説明

メッシュ状無線ネットワークにおける無線チャネル割当方法およびシステム

【課題】 複数の無線ノードが分散配置され、各無線ノードが近隣の複数の無線ノードのそれぞれと無線リンクを確立する無線ネットワークにおいて、各無線リンクに無線チャネルを齟齬無く割り当てる。
【解決手段】 ネットワーク上の各無線ノードを上位ノードまたは下位ノードに分類する手順と、各上位ノードを複数のグループに分類する手順と、各上位ノードが自身の無線リンクに割り当てる無線チャネルの更新順序を、所定の周期で繰り返される無線チャネルの更新期間内にグループ単位で設定する手順と、各グループの上位ノードが前記更新順序にしたがって、隣接する各下位ノードとの間の各無線リンクに割り当てる無線チャネルを、既登録無線チャネルと競合しないように設定する手順とを含む。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、メッシュ状無線ネットワークにおける無線チャネル割当方法およびシステムに係り、特に、各無線リンクに無線チャネルを齟齬無く割り当てられるようにしたメッシュ状無線ネットワークにおける無線チャネル割当方法およびシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】リンクのトポロジーがメッシュ状である無線ネットワークを有する無線通信システムでは、Point-to-Point (P-P)型およびPoint-to-Multipoint (P-MP)型というネットワーク構成が主に採用されてきた。
【0003】P-P型のシステムは、主に基幹網として使用されることから、対向する2つの無線局から送出されるトラフィック量は同程度であると仮定できる。そして、このような仮定と周波数割り当ての簡易性とから、上り・下りの各回線に別々の周波数帯を割り当てるFDD(Frequency Division Duplex)方式が採用されている。
【0004】P-MP型のシステムでは、親局から子局に向けてのトラフィック量がその反対方向のトラフィック量に比べて多いという非対称性を考慮してTDD(Time DivisionDuplex)方式が採用され、親局から子局へのトラフィック量に応じてダイナミックにチャネル(この場合は、タイムスロット)が割り当てられる(例えば、川端他:「加入者系無線システムにおけるスロット割当特性の検討」、信学技法、RCS2000-78)。ここでは、親局が自局およびその子局を管理および制御し、親局が各リンクにダイナミックにチャネルを割り当てる「集中制御型ダイナミックチャネル割当方式」が採用されている。
【0005】一方、P-Pシステムが有機的に結合したメッシュ状のMP-MP型無線通信システムにおいて、一つの特別な無線局が、メッシュ網に存在する全ての無線局のトラフィック情報を把握してダイナミックにリソースを割り当て、その結果を全ての無線局へ正確に配信することは、制御局の負荷増大、瞬時変動するトラフィック量への追従性、あるいはネットワークのスケーラビリティなどの点から非現実的である。そこで、特定の無線局が集中制御するのではなく、各無線局が近隣の情報を得ながら自ノードのリンクにチャネルを割り当てる「自律分散型ダイナミックチャネル割当方式」が有効である。
【0006】これまで、主にセルラーシステムを対象にした自律分散型ダイナミックチャネル割当方式が数多く提案されている(たとえば、特開平7-212820号公報、特開平10-285644号公報、特開平11-18142号公報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】自律分散型のダイナミックチャネル割当方式では、集中制御型のダイナミックチャネル割当方式に較べて、特定の制御局に負荷が集中することを防止でき、瞬時変動するトラフィック量への追従性が向上し、かつネットワークが大型化しても適用し易い。しかしながら、TDD方式を採用し、かつ複数の周波数スロットを活用する無線通信システムでは、以下のような技術課題があった。
【0008】(1)メッシュ網では、一つのノードが複数のリンクを所有することが有り、各ノードには複数のアンテナおよび無線局が設置されている。このとき、複数のリンクで同一の周波数スロットを使用し、各リンクでTDD Boundaryが異なると、同一ノードの隣接アンテナからの回り込みによる干渉が生じ得る。
【0009】(2)リンクに割り当てる周波数スロットIDを更新する場合、リンクを共有する一対の無線局が、そのTDD Boundaryや周波数スロットIDに関して共通の認識を有していないと、各ノードが同一のリンクに異なった周波数スロットを割り当てることとなり、齟齬が生じて通信が不可能になる。
【0010】このように、自律分散型のダイナミックチャネル割当方式を採用する場合であっても、各ノードは自身のリンクに割り当てる周波数スロットとタイムスロットとの組み合わせ、すなわち無線チャネルを、他のリンクに割り当てられている無線チャネルを考慮して設定しなければならない。しかしながら、従来技術ではこのような認識が無く、各リンクに無線チャネルを齟齬無く割り当てることができなかった。
【0011】本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、複数の無線ノードが分散配置され、各無線ノードが近隣の複数の無線ノードのそれぞれと無線リンクを確立する無線ネットワークにおいて、各無線リンクに無線チャネルを齟齬無く割り当てることができ、その結果、伝送効率の向上と、これに伴う無線資源の有効利用とを可能にするメッシュ状無線ネットワークにおける無線チャネル割当方法およびシステムを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するために、本発明は、複数の無線ノードが分散配置され、各無線ノードが近隣の複数の無線ノードのそれぞれと無線リンクを確立する無線ネットワークにおける無線チャネル割当方法およびシステムにおいて、各無線リンクを一対の上位ノードおよび下位ノードが共有し、かつ上位ノード同士および下位ノード同士が無線リンクを共有しないように、ネットワーク上の各無線ノードを上位ノードまたは下位ノードに分類する手順と、同一の下位ノードと無線リンクを共有し合う上位ノードが同一グループに所属しないように、各上位ノードを複数のグループに分類する手順と、各上位ノードが自身の無線リンクに割り当てる無線チャネルの更新順序を、所定の周期で繰り返される無線チャネルの更新期間内にグループ単位で設定する手順と、各グループの上位ノードが前記更新順序にしたがって、隣接する各下位ノードとの間の各無線リンクに割り当てる無線チャネルを、更新順序が自ノードより前である他のグループの上位ノードが前記各下位ノードの他の無線チャネルに割り当てた既登録無線チャネルと競合しないように設定する手順とを含むことを特徴とする。
【0013】上記した特徴によれば、各上位ノードは他の上位ノードと無線リンクを共有しないので、各上位ノードが自ノードのリンクに割り当てる無線チャネルを自律分散的に設定しても、同一リンクに複数の上位ノードによって異なる無線チャネルが割り当てられてしまうことがない。
【0014】また、下位ノードに着目すれば、各下位ノードの各無線チャネルには、それぞれ異なる上位ノードによって無線チャネルが割り当てられる。ここで、各上位ノードはグループを異にするので各リンクに無線チャネルが割り当てられるタイミングすなわち更新順序が異なる。そして、各上位ノードは、更新順序が自ノードより前である他のグループの上位ノードが当該下位ノードの他の無線チャネルに割り当てた既登録無線チャネルと競合しないように無線チャネルを割り当てるので、下位ノードでも各リンクに割り当てられた無線チャネルが競合しない。すなわち、各上位ノードが自律分散的に自ノードの各リンクに無線チャネルを割り当てても、各リンクに無線チャネルを齟齬無く割り当てることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本発明の無線チャネル割当方法により無線チャネル(本実施形態では、周波数スロットおよびタイムスロット)が自律分散的に割り当てられる無線ネットワークの構成を示した図であり、ここでは、複数の固定無線局(ノード)が分散配置された格子状の無線メッシュ網を例にして説明する。
【0016】本実施形態が対象とする無線メッシュ網では、複数の無線ノード(○)で構成される閉路が全て、各無線ノードを頂点とする偶数多角形となっている。なお、奇数多角形の閉路が存在する場合には、偶数多角形の閉路のみが含まれるように適用範囲を予め定義しておくことが望ましい。
【0017】図2は、本実施形態の動作を示したフローチャートである。ステップS1では、図3に示したように、所定の基準ノードNrefが選択され、この基準ノードNrefが上位ノードと定義される。図3では、上位ノードが黒丸(●)で表されている。ステップS2では、前記基準ノードNrefから偶数ホップ数ずつ先のノードも上位ノードと定義される。さらに、前記基準ノードNrefから奇数ホップ数ずつ先のノードは下位ノードと定義される。図3では、下位ノードが白丸(○)で表されている。
【0018】以上の処理により、無線リンクを共有する一対の無線ノードの一方である上位ノード同士、および他方である下位ノード同士が無線リンクを共有しないように、ネットワーク上の全ノードが、仮想的に上位ノードまたは下位ノードに分類されることになる。
【0019】ステップS3では、各上位ノードに無線チャネルの更新順序を設定するためのスケジュール作成処理が実行される。
【0020】本実施形態のスケジュール作成処理では、同一の下位ノードと無線リンクを共有し合う複数の上位ノードが同一グループに所属しないように、全ての上位ノードが複数(本実施形態では、4つ)のグループに分類される。各グループには、無線チャネルの更新順序として、第1番から第4番の4つの序数(■、■、■、■)のいずれかが割り当てられる。各グループに属する上位ノードには全て、そのグループに割り当てられた更新順序が同様に割り当てられる。
【0021】図4は、前記スケジュール作成処理(ステップS3)の動作を示したフローチャートである。
【0022】ステップS31では、図3に示したように、基準ノードNrefに序数■が割り当てられる。
【0023】ステップS32では、基準ノードNrefから、例えば4ホップ目(●では2つ先)の上位ノードにも序数■が割り当てられる。対象となる上位ノードが複数存在する場合には、例えば、最初に序数■を割り当てたノードから近い順に各対象ノードを参照し、既に序数■を割り当てられている上位ノードから4ホップ離れていれば、序数■を割り当てる。
【0024】ステップS33では、前記ステップS32において序数■が新規に割り当てられた各上位ノードを起点として、前記と同様に、4ホップ目の上位ノードに序数■が割り当てられる。
【0025】ステップS34では、前記ステップS31において序数■が割り当てられた上位ノードから最も近い距離に位置する上位ノードに序数■が割り当てられる。以下同様に、序数■を割り当てられた他の上位ノードに近い上位ノードにも序数■が割り当てられる。
【0026】このときも、対象となる上位ノードが複数存在する場合には、最初に序数■を割り当てたノードから近い順に各対象ノードを参照し、既に序数■を割り当てられている他の上位ノードから4ホップ離れていれば序数■を割り当てる。
【0027】ステップS35では、序数■を割り当てられた上位ノードから最も近い距離に位置する上位ノードに対して、前記と同様に序数■が割り当てられる。ステップS36では、序数■を割り当てられた上位ノードから最も近い距離に位置する上位ノードに対して、前記と同様に序数■が割り当てられる。
【0028】このときも、対象となる上位ノードが複数存在する場合には、最初に序数■(または■)を割り当てたノードから近い順に各対象ノードを参照し、既に序数■(または■)を割り当てられている他の上位ノードから4ホップ離れていれば序数■(または■)を割り当てる。このとき、4ホップ以上離れたノードしか無ければ、これらのノードにも最終の序数■を割り当てる。
【0029】前記各序数■〜■は、後に図6に関して説明するように、各序数を割り当てられたグループに属する各上位ノードが、自身の無線リンクに割り当てる無線チャネルを更新する順番を代表することになる。
【0030】上記したステップS1からS3の各処理は、特定のノード(例えば、前記基準ノードNref)あるいは所定の制御局において集中的に実行される。
【0031】図2に戻り、以上のようにして、「各ノードの上位または下位ノードへの分類」、「各上位ノードのグループ分け」、および「各グループへの無線チャネル更新タイミングすなわち更新順序の設定」が終了すると、ステップS4以降では、各リンクに割り当てる無線チャネル(本実施形態では、周波数スロットおよびタイムスロット)を前記グループ単位で更新するための「周波数スロット更新処理(ステップS4)」および「タイムスロット更新処理(ステップS5)」が、各上位ノードにおいて所定の更新周期ごとに自律分散的に実行される。
【0032】図10は、本実施形態における各上位ノードの機能ブロック図である。アンテナAT2223、AT2221、AT2232、AT2212は、それぞれ送受信機101の送受信部101E、101W、101S、101Nに接続されている。トポロジ解析部103は、自ノードに関するリンク構成情報を送受信機101を介して他ノードに配信すると共に、他ノードから同様に配信されるリンク構成情報を収集し、これに基づいて無線メッシュ網のトポロジを解析する。
【0033】通信品質測定部104は、自ノードの各無線リンクの通信品質としてCNIR{C:キャリア、N:ノイズ、I:干渉、R:レシオ、すなわちC/(N+I)}を測定して正規化CNIRを演算する。情報交換部105は、自ノードが各無線リンクに割り当てた無線チャネルを他のノードに通知すると共に、他のノードが各無線リンクに割り当てた無線チャネルに関する情報を収集する。トラヒック量測定部108は、自ノードからのトラヒック量、自ノードへのトラヒック量およびkホップ先までのトラヒック量を計測する。
【0034】評価関数値演算部106は、後に詳述するように、自ノードの各無線リンクと複数の周波数スロットとの組み合わせのそれぞれについて、前記通信品質測定部104による測定結果等に基づいて評価関数値E(t,L,F)を求める。
【0035】評価関数値見直し部107は、前記情報交換部105が収集した情報に基づいて、自ノードと無線リンクを共有する各下位ノードの他の無線リンクに既に割り当てられている既登録無線チャネルを認識し、既登録無線チャネルと同一の周波数スロットを含む組み合わせの評価関数値を減点する。
【0036】無線チャネル割当部102は、周波数スロット割当部102aおよびタイムスロット割当部102bを含み、前記見直し後の評価関数値が高い順に、その組み合わせにしたがって、各無線リンクに無線チャネルを割り当てる。各無線リンクに割り当てられる無線チャネル数は、無線チャネル割当部102によって予め認識されている。
【0037】図5は、ステップS4で実行される「周波数スロット更新処理」の動作を示したフローチャートであり、当該処理は各上位ノードにおいて所定の更新周期ごとに、グループ単位で繰り返し実行される。
【0038】ステップS41では、自ノードに割り当てられた更新タイミングであるか否かが判別される。本実施形態では、図6に示したように、各更新周期Ts内での各更新タイミング(あるいは更新順序)が、各グループに割り当てられた前記序数■〜■で管理されている。したがって、序数■を割り当てられたグループの上位ノードあれば時刻t1、序数■を割り当てられたグループの上位ノードあれば時刻t2が、それぞれ更新タイミングとなる。
【0039】前記ステップS41において、自ノードの更新タイミングと判定されると、ステップS42では、自ノードの各リンク(ここでは、例えば4つのリンクL1,L2,L3,L4)と、予め確保されている周波数スロット(本実施形態では、7つの周波数スロットF1〜F7が確保されているものとする)との組み合わせごとに、その通信品質を代表する評価関数値Eが算出される。本実施形態では、評価関数値Eの指標として以下のデータを採用している。
(a) 各リンクに対して過去に割り当てた周波数スロットの割当頻度(b) 正規化CNIR
【0040】1つ目の評価指標(a)は、各リンクLに更新周期Tsごとに過去に割り当てた周波数スロットのカウントと総カウント数との比である。2つ目の評価指標(b)は、リンクLごとに得られるCNIRの真数と全周波数スロットのCNIRの平均値との比、すなわち正規化CNIRである。前記CNIRは、通信品質測定部104において測定された通信品質に基づいて、前記評価関数値演算部106により算出される。図7は、各評価指標の一例を示している。
【0041】そして、本実施形態では、ある更新タイミングtにおいてリンクLと周波数スロットFとの組み合わせごとに得られる1つ目の評価指標をEc(t,L,F)、2つ目の指標をEm(t,L,F)とし、次式に基づいて各リンクの評価関数値E(t,L,F)を周波数スロットごとに求める(λは重みを表すパラメータ)。
E(t,L,F)= Ec(t,L,F)+λEm(t,L,F)
【0042】情報交換部105は、隣接リンクに既に割り当てられている周波数スロットに関する情報を収集する。隣接リンクに同じ周波数スロットが既に割り当てられていると、評価関数値見直し部107が、評価関数値E(t,L,F)を次式に基づいてαだけ減点する(αはペナルティを表すパラメータ)。
E(t,L,F)= E(t,L,F)−α
【0043】以上のようにして、図8に示したように、評価関数値が全てのリンクについて全ての周波数スロットごとに求まると、ステップS43では、全ての評価関数値E(t,L,F)が降順にソートされる。
【0044】ステップS44では、無線チャネル割当部102の周波数スロット割当部102aが、前記評価関数値の高い順に、その組み合わせにしたがって各無線リンクに周波数スロットを割り当てる。
【0045】すなわち、評価関数値が最高値を示す組み合わせがリンクL2と周波数スロットF5との組み合わせ、次がリンクL1と周波数スロットF4との組み合わせ、次がリンクL3と周波数スロットF6との組み合わせ…であれば、最初にリンクL2に周波数スロットF5が割り当てられる。次いで、リンクL1に周波数スロットF4が割り当てられる。次いで、リンクL3に周波数スロットF6が割り当てられる。
【0046】このときも、他のリンクで既に同一の周波数スロットが割り当てられている場合には、その評価関数値を前記と同様に減点して更新し、その中で最大の評価関数値を示す周波数スロットを順次に割り当てる。
【0047】ステップS45では、各リンクに所定数の周波数スロットが割り当てられたか否かが判別され、割当が終了するまで前記ステップS44の処理が繰り返される。
【0048】図2に戻り、ステップS5では、無線チャネル割当部102のタイムスロット割当部102bによりタイムスロットの割当処理が実行され、TDD Boundaryにおけるタイムスロット数の割当比率、すなわち各リンクの送信方向および受信方向に割り当てるタイムスロットル数の比率が設定される。
【0049】本実施形態では、送信方向のトラフィック量および受信方向のトラフィック量がトラヒック量測定部108で測定される。そして、タイムスロット数の比率が各リンクごとに、その送信および受信方向のトラフィック量の比率に近い値に設定される。
【0050】例えば、タイムスロット数が「7」であり、上位ノードから見た送信方向および受信方向のトラヒック量の比率が5:2であれば、送信方向には「5」つ、受信方向には「2」つのタイムスロットが割り当てられる。また、本実施形態ではタイムスロットが、上位ノードには老番から、下位ノードには若番(その逆でも良い)から順に割り当てられるので、送信方向には「7」〜「3」の5つ、受信側には「1」、「2」の2つが割り当てられる。
【0051】なお、自ノードのリンクの複数に同一の周波数スロットが割り当てられている場合は、当該リンクの全てにおける送信および受信方向の要求トラフィック量の総和をそれぞれ求め、その総和の比に近いタイムスロット比率を各リンクの送信および受信方向へ割り当てる。
【0052】また、図9に示したように、隣接する2つのグループのそれぞれの上位ノードN1、N2が自ノードのリンクL1、L2に同一の周波数スロットを割り当てているときに、各上位ノードN1、N2が各リンクL1、L2に対して自律的にTDD Boundaryを決定すると、下位ノードN3では、自身のリンクL1、L2に同一の周波数スロットが割り当てられているにもかかわらず各リンクL1、L2のタイムスロットが同一ではない場合が有り得る。このような場合、一方のリンクが受信中のときに他方のリンクの送信が回り込んで干渉が生じ、パケットロスを生じさせることになる。
【0053】このような技術課題を解決するために、本実施形態では、各上位ノードは各リンクに割り当てられた周波数スロットに関する情報を数ホップ先まで収集し、同一の周波数スロットが割り当てられているリンクが数珠つなぎになっている場合には、そのリンクのタイムスロット数の比率を1:1としている。
【0054】
【発明の効果】本発明によれば、以下のような効果が達成される。
(1)各上位ノードは他の上位ノードと無線リンクを共有しないので、各上位ノードが自ノードのリンクに割り当てる無線チャネルを自律分散的に設定しても、同一リンクに複数の上位ノードによって異なる無線チャネルが割り当てられてしまうことがない。
(2)下位ノードの各無線チャネルには、それぞれ異なる上位ノードによって無線チャネルが割り当てられる。ここで、各上位ノードはグループを異にするので、各リンクに無線チャネルが割り当てられるタイミングすなわち更新順序が異なる。そして、各上位ノードは、更新順序が自ノードより前である他のグループの上位ノードが当該下位ノードの他の無線チャネルに割り当てた既登録無線チャネルと競合しないように、その無線チャネルを割り当てるので、下位ノードでも各リンクに割り当てられた無線チャネルが競合しない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の無線チャネル割当方法により無線チャネルが自律分散的に割り当てられる無線ネットワークの構成を示した図である。
【図2】 本実施形態の動作を示したフローチャートである。
【図3】 上位ノードを黒丸(●)、下位ノードを白丸(○)で示した図である。
【図4】 スケジュール作成処理のフローチャートである。
【図5】 周波数スロット更新処理のフローチャートである。
【図6】 無線チャネルの更新タイミングを示した図である。
【図7】 リンクと周波数スロットとの組み合わせごとに得られる評価指標の一例を示した図である。
【図8】 評価関数値の一例を示した図である。
【図9】 各リンクに周波数スロットを割り当てる際の課題を説明するための図である。
【図10】 上位ノードの機能ブロック図である。
【符号の説明】
101…送受信機、102…無線チャネル割当部、102a…周波数スロット割当部、102b…タイムスロット割当部、103…トポロジ解析部、104…通信品質測定部、105…情報交換部、106…評価関数値演算部、107…評価関数値見直し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の無線ノードが分散配置され、各無線ノードが近隣の複数の無線ノードのそれぞれと無線リンクを確立する無線ネットワークにおける無線チャネル割当方法において、各無線リンクを一対の上位ノードおよび下位ノードが共有し、かつ上位ノード同士および下位ノード同士が無線リンクを共有しないように、ネットワーク上の各無線ノードを上位ノードまたは下位ノードに分類する手順と、同一の下位ノードと無線リンクを共有し合う上位ノードが同一グループに所属しないように、各上位ノードを複数のグループに分類する手順と、各上位ノードが自身の無線リンクに割り当てる無線チャネルの更新順序を、所定の周期で繰り返される無線チャネルの更新期間内にグループ単位で設定する手順と、各グループの上位ノードが前記更新順序にしたがって、隣接する各下位ノードとの間の各無線リンクに割り当てる無線チャネルを、更新順序が自ノードより前である他のグループの上位ノードが前記各下位ノードの他の無線チャネルに割り当てた既登録無線チャネルと競合しないように設定する手順とを含むことを特徴とするメッシュ状無線ネットワークにおける無線チャネル割当方法。
【請求項2】 前記無線チャネルを設定する手順は、各上位ノードが、自ノードの各無線リンクと複数の無線チャネルとの組み合わせのそれぞれについて評価関数値を求める手順と、前記評価関数値の高い順に、その組み合わせにしたがって各無線リンクに無線チャネルを割り当てる手順とを含むことを特徴とする請求項1に記載のメッシュ状無線ネットワークにおける無線チャネル割当方法。
【請求項3】 近隣の他の無線リンクに既に割り当てられている既登録無線チャネルを認識する手順と、前記既登録無線チャネルと同一の無線チャネルを含む組み合わせの評価関数値を予め減点する手順とを含むことを特徴とする請求項2に記載のメッシュ状無線ネットワークにおける無線チャネル割当方法。
【請求項4】 前記無線チャネルは、複数種の周波数スロットが時分割で連続するマルチキャリアであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のメッシュ状無線ネットワークにおける無線チャネル割当方法。
【請求項5】 前記無線チャネルは、所定の周波数帯域を複数に分割したマルチキャリアであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のメッシュ状無線ネットワークにおける無線チャネル割当方法。
【請求項6】 複数の無線ノードが分散配置され、各無線ノードが近隣の複数の無線ノードのそれぞれと無線リンクを確立する無線ネットワークの無線チャネル割当システムにおいて、前記無線ノードは、各無線リンクの通信品質を無線チャネルごとに測定する通信品質測定手段と、前記通信品質に基づいて、前記各無線リンクと各無線チャネルとの組み合わせのそれぞれについて評価関数値を求める評価関数値演算手段と、前記評価関数値の高い順に、その組み合わせにしたがって各無線リンクに各無線チャネルを割り当てる無線チャネル割当手段とを含むことを特徴とするメッシュ状無線ネットワークにおける無線チャネル割当システム。
【請求項7】 近隣の他の無線リンクに既に割り当てられている無線チャネルを含む組み合わせの評価関数値を減点する評価関数値見直し手段をさらに具備し、前記無線チャネル割当手段は、前記見直し後の評価関数値が高い順に、その組み合わせにしたがって各無線リンクに各無線チャネルを割り当てることを特徴とする請求項6に記載のメッシュ状無線ネットワークにおける無線チャネル割当システム。

【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2002−345016(P2002−345016A)
【公開日】平成14年11月29日(2002.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−149535(P2001−149535)
【出願日】平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願人】(599108264)株式会社 ケイディーディーアイ研究所 (233)
【Fターム(参考)】