し、排気路L3を介して、前記第二吸着塔2から第二吸着塔2内の非吸着ガスを排気する。
【0066】
この第三圧力の設定値は、前述のように、前記排気路L3の中間に流量計(図示省略)を敷設して排気路L3を介して取出した流量を計量し、その計量値が、第二吸着塔の内容積からメタン吸着材2aの容積を差引いた容積と第二圧力の大気圧に対する倍率との積に相当する量になった時点で到達した圧力として求める。
【0067】
本実施の形態では、第二吸着塔2の内容積からメタン吸着材2aの容積を差引いた容積は下記の上限と下限の間の1.53Lとした。この場合、第二吸着塔2の内容積からメタン吸着材2aの容積を差引いた容積と第二圧力の大気圧に対する倍率との積に相当する量は、
1.53L×0.41MPa/0.1013MPa=6.14L(25℃)であり、前記排気路L3の中間に流量計を敷設して排気路を介して取出した流量を計量し、その計量値が6.14L(25℃)になった時点で到達した圧力、すなわち第三圧力P3は0.20MPaである。
【0068】
また前記上限は、メタン吸着材2aを充填した真空状態の第二吸着塔2に水素ガスを大気圧になるまで充填した時の大気圧における水素の容積として求められ、本実施の形態の場合、1.78Lであり、前記下限は、メタン吸着材2aを充填した真空状態の第二吸着塔2に水銀を大気圧になるまで充填した時の大気圧における水銀の容積として求められ、本実施の形態の場合、0.835Lである。
【0069】
このとき、前記第二吸着塔2の内圧が所要時間約1分で、第二圧力P2=0.41MPaから第三圧力P3=0.20MPaに低下する。ここで前記第二吸着塔2から排気されたガス量は6.14L(25℃、大気圧)であり、そのガス中のメタンガス濃度は73.3%である。
【0070】
〔第五工程〕(第二吸着塔:回収工程)
図1(e)に示すように、連絡路弁VR1、排気路弁VR2、第一抽気弁V1を閉成し、前記第二抽気弁V2および製品回収弁VR3を開成し、前記第二抽気路L5から前記第二吸着塔2内の吸着ガスを脱着させて、製品ガスを回収する。
【0071】
このとき、前記前記製品ガス回収弁VR3の圧力設定は、製品回収圧力P0=0.1MPaに設定されて、前記第二吸着塔2の内圧が、所要時間約3分で、第三圧力P3=0.20MPaから製品回収圧力P0=0.1MPaにまで減圧される。
【0072】
以下、上記第一〜第五工程を繰り返すことにより製品ガスが得られる。得られたメタンガス純度は99.4%であり、このときの原ガス中のメタンに対する製品ガス中のメタンの収率Yは、
Y=100−(y1×y2÷100)÷(y3×y4÷100)×100
y1 工程5で第二吸着塔2から排気したガス量=6.14L
y2 工程5で第二吸着塔2から排気させるガスのメタン濃度=73.3%
y3 工程1で第一吸着塔1に供給したガス量=183.6L(=30.6L/分×6分)
y4 原ガスのメタン濃度=98.5%
より、97.5%である。
【0073】
<実施の形態2>
また、上述の各工程は、たとえば第三工程と、第四工程とを重複して行うことができ、また、第三工程と第五工程とを同時に行うことができるなど、タイムサイクルを効率化することができる。つまり、たとえば、各弁の開閉により、図1(c)〜(e)の工程を、図3(f)、(g)に示すように変更することができる。これにより、互いに干渉しない配管を有効利用し、第一吸着塔1における第三工程と第二吸着塔2における第四、第五工程とを同時に行うことによって、図4に示すようにタイムサイクルを効率化することができ、第一、第二吸着塔1,2の使用効率を高め、メタン精製効率を向上させることができる。尚、上述の例において、第三工程の終了よりも第五工程の終了が遅い場合には、第一工程(第一吸着塔1の昇圧工程)と、第五工程(第二吸着塔2の回収工程)を重複して行うことも可能である。
【0074】
<別実施の形態>
上述の実施の形態で各弁の動作圧力に対応する開閉タイミングを見出すことができ、各工程において、各弁を圧力設定に基づいて開閉制御するのに代えて、所要時間に応じて開閉制御するように変更することもできる。この場合、第二工程で設定した第二圧力および第四工程で設定した第三圧力が得られる時間をそれぞれ事前に計測し、その結果を第二工程および第四工程の時間に設定することで、製品ガスの高い純度と高い収率を達成することができる。
【0075】
さらに、上述の実施の形態では、第一、第二吸着塔1,2を1対用いてメタン精製を行ったが、2対以上用いてメタン精製を行うこともできる。即ち、たとえば、図5のように、構成することができる。
【0076】
図5においては、第一、第二吸着塔1,2に加えて、第三、第四吸着塔11,12を設け、前記第一、第二吸着塔1,2における、第一吸着塔1、メタン吸着材1a、第二吸着塔2、メタン吸着材2a、供給路L1、連絡路L2、排気路L3、第一抽気路L4、第二抽気路L5、供給弁Vs、連絡路弁VR1、排気路弁VR2、第一、第二抽気弁V1,V2、製品ガス回収弁VR3、第一、第二圧力計M1,M2に代えて、第三吸着塔11、メタン吸着材11a、第四吸着塔12、メタン吸着材12a、供給路L11、連絡路L12、排気路L13、第一抽気路L14、第二抽気路L15、供給弁V1s、連絡路弁VR11、排気路弁VR12、第一、第二抽気弁V11,V12、製品ガス回収弁VR13、第三、第四圧力計M11,M12を設けた構成としてある。
【0077】
この構成によると、たとえば、図6に示すように、各工程を行うことができる。第三、第四吸着塔の動作は省略するが、第一、第二吸着塔の動作に準じるものとする。
【0078】
これにより、第一、第三吸着塔への給気、昇圧を交互に連続的に行うことができるので、先の実施の形態に比べて、メタン精製装置の運転効率をより高く設定することができる。
【0079】
<比較例>
実施の形態1に対して、第二吸着塔を第一吸着塔と同じ仕様とする。つまり2つの吸着塔の容積は同じとする。それ以外の仕様は実施の形態1と同じとする。
この場合、製品のメタンガスの純度を実施の形態1と同じ99.4%にするためのメタンの収率は95.4%に低下してしまう。つまり第五工程で排ガスとして取出されたメタンの量は、実施の形態1の2.5%(=100%−97.5%)に対して4.6%と大幅に増大する。これは、第二吸着塔の容量が大きいため第二吸着塔の不純物の濃度が低下してしまい、その結果、製品ガスのメタン濃度を達成するために取出す排ガス量が増大するためである。
【符号の説明】
【0080】
1 第一吸着塔
1a メタン吸着材
2 第二吸着塔
2a メタン吸着材
L1 供給路
L2 連絡路
L3 排気路
L4 第一抽気路
L5 第二抽気路
Vs 供給弁
VR1 連絡路弁
VR2 排気路弁
V1 第一抽気弁
V2 第二抽気弁
VR3 製品ガス回収弁
M1 第一圧力計
M2 第二圧力計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタン吸着材を充填した第一吸着塔および前記第一吸着塔よりも小容量の第二吸着塔を備えるとともに、第一、第二吸着塔を直列に接続する連絡路、第一吸着塔に原ガスを供給する供給路、第一吸着塔から吸着材を通過したガスを排出する第一抽気路、第二吸着塔から吸着材を通過したガスを排出する第二抽気路、前記第二吸着塔からの排気路を備えたメタン吸着部を有するメタン精製装置により、メタンを主成分とする原ガスを、メタン吸着剤にメタンを吸着させて、吸着しなかった不純物を分離するメタン精製方法であって、
原ガスを、連絡路を閉止した状態で前記第一吸着塔内が第一圧力になるまで前記供給路から供給する第一工程を行い、
前記供給路からの原ガスの供給を止め、前記第一吸着塔で吸着しなかった非吸着ガスを、前記第二吸着塔内の圧力が第一吸着塔内と圧力差を有する第二圧力になるまで、前記連絡路を介して第二吸着塔に供給する第二工程を行い、
前記第一吸着塔の吸着剤に吸着したガスを、製品回収圧力にて前記第一抽気路を介して取出す第三工程、
前記連絡路を介した前記第一吸着塔からの非吸着ガスの供給を止め、前記第二吸着塔で吸着しなかった排ガスを、前記第二吸着塔内の圧力が製品回収圧力よりも高い第三圧力になるまで、前記排気路を介して取出す第四工程、
前記第四工程を行った後に、前記第二吸着塔の吸着剤に吸着したガスを、製品回収圧力にて前記第二抽気路を介して取出す第五工程を行うメタン精製方法。
【請求項2】
請求項1において、第二圧力が、第一吸着塔の内容積からメタン吸着材の容積を差引いた容積と第一圧力の大気圧に対する倍率との積に相当する量のガスを、連絡路を介して第二吸着塔に供給した時点で到達する圧力であり、第三圧力が、第二吸着塔の内容積からメタン吸着材の容積を差引いた容積と第二圧力の大気圧に対する倍率との積に相当する量のガスを、排気路を介して取出した時点で到達する圧力であることを特徴とするメタン精製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−173807(P2011−173807A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37458(P2010−37458)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】